JP2019065059A - グラフト共重合体からなる粉末及びその製造方法 - Google Patents

グラフト共重合体からなる粉末及びその製造方法 Download PDF

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雄介 天野
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一彦 前川
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Abstract

【課題】高い結晶性及び良好な水溶性を有するとともに、従来のビニルアルコール系樹脂に比べて高い軟化温度を有するグラフト共重合体からなる粉末を提供する。【解決手段】グラフト共重合体からなる粉末であって、前記グラフト共重合体が、ポリビニルアルコールからなる主鎖と、アミド基を有する所定の繰り返し単位から構成される重合体からなる側鎖とを有し、前記グラフト共重合体中の全単量体単位に対する前記繰り返し単位の含有量が0.2〜20mol%であり、平均粒子径が20〜1,000μmであり、かつ水100gに対して2g以上完全に溶解することができる粉末とする。【選択図】図1

Description

本発明は、高い結晶性及び良好な水溶性を有するとともに、従来のビニルアルコール系樹脂に比べて高い軟化温度を有するグラフト共重合体からなる粉末及びその製造方法に関する。
ポリビニルアルコール樹脂は、数少ない結晶性の水溶性高分子であり、従来から、その優れた皮膜特性(強度、耐油性、造膜性、酸素ガスバリア性等)や水溶性を利用して、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、繊維加工剤、各種バインダー、紙加工剤、接着剤、フィルム等に広く利用されている。上記物性は、ポリビニルアルコール樹脂の高い結晶性に起因して発現する。一方、通常ポリビニルアルコール樹脂はガラス転移温度(約70℃)を超えると軟化する。用途によっては、ポリビニルアルコール樹脂の温度がガラス転移温度近くに上昇することによって、機械的物性やバリア性の急激な低下を招くという問題を抱えていた。
こうした課題に対して、ポリビニルアルコール樹脂の結晶ラメラサイズを制御することによってガラス転移温度を向上させる方法が提案されている。例えば、非特許文献1には、結晶サイズが制御されたポリビニルアルコール樹脂は、通常のポリビニルアルコール樹脂よりも高いガラス転移温度を有していることが記載されている。しかしながら、このような制御によって結晶性は大きく低下した。このように、ポリビニルアルコール樹脂の結晶性を維持しつつ、ガラス転移温度を上昇させることは困難であった。
通常、ポリビニルアルコール樹脂の機能化には、ポリビニルアルコールに他の成分を化学的に導入する方法が用いられる。例えば共重合によって他の成分を導入する方法や、ポリビニルアルコール樹脂を溶媒に溶解させた後、溶液中で変性させる方法等が一般的に知られている。しかしながら、これらの方法では、導入された他の成分によってポリビニルアルコール部分の結晶化が阻害されるため、他成分の含有量に比例して結晶化温度が低下すること、すなわち結晶性が低下することが知られている。
一方、ポリビニルアルコール樹脂を機能化させる方法として、ポリビニルアルコールの主鎖に対して、他成分をグラフト重合させる方法も知られている。例えば、非特許文献2には、ポリビニルアルコール主鎖にN−イソプロピルアクリルアミドをグラフト重合させてなるグラフト共重合体ゲルが記載されている。しかしながら、非特許文献2に記載されたグラフト共重合体ゲルは、膨潤性とメチレンブルーの放出量の関係を議論しているのみであり、グラフト共重合体の熱物性については一切記述されていない。また、当該グラフト共重合体ゲルは、水溶性が不良であった。
「機能性マテリアルズの進展」(月刊コンバーテック、2009年12月、60−65頁) 「Radiation preparation of PVA−g−NIPAAm in a homogenious system and its application in controlled release」(Radiation Physics and Chemistry,Vol.57,(2000)481−484頁)
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、高い結晶性及び良好な水溶性を有するとともに、従来のビニルアルコール系樹脂に比べて高い軟化温度を有するグラフト共重合体からなる粉末及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリビニルアルコールの主鎖にアミド基を有するグラフト鎖を所定量導入することによって、高い結晶性と良好な水溶性とを維持しつつ、ガラス転移温度を上昇させることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、上記課題は、
[1]グラフト共重合体からなる粉末であって、
前記グラフト共重合体が、ポリビニルアルコールからなる主鎖と、下記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位から構成される重合体からなる側鎖とを有し、
前記グラフト共重合体中の全単量体単位に対する下記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位の含有量が0.2〜20mol%であり、
平均粒子径が20〜1,000μmであり、かつ
水100gに対して2g以上完全に溶解することができる粉末;
Figure 2019065059
[式中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の水酸基又はアシル基を有してもよいアルキル基を表す。R2及びR3は相互に連結して環を形成していてもよい。]
Figure 2019065059
[式中、R1は、上記式(I)と同じである。R4及びR5は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の水酸基又はアシル基を有してもよいアルキル基を表す。R4及びR5は相互に連結して環を形成していてもよい。]
[2]前記グラフト共重合体が前記式(I)で表される繰り返し単位から構成される重合体からなる側鎖を有する[1]に記載の粉末;
[3]前記グラフト共重合体がポリN−ビニルホルムアミド、ポリN−ビニルアセトアミド及びポリN−ビニルピロリドンからなる群から選択される少なくとも一種からなる側鎖を有する[2]に記載の粉末;
[4]前記グラフト共重合体の数平均分子量が5,000〜250,000である[1]〜[3]のいずれかに記載の粉末;
[5]アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計含有量が0.5質量%以下である[1]〜[4]のいずれかに記載の粉末;
[6]平均粒子径が20〜1,000μmであるポリビニルアルコール粉末に電離放射線を照射する工程と、
電離放射線が照射されたポリビニルアルコール粉末を、下記式(III)又は式(IV)で表される単量体を含む溶液中に分散させてグラフト重合を行う工程を備える[1]〜[5]のいずれかに記載の粉末の製造方法;
Figure 2019065059
[式中、R1、R2及びR3は、上記式(I)と同じである。]
Figure 2019065059
[式中、R1、R4及びR5は、上記式(II)と同じである。]
[7]水分率15質量%以下のポリビニルアルコール粉末に電離放射線を照射する[6]に記載の粉末の製造方法;
を提供することにより解決される。
本発明のグラフト共重合体からなる粉末(以下、本発明の粉末と略称することがある)に含まれるグラフト共重合体は、高い結晶性及び良好な水溶性を有するうえに、従来のビニルアルコール系樹脂に比べて高い軟化温度を有する。したがって、このような特性を生かして、本発明の粉末は様々な用途に好適に用いられる。また、本発明の製造方法によれば、本発明の粉末を、効率よく製造することができる。
実施例1〜9、11〜16、比較例4、5、7の共重合体における、変性量に対して、ガラス転移温度をプロットした図である。 実施例1〜9、11〜16、比較例4、5、7の共重合体における、変性量に対して、結晶融解温度をプロットした図である。 実施例19及び実施例20において、混錬時間に対して、トルクをプロットした図である。
(グラフト共重合体)
本発明は、グラフト共重合体からなる粉末であって、前記グラフト共重合体が、ポリビニルアルコールからなる主鎖と、下記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位から構成される重合体からなる側鎖とを有し、前記グラフト共重合体中の全単量体単位に対する下記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位の含有量が0.2〜20mol%であり、平均粒子径が20〜1,000μmであり、かつ水100gに対して2g以上完全に溶解することができる粉末である。
Figure 2019065059
[式中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の水酸基又はアシル基を有してもよいアルキル基を表す。R2及びR3は相互に連結して環を形成していてもよい。]
Figure 2019065059
[式中、R1は、上記式(I)と同じである。R4及びR5は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の水酸基又はアシル基を有してもよいアルキル基を表す。R4及びR5は相互に連結して環を形成していてもよい。]
