以下、本発明に関するレーザ加工装置を、レーザ加工装置1を含むレーザ加工システム100に具体化した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
(レーザ加工システムの概略構成)
先ず、本実施形態に関するレーザ加工システム100の概略構成について、図1を参照しつつ詳細に説明する。レーザ加工システム100は、レーザ加工装置1と、データ作成装置7を有しており、データ作成装置7によって作成された加工データに従って、レーザ加工装置1を制御することで、ワークWの表面上に対して、パルスレーザLを2次元走査してマーキング加工を行うように構成されている。
(レーザ加工装置の概略構成)
次に、レーザ加工システム100を構成するレーザ加工装置1の概略構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に関するレーザ加工装置1は、レーザ加工装置本体部2と、レーザコントローラ5と、電源ユニット6により構成されている。
レーザ加工装置本体部2は、加工対象物に対してパルスレーザLを照射し、当該パルスレーザLを2次元走査して、加工対象物の表面上にマーキング加工を行い得る。そして、レーザコントローラ5は、コンピュータで構成され、データ作成装置7と双方向通信可能に接続されると共に、レーザ加工装置本体部2及び電源ユニット6と電気的に接続されている。データ作成装置7は、パーソナルコンピュータ等から構成され、加工データの作成等に用いられる。そして、レーザコントローラ5は、データ作成装置7から送信された加工データ、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザ加工装置本体部2及び電源ユニット6を駆動制御する。
尚、図1は、レーザ加工システム100及びレーザ加工装置1の概略構成を示すものであるため、レーザ加工装置本体部2を模式的に示している。従って、当該レーザ加工装置本体部2の具体的な構成については、後述する。
(レーザ加工装置本体部2の概略構成)
次に、レーザ加工装置本体部2の概略構成について、図1〜図3に基づいて説明する。尚、レーザ加工装置本体部2の説明において、図1の左方向、右方向、上方向、下方向が、それぞれレーザ加工装置本体部2の前方向、後方向、上方向、下方向である。従って、レーザ発振器21のパルスレーザLの出射方向が前方向である。本体ベース11及びパルスレーザLに対して垂直な方向が上下方向である。そして、レーザ加工装置本体部2の上下方向及び前後方向に直交する方向が、レーザ加工装置本体部2の左右方向である。
レーザ加工装置本体部2は、パルスレーザLと可視レーザ光Mをfθレンズ20から同軸上に出射するレーザヘッド部3(図2参照)と、レーザヘッド部3が上面に固定される略箱体状の加工容器(図示せず)とから構成されている。
図2に示すように、レーザヘッド部3は、本体ベース11と、パルスレーザLを出射するレーザ発振ユニット12と、光シャッター部13と、光ダンパー14と、ハーフミラー15と、ガイド光部16と、反射ミラー17と、光センサ18と、ガルバノスキャナ19と、fθレンズ20等から構成され、略直方体形状の筐体カバー(図示せず)で覆われている。当該レーザヘッド部3は、本発明における本体部の一例として機能する。
レーザ発振ユニット12は、レーザ発振器21と、ビームエキスパンダ22と、取付台23とから構成されている。レーザ発振器21は、ファイバコネクタと、集光レンズと、反射鏡と、レーザ媒質と、受動Qスイッチと、出力カプラーと、ウィンドウとをケーシング内に有している。ファイバコネクタには、光ファイバFが接続されており、電源ユニット6を構成する励起用半導体レーザ部40から出射された励起光が、光ファイバFを介して入射される。
集光レンズは、ファイバコネクタから入射された励起光を集光する。尚、レーザ発振器21における集光レンズは、本発明における集光レンズとして機能するものではない。そして、反射鏡は、集光レンズによって集光された励起光を透過すると共に、レーザ媒質から出射されたレーザ光を高効率で反射する。レーザ媒質は、励起用半導体レーザ部40から出射された励起光によって励起されてレーザ光を発振する。レーザ媒質としては、例えば、レーザ活性イオンとしてネオジウム(Nd)が添加されたネオジウム添加ガドリニウムバナデイト(Nd:GdVO4)結晶や、ネオジウム添加イットリウムバナデイト(Nd:YVO4)結晶や、ネオジウム添加イットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)結晶等を用いることができる。
受動Qスイッチは、内部に蓄えられた光エネルギーが或る一定値を超えたとき、透過率が高くなるという性質を持った結晶である。従って、受動Qスイッチは、レーザ媒質によって発振されたレーザ光をパルス状のパルスレーザとして発振するQスイッチとして機能する。受動Qスイッチとしては、例えば、クローム添加YAG(Cr:YAG)結晶やCr:MgSiO4結晶等を用いることができる。
出力カプラーは、反射鏡とレーザ共振器を構成する。出力カプラーは、例えば、表面に誘電体層膜をコーティングした凹面鏡により構成された部分反射鏡で、波長1064nmでの反射率は、80%〜95%である。ウィンドウは、合成石英等から形成され、出力カプラーから出射されたレーザ光を外部へ透過させる。従って、レーザ発振器21は、受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振し、加工対象物を加工するためのパルスレーザLとして、パルスレーザを出力する。
ビームエキスパンダ22は、パルスレーザLのビーム径を変更するものであり、レーザ発振器21と同軸に設けられている。取付台23は、レーザ発振器21がパルスレーザLの光軸を調整可能に取り付けられ、本体ベース11の前後方向中央位置よりも後側の上面に対して、各取付ネジ25によって固定されている。
光シャッター部13は、シャッターモータ26と、平板状のシャッター27とから構成されている。シャッターモータ26は、ステッピングモータ等で構成されている。シャッター27は、シャッターモータ26のモータ軸に取り付けられて同軸に回転する。シャッター27は、ビームエキスパンダ22から出射されたパルスレーザLの光路を遮る位置に回転した際には、光シャッター部13に対して右方向に設けられた光ダンパー14へ、パルスレーザLを反射する。一方、シャッター27がビームエキスパンダ22から出射されたパルスレーザLの光路上に位置しないように回転した場合には、ビームエキスパンダ22から出射されたパルスレーザLは、光シャッター部13の前側に配置されたハーフミラー15に入射する。
光ダンパー14は、シャッター27で反射されたパルスレーザLを吸収する。尚、光ダンパー14の発熱は、本体ベース11に熱伝導されて冷却される。ハーフミラー15は、パルスレーザLの光路に対して斜め左下方向に45度の角度を形成するように配置される。ハーフミラー15は、後側から入射されたパルスレーザLのほぼ全部を透過する。又、ハーフミラー15は、後側から入射されたパルスレーザLの一部を、45度の反射角で反射ミラー17へ反射する。反射ミラー17は、ハーフミラー15のパルスレーザLが入射される後側面の略中央位置に対して左方向に配置される。
ガイド光部16は、可視レーザ光として、例えば、赤色レーザ光を出射する可視半導体レーザ28と、可視半導体レーザ28から出射された可視レーザ光Mを平行光に収束するレンズ群(図示せず)とから構成されている。可視レーザ光Mは、レーザ発振器21から出射されるパルスレーザLと異なる波長である。ガイド光部16は、ハーフミラー15のパルスレーザLが出射される略中央位置に対して右方向に配置されている。この結果、可視レーザ光Mは、ハーフミラー15のパルスレーザLが出射される略中央位置において、ハーフミラー15の前側面にあたる反射面に対して45度の入射角で入射され、45度の反射角でパルスレーザLの光路上に反射される。即ち、可視半導体レーザ28は、可視レーザ光MをパルスレーザLの光路上に出射する。
