図1は、本発明の第1実施形態の磁力選別装置1の概略構成を示す図であり、(A)が側面図、(B)が正面図である。図2は、磁力選別装置1の回転ドラム11の構成図、図3は、固定治具66の構成及び回転ドラム11の磁石部18の位置を説明するための図である。図4は、選別装置31廻りの構成図であり、(A)が側面図、(B)が正面図、図5は、磁力選別装置1の供給装置71の先端部の構造を説明するための図である。図6は、本発明の第1実施形態の磁力選別装置1の被選別物201に作用する力を示す模式図である。
磁力選別装置1は、ドラム回転式の磁選機10と磁選機10に被選別物を定量供給する供給装置71と、被選別物201を区分けする選別装置31と、磁選機10を支持する架台51とを備え、供給装置71を介して連続的に供給される、粉粒体状の汚染物と強磁性粉末及び/又は常磁性粉末とが混合されてなる被選別物201を連続的に選別し、被選別物201を3区分に選別する。なお本実施形態では、被選別物201を3区分に選別するが、仕切板32a、33bを3枚以上に増やし、被選別物201を4区分以上に選別することも可能である。
磁選機10は、内側に磁石部18が配置された回転ドラム11を有する点において、公知のドラム回転式磁選機と同じであるが、本磁選機10は、磁石部18の位置を容易に変更可能な位置可変機構を備える。
回転ドラム11は、回転自在な円筒状の外側ドラム13と、外側ドラム13の内側に配置された円筒状の内側ドラム16とを含み、内側ドラム16は半円筒状の磁石が配置された磁石部18を有する。図1及び図3(A)では右半分が磁石部18である。
外側ドラム13は、非磁性の円筒体であり、両サイドにフランジ部14及び回転軸15が設けられている。外側ドラム13は、回転軸15が軸受64で支持されケーシング21に回転自在に固定され、一方の回転軸15が駆動装置61と連結する(図1(B)参照)。
内側ドラム16は、外径が外側ドラム13の内径よりも僅かに小さい円筒体であり、半円筒状の磁石部18を有する。回転ドラム11のうち磁石部18と近接する領域、図1においては右半分が磁場印加部となり、左半分が磁場無印加部となる。磁石部18は、永久磁石、電磁石のいずれであってもよい。
内側ドラム16は、両側に回動軸17を備え、回動軸17の外周面に取付けられた軸受65が外側ドラム13の回転軸15の内側凹部に嵌め込まれた状態で取付けられている。回動軸17の一方は、ケーシング21から突出し、先端に内側ドラム16を回動させるためのハンドル19が設けられている(図2参照)。またケーシング21から突出した回動軸17に対して、回動軸17を固定する固定治具66が設けられている。本実施形態では固定治具66が主となり位置可変機構を構成する。
固定治具66は、回動軸17を覆う半割れの一対の締結具67と、締結具67を支持する一端がケーシング21に固定された一対の支持体68と、締結具67を締め込み又は緩めるための締結レバー69とを含む。このような固定治具66は、締結具67を締め込むと内側ドラム16の位置が固定され、締結具67を緩めると内側ドラム16を回動させることができる。
内側ドラム16は、外側ドラム13と僅かな隙間を有した状態で同心上に配置され、さらに固定治具66が設けられているので外側ドラム13は、内側ドラム16と独立して回転させることができる。また内側ドラム16は、回転ドラム11の基線(鉛直線)に対する磁石部18の傾斜角度を0〜θ1の範囲で変更可能なため(図3(B)参照)、被選別物201、特に微粒子の回転ドラム11からの離脱タイミングを変化させることができる。これにより粒径選別範囲を拡張することができる。なお回転ドラム11のケーシング21への取付け要領等は、本実施形態に限定されるものはない。
ケーシング21は、長方体形状を有し、底面を除く他の5面には板材が取付けられ壁が形成されている。ケーシング21は、安定に設置可能な脚53を有する架台51の上に固定されており、架台51により、ケーシング21の下方に選別装置31を設置するためのスペースが確保されている。
ケーシング21の天井面22には、被選別物201の投入口23が設けられ、投入口23には、被選別物201を回転ドラム11の所定の位置に導くためのシュート24が設けられている。ケーシング21の底面は、全面開口し選別物202の排出口25となっている。シュート24は、供給装置71を介して定量供給される被選別物201を回転ドラム11の磁場印加部の上端近傍に供給するように設置されている。またシュート24は、回転ドラム11の幅方向に対して被選別物201を均等に供給すべく、幅が回転ドラム11の幅と同一となっている。
選別装置31は、排出口25から落下する選別物202を落下位置に応じて3区分に区分けするものであり、排出口25の下方に配置されている。選別装置31は、2つの仕切板32a、32bと、各仕切板32a、32bをスライド自在に支持するリニアレール36とを有し、各仕切板32a、32bは、排出口25から落下する選別物202に対応し、位置を可変させることのできる可動構造となっている。この可動式の仕切板32a、32bは、区分けする粒径を変更可能な粒径可変機構として機能する。
仕切板32aは、上端を排出口25に臨ませる鉛直板33aと、鉛直板33aの下端に連結する傾斜板34aと、リニアレール36にスライド自在に係止する係止体35aとを含み構成される。鉛直板33aは、落下する選別物202を区分けする部材であり、傾斜板34aは、選別物202を分別回収槽38に送るシュートとして機能する。このため傾斜板34aは、鉛直板33aと連結する側が高くなるように設置されており、横断面形状がコ字状となっている。係止体35aは、板状の部材であり、鉛直板33aの両側面の端部に固定されている。
リニアレール36は、真っ直ぐな細長い板状の部材であり、架台51の両側面の端部にそれぞれ1本、架台51の正面及び背面に架け渡すように取付けられている。仕切板32aは、鉛直板33aが2本のリニアレール36の間に、係止体35aがリニアレール36の上に載るようにリニアレール36に直交配置されている。これにより仕切板32aは、係止体35aを介してリニアレール36に係止し、リニアレール36上を左右(図1(A)における左側、右側)に移動することができる(図1(A)参照)。
仕切板32bは、傾斜板34bの傾斜方向が、傾斜板34aの傾斜方向と逆向きとなっているが、仕切板32bの構造は、仕切板32aと同じである。
以上のように構成される選別装置31は、仕切板32a及び/又は仕切板32bの位置を左右に移動させることで、区分A、区分B及び区分Nの大きさを簡単に変えることができる。仕切板32aを側面視において左に移動させることで区分Nを大きくすることが可能となり、これにより区分Nに非磁着物の他、磁着物の一部を回収することができる。また仕切板32aの鉛直板33aと仕切板32bの鉛直板33bとを接触させると、区分Bをなくし、区分Nと区分Aの2区分とすることもできる。
架台51は、ケーシング21の下方に選別装置31を設置し、さらに分別回収槽38を配置できる高さを有する、安定に設置可能な脚53を有する架台である。架台の天井面52は、ケーシング21の底面に合せて開口している。架台51の側面部には、正面側、背面側及び両側面側それぞれの上半分に透明、あるいは、不透明なパネル54が取付けられている。なおパネル54に透明なパネルを使用すれば動作状況が確認できるので好ましい。傾斜板34aの先端側は、正面側のパネル54の下から架台51の正面側に突出する。傾斜板34bの先端側は、背面側のパネル54の下から架台51の背面側に突出する。
駆動装置61は、回転ドラム11を回転させる装置であり、駆動モータ62、減速機63及び減速機63と回転ドラム11とを結ぶ回転伝達具を含む。減速機63は、減速比を可変可能な減速機であり、これにより回転ドラム11の回転数を可変させることができる。回転伝達具は、減速機63側のスプロケット(図示省略)、回転ドラム11側のスプロケット(図示省略)、これらを結ぶチェーンやドライブシャフト等(図示省略)で構成され、減速機63の回転を回転ドラム11に伝達する。
上記実施形態では、可変タイプの減速機63を用いて回転ドラム11の回転数を可変させるが、インバータモータを使用して回転ドラム11の回転数を可変させてもよい。また回転伝達具も、上記実施形態に限定されるものではない。
本実施形態において磁選機10に被選別物201を連続的に定量供給する供給装置71は、振動フィーダー71である。振動フィーダー71は、被選別物ホッパー77の供給口の下側に配置されたトラフ72を振動させ、トラフ先端73から被選別物201をシュート24上に落下させ被選別物201を供給する装置である。
本実施形態の振動フィーダー71は、基本構成は公知の振動フィーダーと特に変わりはないが、トラフ先端73の形状に特徴がある。従来の振動フィーダーのトラフ先端は、平面視において一直線であるが、本実施形態の振動フィーダー71は、トラフ72の先端部に平面視において三角歯状(鋸刃状)の板材74が取付けられている(図5参照)。
被選別物201が、磁性鉄粉が付着した土粒子のような場合、振動フィーダー71から排出される土粒子同士が結合肥大化し、2次粒子径が増加することがある。このような土粒子同士の結合による肥大化は、供給量が多いほど生じ易い。本実施形態の磁力選別装置1は、被選別物201を粒径により区分けしようとするものであるから、粒径の大きい被選別物に微細な被選別物が付着すると、本来、微細な区分に区分けされるはずであった微細な被選別物が粒径の大きい区分に区分けされ好ましくない。
