JP7349612B2 - 養殖用貝の成長促進剤及び斃死防止剤 - Google Patents
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Description
詳細には、本発明は、海水の揺動、海流などの影響、貧酸素水の影響を少なくして、ホタテ貝などの養殖貝の成長、および環境の変化にも適切に対応でき、貝の養殖に悪影響を与える海水中の生物の、例えばホタテ養殖の際に、ホタテ貝に付着するザラボヤ等の発生を抑制又は排除し、養殖海域の海水環境を養殖に適合するように適正に保全して、ホタテ貝、アコヤ貝、牡蠣などの貝のへい死の防止とホタテ貝の殻の変形、病気などを防止する機能を有すると共に、貝の滋養強壮の効能も兼ねた貝の成長促進剤を提供する。
ホタテ貝とアコヤ貝の養殖方法について説明する。ホタテ貝の養殖は、養殖棚は海底に7t程度のコンクリートでアンカーを用い、これに太い横ロープ(R1)を張り、ロープの上に浮玉を用いて養殖が行われている。
座布団籠に入れた幼貝は、横ロープ(R1)に結んで育成する。座布団籠で育成した稚貝は取出し、丸籠に移し替える。丸籠の形状は円筒形で網の目は、座布団籠の目より大きいものを用いる。側面には稚貝を出し入れする隙間が設けられており、貝の成長の度合を見ながら分散作業を行い育成する。
丸籠で育成した稚貝を耳吊時期に沖より水揚げ、一旦水槽に入れ替え、予めロープに疎通しておいた貝掛止具(登録商標;アグピン)を稚貝の耳部に穴を明け、ピンを通して沖に搬送し、ロープ(R1)に結んで海中に吊下げて耳吊養殖が行われる。
耳吊りの垂下ロープ1本にアグピンが12cm間隔で110本~120本用いられ、養殖漁家1軒当り、ロープ2万本から3万本用いて、収穫まで1年半から2年間かけて養殖されているが、西暦2018年(平成30年)に北海道(噴火湾)でホタテ貝が大量死している。この養殖は、半世紀を超えて同一場所の養殖棚で行われている。
ホタテ貝やアコヤ貝の外套膜は、目、触手等の感覚器官の機能を備えており、貝が休んでいる時、目で観察できる膜である。ホタテ貝やアコヤ貝の鰓(エラ)は複雑な構造をしていて、呼吸する部分とプランクトンを捕捉できる部分に分かれている。鰓で呼吸して海中の酸素を吸収し、体内に供給される。ホタテ貝やアコヤ貝の餌となる動物性プランクトンは多数の繊毛を持った鰓によって捕捉される。
捕捉された動物性プランクトンは、閉殻筋(貝柱)と蝶つがいとの間にある黒い器官の魂である中腸線(通称ウロと呼ばれている。人間の場合は腸にあたる。)によって、細胞内消化によって、餌の栄養分を消化する。
吸収された栄養分は、閉殻筋(貝柱)にグリコーゲンとして貯蔵されます。この貝柱のグリコーゲンは、貝を開けたり閉じたりするエネルギーとしてだけでなく、貝全体の栄養源貯蔵庫としても重要な役割を果たしており、糞を粘液に包んで、体外に排出する機能を有しております。
試験研究は今No.15に噴火湾において養殖ホタテ貝が大量に死んだ際、化膿した貝柱からビブリオ菌の細菌が検出され、正常貝と比べてグリコーゲン量が少なかったと記載されている。
海底に蓄積されている窒素(N)は、地球温暖化などの環境変化により海水の温度が上昇することによって、水草にくっついたり、浮遊しているガラス質(SiO2)の殻をもつ珪藻などの植物性プランクトンの養分が増え、植物性プランクトンが増殖する。急激に増殖した植物性プランクトンは、海水の酸素濃度を低下させる他、植物性プランクトンに毒素を発生する。毒素をもった植物性プランクトンが急激に増加することによって、ホタテ貝やアコヤ貝の餌となる動物性プランクトンの数が著しく減少する。
毒素をもった不適切な植物性プランクトンをホタテ貝やアコヤ貝は捕捉しないため、多数の繊毛の鰓に付着する。不適切な植物性プランクトンが繊毛の鰓に付着しているため、動物性プランクトンを捕食することもできず、貝はエネルギー源として使用するグリコーゲンの量を閉殻筋(貝柱)に貯えることもできず、海水の酸素濃度が低下しているため、鰓で呼吸して体内に酸素を供給することもできず、酸欠状態で体力を消耗しきって、口を開いた状態で窒息死し、西暦2018年(平成30年)に北海道(噴火湾)でホタテ貝が大量死しているという実情からして、その原因の一つとも考えられる。(非特許文献1参照。)
貝の大量死が海底に蓄積されている窒素と地球温暖化にどのような関連があるか調査した。
