以下、本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、下記の実施形態では、当該バルブタイミング制御装置として、吸気弁側のバルブタイミング制御装置に適用したものを例示して説明するが、もちろん排気弁側にも適用可能である。
〔第1実施形態〕
(バルブタイミング制御装置の構成)
図1〜図6は、本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置の第1実施形態を示している。なお、以下の説明では、カムシャフトCSの回転軸線Zに平行な方向を「軸方向」、カムシャフトCSの回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、カムシャフトCSの回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。また、「軸方向」については、カムシャフトCSに接続される側に相当する図2中の右側を「一端側」、左側を「他端側」として説明する。
図1は、本実施形態に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置を構成する主要な構成要素を分解して表示した、当該バルブタイミング制御装置の分解斜視図を示している。図2は、本実施形態に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置をカムシャフトの回転軸線Zに沿って切断した、当該バルブタイミング制御装置の縦断面図を示している。
図1及び図2に示すように、内燃機関のバルブタイミング制御装置は、図示外のクランクシャフトと同期回転する駆動回転体1と、カムシャフトCSと一体に回転する従動回転体2と、駆動回転体1と従動回転体2の相対回転位相を機関運転状態に応じて変更する位相変更機構と、を有する。このバルブタイミング制御装置は、図示外のエンジンのチェーンカバーCCに設けられた取付孔CC1に取り付けられる。この取付孔CC1には、チェーンカバーCCの内外をシールする第1シール部材S1が設けられている。この第1シール部材S1は、取付孔CC1の内周面と後述するモータハウジング50の外周面との間に介在し、チェーンカバーCC内の潤滑油の流出を抑制している。また、取付孔CC1の軸方向他端側の開口部は、後述するカバー部材8によって閉塞されている。
駆動回転体1は、全体が鉄系の金属材料により一体に形成されていて、内燃機関であるエンジンのクランクシャフト(図示外)から回転駆動力が伝達され、この回転駆動力に基づきクランクシャフトと同期回転する。具体的には、駆動回転体1は、円環状に形成された筒状基部11と、この筒状基部11の外周側に一体に形成される複数の歯部12と、を有する。駆動回転体1には、歯部12に巻き掛けられる図示外のタイミングチェーンを介して、クランクシャフトの回転駆動力が伝達される。また、駆動回転体1は、筒状基部11の周方向にほぼ等間隔に形成された円形のボルト貫通孔13を貫通する第1ボルトBT1を介して、後述する電動モータ5のモータハウジング50に、共締め固定されている。さらに、駆動回転体1は、筒状基部11の内周側に配置される本発明の軸受に相当する第1軸受B1を介して、従動回転体2に相対回転可能に支持されている。
第1軸受B1は、周知のボールベアリングであって、外輪B11及び内輪B12と、この外輪B11及び内輪B12の間に介在する転動体としてのボールB13と、を有する。外輪B11は、駆動回転体1のカムシャフトCS側の軸方向端部に取り付けられる第1保持プレート3により、外輪B11の軸方向の一端部が保持されている。一方、内輪B12は、従動回転体2のカムシャフトCS側の軸方向端部に取り付けられる第2保持プレート4により、内輪B12の軸方向の一端部が保持されている。
筒状基部11は、内周側が段差径状を呈し、軸方向の一端側には、第1軸受B1の外輪B11を保持する外輪保持部111が形成されている。他方、筒状基部11の内周側の軸方向他端側には、後述する複数のローラ63と噛み合う複数の内歯64が形成されている。
外輪保持部111は、従動回転体2の基部21との間で、第1軸受B1を保持する。この第1軸受B1の保持に際して、外輪保持部111の軸方向の他端縁には、外輪保持部111の軸方向の一端側から組み込まれる第1軸受B1の外輪B11が当接する段差部112が、径方向の外側へ段差拡径状に形成されている。すなわち、この段差部112によって、第1軸受B1の軸方向の位置が決定されている。
また、筒状基部11の軸方向一端側の開口部は、後述の電動モータ5により閉塞される一方、他端側の開口部は、本発明に係る保持プレートに相当するほぼ環状の第1保持プレート3と、この第1保持プレートの内周側に配置される、第2保持プレート4によって閉塞されている。なお、第1保持プレート3は、駆動回転体1と共に、複数の第1ボルトBT1によって、後述の電動モータ5に共締め固定されている。他方、第2保持プレート4は、従動回転体2と共に、カムボルトBT0によって、カムシャフトCSの軸方向の他端部に共締め固定されている。
第1保持プレート3は、中央位置にプレート収容孔30を有するほぼ円環状の第1プレート本体31に、円形の複数のボルト貫通孔32が、それぞれ軸方向に沿って形成されている。すなわち、第1保持プレート3は、各ボルト貫通孔32を貫通する複数の第1ボルトBT1を介して、駆動回転体1と共に、後述する電動モータ5のモータハウジング50に、共締め固定されている。また、この固定に際して、第1プレート本体31には、駆動回転体1との位置決めに供するピン係合孔33が形成されている。すなわち、駆動回転体1に形成された位置決め穴113に嵌合する位置決めピンP1がピン係合孔33に係合することにより、第1保持プレート3と駆動回転体1との周方向の位置が決定されている。
また、プレート収容孔30の内径は、第2プレート本体41の外径よりも若干大きく設定されている。換言すれば、第1保持プレート3(プレート収容孔30)と第2保持プレート4(第2プレート本体41)の径方向間に、所定の径方向隙間Hが形成されるようになっている。
