JP2019062775A - 貝類成長促進材および貝類の成長の促進方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、水棲生物の養殖用の水の中に供給するための、ケイ酸カルシウムを含む養殖用資材であって、蒸留水1リットルに対して上記養殖用資材を1gの量で添加した場合における水溶性SiO2の溶出量が、3mg以上であることを特徴とする養殖用資材が記載されている。該養殖用資材によれば、養殖池等の水質悪化を抑制し、養殖対象である水棲生物の生存率を向上させることができる。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[4]を提供するものである。
[1] ケイ酸カルシウム含有粒状物からなる貝類成長促進材であって、上記ケイ酸カルシウム含有粒状物を構成する全粒体中、1mm未満の粒度を有する粒体の割合が12質量%以下であり、1〜3mmの粒度を有する粒体の割合が10〜80質量%であり、3mmを超え、4mm以下の粒度を有する粒体の割合が10〜80質量%であり、4mmを超える粒度を有する粒体の割合が12質量%以下であることを特徴とする貝類成長促進材。
[2] 上記ケイ酸カルシウム含有粒状物が、トバモライト、ゾノトライト、CSHゲル、フォシャジャイト、ジャイロライト、ヒレブランダイト、およびウォラストナイトからなる群より選ばれる1種以上を含む前記[1]に記載の貝類成長促進材。
[3] 前記[1]又は[2]に記載の貝類成長促進材を用いた貝類の成長の促進方法であって、上記貝類成長促進材を底質の中に入れ混ぜることを特徴とする貝類の成長の促進方法。
[4] 上記貝類成長促進材の量が、水底を形成する上記底質(ただし、上記貝類成長促進材との混合の対象となる領域内のものに限る。)100質量部当たり、0.1〜5.0質量部である前記[3]に記載の貝類の成長の促進方法。
ケイ酸カルシウム含有材料の例としては、トバモライト、ゾノトライト、CSHゲル、フォシャジャイト、ジャイロライト、ヒレブランダイト、およびウォラストナイト等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
トバモライトとは、結晶性のケイ酸カルシウム水和物であり、Ca5・(Si6O18H2)・4H2O(板状の形態)、Ca5・(Si6O18H2)(板状の形態)、Ca5・(Si6O18H2)・8H2O(繊維状の形態)等の化学組成を有するものである。
ゾノトライトとは、結晶性のケイ酸カルシウム水和物であり、Ca6・(Si6O17)・(OH)2(繊維状の形態)等の化学組成を有するものである。
CSHゲルとは、αCaO・βSiO2・γH2O(ただし、α/β=0.7〜2.3、γ/β=1.2〜2.7である。)の化学組成を有するものである。具体的には、3CaO・2SiO2・3H2Oの化学組成を有するケイ酸カルシウム水和物等が挙げられる。
フォシャジャイトとは、Ca4(SiO3)3(OH)2等の化学組成を有するものである。
ジャイロライトとは、(NaCa2)Ca14(Si23Al)O60(OH)8・14H2O等の化学組成を有するものである。
ヒレブランダイトとは、Ca2SiO3(OH)2等の化学組成を有するものである。
ウォラストナイトとは、CaO・SiO2(繊維状又は柱状の形態)等の化学組成を有するものである。
ケイ酸カルシウム含有粒状物を構成する全粒体中、1〜3mmの粒度を有する粒体の割合は、10〜80質量%、好ましくは15〜75質量%、より好ましくは20〜70質量%、特に好ましくは30〜60質量%である。該割合が上記数値範囲内であれば、貝類の成長を促進することができる。
ケイ酸カルシウム含有粒状物を構成する全粒体中、4mmを超える粒度を有する粒体の割合は、12質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、特に好ましくは8質量%以下である。該割合が12質量%を超える場合、ケイ酸カルシウム含有粒状物の沈降性が悪くなるため、該粒状物が底質から浮き上がって流出する場合がある。
