JP2019070117A - ポリエチレン系重合体パウダー及びリチウムイオン2次電池セパレータ - Google Patents

ポリエチレン系重合体パウダー及びリチウムイオン2次電池セパレータ Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、耐酸化性を向上させつつ、薄膜における膜の均一性、平滑性を効果的に向上することができる、ポリエチレン系重合体パウダー及びリチウムイオン2次電池セパレータを提供することを目的とする。【解決手段】本発明のポリエチレン系重合体パウダーは、エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上4以下のα−オレフィンとの共重合体を含み、デカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度IVが10dL/g以上32dL/g以下であり、Alの含有量が5ppm以上1000ppm以下であり、MgとSiの含有量の比Mg/Si(質量比)が0.01以上1.00以下であり、MgとSiの合計に対するAlの含有量の比Al/(Mg+Si)(質量比)が0.03以上0.31以下である。また本発明のリチウムイオン2次電池セパレータは、上記ポリエチレン系パウダーより得られる。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエチレン系重合体パウダー及びリチウムイオン2次電池セパレータに関する。
ポリエチレンは、分子量が数十万を超える超高分子量体では、耐衝撃性、自己潤滑性、耐摩耗性、耐候性、耐薬品性、寸法安定性が飛躍的に向上し、エンジニアリングプラスチックに匹敵する高い物性を示す。このため、各種成形方法により、ライニング材、食品工業のライン部品、機械部品、人工関節、スポーツ用品、繊維、多孔質焼結成形体を用いたフィルター、特許文献1及び非特許文献1に記載されたように、微多孔膜を用いた鉛蓄電池やリチウムイオン電池等の2次電池のセパレータなどへの用途適用が試みられている。
特開2009−138159号公報
星村義一、「無機粉体添加によるポリエチレンの耐酸化性改質効果」、静電気学会誌、2014年、第38巻、第6号、p.267−272
特に2次電池においては車載用途向けに、高容量化、すなわち高電圧化が求められている。これに用いられるセパレータは、充電状態におけるセパレータの酸化劣化による自己放電抑制の為、高度な耐酸化性が求められる。更にセパレータの重量低減による高容量化の為に、セパレータの薄膜化も検討されており、薄膜における膜の均一性、平滑性も合わせて求められる。
上記のような耐酸化性を達成する方法としては、例えば、イソブチレンのような側鎖に4級炭素を含むポリオレフィンをセパレータの原料として用いることが開示されている(例えば特許文献1)。また、別の方法として特定の無機粉体を添加することにより耐酸化性を向上する技術が開示されている(例えば非特許文献1)。しかし、これらの技術では、高度な耐酸化性を達成しつつ、膜の均一性、平滑性を充分向上させることができていなかった。
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、耐酸化性を向上させつつ、薄膜における膜の均一性、平滑性を効果的に向上することができる、ポリエチレン系重合体パウダー及びリチウムイオン2次電池セパレータを提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究した結果、特定のポリエチレン系重合体パウダーが上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上4以下のα−オレフィンとの共重合体を含み、
デカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度IVが10dL/g以上32dL/g以下であり、
Alの含有量が5質量ppm以上1000質量ppm以下であり、
MgとSiの含有量の比Mg/Si(質量比)が0.01以上1.00以下であり、
MgとSiの合計に対するAlの含有量の比Al/(Mg+Si)(質量比)が0.03以上0.31以下である、
ポリエチレン系重合体パウダー。
〔2〕
AlとSiの含有量の比Al/Si(質量比)が0.1以上0.6以下である、
上記〔1〕に記載のポリエチレン系重合体パウダー。
〔3〕
13CNMRで測定されたα−オレフィン含有量が0mol%以上0.50mol%以下である、上記〔1〕又は〔2〕に記載のポリエチレン系重合体パウダー。
〔4〕
リチウムイオン2次電池セパレータ用である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリエチレン系重合体パウダー。
〔5〕
上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のポリエチレン系重合体パウダーより得られる、リチウムイオン2次電池セパレータ。
〔6〕
上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリエチレン系重合体パウダーと、デカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度IVが1dL/g以上10dL/g未満のポリエチレンパウダーと、を含む、リチウムイオン2次電池セパレータ。
本発明によれば、耐酸化性を向上させつつ、薄膜における膜の均一性、平滑性を効果的に向上することができる、ポリエチレン系重合体パウダー及びリチウムイオン2次電池セパレータを提供することができる。
〔ポリエチレン系重合体パウダー〕
本実施形態のポリエチレン系重合体パウダーは、エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上4以下のα−オレフィンとの共重合体を含み、当該ポリエチレン系重合体パウダーは、デカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度IVが10dL/g以上32dL/g以下であり、Alの含有量が5質量ppm以上1000質量ppm以下であり、MgとSiの含有量の比Mg/Si(質量比)が0.01以上1.00以下であり、MgとSiの合計に対するAlの含有量の比Al/(Mg+Si)(質量比)が0.03以上0.31以下である。
ポリエチレン系重合体パウダーは、上述の構成を有することにより、薄膜における膜の均一性、平滑性を効果的に向上することができるセパレータ原料となる。
なお、ここでいう「薄膜における膜の均一性、平滑性」とは、薄膜全面にしわがなく平滑である性質をいう。
具体的には、本実施形態のポリエチレン系重合体パウダーによれば、ポリエチレン系重合体パウダーの極限粘度IVが所定の範囲であることにより、重合体の分子量を適度な範囲とすることができる。したがって、分子量が高すぎることにより流動パラフィン等の溶剤に溶解しにくくなる部分が生じ得ることを避けることができ、それゆえに、パウダーを良好に溶解させることができる。さらに、Alの含有量、MgとSiの含有量の比Mg/Si(質量比)及びMgとSiの合計に対するAlの含有量の比Al/(Mg+Si)(質量比)が所定の範囲であることにより、セパレータを均一かつ平滑な薄膜として作製可能であり、更に驚くべきことに、耐酸化性が向上することを見出した。
よって、本実施形態のポリエチレン系重合体パウダーによれば、耐酸化性を向上させつつ、薄膜における膜の均一性、平滑性を効果的に向上することができるセパレータ原料となるポリエチレン系重合体パウダーを提供することができる。
以下、上述の各構成要件について詳細に説明する。
ポリエチレン系重合体パウダーは、エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上4以下のα−オレフィン(以下、単に「コモノマー」ともいう。)との共重合体を含む。本実施形態で用いることができるコモノマーは、特に限定されないが、例えば下記式のα−オレフィンが挙げられる。
2C=CHR
(式中、Rは、直鎖状又は分岐状である、炭素数1〜2のアルキル基を示す。)