平面視において三角歯状の板材74は、平面視において一直線の板材に比較して周辺長が長い。このような板材74が先端部に取付けられてなるトラフ72から被選別物201を落下させると、被選別物201とトラフ72との接触面積が大きいため被選別物201は広く分散した状態で落下する。これにより被選別物201は薄層化され、粒子同士がかい離した状態で磁選機10に供給される。
以上のように本実施形態の振動フィーダー71は、トラフ72の先端部に取付けられた三角歯状の板材74が被選別物201を薄層化する薄層化手段として作用するため、供給量が多い場合であっても分級性能を高く維持することができる。
本実施形態の振動フィーダー71における三角歯状の板材74は、被選別物201を落下させるとき被選別物201とトラフ72(板材74)との接触面積を大きくすることにより被選別物201を薄層化し、粒子同士のかい離を促進させるものであるから、平面視において周辺長の長い板材であれば三角歯状の板材74以外であってもよい。平面視において周辺長の長い板材としては、平面視において櫛歯状の板材、波形の板材、台形の板材が挙げられる(図5(B)参照)。
本実施形態の振動フィーダー71では、トラフ72の先端部に三角歯状の板材74が取付けられているが、トラフ先端73の形状を三角歯状(鋸刃状)、櫛歯状、波形、台形としてもよい。以上のような薄層化手段は、振動フィーダーに限らずベルトフィーダー等にも適用することができる。供給装置71がベルトフィーダーであれば被選別物201の落下口となるベルトの先端部に、幅方向一杯に三角歯状の板材74を取付ければよい。
振動フィーダー71のトラフ先端73又は板材74の先端から落下する被選別物201は、斜面であるシュート24を滑落し回転ドラム11に達する。シュート24を滑落する距離が長い場合、摩擦係数の大きい小粒子分が傾斜面に滞留しがちとなり、これを巻き込むように大粒子分が滑落すると粒子同士の分離が悪化する可能性がある。よって振動フィーダー71のトラフ先端73又は板材74先端と回転ドラム11との距離を可能な限り短くすることが好ましい。
磁力選別装置1で選別可能な被選別物201は、基本的に磁着物と非磁着物との混合物であればよく、特定の被選別物201に限定されるものではない。被選別物201としては、粉粒体状の汚染物と強磁性粉末及び/又は常磁性粉末との混合物が挙げられる。強磁性粉末等と粉粒体状の汚染物とを混合すると、汚染物の表面に強磁性粉末等が吸着し、これら混合物は、汚染物の粒径等により磁着物と非磁着物とになる。
粉粒体状の汚染物としては、汚染物質が重金属、ダイオキシン類、PCB、農薬など残留性有機汚染物質(POPs)、放射性物質等であり、汚染物として前記汚染物質に汚染された土壌、焼却灰、瓦礫、廃プラスチック、木くず、さらにはこれらの混合物が挙げられる。放射性物質も特定の物質に限定されるものではなく、セシウムCs、プルトニウムPu、ウランU、ラジウムRaなど幅広い放射性物質を対象とすることができる。
強磁性粉末としてはFe−Ni合金,Fe−Co合金,Ni−Co合金,ステンレス(Fe−Ni−Cr),Mn−Al磁石,サマリウム磁石,ネオジウム磁石,マグネタイト,マグヘマタイト,Baフェライト等の粉末が挙げられる。常磁性粉末としては、アルミニウム,三酸化二クロム,酸化コバルト,一酸化鉄,水酸化第一鉄,ウスタイト,含水酸化鉄(δ以外)等の粉末が挙げられる。中でも酸化鉄を主成分とする強磁性粉末が好ましく、マグネタイト粉末がより好ましい。
以下に、強磁性粉末が汚染物に吸着する想定メカニズムを、汚染物を土壌として説明する。土壌は、同形置換効果により土壌表面が負に帯電しているため、土壌表面には正電荷をもつカチオンが集積している。このような状況下、負に帯電した強磁性粉末を添加すると、カチオン周辺に吸着し、結果として土壌に吸着する。電荷量が多ければカチオンと強く吸着することになる。一方で、自身の電荷反発及び土壌表層電荷との静電反発により、負の荷電量が多くなればなるほど分散力が増し、土壌表層に均一に拡散しようとする。
次に図6を用いて、回転ドラム11上で被選別物201に作用する力について説明する。ここでは汚染物が土壌粒子、強磁性粉末がマグネタイト粉末とし、これら混合物を被選別物201として説明する。
回転している回転ドラム11上に落下した被選別物201は、表面に強磁性粉末であるマグネタイトが付着しているため、回転ドラム11の磁場印加領域では、外部磁場Hより誘起される磁気力Mにより回転ドラム(外側ドラム)表面12に貼り付こうとする。また被選別物201には磁気力Mと反対方向に垂直抗力Nと遠心力Cが作用する。また被選別物201には、鉛直方向に重力Gが作用し、さらに回転ドラム表面12との間に摩擦力Fが作用する。摩擦力Fは、回転ドラム11の回転方向とは逆向きである。
被選別物201に作用する力のうち、磁気力Mと摩擦力Fとは被選別物201を回転ドラム表面12上に止め置く方向に作用し、逆に遠心力Cと重力G(但しθ<0)とは、被選別物201を回転ドラム表面12から引き離す方向に作用する。被選別物201はこれらのバランスより回転ドラム表面12に貼り付く。
回転ドラム表面12上の被選別物201の水平からの仰角をθ、摩擦係数をμとすると、図6においてドラム中心点線方向の力のつり合いは、式(1)〜(2)で示される。またドラム中心点線方向に垂直方向の力のつり合いは、式(3)〜(5)で示される。
式(1)が成立する仰角θで丁度つり合い(分別閾値θT;−90°<θT<90°)、θがこれよりも小さくなると被選別物201は、回転ドラム表面12から滑り落ちる。被選別物201に作用する力の大きさは、被選別物201の磁着特性により異なり、分別閾値θTも被選別物201により異なる。また被選別物201に作用する力の大きさは、磁力選別装置1の運転条件、磁力選別装置1の装置特性によっても変化する。
被選別物201の磁着特性としては、被選別物201の粒径、形状、比重、含水率、マグネタイトの付着量、表面帯電状態がある。
先に述べたように重力はsinθ>0、すなわちθ>0°である限り回転ドラム表面12に押し付けるように作用する。θ<0においては、引き離す力になるので回転ドラム表面12から被選別物201を引き離すことに寄与する。また遠心力Cは、回転ドラム11の半径をR、被選別物201の速度をV、被選別物201の質量をM0とすると、式(6)が成立し、質量M0が大きいと回転ドラム表面12から剥離し易くなる。
一般的に粒径の小さい粒子は、質量M0が小さいが、強磁性粉末の付着量も少なく、磁気力Mも小さくなる。粒子を球形と仮定し、その半径をrとすると表面積は半径rの2乗に比例し、体積は半径rの3乗に比例する。マグネタイト粉末は、土壌粒子に付着し易く、土壌粒子の表面積に比例して付着するものと考えられるため、マグネタイト粉末の付着量∝磁着力は、粒子半径rの2乗に比例し、粒子の質量M0は、半径rの3乗に比例する。磁着力は、粒径rのおおよそ2乗に比例するが、θ<0のときの引き剥がしに作用する重力は粒径rの3乗に比例して大きくなるので、粒径rが大きくなると磁着力より重力による剥離の効果が大きくなる。
以上のことから、被選別物201の粒径及び比重に関しては、それらが大きい程、回転ドラム11の下半分ではこれから外れ落下し易くなる。マグネタイト粉末の付着量に関しては、付着量が多いほど磁気力Mが大きくなり、回転ドラム表面12から外れ難くなる。粒径の小さい被選別物201ほど自重が軽く、単位重量当たりのマグネタイト粉末の付着量が多くなるため回転ドラム表面12から外れ難くなる。逆に粒径が大きくなるに従って自重が重くなり、さらに単位重量当たりのマグネタイトの付着量が少なくなるため回転ドラム表面12から外れ易くなる。被選別物201の形状、含水率及び表面帯電状態は、摩擦力Fに影響を与える。
磁力選別装置1の運転条件としては、回転ドラム11の回転数及び被選別物201の供給速度(処理速度)がある。回転ドラム11の回転数は、回転数を上げるほど遠心力Cが大きくなり、被選別物201は、回転ドラム表面12から外れ易くなる。被選別物201の供給速度は、回転ドラム11上の被選別物201の厚さに反映される。つまり被選別物201の供給速度が大きい程、回転ドラム11上の被選別物201の厚さは厚くなる。回転ドラム11上の被選別物201の厚さが厚くなると、上面側の被選別物201は、回転ドラム表面12との距離が大きくなり磁気力Mが作用し難くなり、結果、上面側の被選別物201は、回転ドラム表面12から外れ易くなる。
次に回転ドラム11の回転速度と推定される回転ドラム11から離れ放出される粒子の軌跡との関係を説明する。図7は、磁力選別装置1の回転ドラム11から離れ放出される粒子の推定される軌跡を説明するための模式図である。ここで磁石部18の傾斜角度θ1=0°とする。
回転ドラム11から離れ放出される粒子の推定される軌跡は、仮定1:空気抵抗は無視できる、仮定2:回転ドラム11へ投下された粒子は、回転ドラム11上をドラム回転速度と同じ速度で移動する(回転ドラム11上の滑り、転がりを無視する)とすると、式(7)〜式(12)で示される。回転ドラム11から離れ放出される粒子の推定される軌跡は、式(7)〜式(12)で示されるように回転ドラム11の回転速度vの影響を受ける。
