以下、本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工装置を、レーザ加工装置1を含むレーザ加工システム100に基づいて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、第1の実施形態に係るレーザ加工システム100の概略構成について、図1を参照して説明する。レーザ加工システム100は、レーザ加工装置1と、データ作成装置7を有しており、データ作成装置7によって作成された加工データに従って、レーザ加工装置1を制御することで、加工対象物Wの表面上に対して、パルスレーザLを2次元走査してマーキング加工を行うように構成されている。
次に、レーザ加工システム100を構成するレーザ加工装置1の概略構成について、図1を参照して説明する。図1に示すように、レーザ加工装置1は、加工対象物Wに対してパルスレーザLを照射し、当該パルスレーザLを2次元走査して、加工対象物Wの表面上にマーキング加工を行い得る。そして、レーザコントローラ5は、(図示しない)コンピュータで構成され、データ作成装置7と双方向通信可能に接続されると共に、レーザ加工装置1に接続されている。データ作成装置7は、(図示しない)パーソナルコンピュータ等から構成され、加工データの作成等に用いられる。そして、レーザコントローラ5は、データ作成装置7から送信された加工データ、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザ加工装置1を駆動制御する。尚、図1は、レーザ加工システム100及びレーザ加工装置1の構成を模式的に示した模式図であり、本明細書で説明しない構成については省略されている。
レーザ加工装置1は、パルスレーザLを出射するレーザヘッド部2とレーザヘッド部2から出射したパルスレーザLのビーム径を変更するビームエキスパンダ3とで構成されるレーザ出射部4、パルスレーザLを加工対象物Wの表面上で2次元走査するガルバノスキャナ19およびパルスレーザLを加工対象物Wの表面上で集光させるfθレンズ20とから構成されている。
ビームエキスパンダ3は、凹レンズ10と凸レンズ11がパルスレーザLの光軸に沿って並列に配置されており、これら2つのレンズによりパルスレーザLのビーム径が変更される。尚、凸レンズ11はパルスレーザLの光軸に沿って前後方向に移動可能に制御される。凸レンズ11の移動制御については後述するため、ここでは省略する。
ガルバノスキャナ19は、2つガルバノミラー12、13から構成されておりガルバノスキャナ19に入射したパルスレーザLを加工対象物W表面の加工領域において、所望の加工パターンを紙面に対して前後方向(X軸方向)と左右方向(Y軸方向)に2次元走査する。
ガルバノスキャナ19で2次元走査されたパルスレーザLは、上述したように、fθレンズ20により、加工対象物Wの表面上で集光されて、マーキング加工を行うことができるのである。尚、パルスレーザLのレーザ媒質としては、例えば、レーザ活性イオンとしてネオジウム(Nd)が添加されたネオジウム添加ガドリニウムバナデイト(Nd:GdVO4)結晶や、ネオジウム添加イットリウムバナデイト(Nd:YVO4)結晶や、ネオジウム添加イットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)結晶等を用いることができる。
次に、レーザ加工システム100を構成するレーザ加工装置1の制御系構成について、図2を参照して説明する。図2に示すように、レーザ加工装置1は、レーザ加工装置1の全体を制御するレーザコントローラ5に接続し、レーザドライバ51と、ガルバノコントローラ56と、ガルバノドライバ57と、可変焦点レンズコントローラ52等を有して構成されている。レーザコントローラ5には、レーザドライバ51と、ガルバノコントローラ56と、可変焦点レンズコントローラ52等が電気的に接続されている。尚、距離センサ90については、第2の実施形態において後述する。