第2保持プレート4は、ほぼ円板状の第2プレート本体41の中央位置に、軸方向一端側から他端側に向かって突出する凸部42が、縦断面ほぼクランク状に形成されている。凸部42は、後述する従動回転体2の大径部211の軸方向一端部に形成された凹部210に、嵌合可能に形成されている。他方、凸部42の裏側(軸方向の一端側)に形成される凹部43は、カムシャフトCSの端部CS1に、嵌合可能に形成されている。すなわち、凸部42が従動回転体2の凹部210に嵌合し、凹部43がカムシャフトCSの端部CS1に嵌合することによって、カムシャフトCS、第2保持プレート4及び従動回転体2の径方向の位置が決定されている。
従動回転体2は、径方向の中央位置に、ほぼ筒状の基部21を有する。基部21は、段差径状を呈し、軸方向の一端側に拡径状に形成された大径部211と、他端側に縮径状に形成された小径部212と、を有する。また、基部21の内周側に、カムボルトBT0が貫通する円形のボルト貫通孔22が、軸方向に沿って形成されている。これにより、基部21は、ボルト貫通孔22に挿入されたカムボルトBT0を介して、カムシャフトCSの端部CS1に固定されている。
大径部211の外周側には、第1軸受B1の内輪B12を保持する内輪保持部213が、駆動回転体1の外輪保持部111と対向するように形成される。内輪保持部213は、駆動回転体1の筒状基部11との間で、第1軸受B1を保持する。この第1軸受B1の保持に際して、内輪保持部213の軸方向の他端縁には、内輪保持部213の軸方向の一端側から組み込まれる第1軸受B1の内輪B12が当接するフランジ壁214が、径方向の外側へ段差拡径状に形成されている。すなわち、このフランジ壁214によって、第1軸受B1の軸方向の位置が決定されている。なお、フランジ壁214は、本発明に係る基部の一部を構成するものであって、径方向において、第1軸受B1の外輪B11とオーバーラップする位置まで延出している。換言すれば、フランジ壁214は、軸方向において、内輪B12及び外輪B11と対向するように設定されている。
また、フランジ壁214の外周縁部には、軸方向の他端側へ延び、周方向において後述する複数のローラ63を保持する転動体保持部であるローラ保持部23が、一体に形成されている。このローラ保持部23は、ほぼ筒状を呈し、周方向の所定位置に、各ローラ63を保持する矩形窓状の複数のローラ保持孔231が、径方向に開口している。これにより、ローラ63が、ローラ保持孔231に収容され、当該ローラ保持孔231内において回転可能に保持されている。
小径部212の外周側には、周知のニードルベアリングである第2軸受B2が設けられている。また、小径部212の軸方向の他端部には、後述する第3軸受B3の内輪B32を保持する内輪保持部215が、段差縮径状に形成されている。この内輪保持部215は、後述の電動モータ5の出力軸53との間で、第3軸受B3を保持する。この第3軸受B3の保持に際し、内輪保持部215の軸方向の一端縁には、内輪保持部215の軸方向の他端側から組み込まれる第3軸受B3の内輪B32が当接する段差部216が、径方向の外側に段差拡径状に形成されている。すなわち、この段差部216によって、第3軸受B3の軸方向の位置が決定されている。
前記位相変更機構は、従動回転体2に位相変更トルクを付与する電動モータ5と、この電動モータ5と従動回転体2の間に介在して、電動モータ5の回転速度を減速する減速機構6と、電動モータ5に駆動電力を供給する給電機構と、を有する。電動モータ5は、給電機構を介して供給される図示外の電子コントロールユニットからの制御電流に基づいて回転駆動される。なお、電子コントロールユニットは、例えば図示外のクランク角センサやエアフローメータ、水温センサ、スロットルセンサなど、各種センサ類から得られる機関運転状態に基づいて電動モータ5を駆動制御している。
電動モータ5は、ブラシ付きのDCモータであって、駆動回転体1と一体に回転するモータハウジング50と、このモータハウジング50の内周側に収容されたモータ要素と、を有する。モータ要素は、固定子である永久磁石51と、回転子である電機子52と、この電機子52と一体に回転する出力軸53と、この出力軸53の軸方向の他端部に配置され、電機子52への給電に供する整流子54と、を有する。
モータハウジング50は、軸方向の一端側が底壁部501により閉塞され、かつ他端側が開口するほぼ有底円筒状を呈し、軸方向の一端側には駆動回転体1が取り付けられていて、この駆動回転体1と共に一体に回転する。すなわち、モータハウジング50の軸方向の一端面には、複数の雌ねじ穴502が周方向にほぼ等間隔に形成されていて、駆動回転体1を貫通する第1ボルトBT1が雌ねじ穴502にねじ込まれることによって、駆動回転体1が共締め固定されている。他方、モータハウジング50の軸方向の他端側は、給電機構の一部を構成する後述の給電プレート7によって閉塞されている。
また、モータハウジング50の底壁部501の中央位置には、出力軸53が貫通する断面円形の軸貫通孔503が形成されていて、この軸貫通孔503を通じて出力軸53が駆動回転体1の内周側へ臨むようになっている。そして、この駆動回転体1の内周側へ臨んだ出力軸53の軸方向一端部が、減速機構6に接続されている。なお、軸貫通孔503の減速機構6側の孔縁には、モータハウジング50の内周側に形成されるモータ要素収容部Rを液密にシールする第1シール部材S1が設けられている。すなわち、この第1シール部材S1によって、減速機構6側からモータ要素収容部R内への潤滑油の流入が抑止されている。
永久磁石51は、周方向に所定の間隔をもって配置されることで全体がほぼ円筒状に形成され、周方向に複数の磁極を有していて、モータハウジング50の内周面に固定されている。なお、この永久磁石51は、電機子52に対して給電プレート7側に若干オフセットした状態で、配置されている。
電機子52は、後述する出力軸53の大径部211の外周に一体回転可能に固定された可動鉄心であるロータ521と、このロータ521に巻かれた複数のコイル522と、を有する。この電機子52は、永久磁石51の内周側に、微小隙間を隔てて回転可能に配置されていて、コイル522が整流子54を介して給電プレート7と電気的に接続されることによって、通電が可能となっている。