前記グラフト共重合体において、側鎖の重合体は上記式(I)で表される繰り返し単位と上記式(II)で表される繰り返し単位の少なくとも一方から構成されるものであればよい。
上記式(I)中、R1は、水素原子又はメチル基を表す。水溶性がさらに向上する観点から、R1は水素原子であることが好ましい。
上記式(I)中、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の水酸基又はアシル基を有してもよいアルキル基を表す。ここで、前記アルキル基の炭素数は置換基(アシル基)中の炭素原子も含めたものを意味する。前記アルキル基の炭素数は、5以下が好ましい。前記アルキル基に含有されるアシル基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基等が挙げられる。
上記式(I)中、R2及びR3は相互に連結して環を形成していてもよい。この場合、R2及びR3に含有される炭素原子の合計数が1〜10である必要がある。
上記式(I)で表される繰り返し単位としては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチルビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムが好ましい。中でも、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド及びN−ビニルピロリドンがより好ましく、ガラス転移温度が特に向上する観点から、N−ビニルホルムアミド及びN−ビニルアセトアミドが特に好ましく、N−ビニルアセトアミドが最も好ましい。上記式(I)で表される繰り返し単位は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよいが、前者が好ましい。
上記式(II)中、R1は、上記式(I)と同じである。上記式(II)中、R4及びR5は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の水酸基又はアシル基を有してもよいアルキル基を表す。ここで、前記アルキル基の炭素数は置換基(アシル基)中の炭素原子も含めたものを意味する。前記アルキル基の炭素数は、5以下が好ましい。前記アルキル基に含有されるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられる。
上記式(II)中、R4及びR5は相互に連結して環を形成していてもよい。この場合、R4及びR5に含有される炭素原子の合計数が1〜10である必要がある。
上記式(II)で表される繰り返し単位としては、(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2,2,2−トリヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2,2−ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−[2,3−ジヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−[1−(ヒドロキシメチル)プロピル](メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−[1−エチル−1−(ヒドロキシメチル)プロピル](メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2,3−ジヒドロキシ−1,1−ジメチルプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−[3−ヒドロキシ−2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピル](メタ)アクリルアミド、N−[3−ヒドロキシ−1,1−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピル](メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(4,4−ジヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(1−(ヒドロキシメチル)−3−メチルブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(5−ヒドロキシペンチル)(メタ)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシ−2−メチルペンチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2,3,4,5−テトラヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルペンチル)(メタ)アクリルアミド、N−(6−ヒドロキシヘキシル)(メタ)アクリルアミド、N−(6−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)ヘキシル)(メタ)アクリルアミド、N−(2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル)アクリルアミド、N−[1−(ヒドロキシメチル)−1−メチルヘプチル](メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシ−1−メチルオクチル)(メタ)アクリルアミドが好ましく、中でも、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリルアミド、N,N’−ジメチルアクリルアミド、N,N’−ジエチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、メタクリルアミド、N,N’−ジメチルメタクリルアミド、N,N’−ジエチルメタクリルアミドがより好ましい。上記式(II)で表される繰り返し単位は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよいが、前者が好ましい。
本発明のグラフト共重合体において、側鎖中のアミド基とポリビニルアルコール主鎖の水酸基との間に水素結合による相互作用が生じることにより、非晶部の分子運動が抑制されるため、ガラス転移温度が上昇する。共重合成分がポリビニルアルコールの主鎖中にランダムに配置された従来の共重合体とは異なり、本発明では、グラフト重合を行うことにより、ポリビニルアルコール主鎖に対して、上記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位から構成される重合体が側鎖として導入されている。このように側鎖として導入された重合体は、ビニルアルコール部分の結晶性を阻害しにくいため、下記の実施例で示されているように上記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位の含有量に対する結晶化温度の低下が小さい。従って、高いガラス転移温度と高い結晶性を両立することが可能となる。
前記グラフト共重合体が上記式(I)で表される繰り返し単位から構成される重合体からなる側鎖を有することが好ましい。このような重合体からなる側鎖を有するグラフト共重合体は、特に高いガラス転移温度を有する。前記式(I)で表される構造によってガラス転移温度が向上する理由については不明な点が多いが、繰り返し単位中のアミド基の窒素原子がグラフト共重合体側鎖を構成する重合体の主鎖側に配置されることによって、アミド基と水酸基との水素結合による分子間の拘束力が強まり、結果としてガラス転移温度が向上するものと考えられる。
前記グラフト共重合体中の上記式(I)で表される繰り返し単位から構成される重合体が、ポリN−ビニルホルムアミド、ポリN−ビニルアセトアミド及びポリN−ビニルピロリドンからなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましく、ポリN−ビニルホルムアミド及びポリN−ビニルアセトアミドの少なくとも一種であることがさらに好ましく、ポリN−ビニルアセトアミドであることが特に好ましい。
前記グラフト共重合体中の全単量体単位に対する上記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位の含有量は0.2〜20mol%である。前記繰り返し単位の含有量が0.2mol%未満の場合、ガラス転移温度の上昇が不十分である。当該含有量は、好ましくは0.3mol%以上であり、より好ましくは0.5mol%以上である。一方、前記繰り返し単位の含有量が20mol%を超える場合、結晶性が低下し、成形品とした場合の機械的強度やバリア性等の物性が低下するだけでなく、本発明の一つの特徴である水溶性も悪化する場合がある。当該含有量は、好ましくは15mol%以下であり、より好ましくは13mol%以下である。特に高い結晶性が必要な場合には、当該含有量は好ましくは10mol%以下であり、より好ましくは7mol%以下である。
アミド基の水素結合による分子間の拘束力がより強まる観点から、側鎖を構成する重合体における、上記式(I)又は式(II)で表される単位の繰り返し数は2以上であることが好ましい。
