本発明は、原料として樹脂のパウダー材料を用いて皮状部材を成形するためのスラッシュ成形の技術に関し、金型と、パウダー材料を収容するリザーバタンクとの間をシールするシール部材の構造を工夫することにより、シール部材の撓み量を効率的に増加させ、金型の熱変形による金型とリザーバタンクとの間の隙間の変化への追従を可能とし、パウダー材料の外部への漏れを防止して成形品の品質の向上および歩留りの向上を図ろうとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の実施の形態では、スラッシュ成形による成形品としての皮状部材の一例として、自動車の内装構造であるインストルメントパネルを構成する表皮材を例にとって説明する。インストルメントパネルは、例えば、PP(ポリプロピレン)等の合成樹脂を素材として射出成形により形成された比較的硬質の部材である基材と、スラッシュ成形による成形品であって比較的軟質の部材である表皮材と、基材と表皮材との間でポリウレタン等の発泡樹脂材料により発泡成形された発泡体とによる3層構造をなす。ただし、本発明は、インストルメントパネルの表皮材の他、例えば自動車のドアトリムの表皮材を成形品とするスラッシュ成形等、パウダー材料を原料として皮状部材を成形するスラッシュ成形において広く適用可能である。
まず、図1、図2および図3を用いて、本実施形態に係るスラッシュ成形装置1の構成について説明する。図1から図3に示すように、本実施形態に係るスラッシュ成形装置1は、インストルメントパネルを構成する表皮材を成形するためのものであって、成形面2aを有する金型としての表皮型2と、パウダー材料4を収容し表皮型2の取付けを受けて表皮型2とともにパウダー材料4の移動空間8を形成するリザーバタンク3とを備える。なお、図1、図2(b)および図3(b)に示す断面図は、図2(a)および図3(a)に示すA−A位置の断面図である。
表皮型2は、伝熱性に優れたニッケル製の電鋳型等であり、全体として、インストルメントパネルの外形に沿う表皮材の形状に対応した3次元的な凹凸形状を有する板状の部材として構成されている。表皮型2は、その全体的な形状における凹側の面を、成形面2aとする。本実施形態に係る表皮型2は、その成形面2aにおいて、2枚の表皮材が同時に成形されるように、各表皮材に対応した成形面部2bを平面視で点対称に2箇所に有する。
表皮型2は、図2(a)に示すように平面視で矩形状の外形を有し、その短手方向(図2(a)における左右方向)に二分した両側のそれぞれに成形面部2bを有する。表皮型2は、その矩形状の平面視外形に沿って、水平板状の部分である略一定幅のフランジ部2cを有する。フランジ部2cは、表皮型2の下側(図2(b)における下側)の端部において、成形面2aをなす部分の周縁の部分である鉛直状の側壁部2dに対して外側に直角状に屈曲した態様で形成されている。
なお、以下の説明では、スラッシュ成形装置1において、表皮型2の矩形状の平面視外形における短手方向(図2(a)における左右方向)を左右方向とし、同外形における長手方向(図2(a)における上下方向)を前後方向とし、表皮型2とリザーバタンク3とが対向する方向(図1における上下方向)を上下方向とする。
リザーバタンク3は、上側を開口側としたボックス状に構成された収容部であるタンク本体部3aを有し、このタンク本体部3a内に、パウダー材料4を収容する。リザーバタンク3は、例えばアルミニウムやエポキシ樹脂等の材料により構成されている。タンク本体部3aは、図3(a)に示すように平面視で矩形状の外形を有し、その上側の開口範囲の略全体が平面視で表皮型2の成形面2aの範囲内に納まるように設けられている。
リザーバタンク3は、表皮型2の取付けを受けて、表皮型2とともに一体的な回転体を構成する。すなわち、表皮型2とリザーバタンク3は、互いに合体した状態で、モータ等を駆動源とする回転支持装置(図示略)により、前後方向に沿う所定の回転軸O1回りに回転可能に構成されている。
表皮型2は、その成形面2a側を、リザーバタンク3のタンク本体部3aに収容されたパウダー材料4側(下側)に向け、タンク本体部3aの開口側を塞ぐようにリザーバタンク3に取り付けられる。つまり、表皮型2とリザーバタンク3は、成形面2a側とタンク本体部3aの開口側とを対向させた状態で合体し、成形面2aにタンク本体部3a内のパウダー材料4を臨ませる。表皮型2とリザーバタンク3とが合体した状態において、表皮型2とリザーバタンク3とによって、タンク本体部3aの収容空間を含む一体的な内部空間が形成される。この内部空間は、パウダー材料4の移動空間8となる。パウダー材料4の移動空間8内に、表皮型2とリザーバタンク3との合体構成の回転軸O1が位置する。
互いに合体した表皮型2とリザーバタンク3との間には、回転枠5が介在している。つまり、表皮型2とリザーバタンク3は、回転枠5を介して互いに固定されている。回転枠5は、四角形状の横断面形状を有する管状の部材により、表皮型2のフランジ部2cに沿うように平面視で矩形枠状に構成されている。
回転枠5は、表皮型2のフランジ部2cと、リザーバタンク3においてタンク本体部3aの左右の側壁3bの上端部から左右方向外側に突設された支持アーム部3cとによって上下に挟まれた状態で、表皮型2とリザーバタンク3との間に介在する。支持アーム部3cは、左右の側壁3bのそれぞれにおいて、前後方向に所定の間隔を隔てた3箇所に設けられている(図3(a)参照)。
表皮型2およびリザーバタンク3は、それぞれクランプ機構6によって回転枠5に固定される。クランプ機構6は、クランプ・アンクランプを切換え操作するための操作部としてクランプレバー6aを有するトグルクランプ機構である。クランプ機構6のうち、表皮型2用のクランプ機構6Aは、表皮型2のフランジ部2cを回転枠5に対してクランプするものであり、リザーバタンク3用のクランプ機構6Bは、リザーバタンク3の支持アーム部3cを回転枠5に対してクランプするものである。クランプ機構6としては公知の機構が用いられるため、クランプ機構6の詳細な説明は省略する。
本実施形態に係るスラッシュ成形装置1においては、回転枠5の左右両側の辺部5aのそれぞれに対して、表皮型2用のクランプ機構6Aが4箇所、リザーバタンク3用のクランプ機構6Bが3箇所、前後方向に所定の間隔を隔てて交互に配設されている。なお、表皮型2用のクランプ機構6Aと、リザーバタンク3用のクランプ機構6Bとは、略上下対称に構成されている。以下の説明では、クランプ機構6によって回転枠5を介して互いに合体し、所定の回転軸O1を中心として回転可能に設けられた表皮型2とリザーバタンク3の合体構成を「型・タンク合体構成」という。
スラッシュ成形装置1において、型・タンク合体構成の回転時等にパウダー材料が外部等に漏れることを防止するため、型・タンク合体構成の内部空間を区画形成する表皮型2とリザーバタンク3との接触部分(当接部分)に、シール部7が設けられている。シール部7は、表皮型2の左右の成形面部2bにおいて、表皮型2の凹凸形状に沿うとともに平面視で表皮材の外形(成形面部2bの外形)に沿って無端状に(環状に)設けられている。つまり、シール部7は、型・タンク合体構成において、表皮型2の成形面2aにおける表皮材の成形領域(成形面部2b)とその外部領域との間の境界部をなす。シール部7は、リザーバタンク3の表皮型2に対する接触部分に、ゴム等の弾性材料からなるシール部材(スラッシュ成形用シール部材)としてのシールゴム10を介在させている。具体的には次のとおりである。
シールゴム10は、リザーバタンク3においてタンク本体部3aの上側に設けられた隔壁11の上端部に取り付けられている。隔壁11は、タンク本体部3aの上側の開口縁部から上方に延出された外側壁部11aと、タンク本体部3aの開口の上方に位置する内側壁部11bとを有する。内側壁部11bは、左右の外側壁部11aの基端部間に左右方向に架設された横架材12上に立設された支持柱13により下側から支持されている。
