以下、本発明の実施形態について説明する。
図1には、本実施形態に係る設計支援システム10の構成概略図が示されている。設計支援システム10は、設計者に設計支援ツールを提供するシステムである。設計支援システム10は、設計支援ツール提供サーバ12、部品情報管理サーバ14、及び、設計者が利用する端末である設計端末16を含んで構成されている。設計支援ツール提供サーバ12、部品情報管理サーバ14、及び設計端末16は、インターネットあるいはLAN(Local Area Network)などの通信回線18を介して互いに通信可能に接続されている。なお、図1には、設計端末16は1つのみ示されているが、設計支援システム10は複数の設計者が使用する複数の設計端末16を含んでいる。
設計支援ツール提供サーバ12は、設計端末16(設計者)に対して設計支援ツールを提供するサーバである。本実施形態では、設計支援ツール提供サーバ12は、設計支援ツールとして3DCADを設計者に提供する。すなわち、本実施形態では、設計支援ツール提供サーバ12はクラウド3DCADを提供するクラウドサーバである。具体的には、設計者は、設計端末16上で動作するインターネットブラウザを用いて設計支援ツール提供サーバ12にアクセスすることによって、設計端末16において、設計支援ツール提供サーバ12が提供する3DCAD(以下単に「3DCAD」と記載する)を利用することができる。なお、設計支援ツール提供サーバ12が提供する設計支援ツールとしては、3DCADに限られず、2DCADやソフトウェア開発環境であってもよい。
設計支援ツール提供サーバ12のハードウェア構成は、通常のサーバコンピュータと同等であってよい。すなわち、CPU(Central Processing Unit)などからなる制御部、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)あるいはRAM(Random Access Memory)などからなる記憶部、ネットワークアダプタなどからなる通信部を含んで構成される。
図2に、部品情報管理サーバ14の構成概略図が示されている。部品情報管理サーバ14は、3DCADにおいて用いられる部品に関する部品情報を管理するサーバである。詳しくは後述するように、部品に関する部品情報とは、当該部品に関する課題、及び、当該課題を解決するための対策を含むものである。
通信部30は、例えばネットワークアダプタなどから構成される。通信部30は、通信回線18を介して、設計支援ツール提供サーバ12及び設計端末16と通信する機能を発揮する。
記憶部32は、例えばハードディスク、ROMあるいはRAMから構成される。記憶部32には、部品情報管理サーバ14の各部を動作させるためのプログラムが記憶される。また、図2に示されるように、記憶部32には課題対策DB34が記憶される。
課題対策DB34には、3DCADで使用される部品と、当該部品に関する課題と、当該課題を解決するための対策が関連付けられて蓄積記憶される。したがって、記憶部32は、課題対策情報記憶部としても機能する。図3には、課題対策DB34の内容の例が示されている。本実施形態における課題対策DB34は、課題テーブル及び対策テーブルを含んで構成され、図3(a)には課題テーブルの内容例が、図3(b)には対策テーブルの内容例が示されている。
図3(a)に示す通り、課題テーブルにおいては、課題ID、部品番号、課題内容、対策ID、及び作成日時が関連付けられて記憶される。
課題IDは、課題テーブルのレコード(すなわち部品に関する課題)を一意に識別する番号(あるいは記号。他の番号についても同様)である。課題IDは、新たなレコードが課題テーブルに追加される際に、後述の部品情報登録部40により付与される。
部品番号は、課題対策DB34に登録(記憶)された3DCADの部品を一意に識別する番号である。