図8及び図9は、回転ドラム11から離れ放出される粒子の推定される軌跡と回転ドラム11の回転速度vとの関係を示す図である。ここで磁石部18の傾斜角度θ1=0°とする。図8及び図9において、回転ドラム11から離れ放出される粒子の推定される軌跡は、式(7)〜式(12)を用いて算出している。図8及び図9に示されるように回転ドラム11の回転速度vが上昇するに従って、同一高さh(m)における粒子の軌跡が広がる。これにより回転ドラム11の回転速度vを変更することで、区分けする粒子の粒径を変更することができる。図8及び図9は、計算により算出された粒子の推定される軌跡の一例であり、図8及び図9に示す数値に限定されるものではない。
また回転ドラム11の回転速度vを大きくすると、粒子粒径の空間分布幅が広がるため、分級粒径閾値の分解能を細かく設定することができる。特に、磁力選別装置1は、仕切板32a及び/又は仕切板32bの位置を左右に移動させることで、区分N、区分B及び区分Aの大きさを簡単に変えることができる選別装置31を備えるので、回転ドラム11の回転速度vを大きくして使用すれば、被選別物(汚染物)を所望の濃度に容易に選別することができる。
磁力選別装置1の装置特性としては、磁選機10の磁石部18の位置及びドラム表面の磁束密度がある。
磁選機10の磁石部18は、半円筒形であり、その磁石部18の終着端では急激に磁束密度が低下する。回転ドラム11の基線(鉛直線)からの傾斜角度θ1(図3(B)参照)を変更することにより、被選別物201が回転ドラム11の最下点付近を通過する際、同一空間座標位置に対して磁束密度を変化させることができる。これにより被選別物201の回転ドラム11からの離脱位置を調整することができ、選別装置31による粒径選別範囲を拡張することができる。
被選別物201の磁着比率は、回転ドラム表面12の磁束密度に比例して増加する。磁石部18に電磁石を使用し、ドラム表面の磁束密度を調節することで被選別物201の磁着比率を制御することができる。また外側ドラム13の材質、表面状態も被選別物201の磁着に影響を与える。
以上のように回転ドラム表面12において被選別物201に作用する力は、被選別物201の性状、磁力選別装置1の運転条件、磁力選別装置1の装置特性等によって異なるため、回転ドラム11の表面磁束密度、被選別物201の供給速度、回転ドラム11の回転速度、磁選機10の磁石部18の位置(傾斜角度θ1)、土壌粒子とマグネタイト粉末との混合割合、土壌粒子の含水率のうち、少なくとも1つを調節することで、被選別物201の落下位置を調節することができる。
次に、放射性物質汚染土壌とマグネタイト粉末との混合物を被選別物201として磁力選別装置1の動作を説明する。ここで、放射性物質汚染土壌とマグネタイトとの混合物のうち、放射性物質汚染土壌の表面にマグネタイト粉末が付着しているものを磁気土粒子と呼ぶ。
混合装置を用いて十分に混合された放射性物質汚染土壌とマグネタイト粉末との混合物は、被選別物ホッパー77に充填された後、振動フィーダー71を介して磁選機10に連続的に定量供給される。
シュート24を通じて、回転している回転ドラム11上の磁場印加部の上端に落下した被選別物201のうち、粒径のかなり大きい磁気土粒子、あるいはマグネタイト粉末が付着し損ねた汚染土壌は、仰角(図6参照)が0°<θ<90°の範囲で回転ドラム11上を滑落する。これら粒子は、選別装置31の仕切板32aで仕切られる区分Nで回収される。
粒径が中程度の磁気土粒子は、仰角θ<0°にて回転ドラム表面12から脱着分離し、放射線状に落下し、区分Bで回収される。粒径が小さい磁気土粒子は、回転ドラム11の磁場印加部端仰角θ≒−90°にて回転ドラム表面12から脱着分離し、放射線状に落下し、区分Aで回収される。
放射性物質汚染土壌は、粒径の小さいものほど汚染濃度が高いことが知られている(例えば特開2013−242210号公報、表1)。上記のように粒径の小さい放射性物質汚染土壌は、区分Aに、粒径の大きい放射性物質汚染土壌は、区分Nに、その中間の粒径の放射性物質汚染土壌は区分Bに回収されるため、放射性物質汚染土壌の濃縮、除染等を行うことができる。なお上記実施形態では、選別装置31が区分けする区分数を3としたが、区分数を4以上とすることも可能であり、これにより放射性物質汚染土壌の濃縮、除染等をより適切に行うことができる。
放射性物質汚染土壌以外の汚染物であっても、汚染物質が主として粉粒体状の固体表面に固着、吸着又は付着した汚染物は、通常、粒径の小さい物ほど汚染物質の濃度が高くなる。このような汚染物も放射性物質汚染土壌と同様に濃縮、除染等を行うことができる。
上記のように第1実施形態の磁力選別装置1は、選別物の落下位置に対応し選別物を3区分以上に区分けすることができるので、汚染物の濃度に対応した選別を行うことができる。また汚染物の性状、例えば比重、含水率が変化しても選別装置である仕切板32a、32bの位置を可変可能なため汚染物を所望の濃度に区分けすることができ、さらに被選別物201の供給速度、回転ドラム11の回転速度、磁選機10の磁石部18の位置等を調節することで汚染物を所望の濃度に選別することができる。
第1実施形態の磁力選別装置1では、磁選機10の内側ドラム16の位置をハンドル19を用いて変更可能に構成されているが、回動軸回転用のギヤ装着モータ(図示省略)を取付け、当該モータを用いて内側ドラム16を回転させ磁石部18の位置を変更させるようにしてもよい。
図10は、本発明の第2実施形態の磁力選別装置2の概略構成を示す図であり、(A)が側面図、(B)が正面図である。図11は、本発明の第2実施形態の磁力選別装置2の選別装置41廻りの構成図である。図1から図5に示す第1実施形態の磁力選別装置1と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
本発明の第2実施形態の磁力選別装置2の基本構成は、本発明の第1実施形態の磁力選別装置1と同じであるが、選別装置41の構造が異なる。選別装置41は、選別装置31と同様に、排出口25から落下する選別物202を落下位置に応じて3区分に区分けするものであり、機能は選別装置31と同じである。
選別装置41も選別装置31と同じく排出口25の下方に配置されている。選別装置41も選別装置31と同様に、2つの仕切板42a、42bと、各仕切板42a、42bをスライド自在に支持するリニアレール36とを有する。各仕切板42a、42bは、排出口25から落下する選別物202に対応し、位置を可変させることのできる可動構造となっており、区分けする粒径を変更可能な粒径可変機構として機能する。
仕切板42aは、仕切板32aと同じく上端を排出口25に臨ませる鉛直板33aを有し、仕切板42bは、仕切板32bと同じく上端を排出口25に臨ませる鉛直板33bを有する。仕切板42a、42bも選別装置31と同様に、係止体35a、35bを有し、係止体35a、35bが鉛直板33a、33bの両側面の端部に固定されている。
選別装置31では、仕切板32a、32bは、鉛直板33a、33bそれぞれに連結する傾斜板34a、34bを有するが、選別装置41では、仕切板42a、42bは、鉛直板33aと鉛直板33bとに跨るように連結した蛇腹体46及び傾斜板44を有する。
蛇腹体46は、帆布などのような柔軟性を有する部材が折り畳まれ蛇腹状に形成された部材であり、一端部が鉛直板33aの下辺に、他端部が鉛直板33bの下辺に連結する。蛇腹体46は、鉛直板33a及び/又は鉛直板33bが左右に移動し、鉛直板33aと鉛直板33bとの間隔が変化しても追従し、鉛直板33aと鉛直板33bとを結ぶ。蛇腹体46は、蛇腹体46上に落下した選別物202を排出可能に傾斜して取付けられている。
傾斜板44は、蛇腹体46上に落下した選別物202を架台51の外に排出するための部材であり、蛇腹体46の下に傾斜して取付けられている。
選別装置31では、仕切板32a、32bの傾斜板34a、34bを介して区分N及び区分Aに落下する選別物202をそれぞれ架台51の外に排出し、区分Bに落下する選別物202は架台51の内側で回収する。これに対して選別装置41では、鉛直板33a、33bを結ぶ蛇腹体46及び傾斜板44を介して区分Bに落下する選別物202を架台51の外に排出し、区分N及び区分Aに落下する選別物202は架台51の内側で回収する。
本発明の第2実施形態の磁力選別装置2と本発明の第1実施形態の磁力選別装置1とでは、選別装置31、41の構造が異なり、これに伴い選別物202の回収位置が異なるが、被選別物201の選別原理、選別要領、及び磁力選別装置の動作、作用効果は、磁力選別装置2と本発明の第1実施形態の磁力選別装置1とで同じである。
本発明の第1及び第2実施形態の磁力選別装置1、2は、共に2つの仕切板32a、32b、42a、42bを備え、これにより被選別物201を3つの区分に区分け可能とする。さらにこの2つの仕切板32a、32b、42a、42bは、位置を左右に移動可能なため区分N、区分B及び区分Aの大きさを簡単に変えることができる。これにより所望の粒径の選別物202を得ることができることは既に説明の通りである。
一方で、第1及び第2実施形態の磁力選別装置1、2の選別装置31、41は、共に仕切板32a、32b、42a、42bの高さは固定されており、高さを変更することはできない。ここで第1及び第2実施形態の磁力選別装置1、2の選別装置31、41の変形例として、仕切板32a、32b、42a、42bの高さを可変可能な構造とすれば、高さを変更することで所望の粒径の選別物202を得ることができる。つまり仕切板32a、32b、42a、42bの高さ可変構造は、区分けする粒径を変更可能な粒径可変機構として機能する。このことは図8及び図9、式(7)〜式(12)からも明らかである。