隔壁11は、全体的に所定の形状を有する略板状の部分であり、その上側の縁端部(以下「隔壁縁端部」という。)11cが無端状のシール部7をなすように、隔壁縁端部11cを、表皮型2の凹凸形状に沿わせるとともに平面視で表皮材の外形(成形面部2bの外形)に沿わせるように設けられている。すなわち、隔壁縁端部11cは、隔壁11における表皮型2の成形面2aに対する当接側の端部であり、シールゴム10の取付けを受け、シールゴム10を介して表皮型2に対して下側から当接することで、シール部7を構成する。
このように、本実施形態では、隔壁縁端部11cが、リザーバタンク3の縁端部に相当する。すなわち、シールゴム10は、表皮型2におけるパウダー材料4の移動空間8の区画部位に臨む隔壁縁端部11cに取り付けられ、表皮型2とリザーバタンク3との間をシールする。
シールゴム10は、一定の断面形状を有する長尺の部材であって、シール部7の全体にわたるように無端状に設けられている。シールゴム10は、耐熱性に優れたシリコーンゴムを原料とした押出し成形などにより形成されたものである。
表皮材の原料となるパウダー材料4は、スラッシュ成形において一般的に用いられている材料であり、例えば、塩化ビニル樹脂パウダー、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)の樹脂パウダー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)の樹脂パウダー等である。
次に、本実施形態に係るスラッシュ成形装置1が用いられて行われるスラッシュ成形方法の一例について、図4を用いて説明する。なお、図4において、クランプ機構6の図示は省略している。
まず、図4(a)に示すように、表皮型2を、加熱炉14内に入れ、例えば480℃程度の熱風に晒すことで、例えば230〜270℃程度の温度となるまで加熱する。なお、表皮型2を加熱する手段としては、加熱炉14のほか、例えば、表皮型2の外側(成形面2aと反対側)に加熱油等の加熱媒体を循環させるパイプを設け、パイプ内を循環する加熱媒体により表皮型2を加熱する構成等であってもよい。
次に、図4(b)に示すように、加熱した表皮型2を、タンク本体部3aにパウダー材料4を収容したリザーバタンク3に取り付け(矢印C1参照)、クランプ機構6(図1参照)によって固定する。これにより、加熱済みの表皮型2とパウダー材料4入りのリザーバタンク3とが合体され、型・タンク合体構成が得られる。
続いて、図4(c)に示すように、型・タンク合体構成を、図示せぬ回転支持装置によって回転軸O1回りに回転する(矢印C2参照)。これにより、パウダー材料4が、その荷重により型・タンク合体構成の内部空間内を移動し、表皮型2の成形面2a側へと導かれる。
そして、図4(d)に示すように、型・タンク合体構成が回転軸O1を中心とした回転動作によって上下反対の状態となることで、パウダー材料4が表皮型2の成形面2a側に移動し、左右の成形面部2bに対して全面的に接触した状態となる。これにより、パウダー材料4が表皮型2の熱により溶融され、各成形面部2bの面形状に沿って樹脂材料4aが付着成形される。
樹脂材料4aの成形後、図4(e)に示すように、型・タンク合体構成の回転軸O1を中心とした回転動作によって表皮型2とリザーバタンク3の回転位置を元に戻すことで、リザーバタンク3を下側、表皮型2を上側に位置させ、余分なパウダー材料4をリザーバタンク3のタンク本体部3a内に移動させる。
そして、図4(f)に示すように、クランプ機構6によるクランプを解除してリザーバタンク3から表皮型2を取り外し、例えば表皮型2を図示せぬ水槽内に浸けて所定の水圧をかけること等により、表皮型2を例えば40℃程度の温度となるまで冷却する。これにより、樹脂材料4aが硬化し、硬化した樹脂材料4aを表皮型2から脱型することで(矢印C3参照)、成形品としてインストルメントパネルの表皮材15が得られる。
表皮材15は、インストルメントパネルを構成する基材に対する被着部分の形状に合致する凹凸状の曲面形状を有し、その外表面によってインストルメントパネルの意匠面を形成する。表皮材15の板厚は、例えば1mm程度である。
以下では、上述したような本実施形態に係るスラッシュ成形装置1およびスラッシュ成形方法において、表皮型2とリザーバタンク3との間をシールするシール部7およびシールゴム10について、詳細に説明する。
シールゴム10は、上述のとおり一定の横断面形状を有する長尺部材であり、その主な構成ないし形態が、横断面形状により特定される。図5および図6に示すように、シールゴム10は、その下側を開放側とし、下側から隔壁縁端部11cを挿入させた状態で、隔壁11に取り付けられる。なお、シール部7およびシールゴム10においては、隔壁11の壁厚方向(図5における左右方向)を左右方向とし、スラッシュ成形装置1における上下方向(図5における上下方向)を上下方向とする。
シールゴム10は、隔壁縁端部11cを左右両側から挟む取付金具16を介して、隔壁11に固定される。取付金具16は、矩形状の外形をなすとともに所定の屈曲形状を有する屈曲板状の部材であり、平板状の部分であって隔壁11に固定される部分である固定部16aと、側面視で略「コ」字状をなす屈曲部分であってシールゴム10を係止する部分である係止部16bとを有する。
取付金具16は、固定部16aを隔壁11の板面11dに合わせるとともに、係止部16bの略「コ」字状の開放側をシールゴム10側に向けて係止部16bによりシールゴム10の下端部を取付金具16の幅寸法の範囲で覆った状態であてがわれる。一対の取付金具16は、隔壁縁端部11cおよびシールゴム10の下端部を挟持した態様で互いに対向する位置に配置され、ボルト部材17およびナット部材18により、隔壁11に締結固定されている。
ボルト部材17は、左右方向の一側(図5において左側)から、左右一側に位置する取付金具16、一対の取付金具16の固定部16a間に位置する隔壁縁端部11c、および左右他側(図5において右側)に位置する取付金具16を貫通し、左右方向の他側に位置する2つのナット部材18に螺合している。このため、取付金具16および隔壁縁端部11cには、それぞれボルト部材17を貫通させるボルト孔16e,11eが形成されている。このような固定構造により、シールゴム10が、隔壁縁端部11cに対して上下方向について位置決めされた状態で固定される。
シールゴム10の隔壁11に対する固定構造において、取付金具16のボルト孔16eは、上下方向を長手方向とする長孔となっている。これにより、隔壁11に対する取付金具16の上下方向の位置調整が可能となり、取付金具16を介して隔壁11に固定されたシールゴム10の隔壁11に対する上下方向についての位置調整が可能となっている。なお、シールゴム10の上下方向の位置調整を行うための構成としては、固定部16aまたは隔壁縁端部11cにおいて上下方向に複数のボルト孔を設けた構成や、隔壁縁端部11cのボルト孔11eを上下に長い長孔とした構成等であってもよい。以上のような一対の取付金具16等によるシールゴム10の隔壁11に対する固定部は、シールゴム10の延設方向について適宜間隔を隔てて複数箇所に設けられている。
次に、シールゴム10の構成について説明する。図5、図6および図7に示すように、シールゴム10は、表皮型2に対する接触部分をなすとともにシールゴム10の長手方向(延設方向)に沿う空洞20aを形成する接触側筒状部21と、リザーバタンク3の隔壁縁端部11cを挟持する挟持部22と、接触側筒状部21と挟持部22との間に設けられた中間空間形成部23とを有する。
このようにシールゴム10が有する各部は、いずれもシールゴム10の横断面形状において現れる部分であり、一定の横断面形状を有するシールゴム10の延設方向の全体にわたって形成されている。シールゴム10は、その横断面形状において、上下方向を長手方向とし、また、左右対称な形状を有する。
