以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は液封入式防振装置1の平面図である。図2は液封入式防振装置1の正面図である。図1及び図2に示すように液封入式防振装置1は、円筒状に形成された内筒10と、内筒10の外周側を同心状に取り囲む円筒状の外筒20と、外筒20と内筒10との間に介設される防振基体40とを主に備えている。以下、本実施の形態では、内筒10の軸心O方向を軸方向と称し、内筒10の軸心Oに垂直な方向を径方向(軸直角方向)と称して、内筒10の周方向を単に周方向と称して説明する。
図3は図1のIII−III線における液封入式防振装置1の断面図である。図4は図2のIV−IV線における液封入式防振装置1の断面図である。図3に示すように、内筒10は、金属や合成樹脂等の剛性材料から構成される部材である。内筒10は、円筒状に形成された筒部11と、筒部11の軸方向中央から径方向外側に向かって略球状に膨出する第1膨出部12と、筒部11の軸方向両端側の外周面から径方向外側に向かって膨出する第2膨出部13とを備える。
外筒20は、円筒状に形成された金属材料から構成される筒部21と、筒部21の内周面に加硫接着されると共にゴム状弾性体から構成されるゴム膜22とを備える。外筒20の内周面には、円筒状の中間筒30が嵌合する。外筒20の軸方向端部を縮径させることで、外筒20の内周面に嵌合した中間筒30の軸方向の移動が規制され、中間筒30が外筒20に固定される。
中間筒30は、外筒20の内周面に嵌合する一対の円環状の嵌合周壁31と、一対の嵌合周壁31同士を連結する連結壁32とを備える。嵌合周壁31は、金属や合成樹脂等の剛性材料から構成される。一対の嵌合周壁31は、外筒20の内周面の軸方向両端側にそれぞれ外周面が嵌合される。連結壁32は、嵌合周壁31よりも径方向内側に位置する。なお、中間筒30は外筒20に固定される部材なので、中間筒30を外筒20の一部としても良い。
防振基体40は、内筒10と中間筒30とを連結すると共にゴム状弾性体から構成される部材である。防振基体40は、内筒10及び中間筒30の軸方向両側に円環状に形成される一対の径方向隔壁41と、一対の径方向隔壁41間に形成されて第1膨出部12を覆うゴム膜部42と、径方向隔壁41間であって内筒10と中間筒30との間に形成される軸方向隔壁43とを備える。
径方向隔壁41、ゴム膜部42及び軸方向隔壁43は一体に加硫成形される。径方向隔壁41、ゴム膜部42及び軸方向隔壁43の内周は内筒10(筒部11及び第1膨出部12)の外周面に加硫接着される。
一対の径方向隔壁41の外周は、一対の嵌合周壁31の内周にそれぞれ加硫接着される。一対の径方向隔壁41によって内筒10と外筒20との間の軸方向両端が閉鎖されることにより、液室71,72(図4参照)が形成される。液室71,72にはエチレングリコール等の不凍液(液体)が封入される。
軸方向隔壁43の外周面は、連結壁32の内周面に加硫接着される。また、連結壁32の外周面の軸方向両側には、径方向隔壁41や軸方向隔壁43と一体に加硫成形される一対の弾性壁部45が加硫接着される。弾性壁部45の径方向外側の外面は、外筒20のゴム膜22の内周面に接触する。
図3及び図4に示すように、内筒10を挟んで相対する位置に一対の連結壁32及び一対の軸方向隔壁43が対称に設けられる。これにより、液室71,72は、軸方向隔壁43により周方向に区画される。そして、内筒10を挟んで相対する略対称な2つの液室71,72が形成される。なお、軸心Oと直交すると共に軸方向隔壁43が延設される方向(図4上下方向)をX方向とし、軸心O及びX方向と直交する方向(図4左右方向)をY方向とする。
液封入式防振装置1には、外筒20に対する内筒10の相対移動を規制する2つのストッパ部材50が液室71,72内にそれぞれ配置され、液室71,72を連通するオリフィス73が設けられる。一対のストッパ部材50は、内筒10を挟んで互いに対向する。