仕切板32a、32b、42a、42bの高さを可変させる方法としては、仕切板32a、32b、42a、42b全体の設置高さを可変させる方法、鉛直板33a、33bを伸縮構造とし、鉛直板33a、33bの高さのみを変更する方法がある。後者の場合には、回転ドラム11に近い最上端の位置が可変できればよい。鉛直板33a、33bの伸縮構造としては、例えば、鉛直板33a、33bを複数枚の板で構成し、これらをスライド可能とすればよい。このような方法は、選別装置31、41の構造をそのまま踏襲し、簡単に実施することができる。また仕切板32a、32b、42a、42bを左右に、さらに高さを可変可能とすることで、より確実に所望の粒径の選別物202を得ることができる。
さらに第1及び第2実施形態の磁力選別装置1、2は、選別装置31、41を以下のように変形してもよい。第1及び第2実施形態の磁力選別装置1、2では、選別装置31、41に2つの仕切板32a、32b、42a、42bを使用し、これにより被選別物201を所望の粒径に区分けしているが、より簡便な選別装置とするのであれば、1つの仕切板を左右及び/又は上下に可変可能な構造としてもよい。このような構造も区分けする粒径を変更可能な粒径可変機構として機能する。1つの仕切板の場合、区分数は2区分となるが、位置が固定された従来の選別装置と異なり、仕切板を左右及び/又は上下に可変させることで汚染土壌など被選別物201の性状等が変化した場合であっても、それに対応した選別が可能となる。
図12は、本発明の第3実施形態の磁力選別装置3の概略構成を示す側面図である。図1から図5に示す第1実施形態の磁力選別装置1と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
本発明の第3実施形態の磁力選別装置3の基本構成は、本発明の第1実施形態の磁力選別装置1と同じであるが、選別装置301の構造が異なる。選別装置301は、選別装置31と同様に、排出口25から落下する選別物202を落下位置に応じて複数の区分に区分けし、さらに選別物202を回収可能に構成されている。
選別装置301は、6個の分別回収槽302からなり、選別装置31と同じく排出口25の下方に、これらが隙間なく並べて設置されている。本実施形態では、分別回収槽302の数が6個であるから選別物202を6区分に分別回収することができるが、分別回収槽302の数は6個に限定されるものではなく、区分けする区分数以上であればよい。好ましくは、分別回収槽302の数は3個以上である。これにより汚染物を所望の濃度に区分けすることができる。
各分別回収槽302の大きさ(幅)は、同一を基本とするが異なっていてもよい。各分別回収槽302の大きさ(幅)は、特定の幅に限定されるものではないが、幅が区分けされる選別物202の粒径を決めるため、幅の狭いものを使用すればより細かく分級することができる。つまり本実施形態の磁力選別装置3にあっては、複数個の分別回収槽302が、区分けする粒径を変更可能な粒径可変機構として機能する。
磁力選別装置3の選別装置301は単純な構成ではあるが、選別物202を確実に複数の区分に区分けすることができる。また各分別回収槽302の個数、各分別回収槽302の大きさ(幅)を適切に設定することで所望の粒径の選別物202を回収することができる。
図13は、本発明の第4実施形態の磁力選別装置4の概略構成を示す側面図である。図1から図5に示す第1実施形態の磁力選別装置1、図12に示す第3実施形態の磁力選別装置3と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
本発明の第4実施形態の磁力選別装置4は、基本構成が本発明の第1実施形態の磁力選別装置1と同じであり、磁力選別装置4の選別装置311の構造が、磁力選別装置3の選別装置301と類似する。選別装置311は、分別回収槽302を用いて、排出口25から落下する選別物202を落下位置に応じて複数の区分に区分けし回収する点において、選別装置301と共通するが、選別装置311は、さらに分別回収槽302に分別された選別物202を混合する混合装置312を備える。
分別回収槽302については、磁力選別装置3の選別装置301と同様に考えることができるので説明を省略する。
混合装置312は、各分別回収槽302の底部に設けられ選別物202を排出する出口管313と、各出口管313が連結する集合管314と集合管314と連結する混合調製槽315とを含む。各出口管313はそれぞれ、管路の途中にバルブ316を有し、出口部が集合管314と連結する。分別回収槽302からの選別物202の排出は重力によるものであってもよいが、分別回収槽302又は出口管313内にスクリューフィーダー等を設け定量排出を可能とすれば、所望の性状の選別物202、例えば所定の濃度の汚染物を容易に回収することができる。
混合調製槽315は、集合管314から排出される選別物202を受入れるタンクである。混合調製槽315の底部にはキャスター317が設置され、選別装置311全体が一体的に移動可能に構成されている。本実施形態の選別装置311は、キャスター317を備え、移動可能に構成されているが、固定式であってもよい。
選別装置311を使用する際は、選別装置301と同じく排出口25の下方に分別回収槽302が位置するように配置し、6個の分別回収槽302に選別物202を分別回収する。分別回収槽302に分別回収した選別物202の混合操作は、分別回収槽302に選別物202を分別回収しつつ行ってもよく、分別回収槽302に選別物202を分別回収した後に行ってもよい。選別物202を分別回収した後に混合操作を行う場合は、選別装置311を別の場所に移動させた後に行ってもよい。
第4実施形態の磁力選別装置4は、選別装置311が分別回収槽302の他、分別回収した選別物202を混合可能な混合装置312を備えるので、混合装置312を介して分別回収した選別物202を2種類以上混合することで所望の性状の選別物202、例えば所定の濃度の汚染土壌を容易に回収することができる。つまり本実施形態の磁力選別装置4にあっては、混合装置312が、区分けする粒径を変更可能な粒径可変機構として機能する。選別物202を混合可能な混合装置312の構成・構造については、本実施形態に限定されるものではない。また選別物202を混合する混合装置312については、他の実施形態の磁力選別装置にも適用することができる。
図14は、本発明の第5実施形態の磁力選別装置5の概略構成を示す図であり、(A)が側面図、(B)は選別装置321の作用効果を説明するための模式図である。図1から図5に示す第1実施形態の磁力選別装置1、図12に示す第3実施形態の磁力選別装置3と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
本発明の第5実施形態の磁力選別装置5は、基本構成が本発明の第1実施形態の磁力選別装置1と同じであり、磁力選別装置5の選別装置321の構造が、磁力選別装置3の選別装置301と類似する。選別装置321は、分別回収槽302を用いて、排出口25から落下する選別物202を落下位置に応じて複数の区分に区分けし回収する点において、選別装置301と共通するが、選別装置321は、さらに分別回収槽302の設置高さを変更可能な高さ可変装置322を備える。
分別回収槽302については、磁力選別装置3の選別装置301と同様に考えることができるので説明を省略する。
高さ可変装置322は、キャスター付きのリフター323を有し、上部に分別回収槽302を支持する支持板324を備える。各分別回収槽302は、支持板324上に隙間なく並べて載置される。本実施形態ではキャスター付きのリフター323を使用するが、固定式のリフターであってもよい。
磁力選別装置5の使用方法は、第3実施形態の磁力選別装置3と基本的に同じであるが、分別回収槽302の設置高さを変更可能なため選別物202の所望の粒径への区分けがより容易に行える。つまり本実施形態の磁力選別装置5にあっては、分別回収槽302の設置高さを変更可能な高さ可変装置322が、区分けする粒径を変更可能な粒径可変機構として機能する。
回転ドラム11から離れ放出される粒子の推定される軌跡は、図7〜図9及び式(7)〜式(12)及び図14(B)に示す通りである。図14(B)に示す推定される粒子の軌跡のうち、一番右側の軌跡は、粒子が回転ドラム11上を滑り落下する場合を想定したものである。この点は、図12及び図13においても同じである。
粒子の水平方向の軌跡は、排出口25からの距離により異なり、回転ドラム11の右端(図14(B)のA)を基準にすれば、排出口25から距離(高さ方向)が離れるほど、粒子は左側に移行し、かつ粒子粒径の空間分布幅が広がる。このため図14(B)に示すように分別回収槽302の位置を回転ドラム11に近付ける程、区分けする区分数が少なくなる。逆に分別回収槽302の位置を回転ドラム11から遠ざける程、多くの区分数に区分けすることが可能となり、さらにより粒径の小さい選別物202を回収することができる。
高さ可変装置322は、本実施形態の選別装置321のほか、他の実施形態の選別装置、第4実施形態に示す混合装置312を備える選別装置311にも適用することができる。