接触側筒状部21は、空洞20aを有する中空部分であり、略筒状の部分である。特に、本実施形態では、接触側筒状部21は、略四角筒状の外形を有する。
挟持部22は、シールゴム10の幅方向(左右方向、以下単に「幅方向」ともいう。)の両側の下端部をなす一対の挟持片部24を有する。一対の挟持片部24は、隔壁縁端部11cの上端部を挟持するとともに、取付金具16の係合を受ける部分である。
具体的には、挟持片部24は、シールゴム10の下端面となる水平面状の下端面24aと、シールゴム10の下端部の側面となる鉛直面状の側面24bとを有する。なお、下端面24aと側面24bとの角部分はR形状部となっている。また、シールゴム10の下部、詳細には挟持部22と中間空間形成部23との境界部分には、横断面視で矩形状の外形に沿い幅方向外側を開放側とする凹状溝25が形成されている。凹状溝25の下側面25aは、挟持片部24の側面24bとともに略直角状をなす面である。
そして、取付金具16は、略「コ」字状をなす係止部16bにより横断面視で挟持片部24を囲むように、つまり係止部16bの内側に挟持片部24を嵌合させた態様で、シールゴム10に係合する。詳細には、係止部16bは、略「コ」字状をなす部分として、下面部16x、側面部16y、および上面部16zを有する。そして、取付金具16は、下面部16xおよび側面部16yを、挟持片部24の下端面24aおよび側面24bにそれぞれ対向させるとともに、上面部16zを凹状溝25内に位置させ、上面部16zの端面16cを、凹状溝25の底面25bに当接させた状態で、シールゴム10に係合する。
挟持部22は、シールゴム10における隔壁縁端部11cに対する取付部の一例である。シールゴム10が有する取付部としては、挟持部22のように一対の挟持片部24により隔壁縁端部11cを挟持する部分に限らず、シールゴム10の隔壁縁端部11cに対する取付状態においてシールゴム10を隔壁縁端部11cに対して支持させる部分であればよい。
中間空間形成部23は、接触側筒状部21に対してリザーバタンク3の隔壁縁端部11cに対する取付側、つまり挟持部22側(下側)に設けられている。中間空間形成部23は、接触側筒状部21の挟持部22側の部分とともにシールゴム10の長手方向に沿う空間23sを形成する部分である。中間空間形成部23は、シールゴム10の幅方向に対向する一対の側壁部26からなる。一対の側壁部26間に、空間23sが形成される。空間23sは、下側を開放側とする略筒状の空間である。
中間空間形成部23は、接触側筒状部21の挟持部22側(下側)の部分および隔壁縁端部11cとともにシールゴム10の長手方向に沿う空洞20bを形成する。つまり、挟持部22をなす挟持片部24間に隔壁縁端部11cが挿入されることで、空間23sの下側の開放側が隔壁縁端部11cにより塞がれ、空洞20bが形成される。
図5等に示す例では、空洞20bは、接触側筒状部21の下面21aと、中間空間形成部23の一対の側壁部26の内側の壁面である内壁面26aと、隔壁縁端部11cの水平状の上端面11fとにより形成されている。ただし、シールゴム10の隔壁縁端部11cに対する上下方向の固定位置によっては、空洞20bを形成する面に、隔壁縁端部11cの上端部の左右の板面11dが含まれたり、挟持片部24の内側面24cの上端部が含まれたりする。
以上のように、シールゴム10は、シール部7において、上下に区画された2つの空間部として、接触側筒状部21による空洞20aと、中間空間形成部23と隔壁縁端部11cとにより形成される空洞20bとを形成する。つまり、シールゴム10は、接触側筒状部21の空洞20aおよび中間空間形成部23の空間23sの上下二段の空間部を有し、上側の空洞20aに加え、左右の側壁部26間の空間23sが隔壁縁端部11cにより下側から閉ざされた空洞20bを形成する。このように、シールゴム10は、いわば空洞20aを形成する部分と空洞20bを形成する部分との二層構造となっている。以下の説明では、上側の空洞20aを上段空洞20aとし、下側の空洞20bを下段空洞20bとする。
以下では、本実施形態に係るシールゴム10が有する接触側筒状部21および中間空間形成部23について詳細に説明する。
まず、接触側筒状部21について詳細に説明する。接触側筒状部21は、表皮型2に対する接触面をなす天面部31と、シールゴム10の幅方向に対向する一対の側面部32と、天面部31に対向する面部であって上段空洞20aと下段空洞20b(空間23s)とを仕切る隔壁部33とを含む。
天面部31は、シールゴム10の上端部をなす水平板状の部分である。天面部31の上面31aが、シールゴム10の上端面であり、表皮型2に対する接触面となる。天面部31の上面31aは、平面状に形成され、接触側筒状部21の幅方向の外側の壁面である外壁面21bとともに角21dをなすように形成されている。外壁面21bは、シールゴム10の幅方向外側の壁面の上部をなす。
本実施形態では、天面部31の上面31aは、水平面状に形成されている。また、天面部31の下面31bも、上面31aと同様に水平面状に形成されている。また、接触側筒状部21の外壁面21bは、全体として略鉛直状の面であって、その上端部に、天面部31の上面31aと鈍角(例えば100〜110°)をなす斜面21cが形成されている。したがって、左右の斜面21cにより、シールゴム10の上端部は、下側から上側にかけて徐々に幅狭となるように形成されている。なお、本実施形態では、斜面21cは、外壁面21bにおいて天面部31の板厚の略上半分となる部分に形成されている。また、上面31aと斜面21cとがなす角部は、R形状部となっている。
左右の側面部32は、シールゴム10の上部の側壁をなす略鉛直板状の部分である。
隔壁部33は、天面部31の下方の位置において天面部31と略平行となるように設けられた略水平板状の部分である。隔壁部33の上面33aは、下側に凸の湾曲面となっている。また、隔壁部33は、中間空間形成部23の一対の側壁部26とともに空間23sを形成する部分である。隔壁部33の下面33bは、上述のとおり下段空洞20bを形成する接触側筒状部21の下面21aとなる。
以上のように、本実施形態では、接触側筒状部21は、天面部31、一対の側面部32、および隔壁部33により、シールゴム10の横断面において略矩形枠状をなす略四角筒状の部分として形成されている。
また、接触側筒状部21において、天面部31は、側面部32よりも肉厚に形成されている。すなわち、図7に示すように、天面部31の厚さ寸法D1は、側面部32の最大の厚さ寸法D2よりも大きくなっている。
また、接触側筒状部21において、側面部32は、上下方向の一部に、他の部分に対して肉厚が薄い薄肉部32bを有する。本実施形態では、側面部32は、その上下方向の中央部を薄肉部32bとする。
詳細には、側面部32は、その外側の壁面32cを、上下方向に沿うように平面状とするとともに、内側の壁面32dを、上下方向についてシールゴム10の幅方向の外側を凸側とする湾曲面とすることで、上下方向について両端部から中央部にかけて徐々に肉厚を薄くする形状を有する。すなわち、左右の側面部32は、鉛直面である外側の壁面32cに対して、内側の壁面32dを、シールゴム10の横断面において幅方向外側を凸側とする弧状をなす曲面とし、側面部32における内側を上下方向の位置により左右方向に変位する側として、上下両端から中央部にかけて徐々に壁厚を薄くしている。なお、側面部32の外側の壁面32cは、接触側筒状部21の外壁面21bの一部となる。
本実施形態では、側面部32の厚さについて、上下中央部の最小の厚さ寸法D3は、上下両端部の最大の厚さ寸法D2の略半分の大きさとなっている(図7参照)。