図5及び図6を参照してストッパ部材50について説明する。図5は、ストッパ部材50の斜視図である。図6は、ストッパ部材50及び加硫金型80の断面図である。なお、図6にはストッパ部材50の径方向断面が図示される。図5に示すように、ストッパ部材50は、略半円筒状の部材であり、自身の周方向中央および軸方向中央に関して対称に形成されている。
ストッパ部材50の外周面は、周方向中央に設けられる円弧形状の円弧面部50aと、円弧面部50aの周方向両側にそれぞれ連なる凹面部50bと、凹面部50bの周方向先端側に形成される溝部50cとを備える。円弧面部50aは、外筒20の内周面に面接触する部位である(図4参照)。凹面部50bは、円弧面部50aに対して径方向内側に凹んだ部位である。溝部50cは、凹面部50bの一部の軸方向中央を径方向に凹ませた部位であり、ストッパ部材50の外周面の周方向先端まで設けられる。
ストッパ部材50は、ストッパ部材50の周方向端部にそれぞれ設けられてY方向に突出する一対の接触部51と、ストッパ部材50の周方向端部にそれぞれ設けられてX方向に突出する一対の規制部52とを備える。接触部51と規制部52とは、互いに隣り合う面が直角に形成される。
ストッパ部材50は、金属や合成樹脂等から構成されて所定の剛性を有する剛体部53に、ゴム状弾性体から構成される弾性部60を加硫接着して形成される。剛体部53の略全面が弾性部60で覆われ、接触部51及び規制部52の一部で剛体部53が外部に露出している。この露出した部分が、弾性部60の加硫成形時に加硫金型80(図6参照)に固定される。
図6に示すように、剛体部53は、ストッパ部材50の外形を主に規定する略半円筒状の部材である。剛体部53は、剛体部53の内周面である内面54と、内面54に連なる外面55と、内面54及び外面55に開口する貫通孔56とを備える。
内面54は、内面54の軸方向中央および周方向中央(貫通孔56)に向かって凹む凹部54aを備える。凹部54aは、周方向の両側に対して中央をY方向に凹ませた部位である。凹部54aは、内面54の軸方向の略全体に亘って設けられる。
外面55は、内面54以外の剛体部53の外形を規定する面である。即ち、外面55は、剛体部53の外周面と、剛体部53の軸方向端面とから構成される。貫通孔56は、剛体部53の周方向中央および軸方向中央を貫通する部分である。即ち、貫通孔56は、剛体部53をY方向に貫通して形成される。
弾性部60は、剛体部53の表面(内面54及び外面55)を覆うゴム状弾性体である。弾性部60は、凹部54aに加硫接着される弾性ストッパ部61と、貫通孔56の内部に充填される充填部62と、弾性ストッパ部61及び充填部62に連なる薄い膜状のゴム膜部63とを備える。弾性ストッパ部61、充填部62及びゴム膜部63は、一体に加硫成形されて互いに連なる。
弾性ストッパ部61は、ストッパ部材50の内周面のうちで径方向内側へ最も張り出す部分である。そのため、外筒20(図3,4参照)に対して内筒10(図3,4参照)がY方向に相対移動するとき、ストッパ部材50のうち弾性ストッパ部61が内筒10と先に接触する。
また、凹部54aに弾性ストッパ部61が設けられるので、弾性ストッパ部61の厚さ(Y方向寸法)を確保できる。この弾性ストッパ部61の厚さによって、内筒10に押されたときの弾性ストッパ部61の弾性力が異なり、ストッパ部材50の荷重−たわみ特性が変わる。
ストッパ部材50は、加硫金型80に剛体部53をセットした状態で弾性部60を加硫成形することで製造される。加硫金型80は、上型81と、上型81が重ねられる下型82とを備える。上型81と下型82との間には、ストッパ部材50の外形形状と同一の空間であるキャビティ83が設けられる。上型81の中央には、キャビティ83に連通する注入孔84が設けられる。注入孔84は、その先端(キャビティ83との境界部分)に通路断面積が狭いゲート85を備える。
ストッパ部材50を製造するには、まず、キャビティ83内に剛体部53を配置し固定する。次いで、注入孔84からキャビティ83内にゴム状弾性体の成形材料を注入する。剛体部53が配置されたキャビティ83内に成形材料を充填した後、成形材料を加硫成形することで、弾性部60が加硫成形されつつ、剛体部53に弾性部60が加硫接着される。最後に、上型81と下型82とを開き、通路断面積が狭いゲート85の位置でゴム状弾性体を切り離すことで、ストッパ部材50が得られる。