図15は、本発明の第6実施形態の磁力選別装置6の概略構成を示す図である。図1から図5に示す第1実施形態の磁力選別装置1と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。被選別物201、選別物202のうち微細粒子は、回転ドラム11から離れ空間部に放出された後の沈降速度が遅く、風の影響を受け易い。このような微細粒子は、汚染濃度が高いため、これが汚染濃度の低い粒径の大きい選別物202を回収する分別回収槽38に混入することは好ましくない。第6実施形態の磁力選別装置6は、これを解消すべくなされたものである。
磁力選別装置6は、磁力選別装置本体の他に磁力選別装置本体を覆い収容するケーシング331と、選別物202が排出口25から排出され分別回収槽38に回収される過程でケーシング331内の空間に漂う選別物202を吸引し回収する集塵装置351とを備える。本実施形態では、磁力選別装置本体として第1実施形態の磁力選別装置1を使用するが、磁力選別装置本体は、他の実施形態の磁力選別装置であってもよい。
本実施形態においてケーシング331は、磁力選別装置本体を覆い収容するが、少なくとも選別物202が排出口25から排出され分別回収槽38に回収される過程で周囲に飛散しないように、排出口25及び選別装置31を覆ってもよい。他の実施形態の磁力選別装置を使用する場合も同様である。
ケーシング331の一方の側壁には、集塵装置351の吸気ダクト352が設けられている。吸気ダクト352の吸込口353を、粒径の小さい選別物202を回収する分別回収槽38に近い側壁側に配置し、ケーシング331内の空気を微細粒径の選別物202を回収する分別回収槽38側方向に吸引するのがよい。これにより吸引過程で浮遊した選別物202が沈降した場合であっても、その選別物202は、汚染濃度の低い粒径の大きい選別物202を回収する分別回収槽38には混入せず好ましい。
集塵装置351は、ケーシング331内に漂う選別物202を吸引し回収する装置であり、一端がケーシング331の側壁に取付けられた吸気ダクト352、吸気ダクト352内に配置された集塵ファン354、集塵ファン354の後流側に設置され、吸引した空気中の選別物202を吸着する集塵磁石355、脱磁集塵箱356、HEPAフィルター357等を含む。但し、集塵装置351の構成はこれに限定されるものではなく、ケーシング331内の空間に漂う選別物202を磁選分級中の選別物202に影響を与えないように吸引し回収できればよい。
集塵ファン354は、気流が磁選分級中の選別物202に影響を与えないようにゆっくり吸気する。集塵磁石355には、サニタリー磁石などを使用可能であり、永久磁石、電磁石のいずれであってもよい。永久磁石の場合、集塵面に対して機械的に磁石表面あるいは磁石に接続するヨークを密着・離隔できるようにする。
集塵磁石355は、吸気ダクト352内の傾斜面に設置されており、傾斜面の下方に脱磁集塵箱356が配置されている。磁石筐体表面に選別物202が吸着した後に、永久磁石の場合は機械的離隔によって、電磁石の場合は通電電流を遮断することによって磁石筐体表面の磁場を切り、吸着した選別物202を脱磁集塵箱356に流下させ回収する。
HEPAフィルター357は、吸気ダクト352の最後流端に設置されており、図示を省略したブロワーが接続し、作業環境、安全を確保する。HEPAフィルター357に代え、バグフィルターを使用してもよい。以上のようにケーシング331及び集塵装置351を設けることで微細粒子が風の影響を受け、汚染濃度の低い粒径の大きい選別物202を回収する分別回収槽38に混入することを防止することができる。また作業環境、安全を確保することもできる。
図16は、本発明の第7実施形態の汚染物乾式処理システム101の概略構成図、図17は、汚染物乾式処理システム101の磁力選別装置7に設けられる選別物排出器81の構造を説明するための図である。図1から図5に示す第1実施形態の磁力選別装置1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
汚染物乾式処理システム101は、原土である放射性物質汚染土壌を放射性物質の濃度により区分するための乾式連続処理システムであり、図1に示した磁力選別装置1と同様の構成からなる磁力選別装置7、原土と薬剤であるマグネタイト粉末とを連続的に混練する混練機103、混練機103にマグネタイト粉末を定量供給する鉄粉フィーダー(図18参照)、移送装置等を含む。
汚染物乾式処理システム101に組み込まる磁力選別装置7は、図1に示した磁力選別装置1と基本構成を同じくするが、選別装置31廻りの構成が異なる。磁力選別装置7では、仕切板32a、32bを左右に移動させるための電動シリンダ37が装着され、電動シリンダ37を介して仕切板32a、32bを左右に可変可能に構成されている。また仕切板32a、32bの傾斜板34a、34bの先端部には選別物排出器81が設けられている。
図17(A)は、選別物排出器81の平面視における部分断面図、図17(B)は、選別物排出器81の側面断面図、図17(C)は、比較例である選別物排出器の平面視における部分断面図、図17(D)は、比較例である選別物排出器の側面断面図である。
選別物排出器81は、図17(A)に示すように区分A,B,Nに対応する3つの長方体形状のボックス82で構成され、各ボックス82内には排出口84に向けて傾斜したシュート83が設けられている。排出口84は大略的には長方体形状を有し、ボックス82の端部であって、入口孔85がシュート83の先端部に繋がるように設けられている。排出口84は、底板86に排出孔89が穿設され、選別物202はここから分別回収槽38に入る。
排出口の底板86は、基端部87がシュート83の先端に繋がるように取付けられ、底板86の傾斜角θoは、シュート83の傾斜角θsと同じか大きく設定されている。また排出口84には底板86の先端部側に傾斜板90が設けられている。これにより図17(C)、(D)の比較例に示す排出口84及びシュート83上への選別物202の堆積が防止される。
図17(D)の比較例に示すように排出口84の底板86が水平に設置されている場合、シュート83と底板86との連結部において角度が急激に変化するためそこに選別物202が堆積し易い。この部分に選別物202が堆積すると、長時間の運転に伴いシュート83の下部、さらにはシュート83全体に選別物202が堆積し、オーバーフローする危険がある。また比較例では、傾斜板90が設けられていないため排出口84の角に選別物202が堆積する。
汚染物乾式処理システム101の全体構成及び処理フローは次の通りである。
振動篩等で礫やごみ殻を取り除き、天日、風乾燥された原土は、原土ホッパー111内に一時的に貯留された後、土移送装置113を介して混練機103の上部に設けられたバイブレータ付きの混練機上ホッパー105に送られる。混練機103は、横型2軸のパドルミキサーであり、供給口及び排出口近傍はパドルに代えてスクリューが取付けられている。
混練機103には、混練機上ホッパー105から原土が、鉄粉フィーダー108(図18参照)からマグネタイト粉末が供給され、これらが混合された後、混練機排出口104に設けられた混練機下ホッパー106に送られる。混練機103で混合されてなる原土とマグネタイト粉末との混合物が被選別物201となる。
混練機下ホッパー106には、磁力選別装置7の上部に設けられた被選別物ホッパー77に被選別物201を移送する被選別物移送装置115が連結し、被選別物移送装置115を介して被選別物ホッパー77に被選別物201が移送される。
被選別物ホッパー77内の被選別物201は、振動フィーダー71を介して磁力選別装置7に送られ、被選別物201を粒径により3区分に区分けされる。
汚染物乾式処理システム101において、土移送装置113にはチューブコンベヤを好適に使用することができる。チューブコンベヤは、チューブ内にヘリカルコイルを備え、ヘリカルコイルの回転により原土を搬送する。このとき水分や静電気等で結合した原土の2次粒子は、チューブ内を回転するヘリカルコイルにより解砕され、また原土の表面が研磨され、細粒子化される。これにより粒径に応じた分級が可能となる。
汚染物乾式処理システム101で使用可能な磁力選別装置は、本実施形態に示す磁力選別装置7に限定されるものではなく、第1から第6実施形態に示すいずれか1の磁力選別装置を使用することができる。また本汚染物乾式処理システム101では、汚染物が放射性物質汚染土壌であるが、汚染物は放射性物質汚染土壌に限定されるものではない。
図18は、本発明の第8実施形態の汚染物乾式処理システム102の構成図及び装置・機器の配置図である。図16に示す本発明の第7実施形態の汚染物乾式処理システム101と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
第8実施形態の汚染物乾式処理システム102も第7実施形態の汚染物乾式処理システム101と同様に放射性物質汚染土壌(原土)を放射性物質の濃度により区分するための乾式連続処理システムであり、基本構成も汚染物乾式処理システム101とほぼ同じである。一方、汚染物乾式処理システム102は、トラックの荷台に設置可能な車載システムであり、装置・機器の配置図等が工夫されている。
汚染物乾式処理システム102は、原土から礫、ごみがら等を取り除き、さらに乾燥等を行う前処理工程を実行する前処理装置と、前処理処置で得られる原土にマグネタイト粉末を添加、混合し、これを磁力選別により分級する磁選分級工程を実行する磁選分級装置と、運転を制御する制御装置とに大別される。