反射ミラー17は、パルスレーザLの光路に対して平行な前後方向に対して斜め左下方向に45度の角度を形成するように配置され、ハーフミラー15の後側面において反射されたパルスレーザLの一部が、反射面の略中央位置に対して45度の入射角で入射される。そして、反射ミラー17は、反射面に対して45度の入射角で入射されたパルスレーザLを、45度の反射角で前側方向へ反射する。
光センサ18は、パルスレーザLの発光強度を検出するフォトダイオード等で構成され、反射ミラー17のパルスレーザLが反射される略中央位置に対して、図2中、前側方向に配置されている。この結果、光センサ18は、反射ミラー17で反射されたパルスレーザLが入射され、この入射されたパルスレーザLの発光強度を検出する。従って、光センサ18を介してレーザ発振器21から出力されるパルスレーザLの強度を検出することができる。
ガルバノスキャナ19は、本体ベース11の前側端部に形成された貫通孔29の上側に取り付けられ、レーザ発振ユニット12から出射されたパルスレーザLと、ハーフミラー15で反射された可視レーザ光Mとを下方へ2次元走査する。ガルバノスキャナ19は、ガルバノX軸ミラーを有するガルバノX軸モータ31と、ガルバノY軸ミラーを有するガルバノY軸モータ32と、本体部33により構成されている。ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32は、それぞれのモータ軸が互いに直交するように外側からそれぞれの取付孔に嵌入、保持されて本体部33に取り付けられている。
ガルバノX軸モータ31において、ガルバノX軸ミラーは、走査ミラーとして、モータ軸の先端部に取り付けられており、パルスレーザLと可視レーザ光Mを、ワークW表面上の加工領域においてX軸方向に走査する際に用いられる。そして、ガルバノY軸モータ32において、ガルバノY軸ミラーは、走査ミラーとして、モータ軸の先端部に取り付けられており、ガルバノX軸ミラーによって反射されたパルスレーザL及び可視レーザ光Mを、ワークW表面上の加工領域においてY軸方向に走査する際に用いられる。
従って、当該ガルバノスキャナ19においては、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32の各モータ軸の先端部に取り付けられた走査ミラーが内側で互いに対向している。そして、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32の回転をそれぞれ制御して、各走査ミラー(即ち、ガルバノX軸ミラー、ガルバノY軸ミラー)を回転させることによって、パルスレーザLと可視レーザ光Mとを下方へ2次元走査する。この2次元走査方向は、ワークW表面の加工領域において、前後方向(X軸方向)と左右方向(Y軸方向)である。
fθレンズ20は、レーザヘッド部3の本体ベース11に対して着脱可能に取り付けられており、下方に配置されたワークW表面の加工領域に対して、ガルバノスキャナ19によって2次元走査されたパルスレーザLと可視レーザ光Mとを同軸に集光する。そして、当該fθレンズ20は、パルスレーザLや可視レーザ光M等を集光した焦点を、平面状の焦平面とすると共に、パルスレーザLや可視レーザ光Mの走査速度が一定になるように補正する。即ち、fθレンズ20は、本発明における集光レンズとして機能する。従って、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32の回転を制御することによって、パルスレーザLと可視レーザ光Mが、ワークW表面上において、所望の加工パターンで前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)に2次元走査される。
図3に示すように、当該fθレンズ20は、第1レンズ20Aと、第2レンズ20Bと、カバーガラス20Cと、鏡筒部20Dとを有しており、略円筒形状の鏡筒部20D内に配設された第1レンズ20A及び第2レンズ20Bの協働によって、固有の焦点距離に対応した位置に、パルスレーザL及び可視レーザ光Mを集光して焦平面を形成すると共に、パルスレーザL及び可視レーザ光Mの等速走査を実現する。即ち、fθレンズ20においては、第1レンズ20A、第2レンズ20B等の構成が相違することによって、fθレンズ20における焦点距離や歪(即ち、レンズ歪)が、夫々異なる特徴を示す。
上述したように、当該レーザ加工装置1においては、fθレンズ20は、レーザヘッド部3の本体ベース11に対して着脱可能に取り付けられている為、異なる特徴(例えば、焦点距離等)を有するfθレンズ20に交換して、ワークWに対するマーキング加工に用いることができる。
本実施形態において、各fθレンズ20は、無線タグ20Eと、識別データ表示部20Fとを有している(図3参照)。無線タグ20Eは、所謂、RFID(radio frequency identifier)によって構成されており、鏡筒部20D内部において、第1レンズ20Aと第2レンズ20Bとの間となる位置に配設されている。そして、無線タグ20Eは、当該無線タグ20Eが配設されているfθレンズ20を識別する為の識別データと、当該fθレンズ20のレンズ固有データとを対応付けて記憶している。このレンズ固有データは、fθレンズ20に起因して生じるレンズ歪(後述する標準レンズ歪Ds、交換レンズ歪Dr)を実測したレンズ歪データと、当該fθレンズ20の焦点距離を示す焦点距離データを含んで構成されている。レンズ歪データの詳細については、後に図面を参照しつつ詳細に説明する。
そして、識別データ表示部20Fは、fθレンズ20外表面に形成されており、当該fθレンズ20を識別する為の固有の識別データを表示している。尚、識別データ表示部20Fにおける表示態様としては、例えば、識別データとして、fθレンズ20固有のID番号を印刷表示する態様でも良いし、識別データをバーコードや2次元コードにエンコードして得られるコード画像を印刷表示する態様であってもよい。
(電源ユニットの概略構成)
次に、レーザ加工装置1における電源ユニット6の概略構成について、図1を参照しつつ説明する。図1に示すように、電源ユニット6は、励起用半導体レーザ部40と、レーザドライバ51と、電源部52と、冷却ユニット53とを、ケーシング55内に有している。電源部52は、励起用半導体レーザ部40を駆動する駆動電流を、レーザドライバ51を介して励起用半導体レーザ部40に供給する。レーザドライバ51は、レーザコントローラ5から入力される駆動情報に基づいて、励起用半導体レーザ部40を直流でオンオフ駆動する。
励起用半導体レーザ部40は、光ファイバFによってレーザ発振器21に光学的に接続されている。励起用半導体レーザ部40は、レーザドライバ51から入力されるパルス状の駆動電流に対して、レーザ光を発生する閾値電流を超えた電流値に比例した出力の波長のレーザ光である励起光を、光ファイバF内に出射する。従って、レーザ発振器21には、励起用半導体レーザ部40からの励起光が光ファイバFを介して入射される。励起用半導体レーザ部40には、例えば、GaAsを用いたレーザバーを用いることができる。
冷却ユニット53は、電源部52及び励起用半導体レーザ部40を、所定の温度範囲内に調整する為のユニットであり、例えば、電子冷却方式により冷却することで、励起用半導体レーザ部40の温度制御を行っており、励起用半導体レーザ部40の発振波長を微調整する。尚、冷却ユニット53は、水冷式の冷却ユニットや、空冷式の冷却ユニット等を用いるようにしてもよい。