1西暦2010年(平成22年)青森県(むつ湾)ホタテ貝大量死
2西暦2018年(平成30年)北海道(噴火湾)ホタテ貝大量死
3西暦2019年(令和 1年)愛媛県(宇和海)アコヤ貝大量死
西暦2018年(平成30年)に、北海道(噴火湾)でホタテが大量死しているが、青森県(むつ湾)では斃死がみられていない。これは平成22年に青森県(むつ湾)で大量死し、ホタテ貝の産卵する成貝の出荷規制などを行い、その数年後に養殖棚を別な個所に移設されているためである。この移設によって、従来まで貝の糞(窒素)で埋没されていた珪素(Si)が存在、窒素の少ない環境に移設されているためと想定できる。
すなわち、養殖する海底には珪素(Si)が必要であり、窒素(N)は有害な物質である。
陸の土壌に最も多く含まれる元素は、珪素(Si)、鉄(Fe)の順序で存在している。
鉄は、自然界の酸化物、硫化物の鉱石を還元操作によって人為的に作られた物質で、鉄(Fe)は海水に溶在し、酸素(O2)の光合成によって、酸化鉄(Fe2O3)を発生する。
ホタテ貝やアコヤ貝を養殖している海底の地層に、陸から流れ込んだ珪素(Si)が存在している。水草にくっついたり、浮遊しているガラス質(SiO2)の殻をもつ珪藻などの植物性プランクトンは、海底の地層に存在している珪素(Si)より作られる。
例えば、水と二酸化炭素は光合成に必要で、草や木が水(H2O)を分解して酸素(O2)を発生し、有機物(デンプン)に固定される。二酸化炭素は水に溶けやすいため、海の表面では直接大気から受け取られ、ガラス質(SiO2)の殻をもつ珪藻などの植物性プランクトンが、太陽光と二酸化炭素で光合成して有機物が作られます。動物性プランクトンは光合成をせず、外部から栄養素を摂取するため、体内に取り込むための口、移動する仕組み、子孫を増す仕組み等、多様な器官を備えており、有機物は動物性プランクトンに吸収され、ホタテ貝は海水に浮遊している動物性プランクトンを餌にするという食物連鎖の生態系で支えられている。
また、牡蠣の養殖の際に、死滅の原因になる、排泄物や有毒ガスなどの有機物を抑制し、海水浄化を行い牡蠣の生存率を上げる養殖方法が提案されている。その養殖方法とは、竹炭マットを牡蠣筏の真下の海中に、複数枚吊設し、魚介類から出る排泄物等を直接受止め吸着することにより、排泄物等によって発生する汚染物質や有毒ガスを吸着するようにし、海水浄化を行うことを特徴とするものである。(特許文献2参照。)
詳細には、本発明は、海水の揺動、海流などの変化による海水の状態の変化や環境への影響を少なくして、同一箇所の海域における長期養殖により発生する弊害を是正し、ホタテ貝などの養殖貝の成長促進、および海水中の生物の、例えばホタテ養殖の際に、ホタテ貝に付着するザラボヤ等の生育を抑制し、ホタテ貝のへい死の防止や貝殻の変形を少なくするという課題を解決することができたものである。しかもホタテ貝の成長を促進するばかりでなく、養殖海水の環境変化を若干調整することによる貝のへい死予防材料、またはへい死防止剤としても有効であり、または滋養剤としての効能も安全に果たすことにより、稚貝の成長を安全に促進させるという課題を解決するものである。
すなわち、本発明は、海水中の稚貝の近辺に配置するへい死予防剤の機能を備えた成長促進剤を構成する材料成分として、(1)古代の海底が隆起した特定の岩石の砕石土、(2)消石灰および(3)鉄分を必須成分として必要な割合で混合した組成材料を適度に焼結してものを養殖海域へ使用することにより、課題を解決することができたものである。
さらに、滋養機能は、稚貝の病気を抑えて、生育を助長する機能を果たす貝類の成長促進材料の役割を果たしているようにも解される。結果的には貝の大量のへい死の予防、大量の殻の変形などの障害を低下させ、稚貝の成長促進の役割を果たしているようにも思われる。
焼結に用いた太古の海底が隆起した軟質多孔性海洋腐植土を主体とした岩石の砕石土とは、好ましくは堆積岩、または頁岩のような岩石を適度な寸法に粉砕した砕石土であり、具体的には山形県酒田市から棚倉を通り、茨城県水戸市北方に至る大断層帯(棚倉構造線、棚倉破砕帯)に位置する、約数千万年前に形成されたものである。その構成成分は、ケイ酸を主成分として、鉄、カルシウム、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウムなどの各種ミネラルを多く含む、魚貝類、微生物、藻類などの太古の微生物の化石が多く沈着して形成された堆積土である。便宜上「棚倉構造線砕石土」と総称して呼称することにより、特定化することが出来る。この砕石土は、採掘した原石を粉末加工したものとして取り扱われる場合が多い。