具体的なコモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、プロピレン、1−ブテンが挙げられる。また、炭素数が4以下のα−オレフィンを用いることにより、ポリエチレン系重合体パウダーの融点を高く保つことができ、リチウムイオン2次電池セパレータの延伸温度域を広くすることができる。更に、短鎖分岐鎖長が長くなりすぎないことにより、適度な絡み合いを形成し、延伸性が良好になる。
本実施形態に係るポリエチレン系重合体パウダーのデカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度IVは、10dL/g以上32dL/g以下であり、好ましくは12dL/g以上30dL/g以下、より好ましくは14dL/g以上28dL/g以下である。極限粘度IVが10dL/g以上であることにより、当該パウダーを用いた成形体の強度を確保するとともに、リチウムイオン2次電池セパレータ製造においては、当該製造時の延伸工程に、分子鎖の絡み合い不足による破膜を抑制することができる。また、極限粘度IVが32dL/g以下であることにより、絡み合いが強すぎて延伸応力が高すぎることに起因した延伸不良による厚みムラを抑制することができ、また、流動パラフィン等の溶剤に溶解しにくくなる部分が生じ得ることを避けることができる。
本実施形態において、135℃で測定した極限粘度IVを10dL/g以上32dL/g以下に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合する際の反応器の重合温度等が挙げられる。一般に、重合温度を高温にするほど分子量は低くなる傾向にあり、重合温度を低温にするほど分子量は高くなる傾向にある。また、極限粘度IVを上記範囲内に制御する別の方法としては、例えば、エチレン等を重合する際に水素や有機アルミニウム、有機亜鉛等の連鎖移動剤を添加すること等が挙げられる。連鎖移動剤を添加することで、同一重合温度でも生成する分子量が低くなる傾向にある。極限粘度IVは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態に係るポリエチレン系重合体パウダーに含まれるAlの含有量は、5質量ppm以上1000質量ppm以下であり、好ましくは10質量ppm以上500質量ppm以下、より好ましくは30質量ppm以上250質量ppm以下である。
Al含有量が5質量ppm以上であることにより、薄膜製造時の延伸不良による厚みムラを抑制して膜の均一性、平滑性を向上させることができる。Al含有量を5質量ppm以上にすることで厚みムラを抑制できる効果の理由は明らかではないが、リチウムイオン2次電池セパレータ製造時の延伸工程において、Al成分周りのポリエチレンが疑似的な絡み合い点となり、当該絡み合い点の存在により、膜を均一、平滑に延伸することができると推定される。また、1000質量ppm以下であることにより、得られるリチウムイオン2次電池セパレータ薄膜表面にAlが偏析して、凹凸が発生することによる厚みムラを抑制することができる。また、本実施形態では、Al含有量を上記範囲内にすることにより、例えばリチウムイオン2次電池セパレータ等のシートまたはフィルムのハンドリング性を向上させることができる。具体的には、連続押出により得られたシート等は幅方向の両端部をカットしてロールに巻き取ることができるところ、Al含有量を上記範囲内にすることにより、当該両端部のカールが抑えられてハンドリング性を向上させることができる。それゆえに、例えばシート等を巻き取ったロールからシート等をくりだす際の、くりだし性を向上させることができる。
本実施形態において、Al含有量を5質量ppm以上1000質量ppm以下に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、単位触媒あたりのポリエチレンの生産性により制御することが挙げられ、具体的には、生産性を高めることによりAl含有量を低減させることができる。またポリエチレンの生産性は、製造する際の反応器の重合温度、重合圧力を上げること、水素濃度、コモノマー濃度を下げることにより、生産性が高くなるように制御することが可能である。また、Al含有量を上記範囲内に制御する別の方法としては、Al成分が多い触媒を使用することが挙げられる。Al含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。本実施形態におけるAl元素は、触媒残渣由来とすることができる。
本実施形態に係るポリエチレン系重合体パウダーのMgとSiの含有量の比Mg/Si(質量比)は0.01以上1.0以下であり、好ましくは0.1以上0.8以下、より好ましくは0.2以上0.5以下である。
MgとSiの含有量の比Mg/Si(質量比)が0.01以上であることにより、Mg元素がSi元素に対してある程度の量で存在することとなり、得られるリチウムイオン2次電池セパレータの耐酸化性が向上する傾向にある。また、1.00以下であることにより、Mg含有量が多くなりすぎず、得られるリチウムイオン2次電池セパレータ薄膜表面にMgが偏析して、凹凸が発生することによる厚みムラを抑制することができる。
本実施形態において、MgとSiの含有量の比Mg/Si(質量比)を0.01以上1.00以下に制御する方法としては、特に限定されないが、MgとSiを所定量含んだ重合触媒、助触媒、またはその両方を使用することが挙げられる。具体的には、例えば、後述のように重合触媒を調整する際においては、SiとともにMgを含む無機担体物質を使用したり、Siを含む無機担体物質に対して有機マグネシウム化合物で処理する場合にその処理重量を変えたりすることが挙げられる。或いは、ポリエチレン系樹脂を重合する際においては、重合触媒とともに助触媒としての有機マグネシウム化合物を混合して使用する場合にその使用比率を変えることが挙げられる。
Al含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。本実施形態におけるMg元素およびSi元素は、触媒残渣由来とすることができる。
本実施形態に係るポリエチレン系重合体パウダーのMgとSiの合計に対するAlの含有量の比Al/(Mg+Si)(質量比)は0.03以上0.31以下が好ましく、より好ましくは0.05以上0.3以下、更に好ましくは0.15以上0.25以下である。MgとSiの合計に対するAl含有量を特定の範囲とすることで、疑似的な絡み合い点の偏析を抑制して、膜を均一、平滑に延伸することができると推定される。
本実施形態において、MgとSiの合計に対するAlの含有量の比Al/(Mg+Si)(質量比)を0.03以上0.31以下に制御する方法としては、特に限定されないが、AlとMgとSiを所定量含んだ重合触媒、助触媒、またはその両方を使用することが挙げられる。具体的には、例えば、後述のように重合触媒を調整する際において、SiとともにAlやMgを含む無機担体物質を使用したり、Siを含む無機担体物質に対して有機アルミニウム化合物及び/又は有機マグネシウム化合物で処理する場合にその処理重量を変えたり、或いは、ポリエチレン系樹脂を重合する際において、重合触媒とともに助触媒としての有機アルミニウム化合物及び/又は有機マグネシウム化合物を混合して使用する場合にその使用比率を変えたりすることが挙げられる。
本実施形態に係るポリエチレン系重合体パウダーのAlとSiの含有量の比Al/Si(質量比)は0.1以上0.6以下が好ましく、より好ましくは0.1以上0.45以下、更に好ましくは0.15以上0.35以下である。AlとSiの含有量の比Al/Si(質量比)が0.1以上であることにより、Al元素がSi元素に対してある程度の量で存在することとなり、得られるリチウムイオン2次電池セパレータの耐酸化性がより向上する傾向にある。また、0.6以下であることにより、Al含有量が多くなりすぎず、得られるリチウムイオン2次電池セパレータ薄膜表面にAlが偏析して、凹凸が発生することによる厚みムラを抑制することができる。
本実施形態において、AlとSiの含有量の比Al/Si(質量比)を0.1以上0.6以下に制御する方法としては、特に限定されないが、AlとSiを所定量含んだ重合触媒、助触媒、またはその両方を使用することが挙げられる。具体的には、例えば、後述のように重合触媒を調整する際において、SiとともにAlを含む無機担体物質を使用したり、Siを含む無機担体物質に対して有機アルミニウム化合物で処理する場合にその処理重量を変えたり、或いは、ポリエチレン系樹脂を重合する際において、重合触媒とともに助触媒としての有機アルミニウム化合物を混合して使用する場合にその使用比率を変えたりすることが挙げられる。