レーザコントローラ5は、レーザ加工装置1の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU61、RAM62、ROM63、時間を計測するタイマ64等を備えている。又、CPU61、RAM62、ROM63、タイマ64は、(図示しない)バス線により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果や加工走査パターンのXY座標データ等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM63は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、データ作成装置7から送信された加工データに基づいて加工走査パターンのXY座標データを算出してRAM62に記憶する等の各種プログラムが記憶されている。
そして、CPU61は、ROM63に記憶されている各種の制御プログラムに基づいて各種の演算及び制御を行なうものである。例えば、CPU61は、データ作成装置7から入力された加工データを構成する各加工点に対して、後述するレーザ加工処理プログラムを実行することで各加工点のXY座標データや、ガルバノ走査速度情報等をガルバノコントローラ56に出力する。また、CPU61は、データ作成装置7から入力された加工データに基づいて設定した励起用半導体レーザ部40の励起光出力、励起光の出力期間等の励起用半導体レーザ部40の駆動情報をレーザドライバ51に出力する。また、CPU61は、加工走査パターンのXY座標データ、や、ガルバノスキャナ19のON・OFFを指示する制御信号等をガルバノコントローラ56に出力する。さらに、CPU61は、データ作成装置7から入力された加工走査パターンのZ座標データ(加工対象物W表面の高さ位置の情報)を可変焦点レンズコントローラ52に出力する。
レーザドライバ51は、レーザコントローラ5から入力された励起用半導体レーザ部40の励起光出力、励起光の出力期間等のレーザ駆動情報等に基づいて、励起用半導体レーザ部40を駆動制御する。具体的には、レーザドライバ51は、レーザコントローラ5から入力されたレーザ駆動情報の励起光出力に比例した電流値のパルス状の駆動電流を発生し、レーザ駆動情報の励起光の出力期間に基づく期間、励起用半導体レーザ部40に出力する。これにより、励起用半導体レーザ部40は、励起光出力に対応する強度の励起光を出力期間の間、(図示しない)光ファイバ内に出射する。出射された励起光出力は、レーザー発振器21に入射される。励起用半導体レーザ部40から出射された励起光出力により、レーザー発振器21から加工対象物Wの表面上に対してパルスレーザLが出射される。
ガルバノコントローラ56は、レーザコントローラ5から入力された加工データにおける各加工点のXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報をガルバノドライバ57へ出力する。
ガルバノドライバ57は、ガルバノコントローラ56から入力された駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、パルスレーザLを2次元走査する。
可変焦点レンズコントローラ52は、レーザコントローラ5から入力された加工走査パターンのZ座標データに基づいて算出したモータ駆動情報を可変焦点レンズドライバ53へ出力する。そして、可変焦点レンズドライバ53は、可変焦点レンズコントローラ52から入力されたモータ駆動情報に基づいて、可変焦点レンズ駆動モータ33を駆動して、上述したように、ビームエキスパンダ3内に配置される凸レンズ11をパルスレーザLの光軸に沿って前後方向に移動制御する。
続いて、レーザ加工システム100を構成するデータ作成装置7の制御系構成について、図2を参照して説明する。図2に示すように、データ作成装置7は、データ作成装置7の全体を制御する制御部70と、マウスやキーボード、(液晶ディスプレイ77の液晶画面に配置される)タッチパネル等から構成される入力操作部76と、液晶ディスプレイ77と、CD−ROM79に対する各種データ、プログラム等の書き込み及び読み込みを行うためのCD−R/W78等から構成されている。
制御部70は、データ作成装置7の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU71と、RAM72と、ROM73と、時間を計測するタイマ74と、HDD75等を備えている。又、CPU71と、RAM72と、ROM73と、タイマ74、およびHDD75は、(図示しない)バス線により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。又、CPU71とHDD75は、(図示しない)入出力インターフェースを介して接続され、相互にデータのやり取りが行われる。