この堆積岩または頁岩より構成される砕石土とは、数千万年前のプランクトン(微生物)や藻類の生物が地殻変動により、埋没堆積して化石化して隆起した珪藻土のものであり、無数の小さい孔をもち、学術名「軟質多孔性古代海洋腐植質」と呼称されることもあり、珪素の他多くのミネラル成分をもっており、貝の成長の促進と、堆肥の熟成化、無臭化などの機能を果たしており、その特性は、海水の水質浄化の役目を果たすために用いることも期待される。
この堆積岩、堆積層を粉砕して入手できる砕石土は、若干の石灰石を含む場合もあり、石灰岩は貝、サンゴ、有孔虫、ガラスとしSiO2のような成分とチヤートをつくる場合もあるから、有益な成分として評価することができる。
その砕石土の粒径は、通常微粉末、粉末、又は顆粒のような形体で、それらが混在する場合もなり、普通に見る土のような状態で取り扱われたり、球状の、楕円の、四角形のような立体状の焼結成形体として、取り扱い便利な形態で取り扱われる場合もある。
また、この砕石土は、例えば、商品名「ミロネクトン」(福島県、八幡礦業(株)製)として容易に入手できる。
参考までに、花崗岩が風化してできた国内に広く分布する「真砂土」とは、構成成分が相違するが、これを必要に応じて、砕石土に適宜ブレンドすることも可能である。
焼結に用いた消石灰(Ca(OH)2)は、水酸化カルシウムの慣用名である。通常、建築用、肥料用、工業用消石灰と区分して取り扱われている場合もありますが、特に限定して区分することなく使用できる。石灰岩から入手すれば、サンゴ、有孔虫、貝などの残っている場合があり、これらが貝に有益な栄養を供給する場合も想定できる。
通常は、アルカリ分(CaO+MgO)の高いもの、例えば、CaOが30%以上のものが推奨され、粉末、または微粉末の形態で取り扱われる。
この消石灰は、一般には、元々は太古の海に生息していた貝類が地殻変動により、埋没堆積して隆起した地層に石灰岩として存在している石灰石を砕いたものを炉で焼成、熟成した商品で、海底に蓄積された貝の糞(窒素)をアルカリ性に中和すると共に、貝殻の生成を高めるために用いたものであります。 この消石灰は、化学反応により容易に製造できる化合物でもある。NaOHとCa(OH)2からなるソーダライムの形体の化合物も使用可能である。この種の化合物は、空中でCO2を高度に吸収する特性を備えており、海水中という特殊な条件下ではその特性を定量的に正確に解析することが困難ではあるが、CO2の吸収、塩素や糞尿の分解において発生する有毒ガスの解毒などの、その挙動が期待される。
その消石灰の形体は、通常に市場で入手することが出来る、微粉末、粉末のような形体で取り扱われる。
焼結に用いた鉄粉は、鉄又は鉄を主成分とする化合物を適度に粉砕して、例えば、10~200メッシュ程度に粉砕した微粉末、または粉末状ものが推奨される。実用的には、珪素(Si)、鉄(Fe)、硫黄(S)などを含む銑鉄に屑鉄を混ぜて生産された「鋳物製品」のバリ取作業工程に発生した180メッシュの粒度のものを用いることが推奨される。鉄粉には珪素(Si)が若干含有されている場合もあり、養殖場の海底には貝の糞で貝の餌となる動物性プランクトンを作る珪素(Si)が埋没しているため、これを復元するために用いたものであります。
例えば、(a)砕石土20wt%、(b)消石灰30wt%、(c)鉄粉50wt%の仕様、或いは(a)砕石土55wt%、(b)消石灰15wt%、(c)鉄粉30wt%のような典型的な仕様が任意に設定できる。
これらの(a)~(c)成分は、通常は固体の粒子、粉末、微粉末状のものを混ぜて、温度約600~1600℃程度の温度で焼結して各粒子が部分的に溶着するような条件下で融着、固着などにより各成分が固定されることにより任意の形体を有する焼結体である。
このような各成分を焼結した焼結体に係わる製品の一例を、図1に示す。
この焼結体の大きさは、貝の養殖規模や丸籠、座布団籠または耳吊りのような使用条件、垂下養殖の規模、海流の流入状態、貧酸素水塊の存在の有無、植物プランクトンの発生規模や死骸の状況、塩分濃度の変化、海水温の状態などを考慮して任意に決めることが出来るが、籠とのバランス等を考慮して、平均粒径が0.5~30cm程度の塊状、板状、角状、円筒状、立方体状の任意の立体状態の大きさのものが推奨される。