前記グラフト共重合体の分子量としては、数平均分子量が5,000〜250,000であることが好ましい。グラフト共重合体の数平均分子量が5,000未満の場合、成形品とした場合の機械的強度が低下するおそれがある。数平均分子量が10,000以上であることがより好ましく、15,000以上であることがさらに好ましい。一方、グラフト共重合体の数平均分子量が250,000を超える場合、溶液粘度の安定性が低下したり、熱成形時の溶融粘度が増大したりする等、取り扱い性が不十分になるおそれがある。数平均分子量が200,000以下であることがより好ましく、150,000以下であることがさらに好ましい。本発明におけるグラフト共重合体の数平均分子量は、標準物質としてポリエチレンオキシド及びポリエチレングリコールを用い、カラムとして水系カラムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を意味する。
前記グラフト共重合体のガラス転移温度は80℃以上であることが好ましい。このようなガラス転移温度であることにより、前記グラフト共重合体の軟化温度が上昇し、成形品とした場合により高温での使用が可能となる等の利点を有する。一方、前記グラフト共重合体のガラス転移温度は120℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が120℃を超えると、前記グラフト共重合体の結晶性が不十分になるおそれがある。
前記グラフト共重合体の結晶融解温度は200℃以上であることが好ましい。このような結晶融解温度を有することにより、優れた機械強度や高いバリア性が発現される。一方、前記グラフト共重合体の結晶融解温度は、250℃以下であることが好ましい。
本発明の粉末は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、前記グラフト共重合体以外の他の成分を含有していても構わない。他の成分として、光安定剤、酸化防止剤等が挙げられる。前記粉末中の他の成分の含有量は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
本発明の粉末中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計含有量は0.5質量%以下であることが好ましい。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計含有量が上記範囲であると、前記グラフト共重合体の側鎖中のアミド基の熱的安定性が向上してグラフト共重合体の耐熱性がさらに向上する。したがって、本発明の粉末を熱成形等に用いる場合に、得られる成形品の着色を防止できるとともに、グラフト共重合体の熱分解が抑制されて機械的強度がさらに向上する。このような効果は、ルイス酸として働く金属成分が低減することでアミド基の分解が抑えられ、併発する分子鎖分解反応が抑制されることによるものと考えられる。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計含有量は、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
本発明の粉末の熱分解温度は300℃以上であることが好ましい。熱分解温度が上記範囲であると、前記粉末の熱劣化を抑制することができる。熱分解温度は310℃以上であることがより好ましく、320℃以上であることがさらに好ましい。前記粉末の熱分解温度は熱重量測定装置を用いて測定される。具体的な測定条件は下記の実施例に記載のとおりである。
本発明の粉末は水100gに対して2g以上完全に溶解することができる必要がある。ここで、完全に溶解することができるかどうかの判断は、100℃の水100gに対して前記粉末2gが完全に溶解できるかどうかを指標とする。具体的には、以下の方法で判断する。室温(25℃)でイオン交換水100gに対して粉末2gを添加する。得られた混合物を撹拌(150rpm)しながら10℃/minにて100℃まで昇温させた後、当該温度で撹拌を続ける。このとき、100℃に昇温後60分以内に粉末が完全に溶解できるかどうかを指標とする。100℃に昇温後30分以内に粉末が完全に溶解できることが好ましい。また、100℃の水100gに対して粉末2gを完全に溶解させた後、得られたグラフト共重合体水溶液を25℃に自然冷却した場合に、当該水溶液中のグラフト共重合体が完全溶解した状態を維持できることが好ましく、グラフト共重合体水溶液を25℃に冷却してから1日経過後もグラフト共重合体が完全に溶解した状態を維持していることがより好ましい。
本発明の粉末の平均粒子径は20〜1,000μmである。平均粒子径が上記範囲であると、前記グラフト共重合体の取扱性や加工性が向上する。平均粒子径が20μm未満の場合、粉末が飛散し易い等の問題があり、取り扱いが難しく実用的ではない。平均粒子径は50μm以上が好ましく、80μm以上がより好ましい。一方、平均粒子径が1,000μmを超えると、グラフト共重合体を水に溶解させるのに要する時間が長くなり過ぎるうえに、側鎖が均一に導入されたグラフト共重合体が得られない場合がある。平均粒子径は500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましい。本発明における粉末の平均粒子径は、レーザー光による光散乱法を用い、メタノール中にグラフト共重合体粒子を分散させて測定される体積平均径を意味する。
(グラフト共重合体からなる粉末の製造方法)
本発明のグラフト共重合体からなる粉末は、平均粒子径が20〜1,000μmであるポリビニルアルコール粉末に電離放射線を照射する工程と、電離放射線が照射されたポリビニルアルコール粉末を、下記式(III)又は式(IV)で表される単量体を含む溶液中に分散させてグラフト重合を行う工程を備える方法により製造することが好ましい。
Figure 2019065059
[式中、R1、R2及びR3は、上記式(I)と同じである。]
Figure 2019065059
[式中、R1、R4及びR5は、上記式(II)と同じである。]
また、本発明のグラフト共重合体からなる粉末は、平均粒子径が20〜1,000μmであるポリビニルアルコール粉末に電離放射線を照射した後、電離放射線が照射されたポリビニルアルコール粉末を、上記式(III)又は式(IV)で表される単量体を含む溶液中に分散させてグラフト重合を行うことによって得られたものであることが好ましい。
本発明の製造方法に用いられる原料のポリビニルアルコールは、従来公知の方法にしたがい、ビニルエステルモノマーを重合し、得られた重合体を常法によりけん化することによって得ることができる。ビニルエステルモノマーを重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等、従来公知の方法を適用することができる。重合触媒としては、重合方法に応じて、アゾ系触媒、過酸化物系触媒、レドックス系触媒等が適宜選ばれる。けん化反応は、従来公知のアルカリ触媒又は酸触媒を用いる加アルコール分解、加水分解等を適用することができ、この中でもメタノールを溶剤とし、苛性ソーダ(NaOH)触媒を用いるけん化反応が簡便であり最も好ましい。
前記ポリビニルアルコールの製造に用いられるビニルエステルモノマーとしては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。中でも酢酸ビニルが最も好ましい。
前記ポリビニルアルコールは、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の他の単量体単位を有することができる。他の単量体単位は、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸N−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸N−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸N−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸N−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロピルジメチルアミン;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパン等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその塩又はエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニルが挙げられる。他の単量体単位の含有量は、ポリビニルアルコール中の全単量体単位に対して10mol%未満が好ましい。
前記ポリビニルアルコールの粘度平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は、目的とするグラフト共重合体の数平均分子量に合わせて適宜調整すればよく、好ましくは100〜10,000である。粘度平均重合度が上記範囲から外れた場合には、成形品とした場合の機械的強度が低下するおそれがある。前記粘度平均重合度は、より好ましくは200以上であり、さらに好ましくは300以上である。一方、前記粘度平均重合度は、より好ましくは7,000以下であり、さらに好ましくは5,000以下である。
前記ポリビニルアルコールのけん化度(JIS K6726に準拠して測定)としては、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは80モル%以上であり、さらに好ましくは95モル%以上である。けん化度が50モル%未満であると水溶性が低下するおそれがある。一方、前記ポリビニルアルコールのけん化度は、好ましくは99.99モル%以下である。
前記ポリビニルアルコールは、単独で用いてもよいし又は2種以上組み合わせて用いても構わない。