RAM72は、CPU71により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM73は、各種の制御プログラムやデータテーブルを記憶させておくものである。
そして、HDD75は、各種アプリケーションソフトウェアのプログラム、各種データファイルを記憶する記憶装置である。当該HDD75は、加工対象物W上におけるレーザ加工の加工内容を示す加工データを作成する為のデータ作成処理プログラム等を記憶している。
そして、CD−R/W78は、アプリケーションプログラム、各種データテーブルを構成する各データ群を、CD−ROM79から読み込む。又は、CD−ROM79に対して書き込む。すなわち、データ作成装置7は、CD−R/W78を介して、データ作成処理プログラム等をCD−ROM79から読み込み、HDD75に格納する。又は、CD−ROM79に対して書き込む。
尚、データ作成装置7においては、データ作成処理プログラム等の制御プログラムや、各種データテーブルを、ROM73に記憶しても良いし、CD−ROM79等の記憶媒体から読み込むように構成しても良い。また、インターネット等の(図示しない)ネットワークを介して、ダウンロードするように構成してもよい。
そして、データ作成装置7には、(図示しない)入出力インターフェースを介して、マウスやキーボード、タッチパネル等から構成される入力操作部76と、液晶ディスプレイ77等が電気的に接続されている。従って、データ作成装置7は、入力操作部76や、液晶ディスプレイ77を用いて、加工データの作成や制御パラメータの設定等に利用される。
次に、加工対象物Wの表面上に対して、オブジェクトに対する加工パターンをレーザ加工するためのデータを作成する手順について、図面を参照して説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工装置1で採用するZレイヤー割付データを作成する手順を示すフローチャートである。
まず、ステップS1で、加工対象物Wの加工面の内一番高い加工面の高さHp(mm)がマウスやキーボード、タッチパネル等から構成される入力操作部76を用いて入力される。図1に示す一例では、加工対象物Wは高さが異なる4つの加工面P1、P2、P3およびP4を有する。その中で加工面の高さが一番高い加工面P2の高さがHpとして入力される。
次に、ステップS2で、CPU71は、ステップS1で入力した高さデータHpの1/2の高さを基準高H0(mm)とし、ステップS3で、基準高H0をZ=0(mm)として設定する。
そして、ステップS4で、CPU71は、Z=0(mm)を基準として上下方向にパルスレーザLの焦点深度の半分(本実施形態では5mm)の間隔で加工対象物Wの上下方向全体を含む範囲でZレイヤーを設定する。本実施形態では、CPU71は、図1に示すように、Z=±27.5mmの範囲で11のZレイヤーを5mmの間隔で設定する。
ステップS5で、CPU71は、ステップS4で設定した11のZレイヤーの各高さに応じて、ビームエキスパンダ3内の凹レンズ10と凸レンズ11との距離(レンズ間距離)を算出する。凸レンズ11は、上述のようにパルスレーザLの光軸に沿って前後方向に移動制御され、これにより、パルスレーザLが加工対象物W上で集光する位置、いわゆる焦点位置を可変することができる。そのため、CPU71は、各Zレイヤーの高さの位置でパルスレーザLが集光させる凸レンズ11の移動距離を決定し、凹レンズ10と凸レンズ11との距離(レンズ間距離)を算出して、算出したレンズ間距離毎にレンズ位置番号を割り当てる。
ステップS5まで終了したら、Zレイヤー割付データの作成は終了する。図6の(a)は、本実施形態におけるZレイヤー割付データを示した一例を示す。図6の(a)のように、パルスレーザLの焦点深度の半分である5mmの間隔で設定されたZレイヤー毎に、パルスレーザLが加工対象物W上で集光する位置である結像面位置(mm)、レンズ位置番号およびレンズ間距離(mm)が設定されたデータテーブルが作成される。尚、図6の(a)に示すZレイヤー割付データテーブルは一例であって、これに限定されるものではない。例えば、レンズ間距離の代わりに、凸レンズ11の移動距離を採用することができる。
次に、加工対象物W上にレーザ加工するオブジェクト(加工パターン)の情報を入力して、オブジェクト毎にZレイヤーを割り当てる手順を図4および図5を参照して説明する。