この切り離した部分が、加硫成形時に注入孔84が接続されていたゴム状弾性体の注入跡部64である。注入孔84が剛体部53の外面55側に位置するので、弾性部60には剛体部53の外面55側に注入跡部64が設けられる。貫通孔56の軸心上に注入孔84が位置する(充填部62の外筒20側の端面に注入跡部64が位置する)ので、成形材料の充填量が多くなる弾性ストッパ部61及び充填部62部分のキャビティ83に成形材料を充填し易くできる。その結果、弾性部60の形成を容易にできる。
図3及び図4に戻って、液封入式防振装置1の組立方法について説明する。まず金型(図示せず)に内筒10と中間筒30とをセットし、防振基体40を加硫成形すると共に、内筒10及び中間筒30に防振基体40を加硫接着する。次いで、その加硫成形品の一対の連結壁32の間に一対のストッパ部材50をそれぞれ嵌める。ストッパ部材50を嵌めた加硫成形品および外筒20を液体に沈め、中間筒30を外筒20の内周面に嵌める。最後に、外筒20を絞り加工し、外筒20の軸方向端部をかしめて外筒20に中間筒30を固定することで、液封入式防振装置1が得られる。なお、液室71,72に液体を充填する方法は、ストッパ部材50を嵌めた加硫成形品および外筒20を液体に沈めて組み立てる場合に限らない。例えば、外筒20に穴をあけ、その穴から液体を注入した後に、穴をブラインドリベット等で塞ぐことで、液室71,72に液体を充填しても良い。
液室71,72内に配置されたストッパ部材50について説明する。一対のストッパ部材50は、内筒10と間隔をあけて液室71,72内にそれぞれ配置される。ストッパ部材50の一対の接触部51を一対の連結壁32の内面にそれぞれ接触させ、一対の規制部52を一対の連結壁32の周方向端部に接触させ、円弧面部50aを外筒20の内周面に接触させることで、ストッパ部材50が中間筒30及び外筒20に固定される。
詳しくは、一対の接触部51が一対の連結壁32にそれぞれ接触することで、連結壁32に対してX方向にストッパ部材50が位置決めされる。そして、連結壁32の周方向端部に規制部52が接触しつつ、円弧面部50aが外筒20の外周面に接触することで、連結壁32に対してY方向にストッパ部材50が位置決めされる。このように、ストッパ部材50が中間筒30の一対の連結壁32の間に嵌められて、ストッパ部材50が中間筒30及び外筒20に固定される。
なお、規制部52は、内筒10側へのストッパ部材50の移動を規制する部位であれば、連結壁32の周方向端部に接触する部位でなくても良い。例えば、規制部52を省略する代わりに、接触部51の先端を軸方向隔壁43に接触するように形成し、その接触部51の先端を規制部としても良い。この場合、軸方向隔壁43の変形を規制部(接触部51の先端)により規制できるので、外筒20に対する内筒10の相対移動を規制部により調整できる。
これに対して本実施の形態では、規制部52が連結壁32の周方向端部に接触する部位なので、ストッパ部材50を軸方向隔壁43に接触させずとも、ストッパ部材50の内筒10側への移動を規制部52及び連結壁32により規制できる。そのため、ストッパ部材50(接触部51)を軸方向隔壁43と非接触にできる。よって、ストッパ部材50を位置決めしつつ、ストッパ部材50と軸方向隔壁43との非接触により軸方向隔壁43の変形の自由度を確保できる。
ストッパ部材50の凹面部50bにより、外筒20とストッパ部材50との間の空間を大きくできるので、液室71,72を大きくできる。ゴム膜部63の膜厚は、連結壁32の本体部32aよりも薄く形成される。ストッパ部材50の接触部51及び規制部52にゴム膜部63が設けられているので、接触部51及び規制部52における剛体部53と連結壁32との間で圧縮される弾性部60を薄くできる。これにより、連結壁32に対してストッパ部材50を動き難くできる。