ポリエチレン系重合体パウダーの13CNMRで測定されたα−オレフィン含有量は0mol%以上0.50mol%以下であることが好ましい。当該ポリエチレン系重合体パウダーがエチレンとα−オレフィンとの共重合体である場合には、当該α−オレフィン含有量は、より好ましくは0.02mol%以上0.40mol%以下、さらに好ましくは0.05mol%以上0.50mol%以下である。なお、ポリエチレン系重合体パウダーにおいて、α−オレフィン含有量が0mol%になる場合は、ポリエチレン系重合体パウダーが、エチレンと炭素数が3以上4以下のα−オレフィン(以下、単に「コモノマー」ともいう。)との共重合体を含まず、エチレン単独重合体を含むことを指す。
なお、本実施形態に係るポリエチレン系重合体パウダーにおいて、Mgの含有量は、1質量ppm以上1000質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以上700質量ppm以下であることがより好ましい。また、Siの含有量は、1質量ppm以上1500質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以上500質量ppm以下であることがより好ましい。
α−オレフィン含有量が0.50mol%以下であることにより、α−オレフィン由来の短鎖分岐が過度な絡み合い点となり、薄膜製造時の延伸不良による厚みムラを抑制することができる。
本実施形態において、α−オレフィン含有量を0mol%超0.50mol%以下に制御する方法としては、特に限定されないが、共重合性の高い担持型メタロセン触媒を使用すること、α−オレフィンの重合器へのフィード量を調整することなどが挙げられる。α−オレフィン含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のポリエチレン系重合体パウダーは、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系等)、滑剤(ステアリン酸カルシウム等)、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等、公知の添加剤を、本実施形態の目的を損なわない範囲で含んでもよい。
〔ポリエチレン系重合体パウダーの製造方法〕
本実施形態のポリエチレン系重合体パウダーの製造方法は、触媒を用いて、エチレンを単独重合、又は、エチレンと炭素数が3以上4以下のα−オレフィンとを共重合することにより、上記ポリエチレン系重合体を得る重合工程を有する。触媒としては、後述する担持型メタロセン触媒を用いることが好ましい。
<担持型メタロセン触媒>
本実施形態で用いることができる担持型メタロセン触媒は、特に限定されないが、少なくとも(ア)無機担体物質(以下、「成分(ア)」、「(ア)」ともいう。)、(イ)有機アルミニウム化合物(以下、「成分(イ)」、「(イ)」ともいう。)、(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物(以下、「成分(ウ)」、「(ウ)」ともいう。)、及び(エ)遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤(以下、「成分(エ)」、「(エ)」ともいう。)から調製される。
(ア)無機担体物質としては、特に限定されないが、例えば、SiO2、Al23、MgO、TiO2等の酸化物;MgCl2等のハロゲン化合物、特開2016−176061号公報に記載の脂肪族塩にて変性した有機変性粘土等が挙げられる。この中で好ましい担体物質はSiO2、有機変性粘土である。(ア)無機担体物質は、マグネシウムを含んでいることが好ましく、公知の有機マグネシウム化合物を反応させることで含ませてもよい。無機担体物質中のMg含有量とSi含有量の比がポリエチレン系重合体パウダー中のMg含有量とSi含有量の比Mg/Si(質量比)に影響する。
(ア)無機担体物質は、(イ)有機アルミニウム化合物で処理される。(イ)有機アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、及びトリオクチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムハイドライド、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド;ジエチルアルミニウムエトキシド、及びジメチルアルミニウムメトキシド等のアルミニウムアルコキシド;メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、及びメチルイソブチルアルモキサン等のアルモキサンが挙げられる。これらの中で、トリアルキルアルミニウム、及びアルミニウムアルコキシドが好ましく、より好ましくはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、及びトリイソブチルアルミニウムである。
(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物は、特に限定されないが、例えば、特許第4868853号公報に記載の環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物や、特開2015−17181号公報に記載の遷移金属化合物が好ましい。
担持型メタロセン触媒は、(エ)遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤(以下、単に「活性化剤」ともいう。)を含むことが好ましい。本実施形態において、活性化剤は特に限定されず、公知のものが使用できる。
触媒は、成分(ア)に対して、成分(イ)、成分(ウ)、及び成分(エ)を担持させることにより得ることができる。成分(イ)、成分(ウ)、及び成分(エ)を担持させる方法は特に限定されないが、例えば、成分(イ)、成分(ウ)及び成分(エ)をそれぞれが溶解可能な不活性溶媒中に溶解させ、成分(ア)と混合した後、溶媒を留去する方法;成分(イ)、成分(ウ)及び成分(エ)を不活性溶媒に溶解後、固体が析出しない範囲でないでこれを濃縮して、次に濃縮液の全量を粒子内に保持できる量の成分(ア)を加える方法;成分(ア)に成分(イ)、及び成分(エ)をまず担持させ、ついで成分(ウ)を担持させる方法;成分(ア)に成分(イ)及び成分(エ)、及び成分(ウ)を逐次に担持させる方法が挙げられる。本実施形態の成分(ウ)、及び成分(エ)は、液体又は固体であることが好ましい。また、成分(イ)、成分(ウ)、成分(エ)は、担持の際、不活性溶媒に希釈して使用する場合がある。
上述不活性溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;これらの混合物が挙げられる。かかる不活性溶媒は、乾燥剤、吸着剤等を用いて、水、酸素、硫黄分等の不純物を除去して用いることが好ましい。
成分(ア)1.0gに対し、成分(イ)は、Al原子換算で0.5ミリモル以上10ミリモル以下が好ましく、より好ましくは1.0ミリモル以上5.0ミリモル以下が好ましい。また、成分(ア)に対し、成分(イ)を担持させる際には、成分(イ)を不活性雰囲気下で反応させたのち、空気中で濾過、洗浄、乾燥し、再度、不活性雰囲気下で反応させることで、担持量を増やすことができる。無機担体物質中のAl含有量とSi含有量の比、更に後述する付加成分としての有機アルミニウム化合物の量が、ポリエチレン系重合体パウダー中のAlの含有量、AlとSiの含有量の比Al/Si(質量比)、MgとSiの合計に対するAlの含有量の比Al/(Mg+Si)(質量比)に影響する。
成分(ア)1.0gに対し、成分(ウ)および(エ)は、40マイクロモル以上200マイクロモル以下が好ましく、より好ましくは80マイクロモル以上180マイクロモル以下の範囲で担持することが好ましい。各成分の使用量及び担持方法は、活性、経済性、パウダー特性、及び反応器内のスケール等により決定される。得られた担持型メタロセン触媒は、担体に担持されていない有機アルミニウム化合物、ボレート化合物、チタン化合物を除去することを目的に、不活性溶媒を用いてデカンテーション、濾過等の方法により洗浄することもできる。