図4は、オブジェクトの情報を入力する場合の液晶ディスプレイ77に表示される画面表示80を説明する図であり、図5は、オブジェクト毎にZレイヤーを割り当てる手順を説明するフローチャートである。本実施形態では、オブジェクトの情報の入力は、液晶ディスプレイ77に表示される画面表示80を用いて行われるが、液晶ディスプレイ77に表示される画面表示80は一例であって、これに限定されるものではない。入力するオブジェクトの情報により適宜、適切な画面表示が液晶ディスプレイ77に表示される。
図4に示すように、画面表示80は、加工対象物Wにレーザ加工するオブジェクトをレイアウトするためのレイアウト表示部81と、オブジェクトの高さ位置情報等を入力する情報入力部82と、その他操作ボタン等とから構成されている。レイアウト表示部81は、レーザ加工する加工対象物Wの加工面のXY座標(単位mm)を表しており、レーザ加工するオブジェクトがXY座標のデータに基づいてレイアウト表示部81に表示される。本実施形態では、図4に示すように、4つのオブジェクト83(「ABCDE」)、オブジェクト84(「123456」)、オブジェクト85(データマトリックス)およびオブジェクト86(「7890」)が、XY座標のデータに基づいて表示されている。
ここで、各オブジェクトのデータ(加工パターンやXY座標)は、当該各オブジェクトのデータが予めCD−ROM79に記憶されているデータである場合は、CD−ROM79から読み込まれレイアウト表示部81に表示される。また、マウスやキーボード、タッチパネル等から構成される入力操作部76により、レイアウト表示部81で、レーザ加工するオブジェクトが編集されてもよい。この場合、編集後に自動的に加工パターンやXY座標等のデータがRAM72やHDD75等に記憶される。
次に、オブジェクト毎にZレイヤーを割り当てる手順について、図5を参照して説明する。
まず、ステップS10で、オブジェクトが選択される。具体的には、画面表示80に表示されるカーソル87が、入力操作部76のマウスやキーボード等を用いてレイアウト表示部81に表示されているオブジェクトの位置に合わせられることによりオブジェクトが選択される。図4では、オブジェクト84が選択された場合の例を示す。オブジェクトが選択されると、図4に示すように、オブジェクト84が破線の四角形で囲まれて、選択されたことを視覚的に表示する。
次に、ステップS11で、選択したオブジェクトの高さデータZ(mm)が入力される。具体的には、画面表示80に表示されるカーソル87が、入力操作部76のマウスやキーボード等を用いて情報入力部82に表示されている「Z」の右にあるテキストボックス89の位置に合わせられることによりテキストボックス89が選択される。テキストボックス89が選択されると、テキストボックス89はテキスト入力可能状態になり、入力操作部76のキーボード等を用いて高さデータZ(mm)が入力される。図4では、オブジェクト84の高さデータZとして「+13」が入力された例が示されている。
次に、ステップS12で、CPU71は、ステップS11で入力された高さデータZに応じたZレイヤーの番号を自動的に割り付ける。図4で示した例では、オブジェクト84の高さデータZは「+13mm」なので、CPU71は、図6の(a)に示すZレイヤー割付データテーブルからZレイヤーとして「3」を自動的に割り付けて、CPU71は、情報入力部82に表示されている「Zレイヤー」の右にあるテキストボックス88に「3」を自動的に表示する。
次に、ステップS13で、CPU71は、レイアウト表示部81に表示されるオブジェクトすべてについて、高さデータZ(mm)を入力したかを判断する。「YES」であれば、CPU71は、オブジェクトに対するZレイヤーの割当を終了する。「NO」であれば、CPU71は、ステップS10に戻り、他のオブジェクトが選択され高さデータZ(mm)が入力される。
各オブジェクトに対してZレイヤーの割当が終了すると、図6の(b)に示すように、レーザ加工するオブジェクト毎に、印字内容やZレイヤー等を表した加工データテーブルが作成される。
図6の(b)に示すようなオブジェクト毎の印字内容やZレイヤー等を表した加工データテーブルを作成したら、CPU71は、図6(c)に示すようなZレイヤー毎にレーザ加工するオブジェクトが割り当てされるZレイヤーテーブルを作成する。次に説明するように、このZレイヤーテーブルは、加工対象物Wに対して各オブジェクトをレーザ加工する際に用いられる。