課題内容は、部品番号が示す部品に関する課題の内容である。部品に関する課題とは、当該部品を要因として製品の他の構成要素に生じた問題、あるいは、当該部品自体に生じた問題(破損あるいは変形など)などが含まれる。また、部品に関する課題とは、当該部品によって、当該部品が用いられた製品に生じる問題であるともいえる。例えば、課題ID「I01」が示す課題内容としては、部品番号「AB012C」が示す部品(以下、部品番号が示す部品については、単に部品「AB012C」などと記載する)が発熱するために、当該部品の熱による周辺(構成)の劣化に注意することという課題が登録されている。
対策IDは、当該課題を解決するための対策を一意に識別する番号である。各対策IDが示す対策の具体的な内容は、後述する対策テーブルに登録される。
作成日時は、当該レコードが登録された日時を示すものである。
なお、詳しくは後述するが、課題テーブルに登録される各情報のうち、部品番号、課題内容、及び対策IDは、3DCADを用いて設計中の設計者からの入力に基づいて登録される。
図3(b)に示す通り、対策テーブルにおいては、対策ID、対策内容、削除部品番号、追加部品番号、採用製品、詳細リンク、緊急度レベル、及び作成日時が関連付けられて記憶される。
対策IDは、上述の通り、課題テーブルに登録された課題を解決するための対策を一意に識別する番号である。対策IDは、新たなレコードが対策テーブルに追加される際に、部品情報登録部40により付与される。
対策内容は、課題テーブルにおいて当該対策IDに関連付けられた課題を解決するための対策の内容である。対策内容とは、追加部品の追加及び削除部品の削除の少なくとも一方を含むものである。例えば、対策ID「S01」が示す対策内容としては、「冷却ファンの追加」となっており、対策ID「S02」が示す対策内容としては、「後継部品に変更」となっている。なお、「変更」とは、当該部品を削除した上で別の部品を追加する対策である。
削除部品番号は、対策内容が示す対策によって削除される部品の部品番号である。例えば、対策ID「S01」の対策内容は、「冷却ファンの追加」であるから、削除される部品が無いため、当該レコードにおいては削除部品番号が空欄になっている。一方、対策ID「S02」の対策内容は、「後継部品に変更」であるから、削除される部品として、課題テーブルにおいて対策ID「S02」に関連付けられた部品である部品「AB012C」が登録されている。
追加部品番号は、対策内容が示す対策によって追加される部品の部品番号である。例えば、対策ID「S01」の対策内容は、「冷却ファンの追加」であるから、追加される部品として冷却ファンの部品番号「ZZ888A」が登録されている。また、対策ID「S02」の対策内容は、「後継部品に変更」であるから、追加される部品として、課題テーブルにおいて対策ID「S02」に関連付けられた部品の後継部品「AB012D」が登録されている。
採用製品は、当該対策が採用された製品を一意に識別する番号である。例えば、対策ID「S01」が示す対策は製品Aにおいて採用され、対策ID「S02」が示す対策は製品Bにおいて採用されたものである。対策ID「S01」及び「S02」はいずれも同じ課題である課題(課題ID「I01」、課題内容「熱による周辺の劣化に注意」)に関連付けられたものであるが、このように、同じ部品に関する同じ課題に対して、製品によって異なる対策が取られることがある。
詳細リンクは、当該対策に関する課題の詳細、当該対策が採用された経緯、当該対策のポイントなどを含む、当該対策の詳細情報へのリンクを示す番号である。本明細書の図面においては不図示であるが、課題対策DB34には、さらに、詳細情報テーブルが定義されている。当該詳細情報テーブルにおいては、詳細リンクの番号と、対策に関する詳細情報とが関連付けられている。例えば、詳細情報テーブルにおいて、対策ID「S01」に関連付けられた詳細リンクの番号「リンク01」には、周辺温度がどの位になったので、どの程度の大きさのファンが必要と考えられるなどの詳細情報が関連付けられている。