以上のような接触側筒状部21において、上段空洞20aは、水平面状の下面31bと、幅方向外側に凸で断面円弧状をなす湾曲面である左右の内側の壁面32dと、下側に凸で断面円弧状をなす湾曲面である上面33aとにより形成され、シールゴム10の横断面視において略樽状の形状を有する。
次に、中間空間形成部23について詳細に説明する。中間空間形成部23は、接触側筒状部21に対して幅広の部分として形成されている。したがって、シールゴム10において、中間空間形成部23の幅方向の寸法E1は、接触側筒状部21の幅方向の寸法E2よりも大きい。ここで、中間空間形成部23の幅方向の寸法E1は、中間空間形成部23における最大の幅方向の寸法であり、幅方向について左右の側壁部26の外側の壁面である鉛直状の外側壁面26b間の寸法である。同様に、接触側筒状部21の幅方向の寸法E2は、接触側筒状部21における最大の幅寸法であり、幅方向について左右の側面部32の外側の壁面32c間の寸法である。
また、中間空間形成部23において、外側壁面26bの上側には、斜壁面26cが形成されている。つまり、側壁部26は、幅方向の外側において、鉛直状の外側壁面26bと、その上側に形成された斜壁面26cとを有する。斜壁面26cは、接触側筒状部21の外壁面21bに対して下側に繋がる面部であり、上側から下側にかけて徐々に幅方向外側に傾斜した傾斜面である。
したがって、シールゴム10において、上側から下側にかけて、幅方向の寸法E2の接触側筒状部21の部分から、幅方向の寸法を徐々に広げる肩部分をなす左右の斜壁面26cを介して、幅方向の寸法E1をなす中間空間形成部23の部分に至る。左右の側壁部26の外側壁面26bおよび斜壁面26cは、シールゴム10の幅方向外側の壁面の上下方向の中間部をなす。また、外側壁面26bは、挟持片部24の側面24bと共通の仮想鉛直平面上に位置し、外側壁面26bと側面24bとの間に、凹状溝25が形成されている。なお、凹状溝25の上側面25cは、側壁部26の外側壁面26bとともに略直角状をなす面である。
また、中間空間形成部23において、側壁部26は、上下方向の一部に、他の部分に対して肉厚が薄い薄肉部26dを有する。本実施形態では、側壁部26は、その上下方向の中央部を薄肉部26dとする。
詳細には、側壁部26は、その内壁面26aを、上下方向について略対称な上下の斜面部(26e,26f)を含み、上下方向について幅方向の外側を凸側とする屈曲状の面とすることで、上下方向の中央部を、最も肉厚が薄い部分とする。すなわち、左右の側壁部26は、鉛直面である外側壁面26bに対して、内壁面26aを、シールゴム10の横断面において幅方向外側を凸側とする屈曲状をなす面とし、側壁部26における内側を上下方向の位置により左右方向に変位する側として、上下両端から中央部にかけて徐々に壁厚を薄くしている。
左右の側壁部26の内壁面26aは、内壁面26aの上部をなす上側斜面部26eと、内壁面26aの下部をなす下側斜面部26fと、上側斜面部26eと下側斜面部26fの間の部分であって側壁部26の中央部をなす湾曲面部26gとを有する。上側斜面部26eは、上側から下側にかけて左右の内壁面26aの面間寸法を徐々に大きくするように傾斜している。下側斜面部26fは、上側から下側にかけて左右の内壁面26aの面間寸法を徐々に小さくするように傾斜している。湾曲面部26gは、上側斜面部26eと下側斜面部26fとを滑らかに繋ぐ面部であり、シールゴム10の横断面視において幅方向の外側を凸側とする弧状をなすように湾曲している。そして、内壁面26aは、上下方向について湾曲面部26gの中央位置を中心として上下略対称の形状を有する。また、上側斜面部26eは、上述のとおり外側壁面26bの上側に形成された斜壁面26cと略平行な面となっている。
本実施形態では、側壁部26の厚さについて、上下中央部の最小の厚さ寸法F1は、幅方向の寸法の最大寸法F2の略2/5の大きさとなっている(図7参照)。
また、中間空間形成部23を構成する左右一対の側壁部26は、挟持部22をなす挟持片部24に連続した部分であり、挟持片部24とともに接触側筒状部21に対して下方に延設された脚部27をなす。すなわち、シールゴム10は、その横断面視において接触側筒状部21よりも下側の部分を蟹股状に二股に分岐させており、各分岐部分を脚部27とする。そして、シールゴム10は、左右の脚部27の下端部間に隔壁縁端部11cの上端部を挟持することで、左右の脚部27の上部間に、接触側筒状部21および隔壁縁端部11cとともに下段空洞20bを形成する。
詳細には、脚部27は、接触側筒状部21の下端部の左右両側から下広がり状に延設された部分を、中間空間形成部23の側壁部26の上部とし、側壁部26の下部およびその下側に連続する挟持部22の挟持片部24を下部として、下方に向けて延設されている。
以上のような構成を備えたシールゴム10は、本実施形態に係るスラッシュ成形用シール方法において、表皮型2とリザーバタンク3との間をシールする部材として、次のようにして用いられる。すなわち、一対の脚部27の下部間に、表皮型2におけるパウダー材料4の移動空間8の区画部位に臨むリザーバタンク3の隔壁縁端部11cを挟持させた状態で、リザーバタンク3にシールゴム10を取り付け、接触側筒状部21の脚部27側の部分(隔壁部33)、一対の脚部27の上部、および隔壁縁端部11cにより、シールゴム10の長手方向に沿う下段空洞20bを形成する。
以上のような本実施形態に係るスラッシュ成形装置1、シールゴム10、およびシールゴム10を用いたスラッシュ成形用シール方法によれば、次のような作用・効果を得ることができる。すなわち、スラッシュ成形において表皮型2とリザーバタンク3との間に設けられるシールゴム10について、表皮型2の変形による表皮型2とリザーバタンク3との間の隙間の変化に追従するために十分な撓み量を得ることができ、パウダー材料4の外部への漏れを防止することができ、成形品の品質の向上および歩留りの向上を図ることができる。
図8に、本実施形態に係るシールゴム10に対する比較例として、従来のシールゴム110の一例を示す。図8に示すように、シールゴム110は、上半部に空洞111を有し、下半部に隔壁縁端部11cを嵌合させる溝部112を有し、略「A」字状の横断面形状を有する。
このようなシールゴム110によれば、表皮型2の加熱・冷却による、リザーバタンク3に対して逃げる方向の変形の変形量がシールゴム110の撓み量よりも多くなる場合がある。つまり、シールゴム110によれば、その撓み量について、永久歪としての表皮型2の変形に追従するために十分な撓み量を得ることができない場合がある。この場合、シールゴム110と表皮型2の成形面2aとの間に隙間120が発生することになる。隙間120が発生すると、本来、シールゴム110によるシール部の内側、つまり成形面部2b側の空間を移動したり成形面部2bに付着・溶融したりするパウダー材料が、型・タンク合体構成の回転時等に、隙間120から外側に漏れるという現象が起こる(矢印H1参照)。パウダー材料が漏れることは、成形品の品質不良や歩留りの低下に繋がる。
そこで、本実施形態に係るシールゴム10によれば、接触側筒状部21の上段空洞20aと、中間空間形成部23により形成される下段空洞20bとの上下二段の空間部分が形成され、シールゴム10の撓み変形について、上下の各空間部分を潰す二段階の撓み変形を得ることができる。これにより、例えば撓み量を増加させるために単にシールゴム110の上下方向の寸法を増加させた構成(空洞111を縦長とした構成)との比較において、撓み変形する部分の横断面形状が上下方向を長手方向とする縦長形状であっても、上段部分および下段部分それぞれの撓み変形、つまり各空間部分を形成する側壁部等の座屈変形について、幅方向に偏ったり全体的に折れ曲がったりすることなく、安定した変形を得ながら、上下方向の変形量(撓み量)を増大させることが可能となる。