次に、加工対象物Wに対して各オブジェクトをレーザ加工する手順について、図7を参照して説明する。尚、図7においては、説明の便宜上、CPU71の動作とCPU61の動作とが混在している。
まず、ステップS20で、CPU71は、画像データを取得する。具体的には、上述のように、レーザ加工する各オブジェクトの画像データ(加工パターンやXY座標)が予めCD−ROM79に記憶されている場合は、CPU71は、CD−ROM79から読み込んでレイアウト表示部81に表示させる。または、上述のように、マウスやキーボード、タッチパネル等から構成される入力操作部76により、レイアウト表示部81で、レーザ加工する各オブジェクトが編集されることにより、CPU71が各オブジェクトの画像データを取得してもよい。
次に、ステップS21で、CPU71は、各オブジェクトのZレイヤー値を読み込む。具体的には、上述のように、CPU71は、図5のオブジェクト毎にZレイヤーを割り当てる手順を示すフローチャートに従って、図6(c)に示すようなZレイヤー毎にレーザ加工するオブジェクトが割り当てされるZレイヤーテーブルを作成する。
ステップS22で、CPU61は、Zレイヤーの番号Nを1とする(N=1)。すなわち、Zレイヤーの番号として「1」が選択される。
ステップS23で、CPU61は、番号NのZレイヤーに、レーザ加工するオブジェクトがあるか否かを判断する。レーザ加工するオブジェクトがない場合(NO)は、CPU61は、ステップS26に進み次の番号N+1のZレイヤーが選択される(N=N+1)。具体的には、CPU61は、ステップS21で読み込まれたZレイヤー値について、Zレイヤーテーブルを参照して、レーザ加工するオブジェクトがあるか否かを判断している。本実施例では、図6(c)に示すように、番号1のZレイヤーのように、レーザ加工するオブジェクトがない場合は、レーザ加工装置1は何も実施せずに、ステップS26に進む。番号3や6、7のZレイヤーのようにレーザ加工するオブジェクトがある場合(YES)は、ステップS24に進む。
ステップS24で、CPU61は、上述で作成したZレイヤー割付データテーブル(本実施例では図6の(a))から番号NのZレイヤーのレンズ位置に、可変焦点レンズ駆動モータ33を駆動させて、ビームエキスパンダ3内の凸レンズ11をパルスレーザLの光軸に沿って移動させる。これにより、加工対象物Wに対してパルスレーザLの集光する位置が移動して、パルスレーザLの焦点深度の範囲内に、レーザ加工するオブジェクトの高さが位置することになる。そのため、オブジェクトが示す加工パターンを加工対象物Wに対してレーザ加工することができるのである。
ステップS25で、レーザ加工システム100は、番号NのZレイヤーにあるオブジェクトを加工対象物Wに対してレーザ加工する。具体的には、CPU61が、データ作成装置7から入力された加工データにおける各加工点のXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等に基づいて、ガルバノX軸モータ31およびガルバノY軸モータ32を駆動させて、レーザ加工装置1にオブジェクトが示す加工パターンを加工対象物Wに対してレーザ加工させる。
本実施例では、Nが「3」の場合、番号3のZレイヤーにあるオブジェクト84(「123456」)とオブジェクト86(「7890」)とが、Nが「6」の場合、番号6のZレイヤーにあるオブジェクト83(「ABCDE」)が、Nが「7」の場合、番号7のZレイヤーにあるオブジェクト85(データマトリックス)が、加工対象物Wに対してレーザ加工される。
番号NのZレイヤーにあるオブジェクトのレーザ加工が終了したら、ステップS26で、CPU61は、Zレイヤーの番号Nに「1」を加える(N=N+1)。
ステップS27で、CPU61は、すべてのZレイヤーに対してレーザ加工を実施したかを判断する。本実施例では、Zレイヤーの数が11なので、CPU61は、Nが11を超えたかどうかを判断する。Nが11を超えた場合(YES)、CPU61は、すべてのZレイヤーに対してレーザ加工を実施したと判断して加工対象物Wに対する各オブジェクトのレーザ加工を終了する。Nが11を超えていない場合(NO)、CPU61は、ステップS23に戻り、更新された番号NのZレイヤーを選択する。