緊急度指標としての緊急度レベルは、当該対策の緊急度を示す値である。例えば、ある製品でリコールが発生した場合、当該リコールに対する対策は緊急度が高くなると言える。すなわち、他の製品においてもより早期に適用が必要な対策であると言える。本実施形態では、緊急度レベルとして「A」(緊急度大)、「B」(緊急度小)、及び「C」(通常)の3段階のレベルが付されているが、緊急度レベルとしてはその他の指標で表されてもよい。
作成日時は、当該レコードが登録された日時を示すものである。
なお、詳しくは後述するが、対策テーブルに登録される各情報のうち、対策内容、削除部品番号、追加部品番号、採用製品、詳細リンク、及び緊急度レベルは、3DCADを用いて設計中の設計者からの入力に基づいて登録される。また、詳細情報テーブルにおける対策に関する詳細情報も設計者からの入力に基づいて登録される。
図2に戻り、記憶部32には、さらに、優先度指標DB36が記憶される。優先度指標DB36には、課題対策DB34に登録された部品と、その部品の優先度指標とが関連付けられて記憶される。優先度指標とは、課題対策DB34に登録された各対策の優先度を示す優先評価値を算出するために用いられる指標である。あるいは、優先度指標それ自体が各対策の優先度を示すものとして用いられてもよい。このように、記憶部32は、優先度指標記憶部としても機能する。
図4に、優先度指標DB36の内容の例が示されている。優先度指標DB36においては、部品番号、単価、保守部品出荷数、出荷累計、及び保守率が関連付けられて記憶される。本実施形態においては、優先度指標DB36には複数の優先度指標が記憶されており、具体的には、単価が第1優先度指標として記憶され、保守率が第2優先度指標として記憶されている。
部品番号は、課題対策DB34に登録された部品の番号である。
単価、保守部品出荷数、及び出荷累計は、それぞれ当該部品に関する情報である。これらの情報は、例えば設計支援ツール提供サーバ12が保有していてよい。部品情報管理サーバ14は、部品が優先度指標DB36に登録されたときに、設計支援ツール提供サーバ12に当該部品に関する情報を要求することでこれらの情報を取得し、優先度指標DB36に格納する。
なお、保守率とは、(保守部品出荷数/出荷累計)×100で算出される値である。保守部品出荷数は、当該部品が保守(交換など)のために出荷された数であるから、すなわち保守率が低い程、当該部品を保守する可能性が低い、すなわち、壊れにくく信頼性が高いと言える。
図2に戻り、制御部38は、例えばCPUなどから構成され、記憶部32に記憶されたプログラムに従って部品情報管理サーバ14の各部を制御するものである。また、図2に示す通り、制御部38は、部品情報登録部40、部品情報読出部42、及び優先評価値算出部44としても機能する。
部品情報登録部40は、設計端末16(設計者)からの入力に基づいて、課題対策DB34に部品情報を登録する。具体的には、課題テーブルの部品番号、課題内容、対策ID、対策テーブルの対策内容、削除部品番号、追加部品番号、採用製品、詳細リンク、及び緊急度レベルを登録する。また、部品情報登録部40は、各対策に関する詳細情報を詳細情報テーブルに登録する。
部品情報読出部42は、設計端末16上で、設計者が3DCADを用いた設計を行っている間に、当該3DCADの表示画面に、課題対策DB34に登録された部品が表示された場合に、課題対策DB34から当該部品に関する部品情報を読み出す。具体的には、表示された部品の部品番号をキーとして、課題テーブルから課題内容及び対策IDを読み出し、読み出した対策IDをキーとして、対策テーブルから対策内容、削除部品番号、追加部品番号、採用製品、及び緊急度レベルを読み出す。また、部品情報読出部42は、設計者からの対策を指定した上での要求に応じて、詳細情報テーブルから当該対策に関する詳細情報を読み出す。
優先評価値算出部44は、課題対策DB34の対策テーブルに登録された削除部品番号及び追加部品番号、並びに、優先度指標DB36に記憶された各部品に関する優先度指標に基づいて、課題対策DB34に登録された各対策の優先評価値を算出する。