一対の接触部51を一対の連結壁32の間にY方向に挿入して、ストッパ部材50を連結壁32の間に嵌めるので、挿入作業性を確保するため、一対の接触部51の連結壁32に接触する面がY方向に平坦に形成されることが好ましい。また、接触部51と連結壁32との接触面積を確保して、連結壁32に対してストッパ部材50を動き難くするため、接触部51が接触する連結壁32の内面もY方向に平坦に形成されることが好ましい。
但し、連結壁32は、円環状の嵌合周壁31を連結するものなので、連結壁32を形成し易くするため、円弧状に形成されることが好ましい。そこで、本実施の形態における連結壁32は、剛性材料から構成される嵌合周壁31と一体成形される本体部32aと、本体部32aの内周面に加硫接着されるゴム状弾性体から構成されるゴム部32bとを備える。
本体部32aの径方向断面は、嵌合周壁31の軸心(内筒10の軸心O)を中心とした円弧状に形成される。ゴム部32bは、軸方向隔壁43と一体成形され、接触部51側の面がY方向に平坦に形成される。よって、円環状の嵌合周壁31を連結する連結壁32を本体部32aにより形成し易くしつつ、ゴム部32bによる連結壁32と接触部51との接触面積の確保によって連結壁32に対してストッパ部材50を動き難くできる。
一対のストッパ部材50の対向方向(X方向)において、軸方向隔壁43の寸法L1が連結壁32の寸法L2の1/2以下に設定される。これにより、軸方向隔壁43の両側における連結壁32(ゴム部32b)のX方向の寸法を確保できる。さらに、接触部51と軸方向隔壁43とを接触させずに、接触部51のX方向の寸法を確保できる。その結果、連結壁32と接触部51との接触面積を確保できるので、連結壁32に対してストッパ部材50をより動き難くできる。
液封入式防振装置1は、Y方向の荷重(以下「主入力荷重」と称す)が入力されると、軸方向隔壁43が弾性変形して内筒10と外筒20とが相対変位する。ストッパ部材50の内面54と内筒10との間に弾性ストッパ部61が位置し、無荷重状態における内筒10と弾性ストッパ部61との距離がストッパ部材50のうちで最短となる。そのため、外筒20に対して内筒10がY方向に相対移動するとき、ストッパ部材50のうち弾性ストッパ部61が内筒10と先に接触する。弾性ストッパ部61が所定量圧縮された後に、内面54に加硫接着されたゴム膜部63が内筒10に接触し、ゴム膜部63が僅かに圧縮されて、内筒10が外筒20に最も近づく。このように、外筒20に対する内筒10の相対変位がストッパ部材50によって規制される。
軸心Oとの直交位置に貫通孔56及び充填部62が配置されつつ、貫通孔56及び充填部62が軸方向隔壁43と垂直に配置される。これにより、外筒20に対する内筒10の軸直角方向(径方向)への相対移動時に、内筒10の移動を規制した弾性ストッパ部61が内筒10から受ける軸直角方向の荷重を充填部62により吸収できる。その結果、貫通孔56(充填部62)の大きさに応じてストッパ部材50の荷重−たわみ特性を変更できる。
貫通孔56へ向かって凹む凹部54aに弾性ストッパ部61が加硫接着されるので、内筒10からの荷重による弾性ストッパ部61の変形を、凹部54aに沿って貫通孔56内の充填部62に伝え易くできる。その結果、弾性ストッパ部61の変形を凹部54aに沿って充填部62で吸収し易くできるので、貫通孔56(充填部62)の大きさに応じたストッパ部材50の荷重−たわみ特性の変化を顕著にできる。
ここで、外筒20に対する内筒10の径方向への相対移動時に内筒10からの荷重を受ける弾性ストッパ部61(剛体部53の内面54側の弾性部60)に注入跡部64が設けられる場合について説明する。注入跡部64を内面54側に設けるには、加硫成形時にゴム状弾性体の成形材料を加硫金型80内に充填し易くするため、薄いゴム膜部63でなく弾性ストッパ部61に注入孔84を連結する(注入跡部64を設ける)ことが好ましい。しかし、弾性ストッパ部61(内面54側の弾性部60)に注入跡部64があると、内筒10と弾性ストッパ部61との接触の繰り返しによって、注入跡部64を起点に弾性部60に亀裂や破断が生じるおそれがある。