このように、本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工装置によれば、CPU71が、加工対象物Wの加工面の高さに応じて、パルスレーザLの焦点深度の半分である5mmの間隔で11のZレイヤーを設定し、レーザ加工するオブジェクト毎にZレイヤーの番号を割り付けることから、オブジェクトが複数あったとしても、同じ番号のZレイヤーが割り当てられていれば、パルスレーザLが集光する結像面の位置を可変せずにレーザ加工することができる。そのため、加工面の高さが異なる複数のオブジェクトがあったとしても、頻繁にパルスレーザLが集光する結像面の位置を可変する必要がない。また、本実施形態のように、ZレイヤーはパルスレーザLの焦点深度のより小さい、焦点深度の半分の間隔で設定されるため、適切な品質でパルスレーザLによるレーザ加工を実施しつつ、加工処理に費やす時間を抑制することができるのである。
尚、本実施形態では、ZレイヤーはパルスレーザLの焦点深度の半分の間隔で設定したが、これに限定するものではない。加工対象物Wの材質や加工パターンの仕様、求められるレーザ加工の精度に応じて、パルスレーザLの焦点深度の程度か、または、それより小さい間隔に適宜、設定することができる。
また、本実施形態のように、X方向を走査するガルバノミラー12とY方向を走査するガルバノミラー13とが回動動作され、パルスレーザLが2次元走査される場合、ガルバノミラー12および13、fθレンズ20を経て、加工対象物W上へパルスレーザLが到達する過程で、ガルバノミラー12および13、fθレンズ20の配置や、fθレンズ20の収差等の影響によって、加工対象物W上における所望の位置とは異なる位置にパルスレーザLのレーザスポットが形成される。つまり、加工データに単純に従って、ガルバノミラー12および13の動作制御が行われた場合、加工対象物W上におけるレーザスポットの位置と、加工データに基づく加工位置との間に誤差が生じる。このような誤差は加工面の高さによって異なることから、本実施形態にかかるZレイヤー毎に生じる誤差が異なる。
図8は、加工対象物W上におけるレーザスポットの位置と、加工データに基づく加工位置との間に生じる誤差の例を示す図である。図8の(a)は、番号1のZレイヤーで生じる誤差、図8の(b)は、番号6のZレイヤーで生じる誤差、図8の(c)は、番号11のZレイヤーで生じる誤差の例をそれぞれ示している。実線で示したR0は加工データに基づく加工位置を、破線で示したR(1)、R(6)およびR(11)は、それぞれ番号1のZレイヤー、番号6のZレイヤーおよび番号11のZレイヤーでの加工対象物W上におけるレーザスポットの位置を示したものである。本実施形態では、予めZレイヤー毎に誤差を補正する歪み補正係数が算出され、データ作成装置7のCD−ROM79等に記憶されている。尚、歪み補正係数は、HDD75等に記憶されていてもよい。歪み補正係数が記憶されるCD−ROM79やHDD75等は、本発明の記憶手段の一例である。レーザ加工する際は、記憶されているZレイヤー毎の歪み補正係数のデータをレーザコントローラ5が読み込み、CPU61が歪み補正係数のデータに基づきガルバノミラー12および13の回動制御を補正する。これにより、加工対象物W上にレーザ加工するオブジェクトの加工パターンの歪みを抑止することができる。すなわち、各Zレイヤーにおいて、高品質でレーザ加工を実施することができるのである。尚、歪み補正係数の算出方法については、特開2017−6977号公報等に開示されているので、ここでは、詳細は説明しない。
次に、本発明の第2の実施形態に係るレーザ加工システム110について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図9は、本発明の第2の実施形態に係るレーザ加工システム110の概略構成について説明する図である。図9に示すように、レーザ加工システム110は、上述した本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工システム100に、加工対象物Wの加工面の高さを計測する距離センサ90を付加したものである。ここで、距離センサ90には、レーザ距離センサや変位センサなど様々なセンサが採用可能である。