本発明の製造方法において、平均粒子径が20〜1,000μmであるポリビニルアルコール粉末が用いられる。ポリビニルアルコール粉末の粒子径は、粉砕等により適宜調整すればよい。ポリビニルアルコール粉末の均粒子径が20μm未満の場合、粉末が飛散し易い等の問題があり、取り扱いが難しい。当該均粒子径は、50μm以上が好ましく、75μm以上がより好ましい。一方、ポリビニルアルコール粉末の平均粒子径が1000μmを超える場合、側鎖が均一に導入されたグラフト共重合体が得られないうえに、得られるグラフト共重合体を水に溶解させるのに要する時間が長くなり過ぎるおそれがある。当該均粒子径は、平均粒子径は500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましい。
前記ポリビニルアルコール粉末が多孔質のポリビニルアルコール粒子からなるものであることがさらに効率的にグラフト鎖を導入できるため好ましい。多孔質のポリビニルアルコール粒子を得る方法としては、発泡剤等の気孔形成材とポリビニルアルコール樹脂とを溶融混合する方法、ポリビニルアルコール樹脂と非水溶性の成分を複合させた後、得られた複合体から非水溶性の成分を抽出する方法、数μmのポリビニルアルコール粒子を凝集させる方法等が挙げられる。
グラフト重合方法としては、ポリビニルアルコール樹脂と不飽和単量体の共存下、電離放射線を照射する同時照射法が知られている。しかしながら、当該方法は、副反応が起こり易いうえに、分子間架橋によるゲル化によって、得られるグラフト共重合体の水溶性が著しく悪化する等の問題があった。それに対して、本発明の製造方法においては、予め前記ポリビニルアルコール粉末に電離放射線を照射した後、当該ポリビニルアルコール粉末と上記式(III)又は式(IV)で表される単量体とを用いてグラフト重合を行う。通常、樹脂に電離放射線を照射して発生したラジカルは空気中の水等と反応して短時間で失活する。一方、前記ポリビニルアルコール粉末に電離放射線を照射した場合、長期間経過後も当該粉末中のポリビニルアルコールは単量体に対する高い反応性を有する。また、当該方法により得られるグラフト共重合体は良好な水溶性を有する。このメカニズムは明らかではないが、ポリビニルアルコールは高いバリア性を有するため、粉末内部のポリビニルアルコールに発生したラジカルが水等と反応して消失することなく、長期間存在するものと考えられる。また、粉末中ではポリビニルアルコールの分子運動が抑制されているため、ポリビニルアルコール分子間の架橋反応が抑制されながらグラフト反応が選択的に進行するため、水溶性の良好なグラフト共重合体からなる粉末が得られるものと考えられる。
本発明の製造方法において、水分率15質量%以下のポリビニルアルコール粉末に電離放射線を照射することが好ましい。前記ポリビニルアルコール粉末の水分率が15質量%以上の場合、電離放射線を照射することによりポリビニルアルコールに発生したラジカルが消失しやすくなり、ポリビニルアルコールの単量体に対する反応性が不十分になるおそれがある。
ポリビニルアルコール粉末に照射する電離放射線としては、α線、β線、γ線、電子線及び紫外線等が挙げられるが、実用的には電子線及びγ線が好ましく、処理速度が早く、かつ設備も簡便にできる電子線がより好ましい。
ポリビニルアルコール粉末に電離放射線を照射する線量としては、例えば5〜200kGyが好ましく、10〜150kGyがより好ましく、20〜100kGyがさらに好ましく、30〜90kGyが最も好ましい。照射する線量が5kGy未満の場合、得られるグラフト共重合体中の上記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位の含有量が目的の量に到達できないことがある。一方、照射する線量が200kGyを超える場合、コスト高になったり、電離放射線の照射によってポリビニルアルコール粉末が劣化したりするおそれがある。
電離放射線が照射された前記ポリビニルアルコール粉末を、上記式(III)又は式(IV)で表される単量体を含む溶液中に分散させてグラフト重合を行う。このとき用いられる液体媒体は、上記式(III)又は式(IV)で表される単量体を溶解させるが、前記ポリビニルアルコール粉末を溶解させないものである必要がある。前記ポリビニルアルコール粉末が溶解した場合、グラフト重合の進行とポリビニルアルコールに発生したラジカルの失活が同時に進行するため、付加する単量体の量を制御することが困難である。前記グラフト重合に用いられる液体媒体としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;トルエン、ヘキサン等が挙げられる。
グラフト重合を行う工程において、前記ポリビニルアルコール粒子が膨潤することで上記式(III)又は式(IV)で表される単量体が粒子内部まで浸透し、上記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位を均一且つ多量にグラフト共重合体の側鎖に導入することが可能になる。したがって、使用する液体媒体は前記ポリビニルアルコールとの親和性を考慮して選択することが好ましい。上述の液体媒体の中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールは前記ポリビニルアルコールとの親和性が高いため、本発明の製造方法において好適に用いられる。また、前記ポリビニルアルコール粉末が溶解しない範囲で、上記液体媒体に水を共存させることも、上記と同様の理由で効果的である。液体媒体中の水の含有量としては、例えば1〜50質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。水の含有量が1質量%未満の場合、ポリビニルアルコール粒子を膨潤させる効果が十分得られないおそれがある。一方、水の含有量が50質量%を超える場合、ポリビニルアルコール粒子が一部溶解したり、ポリビニルアルコール粒子が膨潤し過ぎたりすることで重合後のグラフト共重合体からなる粉末の取り出しが困難になることがある。
グラフト重合に用いる上記式(III)又は式(IV)で表される単量体の量は、単量体の反応性に合わせて適宜調整される。反応性は前述の通り、前記ポリビニルアルコール粒子への単量体の浸透し易さ等に依存して変化する。したがって、単量体の適切な添加量は、液体媒体の種類や量、またポリビニルアルコールの重合度やけん化度に依存して変化するが、前記ポリビニルアルコール粒子100質量部に対して、0.4〜200質量部が好ましい。上記式(III)又は式(IV)で表される単量体の量が上記範囲から外れる場合には、上記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位の含有量が上記範囲であるグラフト共重合体が得られないおそれがある。上記式(III)又は式(IV)で表される単量体の使用量は、1〜100質量部がより好ましく、2〜50質量部がさらに好ましい。
グラフト重合に用いる上記液体媒体の量は、前記ポリビニルアルコール粒子100質量部に対して、100〜4000質量部が好ましく、200〜2000質量部がより好ましく、300〜1500質量部がさらに好ましい。
前記ポリビニルアルコールに電離放射線を照射するとビニルアルコール単位中のメチン基の炭素原子にラジカルが発生することが確認されている。したがって、上記式(III)又は式(IV)で表される単量体が、ポリビニルアルコールの主鎖を構成するビニルアルコール単位中のメチン基の炭素原子に結合することにより、上記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位が形成されると考えられる。この場合の前記ポリビニルアルコールからなる主鎖と側鎖の重合体との連結部の構造を下記式A及びBにそれぞれ示す。また、前記ポリビニルアルコールに電離放射線を照射するとビニルエステル単位中のメチン基の炭素原子にもラジカルが発生すると考えられ、その場合、上記式(III)又は式(IV)で表される単量体は、当該炭素原子に結合することにより、上記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位が形成されると考えられる。この場合の前記ポリビニルアルコールからなる主鎖と側鎖の重合体との連結部の構造の一例を下記式C及びDにそれぞれ示す。
Figure 2019065059
本発明の製造方法において、グラフト重合を行う場合の反応温度としては、好ましくは20℃〜150℃、より好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは40℃〜100℃である。反応温度が20℃を下回る場合、グラフト重合反応がほとんど進行しないおそれがある。反応温度が150℃を超える場合、アミド基の分解等が生じるおそれがある。
本発明の粉末は、成形体(例えばフィルム、シート、ボード、繊維等)、塗料、接着剤、コート剤、バリア剤等の広範な用途に使用できる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」及び「質量部」を表す。
[変性量の算出]
日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「LAMBDA 500」を用い、室温でグラフト共重合体のH−NMRを測定し、変性量(グラフト共重合体中の全単量体単位に対する上記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位の含有量)を算出した。
[アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計含有量の算出]
株式会社リガク製走査型蛍光X線分析装置「ZSX Primus μ」を用い、グラフト共重合体からなる粉末に含まれるアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計量を測定した。
[数平均分子量の算出]