まず、単価を用いた優先評価値の算出方法について説明する。優先度指標として単価を用いる場合、優先評価値算出部44は、各対策の優先評価値を、追加部品の単価の和と、削除部品の単価の和との差によって算出する。例えば、対策ID「S01」に関しては、削除部品が無いために、追加部品「ZZ888A」の単価がそのまま優先評価値となる。すなわち優先評価値としては「+300」となる。また、対策ID「S03」に関しては、追加部品「CD333A」、「EF543B」、及び「GH555A」の単価の和である「700」から削除部品「AB012C」の単価である「1000」を引いた値である「−300」が優先評価値となる。
このようにして、優先評価値算出部44は、各対策に対する優先評価値を算出する。なお、対策ID「S01」の優先評価値は「+300」、対策ID「S02」の優先評価値は「−100」、対策ID「S03」の優先評価値は「−300」、対策ID「S04」の優先評価値は「−700」となる。
このように算出された優先評価値は、その値が低い程、対策によってコストがより低減されることを意味するため、コストの観点からは、優先評価値が低い程優先度が高い対策であると言える。
次に、保守率を用いた優先評価値の算出方法について説明する。優先度指標として保守率を用いる場合も同様に、優先評価値算出部44は、各対策の優先評価値を、追加部品の保守率の和と、削除部品の保守率の和との差によって算出する。例えば、対策ID「S01」に関しては、削除部品が無いために、追加部品「ZZ888A」の保守率がそのまま優先評価値となる。すなわち優先評価値としては「+0.0024%」となる。また、対策ID「S03」に関しては、追加部品「CD333A」、「EF543B」、及び「GH555A」の保守率の和である「3.035%」から削除部品「AB012C」の保守率である「0.82」を引いた値である「+2.215%」が優先評価値となる。
このようにして、優先評価値算出部44は、各対策に対する優先評価値を算出する。なお、対策ID「S01」の優先評価値は「+0.0024%」、対策ID「S02」の優先評価値は「+11.66%」、対策ID「S03」の優先評価値は「+2.215%」、対策ID「S04」の優先評価値は「+10.53%」となる。
このように算出された優先評価値は、その値が低い程、対策によって保守率がより低減されることを意味するため、保守性の観点からは、優先評価値が低い程優先度が高い対策であると言える。
なお、優先評価値算出部44は、優先度指標DB36に記憶された各部品に関する優先度指標そのものを各対策の優先評価値とするようにしてもよい。例えば、複数の対策が、いずれも1つの部品を追加するものである場合、各対策において追加される部品の単価あるいは保守率そのものが各対策の優先評価値となる。
図5には、設計端末16の構成概略図が示されている。設計端末16は、例えば一般的なパーソナルコンピュータである。
通信部50は、例えばネットワークアダプタなどから構成され、通信回線18を介して、設計支援ツール提供サーバ12及び部品情報管理サーバ14と通信する機能を発揮する。
記憶部52は、例えばハードディスク、ROMあるいはRAMを含んで構成される。記憶部52には、設計端末16の各部を動作させるプログラムが記憶される。
入力部54は、例えばマウスあるいはキーボードなどを含んで構成され、設計端末16に対する設計者の命令を入力するために用いられる。
表示部56は、例えば液晶パネルなどから構成され、3DCADの表示画面を含む種々の画面を表示する。
制御部58は、例えばCPUなどから構成され、記憶部52に記憶されたプログラムに従って設計端末16の各部を制御するものである。例えば、制御部58は、設計支援ツール提供サーバ12及び部品情報管理サーバ14から受信した情報に基づいて、表示部56に3DCADの表示画面を表示させる制御を行う。また、図5に示される通り、制御部58は注目部品選択部60としての機能を発揮する。
注目部品選択部60は、表示部56に表示された3DCADの表示画面に表示された部品の中から注目部品を選択する。注目部品とは、その部品に関する課題と当該課題を解決するための対策が3DCADの表示画面に表示される部品である。