出力軸53は、段差径状を有する円筒状を呈し、軸方向の一端側に拡径状に形成された大径部531と、他端側に縮径状に形成された小径部532と、を有する。大径部531の内周側であって、従動回転体2の内輪保持部213と径方向に対向する軸方向の位置に、第3軸受B3の外輪B31を保持する外輪保持部533が、段差拡径状に形成されている。これにより、出力軸53は、第3軸受B3を介して従動回転体2(小径部212)に回転可能に支持されている。また、この出力軸53のカムシャフトCS側の軸方向端部には、出力軸53の一般部と異なる軸心を有する偏心軸部61が一体に形成されている。
減速機構6は、電動モータ5の出力軸53の軸方向一端部に形成された偏心軸部61と、この偏心軸部61の外周面に固定されたボールベアリングである大径軸受62と、この大径軸受62の外周側を転動する複数のローラ63と、このローラ63と噛み合う駆動回転体1の内歯64とを有する。
また、減速機構6の内部には、潤滑油供給機構を通じて、図示外のエンジンの内部を通流する潤滑油が供給される。この潤滑油供給機構は、カムシャフトCSの内部に形成された導入通路CS2と、第2保持プレート4の凸部42を貫通する連通孔44と、従動回転体2の大径部211に形成された油孔24と、を有する。導入通路CS2は、カムシャフトCSの内部に軸方向に沿って形成され、エンジンの内部に形成される図示外のメインオイルギャラリより潤滑油を導く。連通孔44は、第2保持プレート4の凸部42を軸方向に沿って貫通して、導入通路CS2と油孔24とを連通する。油孔24は、従動回転体2の大径部211を軸方向に沿って貫通し、連通孔44を介して導かれた潤滑油を、ローラ保持部23の内周側へ導く。
そして、ローラ保持部23の内周側に導かれた潤滑油は、出力軸53の内周側及び外周側に導かれる。すなわち、出力軸53の内周側に導かれた潤滑油は、第2軸受B2の外周側を通流し、第3軸受B3側へと導かれて、第2軸受B2及び第3軸受B3を潤滑する。他方、出力軸53の外周側に導かれた潤滑油は、大径軸受62の内部を通流し、ローラ63(ローラ保持部23)の外周側を通じて第1軸受B1側へ導かれて、大径軸受62及び第1軸受B1を潤滑する。
なお、ローラ保持部23の外周側から第1軸受B1側へと導かれた潤滑油は、後述する溝部25(図6参照)を通じて第1軸受B1の内部に供給され、この第1軸受B1の内部を通流した後、第1保持プレート3と第2保持プレート4との径方向隙間Hを通じて外部へと排出される。ここで、駆動回転体1(筒状基部11)の内周側と従動回転体2(ローラ保持部23)の外周側との径方向間に形成される油通路Mが、本発明に係る潤滑油通路に相当する。
給電機構は、モータハウジング50の軸方向他端側の開口部を塞ぐように配置され、電機子52に給電する給電プレート7と、この給電プレート7の外側面(軸方向他端側の端面)を覆うように配置され、給電プレート7に図示外の電子コントロールユニットの制御電流を供給するカバー部材8と、を有する。すなわち、カバー部材8が図示外の電子コントロールユニットに電気的に接続され、当該カバー部材8を介して給電プレート7に電子コントロールユニットの制御電流が供給される。そして、この給電プレート7に供給された制御電流は、整流子54を介して電機子52に供給される。
給電プレート7は、鉄系金属材料によりほぼ円板状に形成された芯材71と、この芯材71の両側面に一体的に設けられた樹脂製の内側絶縁部721及び外側絶縁部722と、を有する。芯材71は、内側絶縁部721及び外側絶縁部722に覆われていない外周縁部が、モータハウジング50の軸方向他端側の開口部の内周面に形成された凹溝に、かしめ固定されている。また、芯材71の中央位置には、電動モータ5の出力軸53が貫通する円形の軸貫通孔710が、軸方向に沿って貫通している。
軸貫通孔710の内側絶縁部721側の外周域には、周方向の所定位置に、径方向の内側に開口するほぼ角筒状のブラシホルダ731、732、733、734が取り付けられている。そして、このブラシホルダ731、732、733、734には、それぞれ整流子54に対して外周側から摺接可能な切換用ブラシ741、742、743、744と、この切換用ブラシ741、742、743、744を整流子54側へ付勢するスプリング751、752、753、754と、が収容されている。
また、給電プレート7の外側絶縁部722には、後述の1対の給電用ブラシ871、872と対向する位置に、1対のスリップリング761、762が、内外周に2重に設けられている。なお、各スリップリング761、762は、図示外のハーネスを介して各切換用ブラシ741、742、743、744と電気的に接続されている。
カバー部材8は、給電プレート7の軸方向の他端側に対向して配置され、給電プレート7の外側面を覆うカバー本体81と、このカバー本体81の外側部を覆うカバー部82と、を有する。そして、このカバー部材8は、後述の複数のボス部813a、813b、813c、813dを介して、チェーンカバーCCに、第2ボルトBT2により締結されている。なお、この際、カバー部材8(カバー本体81)の内側面とチェーンカバーCCの外側面との間には、ゴム製の第2シール部材S2が介在している。これにより、カバー部材8とチェーンカバーCCとの間に形成される微小隙間を通じた、外部からの水や粉塵の侵入が抑制されている。
カバー本体81は、合成樹脂材料(例えばポリフェニレンサルファイド)によって形成された樹脂部811と、この樹脂部811の内部に埋設され、金属材料(例えばアルミニウム合金)によって形成された芯金812と、を有する。樹脂部811は、ほぼ円板状を呈し、外周縁部の周方向の所定位置に、径方向の外側へ延出する複数のボス部813a、813b、813c、813dを有する。このボス部813a、813b、813c、813dには、それぞれ軸方向に沿って形成され、カバー部材8の固定に供する第2ボルトBT2が貫通するボルト貫通孔814と、金属材料によってほぼ円筒状に形成され、ボルト貫通孔814に収容され保持されたスリーブ83と、を有する。なお、複数のスリーブ83のうち、一部のスリーブ83は、内部で芯金812と接続されていて、この芯金812に接続された一部のスリーブ83が、第2ボルトBT2を介してチェーンカバーCCに接地することにより、電気的なグランドとして機能している。