レーザ加工システム110では、レーザ加工を実施する前に距離センサ90により、加工対象物Wの加工面の高さを計測する。例えば、図9に示すように、距離センサ90が加工対象物Wの高さが異なる4つの加工面P1、P2、P3およびP4の高さを計測して、計測した高さの値がデータ作成装置7のHDD75等に記憶される。
そして、第1の実施形態と同様、CPU71は、距離センサ90で計測した4つの加工面P1、P2、P3およびP4の高さの中で一番高い加工面P2の高さHpの1/2の高さを基準高H0(mm)とし、基準高H0をZ=0(mm)と設定する。そして、CPU71は、距離センサ90で計測した4つの加工面P1、P2、P3およびP4の高さの値をZ=0(mm)を基準に再計算して、データ作成装置7のHDD75等に記憶する。
図10は、加工面の高さデータをZレイヤーに割り付けたテーブルの一例を示す図である。テーブルの「高さ(実測値)」は距離センサ90により計測した4つの加工面P1、P2、P3およびP4の高さの値(単位:mm)であり、加工対象物Wの底面からの高さを示している。「Z値」は、上述の基準高H0をZ=0(mm)として「高さ(実測値)」をCPU71が再計算した値(単位:mm)である。そして、図10が示すように、第1の実施形態で作成した図6の(a)に示すZレイヤー割付データテーブルを用いて、4つの加工面P1、P2、P3およびP4にZレイヤーの番号が割り付けられている。
図11は、レーザ加工システム110におけるオブジェクトの情報を入力する画面表示91の一例を示す図である。加工対象物Wにレーザ加工するオブジェクトをレイアウトするためのレイアウト表示部92と、レイヤー割付画面部93と、その他操作ボタン等とから構成されている。
レイアウト表示部92には、加工対象物Wの4つの加工面P1、P2、P3およびP4が、レイヤー割付画面部93で表示されるZレイヤーの番号毎に設定された破線の形および色彩(濃淡)で区画されて表示される。そして、第1の実施形態のレイアウト表示部81と同様に、レーザ加工されるオブジェクトがXY座標のデータに基づいてレイアウト表示部92に表示される。本実施形態では、第1の実施形態と同様に、4つのオブジェクト83(「ABCDE」)、オブジェクト84(「123456」)、オブジェクト85(データマトリックス)およびオブジェクト86(「7890」)が、XY座標のデータに基づいて表示されている。
ここで、第1の実施形態と同様に、各オブジェクトの画像データ(加工パターンやXY座標)が予めCD−ROM79に記憶されているデータである場合は、CPU71は、CD−ROM79から読み込んでレイアウト表示部92に表示させる。また、マウスやキーボード、タッチパネル等から構成される入力操作部76により、レイアウト表示部92で、レーザ加工するオブジェクトが編集されてもよい。この場合、編集後に自動的に加工パターンやXY座標等のデータがRAM72やHDD75等に記憶される。
レイアウト表示部92上で各オブジェクトが設定あるいは編集されることにより、CPU71は、各オブジェクトにはZレイヤーの番号を割り当て、第1の実施形態で作成した図6の(c)と同様に、Zレイヤーテーブルを作成する。Zレイヤーテーブルは、各オブジェクトのデータとともにRAM72やHDD75等に記憶される。加工対象物Wに対して各オブジェクトをレーザ加工する手順については、第1の実施形態と同様であるため、ここでは省略する。
このように、本発明の第2の実施形態に係るレーザ加工装置によれば、加工対象物Wの加工面の高さデータが距離センサ90に計測されて入力されるため、第1の実施形態に比べて、加工対象物Wの加工面の高さデータの誤入力を防止することができる。また、レイアウト表示部92に加工対象物Wの各加工面の高さの情報も表示されることから、レーザ加工するオブジェクトの加工データが視覚的に把握できることから、オブジェクトの加工データの誤りも防止することができる。
ここで、レーザ出射部4はレーザ光出射部の一例であり、ガルバノスキャナ19は走査部の一例であり、レーザコントローラ5、データ作成装置7は、制御部の一例であり、凸レンズ11は少なくとも1つのレンズの一例であり、オブジェクト83、84、85、86はオブジェクトの一例であり、距離センサ90は検出手段の一例であり、加工対象物Wは加工対象物の一例である。また、パルスレーザLはレーザ光の一例である。ビームエキスパンダ3は結像面可変手段の一例である。ステップS24は結像面調整処理の一例である。ステップS4はレイヤー割付処理の一例である。テキストボックス89への入力操作部76による入力は入力処理の一例である。