注目部品選択部60は、設計者が注目していると推測される部品を注目部品として自動選択する。設計者は、ある部品に注目した場合、3DCADにおいて当該部品を拡大表示する場合が多いことに鑑み、本実施形態においては、注目部品選択部60は、3DCADの表示画面における表示面積(表示画素数)が所定値以上となった部品を注目部品として選択する。
また、注目部品選択部60は、上記所定面積を部品のサイズに応じて変更するようにしてもよい。部品の大きさはそれぞれ異なるために、一律に設定された所定面積以上の部品を注目部品を選択する場合、非常に小さい部品は注目部品として選択され難いことにもなり得る。そこで、より小さい部品は所定面積をより小さく設定し、より大きい部品は所定面積をより大きく設定するようにしておき、注目部品選択部60は、各部品がそれぞれに対応する所定面積以上となった場合に注目部品として選択するようにしてもよい。
さらに、注目部品選択部60は、3DCADの表示画面における部品の位置に基づいて注目部品を選択するようにしてもよい。例えば、設計者は、3DCADの表示画面における中央位置付近に注目している部品を表示させることが多いと考えられるため、注目部品選択部60は、表示画面の中央位置付近にある部品を注目部品としてもよい。また、部品の表示面積と表示位置を双方考慮して注目部品を選択するようにしてもよい。例えば、表示画面のより中央にある部品の面積に対してより重い重み付けをした上で、表示面積に基づく注目部品の選択を行うようにしてもよい。
あるいは、注目部品選択部60は、設計者の手動による指示に基づいて注目部品を選択するようにしてもよい。
以下、図6及び図7を参照しながら、設計端末16における部品に関する課題、及び当該課題を解決するための対策の入力方法の詳細について説明する。
図6(a)には、設計者Aが、設計端末16上で3DCADを用いて設計している場合に、表示部56に表示される3DCADの表示画面の一部が示されている。図6(a)において、黒塗りで示された部品が注目部品選択部60により選択された注目部品Prである。ここでは、注目部品Prに関する課題及び当該課題を解決するための対策が課題対策DB34にまだ登録されていないものとする。この場合、図6(a)に示される通り、3DCADの表示画面には、注目部品Prに関する既知課題が無いことが示される。それと共に、3DCADの表示画面には、設計者Aが注目部品Prに関する新課題を入力するための新課題入力ボタン70が表示される。
設計者Aが新課題入力ボタン70をクリックすると、図6(b)に示す通り、注目部品Prに関する課題内容を入力するための課題入力欄72が表示される。設計者Aは、課題入力欄72にテキストで注目部品Prに関する課題内容を入力する。
設計者Aが課題入力欄72に課題内容を入力すると(あるいは入力後別途表示されるOKボタンなどをクリックすると)、注目部品Prの部品番号と、課題入力欄72入力された課題内容が部品情報管理サーバ14へ送信される。部品情報管理サーバ14の部品情報登録部40は、設計端末16から受信した部品番号及び課題内容を関連付けて課題対策DB34の課題テーブルに登録する。
図7(a)には、設計者Aが注目部品Prに関する課題を入力した後の3DCADの表示画面の一部が示されている。注目部品Prに関する課題が入力されると、既知課題として入力された課題が表示される。なお、新課題入力ボタン70は引き続き表示されてよい。これにより、設計者Aは、注目部品Prに関する他の課題をさらに入力することができる。
ここでは、注目部品Prに関する課題を解決するための対策が課題対策DB34にまだ登録されていないので、図7(a)に示される通り、3DCADの表示画面には、注目部品Prに関する既知課題を解決するための既知対策が無いことが示される。それと共に、3DCADの表示画面には、設計者Aが注目部品Prに関する課題を解決するための新対策を入力するための新対策入力ボタン74が表示される。