上述一連の溶解、接触、洗浄等の操作は、その単位操作毎に選択される−30℃以上80℃以下の温度で行うことが好ましい。そのような温度のより好ましい範囲は、0℃以上50℃以下である。特に、成分(ウ)、成分(エ)を担持する際の温度は、0℃以上30℃以下が好ましく、より好ましくは15℃以上30℃以下である。
担持型メタロセン触媒は、それのみでエチレンの単独重合、又はエチレンとα−オレフィンの共重合が可能であるが、溶媒や反応の被毒の防止のため、付加成分として有機アルミニウム化合物を共存させて使用することもできる。好ましい有機アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、及びトリオクチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムハイドライド、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド;ジエチルアルミニウムエトキシド等のアルミニウムアルコキシド;メチルアルモキサン、イソブチルアルミキサン、及びメチルイソブチルアルモキサン等のアルモキサンが挙げられる。これらの中でも、トリアルキルアルミニウム、及びアルミニウムアルコキシドが好ましい。より好ましくはトリイソブチルアルミニウムである。
本実施形態のポリエチレン系重合体パウダーにおいてポリエチレン系重合体の重合方法は、スラリー重合法が好ましい。重合を行う場合、一般的には重合圧力は、0.1MPaG以上10MPaG以下が好ましく、より好ましくは0.3MPaG以上3.0MPaG以下である。また、重合温度は、20℃以上115℃以下が好ましく、より好ましくは50℃以上85℃以下である。
スラリー重合法に用いる溶媒としては、上述した不活性溶媒が好適であり、不活性炭化水素溶媒がより好ましい。不活性炭化水素溶媒としては、炭素数6以上8以下の炭化水素溶媒、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、及びオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、及びメチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;これらの混合物が挙げられる。
ポリエチレン系重合体の重合方法は、連続式で重合することが好ましい。エチレンガス、溶媒、触媒等を連続的に重合内に供給し、生成したポリエチレン系重合体と共に連続的に排出することで、急激なエチレンの反応による部分的な高温状態を抑制することが可能となり、重合系内がより安定化する傾向にある。均一な状態でエチレンが反応すると、分子量分布の広幅化が抑制される傾向にある。
ポリエチレン系重合体パウダーの製造方法における溶媒分離方法は、デカンテーション法、遠心分離法、フィルター濾過法等によって行うことができるが、ポリエチレン系重合体と溶媒との分離効率が良い遠心分離法がより好ましい。溶媒分離後にポリエチレン系重合体に含まれる溶媒の量としては、特に限定されないが、好ましくはポリエチレン系重合体の質量に対して50質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは55質量%以上85質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以上80質量%以下である。
ポリエチレン系重合体パウダーの製造方法において、ポリエチレン系重合体を重合するために使用する触媒の失活方法としては、特に限定されないが、ポリエチレン系重合体と溶媒を分離した後に実施することが好ましい。触媒を失活させる薬剤としては、特に限定されないが、例えば、酸素、水、アルコール類、が挙げられる。
ポリエチレン系重合体パウダーの製造方法において、ポリエチレン系重合体の乾燥に際しては、窒素やアルゴン等の不活性ガスを流通させ、酸素濃度が1〜100ppmの状態で実施することが好ましい。また、乾燥温度としては、好ましくは70℃以上120℃以下であり、より好ましくは80℃以上115℃以下であり、さらに好ましくは90℃以上120℃以下である。乾燥条件が上記範囲であることで、ポリエチレン系重合体パウダーから得られる延伸膜の均一性が向上する傾向にある。この理由は明確ではないが、上記のAl成分周りで分子鎖が部分的に絡み合い、その結果、膜をより均一に延伸することができると推定される。
上述のような各成分以外にもポリエチレン系重合体パウダーの製造に有用な他の公知の成分を含むことができる。
本発明のリチウムイオン2次電池セパレータは、上述のポリエチレン系重合体パウダーより得られる。また、当該リチウムイオン2次電池セパレータは延伸微多孔膜であり、膜厚方向に連通孔を有し、例えば三次元網状骨格構造を有する。当該膜の膜厚は、膜強度の観点から1μm以上であることが好ましく、電池容量の観点より20μm以下であることが好ましい。従来以上に高容量を求められるという観点から、その膜厚は10μm以下であることが好ましく、特に8μm以下であることが好ましい。
延伸微多孔膜の製造方法として、より具体的には、例えば、下記(a)〜(f)の各工程を含む方法が挙げられる。
(a)ポリエチレンと可塑剤を混練する混練工程。
(b)混練工程を経て得られた混練物を押し出す押出工程。
(c)押出工程を経て得られた押出物を、シート状に成形して冷却固化させるシート成形工程。
(d)シート成形工程を経て得られたシート状成形物を一軸以上の方向へ延伸する延伸工程。
(e)延伸工程を経て得られた延伸フィルムから可塑剤を抽出する抽出工程。
(f)抽出工程を経た延伸フィルムを加熱して熱固定する後加工工程。
以下、各工程について説明する。
(a)の混練工程において用いられるポリエチレンとしては、例えば、エチレン単独重合体、並びに、エチレン、プロピレン、1−ブテンよりなる群から選ばれる少なくとも2種以上のモノマーを重合して得られる共重合体が挙げられる。
これらのポリエチレンは2種以上を混合した混合物として用いられる。混合物を用いると、極限粘度の高いポリエチレンを使用した際にも製造工程上の負荷を軽減することができる。当該混合物としては、特に、例えば上述の本実施形態のポリエチレン系重合体パウダーと、デカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度IVが1dL/g以上10dL/g未満のポリエチレンパウダー(混合ポリエチレンパウダーとも称す)と、を少なくとも含むことが、その適度な分子量分布により、セパレータの強度に等方性を付与しやすいという観点から好ましい。
上記の混合ポリエチレンパウダーは、孔の閉塞を抑制しつつ、より高温で熱固定を行うことができ、熱収縮率が低減するという観点から、高密度のエチレン単独重合体を含むことが好ましい。当該高密度のエチレン単独重合体としては、930kg/m3から960kg/m3の密度を有することが好ましい。
なお、混合ポリエチレンパウダーの配合割合は、ポリエチレン((a)の混練工程で混練するポリエチレンの合計)に対して、好ましくは40〜90質量%、より好ましくは50〜70質量%である。
(a)の混練工程において用いられるポリエチレンには、さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色顔料などの公知の添加剤を混合してもよい。
可塑剤としては、沸点以下の温度でポリエチレンと均一な溶液を形成し得る有機化合物が挙げられる。具体的には、例えば、デカリン、キシレン、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、デシルアルコール、ノニルアルコール、ジフェニルエーテル、n−デカン、n−ドデカン、パラフィン油(流動パラフィン)が可塑剤として挙げられる。これらのうち、パラフィン油、ジオクチルフタレートが好ましい。
可塑剤の配合割合は特に限定されないが、得られる延伸微多孔膜の気孔率の観点から、ポリエチレンと可塑剤の合計質量に対して20質量%以上が好ましく、粘度の観点から90質量%以下が好ましい。押出機から押し出された後のMD配向を低減させやすいという観点から、この配合割合は好ましくは50〜80質量%であり、より好ましくは60〜75質量%である。
(a)の混練工程における混練の方法としては、例えば、まず、原材料の一部又は全部を必要に応じてヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等を用いて事前混合することができる。次いで、全ての原材料を、一軸押出機、二軸押出機等のスクリュー押出機、ニーダー、ミキサー等により溶融混練することができる。