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
レーザ加工システム100において、CPU61は、パルスレーザLが集光する結像面の位置を、パルスレーザLの焦点深度に基づく所定の間隔(上記実施形態では焦点深度の半分)を調整単位として不連続に移動制御する。そのため、上記実施形態のように、高さが異なる加工面P1、P2、P3およびP4を持つ加工対象物Wに対してレーザ加工する場合であっても、加工面の高さの差が調整単位の範囲であれば、結像面の位置を移動制御する必要がないことから、結像面の位置を頻繁に可変することなく、パルスレーザLによるレーザ加工を実施することが可能になり、加工処理に費やす時間を抑制することができる。
また、レーザ加工システム100において、CPU61は、パルスレーザLが集光する結像面の位置を、パルスレーザLの焦点深度の値以下の間隔を調整単位として不連続に移動制御する。そのため、常時、パルスレーザLの焦点深度の範囲でレーザ加工が可能になり、レーザ加工の品質を維持しつつ、加工処理に費やす時間を抑制することができる。
また、レーザ加工システム100において、CPU61は、パルスレーザLが集光する結像面の位置を、上記実施形態のように、パルスレーザLの焦点深度の値の半分の間隔を調整単位として不連続に移動制御する。そのため、常時、パルスレーザLの焦点深度の範囲でレーザ加工が可能になることに加えて、高品質で、かつ、安定性の高いレーザ加工が、加工処理に費やす時間が抑制されて実施することができる。
また、レーザ加工システム100において、CPU61は、パルスレーザLが集光する結像面の位置を、ビームエキスパンダ3内に配置される凸レンズ11をパルスレーザLの光軸に沿って前後方向に移動制御して可変する。このように簡易な構成を採用することにより、部品コストが抑制することができる。
また、レーザ加工システム100は、液晶ディスプレイ77に表示される、加工対象物Wにレーザ加工するオブジェクトをレイアウトするためのレイアウト表示部81と、オブジェクトの高さ位置情報等を入力する情報入力部82とを備えることから、簡易にオブジェクトの高さ位置情報を入力することができる。さらに、CPU71は、加工対象物Wの4つの加工面P1、P2、P3およびP4の高さに基づいて、高さ毎にZレイヤーを割り付けるZレイヤー割付データテーブルを作成し、作成したZレイヤー割付データテーブルを用いて、入力したオブジェクトの高さ位置情報からオブジェクトに対してZレイヤーの番号を割り付ける。これにより、割り付けられたZレイヤー毎に、パルスレーザLが集光する結像面の位置を可変すればよいため、効率的にレーザ加工を実施することができる。
レーザ加工システム110は、加工対象物Wの高さが異なる4つの加工面P1、P2、P3およびP4の高さを計測する距離センサ90を備えることから、オブジェクトの高さ位置情報の誤入力を防止することができる。
レーザ加工システム100は、Zレイヤー毎に、加工対象物W上におけるレーザスポットの位置と、加工データに基づく加工位置との間に生じる誤差を補正する歪み補正係数を算出して、CD−ROM79等に記憶している。そして、歪み補正係数からガルバノミラー12および13の回動制御が補正される。これにより、加工対象物W上にレーザ加工するオブジェクトの加工パターンの歪みを抑止することができる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
例えば、上記実施形態では、ビームエキスパンダ3内の凸レンズ11をパルスレーザLの光軸に沿って移動させて、加工対象物Wに対してパルスレーザLの集光する位置を移動させているが、凹レンズ10を移動させる構成でも同様の効果が得られる。また、凸レンズ11に焦点距離が可変可能な液体レンズ等を採用することも可能である。凸レンズ11に液体レンズを採用することにより、凸レンズ11を移動する必要がないことから、凸レンズ11の移動によるパルスレーザLの光軸ずれを抑止することができる。
また、上記第1の実施形態では、画面表示80に表示されるカーソル87を、入力操作部76のマウスやキーボード等を用いてオブジェクトやテキストボックスの位置に合わせて選択したが、選択方法はこれに限定するものではなく、液晶ディスプレイ77の液晶画面に配置されるタッチパネルを用いて選択することも可能である。