設計者Aが新対策入力ボタン74をクリックすると、図7(b)に示す通り、注目部品Prに関する課題を解決するための対策内容を入力するための対策入力欄76が表示される。さらに、対策によって追加される追加部品の部品番号を入力するための追加部品入力欄78、対策によって削除される削除部品の部品番号を入力するための削除部品入力欄80、及び、当該対策の緊急度を入力するための緊急度入力欄82が表示される。設計者Aは、対策入力欄76にテキストで注目部品Prに関する課題を解決するための対策内容を入力し、追加部品入力欄78及び削除部品入力欄80の少なくとも一方に部品番号を入力し、緊急度入力欄82に緊急度を入力する。なお、図7(b)には示されていないが、さらに、当該対策に関する詳細情報を入力する詳細情報入力欄が表示されてもよく、設計者Aは、詳細情報入力欄に当該対策に関する詳細情報を入力するようにしてもよい。
設計者Aが、対策に関する入力を完了させると(あるいは入力後別途表示されるOKボタンなどをクリックすると)、注目部品Prの部品番号、課題内容、対策内容、追加部品及び削除部品の少なくとも一方の部品番号、当該対策が採用された採用製品の番号(これは3DCAD上のデータから抽出可能である)、及び緊急度レベルが部品情報管理サーバ14へ送信される。部品情報管理サーバ14の部品情報登録部40は、設計端末16から受信した部品番号及び課題内容を含む課題テーブルのレコードに対策IDを登録し、当該対策ID、受信した対策内容、追加部品及び削除部品の少なくとも一方、採用製品の番号、及び、緊急度レベルを関連付けて対策テーブルに登録する。また、対策に関する詳細情報が入力された場合には、部品情報登録部40は、対策テーブルの当該レコードに詳細リンク番号を登録し、詳細情報テーブルにおいて、登録した詳細リンク番号と受信した詳細情報とを関連付けて記憶させる。
以上のようにして、設計支援システム10を利用して設計を行う複数の設計者によって、各設計者が設計する各製品における、各部品に関する課題と当該課題を解決するための対策とが課題対策DB34に蓄積されていく。
図8には、設計者Aとは異なる製品を設計している設計者Bが、設計端末16上で3DCADを用いて設計を行っている場合に、表示部56に表示される3DCADの表示画面の一部が示されている。図8は、課題対策DB34に図3に示す内容が登録されている場合において、部品「AB012C」(図8で黒塗りで示された部品)が注目部品Prとして選択された場合の表示画面の例である。
3DCADに対する設計者Bの操作に応じて、部品「AB012C」が注目部品Prとして選択されると、注目部品Prの部品番号が設計端末16から部品情報管理サーバ14へ送信される。部品情報読出部42は、受信した部品番号をキーとして課題対策DB34の課題テーブルを検索し、部品番号「AB012C」に関連付けられた課題内容及び複数の対策IDを課題対策DB34から読み出す。
次いで、部品情報読出部42は、課題テーブルから読み出した各対策IDをキーとして対策テーブルを検索し、各対策IDに関連付けられた対策内容、削除部品番号、追加部品番号、及び採用製品を課題対策DB34の対策テーブルから読み出す。読み出された課題内容、各対策ID、各対策内容、及び各採用製品は、設計者Bが利用する設計端末16に送信される。好適には、部品情報読出部42は、各対策に関連付けられた緊急度レベルを対策テーブルから読み出して設計端末16に送信する。
優先評価値算出部44は、部品情報読出部42が読み出した、各対策の削除部品番号、追加部品番号、及び優先度指標DB36に基づいて、上述の方法によって、各対策の優先評価値を算出する。優先評価値算出部44により算出された各対策の優先評価値は、設計者Bが利用する設計端末16に送信される。