したがって、インストルメントパネルの表皮材15を形成するための表皮型2のように比較的大型の金型であっても、表皮型2の加熱・冷却による永久歪としての変形に、シールゴム10を追従させることができ、良好なシール性を得ることができる。結果として、パウダー材料4が表皮型2の成形面部2bから外部へ漏れることを防止することができ、表皮材15の品質の向上および歩留りの向上を図ることができる。
具体的には、本実施形態に係るシール部7においては、図5に示すように、上下方向について、シールゴム10の天面部31の上面31aから、凹状溝25内に位置する取付金具16の上面部16zのシールゴム10に対する当接位置(取付金具16の上面の高さ位置)までの領域G1が、シールゴム10の撓み領域となる。つまり、このシールゴム10の撓み領域の部分が、表皮型2とリザーバタンク3の合体に際してシールゴム10が上下方向に圧縮する方向の荷重を受けることで圧力変形する部分となり、かかる部分の変形により、シールゴム10が表皮型2の変形に追従してシール性が保持される。
シールゴム10の変形態様の一例について、図9を用いて説明する。ここで示すシールゴム10の変形態様は、表皮型2の成形面2aにおいてシールゴム10の上面31aが接触する面は水平面であるとし、シールゴム10に作用する荷重の方向は鉛直方向とした場合の例である。
シールゴム10に荷重が作用した際、まず、図9(a)に示すように、主に上下二層構造における二層目の部分、つまり中間空間形成部23の部分から撓み変形が開始される。このことは、一層目の部分、つまり接触側筒状部21の部分における左右の側面部32の厚さが比較的厚いことに起因する。中間空間形成部23の撓み変形においては、左右の側壁部26が、それぞれ幅方向外側に屈曲するように変形する。
続いて、図9(b)に示すように、二層目の撓み変形がほぼ完了した後に、一層目の撓み変形が開始する。つまり、接触側筒状部21を構成する左右の側面部32が、それぞれ幅方向外側に膨出するように変形を開始する。また、隔壁部33は、下側に膨出するように変形する。このことは、隔壁部33が水平面状の下面31bと下側に凸の湾曲面である上面31aとを有し(図7参照)、左右方向の中間部を薄肉部とした形状を有することに起因する。
そして、図9(c)に示すように、最終的には、一層目および二層目のいずれの部分も撓み変形し、シールゴム10が全体的に上下方向に圧縮されひしゃげた状態となる。かかる状態において、中間空間形成部23の左右の側壁部26は、幅方向外側に折れ曲がり、上半部と下半部とを互いに近接させている。また、隔壁部33は、下側を凸として湾曲し、下面31bの幅方向中央部を隔壁縁端部11cの上端面11fに近接させている。また、接触側筒状部21の左右の側面部32は、幅方向外側に折れ曲がり、内側の壁面32dの下部同士を互いに近接させている。
そして、図9(c)に示すように、シールゴム10の撓み変形が完了した状態において、二点鎖線で示すシールゴム10の自然状態からの上面31aの上下方向の移動量J1が、シールゴム10全体としての撓み量となる。
このように、本実施形態に係るシールゴム10によれば、二層目の撓み変形および一層目の撓み変形による段階的な(二段階の)撓み変形が得られる。こうした段階的な撓み変形を生起する構造的要因の一つに、接触側筒状部21の側面部32の厚さ(上下方向中央部の厚さ、図7、寸法D3参照)が、一層目と二層目の繋ぎ部分となる隔壁部33の厚さ(幅方向中央部の厚さ、図7、寸法D4参照)よりも厚いことがある。具体的な寸法としては、例えば、側面部32の厚さ寸法D3が1.8mmであり、隔壁部33の幅方向中央部の厚さ寸法D4が1.5mmである。
本実施形態に係るシールゴム10が備える各構成およびそれによる作用効果は次のとおりである。
本実施形態に係るシールゴム10において、接触側筒状部21は、天面部31、左右の側面部32、及び隔壁部33を含み、表皮型2に対する接触面となる天面部31の上面31aは平面状に形成されて接触側筒状部21の外壁面21bとともに角21dをなし、上端部を角張った形状とする。このような構成によれば、例えば図8に示すシールゴム110のように、表皮型2に対する接触面を、接触側を凸とする湾曲面とした構成との比較において、歩留りを安定させることができ、結果として歩留りを向上することができる。
具体的には、図10(a)に示すように、表皮型2に対する接触面として、接触側を凸とする湾曲面131aを有するシールゴムの場合、表皮型2に対する接触面積が小さくなる。また、湾曲面131aの湾曲形状によって、シールゴムの当接位置から内側(成形面部2b側)にかけて成形面部2bに対して湾曲面131aが徐々に開き、シールゴムによるシール位置の境界部分において、断面視で略三角形状の空間140が形成される(ハッチング部分参照)。これらのことから、湾曲面131aを有するシールゴムの場合、表皮型2に対する接触位置やシールゴムの撓み量等により、シールゴムによるシール位置や特性がばらつくため、パウダー材料4が到達可能な範囲が不安定となり、結果として歩留りが不安定となる。歩留りが不安定となることは、シールゴムによるシール位置等のばらつきを考慮する必要があることから、歩留りの低下に繋がる。
これに対し、図10(b)に示すように、本実施形態に係るシールゴム10によれば、シールゴム10において角張った上端部をなす上面31aが表皮型2に対して全面的に接触することから、十分な接触面積を確保することができ、しかも、シールゴム10によるシール位置の境界部分において、図10(a)に示すような空間140が形成されることがない。したがって、表皮型2に対するシールゴム10の接触位置や撓み量等によらずに、シール位置を安定させることができるため、パウダー材料4が到達可能な範囲が安定し、結果として歩留りを安定させることができ、歩留りを向上することができる。
また、本実施形態に係るシールゴム10において、天面部31は、側面部32よりも肉厚に形成されている。特に、本実施形態では、天面部31は、隔壁部33を含む接触側筒状部21における他の部分に対して肉厚が厚い部分として形成されている。このような構成によれば、表皮型2からシールゴム10に伝達される熱を、天面部31の部分で吸収することができるので、天面部31よりも下側の部分への熱伝導を抑制することができる。これにより、シールゴム10の熱による劣化を抑制することが可能となる。結果として、シールゴム10の交換およびメンテナンスの回数を減らすことができ、生産性の向上を図ることができる。
また、天面部31を相対的に厚くすることにより、表皮型2に対する接触部分である天面部31において剛性を容易に確保することができ、天面部31の形態を保持しながら、シールゴム10の撓み変形を左右対称的な安定した撓み変形とすることができる。これにより、シールゴム10に作用する荷重が安定し、良好なシール性を得ることができる。特に、シールゴム10において安定した撓み変形を得る観点からは、天面部31については、その下面31bも上面31aと同様に水平面状であることが好ましい。
また、本実施形態に係るシールゴム10において、接触側筒状部21を構成する側面部32は、上下方向の一部に薄肉部32bを有する。このような構成によれば、その薄肉部32bを起点として意図的に側面部32を座屈させることができるので、薄肉部32bを設ける部位や薄肉部32bの厚さ等によってシールゴム10の撓み変形の態様を制御することができ、シールゴム10の安定した撓み変形を得ることができる。
特に、本実施形態では、側面部32は、外側の壁面32cを鉛直状とするとともに内側の壁面32dを幅方向外側に凸の湾曲面とすることで、上下方向について両端部から中央部にかけて徐々に肉厚を薄くする形状を有する。このような構成によれば、シールゴム10の撓み変形において、左右の側面部32を確実に幅方向外側に屈曲(座屈)させることが可能となるので、シールゴム10の一層目の部分について、撓み変形量を効果的に増大させることができるとともに、安定した撓み変形を得ることができる。