これに対して本実施の形態では、注入跡部64が剛体部53の外面55側に位置するので、注入跡部64やその付近が内筒10との接触を繰り返すことがない。そのため、弾性部60の耐久性を確保できる。さらに、弾性部60の加硫成形時には、注入跡部64の位置から加硫金型内に注入されたゴム状弾性体の成形材料を、剛体部53の外面55側から貫通孔56を通って内面54側に充填し易くできる。よって、弾性部60の耐久性を確保しつつ、弾性部60の形成を容易にできる。
また、外面55側の薄いゴム膜部63に注入跡部64を形成しても良い。この場合には、注入孔84の先端と剛体部53との間を所定距離あけて成形材料の充填をし易くすることが好ましい。そうすると、ゴム膜部63から注入跡部64が外筒20側に突出することがある。これにより、外筒20と剛体部53との間で注入跡部64が圧縮され、注入跡部64に負荷が集中して、注入跡部64を起点に弾性部60に亀裂が生じたり、ストッパ部材50の荷重−たわみ特性にばらつきが生じたりする。
本実施の形態では、充填部62の外筒20側の端面に注入跡部64が位置するので、ゴム膜部63よりも外筒20側に注入跡部64が突出しないようにできる。たとえゴム膜部63よりも外筒20側に注入跡部64が突出したとしても、剛体部53と外筒20との間で注入跡部64が圧縮されることを防止できる。これにより、注入跡部64への負荷集中によって、注入跡部64を起点に弾性部60に亀裂が生じたり、ストッパ部材50の荷重−たわみ特性にばらつきが生じたりすることを抑制できる。その結果、弾性部60の耐久性を向上できると共に、ストッパ部材50の荷重−たわみ特性を安定化できる。
外筒20に対する相対移動時には、液室71,72を区画する軸方向隔壁43が変形するので、液室71,72に液圧変動が生じ、液室71,72内の液体がオリフィス73を通って流れる。オリフィス73によって液共振が生じ、振動が減衰される。オリフィス73による減衰特性は、オリフィス73の形状や流路断面積、長さ等で変化する。
オリフィス73は、外筒20の内周面と連結壁32の外周面との間に形成される第1オリフィス74と、外筒20の内周面と一対のストッパ部材50の周方向端部との間にそれぞれ形成される一対の第2オリフィス75とを備える。第1オリフィス74と第2オリフィス75とは互いに連通する。なお、第1オリフィス74の軸方向両側の壁面は、一対の弾性壁部45により形成される。第2オリフィス75の軸方向両側の壁面は、径方向隔壁41や軸方向隔壁43の一部により形成される。
ここで、連結壁32と外筒20との間であって一対の弾性壁部45の間にストッパ部材の周方向端部を嵌めることで、中間筒30にストッパ部材を固定する場合について説明する。この場合には、連結壁32と外筒20との間の限られた空間内にストッパ部材の一部が存在するため、連結壁32と外筒20との間の第1オリフィス74の形状や流路断面積に制約が生じる。また、連結壁32と外筒20との間のストッパ部材に第1オリフィス74を形成する溝などを設ける必要があり、ストッパ部材の形状が複雑になる。
これに対して本実施の形態では、ストッパ部材50の一対の接触部51を一対の連結壁32に接触させつつ、規制部52を連結壁32の周方向端部に接触させることで、中間筒30にストッパ部材50を固定できる。このようにストッパ部材50の位置決めのために、連結壁32と外筒20との間にストッパ部材50の一部を設けないようにできる。その結果、連結壁32と外筒20との間の第1オリフィス74の形状や流路断面積などの自由度を向上できる。さらに、ストッパ部材50に第1オリフィス74を形成する溝を設ける必要がないので、ストッパ部材50の形状をシンプルにできる。
また、連結壁32と外筒20との間にストッパ部材50がないので、連結壁32の外周面に設けられる弾性壁部45でオリフィス73の壁面の一部を形成できる。これにより、連結壁32の形状や寸法などを変更することなく、弾性壁部45の形状や寸法などを変更することで、オリフィス73の形状や流路断面積を変更できる。よって、連結壁32を流用しつつオリフィス73の形状や流路断面積などの自由度を向上できる。