また、所定のボス部813b、813cの周方向の間には、ほぼ角筒状に形成された給電用コネクタ815及び通信用コネクタ816が、それぞれ径方向の外側(図2中の下側)に向けて突出形成されている。給電用コネクタ815は、カバー本体81の内部に埋設された図示外の端子片の一端部が、それぞれ後述する給電用ブラシ871、872の基端部に接続されるピグテールハーネス841、842(図5参照)に電気的に接続されると共に、外部に臨む他端部が、図示外の電子コントロールユニット側の雄コネクタ端子に接続される。他方、通信用コネクタ816は、カバー本体81の内部に埋設された端子片852の一端部が、後述する制御基板921に電気的に接続されると共に、外部に臨む他端部が、図示外の電子コントロールユニット側の雄コネクタ端子に接続される。
また、カバー本体81には、ほぼ中央位置に、後述する角度センサ9を受容するセンサ受容部817が、貫通形成されている。そして、このセンサ受容部817のカバー部82側の孔縁には、後述する制御基板921が取り付けられている。
カバー部82は、合成樹脂材料によりカバー本体81へ開口する縦断面ほぼU字形状、かつカバー本体81の軸方向の他端側に形成されたカバー保持溝818(図5参照)の内周側形状に沿った形状に形成されている。そして、このカバー部82は、外周縁部に一体に形成された係止凸部821がカバー保持溝818に係止することによって、カバー本体81に固定されている。
また、カバー本体81のセンサ受容部817と出力軸53との間に、出力軸53の回転角度位置を検出する角度検出機構である角度センサ9が設けられている。この角度センサ9は、いわゆる電磁誘導型のセンサであって、出力軸53に設けられた被検出部91と、カバー本体81のほぼ中央部に設けられ、被検出部91に発生した誘導電流(渦電流)に基づいて発生する誘導起電力を検出する検出部92と、から構成されている。
被検出部91は、合成樹脂材料によって形成された筒状基部911と、この筒状基部911の外側底面に設けられ、導電性材料により薄板状に形成された被検出ロータ912と、を有する。筒状基部911は、ほぼ有底円筒状を呈し、出力軸53の軸方向他端部の内周面に圧入によって固定される。被検出ロータ912は、三つ葉形状に形成された薄板状の導電性金属板が、筒状基部911の外側底面に、一体回転可能に固定されている。
検出部92は、カバー本体81に設けられた長方形状の制御基板921と、制御基板921の長手方向の一端部に設けられた集積回路(ASIC)922と、制御基板921の長手方向の他端部に設けられた図示外の発振コイル及び検出コイルと、を有する。これにより、検出部92では、図示外の発振コイルに高周波電流を印加することにより生ずる高周波磁界(発振コイルから被検出ロータ912へ向かう磁束)に基づいて被検出ロータ912の表面に誘導電流としての渦電流が流れる。すると、この渦電流の電磁誘導作用により発生する逆向きの磁束に基づいて図示外の検出コイルに誘導起電力が生ずる。その結果、出力軸53の回転に伴う被検出ロータ912と検出コイルとの距離(ギャップ)の変化に基づく前記誘導起電力の変化(インダクタンスの変化)を検出して、これを集積回路922にて角度演算することにより、出力軸53の回転角度が検出される。そして、この検出結果は、図示外の電子コントロールユニットに出力される。
チェーンカバーCCは、アルミニウム合金材料により一体に形成されていて、図示外のシリンダブロックから突出する駆動回転体1やこれに巻き掛けられる図示外のタイミングチェーンを覆うように配置される。そして、このチェーンカバーCCは、図示外のシリンダヘッドに、図示外のボルトにより締結される。また、チェーンカバーCCには、軸方向の他端面であって取付孔CC1の外周域に、複数の雌ねじ穴CC2が形成され、この雌ねじ穴CC2にねじ込まれる第2ボルトBT2を介して、カバー部材8が締結される。
図3は、図2のA−A線に沿って切断した内燃機関のバルブタイミング制御装置のA−A線断面図を示している。
図3に示すように、第1保持プレート3は、中央位置にプレート収容孔30を有するほぼ円環状の第1プレート本体31に、6つのボルト貫通孔32が、周方向にほぼ等間隔に形成されている。そして、この第1保持プレート3は、各ボルト貫通孔32を貫通する複数の第1ボルトBT1を介して、駆動回転体1と共に、電動モータ5のモータハウジング50に、共締め固定されている(図2参照)。また、この固定に際して、第1プレート本体31の周方向の所定位置に、ピン係合孔33が形成されている。すなわち、駆動回転体1に形成された位置決め穴113に嵌合する位置決めピンP1がピン係合孔33に係合することにより、第1保持プレート3と駆動回転体1との周方向の位置が決定されている。
また、プレート収容孔30の内径は、第2プレート本体41の外径よりも若干大きく設定されている。換言すれば、第1保持プレート3(プレート収容孔30)と第2保持プレート4(第2プレート本体41)の径方向間に、所定の径方向隙間Hが形成されるようになっている。
また、プレート収容孔30の周方向の所定範囲には、第2プレート本体41の外周縁に形成された規制凹部45に係止可能な規制凸部34が、一体に形成されている。これにより、規制凸部34の周方向の側端341、342が対向する規制凹部45の周方向の側端451、452と当接することで、第1保持プレート3と第2保持プレート4との相対的な移動が規制されるようになっている。換言すれば、規制凹部45の周方向の範囲内において、駆動回転体1とカムシャフトCSの相対回転が許容されている。なお、規制凸部34は、規制凹部45との当接に係る強度(耐久性)向上のため、浸炭焼き入れされている。
さらに、規制凸部34は、第1プレート本体31の内周側から径方向の内側へ向かって、段差なく当該径方向に沿って直線状に延出されている。換言すれば、規制凸部34は、軸方向の両端面において、第1プレート本体31の内周側から平坦状に連続して形成されている。
また、カムシャフトCSには、導入通路CS2が、軸方向に沿って形成されている。この導入通路CS2は、第2保持プレート4の連通孔44(図2参照)に接続されていて、この連通孔44を通じて、図示外のメインオイルギャラリから導かれた潤滑油が、従動回転体2の油孔24(図2参照)に導入される。