すなわち、シールゴム10の撓み変形において、仮に、左右の側面部32が内側に屈曲した場合、左右の側面部32同士が干渉し合うことで、接触側筒状部21における撓み変形量が不十分なものとなったり、撓み変形が左右のいずれかに偏ったものとなったりすることが考えられる。この点、左右の側面部32が外側に屈曲するように変形することで、左右の側面部32同士が干渉し合うことがなくなるので、シールゴム10の撓み変形において上段空洞20aを有効に利用することができ、撓み量を効果的に増大させることができるとともに、撓み変形が左右方向に偏ること等がなくなり、安定した撓み変形を得ることができる。これにより、シールゴム10によるシール位置を安定させることができるため、上述のとおり歩留りを安定させることができる。
また、側面部32がその上下中央部に薄肉部32bを有する構成は、形状的な面においても側面部32を屈曲変形させやすくし、シールゴム10の撓み量の増大に寄与する。なお、側面部32の一部を薄肉部とする形状は、本実施形態に限定されず、例えば、外側の壁面32cを、幅方向内側を凸側とする曲面とし、側面部32における外側を上下方向の位置により左右方向に変位する側として、上下両端から中央部にかけて徐々に壁厚を薄くした構成等であってもよい。
また、本実施形態に係るシールゴム10は、中間空間形成部23の幅方向の寸法(図7、寸法E1参照)が、接触側筒状部21の幅方向の寸法(図7、寸法E2)よりも大きくなるように構成されている。このような構成によれば、シールゴム10の撓み変形において、シールゴム10の下部においては、シールゴム10に作用する荷重の伝達部分を上部に対して左右に広げることができるので、シールゴム10における荷重が安定し、上述したような段階的な撓み変形を効果的に生じさせることが可能となる。
また、本実施形態に係るシールゴム10において、中間空間形成部23を構成する側壁部26は、上下方向の一部に薄肉部26dを有する。このような構成によれば、その薄肉部26dを起点として意図的に側壁部26を座屈させることができるので、薄肉部26dを設ける部位や薄肉部26dの厚さ等によってシールゴム10の撓み変形の態様を制御することができ、シールゴム10の安定した撓み変形を得ることができる。
特に、本実施形態では、側壁部26は、その内壁面26aを、上下の上側斜面部26eを含み幅方向外側を凸側とする略「く」字状の横断面形状をなす屈曲状の面とすることで、上下方向の中央部を最も肉厚が薄い部分としている。このような構成によれば、シールゴム10の撓み変形において、左右の側壁部26を確実に幅方向外側に屈曲(座屈)させることが可能となるので、シールゴム10の二層目の部分について、撓み変形量を効果的に増大させることができるとともに、安定した撓み変形を得ることができる。
すなわち、シールゴム10の撓み変形において、仮に、左右の側壁部26が内側に屈曲した場合、左右の側壁部26同士が干渉し合うことで、中間空間形成部23における撓み変形量が不十分なものとなったり、撓み変形が左右のいずれかに偏ったものとなったりすることが考えられる。この点、左右の側壁部26が外側に屈曲するように変形することで、左右の側壁部26同士が干渉し合うことがなくなるので、シールゴム10の撓み変形において下段空洞20bを有効に利用することができ、撓み量を効果的に増大させることができるとともに、撓み変形が左右方向に偏ること等がなくなり、安定した撓み変形を得ることができる。これにより、シールゴム10によるシール位置を安定させることができるため、上述のとおり歩留りを安定させることができる。
また、側壁部26がその上下中央部に薄肉部26dを有する構成は、形状的な面においても側壁部26を屈曲変形させやすくし、シールゴム10の撓み量の増大に寄与する。なお、側壁部26の一部を薄肉部とする形状は、本実施形態に限定されず、例えば、外側壁面26bを、幅方向内側を凸側とする曲面とし、側壁部26における外側を上下方向の位置により左右方向に変位する側として、上下両端から中央部にかけて徐々に壁厚を薄くした構成等であってもよい。
また、本実施形態に係るシールゴム10においては、図5に示すように、横断面視において、接触側筒状部21に対する側壁部26の付根部分、つまり脚部27の上側の付根部分の中心部に位置する点P1と、シールゴム10に対する取付金具16の当接部分の上端の位置である点P2とを結ぶ直線L1の幅方向外側に、側壁部26の大部分が位置している。このような構造も、シールゴム10の撓み変形において点P1が力点、点P2が支点となり、左右の側壁部26を幅方向外側に屈曲(座屈)させて安定した撓み変形を得ることを可能とする要因となる。
また、本実施形態に係るスラッシュ成形用シール方法は、シールゴム10の左右一対の脚部27の下部間に隔壁縁端部11cを挟持させた状態で、シールゴム10をリザーバタンク3に取り付け、上段空洞20aの下方に、隔壁部33を隔てて下段空洞20bを形成するものである。このようなシール方法によれば、シール部7において上下二段の空洞を形成することができ、上述したような段階的な(二段階の)撓み変形を得ることができる。これにより、上述のとおり表皮型2とリザーバタンク3との間の隙間の変化に追従するために十分な撓み量を得ることができ、パウダー材料4の外部への漏れを防止することができ、成形品の品質の向上および歩留りの向上を図ることができる。
また、本実施形態に係るシールゴム10は、図11(a)に示すように、一層目の部分、つまり接触側筒状部21のみが撓み領域となるように用いることができる。図11(a)に示す例では、シールゴム10は、隔壁部33の下面33bに隔壁縁端部11cの上端面11fを接触ないし近接させるように、隔壁縁端部11cを下側から差し込ませた状態で、取付金具16を介して隔壁縁端部11cに固定されている。
このようなシールゴム10の取付態様においては、下段空洞20b内に隔壁縁端部11cの上端部が進入した状態となる。隔壁縁端部11cの上端面11fが隔壁部33の下面33bに接触している場合、隔壁縁端部11cによって下段空洞20bの左右中間部が埋まり、下段空洞20bが左右に分断されることになる。そして、上下方向について、シールゴム10の天面部31の上面31aから、隔壁縁端部11cの上端面11fが接触ないし近接した隔壁部33の下面33bまでの領域G2が、この取付態様におけるシールゴム10の撓み領域となる。
このようなシールゴム10の取付態様におけるシールゴム10の変形態様は次のとおりである。なお、上述したシールゴム10の変形態様の場合と同様に、シールゴム10に作用する荷重の方向は鉛直方向とする。
図11(b)に示すように、シールゴム10に荷重が作用することで、接触側筒状部21を構成する左右の側面部32が、それぞれ幅方向外側に膨出するように変形を開始する。ここで、隔壁部33の下側への膨出変形は、隔壁部33の直下に位置する隔壁縁端部11cにより規制される。最終的には、一層目の部分のみ撓み変形し、一層目の部分のみが上下方向に圧縮されひしゃげた状態となる。接触側筒状部21の左右の側面部32は、幅方向外側に折れ曲がり、内側の壁面32dの下部同士を互いに近接させている。
そして、図11(b)に示すように、シールゴム10の撓み変形が完了した状態において、二点鎖線で示すシールゴム10の自然状態からの上面31aの上下方向の移動量J2が、このシールゴム10の取付態様における撓み量となる。このシールゴム10の撓み量は、図5に示すようなシールゴム10の取付態様との比較において略半分の大きさとなる。