前処理装置は、原土から礫、ごみがら等を取り除き、さらに乾燥等を行う装置であり、解砕装置121、解砕装置121の上流に設置される第1振動篩131、解砕装置121の出口部に設けられる土移送装置113、土移送装置113の下流に設置される第2振動篩141を有する。前処理装置は、小型トラックの荷台に載置可能な大きさであり、中型トラックであれば荷台401の2割〜3割程度を占める大きさである。
解砕装置121は、第1振動篩131により供給される礫、ごみがらが取り除かれた原土を解砕、乾燥する装置である。解砕装置121は、ジャケット付きの撹拌槽123を有し、撹拌槽123内にパドルタイプ撹拌機122が、ジャケット内に加熱器126が装着されている。
ジャケットには、熱媒体が充填され、当該熱媒体が加熱器126により加熱されることで撹拌槽123内の原土を乾燥させる。撹拌槽123には蒸気を外部に排出する排出口(図示省略)が設けられている。また加熱器126にはヒートポンプ127が接続する。
第1振動篩131は、篩目を20〜50mm程度とし、上部に放射性物質汚染土壌の原土を受入る篩上ホッパー133、下部に篩下ホッパー135を備え、篩下ホッパー135と解砕装置121の撹拌槽123とが管路を介して結ばれる。第1振動篩131は、解砕装置121の上流に設置され、原土から礫、ごみ殻を取り除き、礫、ごみ殻が取り除かれた原土を解砕装置121に供給する。
解砕装置121の排出口125には、土移送装置113であるベルトコンベアが設置され、解砕装置121により解砕、乾燥された原土が第2振動篩141に送られる。
第2振動篩141は、篩目を2〜5mm程度とし、下部に篩下ホッパー143を備え、篩下ホッパー143と混練機103とが管路を介して連通し、解砕装置121から送られる原土からさらに礫、ごみ殻を取り除き、混練機103に供給する。
磁選分級装置は、前処理装置により礫、ごみ殻が取り除かれ、さらに解砕、乾燥された原土とマグネタイト粉末とを混合し、これを磁力選別し粒径により3区分に区分ける装置であり、原土とマグネタイト粉末とを混合する混練機103と、被選別物移送装置115であるベルトコンベアと磁力選別装置7とを含む。磁選分級装置は、小型トラックの荷台に載置可能な大きさであり、中型トラックであれば荷台401の2割〜3割程度を占める大きさである。
本実施形態で使用する磁力選別装置7は、分別回収槽38にフレキシブルコンテナバッグを使用するが、基本構成は第7実施形態の汚染物乾式処理システム101で使用する磁力選別装置7と同じである。
制御装置161は、汚染物乾式処理システム102の各装置・機器の運転を制御する。これにより予め定められた処理手順により放射性物質汚染土壌を粒径で選別・回収可能に汚染物乾式処理システム102を運転することができる。
汚染物乾式処理システム102の装置・機器の配置を説明する。前処理装置は、第1振動篩131、解砕装置121、ベルトコンベア113、第2振動篩141が一直線上に配置されている。さらに第1振動篩131から排出される礫、ごみ殻を貯留する粗大分貯留槽151が第1振動篩131の上流側に、第2振動篩141から排出される礫、ごみ殻を貯留する粗大分貯留槽151が第2振動篩141の下流側に配置されている。粗大分貯留槽151も前処理装置の直線上に配置されている。
磁選分級装置は、ベルトコンベア115、磁力選別装置7が一直線上に、かつ前処理装置に平行に配置されている。混練機103は、前処理装置と磁選分級装置とを結ぶように、前処理装置と磁選分級装置とに直交するように配置されている。
汚染物乾式処理システム102の処理手順を示す。原土は、手作業あるいはミニバックホー等の機械により第1振動篩131の篩上ホッパー133に供給され、ここで礫・ごみ殻等が除去される。礫・ごみ殻等は、シュート153から粗大分貯留槽151に落下する。礫・ごみ殻等が取り除かれた原土は、解砕装置121で解砕、乾燥された後、ベルトコンベア113から第2振動篩141に送られる。
第2振動篩141でさらに礫・ごみ殻等が取り除かれた原土は、混練機103で鉄粉フィーダー108から供給されるマグネタイト粉末と混合され、ベルトコンベア115により磁力選別装置7に送られ3区分に選別される。
以上からなる汚染物乾式処理システム102は、1〜2台の車上に架装できるため一般住宅等の庭先など仮々置場に埋設されている除染土を現地にて分級減容化するのに適している。具体的には庭先等に埋設された除染土など、小口の汚染土をその場でごみ等粗大分の除去と乾燥、解砕などの前処理を行い、磁選処理し、大粒径区分に分級された低濃度土を現地埋め戻し材とすることができる。
これにより、健全な山を切り崩すことで調達しなくてはならない埋め戻し土の必要量を低減させ、自然環境破壊を低減化するとともに、除染土の移送量を削減することで、輸送中の2次汚染拡大の抑制、化石燃料消費低減に伴う二酸化炭素排出量の抑制など、環境負荷の低減にも資する。
以上、第1〜第6実施形態の磁力選別装置に示すように本発明の磁力選別装置は、磁選機が回転ドラムの磁石部の位置を変更可能な位置可変機構を備え、さらに選別装置が区分けする粒径を変更可能な粒径可変機構を備えるので汚染物の濃度に対応した分別が可能となる。粒径可変機構は、単純な構成からなるのでこのような粒径可変機構を備える磁力選別装置は、実用的で使い勝手に優れる。
また本発明の磁力選別装置は、被選別物を供給する供給装置が被選別物を薄層化する薄層化手段を備えるので優れた分級性能を発揮することができる。さらに薄層化手段は構成が簡単であるので既設の供給装置にも容易に適用できる。
本発明の磁力選別装置は、被選別物の供給速度、回転ドラムの回転速度などの運転条件、磁選機の回転ドラムに対する磁石の位置、回転ドラム表面磁束密度などの装置特性、被選別物の含水率等の被選別物の磁着特性を変更可能なため、これを調節することで所望の区分けが可能となる。
本発明の磁力選別装置は、粉粒体状の汚染物を被選別物とするため幅広く利用することができる。放射性物質汚染土壌を被選別物とし、本発明の磁力選別装置、汚染物乾式処理システムを用いて処理すれば効率的な除染、減容化が実現できる。
図面を参照しながら好適な磁力選別装置、磁力選別装置の使用方法、汚染物乾式処理システムを説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
吐出層厚低減器具:三角歯効果確認試験
乾燥真砂土(含水率0.5wt%未満)2mm目篩通過分に対して磁性鉄粉を0.5wt%坦持したものを供試体とし、第1実施形態に示す磁力選別装置1を用いて選別実験を行った。回転ドラム11の直径は300mm、幅は300mmであり、表面磁束密度は3,000G、周速度は28.2m/minとした。回転ドラム11の回転方向は時計廻りである。回転ドラム11の磁石部18の傾斜角度θ1は0°である。
図19に仕切板32a、32bの位置及び区分を示した。仕切板32a、32bの左右方向の位置は、回転ドラム11の中心点を基準に鉛直板33bの位置を回転ドラム11の中心点の真下に、鉛直板33aの位置を回転ドラム11の中心点から右に120mmとした。また鉛直板33a、33bの上端の位置は、回転ドラム11の下端からΔH=40mmとした。
区分Aは、小粒径主体の磁着区分である。鉛直板33aと鉛直板33bとの間に挟まれる区分Bは、中粒径主体の磁着区分である。区分Nは、大粒径主体の未着区分である。以降、区分Aと区分Bとを仕切る仕切板を小粒径側仕切、区分Bと区分Nとを仕切る仕切板を大粒径側仕切と呼ぶ。
本実験では振動フィーダー71のトラフ先端73に三角歯状の板材74を装着した場合と、それを装着しなかった場合について、供試体の供給速度(処理速度)を385〜1,300kg/hとし、分級状況を確認した。三角歯状の板材74を未装着の場合、振動フィーダー71のトラフ先端73は、一直線状で平坦なため以降、平歯と記す。各区分について106、212、425、850μm開きの土木試験用篩で分級し、評価を行った。
図20〜図22に、供試体の供給速度と各磁着区分における粒径範囲の質量率(処理前原土を100%とする)との関係を示した。
区分Aについては、平歯では、粒径0〜106μm、0〜212μm、0〜425μm分の質量率はいずれにおいても供給速度に対し変化が小さく、また質量率は1.1wt%以下であった。これに対し三角歯ではいずれの範囲の質量率も供給速度に対し単調増加の傾向が見られた。このことは供給速度の増加に伴い、粒子間の分離が進んでいることを示唆し、供給速度が大きいほど三角歯が良く作用していることが伺える。
区分Bについては、平歯、三角歯ともに供給速度に対し、粒径0〜212μm、0〜425μmの質量率が単調増加した。そのトレンドから供給速度500〜1,000kg/hの範囲において、粒径0〜425μm分は平歯で8〜10wt%、三角歯で10〜12wt%であり後者が多く、粒径0〜212μm分は平歯が7〜8wt%であるのに対し、三角歯が9〜10wt%であり後者の方が多い。粒径0〜106μm分は、両者とも単調減少しているが、特に後者が著しい。これは供給量が大きいほど、区分Bから区分Aへ細粒分の移動が多くなるためと考えられる。
区分A+Bは、平歯、三角歯ともに供給速度に対し、粒径0〜212μm、0〜425μm分の質量率が単調増加したが後者の方が顕著であり、粒径0〜106μm分は、平歯は横ばい、三角歯は若干の増加傾向であった。供給速度500〜1,000kg/hの範囲で粒径0〜425μm分では平歯は9〜11wt%に対し、三角歯は10〜14wt%、粒径0〜212μm分は平歯は8〜9wt%に対し、三角歯は10〜11wt%とともに後者の方が多い。