(レーザ加工システムの制御系)
次に、レーザ加工システム100を構成するレーザ加工装置1の制御系構成について、図面を参照しつつ説明する。図4に示すように、レーザ加工装置1は、レーザ加工装置1の全体を制御するレーザコントローラ5と、レーザドライバ51と、ガルバノコントローラ56と、ガルバノドライバ57と、可視光レーザドライバ58と、光センサ18と、無線タグリーダ64等を有して構成されている。レーザコントローラ5には、レーザドライバ51と、ガルバノコントローラ56と、光センサ18と、可視光レーザドライバ58と、無線タグリーダ64等が電気的に接続されている。
レーザコントローラ5は、レーザ加工装置1の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU61、RAM62、ROM63、時間を計測するタイマ65等を備えている。又、CPU61、RAM62、ROM63、タイマ65は、バス線(図示せず)により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果や加工走査パターンのXY座標データ等を一時的に記憶させておくためのものである。又、RAM62には、レーザ加工装置1の初期状態における歪(初期総歪Dto)を解消する為の歪補正テーブルが記憶されている。ROM63は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、データ作成装置7から送信された加工データに基づいて加工走査パターンのXY座標データを算出してRAM62に記憶する等の各種プログラムが記憶されている。即ち、ROM63には、後述するレーザ加工処理プログラム(図5参照)や歪補正テーブル更新処理プログラム(図6参照)が記憶されている。又、ROM63には、レーザ加工装置1の初期状態(例えば、工場出荷時の状態)において、パルスレーザLによる加工位置に生じる歪を示す初期総歪データ(図7参照)が記憶されている。初期総歪データについては、後に図面を参照しつつ詳細に説明する。
そして、CPU61は、ROM63に記憶されている各種の制御プログラムに基づいて各種の演算及び制御を行なうものである。例えば、CPU61は、データ作成装置7から入力された加工データを構成する各加工点に対して、後述するレーザ加工処理プログラム(図5、図6参照)を実行することで補正した各加工点のXY座標データや、ガルバノ走査速度情報等をガルバノコントローラ56に出力する。レーザ加工処理プログラムによる加工点のXY座標データの補正については後に詳細に説明する。又、CPU61は、データ作成装置7から入力された加工データに基づいて設定した励起用半導体レーザ部40の励起光出力、励起光の出力期間等の励起用半導体レーザ部40の駆動情報をレーザドライバ51に出力する。又、CPU61は、加工走査パターンのXY座標データ、ガルバノスキャナ19のON・OFFを指示する制御信号等をガルバノコントローラ56に出力する。
レーザドライバ51は、レーザコントローラ5から入力された励起用半導体レーザ部40の励起光出力、励起光の出力期間等のレーザ駆動情報等に基づいて、励起用半導体レーザ部40を駆動制御する。具体的には、レーザドライバ51は、レーザコントローラ5から入力されたレーザ駆動情報の励起光出力に比例した電流値のパルス状の駆動電流を発生し、レーザ駆動情報の励起光の出力期間に基づく期間、励起用半導体レーザ部40に出力する。これにより、励起用半導体レーザ部40は、励起光出力に対応する強度の励起光を出力期間の間、光ファイバF内に出射する。
ガルバノコントローラ56は、レーザコントローラ5から入力された加工データにおける各加工点のXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報をガルバノドライバ57へ出力する。
ガルバノドライバ57は、ガルバノコントローラ56から入力された駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、パルスレーザLを2次元走査する。
可視光レーザドライバ58は、レーザコントローラ5から出力される制御信号に基づいて、可視半導体レーザ28を含むガイド光部16の制御を行い、例えば、制御信号に基づいて、可視半導体レーザ28から出射される可視レーザ光Mの発光タイミングや光量を制御する。
無線タグリーダ64は、アンテナを介した無線通信によって、上述したfθレンズ20の無線タグ20Eから、当該fθレンズ20固有の識別データ及び、当該識別データに対応付けられたレンズ固有データを読み取る。当該無線タグリーダ64は、本発明における識別データ取得部及びレンズデータ取得部として機能する。
図1、図4に示すように、レーザコントローラ5には、データ作成装置7が双方向通信可能に接続されており、データ作成装置7から送信された加工内容を示す加工データ、レーザ加工装置本体部2の制御パラメータ、ユーザからの各種指示情報等を受信可能に構成されている。
(データ作成装置の制御系)
続いて、レーザ加工システム100を構成するデータ作成装置7の制御系構成について、図面を参照しつつ説明する。図4に示すように、データ作成装置7は、データ作成装置7の全体を制御する制御部70と、マウスやキーボード等から構成される入力操作部76と、液晶ディスプレイ77と、CD−ROM79に対する各種データ、プログラム等の書き込み及び読み込みを行うためのCD−R/W78等から構成されている。
制御部70は、データ作成装置7の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU71と、RAM72と、ROM73と、時間を計測するタイマ74と、HDD75等を備えている。又、CPU71と、RAM72と、ROM73と、タイマ74は、バス線(図示せず)により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。又、CPU71とHDD75は、入出力インターフェース(図示せず)を介して接続され、相互にデータのやり取りが行われる。
RAM72は、CPU71により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM73は、各種の制御プログラムやデータテーブルを記憶させておくものである。
そして、HDD75は、各種アプリケーションソフトウェアのプログラム、各種データファイルを記憶する記憶装置である。当該HDD75は、ワークW上におけるレーザ加工の加工内容を示す加工データを作成する為のデータ作成処理プログラム等を記憶している。
そして、CD−R/W78は、アプリケーションプログラム、各種データテーブルを構成する各データ群を、CD−ROM79から読み込む、又は、CD−ROM79に対して書き込む。即ち、データ作成装置7は、CD−R/W78を介して、データ作成処理プログラム等をCD−ROM79から読み込み、HDD75に格納する。
尚、データ作成装置7においては、データ作成処理プログラム等の制御プログラムや、各種データテーブルを、ROM73に記憶しても良いし、CD−ROM79等の記憶媒体から読み込むように構成しても良い。又、インターネット等のネットワーク(図示せず)を介して、ダウンロードするように構成してもよい。
そして、データ作成装置7には、入出力インターフェース(図示せず)を介して、マウスやキーボード等から構成される入力操作部76と、液晶ディスプレイ77等が電気的に接続されている。従って、データ作成装置7は、入力操作部76や、液晶ディスプレイ77を用いて、加工データの作成や制御パラメータの設定等に利用される。