昭和電工株式会社製サイズ排除高速液体クロマトグラフィー装置「GPC−101」を用い、カラム:東ソー株式会社製水系カラム「TSKgel GMPWXL」、標準試料:ポリエチレンオキシド及びポリエチレングリコール、溶媒及び移動相:0.05mol/Lリン酸緩衝液、流量:1.0mL/min、温度:40℃、検出器:RI、の条件で数平均分子量を測定した。
[平均粒子径の算出]
株式会社堀場製作所製レーザー回折装置「LA−950V2」を用い、グラフト共重合体をメタノールに分散させた状態で体積平均粒子径を測定した。
[水溶性の評価]
室温(25℃)でイオン交換水100gに対してグラフト共重合体からなる粉末2gを添加した後、得られた混合物を撹拌(150rpm)しながら10℃/minにて100℃まで昇温させた。グラフト共重合体が完全に溶解するまで100℃で撹拌を続けた。グラフト共重合体が完全に溶解した後、加熱を停止し、室温(25℃)まで自然冷却した。このときのグラフト共重合体からなる粉末を以下の基準で評価した。

A:100℃に昇温後30分以内に完全に溶解し、冷却してから1日経過後も溶解した状態が維持された。
B:100℃に昇温後60分以内に完全に溶解し、冷却してから1日経過後も溶解した状態が維持された。
C:100℃に昇温後60分経過しても完全には溶解しなかった。
[熱物性評価]
TA instruments株式会社製示差走査熱量測定装置「Q1000」を用い、昇温・降温速度:10℃/min、温度範囲:0℃〜240℃の条件で熱物性を測定した。なお、ガラス転移温度(T)及び結晶融解温度(T)はいずれも2ndヒーティングの値を採用した。
[熱分解温度評価]
株式会社リガク製熱重量測定装置「Thermo Plus TG8120」を用い、昇温速度:5℃/min、温度範囲:20℃〜500℃の条件で質量変化を測定し、昇温開始時からの質量の減少率が50%に達した際の温度を熱分解温度とした。
<製造例1>
[PVOH−1の製造]
攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管及び開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル640質量部、メタノール273質量部を仕込み、アルゴンバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.096質量部を添加し重合を開始した。60℃で210分間重合した後、冷却して重合を停止した。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応のモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。次に、当該ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液にメタノールを追加して濃度を20質量%に調製したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液195質量部に、4.7質量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度12.8質量%)を添加して、40℃でけん化を行った。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後数分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、40℃のまま60分間放置してけん化を進行させた。これに酢酸メチルを加えて残存するアルカリを中和した後、メタノールでソックスレー洗浄を8時間行った。さらに、40℃で終夜真空乾燥することにより、ポリビニルアルコール樹脂(粗粒)を得た。得られたポリビニルアルコール樹脂のけん化度は98.6mol%、粘度平均重合度は1700であった。さらに、得られたポリビニルアルコール樹脂を液体窒素で凍結した後、遠心粉砕機を用いて粉砕し、粉体を目開き75μm〜150μmの篩で分級し、100℃の熱風乾燥機で3時間乾燥することで、ポリビニルアルコール粉末(PVOH−1)を得た。PVOH−1の水分率をハロゲン水分率計(150℃)で測定した結果、水分率は0.6質量%であった。また、平均粒子径は96μmであった。
<製造例2>
[PVOH−2の製造]
製造例1と同様にして得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液にメタノールを追加して濃度を20質量%に調製したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液195質量部に、10.5質量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度12.8質量%)を添加して、40℃でけん化を行った。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後数分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、40℃のまま60分間放置してけん化を進行させた。これに酢酸メチルを加えて残存するアルカリを中和した後、メタノールでよく洗浄し、ろ別してポリビニルアルコール樹脂(粗粒)を得た。さらに、ポリビニルアルコール樹脂をメタノールと水の混合液(混合比:メタノール/水=90/10、重量比)に添加し、1時間攪拌洗浄を行った。ポリビニルアルコール樹脂をろ別し、40℃で終夜真空乾燥することにより、ポリビニルアルコール樹脂(粗粒)を得た。得られたポリビニルアルコール樹脂のけん化度は99.9mol%、粘度平均重合度は1700であった。さらに、得られたポリビニルアルコール樹脂を液体窒素で凍結した後、遠心粉砕機を用いて粉砕し、粉体を目開き75μm〜150μmの篩で分級し、100℃の熱風乾燥機で3時間乾燥することで、ポリビニルアルコール粉末(PVOH−2)を得た。PVOH−2の水分率をハロゲン水分率計(150℃)で測定した結果、水分率は1.2質量%であった。また、平均粒子径は102μmであった。
<製造例3>
[PVOH−3の製造]
反応器に仕込むメタノールの量を575質量部にし、重合時間を250分間に変更したこと以外は製造例1と同様にして、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。次に、当該ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液にメタノールを追加して濃度を30質量%に調製したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液124質量部に、3.7質量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度12.8質量%)を添加したこと以外は製造例1と同様にして、ポリビニルアルコール樹脂(粗粒)を得た。得られたポリビニルアルコール樹脂のけん化度は98.5mol%、粘度平均重合度は1000であった。さらに、得られたポリビニルアルコール樹脂を液体窒素で凍結した後、遠心粉砕機を用いて粉砕し、粉体を目開き300μm〜500μmの篩で分級し、100℃の熱風乾燥機で3時間乾燥することで、ポリビニルアルコール粉末(PVOH−3)を得た。PVOH−3の水分率をハロゲン水分率計(150℃)で測定した結果、水分率は1.1質量%であった。また、平均粒子径は432μmであった。
<製造例4>
[PVOH−4の製造]
反応器に仕込むメタノールの量を5.3質量部にし、重合時間を180分間に変更したこと以外は製造例1と同様にして、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。次に、当該ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液にメタノールを追加して濃度を10質量%に調製したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液394質量部に、5.5質量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度12.8質量%)を添加したこと以外は製造例1と同様にして、ポリビニルアルコール樹脂(粗粒)を得た。得られたポリビニルアルコール樹脂のけん化度は99.6mol%、粘度平均重合度は4500であった。さらに、得られたポリビニルアルコール樹脂を液体窒素で凍結した後、遠心粉砕機を用いて粉砕し、粉体を目開き300μm〜500μmの篩で分級し、100℃の熱風乾燥機で3時間乾燥することで、ポリビニルアルコール粉末(PVOH−4)を得た。PVOH−4の水分率をハロゲン水分率計(150℃)で測定した結果、水分率は2.4質量%であった。また、平均粒子径は410μmであった。
<製造例5>
[PVOH−5の製造]
製造例1と同様にして得られたポリビニルアルコール樹脂(粗粒)を液体窒素で凍結した後、遠心粉砕機を用いて粉砕し、粉体を目開き425μm〜1200μmの篩で分級し、100℃の熱風乾燥機で3時間乾燥することで、ポリビニルアルコール粉末(PVOH−5)を得た。PVOH−5の水分率をハロゲン水分率計(150℃)で測定した結果、水分率は1.3質量%であった。また、平均粒子径は771μmであった。
<製造例6>
[PVOH−6の製造]
