(第1実施形態)
以下、本発明に係るレーザ加工装置を、レーザ加工装置100に具体化した実施形態(第1実施形態)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
(レーザ加工装置の概略構成)
先ず、第1実施形態に関するレーザ加工装置100の概略構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。レーザ加工装置100は、レーザ加工ユニット1と、PC7を有しており、PC7によって作成された加工データに従って、レーザ加工ユニット1を制御することで、加工対象物としてのワークWの表面に対して、レーザ光Lを2次元走査してマーキング加工を行うように構成されている。
(レーザ加工装置の概略構成)
次に、レーザ加工装置100を構成するレーザ加工ユニット1の概略構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、第1実施形態に関するレーザ加工ユニット1は、レーザ加工装置本体部2と、レーザコントローラ5と、電源ユニット6を有して構成されている。
レーザ加工装置本体部2は、ワークWに対してレーザ光Lを照射し、当該レーザ光Lを2次元走査することによって、ワークWの表面上にマーキング加工を行い得る。そして、レーザコントローラ5は、コンピュータで構成され、PC7と双方向通信可能に接続されると共に、レーザ加工装置本体部2及び電源ユニット6と電気的に接続されている。PC7は、パーソナルコンピュータ等から構成され、加工データの作成やレーザ加工装置100における加工に関する各種指示情報の入力等に用いられる。そして、レーザコントローラ5は、PC7から送信された加工データ、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザ加工装置本体部2及び電源ユニット6を駆動制御する。
尚、図1は、レーザ加工装置100及びレーザ加工ユニット1の概略構成を示すものであるため、レーザ加工装置本体部2を模式的に示している。従って、当該レーザ加工装置本体部2の具体的な構成については、後述する。
(レーザ加工装置本体部の概略構成)
次に、レーザ加工装置本体部2の概略構成について、図1、図2に基づいて説明する。尚、レーザ加工装置本体部2の説明において、図1の左方向、右方向、上方向、下方向が、それぞれレーザ加工装置本体部2の前方向、後方向、上方向、下方向である。従って、レーザ発振ユニット12におけるレーザ光Lの出射方向が前方向である。本体ベース11及びレーザ光Lに対して垂直な方向が上下方向である。そして、レーザ加工装置本体部2の上下方向及び前後方向に直交する方向が、レーザ加工装置本体部2の左右方向である。
レーザ加工装置本体部2は、レーザ光Lとガイド光Mをfθレンズ20から同軸上に出射するレーザヘッド部3(図1参照)と、レーザヘッド部3が上面に固定される略箱体状の加工容器(図示せず)とから構成されている。
図1、図2に示すように、レーザヘッド部3は、本体ベース11と、レーザ光Lを出射するレーザ発振ユニット12と、光シャッター部13と、反射ミラー14と、ハーフミラー15と、光センサ16と、ガイド光部17と、ポインタ光出射部18と、ガルバノスキャナ19と、fθレンズ20等を有して構成され、略直方体形状の筐体カバー(図示せず)で覆われている。
レーザ発振ユニット12は、レーザ発振器21と、ビームエキスパンダ22を有して構成されており、取付台及び取付ネジを介して、本体ベース11に取り付けられている。レーザ発振器21は、ファイバコネクタと、集光レンズと、反射鏡と、レーザ媒質と、受動Qスイッチと、出力カプラーと、ウィンドウとをケーシング内に有している。ファイバコネクタには、光ファイバFが接続されており、電源ユニット6を構成する励起用半導体レーザ部40から出射された励起光が、光ファイバFを介して入射される。
集光レンズは、ファイバコネクタから入射された励起光を集光する。そして、反射鏡は、集光レンズによって集光された励起光を透過すると共に、レーザ媒質から出射されたレーザ光を高効率で反射する。レーザ媒質は、励起用半導体レーザ部40から出射された励起光によって励起されてレーザ光Lを発振する。レーザ媒質としては、例えば、レーザ活性イオンとしてネオジウム(Nd)が添加されたネオジウム添加ガドリニウムバナデイト(Nd:GdVO4)結晶を用いることができる。
受動Qスイッチは、レーザ媒質によって発振されたレーザ光をパルス状のパルスレーザとするQスイッチとして機能する。受動Qスイッチとしては、例えば、クローム添加YAG(Cr:YAG)結晶を用いることができる。
出力カプラーは、反射鏡とレーザ共振器を構成する。出力カプラーは、例えば、表面に誘電体層膜をコーティングした凹面鏡により構成された部分反射鏡で、例えば、波長1064nmでの反射率は、80%〜95%である。ウィンドウは、誘電体多層膜等で形成された合成石英等から形成され、出力カプラーから出射されたレーザ光Lを外部へ透過させる。従って、レーザ発振器21は、受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振し、ワークWを加工するためのレーザ光Lとして、パルスレーザを出力する。
ビームエキスパンダ22は、レーザ光Lのビーム径を変更するものであり、レーザ発振器21と同軸に設けられている。取付台は、本体ベース11上面における後方側であって左寄りに固定されている。当該取付台には、レーザ発振ユニット12が各取付ネジによって、レーザ光Lの光軸を調整可能に取り付けられている。
図1、図2に示すように、光シャッター部13は、ステッピングモータやロータリーソレノイド等で構成されるシャッターモータ26と、平板状のシャッター27とを有している。シャッター27は、シャッターモータ26のモータ軸に取り付けられており、シャッターモータ26の回動に伴って所定位置に移動することで、レーザ光Lの光路を遮る。一方、シャッター27がレーザ光Lの光路上に位置しないように回転した場合、当該レーザ光Lは、レーザ発振ユニット12及び光シャッター部13の前方に位置する反射ミラー14に入射する。
反射ミラー14は、レーザ発振ユニット12から出射されたレーザ光Lの光路に対し、その反射面が約45度を為すように配設されており、反射面に対して入射されたレーザ光Lを、反射ミラー14に対して右側に配設されたハーフミラー15へ反射する。