ストッパ部材50の外周面の周方向先端まで溝部50c(図5参照)が設けられているので、ストッパ部材50の周方向端部と外筒20の内周面との間に形成される第2オリフィス75に溝部50cが連なる。これにより、液室71,72内を流れる液体が溝部50cを通って第2オリフィス75へ流れるので、液室71,72から第2オリフィス75への液体の流れをスムーズにできる。
次に図7、図8および図9を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、ストッパ部材50の外周面にオリフィス73形成用の溝を設けない場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、ストッパ部材110の外周面にオリフィス104形成用の溝であるオリフィス溝111を設ける場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図7は第2実施の形態における液封入式防振装置100の径方向断面図である。図8は図7のVIII−VIII線における液封入式防振装置100の断面図である。図9はストッパ部材110の斜視図である。
図7及び図8に示すように液封入式防振装置100は、円筒状に形成された内筒10と、内筒10の外周側を同心状に取り囲む円筒状の外筒20と、外筒20の内周面に嵌合する中間筒30と、中間筒30と内筒10とを連結する防振基体40と、外筒20に対する内筒10の相対移動を規制するストッパ部材110とを備える。ストッパ部材110は、液室71,72内にそれぞれ配置される一対の部材である。
ストッパ部材110は、ストッパ部材110の周方向端部にそれぞれ設けられてY方向に突出する一対の接触部51と、ストッパ部材110の周方向端部にそれぞれ設けられてX方向に突出する一対の規制部52とを備える。一対の接触部51を一対の連結壁32の内面にそれぞれ接触させ、一対の規制部52を一対の連結壁32の周方向端部にそれぞれ接触させ、外周面の一部(円弧面部50a)を外筒20に接触させることで、ストッパ部材110が外筒20及び中間筒30に固定される。
図9に示すように、ストッパ部材110は、略半円筒状の部材である。ストッパ部材110の外周面は、周方向中央に設けられる円弧形状の円弧面部50aと、円弧面部50aの周方向両側にそれぞれ連なる凹面部50bと、円弧面部50aの一部を径方向に凹ませて形成されるオリフィス溝111とを備える。オリフィス溝111は、ストッパ部材110の周方向端部に開口する第1開口112と、ストッパ部材110の軸方向端部に開口する第2開口113とを備える。
図7及び図9に示すように、ストッパ部材110の円弧面部50aを外筒20の内周面に面接触させた状態で、オリフィス溝111と外筒20の内周面とにより第2オリフィス105が形成される。第1開口112は、連結壁32と外筒20との間の第1オリフィス74に接続する部位である。第2開口113は、第2オリフィス105を液室71,72にそれぞれ連通させる部位である。なお、一対の連結壁32の一方(図7上側)と外筒20との間には第1オリフィス74が形成されるが、一対の連結壁32の他方(図7下側)と外筒20との間は弾性壁部102が充填されて塞がれる。
このように、一対のストッパ部材110のオリフィス溝111による第2オリフィス105と第1オリフィス74とが連通して、オリフィス104が形成される。オリフィス104は、内筒10の周りに半周以上形成され、液室71と液室72とを連通する。
図8に示すように、第1オリフィス74の流路断面積と、第2オリフィス105の流路断面積とは同一に設定される。詳しくは、第1オリフィス74の深さ(径方向寸法)及び幅(軸方向寸法)と、第2オリフィス105の深さ及び幅とが同一に設定される。これは、連結壁32の外周面の軸方向両側に一対の弾性壁部45を設け、一対の弾性壁部45間の距離とオリフィス溝111の幅とを同一にしたためである。さらに、一対の弾性壁部45間を軸方向に連結する弾性壁部101を連結壁32の外周面に加硫接着することで、弾性壁部101と外筒20との距離をオリフィス溝111の深さと同一にしたためである。