反応器に仕込むメタノールの量を1257質量部にし、重合時間を240分間に変更したこと以外は製造例1と同様にして、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。次に、当該ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液にメタノールを追加して濃度を40質量%に調製したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液240質量部に、10.0質量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度14.0質量%)を添加したこと以外は製造例1と同様にして、ポリビニルアルコール樹脂(粗粒)を得た。得られたポリビニルアルコール樹脂のけん化度は98.5mol%、粘度平均重合度は500であった。さらに、得られたポリビニルアルコール樹脂を液体窒素で凍結した後、遠心粉砕機を用いて粉砕し、粉体を目開き75μm〜150μmの篩で分級し、100℃の熱風乾燥機で3時間乾燥することで、ポリビニルアルコール粉末(PVOH−6)を得た。PVOH−6の水分率をハロゲン水分率計(150℃)で測定した結果、水分率は0.6質量%であった。また、平均粒子径は99μmであった。
<製造例7>
[PVOH−7の製造]
けん化後に、メタノールでソックスレー洗浄を行わなかったこと以外は、製造例6と同様にして、ポリビニルアルコール樹脂(粗粒)を得た。ポリビニルアルコール樹脂のけん化度は98.5mol%、粘度平均重合度は500であった。さらに、ポリビニルアルコール樹脂を液体窒素で凍結した後、遠心粉砕機を用いて粉砕し、粉体を目開き75μm〜150μmの篩で分級し、100℃の熱風乾燥機で3時間乾燥することで、ポリビニルアルコール粉末(PVOH−7)を得た。PVOH−6の水分率をハロゲン水分率計(150℃)で測定した結果、水分率は0.7質量%であった。また、平均粒子径は101μmであった。
[実施例1]
PVOH−1に電子線(30kGy)を照射した。次に、攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管及び開始剤の添加口を備えた反応器に、N−ビニルホルムアミド6.0質量部、メタノール944質量部を仕込み、アルゴンバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。ここに電子線を照射したPVOH−1を100質量部添加し、撹拌して粒子が溶液中に分散した状態で300分間加熱還流してグラフト重合を行った。その後、ろ別して粒子を回収し、40℃で終夜真空乾燥することにより、目的のグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全単量体単位のモル数に対してN−ビニルホルムアミド単位が1.1mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。H−NMRの分析結果を以下に示す。ポリN−ビニルホルムアミドの良溶媒であるメタノールを用いて、得られたグラフト共重合体からなる粉末中のポリN−ビニルホルムアミドを抽出したが、抽出物中にポリN−ビニルホルムアミドは確認されなかった。また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1に示す。図1に、グラフト共重合体の変性量に対してガラス転移温度をプロットした図を示す。図2に、グラフト共重合体の変性量に対して、結晶融解温度をプロットした図を示す。
H−NMR(500MHz,d−DMSO(TMS含有),25℃) δ(ppm):1.1−1.6(−C CH(OH)−、−C CH(OCOCH)−、−C CH(NHCOH)−)、1.9−2.1(−CHCH(OCOC )−)、3.4−4.0(−CH(OH)−、−CH(NHCOH)−)、4.1−4.7(−CHCH(O)−)、7.6−8.1(−CHCH(NCOH)−)
[実施例2]
N−ビニルホルムアミドの量を15質量部に、メタノールの量を985質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−ビニルホルムアミドの構成単位が4.3mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
[実施例3]
N−ビニルホルムアミドの量を30質量部に、メタノールの量を970質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−ビニルホルムアミドの構成単位が9.7mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
[実施例4]
N−ビニルホルムアミドの代わりにN−ビニルアセトアミド35質量部を用いたこと、反応器に仕込むメタノールの量を965質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてグラフト共重合体を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−ビニルアセトアミドの構成単位が5.4mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。H−NMRの分析結果を以下に示す。ポリN−ビニルアセトアミドの良溶媒であるメタノールを用いて得られたグラフト共重合体からなる粉末中のポリN−ビニルアセトアミドを抽出したが、抽出中にポリN−ビニルアセトアミドは確認されなかった。また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
H−NMR(500MHz,d−DMSO(TMS含有),25℃) δ(ppm):1.1−1.6(−C CH(OH)−、−C CH(OCOCH)−、−C CH(NHCOCH)−)、1.75(−CHCH(NHCOC )−)、1.9−2.1(−CHCH(OCOC )−)、3.4−4.0(−CH(OH)−、−CH(NHCOCH)−)、4.1−4.7(−CHCH(O)−)、7.0−8.0(−CHCH(NCOCH)−)
[実施例5]
N−ビニルアセトアミドの量を70質量部に、メタノールの量を930質量部に変更したこと以外は実施例4と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−ビニルアセトアミドの構成単位が10.0mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
[実施例6]
N−ビニルアセトアミドの量を100質量部に、メタノールの量を900質量部に変更したこと以外は実施例4と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−ビニルアセトアミドの構成単位が12.2mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
[実施例7]
N−ビニルホルムアミドの代わりにN−ビニルピロリドン30質量部を用いたこと、メタノールの量を970質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−ビニルピロリドンの構成単位が2.6mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。H−NMRの分析結果を以下に示す。ポリN−ビニルピロリドンの良溶媒であるメタノールを用いて得られたグラフト共重合体からなる粉末中のポリN−ビニルピロリドンを抽出したが、抽出中にポリN−ビニルピロリドンは確認されなかった。また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
H−NMR(500MHz,d−DMSO(TMS含有),25℃) δ(ppm):1.1−1.6(−C CH(OH)−、−C CH(OCOCH)−、−C CH(NCOCHCHCH)−)、1.8−2.4(−CHCH(NCOC CH)−)、1.9−2.1(−CHCH(OCOC )−)、3.0−3.2(−CHCH(NCOCHCH )−)、3.4−4.0(−CH(OH)−、−CH(NCOCHCHCH)−)、4.1−4.7(−CHCH(O)−)
[実施例8]
N−ビニルピロリドンの量を70質量部に、メタノールの量を930質量部に変更したこと以外は実施例7と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−ビニルピロリドンの構成単位が6.5mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
[実施例9]
N−ビニルピロリドンの量を190質量部に、メタノールの量を900質量部に変更したこと以外は実施例7と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−ビニルピロリドンの構成単位が10.6mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
[実施例10]
ポリビニルアルコール粉末としてPVOH−2を用いたこと、N−ビニルホルムアミドの代わりにN−ビニルアセトアミド23質量部を用いたこと、メタノールの量を477質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−ビニルアセトアミドの構成単位が5.5mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1に示す。
[実施例11]