以上より、粒径0〜425μmの比較的小粒径分を総磁着分A+Bとして回収する、及び粒径0〜106μmの微細粒分を区分Aとして濃縮するためには三角歯を付加した方が効率がよく、とくに供給速度が大きいときに有効であるといえる。
汚染物乾式処理システム試験
図16及び図17に示す汚染物乾式処理システム101と同様の設備を用い、選別試験を行った。土移送装置113及び被選別物移送装置115には、チューブ式コンベア(日本興産株式会社製TS−10型)を使用した。
汚染土壌として現場原土(含水率4.7wt%以上)を使用し、これに対して磁性鉄粉を0.2wt%添加し、処理速度1,000kg/h、回転ドラム11の表面磁束密度5,000G、ドラム周速度71m/minで試験を行った。回転ドラム11の直径は300mm、幅は300mmであり、回転ドラム11の磁石部18の傾斜角度θ1は12°とした。また振動フィーダー71のトラフ先端73に三角歯状の板材74を装着した。
図23に小粒径側仕切位置及び大粒径側仕切位置を示した。図23は、回転ドラム11を裏側から見た図であり、図19の回転ドラム11と見る方向が逆であるため回転方向が反時計廻りとなっている。小粒径側仕切位置は、回転ドラム中心点から52mm(水平方向)、回転ドラム11の下端からΔH2=150mm、大粒径側仕切位置は、回転ドラム中心点から−150mm(水平方向)、回転ドラム11の下端からΔH1=50mmとした。
現場原土の粒径分布及び放射能濃度分布を図24に示した。放射能濃度は、ゲルマニウム検出器による放射線分光分析による値である。小粒径ほど放射能濃度が高くなっている。現場原土の放射能濃度のオーバーオール平均値(全体平均)は、42,600Bq/kgであった。
図25に分級結果を示した。図25において実験データは、106μmの篩下成分は53μm、106〜212μm成分は159μm、212〜425μm成分は318.5μm、425〜850μm成分は637.5μm、850〜2000μm成分は1425μmの位置にプロット(各隣接篩間の目開きの平均値)している。これについては、以降の図においても同じである。
分級後の質量比率(オーバーオール)は、区分A(小粒径分):区分B(中粒径分):区分N(大粒径分)=1:43:56であり、放射能濃縮比は、原土のオーバーオール平均値42,600Bq/kgを1とし、処理後の濃度を規格化して示した場合、区分A:区分B:区分N=2.21:1.52:0.62であった。以上より原土から低濃度分である区分Nへ区分される量を減質量率と定義すると、減質量率は56%、12,900Bq/kgの原土を8,000Bq/kg未満へ、4,800Bq/kgの原土を3,000Bq/kg未満へ、低濃度分として得ることが可能であると予測される。
また図25に示すように現場原土と、各区分に区分けされた土壌の合算分である区分A+B+Nとを比較すると、後者は粒径600μm以上の土壌が減少し、逆に粒径600μm以下の土壌が増加していることが分かる。このことは土移送装置113及び被選別物移送装置115において、旋回するヘリカルコイルと土粒子、土粒子同士が衝突することにより、大粒径表面に付着した小粒径分が解砕分離され、また大粒径表面が研削されたことを示唆していると言える。
図26は、土移送装置113にチューブ式コンベア(日本興産株式会社製TS−10型)を使用し、真砂土(含水率0.5wt%未満)を通過させたときの粒径分布である。真砂土は、硬度の高い石英や長石類を多く含み、研磨しにくいと予想されるが、チューブ式コンベアを通過させることで粒径300μm以上の真砂土が減少し、逆に粒径300μm以下の真砂土が増加していることが分かる。
模擬原土を用いた運転条件比較試験(ドラム周速度)
三角歯効果確認試験と同様に第1実施形態に示す磁力選別装置1を用いて選別実験を行った。供試体には、以下の要領で得られた模擬原土を使用した。市販の真砂土、黒土、田土を質量比で真砂土:黒土:田土=86:7:7の割合で調合後、2mm目篩に通し、通過分を使用した。模擬原土の含水率は1.4wt%未満である。
模擬原土に対して磁性鉄粉を0.2wt%添加し、処理速度2,200kg/h、回転ドラム11の周速度を56,71,87m/min、回転ドラムの磁石部18の傾斜角度θ1を12°とし、試験を行った。回転ドラム11の直径は300mm、幅は300mm、回転ドラム11の表面磁束密度は5,000Gである。また振動フィーダー71のトラフ先端73に三角歯状の板材74を装着した。
小粒径側仕切位置は、図23において回転ドラム中心点から6mm(水平方向)、回転ドラム11の下端からΔH2=135mm、大粒径側仕切位置は、図23において回転ドラム中心点から−150mm(水平方向)、回転ドラム11の下端からΔH1=50mmとした。回転ドラム11の回転方向は、図23において半時計廻りである。
回転ドラム11の周速度を大きくすると次の効果が生じると考えられる。
(1−1)粒径区分別分級に有利:回転ドラム単位断面積に落着する土粒子の量が減じるので回転ドラム上に広く土粒子が分散され、粒子同士の分離が促進される。
(1−2)粒径区分別分級に有利:回転ドラムとこれに落着する土粒子との相対速度が大きくなるので、解砕による粒子同士の分離が促進される。
(1−3)中〜大粒径分は早期に脱着する:回転ドラムに付着した土粒子の受ける遠心力(回転ドラムから引きはがす力)が大きくなるため、着磁力の不十分な土粒子がドラム表面から離脱するタイミングが早くなる。また、磁着力が十分な土粒子は、周速度上昇により大きな水平速度を得るため、回転ドラムからより遠くへ投射される。
図27〜図29に質量率分布を示した。図中、区分A+Bは磁着分を示し、これの質量率を磁着率と呼ぶ。ここで磁着分は、回転ドラム11に落着後すぐには脱着しない粒径成分である。回転ドラム11の周速度と磁着率との関係は表1の通りであり、周速度の低下により磁着率が増加している。これは主に上記(1−3)の効果によるものと思われる。
回転ドラム11の周速度と区分A、区分B、区分A+Bの質量率の分布との関係を見ると、周速度の最も速い87m/minの場合が、もっとも小粒径側へシフトしている。これは主に上記(1−1)(1−2)の効果によるものと思われる。
磁着分(区分A+B)について0〜212μmの質量率(細粒分磁着収集率、試験体模擬原土を100wt%とする)に着目すると、表1に示すように回転ドラム11の周速度が遅いほど細粒分磁着収集率が大きかった。
以上の結果から、細粒分をより多く収集し、低濃度分である区分Nの放射能濃度(濃縮比)を下げるためには、周速度が遅い方がよく、高濃度分である区分A+Bの放射能濃度(濃縮比)を上げ、これを減量するためには、周速度が速いほどよい。現場の状況により、低濃度分を土木建設用土として再生利用するためになるべく濃縮比を下げ希釈したい、又は高濃度分は管理する費用がかさむので可能な限り減量したい場合が生じると推察する。現場の要望により、ドラム周速度を適宜変化させ運転することでこれらの要望に柔軟に応えることができる。
模擬原土を用いた運転条件比較試験(大粒径側仕切位置)
模擬原土を用いた運転条件比較試験(ドラム周速度)と同じ要領で、大粒径側仕切位置を変化させ選別実験を行った。回転ドラム11の周速度は71m/minとし、小粒径側仕切位置及び大粒径側仕切位置を以下のように設定した。他の条件は、模擬原土を用いた運転条件比較試験(ドラム周速度)と同じである。
小粒径側仕切位置は、図23において回転ドラム中心点から6mm(水平方向)、回転ドラム11の下端からΔH2=135mm、大粒径側仕切位置は、図24において回転ドラム中心点から−150mm、−100mm、−60mm(水平方向)の3点とした。大粒径側仕切の高さは、回転ドラム11の下端からΔH1=50mmとした。
大粒径側仕切位置が変化することで以下が予想される。
(2−1)大粒径側仕切位置がドラム水平中心位置0mmへ近く位置するほど、低濃度分Nの質量率(オーバーオール)が増加し、その中に占める小中粒径分の割合が増加する。
(2−2)(2−1)と相反して大粒径側仕切位置がドラム水平中心位置0mmへ近く位置するほど、中粒径区分Bの質量率(オーバーオール)が減少し、その中に占める大粒径成分の割合が減少する。
図30に大粒径側仕切位置の変化による質量率(オーバーオール:全粒径帯域)の変化を示した。大粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmへ近く位置するほど、低濃度分Nの質量率(オーバーオール)が増加し、中粒径区分Bや区分A+Bの質量率(オーバーオール)が減少した。これは主に上記(2−1)、(2−2)の効果によるものと思われる。
図31〜図33に質量率分布を示した。区分A、区分B、区分A+Bの分布を見ると大粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmへ近く位置するほど小粒径側へシフトし、磁着率が低下している。区分Nの分布を見ると大粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmへ近く位置するほどその中に占める小中粒径成分の割合が増加した。これは主に上記(2−1)、(2−2)の効果によるものと考えられる。
なお大粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmへ近く位置するほど区分Nの分布の大粒径成分が減じているが、これは、仕切位置が0mmに近づくほど、区分Nに区分される土粒子の水平速度成分が大きくなった状況で仕切板32aと衝突し跳ね返されて落着するために、解砕が進んだためと考えられる。