(本実施形態におけるレーザ加工処理プログラムの処理内容)
続いて、レーザコントローラ5において実行されるレーザ加工処理プログラムの処理内容について、図5〜図13を参照しつつ詳細に説明する。上述したように、当該レーザ加工処理プログラムは、レーザコントローラ5のROM63に記憶されており、CPU61によって読み出されて実行される。
尚、以下の説明においては、マーキング加工の実行開始を示す加工実行指示と、データ作成装置7で作成された加工データを、データ作成装置7から取得しているものとする。当該加工データは、レーザ加工装置1によるマーキング加工によって、ワークW表面の加工領域に描画される加工内容を示し、パルスレーザLによる加工位置に対応する複数の加工点や、複数の加工点の集合によって構成される線要素等を含んで構成されている。そして、当該加工データを構成する各加工点は、直交座標系上の各座標位置(直交座標系において、相互に直交する2本のグリッドの交点)に割り付けられている。
ここで、直交座標系は、レーザ加工システム100における各構成装置(例えば、レーザコントローラ5、データ作成装置7、ガルバノコントローラ56等)がワークW表面の加工領域上の各位置を擬似的に把握するために用いられており、相互に直交する座標軸であるX軸とY軸によって定義されている。そして、上記各加工点の座標位置(XY座標データ)は、加工領域上でパルスレーザLの照射位置を移動させるべき目標位置に対応する。そして、交座標系の原点Oは、fθレンズ20のレンズ中心軸を通る直線と加工領域との交点を示し、直交座標系の定義範囲は、X座標値、Y座標値の絶対値が所定値を示す正方形状の範囲として定義される。
そして、fθレンズ20としては、標準レンズ20Sと交換レンズ20Rの何れかが、レーザヘッド部3の本体ベース11に対して取り付けられるものとする。標準レンズ20Sは、レーザ加工装置1の初期状態(例えば、工場出荷時)において、レーザヘッド部3の本体ベース11に対して取り付けられているfθレンズ20を意味し、その焦点距離は、焦点距離Fsである。交換レンズ20Rは、レーザヘッド部3の本体ベース11に取り付けられているfθレンズ20(例えば、標準レンズ20S)に変えて、本体ベース11に取り付けられるものであり、交換後のfθレンズ20を意味する。当該交換レンズ20Rの焦点距離は、焦点距離Frを示す。
レーザ加工処理プログラムの実行を開始すると、CPU61は、先ず、レーザヘッド部3の本体ベース11に取り付けられているfθレンズ20が交換されたか否かを判断する(S1)。具体的には、CPU61は、入力操作部76からの操作信号に基づいて、fθレンズ20が交換されたか否かを判断する。尚、この判断処理は、無線タグリーダ64によって、fθレンズ20における無線タグ20Eから識別データを読み取り、当該識別データが相違するか否かによって行ってもよい。fθレンズ20の交換があった場合(S1:YES)、CPU61は、歪補正テーブル更新処理(S2)に処理を移行する。一方、fθレンズ20の交換がなかった場合(S1:NO)、CPU61は、S3に処理を移行する。
S2においては、CPU61は、歪補正テーブル更新処理(S2)を実行することで、RAM62に格納されている歪補正テーブルを、交換後のfθレンズ20に対応する内容に更新する。具体的には、当該歪補正テーブル更新処理(S2)では、CPU61は、歪補正テーブル更新処理プログラム(図6参照)を、ROM63から読み出して実行する。
(歪補正テーブル更新処理プログラムの処理内容)
ここで、歪補正テーブル更新処理(S2)で実行される歪補正テーブル更新処理プログラムの処理内容について、図6を参照しつつ詳細に説明する。歪補正テーブル更新処理(S2)に移行すると、CPU61は、当該レーザ加工装置1における最初のfθレンズ20の交換であるか否か(即ち、標準レンズ20Sを取り外し、他のfθレンズ20とする交換であるか否か)を判断する(S11)。最初のfθレンズ20の交換である場合(S11:YES)、CPU61は、S12に処理を移行する。一方、最初のfθレンズ20の交換ではない場合(S11:NO)、CPU61は、S16に処理を移行する。
S12においては、CPU61は、初期総歪データを、レーザコントローラ5のROM63から取得する。当該初期総歪データは、初期状態(本体ベース11に対して標準レンズ20Sが取り付けられた状態)のレーザ加工装置1において、何等の補正処理(例えば、歪補正テーブルを用いた射影変換による補正)を行わなかった場合に、直交座標系上に定義されたパルスレーザLの加工位置に生じる歪(初期総歪Dto)を実測した実測値によって構成されている。初期総歪データをROM63から取得した後、CPU61は、S13に処理を移行する。
(初期総歪データの内容)
ここで、初期総歪データの内容について、図7を参照しつつ説明する。当該レーザ加工システム100においては、歪補正テーブルを用いた補正処理をせずに、加工データの各加工点の座標データに従ってガルバノミラーを回動させると、レーザ発振ユニット12から出射されたパルスレーザLは、ガルバノスキャナ19、fθレンズ20(標準レンズ20S)を経て、ワークW上へ到達する過程で、レーザヘッド部3におけるレーザ発振ユニット12やガルバノスキャナ19の配置の影響(後述する本体歪Dm)や、fθレンズ20の収差等の影響(後述する標準レンズ歪Ds)を受けてしまう。
即ち、これらの影響によって、ワークW表面の加工領域上におけるパルスレーザLによる加工位置Pmと、ワークW上でパルスレーザLによる加工が要求されている理想座標である理想点Pi、加工データにおける直交座標系上に設定された加工点の座標である設定点Pcとの間に、偏差としての初期総歪Dtoが生じてしまう。尚、補正処理を行わなかった場合、設定点Pcの座標値は、理想点Piを示す座標値と等しい。
例えば、図7左図に示すように、直交座標系上における理想点Pi(設定点Pc)の座標値(Jo,Ko)に対する誤差補正をすることなく、ワークW上にパルスレーザLを照射した場合について説明する。この場合、実際にワークW表面に形成されるパルスレーザLの加工位置Pm(マーキング加工の跡)は、直交座標系上における座標値(Jm,Km)に対応する位置となる。従って、直交座標系上における当該理想点Piに係る初期総歪Dtoは、(Jm−Jo,Km−Ko)によって表現される。図7右図に示す場合、直交座標系上における升目状の定義範囲において、初期総歪Dtoは、左右両辺の始点と終点付近では外側に膨らみ、中央付近では内側に凹むような傾向を示す。又、初期総歪Dtoは、当該定義範囲における上下両辺の始点と終点付近では内側に凹み、中央付近では外側に膨らむような傾向を示す。尚、図7右図に示す初期総歪Dtoの傾向は、あくまでも一例であり、異なる傾向を示す場合もある。
S13に移行すると、CPU61は、無線タグリーダ64を用いて、標準レンズ20Sの無線タグ20Eから、標準レンズ20S固有の識別データを取得すると共に、当該識別データに対応する標準レンズ20Sに係るレンズ固有データを取得する。当該レンズ固有データは、標準レンズ20Sの収差等に起因して、パルスレーザLの加工位置に生じる標準レンズ歪Dsを示す標準レンズ歪データと、標準レンズ20Sの焦点距離Fsを示す焦点距離データを含んでいる。取得した標準レンズ20Sのレンズ固有データをRAM62に格納した後、CPU61は、S14に処理を移行する。
(標準レンズ歪データの内容)
標準レンズ歪データの内容について、図8を参照しつつ説明する。標準レンズ歪データは、レーザヘッド部3を用いることなく、標準レンズ20Sのみを介して、何等の補正処理(例えば、歪補正テーブルを用いた射影変換による補正)を行なわずに、レーザ光(例えば、パルスレーザL)を照射した場合に、直交座標系上に定義されたパルスレーザLの加工位置に生じる歪(標準レンズ歪Ds)を実測した実測値によって構成されている。