設計者Bが利用する設計端末16の表示部56(詳しくは3DCADの表示画面)には、部品情報管理サーバ14から受信した各種情報が表示される。具体的には、図8に示すように、課題対策DB34に登録された、注目部品Prに関する課題と、当該課題を解決するための複数の対策とが表示される。すなわち、1つの課題に対する複数の対策が表示される。好適には、当該課題と複数の対策が、注目部品Prに関連付けられた態様で表示される。このように、表示部56は対策表示部としても機能する。なお、ここでも、注目部品Prに関する新課題を設計者Bが入力できるように新課題入力ボタン70が表示されていてよく、さらに、既知課題に対する新対策を設計者Bが入力できるように新対策入力ボタン74が表示されていてよい。
また、各対策は、それが採用された採用製品が明確となる態様で表示される。例えば、図8の例では、「製品A:冷却ファンの追加」といったように表示される。さらに、各対策に関連付けて詳細ボタン84と採用ボタン86が表示される。
設計者Bが詳細ボタン84をクリックすると、クリックされた詳細ボタン84に対応する対策の対策IDと共に詳細情報要求が部品情報管理サーバ14に送信される。部品情報読出部42は、詳細情報要求を受信すると、共に受信した対策IDに関連付けられたリンク番号に対応する詳細情報を詳細情報テーブルから読み出して設計者Bが利用する設計端末16に送信する。そして、設計端末16の3DCADの表示画面に受信した詳細情報が表示される。
また、設計者Bが採用ボタン86をクリックすると、設計者Bが設計する製品にクリックされた採用ボタン86に対応する対策を適用することができる。
注目部品Prに関する1つの課題に対する複数の対策は、部品情報管理サーバ14の優先評価値算出部44が算出した優先評価値に応じた態様で表示される。本実施形態では、単価と保守率の2つの優先度指標を用いてそれぞれ優先評価値が算出されているから、複数の対策は、単価を用いて算出した優先評価値に応じた態様で表示され、また、保守率を用いて算出した優先評価値に応じた態様で表示される。本実施形態では、単価に基づいて算出された優先度評価値が最も低かった対策が明示されると共に、保守率に基づいて算出された優先度評価値が最も低かった対策が明示される。
具体的には、図8に示すように、複数の対策のうち、「製品E:隣接の部品ごと別部品に置き換え」が、単価を用いて算出された優先評価値が最も低かった対策であることを示すコストマーク88が表示され、複数の対策のうち、「製品A:冷却ファンの追加」が、保守率を用いて算出された優先評価値が最も低かった対策であることを示す保守性マーク90が表示される。
なお、複数の対策は、優先評価値に応じた態様で表示される限りにおいて、上述以外の方法で表示されてもよい。例えば、単価を用いて算出した優先評価値の順にソートした上で複数の対策を並べて表示し、保守率を用いて算出した優先評価値の順にソートした上で複数の対策を並べて表示してもよい。その際、設計者がいずれの優先評価値の順にソートされたものを表示するかを切り換えられるようにしておいてもよいし、2つの優先評価値の順にソートされた複数の対策を並列に表示するようにしてもよい。
好適には、部品情報管理サーバ14から受信した各対策の緊急度レベルに応じた態様で複数の対策を表示してもよい。例えば、図8に示した表示内容加え、各対策に関連付けた態様で各対策の緊急度レベルを表示するようにしてもよい。あるいは、緊急度レベルが高い対策(「例えば緊急度レベルA」)のみに、緊急度が高いことを示すマークを表示するようにしてもよい。
以上説明した通り、本実施形態に係る設計支援システム10においては、部品に関する課題と、当該課題を解決するための複数の対策が部品情報管理サーバ14に記憶される。3DCADに表示された部品の中から注目部品が選択された場合、当該注目部品が部品情報管理サーバ14に登録された部品であるならば、当該注目部品に関連付けられた課題及び複数の対策が部品情報管理サーバ14から送信され、3DCADの表示画面にそれらが表示される。そのときに、複数の対策が、優先度指標(本実施形態では単価あるいは保守率)に基づいた態様で表示される。したがって、例えば経験の少ない設計者など、表示された複数の対策から適切な対策を選択するのが難しい者にとっては、複数の対策の表示態様に基づいて、適切な対策を選択することができる。