このように、本実施形態に係るシールゴム10によれば、隔壁縁端部11cに対する取付態様によって、シールゴム10の撓み量を調整することが可能となる。図11(a)に示すようなシールゴム10の取付態様は、例えば表皮型2の熱変形が比較的小さく、表皮型2の変形による表皮型2とリザーバタンク3との間の隙間の変化に追従する範囲が比較的狭い場合に用いられる。この取付態様によれば、シールゴム10における一層目だけの安定した撓み変形を得ながら、表皮型2の変形に追従してシール性を保持することができる。
次に、本実施形態に係るシールゴム10の変形例について、図12、図13および図14を用いて説明する。この変形例のシールゴム10は、さらなる歩留りの向上を目的とした構成を備えたものである。
図12に示すように、この変形例のシールゴム10において、シールゴム10の長手方向(延設方向)の一部に、シールゴム10をその長手方向について屈曲または湾曲させるために少なくとも脚部27の一部を欠切した切欠部50を有する。
図12に示す例では、切欠部50は、各脚部27において、シールゴム10の下側を底辺側とする略二等辺三角形状に沿うように、下側を開放側として、上下方向について脚部27の全体を含む範囲に形成されている。詳細には、切欠部50は、シールゴム10の長手方向両側の斜辺部51と、両斜辺部51間の辺部であってシールゴム10の長手方向に沿う上辺部52とを有する。また、左右の脚部27において、切欠部50は、シールゴム10の側面視で整合するように、つまり共通の位置において互いに同じ寸法で形成されている。
リザーバタンク3は、表皮型2が有する3次元的な凹凸形状に沿うように、隔壁縁端部11cについて3次元的な凹凸形状を有する。そして、隔壁縁端部11cの形状を、表皮型2における成形面部2bの形状、つまり製品形状に沿わせようとするほど、隔壁縁端部11cにおいてR(曲率半径)が小さい形状部分(小R部)が生じる。つまり、隔壁縁端部11cを、表皮材15の形状に対応した成形面部2bの微細な凹凸形状に近付けようとするほど、成形面部2bに追従させるために隔壁縁端部11cにおいてR部の曲率半径を小さくする必要が生じる。
そこで、隔壁縁端部11cの小R部に対応してシールゴム10を曲げるために、切欠部50が用いられる。すなわち、この変形例のシール方法においては、シールゴム10の隔壁縁端部11cへの取付けに際し、シールゴム10の長手方向の一部に切欠部50を形成することで、シールゴム10の長手方向についての隔壁縁端部11cの小R部に追従させるように、シールゴム10をその長手方向について屈曲させることが行われる。したがって、切欠部50は、シールゴム10の長手方向について、隔壁縁端部11cの小R形状部に対応するように一または複数箇所に形成される。
具体的には、例えば、図13(a)に、隔壁縁端部11cにおいて、上下方向の凹凸形状として、略直角形状のR形状部61が存在する場合におけるシールゴム10の取付態様を示す。この場合、シールゴム10の長手方向について、切欠部50がR形状部61に対向するとともに、切欠部50の両側の部分10a,10aが、R形状部61をなす辺部61a,61aに沿うように、シールゴム10が屈曲した状態で隔壁縁端部11cに取り付けられる。
図13(a)に示すシールゴム10の取付態様において、切欠部50は、シールゴム10においてその屈曲形状の内側(内周側)に位置し、シールゴム10の上側を凸側とする屈曲を許容している。つまり、切欠部50により、シールゴム10を直角状に屈曲させる際の屈曲内側におけるゴム面部のだぶつきが解消され、R形状部61を含む隔壁縁端部11cの角部分に対し、シールゴム10は、その横断面形状を一定の形状に保持した状態で取り付けられる。
図13(a)に示すシールゴム10の取付状態において、切欠部50は、シールゴム10の屈曲により、両側の斜辺部51同士を近付け、圧縮変形した状態となっている。図13(a)に示すように、切欠部50によりR形状部61とシールゴム10との間に隙間62が生じた場合は、その隙間62にシリコーンゴム等の充填剤を充填することで穴埋めが行われ、シールゴム10による密閉性が確保される。
また、図13(b)には、隔壁縁端部11cにおいて、上下方向の凹凸形状として、略直角形凹状のR形状部63が存在する場合におけるシールゴム10の取付態様を示す。この場合、シールゴム10の長手方向について、切欠部50がR形状部63に対向するとともに、切欠部50の両側の部分10a,10aが、R形状部63をなす辺部63a,63aに沿うように、シールゴム10が屈曲した状態で隔壁縁端部11cに取り付けられる。
図13(b)に示すシールゴム10の取付態様において、切欠部50は、シールゴム10においてその屈曲形状の外側(外周側)に位置し、シールゴム10の上側を凹側とする屈曲を許容している。つまり、切欠部50により、シールゴム10を直角状に屈曲させる際の屈曲外側におけるゴム面部の引張りが解消され、R形状部63を含む隔壁縁端部11cの凹状の角部分に対し、シールゴム10は、その横断面形状を一定の形状に保持した状態で取り付けられる。
図13(b)に示すシールゴム10の取付状態において、切欠部50は、シールゴム10の屈曲により、両側の斜辺部51同士を離間させ、伸長変形した状態となっている。図13(b)に示すように、切欠部50によりR形状部63とシールゴム10との間に隙間64が生じた場合は、上述した場合と同様、シリコーンゴム等の充填剤による穴埋めが行われる。
また、図13(c)には、隔壁縁端部11cにおいて、水平方向の(平面視での)凹凸形状として、略直角形状のR形状部65が存在する場合におけるシールゴム10の取付態様を示す。この場合、シールゴム10の長手方向について、切欠部50がR形状部65の部分に位置するとともに、切欠部50の両側の部分10a,10aが、R形状部65をなす辺部65a,65aに沿うように、シールゴム10が屈曲した状態で隔壁縁端部11cに取り付けられる。
図13(c)に示すシールゴム10の取付態様において、切欠部50は、シールゴム10においてその屈曲形状の内側(内周側)および外側(外周側)に位置し、シールゴム10の平面視における横方向の屈曲を許容している。つまり、切欠部50により、シールゴム10を平面視で直角状に屈曲させる際の屈曲内側におけるゴム面部のだぶつき、および屈曲外側におけるゴム面部の引張りが解消され、R形状部65を含む隔壁縁端部11cの角部分に対し、シールゴム10は、その横断面形状を一定の形状に保持した状態で取り付けられる。
図13(c)に示すシールゴム10の取付状態において、切欠部50のうち、内側の切欠部50Aは、シールゴム10の屈曲により、両側の斜辺部51同士を近付け、圧縮変形した状態となっており、外側の切欠部50Bは、シールゴム10の屈曲により、両側の斜辺部51同士を離間させ、伸長変形した状態となっている。なお、図13(c)に示す場合においても、切欠部50によりR形状部65とシールゴム10との間に生じた隙間は、シリコーンゴム等の充填剤により穴埋めされる。
以上のように、シールゴム10に切欠部50を設けることで、シールゴム10の取付部位としての隔壁縁端部11cの小R部に対応することが可能となる。これにより、スラッシュ成形における歩留りを向上することができる。
すなわち、隔壁縁端部11cの凹凸形状を製品形状に近付けた場合に小R部となる部分に対して、ゴム面部のだぶつきや引張りを生じさせることなくシールゴム10を適正に装着するためには、隔壁縁端部11cの形状自体が、その小R部を含むように曲率半径Rを大きくした形状とされる。つまり、隔壁縁端部11cの配設経路、言い換えるとシールゴム10によるシールラインを迂回させることで、そのシールラインの内側(成形面部2b側)の領域が、小R部となる領域を含みながら曲率半径Rが大きくなるように拡大される。