ハーフミラー15は、反射ミラー14によって反射されたレーザ光Lの光路に対して、反射面が45度を為すように配設されており、反射面に入射されたレーザ光Lの大部分を、ガルバノスキャナ19に向かって反射する。又、当該ハーフミラー15は、反射面に入射されたレーザ光Lの一部を、ハーフミラー15に対して右側に位置する光センサ16へ透過する。又、当該ハーフミラー15の一面(前記反射面の裏面)には、その後方側に配置されたガイド光部17からのガイド光Mが入射される。当該ハーフミラー15は、レーザヘッド部3の後方側からのガイド光Mを、反射面で反射されたレーザ光Lの光路上へ透過する。
光センサ16は、フォトダイオード等で構成され、ハーフミラー15を透過したレーザ光Lの一部が入射される。従って、当該レーザ加工装置100は、光センサ16を介して、レーザ発振器21から出力されるレーザ光Lの強度を検出することができる。
ガイド光部17は、可視レーザ光として、例えば、赤色レーザ光を出射する可視半導体レーザ28と、可視半導体レーザ28から出射されたガイド光Mを平行光に収束するレンズ群(図示せず)とから構成されており、ハーフミラー15の後方側に配設されている。ガイド光Mは、レーザ発振器21から出射されるレーザ光Lと異なる波長を示す。ガイド光部17は、ハーフミラー15を透過したガイド光Mの光路がハーフミラー15からガルバノスキャナ19へと向かうレーザ光Lの光路と一致するように、本体ベース11に固定されている。
そして、本体ベース11における前方左側部分には、ポインタ光出射部18が配設されており、加工容器の内部に向かって、fθレンズ20を介さずに、可視光であるポインタ光を出射可能に構成されている。当該ポインタ光出射部18は、加工容器内部に配設されたワーク載置部(図示せず)に対するポインタ光の入射角度が所定の傾斜角度を為すように、本体ベース11に対して取り付けられており、fθレンズ20によって収束されたレーザ光Lの焦点位置(合焦位置)でガイド光Mと交点を形成するように、ポインタ光を出射する。従って、当該レーザ加工装置100によれば、ガイド光部17からのガイド光Mと、ポインタ光出射部18からのポインタ光による交点を基準として、レーザ光Lに係る焦点面の位置を、ユーザに把握させることができ、もって、レーザ光Lの焦点面に対するワークWの加工面の位置を、適切に調整させることができる。
ガルバノスキャナ19は、本体ベース11の前側に形成された貫通孔29の上側に取り付けられ、レーザ発振ユニット12から出射されたレーザ光Lと、ハーフミラー15で反射されたガイド光Mとを下方へ2次元走査する。ガルバノスキャナ19は、ガルバノX軸ミラーを有するガルバノX軸モータ31と、ガルバノY軸ミラーを有するガルバノY軸モータ32と、本体部33により構成されている。ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32は、それぞれのモータ軸が互いに直交するように外側からそれぞれの取付孔に嵌入、保持されて本体部33に取り付けられている。
ガルバノX軸モータ31において、ガルバノX軸ミラーは、走査ミラーとして、モータ軸の先端部に取り付けられており、レーザ光Lとガイド光Mを、ワークW表面上においてX軸方向に走査する際に用いられる。そして、ガルバノY軸モータ32において、ガルバノY軸ミラーは、走査ミラーとして、モータ軸の先端部に取り付けられており、ガルバノX軸ミラーによって反射されたレーザ光L及びガイド光Mを、ワークW表面上においてY軸方向に走査する際に用いられる。
当該ガルバノスキャナ19においては、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32の各モータ軸の先端部に取り付けられた走査ミラーが内側で互いに対向している。そして、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32の回転をそれぞれ制御して、各走査ミラー(即ち、ガルバノX軸ミラー、ガルバノY軸ミラー)の姿勢を制御することによって、レーザ光Lとガイド光Mとを下方へ2次元走査する。この2次元走査方向は、ワークW表面において、前後方向(X軸方向)と左右方向(Y軸方向)である。
fθレンズ20は、レーザヘッド部3の本体ベース11に対して取り付けられており、下方に配置されたワークW表面に対して、ガルバノスキャナ19によって2次元走査されたレーザ光Lとガイド光Mとを、夫々同軸に集光する。そして、当該fθレンズ20は、レーザ光Lやガイド光M等を集光した焦点を、平面状の焦点面とすると共に、レーザ光Lやガイド光Mの走査速度が一定になるように補正する。従って、当該レーザ加工装置100によれば、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32の回転を制御することによって、レーザ光Lとガイド光Mを、ワークW表面上において、所望の加工パターンで前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)に2次元走査することができる。
図2に示すように、本体ベース11の後方側において、レーザ発振ユニット12の右側には、ガルバノドライバ23が搭載された基板が立設されている。ガルバノドライバ23は、後述するガルバノコントローラ56から入力されたモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、レーザ光L及びガイド光Mを2次元走査する。
(電源ユニットの概略構成)
次に、レーザ加工ユニット1における電源ユニット6の概略構成について、図1を参照しつつ説明する。図1に示すように、電源ユニット6は、励起用半導体レーザ部40と、レーザドライバ51と、電源部52と、冷却ユニット53とを、ケーシング55内に有している。電源部52は、励起用半導体レーザ部40を駆動する駆動電流を、レーザドライバ51を介して励起用半導体レーザ部40に供給する。レーザドライバ51は、レーザコントローラ5から入力される駆動情報に基づいて、励起用半導体レーザ部40を直流でオンオフ駆動する。
励起用半導体レーザ部40は、光ファイバFによってレーザ発振器21に光学的に接続されており、レーザドライバ51を介した駆動制御によって、励起光を発生させる。従って、レーザ発振器21には、励起用半導体レーザ部40からの励起光が光ファイバFを介して入射される。
冷却ユニット53は励起用半導体レーザ部40、及び電源部52を、所定の温度範囲内に調整する為のユニットであり、例えば、電子冷却方式により冷却することで、励起用半導体レーザ部40の温度制御を行っており、励起用半導体レーザ部40の発振波長を微調整する。