図4は、図2のB−B線に沿って切断した内燃機関のバルブタイミング制御装置のB−B線断面図を示している。
図4に示すように、駆動回転体1は、ほぼ円筒状に形成された筒状基部11の外周側に、複数の歯部12を有する。すなわち、この駆動回転体1には、歯部12に巻き掛けられる図示外のタイミングチェーンを介して、図示外のクランクシャフトからの回転駆動力が伝達される。そして、この駆動回転体1は、周方向にほぼ等間隔に配置される6つの第1ボルトBT1により、電動モータ5に締結されている。また、駆動回転体1の筒状基部11には、複数のローラ63と噛み合う複数の内歯64が、横断面ほぼ波形状に形成されている。
従動回転体2のローラ保持部23には、周方向に複数のローラ保持孔231が開口し、各ローラ保持孔231に、大径軸受62の外周面を転動するローラ63が、回転可能に保持されている。ローラ保持孔231は、駆動回転体1の内歯64よりも少ない数に設定されていて、これによって電動モータ5の出力軸53の回転速度が減速される。
大径軸受62の外輪621の外周面と、駆動回転体1の内歯64の内周面との間には、ローラ63の直径以上の径方向隙間が形成されている。すなわち、この径方向隙間に基づいて、偏心軸部61の回転に伴い大径軸受62が偏心動することにより、ローラ63が径方向に移動して内歯64と噛み合い、これによって駆動回転体1の回転駆動力が従動回転体2へと伝達される。
より具体的には、減速機構6は、出力軸53の偏心軸部61の1回転につき各ローラ63と各内歯64との噛合位置が1つ(1歯分)ずれる構成となっている。そして、かかる構成から、電動モータ5の出力軸53の回転が従動回転体2に減速して伝達され、当該電動モータ5の出力軸53の回転に基づいて、従動回転体2が駆動回転体1に対して相対回転する。
図5は、図2に示すカバー本体81を図2中のC方向から見た斜視図を示している。
図5に示すように、カバー本体81は、ほぼ円板状を呈し、外周縁部には、径方向の外側へ延出するほぼフランジ状の4つのボス部813a、813b、813c、813dが、合成樹脂材料により樹脂部811と一体に形成されている。ボス部813a、813b、813c、813dには、カバー部材8の固定に供する第2ボルトBT2が、貫通するボルト貫通孔814が形成されると共に、このボルト貫通孔814には、ほぼ円筒状に形成された金属製のスリーブ83が、収容され保持されている。すなわち、合成樹脂製のボス部813a、813b、813c、813dのボルト貫通孔814に、金属製のスリーブ83がインサート成形されていて、このスリーブ83により、第2ボルトBT2の軸力を受け、ボス部813a、813b、813c、813dの座屈が抑制されている。また、この際、第2ボルトBT2の頭部が着座する各ボルト貫通孔814の孔縁は、段差状に切り欠かれていて、一般部(樹脂部811)よりも若干薄肉に形成されている。
また、ボス部813a、813b、813c、813dのうち、図5中の下側に位置する2つのボス部813b、813cには、カバー本体81をチェーンカバーCCに取り付ける際の周方向の位置決めに供する図示外のピンが貫通するピン貫通孔819が、ボルト貫通孔814に隣接して設けられている。
さらに、図5中の下側に位置する2つのボス部813b、813cの周方向の間には、図示外の電子コントロールユニットとの接続に供するほぼ角筒状の給電用コネクタ815及び通信用コネクタ816が、それぞれ径方向の外側(図5中の下側)へ向かって突出するように設けられている。
また、カバー本体81の外側面には、直立する内周壁及び外周壁によって、カバー保持溝818が形成されている。このカバー保持溝818の内周域には、検出部92を構成する各種の電子部品を収容する電装収容部810が形成されている。
また、カバー本体81は、電装収容部810の範囲内であって、各スリップリング761、762と軸方向に対向する位置に、1対のブラシ保持孔81a、81bを有する。このブラシ保持孔81a、81bには、それぞれ金属材料、例えば銅によってほぼ角筒状に形成されたブラシホルダ861、862が取り付けられている。
ブラシホルダ861、862には、それぞれ給電用ブラシ871、872が、摺動可能に収容されている。この給電用ブラシ871、872は、先端側が、給電プレート7側へ臨むと共に、基端側が、それぞれ樹脂部811に取り付けられる捩りコイルばね881、882によって、給電プレート7側に付勢されている。これにより、各給電用ブラシ871、872は、給電プレート7側に臨んだ先端部が、対向するスリップリング761、762と摺接する。
捩りコイルばね881、882は、ばね力の発生に供する巻き線部881a、882aが、電装収容部810に形成された収容溝810a、810bに収容され、給電用ブラシ871、872に隣接して配置されている。そして、この捩りコイルばね881、882は、一端部881b、882bが給電用ブラシ871、872に弾性的に当接する一方、他端部881c、882cがカバー本体81に設けられるリテーナ891、892によって保持されている。
また、ブラシホルダ861、862には、基端部(カバー部82側の端部)に接続されるピグテールハーネス841、842を介して給電される。具体的には、ピグテールハーネス841、842の一端部が、給電用コネクタ815の端子片851の一端部に電気的に接続され、他端部がブラシホルダ861、862の基端部に電気的に接続されている。
また、給電用コネクタ815の端子片851には、電磁ノイズ抑制機構80が設けられている。この電磁ノイズ抑制機構80は、通電されることによって周囲に磁場を発生させる2つのインダクタ801と、容量性素子である2つのコンデンサ802と、を有する。
インダクタ801は、円柱状の鉄心803の外周にコイル804が巻き回されることで形成されている。コイル804の一端部は、給電用コネクタ815の端子片851の一方の接続部851aに接続され、他端部は、端子片851の他方の接続部851bに接続されている。
各コンデンサ802は、それぞれ2本の脚端子805a、805bのうち、一方側の脚端子805aが、端子片851の他方側の接続部851bに電気的に接続され、他方側の脚端子805bが、樹脂部811から露出した芯材71に電気的に接続されている。