磁着分(区分A+B)について比較的汚染濃度の高い0〜212μmの質量率(細粒分磁着収集率)に着目すると、大粒径側仕切位置と細粒分磁着収集率との関係は表2で示される。大粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmへ近く位置するほど、細粒分磁着収集率が低下した。
大粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmへ近く位置するほど、磁着分の分布が小粒径側へシフトする。細粒分をより多く収集し、低濃度分である区分Nの放射能濃度(濃縮比)を下げるためには、大粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmから遠い方がよい。高濃度分である区分A+Bの放射能濃度(濃縮比)を上げ、これを減量するためには、大粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmから近いほどよい。
現場の状況により、低濃度分を土木建設用土として再生利用するためになるべく濃縮比を下げ希釈したい、又は高濃度分は管理する費用がかさむので可能な限り減量したい場合が生じると推察される。現場の要望により、大粒径側仕切位置を適宜変化させ運転することでこれらの要望に柔軟に応えることができる。
大粒径側仕切位置により、質量率分布に大きな影響を受ける区分Bについて、その分布の最頻値で規格化(最頻値規格化質量率)したグラフを図34に示す。大粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmに近づくほど、規格化された粒径分布が小粒径側へシフトしている。ここで、最頻値の0.8となる粒径をd80とし、0.2となる粒径をd20と定義し、これらを分級指標粒径(B)と称す。d80は、各曲線に2点存在するが、大粒径側の値を採用した。これを図35に示す。分級指標粒径(B)は、大粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmへ近く位置するほど低下した。
模擬原土を用いた運転条件比較試験(小粒径側仕切位置)
模擬原土を用いた運転条件比較試験(大粒径側仕切位置)と同じ要領で、小粒径側仕切位置を変化させ選別実験を行った。小粒径側仕切位置及び大粒径側仕切位置は以下のように設定した。他の条件は、模擬原土を用いた運転条件比較試験(大粒径側仕切位置)と同じである。
処理速度は、約400、600、2,200kg/hとし、回転ドラム11の磁石部18の傾斜角度θ1は0°とした。また振動フィーダー71のトラフ先端73は、三角歯状の板材74を装着した。小粒径側仕切位置及び大粒径側仕切位置を以下のように設定した。他の条件は、模擬原土を用いた運転条件比較試験(大粒径側仕切位置)と同じである。
小粒径側仕切の水平方向の位置は、図23において回転ドラム中心点から100mm、150mm、200mm、250mm、小粒径側仕切の高さ方向の位置は、回転ドラム11の下端からΔH2=135mmとした。但し、小粒径側仕切の水平方向の位置が250mmの場合、小粒径側仕切の高さ方向の位置は、回転ドラム11の下端からΔH2=150mmとした。大粒径側仕切水平方向の位置は、図23において回転ドラム中心点から−150mm、大粒径側仕切の高さは、回転ドラム11の下端からΔH1=150mmとした。また、図23においてθ1=0°としている。
小粒径側仕切位置が変化することで以下が予想される。
(3−1)小粒径側仕切位置がドラム水平中心位置0mmから遠く位置するほど、区分Bの質量率(オーバーオール)が増加し、その中に占める小粒径成分の割合が増加する。
(3−2)(3−1)と相反して小粒径側仕切位置がドラム水平中心位置0mmから遠く位置するほど、区分Aの質量率(オーバーオール)が減少し、その中に占める中粒径成分の割合が減少する。
図36に処理速度約2,200kg/hにおける、小粒径側仕切位置の変化による質量率(オーバーオール:全粒径帯域)の変化を示した。小粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmから遠く位置するほど、区分Bの質量率(オーバーオール)が増加し、区分Aの質量率(オーバーオール)が減少した。
図37に小粒径側仕切位置200mmにおける、処理速度による質量率の変化を示した。各質量率は600kg/h付近で極値をとるものの、大きな変化は見受けられなかった。
図38に小粒径側仕切位置による質量率(オーバーオール)の変化を示した。区分A、区分B、区分A+Bの変化はほとんどないので、小粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置から200mm以上ではほぼ平衡状態となると考えられる。
図39〜図44に質量率分布を示した。
図39、図40、図42に処理速度約2,200kg/hにて、小粒径側仕切位置を100、150、200mmと変化させたときの質量率分布を示した。区分A、区分B、区分A+Bの分布を見ると小粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmから遠く位置するほど小粒径側へシフトしている。小粒径側仕切位置と磁着率との関係を表3に示した。表3に示すように小粒径側仕切の位置が変わっても磁着率は特に顕著に低下しなかった。
区分Nの分布を見ると小粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmへ近く位置するほどその中に占める小中粒径成分の割合が増加する。これは主に上記(3−1)、(3−2)の効果によるものと考えられる。
磁着分(区分A+B)について比較的汚染濃度の高い0〜212μmの質量率(細粒分磁着収集率)を表3に示した。小粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmから遠くへ位置するほど、磁着分の分布が小粒径側へシフトする。これから細粒分をより多く収集し、低濃度分である区分Nの放射能濃度(濃縮比)を下げるためには、小粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmから遠い方がよいことが分かる。
図41、図42、図43に小粒径側仕切位置200mmにて処理速度を約600、2,200、400kg/hと変化させたときの質量率分布を示した。処理速度にかかわらず、ほぼ同様の傾向を示すが、処理速度約600kg/hのとき、区分Aの質量率が他より大きくなり、区分Bは相反して小さくなっている。
処理速度と磁着率(区分A+B)との関係を表4に示した。表4に示すように処理速度が変わっても磁着率はあまり大きく変化しなかった。また磁着分(区分A+B)について比較的汚染濃度の高い0〜212μmの質量率(細粒分磁着収集率)と処理速度との関係についても、表4に示すように処理速度が変わっても細粒分磁着収集率は、あまり変化しなかった。
図43及び図44に、三角歯、処理速度約400kg/hにおける小粒径側仕切位置200mm、及び250mmの質量率分布を示した。図43及び図44に示すように三角歯装着時の小粒径側仕切位置200mm、250mmの質量率曲線を比較するとほとんど差がなく、小粒径側仕切位置200mm以上は平衡状態と考えられる。
小粒径側仕切位置により、質量率分布に大きな影響を受ける区分Aについて、その分布の最頻値で規格化(最頻値規格化質量率)したグラフを図45、図47、図49に示す。ここで、最頻値の0.8となる粒径をd80とし、0.2となる粒径をd20と定義し、これらを分級指標粒径(A)と称す。これを図46、図48、図50に示した。
図45より、約2,200kg/h処理のとき、小粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmより遠ざかるほど、規格化された粒径分布が小粒径側へシフトしている。このことは高濃度分である小粒径分を選択的に回収するのに有利であることを示す。図46には、上記条件下での最頻値規格化質量曲線の分布の目安である分級指標粒径(A)の変化を示した。小粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmより遠ざかるほど、d80、d20ともに単調減少し、これらの粒径間隔が狭くなる。
図47より、小粒径側仕切位置200mmにおいて約400、600、2,200kg/h処理速度を変化させた場合、約600kg/hを除いて規格化された粒径分布はほぼ同じであった。図48には、上の条件下での最頻値規格化質量曲線の分布の目安である分級指標粒径(A)の変化を示した。処理速度によらずd80、d20、これらの粒径間隔がほとんど変わらなかった。
図49より、処理速度約400kg/h処理のとき、小粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmより遠ざかるほど、規格化された粒径分布が小粒径側へシフトしている。このことは高濃度分である小粒径分を選択的に回収するのに有利であることを示す。ここでは、図45に示したものよりもさらに小粒径側へシフトしている。図50には、上記条件下での最頻値規格化質量曲線の分布の目安である分級指標粒径(A)の変化を示した。小粒径側仕切位置が回転ドラム11の水平中心位置0mmより遠ざかるほど、d80は減少したが、d20はほぼ一定であった。