(レーザ加工装置の制御系)
次に、レーザ加工装置100を構成するレーザ加工ユニット1の制御系構成について、図面を参照しつつ説明する。図3に示すように、レーザ加工ユニット1は、レーザ加工ユニット1の全体を制御するレーザコントローラ5と、レーザドライバ51と、ガルバノコントローラ56と、ガルバノドライバ23と、ガイド光ドライバ58と、ポインタ光ドライバ59と、光センサ16等を有して構成されている。レーザコントローラ5には、DAC66と、レーザドライバ51と、ガルバノコントローラ56と、光センサ16と、ガイド光ドライバ58と、ポインタ光ドライバ59等が電気的に接続されている。
レーザコントローラ5は、レーザ加工ユニット1の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU61、RAM62、ROM63、時間を計測するタイマー65等を備えている。
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果や加工走査パターンのXY座標データ等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM63は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、PC7から送信された加工データに基づいて加工走査パターンのXY座標データを算出してRAM62に記憶する等の各種プログラムが記憶されている。
即ち、当該ROM63は、後述するレーザ加工処理プログラム(図4参照)、オブジェクト領域算出処理プログラム(図5参照)及び加工領域設定処理プログラム(図6、図9参照)を記憶している。又、ROM63には、レーザ加工装置100の初期状態(例えば、工場出荷時の状態)において、レーザ光Lによる加工位置に生じる歪の実測値により構成される歪データが記憶されている。当該歪データの内容については後に図面を参照しつつ詳細に説明する。
そして、CPU61は、ROM63に記憶されている各種の制御プログラムに基づいて各種の演算及び制御を行なうものである。例えば、CPU61は、PC7から入力された加工データに基づいて設定した励起用半導体レーザ部40の励起光出力、励起光の出力期間等の励起用半導体レーザ部40の駆動情報をレーザドライバ51に出力する。又、CPU61は、PC7から入力された加工データを構成する各加工点のXY座標データ、ガルバノスキャナ19のON・OFFを指示する制御信号、ガルバノ走査速度情報等を、DAC66を介して、ガルバノコントローラ56に出力する。
DAC66は、デジタル電気信号を、アナログ電気信号に変換する電子回路であり、例えば、CPU61から出力されるガルバノスキャナ19のON・OFFを指示する制御信号を、アナログ電気信号に変換して、ガルバノコントローラ56に出力する。当該DAC66の分割数は、その性能によって決まってしまう。例えば、DAC66の性能が16bitである場合、DAC66の分割数は、65536の分割数となる。ガルバノスキャナ19の駆動制御は、初期状態においては、直交座標系上に規定されたガルバノスキャナ19の走査可能領域を、X軸、Y軸に従って所定の分割数で分割して得られる座標位置に対し、制御信号を割り付けてこれらに従って行われる。例えば、ガルバノスキャナ19の走査可能領域は、X軸方向の長さが120mmでY軸方向の長さが120mmの矩形状の領域として規定される。上記矩形状に規定された走査可能領域を、X軸、Y軸に従って65536の分割数で分割すると、各座標位置の間隔は、0.00183mmとなる。
レーザドライバ51は、レーザコントローラ5から入力された励起用半導体レーザ部40の励起光出力、励起光の出力期間等のレーザ駆動情報等に基づいて、励起用半導体レーザ部40を駆動制御する。具体的には、レーザドライバ51は、レーザコントローラ5から入力されたレーザ駆動情報の励起光出力に比例した電流値のパルス状の駆動電流を発生し、レーザ駆動情報の励起光の出力期間に基づく期間、励起用半導体レーザ部40に出力する。これにより、励起用半導体レーザ部40は、励起光出力に対応する強度の励起光を出力期間の間、光ファイバF内に出射する。
ガルバノコントローラ56は、レーザコントローラ5から入力された加工データにおける各加工点のXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報をガルバノドライバ23へ出力する。
ガルバノドライバ23は、ガルバノコントローラ56から入力された駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、レーザ光Lを2次元走査する。
ガイド光ドライバ58は、レーザコントローラ5から出力される制御信号に基づいて、可視半導体レーザ28を含むガイド光部17の制御を行い、例えば、制御信号に基づいて、可視半導体レーザ28から出射されるガイド光Mの発光タイミングや光量を制御する。そして、ポインタ光ドライバ59は、レーザコントローラ5から出力される制御信号に基づいて、ポインタ光出射部18の制御を行い、ポインタ光の出射制御を行う。
図1、図3に示すように、レーザコントローラ5には、PC7が双方向通信可能に接続されており、PC7から送信された加工内容を示す加工データ、レーザ加工装置本体部2の制御パラメータ、ユーザからの各種指示情報等を受信可能に構成されている。
続いて、レーザ加工装置100を構成するPC7の制御系構成について、図面を参照しつつ説明する。図3に示すように、PC7は、PC7の全体を制御する制御部70と、マウスやキーボード等から構成される入力操作部76と、液晶ディスプレイ77と、CD−ROM79に対する各種データ、プログラム等の書き込み及び読み込みを行うためのCD−R/W78等から構成されている。
制御部70は、PC7の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU71と、RAM72と、ROM73と、時間を計測するタイマー74と、HDD75等を備えている。RAM72は、CPU71により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM73は、各種の制御プログラムやデータテーブルを記憶させておくものである。
そして、HDD75は、各種アプリケーションソフトウェアのプログラム、各種データファイルを記憶する記憶装置である。当該HDD75は、ワークW上におけるレーザ加工の加工内容を示す加工データを作成する為のデータ作成処理プログラム等を記憶している。