このように、弾性壁部45,101の形状や寸法などを変えることで、第1オリフィス74の流路断面積や形状を容易に変更できる。即ち、連結壁32(本体部32a)の形状や寸法などを変更することなく、弾性壁部45,101の形状や寸法などを変更することで、第1オリフィス74の形状や流路断面積を変更できる。その結果、連結壁32を流用しつつ、第1オリフィスの形状や流路断面積などの自由度を向上できる。
図7及び図8に示すように、ストッパ部材110は、金属や合成樹脂等から構成されて所定の剛性を有する剛体部115に、ゴム状弾性体から構成される弾性部120を加硫接着して形成される。剛体部115は、ストッパ部材110の外形を主に規定する部材であり、軸心Oを中心に湾曲した略半円筒状に形成される。剛体部115は、内筒10側に面する内面54と、内面54に連なる外面55と、内面54及び外面55に開口する貫通孔116とを備える。
貫通孔116は、内面54の凹部54aの周方向中央および軸方向中央に開口すると共に、外面55のうち軸方向端面に開口する。貫通孔116は、内面54に開口する直交部117を備える。直交部117は、軸心Oとの直交位置に配置されつつ、軸方向隔壁43と垂直に配置される。
弾性部120は、剛体部115の表面(内面54及び外面55)を覆うゴム状弾性体である。弾性部120は、凹部54aに加硫接着される弾性ストッパ部61と、貫通孔116の内部に充填される充填部121と、弾性ストッパ部61及び充填部121に連なる薄い膜状のゴム膜部63と、加硫成形時に形成されたゴム状弾性体の注入跡部123とを備える。弾性ストッパ部61、充填部121、ゴム膜部63及び注入跡部123は、一体に加硫成形されて互いに連なる。
充填部121は、弾性ストッパ部61に連なって貫通孔116内に充填される部位である。充填部121は、貫通孔116の直交部117に充填される直交充填部122を備える。直交充填部122が軸心Oとの直交位置に配置されるので、外筒20に対する内筒10の径方向への相対移動時に、内筒10の移動を規制した弾性ストッパ部61が内筒10から受ける軸直角方向の荷重を直交部117内の直交充填部122により吸収できる。その結果、直交部117(直交充填部122)の大きさに応じてストッパ部材110の荷重−たわみ特性を変更できる。
ストッパ部材110の外周面には、オリフィス溝111が形成されるため、剛体部115の外面55のうち外周面に注入跡部123を位置させることは困難である。しかし、本実施の形態では、外面55のうち軸方向端面にゴム状弾性体の注入跡部123が形成されるので、外面55に注入跡部123を設け易くできる。外面55に注入跡部123を設けることで、第1実施の形態と同様に、外筒20と内筒10との相対移動時に、注入跡部123やその付近を内筒10と接触しないようにできる。その結果、弾性部120の耐久性を確保できる。
さらに、貫通孔116に充填された充填部121の外面55側の端面に注入跡部123が位置する。これにより、弾性部120の加硫成形時には、注入跡部123の位置から加硫金型80(図6参照)内に注入されたゴム状弾性体の成形材料を、剛体部115の外面55側から貫通孔116を通って内面54側に充填し易くできる。よって、弾性部120の耐久性を確保しつつ、弾性部120の形成を容易にできる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記各実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記各実施の形態で挙げた形状や素材は一例であり、他の形状や素材を採用することは当然可能である。
上記各実施の形態では、連結壁32の外周面に弾性壁部45,102を加硫接着し、その弾性壁部45,102を第1オリフィス74の壁面の一部とする場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。弾性壁部45,102を省略して、連結壁32により第1オリフィス74の壁面の一部を構成しても良い。
上記各実施の形態では、金属や合成樹脂等の剛性材料製の剛体部53,115に弾性部60,120を加硫接着してストッパ部材50,110を形成する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ストッパ部材50,110全体を金属や合成樹脂等の剛性材料で形成することは当然可能である。