通信用コネクタ816は、カバー本体81の径方向に沿って給電用コネクタ815と平行に突出している。そして、この通信用コネクタ816は、複数の端子片852を有している。この端子片852のうち、外部に露出した3つの端子片852の一端部852aが、制御基板921に実装されている集積回路922に接続される一方、当該3つの端子片852の他端部852bは、図示外の電子コントロールユニットの雄コネクタ端子に接続される。
図6は、図2の要部拡大図であって、図2中の第1軸受B1近傍を拡大して表示した図2のD部拡大図を示している。
図6に示すように、径方向において互いに対向するように設けられる、駆動回転体1の外輪保持部111と従動回転体2の内輪保持部213との間には、第1軸受B1が配置される。第1軸受B1は、外輪B11及び内輪B12と、この外輪B11及び内輪B12の間に介在する転動体であるボールB13と、このボールB13を保持する保持器B14と、を有する。
第1軸受B1の外輪B11は、駆動回転体1の段差部112に当接するようにして組み付けられ、第1軸受B1の内輪B12は、従動回転体2のフランジ壁214に当接するようにして組み付けられる。これにより、第1軸受B1の軸方向の位置が決定されている。
ここで、段差部112に隣接する外輪保持部111には、外輪保持部111側(外輪B11から離間する側)へ凹む第1逃げ溝114が、周方向に沿って全周にわたって形成されている。同様に、フランジ壁214の基端部であって、フランジ壁214と内輪保持部213との境界には、フランジ壁214側及び内輪保持部213側(内輪B12から離間する側)へ凹む第2逃げ溝217が、周方向に沿って全周にわたって形成されている。すなわち、第1逃げ溝114によって、外輪B11と段差部112の確実な当接が確保されると共に、第2逃げ溝217によって、内輪B12とフランジ壁214の確実な当接が確保されている。
フランジ壁214は、径方向において第1軸受B1の外輪B11とオーバーラップする位置まで延出している。換言すれば、フランジ壁214は、軸方向において内輪B12及び外輪B11と対向するように設定されている。また、フランジ壁214は、ローラ保持部23との内側境界部であって、当該ローラ保持部23の内周面と、フランジ壁214の第1軸受B1と対向しない側の軸方向端面214a(大径軸受62側の端面)との間に、第1軸受B1側へ凹む曲面である第3逃げ溝218を有する。第3逃げ溝218は、周方向に沿って全周にわたって形成されている。さらに、フランジ壁214は、ローラ保持部23との外側境界部であって、フランジ壁214の外周縁部に、第1軸受B1から離間する側へ凹む溝部25を有する。
溝部25は、周方向の全域に、フランジ壁214の外側面に形成された段差によって形成されている。また、この溝部25は、径方向において、フランジ壁214の外周側(径方向外側)から内輪B12と外輪B11の間の位置まで延びるように形成されている。なお、溝部25は、従動回転体2を成型した後に行う機械加工によって形成される。また、溝部25の内側端部(径方向内側の端部)であって、溝部25とフランジ壁214の軸受当接面214bとの間に、第1軸受B1側に向かって曲がるアール状の曲面25aが形成されている。この曲面25aは、縦断面ほぼ円弧状を呈し、比較的緩やかな曲率に設定され、フランジ壁214側から第1軸受B1側に向かって滑らかに曲がるように形成されている。
また、溝部25の外側端部(径方向外側の端部)であって、当該溝部25とローラ保持部23の外周面との間に、第1軸受B1側へ向かって下り傾斜する(第1軸受B1側の直径が縮小する)テーパ面26が形成されている。このテーパ面26は、周方向の全域にわたって形成され、第1軸受B1側に向かって徐々に縮径する円錐テーパ面である。そして、テーパ面26は、テーパ面26と溝部25との間に形成される角部Cが、第1軸受B1の外輪B11と内輪B12との間であって、かつ外輪B11の内周面の近傍に位置するように設定されている。換言すれば、テーパ面26は、角部Cが、径方向において、第1軸受B1の外輪B11とのオーバーラップ量が少なくなるように形成されている。
以上のような構成から、従動回転体2のフランジ壁214と第1軸受B1との間に、テーパ面26及び溝部25によって形成される軸方向隙間Sが、一連の油通路を構成する。すなわち、大径軸受62の内部を通じてローラ保持部23の外周側、すなわち油通路Mに導かれた潤滑油は、テーパ面26及び溝部25により形成される前記一連の油通路を通じて、第1軸受B1の内部へ導かれ、当該第1軸受B1を潤滑する。
(バルブタイミング制御装置の作動説明)
まず、機関始動時においては、バルブタイミング制御装置は、最遅角状態に制御されていて、図示外のスタータモータによりクランクシャフトが回転駆動されることで、図示外のタイミングチェーンを介して駆動回転体1が回転する。すると、この駆動回転体1の回転力に基づきモータハウジング50が同期回転する。そして、駆動回転体1の回転力が、減速機構6と当該減速機構6に連係する従動回転体2とを介してカムシャフトCSに伝達され、カムシャフトCSのカムが回転することによって、図示外の吸気弁が開閉作動する。このように、機関始動時等においては、バルブオーバーラップをなくすように制御することによって、排気ガスの吸入ポートへの吹き返しを抑制し、始動性を向上させることができる。
続いて、機関始動後の機関運転時では、図示外の電子コントロールユニットの制御信号に基づき電動モータ5が回転駆動されることにより、電動モータ5の回転力が、減速機構6を介してカムシャフトCSに伝達される。これにより、駆動回転体1に対してカムシャフトCSが正逆に相対回転し、当該駆動回転体1とカムシャフトCSとの相対回転位相が変更されて、図示外の吸気弁の開閉タイミング(バルブタイミング)が所望のタイミングへと変更される。具体的には、例えば運転負荷の上昇に応じてバルブタイミング制御装置を進角状態に制御することによって、バルブオーバーラップ量を増大させる。かかる制御により、トルク向上のほか、内部EGRの増加による排気エミッションの向上やポンピングロスの低減による燃費向上など、運転状態に応じた燃焼の最適化が可能となる。
(本実施形態の作用効果)