ポリビニルアルコール粉末としてPVOH−3を用いたこと、電子線の照射量を60kGyに変更したこと、N−ビニルホルムアミドの代わりにN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド5質量部を用いたこと、メタノールの量を995質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドの構成単位が1.0mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。H−NMRの分析結果を以下に示す。ポリN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドの良溶媒であるメタノールを用いて得られたグラフト共重合体中のポリN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドを抽出したが、抽出中にポリN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドは確認されなかった。また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
H−NMR(500MHz,d−DMSO(TMS含有),25℃) δ(ppm):1.1−1.6(−C CH(OH)−、−C CH(OCOCH)−、−C CH(CONHCHCHOH)−)、1.9−2.1(−CHCH(OCOC )−)、3.4−4.7(−CH(OH)−、−CH(CONHCHCHOH)−、−CHCH(CONHC CHOH)−、−CHCH(CONHCH OH)−、−CHCH(O)−、−CHCH(CONHCHCH)−)、7.4(−CHCH(CONCHCHOH)−)
[実施例12]
N−ビニルホルムアミドの代わりにN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド30質量部を用いたこと、メタノールの量を970質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドの構成単位が4.7mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
[実施例13]
N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドの量を80質量部に、メタノールの量を920質量部に変更したこと以外は実施例12と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドの構成単位が10.4mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
[実施例14]
N−ビニルホルムアミドの代わりにアクリルアミド80質量部を用いたこと、メタノールの量を920質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してアクリルアミドの構成単位が1.9mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。H−NMRの分析結果を以下に示す。ポリアクリルアミドの良溶媒であるメタノールを用いて得られたグラフト共重合体中のポリアクリルアミドを抽出したが、抽出中にポリアクリルアミドは確認されなかった。また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
H−NMR(500MHz,d−DMSO(TMS含有),25℃) δ(ppm):1.1−1.6(−C CH(OH)−、−C CH(OCOCH)−、−C CHCONH−)、1.9−2.1(−CHCH(OCOC )−)、3.4−4.7(−CH(OH)−、−CHCONH−、−CHCH(O)−、)、7.4(−CHCHCON −)
[実施例15]
電子線の照射量を60kGyに変更したこと、アクリルアミドの量を150質量部に、メタノールの量を850質量部に変更したこと以外は実施例14と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してアクリルアミドの構成単位が4.5mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
[実施例16]
電子線の照射量を90kGyに変更したこと、アクリルアミドの量を100質量部に、メタノールの量を400質量部に変更したこと以外は実施例14と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してアクリルアミドの構成単位が8.8mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
[実施例17]
ポリビニルアルコール粉末としてPVOH−4を用いたこと、電子線の照射量を90kGyに変更したこと、N−ビニルアセトアミドの量を20質量部に、メタノールの量を494質量部にそれぞれ変更したこと以外は実施例4と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−ビニルアセトアミドの構成単位が1.2mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1に示す。
[実施例18]
ポリビニルアルコール粉末としてPVOH−5を用いたこと、電子線の照射量を60kGyに変更したこと以外は実施例7と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−ビニルピロリドンの構成単位が1.3mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1に示す。
[実施例19]
ポリビニルアルコール粉末としてPVOH−6を用いたこと、電子線の照射量を60kGyに変更したこと以外は実施例4と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−ビニルアセトアミドの構成単位が6.5mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1に示す。
また、得られたグラフト共重合体50質量部をラボプラストミルにて、240℃の温度で3分間、スクリュー回転速度100rpmで溶融混練し、1分ごとの混練時トルクを測定した。混錬時間に対して、トルクをプロットした結果を図3に示す。
[実施例20]
ポリビニルアルコール粉末としてPVOH−7を用いたこと、電子線の照射量を150kGyに変更したこと、アクリルアミドの量を100質量部に、メタノールの量を400質量部にそれぞれ変更したこと以外は実施例14と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してアクリルアミドの構成単位が4.9mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1に示す。
また、得られたグラフト共重合体50質量部をラボプラストミルにて、240℃の温度で3分間、スクリュー回転速度100rpmで溶融混練し、1分ごとの混練時トルクを測定した。混錬時間に対して、トルクをプロットした結果を図3に示す。
[比較例1]
PVOH−1(未変性ポリビニルアルコール)を評価した。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1に示す。
[比較例2]
N−ビニルアセトアミドの量を0.5質量部に、メタノールの量を995.5質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−ビニルアセトアミドの構成単位が0.1mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1に示す。
[比較例3]
N−ビニルホルムアミドの量を60質量部に、メタノールの量を940質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−ビニルホルムアミドの構成単位が26.1mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1に示す。
[比較例4]
N−ビニルホルムアミドの代わりにヒドロキシエチルメタクリレート100質量部を用いたこと、メタノールの量を900質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してヒドロキシエチルメタクリレートの構成単位が8.8mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。H−NMRの分析結果を以下に示す。また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
H−NMR(500MHz,d−DMSO(TMS含有),25℃) δ(ppm):0.6−1.1(−CHC(C )(COOCHCHOH)−)、1.1−1.6(−C CH(OH)−、−C CH(OCOCH)−)、1.7−1.9(−C C(CH)(COOCHCHOH)−)、1.9−2.1(−CHCH(OCOC )−)、3.4−4.0(−CH(OH)−、−CHC(CH)(COOC CHOH)−、−CHC(CH)(COOCH OH)−)、4.1−4.7(−CHCH(O)−)、4.8(−CHC(CH)(COOCHCH)−)
[比較例5]
N−ビニルホルムアミドの代わりにメチルメタクリレート10質量部を用いたこと、メタノールの量を990質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてグラフト共重合体からなる粉末を得た。得られたグラフト共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してメチルメタクリレートの構成単位が2.9mol%導入されたグラフト共重合体であることが分かった。H−NMRの分析結果を以下に示す。また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