例えば、図8左図に示すように、直交座標系上における理想点Pi(設定点Pc)の座標値(Jo,Ko)に対する誤差補正をすることなく、ワークW上にパルスレーザLを照射した場合について説明する。この場合、実際にワークW表面に形成されるパルスレーザLの加工位置Pm(マーキング加工の跡)は、直交座標系上における座標値(Js,Ks)に対応する位置となる。従って、直交座標系上における当該理想点Piについて、偏差としての標準レンズ歪Dsは、(Js−Jo,Ks−Ko)によって表現される。そして、図8右図に示す場合には、直交座標系上における升目状の定義範囲において、標準レンズ歪Dsは、左右両辺の始点と終点付近では内側に凹み、中央付近では外側に膨らむような傾向を示す。同様に、標準レンズ歪Dsは、当該定義範囲における上下両辺の始点と終点付近では内側に凹み、中央付近では外側に膨らむような傾向を示す。尚、図8右図に示す標準レンズ歪Dsの傾向は、あくまでも一例であり、その構成等によっては異なる傾向を示す場合もある。
S14では、CPU61は、S12で取得した初期総歪データと、S13で取得した標準レンズ20Sに係るレンズ固有データに基づいて、当該レーザ加工装置1のレーザヘッド部3に対するレーザ発振ユニット12やガルバノスキャナ19の配置等に起因する本体歪Dmを算出し、当該本体歪Dmに基づく本体歪データを生成する。その後、CPU61は、S15に処理を移行する。
(本体歪データの生成)
ここで、S14における本体歪データの生成について、図9を参照しつつ説明する。上述したように、S14では、CPU61は、S12で取得した初期総歪データと、S13で取得した標準レンズ20Sに係るレンズ固有データに基づいて、本体歪Dmを算出し、当該本体歪Dmに基づく本体歪データを生成する。
ここで、本実施形態に係る初期総歪Dtoは、初期状態(本体ベース11に対して標準レンズ20Sが取り付けられた状態)のレーザ加工装置1において、何等の補正処理(例えば、歪補正テーブルを用いた射影変換による補正)を行わなかった場合に、直交座標系上に定義されたパルスレーザLの加工位置に生じる歪を示す為、本体歪Dmと、標準レンズ歪Dsによって構成される。従って、初期総歪Dtoから標準レンズ歪Dsを除去すれば、直交座標系上における本体歪Dmを特定することができる。
上述したように、直交座標系上における理想点Pi(設定点Pc)の座標値(Jo,Ko)に対する初期総歪Dtoは、(Jm−Jo,Km−Ko)によって表現され、当該理想点Piに係る標準レンズ歪Dsは、(Js−Jo,Ks−Ko)によって表現される。そして、直交座標系上における当該理想点Piについて、偏差としての本体歪Dmは、初期総歪Dtoから標準レンズ歪Dsを除去することによって特定できる為、図9に示すように、座標値(Jm−Js,Km−Ks)として算出される。そして、図9右図に示す場合、直交座標系上における升目状の定義範囲において、本体歪Dmは、左右両辺の始点と終点付近では外側に膨らみ、中央付近では内側に凹むような傾向を示す。又、当該本体歪Dmは、当該定義範囲における上下両辺では、X軸に対して略平行に伸びる傾向を示す。尚、図9右図に示す本体歪Dmの傾向は、あくまでも一例であり、その構成及び配置等によっては異なる傾向を示す場合もある。
S15においては、CPU61は、S14で算出した各座標位置に対応する本体歪Dmに基づき生成した本体歪データを、RAM62に格納する。本体歪データをRAM62に格納した後、CPU61は、S17に処理を移行する。
一方、最初のfθレンズ20の交換ではない(S11:NO)に移行するS16では、CPU61は、最初のfθレンズ20の交換を行った際にS14によって生成された本体歪データを、RAM62から取得する。当該本体歪データにおける本体歪Dmは、レーザ加工装置1のレーザヘッド部3に対するレーザ発振ユニット12やガルバノスキャナ19の配置等に起因しており、fθレンズ20の影響を含んでいない為、fθレンズ20を交換した場合においても、パルスレーザLの加工位置に生じる歪として残存し得る。即ち、本体歪データは、fθレンズ20の交換後において、何等の補正処理(例えば、歪補正テーブルを用いた射影変換による補正)を行わなかった場合に、直交座標系上に定義されたパルスレーザLの加工位置に生じる歪を特定する際に利用し得る。本体歪データをRAM62から取得した後、CPU61は、S17に処理を移行する。
S17に移行すると、CPU61は、無線タグリーダ64を用いて、交換レンズの無線タグ20Eから、交換レンズ20R固有の識別データを取得すると共に、当該識別データに対応する交換レンズ20Rに係るレンズ固有データを取得する。この場合のレンズ固有データは、交換レンズ20Rの収差等に起因して、パルスレーザLの加工位置に生じる交換レンズ歪Drを示す交換レンズ歪データと、交換レンズ20Rの焦点距離Frを示す焦点距離データを含んでいる。取得した交換レンズ20Rのレンズ固有データをRAM62に格納した後、CPU61は、S18に処理を移行する。
(交換レンズ歪データの内容)
交換レンズ歪データの内容について、図10、図11を参照しつつ説明する。交換レンズ歪データは、上述した標準レンズ歪データと同様に、レーザヘッド部3を用いることなく、交換レンズ20Rのみを介して、何等の補正処理を行なわずに、レーザ光(例えば、パルスレーザL)を照射した場合に、直交座標系上に定義されたパルスレーザLの加工位置に生じる歪(交換レンズ歪Dr)を実測した実測値によって構成されている。
ここで、図11に示すように、標準レンズ20Sは、焦点距離Fsとなる位置に第1焦平面を形成する為、標準レンズ20Sを用いる場合、この第1焦平面上に直交座標系に基づく加工領域Rsが定義付けられる。一方、交換レンズ20Rは、焦点距離Frとなる位置に第2焦平面を形成する為、交換レンズ20Rを用いる場合、この第2焦平面上に直交座標系に基づく加工領域Rrが定義付けられる。即ち、交換レンズ20Rの加工領域Rrと、標準レンズ20Sの加工領域Rsは、別の焦平面に定義付けられるので、両者の焦点距離の差に基づいて、加工領域や歪の大きさが変化してしまう。尚、図11における標準レンズ20Sの焦点距離Fs及び交換レンズ20Rの焦点距離Frは、図示の関係上、簡略化して示しており、焦点距離Fs、焦点距離Frの具体的な内容は、各fθレンズ20(例えば、標準レンズ20S、交換レンズ20R)における焦点距離の定義に従う。
この点、パルスレーザL及び可視レーザ光Mは直進性を有している為、標準レンズ20Sの焦点距離Fsと、交換レンズ20Rの焦点距離Frとを用いて補正すれば、一の焦平面に定義された加工領域において、他の焦平面に定義された加工領域及び歪の大きさや位置を比較し計算することができる。
本実施形態においては、これらの点に関する補正係数αとし、他の焦平面に係る焦点距離(例えば、焦点距離Fr)/第1焦平面に係る焦点距離Fsを用いる。例えば、第1焦平面に定義付けられた直交座標系上における理想点Pi(設定点Pc)の座標値(Jo,Ko)は、図10左図に示すように、夫々、補正係数αを乗算することによって、第2焦平面上に定義付けられた直交座標系では、(αJo,αKo)を示す。
そして、当該理想点Pi(設定点Pc)の座標値(αJo,αKo)に対する誤差補正をすることなく、交換レンズ20Rを介して、ワークW上にパルスレーザLを照射した場合について説明する。この場合、実際にワークW表面に形成されるパルスレーザLの加工位置Pm(マーキング加工の跡)は、直交座標系上における座標値(Jr,Kr)に対応する位置となる。従って、直交座標系上における当該理想点Piに係る交換レンズ歪Drは、(Jr−αJo,Kr−αKo)によって表現される。そして、図10右図に示すように、直交座標系上における升目状の定義範囲において、交換レンズ歪Drは、左右両辺の始点と終点付近では内側に凹み、中央付近では外側に膨らむような傾向を示す。同様に、当該定義範囲における上下両辺の始点と終点付近では内側に凹み、中央付近では外側に膨らむような傾向を示す。