また、海洋生物の付着防止の機能を有することが知られている、二酸化塩素、過酸化水素のような発生物質を貝の生育に影響しない範囲内で任意に併用することも出来る。
本発明の貝の成長促進剤兼滋養剤であるへい死防止効能を備えた材料は、焼結体であるために、表面が砕石土のような無機質の多孔体を形成する場合もあり、単位重量当たりの表面積が広くなるので、生育に有利なミネラルのような有効成分を海水中に短時間に放出するために貝類の成長促進材料としても有利である。また、焼結体の表面特性は、海水中に発生した植物プランクトンの多くが死後、微生物により分解される為に、貧酸素水の発生や、窒素化合物による富裕化による影響、海水を汚染する有害物質を吸着することや、接触分解などの作用により海底や海水中に混在する糞尿などの不要成分、アンモニア成分を無害化する作用を奏していることも想定できる。また、海水と接触すると、触媒作用により、海水中や海底沈殿の有害物を分解して無毒化する役割を果たすことも期待される。
開発した成長促進剤の効果の確認を行うため、北海道噴火湾のいぶり湾で、座布団籠(図2)に開発した商品を入れない稚貝500枚と、開発した商品を入れた500枚を2ヶ月間育成して比較した。
収容時の殻長は、平均11.5mmであった殻長が、開発した商品を入れない殻長の平均12.5mmであるのに対して、開発した商品を入れた殻長の平均は13.1mmとなっており、目視判定でも貝殻等の異常貝の発生や変形がみられなかった。本発明の滋養剤は、へい死防止材料として機能するばかりでなく、貝の成長の促進に貢献していることが示された。
比較のため、砕石土として棚倉構造線砕石土(60%)、消石灰(40%)の割合で混合した二成分材料の焼結体を、上記の実施要領で試験しても、殻長の平均12.6mm程度である。貝殻に変形が見られる稚貝は、約8枚程度である。
同様に、比較のため、消石灰(40%)、鉄粉(60%)の二成分系の割合で混合した材料の焼結体からなる滋養剤の場合も、殻長の平均12.8mm程度であり、顕著な違いが見られない。また、目示判定で、稚貝の殻変形も若干見られ、美しい貝殻であると賞賛できるようなものではない。
このように、本発明の貝の成長促進剤とは、貝へい死防止剤として効能があるばかりでなく、貝の成長促進に滋養剤として有効に機能すること、貝の変形を防止する作用をしているように思われ、結局は、海水の浄化作用など、有害物質の発生の防止などを含め、間接的に環境の保全に配慮した生育補助機能を果たしていることが予測できる。
2 横ロープ(R1)
3 浮玉
4 貝掛止具
5 ホタテ貝
6 垂下ロープ
7 イカダ
8 籠
9 アコヤ貝
10 本発明の成長促進剤
本発明の成長促進剤兼滋養剤の効能を実施態様図に基づいて説明しているが、その他の例として耳吊時期に稚貝の耳に穴を明けるため、沖より稚貝を引揚げて水槽に入れているが、沖が荒れて耳吊りできないため、一週間程水槽に入れておくことがある。
本発明の成長促進剤を予期せぬ事態に備えて、予め水槽に入れておくことによって、稚貝の体力消耗の軽減と活力を与える滋養強壮の作用をさせることができるものである。
さらに、本発明の焼結に用いたケイ素(Si)鉄(Fe)で構成された鉄粉を粘土と混合して、海底に用いることは可能である。
粘土は海底に蓄積されている窒素をアルカリにし、ケイ素(Si)鉄(Fe)は、殻をもつ珪藻などの植物性プランクトンの発生を促進する役目を果たすものであり、本発明は態様図で限定されるものでない。
Claims (4)
- (1)太古の海底が隆起した軟質多孔性海洋腐植土を主体とした岩石の砕石土、(2)消石灰および(3)鉄分の混合物を焼結してなることを特徴とする貝類の成長促進剤。
- 太古の海泥が隆起した軟質多孔性海洋腐植土を主体とした岩石の砕石土とは棚倉構造線砕石土であることを特徴とする請求項1に記載の成長促進剤。
- 太古の海底が隆起した軟質多孔性海洋腐植土を主体とした岩石の砕石土20~60wt%、消石灰10~30%および鉄粉20~60wt%(合計100wt%)から構成される貝類の成長促進剤。
- 海水中の養殖用稚貝の近辺に請求項1の成長促進剤を配置することを特徴とする稚貝の養殖方法。
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