なお、本明細書中、「粒度」とは、上記粒体における最大寸法(例えば、断面がだ円である粒体においては、長軸の寸法をいう。)をいう。
本発明の貝類の成長の促進方法は、上述した貝類成長促進材を底質の中に入れ混ぜる方法である。
本発明の対象となる貝類としては、特に限定されるものではないが、例えば、アサリ、ハマグリ、シジミ、ホッキガイ等の二枚貝や、アワビ、サザエ、ウミニナ等の巻き貝等が挙げられる。
本明細書中、「底質」とは、淡水、汽水または海水の水域において、水底を形成している表層をいう。なお、貝類成長促進材を入れ混ぜることができないもの(例えば、岩石からなる表層)は、底質に含まれないものとする。該表層の例としては、砂、粘土、砂泥、または泥からなる表層等が挙げられる。
貝類成長促進材を散布する方法の例としては、人力で散布する方法、及び、市販の肥料散布用機械を用いる方法等が挙げられる。
貝類成長促進材を混合した底質(貝類成長促進材が存在する状態となった底質)の深さは、特に限定されないが、貝類の成長をより促進する観点から、底質の上面から50cm以下、好ましくは40cm以下、より好ましくは30cm以下である。
該深さの下限値は、特に限定されないが、底質の深い地点に潜る貝類に対しても成長促進の効果を与える観点から、好ましくは10cm、より好ましくは15cm、特に好ましくは20cmである。
底質内部に貝類成長促進材が混合されて、底質内部の酸性化を抑制し、水域や底質のpHが過度の酸性(例えば、pH4.0未満)になることによる、貝類の成長への悪影響を防ぐことができる。
また、底質中に存在する水の溶存酸素量を大きくし、底質の通水性を向上させることができる。これにより、硫酸還元菌等の嫌気性微生物の活動を抑制して、硫化水素の発生を抑制することができ、さらには、底質内部の有機質成分の分解を促進することができる。
また、底質のpHがアルカリ性(例えば、pH9.0以上)になることを防ぎ、貝類の成長への悪影響を防ぐことができる。例えば、アサリは、pH9.0以上の環境下ではへい死することが知られている。
また、貝類成長促進材からケイ酸が溶出することにより、貝類の餌となる珪藻を増殖させることができる。
さらに、底質と貝類成長促進材を混合することによって、潮汐等による貝類成長促進材の流出を防ぐことができる。
[使用材料]
(1)貝類成長促進材;多孔質のケイ酸カルシウム含有粒状物からなるもの、1mm未満の粒度を有する粒体の割合:8質量%、1〜3mmの粒度を有する粒体の割合:50質量%、3mmを超え、4mm以下の粒度を有する粒体の割合:34質量%、4mmを超える粒度を有する粒体の割合:8質量%
(2)底質;干潟より採取した砂、粘土、泥の混合物、湿潤密度:1.89g/cm3、含水率:27.2%、pH:7.1、ORP:74mV
底質100質量部あたり0.5質量部となる量の貝類成長促進材を添加し、スコップを用いて、均一に混合した。得られた混合物(貝類成長促進材を混合した底質)を容積が0.4m3である水槽に、水槽内における底質の深さが20cmになるようにいれた。その後、長径が20〜30mmであるアサリを、300個/m2となる数量で投入して、ろ過した天然海水をかけ流しながら、室内環境下において30日間、アサリの飼育を行った。
飼育中、別途、培養した珪藻(天然海水由来のもの)を、アサリの成長に合わせた適正な濃度となるように天然海水で希釈し、上記水槽に投与した。珪藻の投与は、珪藻を含む海水が、上記水槽の下部から底質を通って、底質の上部へと通過するようにして行った。
30日経過後、水槽内にはアサリの排泄物(偽糞)が多くみられ、底質の表面にはアサリが活発に動き回った形跡がみられた。また、アサリの殻は変色しておらず、アサリが殻を大きく開いて水管を伸ばしている様子がみられた。
また、底質を掘り起こしても、硫化水素の臭気は感じられなかった。
さらに、水槽内の海水を採取し、顕微鏡で確認したところ、珪藻が多くみられた。
pHの測定はpH電極、ORPの測定はORP電極を用いて、底質の深さ5cmのところまで挿入することで行った。
また、水槽中の50個のアサリを任意に採取し、該アサリの軟体部分の質量(アサリから殻を除去した直後の質量)を測定し、その平均値を算出した。