S18に移行すると、CPU61は、当該レーザ加工装置1のレーザヘッド部3固有の本体歪データと、S17で取得した交換レンズ20Rのレンズ固有データとを用いて、レーザヘッド部3に対して交換レンズ20Rを取り付けた場合の交換後総歪Dtrを算出し、算出した各交換後総歪Dtrに基づく交換後総歪データを生成する。交換後総歪Dtrは、レーザヘッド部3に対して交換レンズ20Rを取り付けた状態で、何等の補正処理を行わなかった場合に、直交座標系上に定義されたパルスレーザLの加工位置に生じる歪を意味する。交換後総歪データをRAM62に格納した後、CPU61は、S19に処理を移行する。
ここで、S18における交換後総歪Dtrの算出について、図12を参照しつつ詳細に説明する。図12に示すように、本実施形態においては、交換後総歪Dtrを算出する為には、レーザヘッド部3固有の本体歪Dmを示す本体歪データと、標準レンズ20Sの焦点距離Fs及び交換レンズ20Rの焦点距離Frに基づく補正係数αと、交換レンズ20Rの交換レンズ歪Drを示す交換レンズ歪データを用いている。
具体的には、CPU61は、本体歪データに基づく本体歪Dmに対しては、焦点距離の変化に関する補正係数αを乗算することによって、当該本体歪Dmを、標準レンズ歪Dsを同一の焦平面上に変換する。上述したように、本体歪Dmは、座標値(Jm−Js,Km−Ks)として表現される為、補正係数αを乗算すると、座標値(α(Jm−Js),α(Km−Ks))となる。そして、交換レンズ歪データに係る交換レンズ歪Drは、(Jr−αJo,Kr−αKo)によって表現される。
そして、交換後総歪Dtrは、補正係数αを乗算した本体歪Dmと、交換レンズ歪データに係る交換レンズ歪Drを加算することによって特定される。即ち、直交座標系上における理想点Pi(設定点Pc)の座標値(Jo,Ko)に対する交換後総歪Dtrは、(α(Jm−Js)+Jr−αJo,α(Km−Ks)+Kr−αKo)によって表現される。
S19では、CPU61は、先ず、S18で生成した交換後総歪データの交換後総歪Dtrと、設定点Pcの座標値(αJo,αKo)に基づいて、交換レンズ20Rに係る直交座標系上における加工位置Pmの座標値を算出する。上述した具体例の場合、交換後総歪Dtrは、(α(Jm−Js)+Jr−αJo,α(Km−Ks)+Kr−αKo)を示し、設定点Pcの座標値は、(αJo,αKo)を示す為、交換レンズ20Rに交換した後における加工位置Pmの座標値は、両者を加算することによって、(α(Jm−Js)+Jr,α(Km−Ks)+Kr)として算出される。その後、CPU61は、交換レンズ20Rに交換した後における加工位置Pmの座標値に基づいて、交換レンズ20Rに交換した場合の直交座標系上における加工位置Pm毎の射影変換係数を算出する。当該射影変換係数は、直交座標系上の各座標位置に生じる歪(即ち、交換後総歪Dtr)を後述する射影変換処理によって相殺する為に必要な値を示す。
当該射影変換処理で用いられる変換式は、下記の通りである。
(座標位置のX座標(x´))=(a*x+b*y+c)/(g*x+h*y+α)
(座標位置のY座標(y´))=(d*x+e*y+f)/(g*x+h*y+α)
従って、S19においては、直交座標系上における所定座標位置の座標値(例えば、座標値(Jo,Ko)等)と、交換後総歪データに基づく当該所定座標位置における交換後総歪Dtrを特定することによって、所定座標位置に対する複数の射影変換係数を算出することができる。これら複数の射影変換係数(即ち、「a」〜「h」、「α」)によって構成されており、当該射影変換係数における「α」は、「+1」又は「−1」の何れかを示す。交換レンズ20Rに係る直交座標系上に関し、各座標位置の射影変換係数を算出した後、CPU61は、S20に処理を移行する。
S20においては、CPU61は、S19で算出した各座標位置の射影変換係数に基づいて、交換レンズ20Rが取り付けられている状態における歪補正テーブルを生成する。具体的には、CPU61は、交換レンズ20Rに係る直交座標系上の座標位置毎に、当該座標位置に係る複数の射影変換係数(即ち、「a」〜「h」、「α」)を対応付けて、交換レンズ20Rに係る歪補正テーブルを生成する。そして、CPU61は、生成した交換レンズ20R用の歪補正テーブルをRAM62に格納して、歪補正テーブルを更新した後、CPU61は、歪補正テーブル更新処理プログラムを終了し、レーザ加工処理プログラムのS3に処理を移行する。
再び図5を参照しつつ、S3以後の処理内容について説明する。S3においては、CPU61は、RAM62から歪補正テーブルを取得する。本実施形態においては、CPU61は、fθレンズ20が一度も交換されていない場合は、標準レンズ20S用の歪補正テーブル(即ち、初期総歪Dtoを解消する為の歪補正テーブル)を取得し、fθレンズ20が交換されている場合は、レーザヘッド部3に取り付けられているfθレンズ20用の歪補正テーブル(例えば、交換後総歪Dtrを解消する為の歪補正テーブル)を取得する。その後、CPU61は、S4に処理を移行する。
S4では、CPU61は、レーザ加工処理プログラムの実行開始に際して取得した加工データと、S3で取得した歪補正テーブルに基づいて、歪補正実行処理を実行し、現時点におけるレーザ加工装置1の加工環境(本体歪やレンズ歪の大きさ)等に応じて、加工領域内の加工点を加工する際にパルスレーザL等に生じる歪を補正する。具体的には、CPU61は、当該加工データにおける加工点のX座標値、Y座標値と、S3で取得した歪補正テーブルにおける当該加工点の射影変換係数と、上述した変換式とを用いることによって、パルスレーザLに生じる歪を補正した加工点のX座標値、Y座標値を算出する。算出した補正後の加工点に係るX座標、Y座標をRAM62に格納した後、CPU61は、歪補正実行処理を終了し、S5に処理を移行する。
S5においては、CPU61は、加工データにおいて規定されたパルスレーザLの出力強度又は走査速度を示す制御パラメータと、レーザヘッド部3に取り付けられているfθレンズ20の焦点距離データに基づいて、レーザ光調整処理を実行して、パルスレーザLによって前記ワークWの単位面積あたりに与えられるエネルギー量を、現時点におけるレーザ加工装置1の加工環境(即ち、fθレンズ20の焦点距離)に応じて調整する。レーザヘッド部3に取り付けられているfθレンズ20の焦点距離データは、当該fθレンズ20の無線タグ20Eから、当該fθレンズ20固有の識別データに基づいて、無線タグリーダ64によって取得される。レーザ光調整処理を終了した後、CPU61は、S6に処理を移行する。
ここで、図11に示すように、fθレンズ20の焦点距離が変化すると、焦平面に合わせて設定されるワークW表面の位置も変化する。ワークW表面の位置が変化すると、パルスレーザLの集光度合も、ワークW表面上に焦点を形成した最適な状態から、ピントがずれた状態に変化してしまう。そうすると、fθレンズ20の焦点距離が変化したことによって、ワークW表面にマーキング加工を施すために必要なエネルギー量を、パルスレーザLが与えられなくなる場合がある。交換前後におけるfθレンズ20の焦点距離を用いて、パルスレーザLの出力強度を調整することによって、マーキング加工を施すために必要なエネルギー量を確保することができる。