特に、本実施形態では、コストの観点と、保守率の観点との2つの観点から優先度が高い対策が示される。これにより、設計者は、自分が設計する製品に適した観点からの優先度を適宜選択して、適切な対策を選択することができる。例えば、高級車の設計を行う設計者にとっては、コストよりも保守率を優先させた対策を選択したい場合があると考えられ、その場合は、当該設計者は、保守率の観点からの優先度に基づいて適切な対策を選択することができる。一方、大衆車の設計を行う設計者にとっては、保守率よりもコストを優先させた対策を選択したい場合があると考えられ、その場合は、当該設計者は、コストの観点からの優先度に基づいて適切な対策を選択することができる。
以下、図9に示すフローチャートに従って、設計支援システム10における処理の流れを説明する。なお、図9のフローチャートの開始時において、課題対策DB34には、部品に関する課題と、当該課題を解決するための複数の対策が関連付けられて記憶され、各対策に係る追加部品及び削除部品に関する優先度指標が優先度指標DB36に記憶されているものとする。
ステップS10において、設計端末16の注目部品選択部60は、3DCADの表示画面に表示された複数の部品の中から注目部品を選択する。選択された注目部品の部品番号は部品情報管理サーバ14に送信される。
ステップS12において、部品情報読出部42は、受信した部品番号に基づいて、課題対策DB34の課題テーブルから課題内容及び複数の対策IDを読み出す。
ステップS14において、部品情報読出部42は、ステップS12で読み出した複数の対策IDに基づいて、対策テーブルから、複数の対策に関する、対策内容、削除部品番号、追加部品番号、及び採用製品を読み出す。
ステップS16において、優先評価値算出部44は、ステップS14で読み出した各対策の削除部品番号及び追加部品番号、並びに優先度指標DB36に記憶された各部品の単価に基づいて、コストの観点からの各対策の優先評価値を算出する。
ステップS18において、優先評価値算出部44は、ステップS14で読み出した各対策の削除部品番号及び追加部品番号、並びに優先度指標DB36に記憶された各部品の保守率に基づいて、保守性の観点からの各対策の優先評価値を算出する。
ステップS12で読み出された注目部品に関する課題、ステップS14で読み出された当該課題を解決するための対策及び採用製品、並びに、ステップSS16及びS18で算出されたコストの観点及び保守性の観点からの各対策の優先評価値は、部品情報管理サーバ14から設計端末16に送信される。
ステップS20において、設計端末16の表示部56には、注目部品に関する課題が表示される。それと共に、コストの観点からの優先評価値に応じた態様、及び、保守性の観点からの優先評価値に応じた態様で複数の対策が表示される。
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態では、複数の設計者からの入力に基づいて、課題対策DB34に課題と、当該課題に対する複数の対策が蓄積される構成を取っているが、課題と複数の対策の記憶方法はこれには限られない。
また、本実施形態では、設計支援ツール提供サーバ12により3DCADが提供されていたが、設計者が利用する設計支援ツールとしては、設計端末16にインストールされるものあってもよい。
また、本実施形態は、課題及び対策の蓄積及び優先評価値を算出する部品情報管理サーバ14と、3DCADの表示画面において注目部品の課題と複数の対策を表示する設計端末16とを有するサーバ−クライアントシステムであったが、本発明は、1つの設計支援装置においても実施可能である。その場合、当該設計支援装置は、課題対策DB34、優先度指標DB36、部品情報登録部40、部品情報読出部42、優先評価値算出部44、及び、設計端末16が有する各部の機能を有する。さらに、そのような設計支援装置の記憶部には、当該設計支援装置の各部を動作させるための設計支援プログラムが記憶されており、設計支援装置は、当該設計支援プログラムに基づいて上記の各機能を発揮する。