なお、試験開始前の任意に採取した50個のアサリの軟体部分の質量(アサリから殻を除去した直後の質量)の平均値は1.6gであった。
底質に貝類成長促進材を入れ混ぜない以外は、実施例1と同様にして、アサリの飼育を行った。
30日経過後、水槽内のアサリの排泄物(偽糞)は、ほとんどなく、実施例1と比較して極めて少なかった。また、灰色のヘドロ(有機質成分を含むもの)が水面全面に確認された。また、ヘドロの影響によってアサリの殻が黒色に変色しており、アサリの多くは殻を閉じ、水管を出していなかった。
また、底質を掘り起こすと、硫化水素の臭気が感じられた。
さらに、水槽内の海水を採取し、顕微鏡で確認したところ、ミジンコ類やカイアシ類等のプランクトンが多くみられた。
実施例1と同様にして、30日経過後の底質の、pHおよびORP(Oxdation−reduction Potential)を測定し、アサリの軟体部分の質量の平均値を算出した。
結果を表1に示す。
また、表1から、実施例1における、アサリの軟体部分の質量の平均値(1.8g)は、試験開始前のアサリの軟体部分の質量の平均値(1.6g)よりも大きく、貝類成長促進材を使用することで、アサリの成長が促進されていることがわかる。
一方、比較例1では、アサリの軟体部分の質量の平均値(1.4g)は、試験開始前のアサリの軟体部分の質量の平均値(1.6g)よりも小さいことがわかる。これは、アサリの嫌気代謝によるものと考えられる。
また、実施例1において、30日経過後の底質のpHは8.0であった。これは一般的な海水のpH(約8.1)と同程度である。
さらに、実施例1において、底質のORPは28mVであった。これは健全な干潟の底質と同等の酸化雰囲気であることを示している。一方、比較例1において、底質のORPは−220mVであった。これは、硫化水素やヘドロが発生しやすい状態である強い還元雰囲気であることを示している。
底質100質量部と表2に示す添加量の貝類成長促進材を、ホバートミキサーを用いて、低速で1.5分間、高速で1.5分間混練した。
得られた混練物を、ポリエチレン製の容器(内径:5cm、高さ:21cm)に、それぞれ、底質の深さが20cmとなる量で投入した。次いで、上記容器の開口部が上部にくるように上記容器を鉛直方向に立てた状態で、塩分濃度が3.3%である人工海水の中に浸漬した。浸漬中、人工海水中にエアレーションを行った。
浸漬後、表2に示す経過時間毎に、pH電極を用いて底質内のpHを測定した。pHの測定は、pH電極を、底質の深さ5cmのところまで挿入することで行った。
なお、1週間経過後は、一週間毎に容器を浸漬している人工海水のうち、3分の1となる量の人工海水を、新たな人工海水と交換した。
[比較例2]
貝類成長促進材を使用しない以外は、実施例2と同様にして、底質内のpHを測定した。
結果を表2に示す。
Claims (4)
- ケイ酸カルシウム含有粒状物からなる貝類成長促進材であって、上記ケイ酸カルシウム含有粒状物を構成する全粒体中、1mm未満の粒度を有する粒体の割合が12質量%以下であり、1〜3mmの粒度を有する粒体の割合が10〜80質量%であり、3mmを超え、4mm以下の粒度を有する粒体の割合が10〜80質量%であり、4mmを超える粒度を有する粒体の割合が12質量%以下であることを特徴とする貝類成長促進材。
- 上記ケイ酸カルシウム含有粒状物が、トバモライト、ゾノトライト、CSHゲル、フォシャジャイト、ジャイロライト、ヒレブランダイト、およびウォラストナイトからなる群より選ばれる1種以上を含むものである。
- 請求項1又は2に記載の貝類成長促進材を用いた貝類の成長の促進方法であって、上記貝類成長促進材を底質の中に入れ混ぜることを特徴とする貝類の成長の促進方法。
- 上記貝類成長促進材の量が、水底を形成する上記底質(ただし、上記貝類成長促進材との混合の対象となる領域内のものに限る。)100質量部当たり、0.1〜5.0質量部である請求項3に記載の貝類の成長の促進方法。
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