又、fθレンズ20の焦点距離が変化すると、焦平面に対して定義付けられる直交座標系上の加工領域の大きさも変化する。そうすると、或る焦平面上の加工領域に基づいて規定されたパルスレーザLの走査速度は、他の焦平面上の加工領域における走査速度とは異なってしまう。このパルスレーザLの走査速度の相違に基づいて、パルスレーザLによって前記ワークWの単位面積あたりに与えられるエネルギー量が大きく異なってしまう場合があり、ワークW表面に対するマーキング加工の品質に影響を及ぼし得る。交換前後におけるfθレンズ20の焦点距離を用いて、パルスレーザLの走査速度を調整することによって、マーキング加工の加工品質を維持することができる。
S6に移行すると、CPU61は、加工実行処理を実行し、歪補正実行処理(S4)で補正された加工データの各加工点の座標位置に基づいて、ワークW表面の加工領域にパルスレーザLを照射して、加工データにおける各加工点をマーキング加工する。具体的には、CPU61は、歪補正実行処理(S4)によってパルスレーザLに生じる歪(初期総歪Dto、交換後総歪Dtr)の補正が行われた各加工点の座標位置を、ガルバノコントローラ56、ガルバノドライバ57へ出力して、ガルバノスキャナ19の駆動制御を行う。又、CPU61は、レーザ光調整処理(S5)で調整された加工データにおけるレーザ駆動情報等の制御パラメータを、レーザドライバ51へ出力し、励起用半導体レーザ部40及びレーザ発振ユニット12の駆動制御を行う。
これにより、レーザ加工装置1は、パルスレーザLに生じる歪(初期総歪Dto、交換後総歪Dtr)の補正が行われた加工点の座標位置に基づいて、ガルバノスキャナ19の駆動制御を行い、加工データに基づく加工内容に係る加工点を、ワークW表面におけるレ歪が低減された位置に加工することができる。加工実行処理(S6)を終了すると、CPU61は、レーザ加工処理プログラムを終了する。
尚、上述したように、本実施形態に係るレーザ加工装置1は、パルスレーザLと同様に、ガルバノスキャナ19、fθレンズ20(標準レンズ20S、交換レンズ20R)を介して、ガイド光部16から出射された可視レーザ光Mを、ワークW表面上に2次元走査させることができる。即ち、当該レーザ加工装置1においては、データ作成装置7から取得した加工データの各加工点に従って、ワークW表面上で可視レーザ光Mを2次元走査させることによって、ワークWに対するマーキング加工を行う前に、当該加工データの加工内容を確認することができる。
この場合において、当該レーザ加工装置1のCPU61は、ROM63に格納されている歪補正テーブルと、当該加工データに基づいて、歪補正実行処理を実行し、現時点におけるレーザ加工装置1の加工環境(本体歪やレンズ歪の大きさ)等に応じて、加工領域内の加工点を描画する際に可視レーザ光Mに生じる歪を補正して、可視レーザ光Mの2次元走査を行う。これにより、初期総歪Dtoや交換後総歪Dtrの無い状態で、加工データの加工内容をワークW表面上に描画することができるので、当該加工データにおける加工内容のプレビューに関する精度を高めることができ、もって、ユーザ所望のマーキング加工の実現に貢献し得る。
以上説明したように、本実施形態に関するレーザ加工システム100において、レーザ加工装置1は、レーザ発振ユニット12及びガルバノスキャナ19を有するレーザヘッド部3と、レーザヘッド部3に対して交換可能に取り付けられるfθレンズ20(標準レンズ20S、交換レンズ20R)と、レーザコントローラ5を有しており、レーザ発振ユニット12から出射されたパルスレーザLを、ガルバノスキャナ19によって走査することで、ワークW表面にマーキング加工を施すことができる。
ここで、当該レーザ加工装置1は、RAM62に記憶された本体歪データの本体歪Dmと、無線タグリーダ64によって、レーザヘッド部3に取り付けられているfθレンズ20の無線タグ20Eから識別データと共に取得した当該fθレンズ20のレンズ固有データのレンズ歪(標準レンズ歪Ds、交換レンズ歪Dr)に基づいて、レーザヘッド部3に対して当該fθレンズ20(例えば、標準レンズ20S、交換レンズ20R)が取り付けられた状態におけるパルスレーザLの加工位置に生じる歪を補正する為の歪補正テーブルを生成する(S2)。そして、当該レーザ加工装置1は、生成した歪補正テーブルを用いて、加工データにおける加工位置に射影変換を施して補正する(S4)ことによって、レーザヘッド部3に対してfθレンズ20が取り付けられた状態において、パルスレーザLの加工位置に生じる歪を補正することができ、パルスレーザLによるマーキング加工の加工精度をより高め得る。
歪補正テーブル更新処理(S2)においては、CPU61は、レーザヘッド部3におけるレーザ発振ユニット12やガルバノスキャナ19の配置に起因する本体歪Dmを示す本体歪データと、無線タグリーダ64によって無線タグ20Eから取得されたfθレンズ20のレンズ固有データを構成するレンズ歪データ(例えば、標準レンズ歪Ds、交換レンズ歪Dr)を用いて、レーザヘッド部3に対して当該fθレンズ20が取り付けられた状態で、パルスレーザLの加工位置に生じる歪を特定し(S18)、この歪を補正する為の歪補正テーブルを生成する(S20)。従って、当該レーザ加工装置1によれば、生成された歪補正テーブルを用いることで、レーザヘッド部3に対してfθレンズ20が取り付けられた状態で、パルスレーザLの加工位置に生じる歪を、本体歪及びレンズ歪の両者について確実に補正することができ、パルスレーザLによるマーキング加工を、より高い精度で行うことができる。
又、CPU61は、fθレンズ20の交換が行われたか否かを判断し(S1)、fθレンズ20の交換が行われた場合(S1:YES)、無線タグリーダ64によって、交換レンズ20Rの無線タグ20Eから、交換レンズ20R固有の識別データと共に、交換レンズ20Rのレンズ固有データを取得する(S17)。これにより、当該レーザ加工装置1によれば、歪補正データ更新処理(S2)において、交換レンズ20Rに係るレンズ固有データにおける交換レンズ歪データ及び本体固有データにおける本体歪データに基づいて、交換後総歪Dtrを算出して歪補正テーブルを生成することができるので(S20)、fθレンズ20を交換レンズ20Rに交換した場合においても、パルスレーザLの加工位置に生じる歪(交換後総歪Dtr)を解消することができ、マーキング加工の加工精度を高く維持することができる。
fθレンズ20の無線タグ20Eに記憶されているレンズ固有データは、レンズ歪データに加えて、fθレンズ20の焦点距離を示す焦点距離データを含んでいる。歪補正テーブル更新処理(S2)において、交換後総歪Dtrを算出する際に、本体歪データの本体歪Dmに対して、標準レンズ20Sの焦点距離Fs及び交換レンズ20Rの焦点距離Frに基づく補正係数αを乗算して、本体歪データに係る本体歪を調整する。そして、CPU61は、調整した本体歪Dmと、交換レンズ20Rに係る交換レンズ歪データに基づく交換レンズ歪Drに基づいて、歪補正テーブルを生成する(S18〜S20)。
ここで、図11に示すように、fθレンズ20の交換によってfθレンズ20の焦点距離が変化すると、fθレンズ20を介してワークW上へと至るパルスレーザL等の経路も変化する為、本体歪Dmの大きさも、fθレンズ20の焦点距離の影響を受ける。この点、当該レーザ加工装置1によれば、交換レンズ20Rに係る焦点距離Frに基づいて、前記本体固有データに含まれる本体歪Dmを調整し、当該調整した本体歪Dmと、交換レンズ20Rに係る交換レンズ歪Drに基づいて、歪補正テーブルを生成(S18〜S20)する為、より適切な歪補正テーブルを生成することができ、パルスレーザLの加工位置に生じる歪を確実に補正し得る。