なお、混練時において、原料のポリエチレンに酸化防止剤を所定の濃度で混合した後、それらの混合物の周囲を窒素雰囲気に置換し、窒素雰囲気を維持した状態で溶融混練を行うことが好ましい。溶融混練時の温度は、160℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましい。また、当該温度は300℃未満が好ましい。原料の組成やエチレン濃度によって好ましい温度範囲があるが、溶融混練時の温度は、延伸微多孔膜のMD配向が軽減するような条件であると好ましい。例えば、原料ポリエチレンの極限粘度が高い場合、220℃以上280℃以下の高温で溶融混錬することにより、MD配向を抑制することが好ましい。
(b)の押出工程においては、上記混練工程を経て得られた混練物が、T型ダイや環状ダイ等を有する押出機により押し出される。押出しの際の諸条件は、従来と同様とすることができる。
次いで、(c)のシート成形工程において、上記(a)、(b)の各工程を経て得られた押出物をシート状に成形して冷却固化させる。シート成形の方法としては、例えば、押出物を圧縮冷却により固化させる方法が挙げられる。冷却方法として、例えば、冷風や冷却水等の冷却媒体に押出物を直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールやプレス機に押出物を接触させる方法が挙げられる。冷媒で冷却したロールやプレス機に押出物を接触させる方法が、膜厚制御が優れる点で好ましい。その場合の冷却温度は押出物が固化する温度であれば特に限定されないが、シート成形時のMD配向を抑制しやすいことから、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。
次に(d)の延伸工程において、シート成形工程を経て得られたシート状成形物を一軸以上の方向へ延伸する。シート状成形物の延伸方法としては、ロール式又はテンター式による、一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、又は斜め延伸のいずれでもよい。具体的には、ロール延伸機又はテンターによるMD一軸延伸、テンターによるTD一軸延伸、ロール延伸機及びテンター又は複数のテンターの組み合わせによる逐次二軸延伸、同時二軸テンター、斜め延伸、また、インフレーション成形による同時二軸延伸が挙げられる。より等方性の高い延伸微多孔膜を得るという観点から、同時二軸延伸であることが好ましい。延伸によるトータル(MD×TD)の面倍率は、延伸微多孔膜の膜厚の均一性、引張伸度、気孔率及び平均孔径のバランスの観点より、8倍以上が好ましく、15倍以上がより好ましく、30倍以上が更に好ましい。特にその面倍率が30倍以上であると、高強度のセパレータが得られやすくなる。
続いて、(e)の抽出工程では、上記(d)の延伸工程を経て得られた延伸フィルムから可塑剤を抽出する。抽出方法としては、抽出溶媒に延伸フィルムを浸漬する方法、あるいは、延伸フィルムに対して抽出溶媒をシャワー等の噴霧により接触させる方法が挙げられる。抽出溶媒としては、ポリエチレンに対して貧溶媒であり、且つ可塑剤に対しては良溶媒であり、沸点がポリエチレンの融点よりも低いものが望ましい。このような抽出溶媒としては、例えば、n−ヘキサンやシクロヘキサン等の炭化水素類、ジクロロメタンや1,1,1−トリクロロエタン、フルオロカーボン系化合物等のハロゲン化炭化水素類、エタノールやイソプロパノール等のアルコール類、アセトンや2−ブタノン等のケトン類、及びアルカリ水が挙げられる。抽出溶媒はこれらの中から1種を単独で又は2種以上を組み合わせて選択して用いることができる。
抽出の際、脱溶媒によって膜収縮(例えばTDへ)が生じ、MD(流れ方向)及びTD(幅方向)への配向性が変化するため、テンションコントロールによって配向性を制御することが好ましい。
そして、(f)の後加工工程において、上記(e)の抽出工程を経た延伸フィルムを所定の温度で加熱して熱固定する。この際の熱処理の方法としては、テンターやロール延伸機を利用して、延伸及び緩和操作を行う熱固定方法が挙げられる。緩和操作とは、膜のMD及び/又はTDへ、所定の温度及び緩和率で行う縮小操作のことである。緩和率とは、緩和操作後の膜のMD寸法を操作前の膜のMD寸法で除した値、又は、緩和操作後の膜のTD寸法を操作前の膜のTD寸法で除した値、あるいは、MD、TDの両方向で緩和した場合、MDの膜の緩和率とTDの膜の緩和率とを乗じた値のことである。
上記所定の温度は、熱収縮率の観点より100℃以上が好ましく、気孔率及び透過性の観点より135℃未満が好ましい。緩和率は、熱収縮率の観点より、0.9倍以下が好ましく、0.80倍以下であることがより好ましい。また、しわの発生を防止する観点、並びに気孔率及び透過性の観点より、緩和率が0.6倍以上であることが好ましい。緩和操作は、MD、TDの両方向で行ってもよい。ただし、MD又はTDのいずれか一方の方向にのみ緩和操作を行ってもよく、これによって、操作方向のみでなく操作と直交する方向にも、熱収縮率を低減することが可能である。
以下に、実施例に基づいて本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。まず、下記に各物性及び評価の測定方法及び評価基準について述べる。
(物性1)極限粘度(IV)
後述の実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系重合体パウダーの極限粘度(IV)は、ISO1628−3(2010)に準拠し、以下に示す方法によって求めた。
まず、溶解管にポリエチレン系重合体パウダーを4.0〜4.5mgの範囲内で秤量(秤量した質量を下記数式中で「m」と表記)し、溶解管内部の空気を真空ポンプで脱気し窒素で置換した後、真空ポンプで脱気し窒素で置換した20mLのデカヒドロナフタレン(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを1g/L加えたもの、以下、デカリンと表記)を加え、150℃で90分間攪拌してポリエチレン系重合体パウダーを溶解させ、デカリン溶液とした。その後、デカリン溶液を135℃の恒温液槽中で、キャノン−フェンスケ型粘度計(柴田科学器械工業社製:製品番号−100)に投入し、標線間の落下時間(ts)を測定した。ブランクとしてポリエチレン系重合体パウダーを入れていない、デカリンのみの落下時間(tb)を測定した。下記数式(A)に従って比粘度(ηsp)を求めた。
ηsp=ts/tb−1 (数式A)
比粘度(ηsp)と濃度(C)(単位:g/dL)から、下記数式B、Cを用いて、極限粘度IVを算出した。
C=m/(20×γ)/10(単位:g/dL) (数式B)
γ=(デカリン20℃での密度)/(デカリン135℃での密度)
=0.888/0.802=1.107
IV=(ηsp/C)/(1+0.27×ηsp)(数式C)
(物性2、3、4、5)Al含有量、Mg含有量とSi含有量の比Mg/Si(質量比)、Al含有量とSi含有量の比Al/Si(質量比)、及びMgとSiの合計に対するAlの含有量の比Al/(Mg+Si)(質量比)
ポリエチレン系重合体パウダーの表面付着物を除去するため、まずエタノールとクロロホルムの1:1混合溶媒中で60分攪拌し、60分静置後、溶媒に浮いたパウダーを回収してドラフト内で乾燥させた。このパウダーをマイクロウェーブ分解装置(型式ETHOS TC、マイルストーンゼネラル社製)を用い加圧分解し、内部標準法にて、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置、型式Xシリーズ X7、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)にて、ポリエチレン系重合体パウダー中のAl、Mg、Si(質量比)の元素含有量を測定し、Mg/Si(質量比)、Al/Si(質量比)及びAl/(Mg+Si)(質量比)を算出した。
(物性6)α−オレフィン含有量
ポリエチレン系重合体パウダーのα−オレフィン含有量は13C−NMRにより、以下の条件で測定した。
装置:AVANCEIII 500HD Prodigy
(Bruker Biospin社)
観測周波数:125.77MHz(13C)