前記従来の内燃機関のバルブタイミング制御装置においては、従動回転体のローラ保持部の外周側を通じて、当該従動回転体を回転支持する第1軸受に、潤滑油を導いている。この潤滑油の導入にあたり、第1軸受とこれに対向する従動回転体のフランジ壁との間に十分な流路を確保するべく、第1軸受の外輪の内周側であって従動回転体のフランジ壁と対向する側の端部に、凹溝が形成されていた。
しかしながら、前記凹溝が第1軸受の外輪に設けられていることによって、第1軸受が専用品となってしまい、バルブタイミング制御装置の製造コストが増大化してしまう問題があった。
また、前記従来の内燃機関のバルブタイミング制御装置では、従動回転体のフランジ壁とローラ保持部との接続部の外側に、凹溝に対向するように、第1軸受側に向かって下り傾斜するテーパ面が形成されている。そこで、前記凹溝を廃止して、代わりにテーパ面を大きく(深く)形成することで、潤滑油の流路を確保することも考えられる。
しかしながら、前記テーパ面が大きく形成されると、その分、フランジ壁とローラ保持部との接続部の肉厚が薄くなって、ローラ保持部の剛性が低下してしまう。これにより、駆動回転体と従動回転体との相対回転に伴いローラ保持部に作用する捩れ入力に対する剛性が低下し、装置の耐久性が低下してしまうおそれがある。
これに対し、本実施形態に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置では、以下の効果が奏せられることで、前記従来の内燃機関のバルブタイミング制御装置の課題を解決することができる。
すなわち、前記内燃機関のバルブタイミング制御装置は、図示外のクランクシャフトからの回転力が伝達されることでカムシャフトCSの回転軸線Z周りに回転する駆動回転体1と、カムシャフトCSに固定され、駆動回転体1の回転に伴って従動回転する従動回転体2と、駆動回転体1の内周側に形成された段差部112に当接するように外輪B11が固定され、従動回転体2の外周側に内輪B12が固定された軸受である第1軸受B1と、出力軸53を介して伝達される回転力をもって駆動回転体1に対する従動回転体2の相対回転位相を制御する電動モータ5と、出力軸53に設けられ、回転軸線Zに対して偏心して設けられた偏心カムを構成する偏心軸部61と、駆動回転体1の内周側に形成され、回転軸線Zに直交する径方向において偏心軸部61と対向する内歯64と、内歯64と偏心軸部61との間に配置された複数の転動体であるローラ63と、従動回転体2において径方向へ延びるように形成され、回転軸線Zの方向において第1軸受B1の内輪B12及び外輪B11と対向し、内輪B12が当接する基部21のフランジ壁214と、フランジ壁214の外周側に有し、ローラ63の径方向の移動を許容すると共に、ローラ63の回転軸線Z周りの移動を規制する転動体保持部であるローラ保持部23と、フランジ壁214において第1軸受B1と回転軸線Zの方向に対向する部位に設けられ、フランジ壁214の径方向の外側から内輪B12と外輪B11の間まで延びる溝部25と、駆動回転体1と従動回転体2の間に形成され、ローラ保持部23に潤滑油を供給する潤滑油通路である油通路Mと、を有する。
このように、本実施形態では、フランジ壁214の第1軸受B1と軸方向に対向する部位に溝部25が設けられていることによって、フランジ壁214と第1軸受B1との軸方向間に、潤滑油の流路を形成することができる。そして、溝部25は、フランジ壁214の径方向の外側から内輪B12と外輪B11との間の径方向位置まで延びるように設けられているため、当該溝部25により、第1軸受B1の内部(内輪B12と外輪B11との間)まで、十分な流量の潤滑油を供給することができる。換言すれば、溝部25の内端側に隣接する軸受当接面214bと第1軸受B1の外輪B11との間に絞り(オリフィス)が形成されることなく、十分な流量の潤滑油を第1軸受B1の内部に供給することができる。
なお、溝部25については、溝状に形成されている必要はなく、例えばフランジ壁214に形成された段差によって構成されていてもよい。換言すれば、本発明に係る溝部には、上記本実施形態の作用効果を奏し得る、あらゆる態様が含まれる。
そして、本実施形態では、溝部25が設けられていることにより、前記従来の内燃機関のバルブタイミング制御装置に係る凹溝を廃止でき、第1軸受B1が専用品となることもない。よって、バルブタイミング制御装置の製造コストの増大化を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、溝部25が設けられているため、テーパ面26を大きく(深く)確保する必要もない。よって、ローラ保持部23の剛性が確保され、バルブタイミング制御装置の耐久性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態では、ローラ保持部23の外周面と溝部25との間に、第1軸受B1側の直径が縮小するテーパ面26を有する。
このように、本実施形態では、ローラ保持部23の外周面と溝部25との間に、第1軸受B1側に下り傾斜するテーパ面26が形成されているため、このテーパ面26と外輪B11との間に、より大きな流路を確保することができる。これにより、溝部25を単体で設ける場合と比べて、第1軸受B1の高い潤滑性を確保することができる。
また、本実施形態では、テーパ面26は、該テーパ面26と溝部25との間に形成される角部Cが外輪B11の内周面の近傍に位置するように設定されている。
例えばテーパ面26と溝部25の間に形成される角部Cが外輪B11の内周面よりも径方向外側に位置する場合、溝部25と外輪B11がオーバーラップする範囲が大きくなる結果、溝部25と外輪B11の間の流路断面積が比較的小さくなってしまう。反対に、テーパ面26と溝部25の間に形成される角部Cが外輪B11の内周面よりも径方向内側に位置する場合には、テーパ面26が大きく(深く)なり、ローラ保持部23の剛性の低下を招来してしまう。
これに対して、本実施形態では、テーパ面26と溝部25の間に形成される角部Cが外輪B11の内周面の近傍に位置するように設定されていることで、テーパ面26の大きさを抑制しつつ、角部Cと外輪B11のオーバーラップ量を最小限に抑えることができる。これにより、ローラ保持部23の剛性を確保しつつ、潤滑油の流量を稼ぐことが可能となり、ローラ保持部23の剛性確保と、潤滑油の流量確保との両立を図ることができる。