そして、本実施形態においては、fθレンズ20は、夫々無線タグ20Eを有しており、各無線タグ20Eは、当該fθレンズ20固有の識別データに対応付けて、当該fθレンズ20のレンズ固有データを記憶している。従って、当該レーザ加工装置1によれば、無線タグリーダ64を用いることによって、レーザヘッド部3に取り付けられたfθレンズ20の無線タグ20Eから、当該fθレンズ20の識別データと、識別データに対応付けられたレンズ固有データとを確実に取得することができ、もって、適切な歪補正テーブルの生成に用いることができる。又、当該レーザ加工装置1によれば、レーザヘッド部3に対して交換可能に取り付けられるfθレンズ20(標準レンズ20S、交換レンズ20R)の夫々について、fθレンズ20の識別データ及びレンズ固有データの関連性を容易に特定でき、識別データに基づいて、適切なレンズ固有データを取得し得る。
そして、当該レーザ加工装置1は、パルスレーザLと同様に、ガルバノスキャナ19、fθレンズ20(標準レンズ20S、交換レンズ20R)を介して、ガイド光部16から出射された可視レーザ光Mを、データ作成装置7から取得した加工データの各加工点に従って、ワークW表面上に2次元走査させることができ、もって、ワークWに対するマーキング加工を行う前に、当該加工データの加工内容を確認することができる。
この場合において、CPU61は、ROM63に格納されている歪補正テーブルと、当該加工データに基づいて、歪補正実行処理を実行し、現時点におけるレーザ加工装置1の加工環境(本体歪やレンズ歪の大きさ)等に応じて、加工領域内の加工点を描画する際に可視レーザ光Mに生じる歪を補正して、可視レーザ光Mの2次元走査を行う。これにより、初期総歪Dtoや交換後総歪Dtrの無い状態で、加工データの加工内容をワークW表面上に描画することができるので、当該加工データにおける加工内容のプレビューに関する精度を高めることができ、もって、ユーザ所望のマーキング加工の実現に貢献し得る。
図11に示すように、fθレンズ20の交換によって、fθレンズ20の焦点距離が変化すると、fθレンズ20を介してワークW上へと至るパルスレーザLの収束の度合や、パルスレーザLの走査速度も変化する為、パルスレーザLによってワークWの単位面積あたりに与えられるエネルギー量も変化してしまい、パルスレーザLによるマーキング加工に適したエネルギー量が加えられず、ワークWに対するマーキング加工の加工品質に影響を及ぼす場合があった。
この点、当該レーザ加工装置1によれば、レーザ光調整処理(S5)を実行することによって、レーザヘッド部3に取り付けられたfθレンズ20(例えば、交換レンズ20R)の焦点距離に対応するように、パルスレーザLによってワークWの単位面積あたりに与えられるエネルギー量を調整し(S5)、調整された制御パラメータに基づいて、加工実行処理(S6)を行う。これにより、当該レーザ加工装置1は、パルスレーザLによってワークWの単位面積あたりに与えられるエネルギー量を、ワークWのマーキング加工に適切な状態に調整することができ、パルスレーザLによるマーキング加工の加工品質を高く維持することができる。
尚、上述した実施形態において、レーザ加工装置1及びレーザ加工システム100は、本発明におけるレーザ加工装置の一例であり、レーザ発振ユニット12は、本発明におけるレーザ光出射部の一例である。そして、ガルバノスキャナ19は、本発明における走査部の一例であり、レーザヘッド部3は、本発明における本体部の一例である。又、fθレンズ20、標準レンズ20S、交換レンズ20Rは、本発明における集光レンズの一例であり、レーザコントローラ5、CPU61は、本発明における制御部の一例である。そして、RAM62は、本発明における記憶部の一例であり、無線タグリーダ64は、本発明における識別データ取得部、レンズデータ取得部の一例である。そして、CPU61、RAM62、ROM63は、本発明における補正データ生成部、交換判定部の一例であり、ガイド光部16は、本発明における可視光出射部の一例である。そして、fθレンズ20の無線タグ20Eは、レンズデータ記憶部の一例である。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した実施形態においては、fθレンズ20のレンズ固有データは、fθレンズ20の無線タグ20Eにおいて、当該fθレンズ20の識別データに対応付けて格納されていたが、この態様に限定されるものではない。本発明におけるレンズデータ記憶部としては、無線タグ20Eとは別体の記憶装置を用いることができる。
例えば、レーザヘッド部3に対して取り付け可能な各fθレンズ20の識別データと、各fθレンズ20に係るレンズ固有データとを相互に対応付けたデータベースを、レーザコントローラ5のROM63に形成してもよい。この場合、CPU61は、無線タグリーダ64によって、fθレンズ20の無線タグ20Eから識別データを取得することで、ROM63に形成されたデータベースから、当該fθレンズ20のレンズ固有データを特定して取得する。又、このようなデータベースは、レーザコントローラ5のROM63に形成されていなくてもよく、例えば、データ作成装置7のHDD75に形成されていてもよいし、ネットワーク網を介して双方向通信可能に接続されたサーバ上に形成されていてもよい。
そして、上述した実施形態においては、fθレンズ20の無線タグ20Eに記憶された識別データを、無線タグリーダ64によって読み出すことで取得していたが、この態様に限定されるものではない。例えば、識別データ表示部20Fにおいて、識別データをコード化したコード画像が表示されている場合、レーザコントローラ5に対して、コードリーダを接続して、識別データ表示部20Fから識別データを読み出して取得してもよい。そして、識別データ表示部20Fにおいて、識別データを構成する文字列が表示されている場合に、ユーザが識別データ表示部20Fを視認して、当該文字列をキー入力することによって、識別データを取得してもよい。
又、上述した実施形態においては、fθレンズ20に係るレンズ歪データ(標準レンズ歪データ、交換レンズ歪データ)を、レンズ歪(標準レンズ歪Ds、交換レンズ歪Dr)の実測値によって構成していたが、この態様に限定されるものではない。例えば、fθレンズ20の構成(レンズの形状や組み合わせ等)に基づいて、当該fθレンズ20に起因して生じるレンズ歪の数値をシミュレートし、得られたシミュレート値によって、レンズ歪データを構成してもよい。
そして、上述した実施形態においては、レーザ加工装置1のCPU61は、ROM63に格納されている歪補正テーブルと、当該加工データに基づいて、現時点におけるレーザ加工装置1の加工環境(本体歪やレンズ歪の大きさ)等に応じて、可視レーザ光Mに生じる歪を補正していたが、この態様に限定されるものではない。即ち、上述したパルスレーザLに関する歪補正テーブルの更新と同様に、可視レーザ光Mに係るレンズ歪と、可視レーザ光Mに係る本体歪に基づいて、可視レーザ光Mに生じる歪を補正する為の可視光歪補正テーブルを生成することも可能である。又、パルスレーザLに歪補正テーブルと、パルスレーザLの波長と、可視レーザ光Mの波長とに基づいて、可視レーザ光Mに生じる歪を補正する為の可視光歪補正テーブルを生成してもよい。
更に、上述した実施形態においては、レーザコントローラ5のCPU61が、レーザ加工処理プログラム(図5、図6参照)を実行することで、データ作成装置7から取得した加工データにおける各加工点に生じる歪を補正し、ガルバノコントローラ56へ出力する構成であったが、この態様に限定されるものではない。即ち、データ作成装置7のCPU71が、レーザ加工処理プログラム(図5、図6参照)を実行することで、データ作成装置7から取得した加工データにおける各加工点に生じる歪を補正する構成とすることも可能である。