そして、CD−R/W78は、アプリケーションプログラム、各種データテーブルを構成する各データ群を、CD−ROM79から読み込む、又は、CD−ROM79に対して書き込む。
尚、PC7においては、データ作成処理プログラム等のアプリケーションプログラムや、各種データテーブル、データベースを、ROM73に記憶しても良いし、CD−ROM79等の記憶媒体から読み込むように構成しても良い。又、インターネット等のネットワーク(図示せず)を介して、ダウンロードするように構成してもよい。
そして、PC7には、入出力インターフェース(図示せず)を介して、マウスやキーボード等から構成される入力操作部76と、液晶ディスプレイ77等が電気的に接続されている。
(第1実施形態におけるレーザ加工処理プログラムの処理内容)
続いて、レーザコントローラ5のCPU61によって実行されるレーザ加工処理プログラムの処理内容について、図4を参照しつつ詳細に説明する。上述したように、当該レーザ加工処理プログラムは、レーザコントローラ5のROM63に記憶されており、CPU61によって読み出されて実行される。
レーザ加工処理プログラムの実行を開始すると、CPU61は、先ず、加工対象であるワークWの外形や構成材質等を示すワーク情報の入力を受け付ける(S1)。当該ワーク情報は、例えば、PC7の入力操作部76を用いて生成され、PC7から入力される。受け付けたワーク情報をRAM62に格納した後、CPU61は、S2に処理を移行する。
S2においては、CPU61は、加工条件設定処理を実行し、RAM62に格納したワーク情報に基づいて、当該ワークWに対するマーキング加工に関する加工条件を設定する。この場合に設定される加工条件としては、例えば、レーザ光Lの出力強度や、レーザ光Lの走査速度等を挙げることができる。そして、当該加工条件設定処理では、例えば、CPU61は、ワークWの構成材質に応じて、マーキング加工を行う際のレーザ光Lの強度を設定する。加工条件設定処理(S2)を終了した後、CPU61は、S3に処理を移行する。
S3では、CPU61は、PC7から加工データを取得する。当該加工データは、PC7のCPU71によって、データ作成処理プログラムを実行することで生成され、レーザ光Lによる加工の内容を示す一又は複数の加工オブジェクトを含んでいる。当該加工オブジェクトは、マーキング加工によって、ワークW表面に描画される加工内容を示し、レーザ光Lによる加工位置に対応する複数の加工点や、複数の加工点の集合によって構成される線要素等を含んで構成される。そして、当該加工オブジェクトを構成する各加工点は、直交座標系上の各座標位置(直交座標系において、相互に直交する2本のグリッドの交点)に割り付けられている。PC7から取得した加工データをRAM62に格納した後、CPU61は、S4に処理を移行する。
S4に移行すると、CPU61は、オブジェクト領域設定処理を実行して、S3で取得した加工データにおける各加工オブジェクトに対して、オブジェクト領域Oを設定する。具体的には、CPU61は、ROM63に格納されているオブジェクト領域設定処理プログラム(図5参照)を読み出して実行する。
(オブジェクト領域設定処理プログラムの処理内容)
図5に示すように、オブジェクト領域設定処理プログラムの実行を開始すると、CPU61は、先ず、S3で取得した加工データに含まれている加工オブジェクトの内、一の加工オブジェクトを特定し、当該加工オブジェクトの外接矩形を算出する(S21)。具体的には、CPU61は、当該加工オブジェクトを構成する全加工点のX座標値、Y座標値の最大値及び最小値に基づいて、当該加工オブジェクトの外接矩形を算出する。その後、CPU61は、S22に処理を移行する。
S22においては、CPU61は、S21で算出した当該加工オブジェクトの外接矩形を構成する4点の座標情報を、RAM62に形成されたオブジェクト領域リストに登録する。当該加工オブジェクトに係る外接矩形を、オブジェクト領域Oとしてオブジェクト領域リストに登録した後、CPU61は、S23に処理を移行する。
S23に移行すると、CPU61は、S3で取得した加工データに含まれる全ての加工オブジェクトについて、オブジェクト領域Oの登録処理を完了したか否かを判断する。全ての加工オブジェクトに対する処理を完了した場合(S23:YES)、CPU61は、オブジェクト領域算出処理プログラムを終了し、レーザ加工処理プログラムのS5に処理を移行する。一方、全ての加工オブジェクトに対する処理を完了していない場合(S23:NO)、CPU61は、S21に処理を戻し、加工データに含まれる他の加工オブジェクトについて、オブジェクト領域Oの登録処理(S21、S22)を実行する。
図4に示すように、S5においては、CPU61は、オブジェクト領域算出処理(S4)の処理結果に基づいて、加工領域設定処理を実行して、加工データに基づくマーキング加工を行う際の加工領域Rを設定する。具体的には、CPU61は、ROM63に格納されている加工領域設定処理プログラム(図6参照)を読み出して実行する。
(第1実施形態に係る加工領域設定処理プログラムの処理内容)
加工領域設定処理プログラムの実行を開始すると、CPU61は、オブジェクト領域リストにオブジェクト領域が複数含まれているか否かを判断し、オブジェクト領域が複数含まれている場合、オブジェクト領域リストから、2つのオブジェクト領域Oを特定し、当該オブジェクト領域Oの間に領域としての重なりがあるか否かを判断する(S31)。具体的には、CPU61は、各オブジェクト領域Oを規定する4点の座標値の大小関係を比較することによって、重なりの有無を判断する。オブジェクト領域Oの間に重なりがある場合(S31:YES)、CPU61は、S32に処理を移行する。一方、オブジェクト領域Oの間に重なりがない場合(S31:NO)、CPU61は、S33に処理を移行する。同様に、オブジェクト領域が複数含まれていない場合も、オブジェクト領域に重なりが生じることがない為(S31:NO)、CPU61は、S33に処理を移行する。
例えば、図7左図の例をもって説明する。この例では、第1オブジェクト領域Oaと、第2オブジェクト領域Obの重なりの有無を判断する。この場合、CPU61は、第1オブジェクト領域Oaの右下角にあたる座標値と、第2オブジェクト領域Obの左上角にあたる座標値とを比較する。この2点の間の関係性においては、X座標値においては、第2オブジェクト領域Obの値が第1オブジェクト領域Oaの値よりも小さく、Y座標値においては、第1オブジェクト領域Oaの値が第2オブジェクト領域Obの値よりも大きいため、CPU61は、第1オブジェクト領域Oaと第2オブジェクト領域Obの間に重なりがあると判断する。