このようにシール部7によるシールラインを迂回させると、シール部7によるシール位置(隔壁縁端部11cの位置)が、製品形状の端末位置(外形位置)から外側に離れることになる。そして、シール部7によるシール位置が製品形状の端末位置から離れた分、パウダー材料4が付着・溶融する領域(パウダー溶融領域)は、その外周縁部において広がることになる。一方で、スラッシュ成形により得られた成形品において、製品形状の外形に沿う所定の切除線より外側の部分は、後のトリミング工程において切除される部分である。このため、上記のとおりパウダー溶融領域がその外周縁部において広がることは、成形品においてトリミング工程により切除される部分の面積を大きくすることとなり、結果として、歩留りの低下に繋がる。
そこで、上述のとおりシールゴム10に切欠部50を設けることにより、シールゴム10の取付対象である隔壁縁端部11cの形状について、対応可能な曲率半径Rの大きさを小さくすることが可能となる。これにより、シールゴム10のシールライン(配設経路)を、製品形状に追従させ、製品形状の端末位置に可及的に近付けることが可能となる。したがって、成形品においてトリミング工程により切除される余分な部分の面積を小さくすることができ、結果として、歩留りを向上させることができる。これにより、成形品の原価を低減することができる。
具体的な数値としては、シールゴム10に切欠部50を設けない場合に対応可能な曲率半径は、図13(a)、(b)に示すような隔壁縁端部11cの上下方向の凹凸形状(以下「面凹凸」とする。)における曲率半径Rについては、R>50(mm)であり、図13(c)に示すような隔壁縁端部11cの平面視形状(以下「ライン変曲」)における曲率半径Rについては、R>80(mm)である。これに対し、シールゴム10に切欠部50を設けることにより、対応可能な曲率半径Rは、面凹凸についてはR>10(mm)となり、ライン変曲についてはR>4(mm)となる。
このようにシールゴム10を小R部に対応して配設するための切欠部50の形状や大きさ(切欠部50の形成範囲)は、特に限定されるものではなく、隔壁縁端部11cにおいて小R部をなす部分の形状等に応じて適宜変更可能である。具体的には、切欠部50としては、例えば、図14(a)に示すように、四角形状に沿うように形成された切欠部50Xであってもよく、また、図14(b)に示すように、半円形状(半円弧状)に沿うように形成された切欠部50Y等であってもよい。
図14(a)に示す矩形状の切欠部50Xは、下側を開放側とし、シールゴム10の長手方向両側の縦辺部53と、両縦辺部53間の辺部であってシールゴム10の長手方向に沿う横辺部54とを有する。また、図14(b)に示す半円状の切欠部50Yは、下側を開放側とし、半円弧状の弧状辺部55を有する。これらの切欠部50X,50Yは、いずれも、左右の脚部27において、シールゴム10の側面視で整合するように形成されている。
なお、本実施形態に係る切欠部50は、いずれも左右の脚部27の両方に形成されているが、切欠部50により対応する隔壁縁端部11cの形状部分によっては、左右の脚部27のいずれか一方のみに切欠部50を形成してもよい。つまり、切欠部50は、左右の脚部27の少なくともいずれが一方の脚部27に形成されればよい。また、本実施形態に係る切欠部50は、上下方向についてシールゴム10の下端から隔壁部33の一部に達する範囲で形成されているが、脚部27の部分のみに形成されてもよく、また、接触側筒状部21の側面部32に達する範囲で形成されてもよい。つまり、切欠部50は、少なくとも脚部27の一部を欠切した態様で形成されたものであればよい。
また、本実施形態に係るシールゴム10においては、天面部31が比較的肉厚が厚い部分として形成されていることから、切欠部50を設けた構成において、例えば図8に示すシールゴム110のように湾曲状の上端部形状を有する構成と比べて、切欠部50の形成部分の剛性を容易に確保することができる。つまり、天面部31を比較的肉厚が厚い部分として形成することにより、シールゴム10の剛性の確保が容易となることから、切欠部50の形状や大きさについて高い自由度を得ることができ、切欠部50を形成するためのシールゴム10の加工が容易となる。
以上のように実施形態について説明した本発明に係るスラッシュ成形のシールに関する技術は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
以下では、本発明の実施例について説明する。本実施例では、上述した実施形態に係るシールゴム10の各部の寸法について、次のような寸法を採用した。すなわち、撓み領域の寸法(図5、領域G1参照)を20mmとし、隔壁部33の幅方向中央部の厚さ寸法(図7、寸法D4参照)を1.48mmとし、側面部32の上下方向中央部の厚さ寸法(図7、寸法D3参照)を1.8mmとし、天面部31の厚さ寸法(図7、寸法D1参照)を4mmとした。また、シールゴム10と隔壁縁端部11cとのオーバーラップ寸法(図7、寸法K1参照)を6mmとした。なお、このオーバーラップ寸法は、本実施例では、上下方向について挟持片部24の下端面24aから側壁部26の内壁面26aの下端までの寸法に相当する。また、シールゴム10のゴム硬度は40度とし、シールゴム10の長さを50mmとした。
このような寸法を有する本実施例に係るシールゴム10に対して、上下方向に圧縮させるように荷重を作用させた。本実施例では、図9を用いて説明したシールゴム10の変形態様の場合と同様に、シールゴム10の上面31aが接触する表皮型2の成形面2aを水平面とし、シールゴム10に作用する荷重の方向を鉛直方向として、シールゴム10を上下方向に圧縮変形させた。
図15に、本実施例に係るシールゴムの撓み量と荷重の関係を表したグラフを示す。図15に示すグラフにおいて、横軸は、シールゴム10の撓み量に相当する変位(mm)を示し、縦軸は、シールゴム10に作用する荷重、つまりシールゴム10の弾性による反力としての荷重(N)を示す。
図15に示すグラフからわかるように、シールゴム10の撓み量が0mmから約10mmに達するまでの間は、荷重が0Nから約30Nに達するまで比較的緩やかに上昇している。そして、シールゴム10の撓み量が10mmに達する前あたりから、撓み量の増加にともなう荷重の上昇度合が比較的急となり、撓み量が12mmの時点で、荷重が72Nとなっている。
荷重の大きさについては、表皮型2およびリザーバタンク3のクランプ機構6によるクランプ力との関係から、クランプ力が過大とならないように設定する必要がある。かかる観点から、本実施例に係るシールゴム10について、長さ50mm当たりの荷重は、50N以下であることが好ましい。したがって、本実施例に係るシールゴム10によれば、少なくとも11mmの撓み量を得ることができる。本実施例では、撓み量が11mmにおける荷重は45.8Nである。
本実施例から、シールゴム10によれば、撓み量について広い範囲(0〜約10mmの範囲)で荷重の急激な上昇を抑えることができ、シールゴム10の全体としての荷重を抑えながら、十分な撓み量を得ることができることが実証された。シールゴム10における荷重の抑制作用の構造的要因として、接触側筒状部21の側面部32および中間空間形成部23の側壁部26が、それぞれ薄肉部32b,26dを有することがある。
また、本実施例に係るシールゴム10によれば、水平面からの傾斜角度が15°程度までであれば、シールゴム10の変形態様について左右への偏りが抑制でき安定した撓み変形が得られることが、実験結果として得られている。
また、本実施例に係るシールゴム10によれば、その特性上、上下方向について1mm撓んだ状態で、パウダー材料4の漏れを防止するためのシール性が得られる。したがって、シールゴム10における全体の撓み量を11mmとした場合、そのうちの少なくとも1mmは、シール性を得るための変形分として用いられ、残りの10mmが、表皮型2の変形にともなう隙間120(図8参照)の変化に追従するための撓み量の範囲(変形代)として用いられる。つまりこの場合、表皮型2とリザーバタンク3との間の隙間120の変化を吸収するため、最大10mmの撓み量が得られることになる。