H−NMR(500MHz,d−DMSO(TMS含有),25℃) δ(ppm):0.6−1.1(−CHC(C )(COOCH)−)、1.1−1.6(−C CH(OH)−、−C CH(OCOCH)−、−C C(CH)(COOCH)−)、1.9−2.1(−CHCH(OCOC )−)、3.4−3.7(−CHC(CH)(COOC )−)、3.4−4.0(−CH(OH)−)、4.1−4.7(−CHCH(O)−)
[比較例6]
PVOH−1を水に溶解し、濃度5質量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。ここにN−ビニルアセトアミドを、100質量部のPVOH−1に対して0.5質量部になるように溶解させた後、当該水溶液に電子線(30kGy)を照射したところ、水溶液がゲル化し、粒子状で取り出すことが出来なかった。得られたゲルの一部を乾燥し、水への溶解性を評価したが、当該ゲルは100℃に昇温後、200分経過しても完全には溶解しなかった。
[比較例7]
攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル640質量部、メタノール243質量部、N−ビニルアセトアミド9.1質量部を仕込み、アルゴンバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。これとは別に、コモノマーの逐次添加溶液(以降ディレー溶液と表記する)としてN−ビニルアセトアミドのメタノール溶液(濃度5質量%)を調製し、30分間アルゴンをバブリングした。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.15質量部を添加し重合を開始した。重合反応の進行中は、調製したディレー溶液を系内に滴下することで、重合溶液におけるモノマー組成(酢酸ビニルとN−ビニルアセトアミドのモル比率)が一定となるようにした。60℃で180分重合した後、冷却して重合を停止した。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応のモノマーの除去を行い、N−ビニルアセトアミドで変性されたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。次に、当該ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液にメタノールを追加して濃度を20質量%に調製したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液489質量部に、10.0質量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度14.0質量%)を添加して、40℃でけん化を行った。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後数分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、40℃のまま60分間放置してけん化を進行させた。これに酢酸メチルを加えて残存するアルカリを中和した後、メタノールでソックスレー洗浄を8時間行った。さらに、40℃で終夜真空乾燥することにより、N−ビニルアセトアミドで変性されたポリビニルアルコール樹脂(粗粒)を得た。当該ポリビニルアルコール樹脂のけん化度は98.7mol%であった。さらに、得られたポリビニルアルコール樹脂を液体窒素で凍結した後、遠心粉砕機を用いて粉砕し、粉体を目開き75μm〜150μmの篩で分級し、N−ビニルアセトアミドで変性されたポリビニルアルコール樹脂(ランダム共重合体)の粒子(PVOH−8)を得た。得られたランダム共重合体をH−NMR(500MHz,d−DMSO,20℃)で解析したところ、全構成単位のモル数に対してN−ビニルアセトアミドの構成単位が3.8mol%導入されたランダム共重合体であることが分かった。H−NMRの分析結果を以下に示す。また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量、数平均分子量、平均粒子径の分析結果及び物性評価結果を表1、図1及び図2に示す。
H−NMR(500MHz,d−DMSO(TMS含有),25℃) δ(ppm):1.1−1.6(−C CH(OH)−、−C CH(OCOCH)−、−C CH(NHCOCH)−)、1.75(−CHCH(NHCOC )−)、1.9−2.1(−CHCH(OCOC )−)、3.4−4.0(−CH(OH)−、−CH(NHCOCH)−)、4.1−4.7(−CHCH(O)−)、7.0−8.0(−CHCH(NCOCH)−)
Figure 2019065059
実施例1〜20から明らかなように、本発明のグラフト共重合体は、高い結晶性を維持しながらガラス転移温度が上昇していることがわかる。従って、従来のポリビニルアルコール樹脂よりも高温域で優れた機械的強度を発現することが期待される。また、ポリビニルアルコール樹脂の重要な特性の一つである良好な水溶性を失っておらず、熱分解温度も高いことから、本発明のグラフト共重合体は、ポリビニルアルコール樹脂の幅広い用途に利用することができる。
実施例19のように、グラフト共重合体に含まれるアルカリ金属及びアルカリ土類金属の量が特に少ない場合には、アミド基が分解しにくく、耐熱性が特に優れていた。図3に示されるように、実施例19のグラフト共重合体は、溶融成形時に熱分解によるゲル化、トルク上昇が起こりにくく、溶融成形性に特に優れていた。
比較例1のように、未変性のポリビニルアルコール樹脂は、乾燥状態で80℃を超える高温領域では樹脂が軟化してしまい、当該温度域での機械的物性は期待できない。比較例2のように、グラフト鎖の含有量(変性量)が極めて少ない場合にはガラス転移温度の上昇が不十分であった。一方、比較例3のようにグラフト鎖の含有量が多すぎる場合には結晶性が低下した。比較例4のように、ポリビニルアルコールにヒドロキシエチルメタクリレートをグラフト重合した場合、ガラス転移温度はほとんど変化せず、グラフト鎖にアミド基が導入されていることがガラス転移温度の上昇に重要であることがわかる。また、比較例5のようにポリビニルアルコールに疎水的なメチルメタクリレートをグラフト重合すると水溶性が失われた。比較例6は、ポリビニルアルコールが溶解した状態でグラフト重合を行った例である。この場合、ポリビニルアルコールが架橋され、水溶性が失われた。比較例7には、N−ビニルアセトアミドをランダム共重合によってポリビニルアルコール樹脂に導入した例を示している。この場合、アミド基の効果によってガラス転移温度は上昇したが、グラフト共重合体に比べ結晶性の低下が著しかった。

Claims (7)

  1. グラフト共重合体からなる粉末であって、
    前記グラフト共重合体が、ポリビニルアルコールからなる主鎖と、下記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位から構成される重合体からなる側鎖とを有し、
    前記グラフト共重合体中の全単量体単位に対する下記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位の含有量が0.2〜20mol%であり、
    平均粒子径が20〜1,000μmであり、かつ
    水100gに対して2g以上完全に溶解することができる粉末。
    Figure 2019065059
    [式中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の水酸基又はアシル基を有してもよいアルキル基を表す。R2及びR3は相互に連結して環を形成していてもよい。]
    Figure 2019065059
    [式中、R1は、上記式(I)と同じである。R4及びR5は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の水酸基又はアシル基を有してもよいアルキル基を表す。R4及びR5は相互に連結して環を形成していてもよい。]
  2. 前記グラフト共重合体が前記式(I)で表される繰り返し単位から構成される重合体からなる側鎖を有する請求項1に記載の粉末。
  3. 前記グラフト共重合体がポリN−ビニルホルムアミド、ポリN−ビニルアセトアミド及びポリN−ビニルピロリドンからなる群から選択される少なくとも一種からなる側鎖を有する請求項2に記載の粉末。
  4. 前記グラフト共重合体の数平均分子量が5,000〜250,000である請求項1〜3のいずれかに記載の粉末。
  5. アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計含有量が0.5質量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の粉末。
  6. 平均粒子径が20〜1,000μmであるポリビニルアルコール粉末に電離放射線を照射する工程と、
    電離放射線が照射されたポリビニルアルコール粉末を、下記式(III)又は式(IV)で表される単量体を含む溶液中に分散させてグラフト重合を行う工程を備える請求項1〜5のいずれかに記載の粉末の製造方法。
    Figure 2019065059
    [式中、R1、R2及びR3は、上記式(I)と同じである。]
    Figure 2019065059
    [式中、R1、R4及びR5は、上記式(II)と同じである。]
  7. 水分率15質量%以下のポリビニルアルコール粉末に電離放射線を照射する請求項6に記載の粉末の製造方法。
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