パルス幅:5.0μsec
パルス繰り返し時間:5sec
積算回数:10,000回
測定温度:120℃
基準:29.9ppm(PE:Sδδ)
溶媒:o−C64Cl2
試料濃度:0.1g/mL
試料管:5mmφ
なお、測定試料は60mgのポリエチレン系重合体パウダーにo−C64Cl2 0.6mLを入れて、130℃で加熱しながら溶解させた。
測定で得られたスペクトルを(1)エチレン/プロピレン共重合体については、「J.Polym.Sci.PartA:Polym.Chem.,29,1987−1990(1991)」、(2)エチレン/1−ブテン共重合体については、「Macromolecules,15,353−360(1982)」、(3)エチレン/1−ヘキセン共重合体については、「Macromolecules,15,1402−1406(1982)」の文献に従い、観測ピークの帰属後、α−オレフィン含有量を求めた。
(評価1)延伸膜(薄膜)の均一性、平滑性
100ccのポリカップに、ポリエチレン系重合体パウダー15.0g、及び酸化防止剤としてペンタエリスリチルーテトラキスー[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.015g(0.3質量%)投入して、ドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。さらに、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10ー5m2/s)35.0g(ポリエチレン濃度30質量%)を投入し、室温にてスパチュラで撹拌することにより、均一なスラリーを得た。上記ポリエチレン系重合体パウダーは、参考例のパウダー60%(9.0g)に対して、実施例、比較例のパウダー40%(6.0g)とした。
当該スラリーを220℃に設定したラボプラストミル((株)東洋精機製作所製4C150−01型)に投入し、回転数50rpmで20分間混練した。混練によって得られた混合物(ゲル)を180℃に加熱したプレス機で圧縮することにより、厚さ0.2mmのゲルシートを作製した。作製したゲルシートから6cm×6cmの試験片を切り出し、120℃に加熱した同時二軸テンター延伸機にセットし、3分間保持した。その後、12mm/secのスピードでMD倍率7.0倍、TD倍率7.0倍(即ち、7×7倍)になるように延伸した。次に延伸後のシートをジクロロメタン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後ジクロロメタンを乾燥除去した。抽出完了後の薄膜を室温で10時間乾燥した。延伸膜は約5μmの厚みであった。延伸膜の均一性、平滑性の評価は以下の基準で実施した。
○:延伸膜全面にしわがなく平滑であり、電池セパレータとして評価可能
△:延伸膜の一部にしわが見られたが、延伸膜の中央部にはしわがなく、電池セパレータとして評価可能
×:延伸時に破膜した、または、延伸膜の中央部にしわが寄っており、電池セパレータとしての評価が不可能
(評価2)耐酸化性評価A
コイン電池を作製し耐酸化性を評価した。
a.正極の作製
正極活物質としてニッケル、マンガン、コバルト複合酸化物(NMC)(Ni:Mn:Co=1:1:1(元素比)、密度4.70g/cm3)を90.4質量%、導電助材としてグラファイト粉末(KS6)(密度2.26g/cm3、数平均粒子径6.5μm)を1.6質量%及びアセチレンブラック粉末(AB)(密度1.95g/cm3、数平均粒子径48nm)を3.8質量%、並びにバインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(密度1.75g/cm3)を4.2質量%の比率で混合し、これらをN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターを用いて塗布し、130℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機を用いて圧縮成形することにより、正極を作製した。この時の正極活物質塗布量は109g/m2であった。
b.負極の作製
負極活物質としてグラファイト粉末A(密度2.23g/cm3、数平均粒子径12.7μm)を87.6質量%及びグラファイト粉末B(密度2.27g/cm3、数平均粒子径6.5μm)を9.7質量%、並びにバインダとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%(固形分換算)(固形分濃度1.83質量%水溶液)及びジエンゴム系ラテックス1.7質量%(固形分換算)(固形分濃度40質量%水溶液)を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成形することにより、負極を作製した。この時の負極活物質塗布量は5.2g/m2であった。
c.セパレータおよびコイン電池の作製
各実施例及び比較例で得られたポリエチレン系重合体パウダーから評価1に従って延伸膜を作製し、それぞれを18mmφに切り出した。正極及び負極を、それぞれ16mmφの円形(円板)に切り出した。そして、正極と負極との活物質面が対向するよう、正極、セパレータ、及び負極の順に積層した後に、蓋付きステンレス金属製容器に収納した。
容器と蓋とは絶縁されており、容器は負極の銅箔と、蓋は正極のアルミニウム箔と、それぞれ接するように配置した。この容器内に上記電解液を注入して密閉し、その状態で室温にて1日放置することにより、電池を作製した。ここで、電解液としては、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0mol/Lとなるように溶解させることにより調製したものを用いた。
次いで、上記の電池につき、25℃の雰囲気下、6mA(1.0C)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、更に4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法により、合計3時間充電を行った。次に6mA(1.0C)の電流値で電池電圧3.0Vまで放電した。次に、60℃雰囲気下、6mA(1.0C)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、更に4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法により、合計3時間充電を行った。次いで、4.2Vを保持するように充電を続けた状態にて60℃の雰囲気下で4日間保存を行った後、6mA(1.0C)の電流値で電池電圧3.0Vまで放電した。この電池からセパレータを取り出し、付着物を取り除くためにジメトキシエタン、エタノール、及び1規定の塩酸中で、順次に各15分間の超音波洗浄を行った。その後、空気中にて乾燥し、セパレータの正極接触面側の水分散液塗布部の黒色変色具合を目視にて観察し、耐酸化性の評価を行った。
黒色に変色した割合が面積当たりで5%以下のものを○(極めて良好)、5%を超えて10%以下のものを△(良好)、10%を超えるものを×(不良)と判定した。
(評価3)耐酸化性評価B(高電圧耐酸化性評価)
リチウムビススルホニルアミドとジメチルカーボネートをモル比1:1.1で混合したものを電解液として使用し、充電電圧を4.7Vとした以外は、評価2と同様の手順で高電圧耐酸化性の評価を行った。
(評価4)マスターロールからのくりだし性
参考例のポリエチレンを60質量%と、実施例・比較例のポリエチレンを40質量%とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られた混合物99質量%に酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量%添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-52/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの割合が65質量%となるように、すなわち、ポリマー濃度(以下、「PC」と略記することがある。)が35質量%となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