S32においては、CPU61は、重複するオブジェクト領域Oを包含する外接矩形を算出し、算出した外接矩形を、複数の加工オブジェクトを含む加工領域Rに設定する。具体的には、CPU61は、重複するオブジェクト領域Oの内で、各オブジェクト領域Oを構成する4点の座標値の最大値、最小値を求め、最大値、最小値により特定される外接矩形をもって、加工領域Rに設定する(図7の右図参照)。設定した加工領域Rに関する情報(例えば、加工領域Rを構成する4点の座標情報)を、RAM62に格納した後、CPU61は、S34に処理を移行する。
S33では、CPU61は、2つのオブジェクト領域Oの間に重なりが存在していない為、各オブジェクト領域Oを、それぞれ加工領域Rに設定する。この場合、CPU61は、各オブジェクト領域Oに係る4点の座標情報を、夫々の加工領域Rに係る4点の座標情報としてRAM62に格納する。その後、CPU61は、S34に処理を移行する。
S34に移行すると、CPU61は、オブジェクト領域設定処理(S4)で生成されたオブジェクト領域リストに基づいて、全てのオブジェクト領域Oに対する処理(即ち、S31〜S33の処理)を完了しているか否かを判断する。全てのオブジェクト領域Oに対する処理を完了している場合(S34:YES)、CPU61は、S35に処理を移行する。一方、全てのオブジェクト領域Oに対する処理を完了していない場合(S34:NO)、CPU61は、S31に処理を戻す。
S35においては、CPU61は、RAM62に格納されている全ての加工領域Rについて、マーキング加工を行う際における加工領域Rの加工順を決定する。加工領域Rの加工順の決定方法は、例えば、各加工領域Rに係る4点の座標情報に関し、Y座標値の小さい順に決定する。この決定方法は、あくまでも一例であり、Y座標値の大きい順であってもよいし、X座標値の大小に基づいて決定してもよい。更に、各加工領域Rを効率良く加工可能な経路に従って、加工領域Rの加工順を決定してもよい。決定した加工領域Rの加工順をRAM62に格納した後、CPU61は、加工領域設定処理プログラムを終了し、レーザ加工処理プログラムのS6に処理を移行する。
再び図4を参照しつつ、S6以後の処理内容について説明する。S6では、CPU61は、加工領域設定処理プログラムのS35で決定された加工順に従って、一の加工領域Rを、マーキング加工の加工対象としての対象加工領域に特定する。対象加工領域を特定した後、CPU61は、S7に処理を移行する。
S7においては、CPU61は、先ず、S6で特定された対象加工領域を、DAC66の分割数で分割する。続いて、CPU61は、対象加工領域をDAC66の分割数で分割して得られる各座標位置(以下、制御基準座標)に対して、ガルバノスキャナ19の制御信号を割り付ける。対象加工領域をDAC66の分割数で分割する場合、ガルバノスキャナ19の走査可能領域全体をDAC66の分割数で分割する場合と比較して、各座標位置の間隔がより小さくなる。よって、より小さい間隔の座標位置に、ガルバノスキャナ19の制御信号が割り付けられる。これにより、当該レーザ加工装置100は、対象加工領域の内部に対するレーザ光L、ガイド光Mの走査精度を、ガルバノスキャナ19の走査可能領域全体を対象とした場合に比べて向上させることができる。対象加工領域における制御基準座標に対して、ガルバノスキャナ19の制御信号を割り付けた後、CPU61は、S8に処理を移行する。
S8に移行すると、CPU61は、ROM63に格納されている歪データに基づいて、対象加工領域におけるレーザ光Lによる加工位置に生じる歪を補正する為の射影変換係数を算出する。
ここで、ROM63に格納されている歪データについて説明する。当該レーザ加工装置100において、補正処理をせずに、加工データの各加工点の座標データに従ってガルバノミラーを回動させると、レーザ発振ユニット12から出射されたレーザ光Lは、ガルバノスキャナ19、fθレンズ20を経て、ワークW上へ到達する過程で、レーザヘッド部3におけるレーザ発振ユニット12やガルバノスキャナ19の配置の影響や、fθレンズ20の収差等の影響を受けてしまう。
即ち、これらの影響によって、ワークW表面の加工領域上におけるレーザ光Lによる加工位置と、ワークW上でレーザ光Lによる加工が要求されている理想座標である理想点や、加工データにおける直交座標系上に設定された加工点の座標である設定点との間に、偏差としての歪が生じてしまう。当該歪データは、図8左図に示すように、ガルバノスキャナ19の走査可能領域を、X軸、Y軸に従ってDAC66の分割数で分割して得られる各座標位置に生じる歪の数値によって構成されている。
S8においては、先ず、CPU61は、対象加工領域に係る4点の座標情報に基づいて、ガルバノスキャナ19の走査可能領域における対象加工領域の位置を特定する(図8)。続いて、CPU61は、上述のように構成された歪データに基づいて、ガルバノスキャナ19の走査可能領域において、歪の数値が対応付けられた座標位置の内、対象加工領域に係る4点に近い座標位置を特定し、各座標位置における歪の数値を取得する。その後、歪データから取得した座標位置の歪の数値と、対象加工領域に係る4点の座標情報とを用いた3次スプライン補間法によって、対象加工領域をDAC66の分割数で分割して得られる各制御基準座標における歪の数値を求める。
続いて、CPU61は、対象加工領域における各制御基準座標の座標値(X座標値、Y座標値)と、3次スプライン補間法によって求めた各制御基準座標における歪の数値に基づいて、制御基準座標を基準として補正処理を行うことなく、レーザ光Lを照射した場合の加工位置の座標値を算出する。その後、CPU61は、算出した加工位置の座標値に基づいて、対象加工領域における各制御基準座標に係る複数の射影変換係数(即ち、「a」〜「h」、「α」)を算出する。当該射影変換係数は、直交座標系上の各制御座標位置に生じる歪(即ち、3次スプライン補間法で求めた歪)を後述する射影変換処理によって相殺する為に必要な値を示す。
尚、当該射影変換処理で用いられる変換式は、下記の通りである。
(座標位置のX座標(x´))=(a*x+b*y+c)/(g*x+h*y+α)
(座標位置のY座標(y´))=(d*x+e*y+f)/(g*x+h*y+α)
そして、一の制御基準座標に対する複数の射影変換係数(即ち、「a」〜「h」、「α」)によって構成されており、当該射影変換係数における「α」は、「+1」又は「−1」の何れかを示す。