また、本実施形態では、フランジ壁214の内輪B12との当接面である軸受当接面214bと溝部25との間に、第1軸受B1側に向かって曲がる曲面25aを有する。
このように、本実施形態では、軸受当接面214bと溝部25の間に、第1軸受B1側に向かって曲がる曲面25aが形成されているため、溝部25を通流する潤滑油の流れを、曲面25aによって、第1軸受B1側へ緩やかに変化させることができる。これにより、潤滑油が、第1軸受B1側へよりスムーズに導かれ、第1軸受B1の潤滑性を向上させることができる。
また、本実施形態では、ローラ保持部23の内周面と、フランジ壁214の回転軸線Zの方向において第1軸受B1と対向しない側の端面との間に、第1軸受B1側に凹む曲面である第3逃げ溝218を有する。
このように、本実施形態では、ローラ保持部23の内周面とフランジ壁214の内側面との接続部に第3逃げ溝218が形成されているため、当該接続部が角部となる場合と比べて、当該接続部が肉盛りされて、当該接続部の肉厚を増大させることができる。これにより、ローラ保持部23の剛性をさらに向上させることができる。
〔第2実施形態〕
図7は、本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置の第2実施形態を示す。なお、本実施形態では、前記第1実施形態における溝部25の態様を変更したものであり、それ以外の他の構成については、前記第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
図7は、本発明の第2実施形態を表した要部拡大図であって、第1軸受B1近傍を拡大して表示した、図6に相当する要部拡大図を示している。なお、本図の説明では、カムシャフトCSの回転軸線Zに平行な方向を「軸方向」と、カムシャフトCSの回転軸線Zに直交する方向を「径方向」と、カムシャフトCSの回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。
図7に示すように、本実施形態に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置においては、本発明に係る溝部が、当該溝部とフランジ壁214の内輪B12との当接面である軸受当接面214bとの間の劣角θが鈍角となるテーパ面27によって形成されている。このテーパ面27は、周方向の全域に、従動回転体2の成型と同時に形成される。
このように、本実施形態では、テーパ面27により、ローラ保持部23の内周面とフランジ壁214の外側面(軸受当接面214b)との接続部が、第1軸受B1側に向かって下り傾斜状に形成されている。これにより、フランジ壁214と外輪B11との間に形成される潤滑油の流路を、より簡便に拡大することができる。
また、テーパ面27としたことで、前記第1実施形態に係る溝部25のように機械加工を施す必要がなくなり、装置の生産性の向上が図れると共に、装置の製造コストの増大化をさらに抑制することができる。換言すれば、テーパ面27によって、より低コストでもって、潤滑油の流路を容易に確保することができる。
本発明は、前記実施形態等の構成に限定されるものではなく、本発明の作用効果を奏し得る範囲内であれば、適用する内燃機関の仕様等に応じて自由に変更可能である。
以上説明した実施形態等に基づく内燃機関のバルブタイミング制御装置としては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
すなわち、当該内燃機関のバルブタイミング制御装置は、その1つの態様において、クランクシャフトからの回転力が伝達されることでカムシャフトの回転軸線周りに回転する駆動回転体と、前記カムシャフトに固定され、前記駆動回転体の回転に伴って従動回転する従動回転体と、前記駆動回転体の内周側に形成された段差部に当接するように外輪が固定され、前記従動回転体の外周側に内輪が固定された軸受と、出力軸を介して伝達される回転力をもって前記駆動回転体に対する前記従動回転体の相対回転位相を制御する電動モータと、前記出力軸に設けられ、前記回転軸線に対して偏心して設けられた偏心カムと、前記駆動回転体の内周側に形成され、前記回転軸線に直交する径方向において前記偏心カムと対向する内歯と、前記内歯と前記偏心カムとの間に配置された複数の転動体と、前記従動回転体において前記径方向へ延びるように形成され、前記回転軸線の方向において前記軸受の内輪及び外輪と対向し、前記内輪が当接する基部と、前記基部の外周側に有し、前記転動体の前記径方向の移動を許容すると共に、前記転動体の前記回転軸線周りの移動を規制する転動体保持部と、前記基部において前記軸受と前記回転軸線の方向に対向する部位に設けられ、前記基部の前記径方向の外側から前記内輪と前記外輪の間まで延びる溝部と、前記駆動回転体と前記従動回転体の間に形成され、前記転動体保持部に潤滑油を供給する潤滑油通路と、を有する。
前記内燃機関のバルブタイミング制御装置の好ましい態様において、前記転動体保持部の外周面と前記溝部との間に、前記軸受側の直径が縮小するテーパ面を有する。
別の好ましい態様では、前記内燃機関のバルブタイミング制御装置の態様のいずれかにおいて、前記テーパ面は、該テーパ面と前記溝部との間に形成される角部が前記外輪の内周面の近傍に位置するように設定されている。
さらに別の好ましい態様では、前記内燃機関のバルブタイミング制御装置の態様のいずれかにおいて、前記基部の前記内輪との当接面と前記溝部との間に、前記軸受側に向かって曲がる曲面を有する。
さらに別の好ましい態様では、前記内燃機関のバルブタイミング制御装置の態様のいずれかにおいて、前記転動体保持部の内周面と、前記基部の前記回転軸線の方向において前記軸受と対向しない側の端面との間に、前記軸受側に凹む曲面を有する。
さらに別の好ましい態様では、前記内燃機関のバルブタイミング制御装置の態様のいずれかにおいて、前記溝部は、該溝部と前記基部の前記内輪との当接面との間の劣角が鈍角となるテーパ面によって形成されている。
さらに別の好ましい態様では、前記内燃機関のバルブタイミング制御装置の態様のいずれかにおいて、前記溝部は、前記基部に形成された段差によって構成されている。