次いで、それらを二軸押出機内で溶融混練した。なお、溶融混練条件は、温度:230℃、スクリュー回転数:240rpm、吐出量:12kg/hとした。
続いて、得られた溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度90℃に制御された冷却ロール上に押し出し、その押出物を冷却ロールに接触させ成形して冷却固化することにより、シート状成形物であるゲルシートを得た。
次に、得られたゲルシートを同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸により延伸シートを得た。設定延伸条件は、MD倍率を7.0倍、TD倍率を7.5倍、すなわち、面倍率を7×7.5=52.5倍、二軸延伸温度を123℃とした。
次いで、得られた延伸フィルムをメチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に十分に浸漬して可塑剤である流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
次に、熱固定を行うべく延伸フィルムをTDテンターに導いた。そこで、温度130℃、延伸倍率1.7倍の条件で熱固定を行い、その後、緩和率(HS緩和率)が0.8倍の緩和操作を行った。
次いで、延伸フィルム1000mを巻き取ったマスターロール(MR、幅:2000mm、厚さ:6μm)を、60℃の恒温室内に24時間放置し、エージング処理(MRエージング処理)を行った。
マスターロールからの延伸フィルムの端部のくりだし性を以下の指標で評価した。
○:片手で中央部をもってロールからフィルムのカット端部をくりだすことができる
△:両手で両端部をもってロールからフィルムのカット端部をくりだすことができる
×:両手手両端部をもってもロールからフィルムのカット端部をくりだすことができず、表面を折り曲げないとくりだせない
[触媒の調製]
〔担持触媒[A]〕
1リットルのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売製、(商品名)エキネンF−3)300ml及び蒸留水300mlを入れ、濃塩酸15.0g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン(株)製、(商品名)アーミンDM22D)42.4g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製、(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mlで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより125gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を7μmとした。
温度計と還流管が装着された300mlのフラスコを窒素置換した後に有機変性粘土25.0gとヘキサンを108ml入れ、20%トリイソブチルアルミニウムヘキサン溶液142mLを添加して60℃で3時間撹拌した。その後、空気中で濾過、200mLのヘキサンにて2回洗浄後、80℃で12時間真空乾燥した。その後、温度計と還流管が装着された300mlのフラスコを窒素置換した後にトリイソブチルアルミニウムで処理した有機変性粘土25.0gとヘキサンを108ml入れ、次いでジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2−(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライドを0.600g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mlを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mlのヘキサンにて2回洗浄後、担持触媒[A](表中、単に「A」と示す。)を得た。
〔担持触媒[B]〕
窒素雰囲気下550℃で焼成された触媒担体用シリカ(平均粒子径8μm、細孔容積1.20mL/g、比表面積480m2/g)40gを、容量1.8Lのオートクレーブ中にて、ヘキサン800mL中に投入し、撹拌しながら25℃に保ち、トリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1mol/L)を68mL加えた。その後2時間攪拌し、更に、ジブチルマグネシウムのヘキサン溶液(濃度1mol/L)を68mL加えた、その後2時間撹拌し、金属処理シリカ[a]のヘキサンスラリーを得た。
一方、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル(以下、「チタニウム錯体」と記載する。)200mmolをアイソパーE(登録商標)[エクソンケミカル社(米国)製の炭化水素混合物の商品名]1000mLに溶解し、n−ブチルマグネシウムの1mol/Lヘキサン溶液を20mL加え、さらにヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を100mmol/Lに調製し、成分[b]を得た。
また、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート化合物」と記載する。)5.7gをトルエン50mLに添加して溶解し、ボレート化合物の100mmol/Lトルエン溶液を得た。このボレート化合物のトルエン溶液にジエチルアルミニウムエトキサイドの1mol/Lヘキサン溶液5mLを室温で加え、さらにヘキサンを加えて溶液中のボレート化合物濃度が70mmol/Lとなるようにした。その後、室温で1時間攪拌し、ボレート化合物を含む反応混合物を得た。
ボレート化合物を含むこの反応混合物114mLと上述で得られた成分[b]のうち80mLを上述で得られた成分[a]のスラリー800mLに20〜25℃で同時に加え、さらに3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応・析出させ、シリカ上に物理吸着させた。その後、得られた反応混合物中の未反応のボレート化合物・チタニウム錯体を含む上澄み液をデカンテーションによって除去することにより、触媒活性種が該シリカ上に形成されている担持触媒[B](表中、単に「B」と示す。)を得た。
〔担持触媒[C]〕
1リットルのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売製、(商品名)エキネンF−3)300ml及び蒸留水300mlを入れ、濃塩酸15.0g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン(株)製、(商品名)アーミンDM22D)42.4g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製、(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mlで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより125gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を7μmとした。
温度計と還流管が装着された500mlのフラスコを窒素置換した後に有機変性粘土25.0gとヘキサンを58ml入れ、20%トリイソブチルアルミニウムヘキサン溶液142mLと1mol/Lのジブチルマグネシウム100mLを添加して60℃で3時間撹拌した。その後、空気中で濾過、200mLのヘキサンにて2回洗浄後、80℃で12時間真空乾燥した。その後、温度計と還流管が装着された300mlのフラスコを窒素置換した後にトリイソブチルアルミニウムで処理した有機変性粘土25.0gとヘキサンを108ml入れ、次いでジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2−(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライドを0.60g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mlを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mlのヘキサンにて2回洗浄後、担持触媒[C](表中、単に「C」と示す。)を得た。