このようにして算出した対象加工領域における各制御基準座標に係る射影変換係数を、RAM62に格納した後、CPU61は、S9に処理を移行する。
S9では、CPU61は、対象加工領域に対する歪補正実行処理を行う。具体的には、CPU61は、対象加工領域内の加工オブジェクトを構成する各加工点のX座標値、Y座標値と、S8で算出された対象加工領域の各制御基準座標に対応付けられた射影変換係数(即ち、「a」〜「h」、「α」)と、変換式とを用いた補正処理(射影変換処理)を実行することによって、対象加工領域におけるレーザ光Lの加工位置に生じる歪を補正する。この場合の射影変換係数は、対象加工領域をDAC66の分割数で分割した制御基準座標ごとに対応付けられている為、当該レーザ加工装置100によれば、対象加工領域内における歪を、高い精度をもって補正することができる。その後、CPU61は、S10に処理を移行する。
S10に移行すると、CPU61は、対象加工領域に対する加工実行処理を実行し、歪補正実行処理(S9)の処理結果が反映されたレーザ発振ユニット12及びガルバノスキャナ19の制御を行うことによって、対象加工領域に係る加工オブジェクトを、レーザ光LによってワークW表面上に描画する。この時、ガルバノスキャナ19の駆動制御は、対象加工領域をDAC66の分割数で分割した制御基準座標に従って行われる為、当該レーザ加工装置100は、対象加工領域内の加工オブジェクトに係るマーキング加工の加工精度を向上させることができ、もって、加工オブジェクトの解像度を高めることができる。対象加工領域に対する加工実行処理を終了すると、CPU61は、S11に処理を移行する。
S11では、CPU61は、S8で算出した対象加工領域に係る射影変換係数を、RAM62から消去する。これにより、当該レーザ加工装置100は、消去に伴って開放されたRAM62の記憶領域に、新たな対象加工領域(例えば、他の加工領域R)に係る射影変換係数を記憶させることができ、RAM62の記憶容量を有効活用することができる。その後、CPU61は、S12に処理を移行する。
S12においては、CPU61は、S5で設定した全ての加工領域Rに対するマーキング加工に係る処理(S7〜S11)を完了したか否かを判断する。全ての加工領域Rに対する処理を完了している場合(S12:YES)、CPU61は、レーザ加工処理プログラムを終了する。一方、全ての加工領域Rに対する処理を完了していない場合(S12:NO)、CPU61は、S6に処理を戻し、次の加工順である加工領域Rを対象加工領域に特定し、当該加工領域Rについて、マーキング加工に係る処理(S7〜S11)を行う。
以上説明したように、第1実施形態に関するレーザ加工装置100は、レーザ発振ユニット12と、ガルバノスキャナ19と、fθレンズ20と、レーザコントローラ5と、PC7とを有しており、レーザ発振ユニット12から出射されたレーザ光Lを、ガルバノスキャナ19によって走査することで、ワークW表面にマーキング加工を施すことができる。
当該レーザ加工装置100は、S3で取得した加工データにおける加工オブジェクトに対して、加工領域設定処理(S5)を実行することで、ガルバノスキャナ19の走査可能領域内における加工領域Rを設定し、当該加工領域Rに対してDAC66の分割数で分割した位置に対して、ガルバノスキャナ19の制御信号を割り付ける(S7)。そして、当該レーザ加工装置100は、DAC66を介してCPU61から出力されるガルバノスキャナ19の制御信号に基づいて、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32を介して、ガルバノスキャナ19を駆動すると共に、レーザ発振ユニット12からのレーザ光Lの出射に関する制御を行う。
即ち、当該レーザ加工装置100によれば、加工データにおける加工オブジェクトに対応する加工領域Rを、ガルバノスキャナ19の走査加工領域内部に設定し、当該加工領域Rに対して、DAC66の分割数に従ったガルバノスキャナ19の制御信号を割り付ける為、加工領域R内部のマーキング加工に関するガルバノスキャナ19の駆動精度を、ガルバノスキャナ19の走査可能領域全体を対象とする場合に比べて向上させることができ、もって、レーザ光Lによるマーキング加工の加工精度をより向上させることができる。
そして、加工領域設定処理(S5)においては、オブジェクト領域算出処理(S4)で一の加工オブジェクトを包含する外接矩形として算出されたオブジェクト領域Oを基準として、加工領域Rを設定する為、当該レーザ加工装置100は、ガルバノスキャナ19の走査可能領域の内部における加工領域Rのサイズを、加工オブジェクトの内容に対応する適切なサイズに決定することができ、もって、加工オブジェクトに関するマーキング加工の加工精度を向上させることができる。
当該レーザ加工装置100は、S7〜S9の処理を実行することで、ガルバノスキャナ19の走査可能領域における加工領域Rの位置を判断し、当該走査可能領域内部における加工領域Rの位置に応じた射影変換係数を、走査可能領域を対象とした歪データに基づいて算出し(S8)、算出した射影変換係数に変更して、加工領域R内の加工オブジェクトに関する歪補正を行う(S9)。これにより、当該レーザ加工装置100によれば、加工領域設定処理(S5)によって設定された加工領域Rに応じた詳細な射影変換係数を用いた補正処理を行うことができる為、レーザ光Lによる加工位置に生じる歪を、より高い精度をもって補正することができ、加工領域Rに対するマーキング加工の加工品質を更に向上させ得る。
歪データは、ガルバノスキャナ19の走査可能領域をDAC66で分割した座標位置における歪の数値によって構成されている。そして、加工領域Rに係る射影変換係数は、ガルバノスキャナ19の走査可能領域における加工領域Rの位置と、当該歪データに歪の数値とを用いた3次スプライン補間法によって、当該加工領域RをDAC66で分割した制御基準座標における歪の数値を求め、当該歪の数値に基づいて、制御基準座標毎に算出される。つまり、当該レーザ加工装置100によれば、加工領域R内における詳細な歪の状態を求め、これに対応する射影変換係数を算出することができる為、より高精度な補正を行い、加工領域R内に生じる歪をより確実に低減することができ、もって、加工オブジェクトのマーキング加工に係る加工品質を高めることができる。