上記各実施の形態では、連結壁32と外筒20との間にストッパ部材50,110の一部を設けない場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。連結壁32と外筒20との間にストッパ部材の一部を設け、その部分に第1オリフィス74形成用の溝を設けても良い。接触部51及び規制部52によりストッパ部材が外筒20及び中間筒30に固定されるので、連結壁32と外筒20との間に設けたストッパ部材の一部に連結壁32等から応力をかかり難くできる。そのため、連結壁32と外筒20との間に設けたストッパ部材の一部の形状や寸法は、強度による制約を受け難くできる。その結果、連結壁32と外筒20との間のストッパ部材50,110に設ける第1オリフィス74形成用の溝の形状や寸法などの自由度を向上できるので、第1オリフィス74の形状や流路断面積などの自由度を向上できる。
上記各実施の形態では、接触部51の連結壁32に接触する面がY方向に平坦に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。一対の接触部51の先端側から互いに離れる方向に突起を突出させても良い。その突起を連結壁32のゴム部32bに食い込ませることができる。これにより、ストッパ部材50,110を一対の連結壁32の間に嵌め難くはなるが、ストッパ部材50,110を連結壁32に対してより強固に固定できる。またこの場合、ストッパ部材50,110の外周面を外筒20に接触させなくても、ストッパ部材50,110を外筒側へ移動しないようにできる。
上記各実施の形態では、貫通孔56,116がストッパ部材50,110(剛体部53,115)の周方向中央に設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ストッパ部材50,110の周方向中央から周方向端部側へずれた位置に貫通孔56,116を設けても良い。なお、内筒10に対して液封入式防振装置1,100の主入力荷重の方向に貫通孔56,116を設けることで、弾性ストッパ部61が内筒10から受ける軸直角方向の荷重を、貫通孔56,116内の充填部62,121により吸収できる。
上記第1実施の形態では、貫通孔56が軸心Oとの直交位置に配置される場合について説明した。上記第2実施の形態では、貫通孔116の直交部117が軸心Oとの直交位置に配置される場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではない。軸心Oとの直交位置からずれた箇所に貫通孔56や直交部117を設けることは当然可能である。この場合にも弾性部60,120の加硫成形時に、ゴム状弾性体の成形材料を、剛体部53,115の外面55側から貫通孔56,116を通して内面54側に充填し易くできる。
上記第2実施の形態では、一対のストッパ部材110と外筒20との間の2本の第2オリフィス105が、連結壁32と外筒20との間の1本の第1オリフィス74に連なり、オリフィス104が内筒10の周方向に半周以上形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、下記のようにオリフィスを1周以上設けることは当然可能である。一対の連結壁32の一方と外筒20との間に第1オリフィスを2本並列して設け、一対の連結壁32の他方と外筒20との間に第1オリフィスを1本設け、一対のストッパ部材110と外筒20との間にも2本の第2オリフィスを設ける。第2オリフィスのうち1本目は、ストッパ部材110の周方向両端に開口して周方向両側の第1オリフィスに連通する。第2オリフィスのうち2本目は、ストッパ部材110の周方向端部に開口した部位が2本並列した第1オリフィスの一方に連通し、ストッパ部材110の軸方向端部に開口した部位が液室71,72に連通する。これにより、複数の第1オリフィス及び第2オリフィスによって1周以上のオリフィスが形成される。