〔担持触媒[D]〕
窒素雰囲気下550℃で焼成された触媒担体用シリカ(平均粒子径8μm、細孔容積1.20mL/g、比表面積480m2/g)40gを、容量1.8Lのオートクレーブ中にて、ヘキサン800mL中に投入し、撹拌しながら25℃に保ち、トリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1mol/L)を68mL加えた。その後2時間撹拌し、金属処理シリカ[a]のヘキサンスラリーを得た。
一方、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル(以下、「チタニウム錯体」と記載する。)200mmolをアイソパーE(登録商標)[エクソンケミカル社(米国)製の炭化水素混合物の商品名]1000mLに溶解し、さらにヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を100mmol/Lに調製し、成分[b]を得た。
また、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート化合物」と記載する。)5.7gをトルエン50mLに添加して溶解し、ボレート化合物の100mmol/Lトルエン溶液を得た。このボレート化合物のトルエン溶液にジエチルアルミニウムエトキサイドの1mol/Lヘキサン溶液5mLを室温で加え、さらにヘキサンを加えて溶液中のボレート化合物濃度が70mmol/Lとなるようにした。その後、室温で1時間攪拌し、ボレート化合物を含む反応混合物を得た。
ボレート化合物を含むこの反応混合物114mLと上述で得られた成分[b]のうち80mLを上述で得られた成分[a]のスラリー800mLに20〜25℃で同時に加え、さらに3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応・析出させ、シリカ上に物理吸着させた。その後、得られた反応混合物中の未反応のボレート化合物・チタニウム錯体を含む上澄み液をデカンテーションによって除去することにより、触媒活性種が該シリカ上に形成されている担持触媒[D](表中、単に「D」と示す。)を得た。
〔担持触媒[E]〕
1リットルのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売製、(商品名)エキネンF−3)300ml及び蒸留水300mlを入れ、濃塩酸15.0g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン(株)製、(商品名)アーミンDM22D)42.4g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製、(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mlで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより125gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を7μmとした。
温度計と還流管が装着された300mlのフラスコを窒素置換した後に有機変性粘土25.0gとヘキサンを108ml入れ、次いでジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2−(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライドを0.60g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mlを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mlのヘキサンにて2回洗浄後、担持触媒[E]を得た。
[参考例]
特許第5774084号公報、実施例3に記載の方法で参考例のポリエチレン系重合体パウダーを得た。
[実施例1]
以下に示す連続式スラリー重合法によりポリエチレン系重合体パウダーを得た。具体的には、攪拌装置を備えたベッセル型340L重合反応器を用い、重合温度50℃、重合圧力0.20MPaG、平均滞留時間1.8時間の条件で連続重合を行った。溶媒として脱水ノルマルヘキサン80L/時間、触媒として上述の担持型メタロセン触媒[A]をTi原子換算で1.40mmol/時間、助触媒としてトリイソブチルアルミニウムを反応器内濃度が0.25mmol/Lとなるように供給した。また、分子量調整のための水素をエチレンの気相濃度に対して35ppmになるように供給することで、エチレンを重合させた。重合反応器内の重合スラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように圧力0.050MPa、温度70℃のフラッシュタンクに導き、未反応のエチレン、1−ブテン、水素を分離した。次に、スラリーは、フラッシュタンクのレベルが一定に保たれるように連続的に遠心分離機に送り、パウダーとそれ以外の溶媒等を分離した。分離されたパウダー(ポリエチレン系重合体)を、系内温度110℃、酸素濃度80ppmのロータリードライヤーに搬送し、滞留時間1時間で乾燥した。得られた実施例1のポリエチレン系重合体パウダーの評価結果を表1に示す。
[実施例2〜8、比較例1〜8]
表1に記載の触媒、重合温度、重合圧力、水素濃度、1−ブテン濃度、助触媒とした以外は、実施例1と同様の方法により、ポリエチレン系重合体パウダーを得た。測定結果及び評価結果を表1及び表2に示す。
なお、各表中、i−Bu3Alは、トリイソブチルアルミニウムを表し、Bu2Mgは、ジブチルマグネシウムを表す。
[比較例9]
担持触媒[E]を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリエチレン系重合体パウダーの作製を試みたが、重合体は得られなかった。
表1に示されるとおり、実施例においては、約5μmという薄膜においても均一、かつ耐酸化性に優れた延伸膜が得られることが分かった。
本発明によれば、耐酸化性を向上させつつ、薄膜における膜の均一性、平滑性を効果的に向上することができる、ポリエチレン系重合体パウダー及びリチウムイオン2次電池セパレータを提供することができる。

Claims (6)

  1. エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上4以下のα−オレフィンとの共重合体を含み、
    デカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度IVが10dL/g以上32dL/g以下であり、
    Alの含有量が5質量ppm以上1000質量ppm以下であり、
    MgとSiの含有量の比Mg/Si(質量比)が0.01以上1.00以下であり、
    MgとSiの合計に対するAlの含有量の比Al/(Mg+Si)(質量比)が0.03以上0.31以下である、
    ポリエチレン系重合体パウダー。
  2. AlとSiの含有量の比Al/Si(質量比)が0.1以上0.6以下である、
    請求項1に記載のポリエチレン系重合体パウダー。
  3. 13C−NMRで測定されたα−オレフィン含有量が0mol%以上0.50mol%以下である、請求項1又は2に記載のポリエチレン系重合体パウダー。
  4. リチウムイオン2次電池セパレータ用である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエチレン系重合体パウダー。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエチレン系重合体パウダーより得られる、リチウムイオン2次電池セパレータ。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエチレン系重合体パウダーと、デカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度IVが1dL/g以上10dL/g未満のポリエチレンパウダーと、を含む、リチウムイオン2次電池セパレータ。
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