又、レーザ加工装置100は、オブジェクト領域算出処理(S4)において、加工データに含まれている一の加工オブジェクト毎に、一のオブジェクト領域Oを算出し、加工領域設定処理(S5)では、オブジェクト領域Oを用いて加工領域Rを設定し、複数の加工領域Rに対する加工順を決定している(S35)。従って、当該レーザ加工装置100によれば、図4に示すように、決定された加工順に従って、順次、各加工領域Rに対するマーキング加工に関する処理(S7〜S11)を実行することができ、各加工領域Rに対するマーキング加工の加工品質を適切に向上させることができる。
図6、図7に示すように、当該レーザ加工装置100は、加工データにおける2つのオブジェクト領域Oの位置関係において、2つのオブジェクト領域Oに重なりが生じている場合(即ち、複数の加工オブジェクト間の距離が所定値以下である場合)、加工領域設定処理プログラムに従って、重なりが生じている複数のオブジェクト領域Oを含む最小サイズの外接矩形を、一の加工領域Rに設定する為(S35)、一の加工オブジェクトに対して一の加工領域Rを決定する場合に比べて、S7における割付処理、S8、S9に係る歪補正に関する処理、加工領域Rに対するマーキング加工の実行処理(S10)等を適切に省略しつつ、複数の加工オブジェクトに関するマーキング加工の加工品質を向上させることができる。即ち、当該レーザ加工装置100によれば、加工データに複数の加工オブジェクトが含まれている場合に、各加工オブジェクトに関する加工品質の向上と、各加工オブジェクトに関する加工効率の向上とを両立させることができる。
(第2実施形態)
次に、上述した第1実施形態と異なる実施形態(第2実施形態)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、第2実施形態に関するレーザ加工装置100は、上述した第1実施形態に関するレーザ加工装置100と同一の基本的構成を有しており、加工領域設定処理(S5)の処理内容が相違する。従って、第1実施形態と同一の構成、処理内容に関する説明は省略する。
(第2実施形態に係る加工領域設定処理プログラムの処理内容)
第2実施形態に係るレーザ加工装置100においても、第1実施形態と同様にオブジェクト領域算出処理(S4)を終了すると、CPU61は、加工領域設定処理を実行して、加工データに基づくマーキング加工を行う際の加工領域Rを設定する。具体的には、CPU61は、第2実施形態に係る加工領域設定処理プログラム(図9参照)を、ROM63から読み出して実行する。
図9に示すように、第2実施形態に係る加工領域設定処理プログラムの実行を開始すると、CPU61は、先ず、オブジェクト領域リストから、2つのオブジェクト領域Oを特定し、当該オブジェクト領域Oの間におけるX軸方向への間隔(以下、X方向間隔Dx)を算出する(S41)。具体的には、CPU61は、一方のオブジェクト領域Oを構成する4点に係るX座標値の最大値と、他方のオブジェクト領域Oを構成する4点に係るX座標値の最小値との差によって、X方向間隔Dxを算出する。算出したX方向間隔DxをRAM62に格納した後、CPU61は、S42に処理を移行する。
S42においては、CPU61は、S41で算出したX方向間隔Dxが、X軸方向におけるオブジェクト幅の最大値よりも小さいか否かを判断する。X軸方向におけるオブジェクト幅の最大値は、X軸方向へのオブジェクト領域Oの幅に関して、2つのオブジェクト領域Oの内で大きいものを意味しており、各オブジェクト領域Oを構成する4点の座標情報の内、X座標値の最大値、最小値によって特定される。即ち、S42においては、2つのオブジェクト領域Oの間が、X軸方向に一のオブジェクト領域Oに相当する程度離れているか否かを判断している。X方向間隔DxがX軸方向におけるオブジェクト幅の最大値よりも小さい場合(S42:YES)、CPU61は、S43に処理を移行する。一方、X方向間隔Dxが、X軸方向におけるオブジェクト幅の最大値よりも小さくない場合(S42:NO)、CPU61は、S46に処理を移行する。
S43では、CPU61は、当該2つのオブジェクト領域Oの間におけるY軸方向への間隔(以下、Y方向間隔Dy)を算出する。具体的には、CPU61は、一方のオブジェクト領域Oを構成する4点に係るY座標値の最大値と、他方のオブジェクト領域Oを構成する4点に係るY座標値の最小値との差によって、Y方向間隔Dyを算出する。算出したY方向間隔DyをRAM62に格納した後、CPU61は、S44に処理を移行する。
S44に移行すると、CPU61は、S43で算出したY方向間隔Dyが、Y軸方向におけるオブジェクト高の最大値よりも小さいか否かを判断する。Y軸方向におけるオブジェクト高の最大値は、Y軸方向へのオブジェクト領域Oの高さに関して、2つのオブジェクト領域Oの内で大きいものを意味しており、各オブジェクト領域Oを構成する4点の座標情報の内、Y座標値の最大値、最小値によって特定される。即ち、S44においては、2つのオブジェクト領域Oの間が、Y軸方向に一のオブジェクト領域Oに相当する程度離れているか否かを判断している。Y方向間隔DyがY軸方向におけるオブジェクト高の最大値よりも小さい場合(S44:YES)、CPU61は、S45に処理を移行する。一方、Y方向間隔DyがY軸方向におけるオブジェクト高の最大値よりも小さくない場合(S44:NO)、CPU61は、S46に処理を移行する。
S45においては、CPU61は、S41〜S44の処理対象である2つのオブジェクト領域Oを包含する外接矩形を算出し、算出した外接矩形を、複数の加工オブジェクトを含む加工領域Rに設定する。具体的には、CPU61は、2つのオブジェクト領域Oの内で、各オブジェクト領域Oを構成する4点の座標値の最大値、最小値を求め、最大値、最小値により特定される外接矩形をもって、加工領域Rに設定する(図10の右図参照)。設定した加工領域Rに関する情報(例えば、加工領域Rを構成する4点の座標情報)を、RAM62に格納した後、CPU61は、S47に処理を移行する。
ここで、S41〜S45の処理内容について、図10に示す例を挙げて説明する。図10に示す例では、第1オブジェクト領域Oaと、第2オブジェクト領域Obとの位置関係を判断する。この場合、まず、CPU61は、第1オブジェクト領域Oaと、第2オブジェクト領域Obの間のX方向間隔Dxを算出する(S41)。第1オブジェクト領域Oaに係るオブジェクト幅と、第2オブジェクト領域Obに係るオブジェクト幅を比較すると、第2オブジェクト領域Obのオブジェクト幅の方が大きい為、CPU61は、X方向間隔Dxと、第2オブジェクト領域Obのオブジェクト幅との大小を比較する(S42)。図10に示す例では、X方向間隔Dxが第2オブジェクト領域Obのオブジェクト幅よりも小さい為(S42:YES)、CPU61は、S43に処理を移行する。
図10に示す例についてのS43では、CPU61は、第1オブジェクト領域Oaと、第2オブジェクト領域Obの間のY方向間隔Dyを算出する(S44)。第1オブジェクト領域Oaに係るオブジェクト高と、第2オブジェクト領域Obに係るオブジェクト高を比較すると、第2オブジェクト領域Obのオブジェクト高の方が大きい為、CPU61は、Y方向間隔Dyと、第2オブジェクト領域Obのオブジェクト高との大小を比較する(S44)。その後、図10に示す例では、Y方向間隔Dyが第2オブジェクト領域Obのオブジェクト高よりも小さい為(S44:YES)、CPU61は、S45に処理を移行する。
即ち、この例に示すように、第2実施形態においては、第1実施形態のように第1オブジェクト領域Oaと第2オブジェクト領域Obとの間に重なりが生じている場合(図7左図参照)に限らず、2つのオブジェクト領域Oがある程度近接している場合には、2つの加工オブジェクトを包含する外接矩形を、一の加工領域Rに設定する。
S46では、CPU61は、X軸方向、Y軸方向に関して2つのオブジェクト領域Oがある程度(一のオブジェクト領域Oに相当する程度)離間している為、各オブジェクト領域Oを、それぞれ加工領域Rに設定する。この場合、CPU61は、各オブジェクト領域Oに係る4点の座標情報を、夫々の加工領域Rに係る4点の座標情報としてRAM62に格納する。その後、CPU61は、S47に処理に移行する。
S47に移行すると、CPU61は、オブジェクト領域設定処理(S4)で生成されたオブジェクト領域リストに基づいて、全てのオブジェクト領域Oに対する処理(即ち、S41〜S46の処理)を完了しているか否かを判断する。全てのオブジェクト領域Oに対する処理を完了している場合(S47:YES)、CPU61は、S48に処理を移行する。一方、全てのオブジェクト領域Oに対する処理を完了していない場合(S47:NO)、CPU61は、S41に処理を戻し、当該加工データに含まれる他のオブジェクト領域Oについて、S41〜S46の処理を行う。
S48においては、CPU61は、RAM62に格納されている全ての加工領域Rについて、マーキング加工を行う際における加工領域Rの加工順を決定する。加工領域Rの加工順の決定方法は、第1実施形態と同様に、各加工領域Rの位置関係に基づいて適宜設定することができる。決定した加工領域Rの加工順をRAM62に格納した後、CPU61は、第2実施形態に係る加工領域設定処理プログラムを終了し、レーザ加工処理プログラムのS6に処理を移行する。
このように構成することで、第2実施形態に係るレーザ加工装置100は、加工領域設定処理(S4)において、第1実施形態のように第1オブジェクト領域Oaと第2オブジェクト領域Obとの間に重なりが生じている場合(図7左図参照)に限らず、2つのオブジェクト領域Oがある程度近接している場合についても、2つの加工オブジェクトを包含する外接矩形を、一の加工領域Rに設定することができる。即ち、第2実施形態に係るレーザ加工装置100によっても、加工データに複数の加工オブジェクトが含まれている場合には、各加工オブジェクトに関する加工品質の向上と、各加工オブジェクトに関する加工効率の向上とを両立させることができる。
尚、上述した実施形態において、レーザ加工装置100は、本発明におけるレーザ加工装置の一例であり、レーザ発振ユニット12は、本発明におけるレーザ光出射部の一例である。そして、ガルバノスキャナ19は、本発明における走査部の一例であり、CPU61、DAC66は、本発明における制御部の一例である。又、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32は、本発明における駆動部の一例であり、CPU61、RAM62、ROM63は、本発明における加工データ取得部、加工領域決定部、割付変更部、補正部、位置判断部、判断部、距離判断部の一例である。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した実施形態においては、レーザ加工装置100は、S1で取得したワーク情報に基づいて、加工条件設定処理(S2)を実行することにより、レーザ光Lによるマーキング加工の加工条件(例えば、レーザ光Lの出力強度等)を調整・設定していたが、この態様に限定されるものではない。例えば、加工データにおける加工領域Rの構成に応じて、当該加工領域Rに係る加工オブジェクトを加工する際の加工条件を、更に調整・設定するように構成してもよい。
上述した実施形態においては、加工領域RをDAC66の分割数で分割した制御基準座標毎に、ガルバノスキャナ19の制御信号を割り付けている為、加工領域Rのサイズが小さい程、レーザ光Lによるマーキング加工の解像度を高め、高精細な描画を行い得る。この場合、加工領域Rの変更に伴って、ガルバノスキャナ19の走査によるレーザ光Lの軌跡が変更されると、単位面積あたりのレーザ光Lの入熱量が変化する。この点を考慮し、加工データにおける加工領域Rのサイズに応じて、当該加工領域Rに係る加工オブジェクトを加工する際のレーザ光Lの出力強度を、調整して設定するように構成してもよい。例えば、レーザ光Lが照射される座標の座標値から加工線分の長さを算出し、走査可能領域全体にガルバノスキャナ19の制御信号を割り付ける場合の加工線分の長さと、加工領域Rにガルバノスキャナ19の制御信号を割り付ける場合の加工線分の長さとの比率に基づいて、当該加工領域Rに係る加工オブジェクトを加工する際のレーザ光Lの出力強度を変更するように構成してもよい。
又、上述した実施形態においては、加工データに含まれる加工領域Rに対して、常に3次スプライン補間法によって加工領域R内の歪を求め、これに基づく射影変換係数を算出する構成(S8)であったが、この態様に限定されるものではない。
レーザ加工装置100のような構成の場合に、歪データにおける歪は、図8左図に示すように、直交座標系に規定された走査可能領域の周縁において大きく、走査可能領域の原点付近で小さくなる傾向にある。従って、加工領域Rが走査可能領域における原点近傍にある場合には、3次スプライン補間法に用いて求めた加工領域R内部の詳細な歪と、歪データにおける歪との間に大きな差がないと考えられる。
これらの点を考慮すると、加工領域Rが走査可能領域における原点近傍にある場合に、3次スプライン補間法に用いることなく、歪データの歪から直接的に射影変換係数を求めるように構成することができる。このように構成すれば、射影変換係数による補正の精度を或る程度維持しつつ、3次スプライン補間法による詳細な歪を求める為の処理負担を軽減することができる。