JP2019049061A - 溶銑処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】サイクルタイムが比較的短い溶銑処理方法及び溶銑処理装置を提供する。【解決手段】本発明は、溶銑の脱硫処理及びスラグの分別回収を行う溶銑処理方法であって、上記脱硫処理前に、脱硫処理を行う基準位置の溶銑鍋からスラグシュートに処理前スラグを掻き出す工程と、上記基準位置の溶銑鍋に対して脱硫剤の投入及び溶銑の撹拌を行う脱硫処理工程と、上記スラグシュートを処理前スラグピットへの排出位置に移動する工程と、上記スラグシュートから処理前スラグピットに処理前スラグを排出する工程と、上記スラグシュートを上記基準位置の溶銑鍋からのスラグの受取位置に復帰させる工程と、上記脱硫処理後に、上記基準位置の溶銑鍋から上記スラグシュートに処理後スラグを掻き出す工程と、上記スラグシュートを処理後スラグピットへの排出位置に移動する工程と、上記スラグシュートから処理後スラグピットに処理後スラグを排出する工程とを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、溶銑処理方法及び溶銑処理装置に関する。
高炉から出銑される溶銑中には、鉱物成分が分離したスラグ(鉱滓)が生成される。このようなスラグは、ドラッガー(排滓機又は除滓機)で溶銑鍋から掻き出すことによって溶銑から取り除かれる。溶銑から分離されたスラグは、未反応の成分を製鋼用原料として再利用したり、例えば路盤材原料等の用途に利用され得る。
溶銑には、例えば硫黄、珪素、燐等の鋼材の特性を低下させる不純物が含まれているため、鋼材に要求される不純物濃度まで不純物を除去する予備処理が行われる。一般に、このような予備処理では、不純物をカルシウム等の鉱物成分と結合させてスラグ中に固定し、このスラグをドラッガーで溶銑鍋から掻き出すことによって不純物を低下させる。中でも、溶銑から硫黄を除去する脱硫処理が広く行われている。
通常、脱硫処理では、例えばCaO(酸化カルシウム)等の脱硫剤を溶銑に投入し、溶鋼中の硫黄を鉱物成分と反応させて例えばCaS(硫化カルシウム)等の化合物を形成することで硫黄をスラグ中に固定し、スラグを排出することにより溶銑から硫黄を除去する。このように、脱硫処理により生成されるスラグは硫黄を含むが、溶銑処理の他の工程ではその工程ごとに成分が異なるスラグが生成されて除去回収される。このような異なる種類のスラグを分別して回収することで、各スラグの組成等に応じて最適な利用方法を選択することが望まれる。
そこで、溶銑鍋からスラグを掻き出すスラグ除去装置(ドラッガー)と、このスラグ除去装置が掻き出したスラグを一時的に受け取り、スラグを回収するスラグスポットに投下するスラグ受け(ホッパー)とを備え、複数のスラグポットにそれぞれ対向する複数のスラグ回収位置のいずれかに溶銑鍋を移動し、溶銑鍋を配置したスラグ回収位置に対応する位置にスラグ除去装置及びスラグ受けを移動させて溶銑鍋からスラグを除去及び回収する溶銑スラグ回収設備が提案されている(特開2002−146413号公報参照)。
上記公報に開示される溶銑スラグ回収設備は、スラグの種類に応じて異なるスラグ除去位置に溶銑鍋を移動させるよう構成されているため、脱硫処理前の処理前スラグと、脱硫処理によって生じる処理後スラグとを分別して回収する場合、脱硫処理の前後に溶銑鍋を移動させる必要がある。しかしながら、このような溶銑鍋の移動を行うと、溶銑の処理のサイクルタイムが長くなるという不都合がある。
特開2002−146413号公報
上記不都合に鑑みて、本発明は、サイクルタイムが比較的短い溶銑処理方法及び溶銑処理装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、溶銑の脱硫処理及びスラグの分別回収を行う溶銑処理方法であって、上記脱硫処理前に、脱硫処理を行う基準位置の溶銑鍋からスラグシュートに処理前スラグを掻き出す工程と、上記基準位置の溶銑鍋に対して脱硫剤の投入及び溶銑の撹拌を行う脱硫処理工程と、上記スラグシュートを処理前スラグピットへの排出位置に移動する工程と、上記スラグシュートから処理前スラグピットに処理前スラグを排出する工程と、上記スラグシュートを上記基準位置の溶銑鍋からのスラグの受取位置に復帰させる工程と、上記脱硫処理後に、上記基準位置の溶銑鍋から上記スラグシュートに処理後スラグを掻き出す工程と、上記スラグシュートを処理後スラグピットへの排出位置に移動する工程と、上記スラグシュートから処理後スラグピットに処理後スラグを排出する工程とを備えることを特徴とする溶銑処理方法である。
当該溶銑処理方法は、スラグシュートを処理前スラグピットへの排出位置に移動し、処理前スラグピットに処理前スラグを排出し、スラグシュートを上記基準位置の溶銑鍋からのスラグの受取位置に復帰させるので、所定の基準位置から溶銑鍋を移動する必要がない。このため、当該溶銑処理方法は、処理前スラグの掻き出し、脱硫処理及び処理後スラグの掻き出しの間の待ち時間を短縮できるので、溶銑処理のサイクルタイムを比較的短くすることができる。
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、溶銑の脱硫処理及び溶銑スラグの分別回収を行う溶銑処理装置であって、溶銑を貯留する溶銑鍋と、基準位置の溶銑鍋に対して脱硫剤の投入及び溶銑の撹拌を行う脱硫機構と、上記基準位置の溶銑鍋から溶銑表面のスラグを掻き出すドラッガーと、上記ドラッガーが掻き出したスラグを受け取るスラグシュートと、上記スラグシュートからスラグが排出される複数のスラグピットとを備え、上記スラグシュートが、上記基準位置の溶銑鍋からスラグを受け取る受取位置とスラグピットにスラグを排出する複数の排出位置との間を移動可能に構成されることを特徴とする溶銑処理装置である。
当該溶銑処理装置は、溶銑鍋を基準位置に配置したまま移動させることなく、処理前スラグの掻き出し、脱硫処理及び処理後スラグの掻き出しを行うことができる。当該溶銑処理装置は、特に、脱硫処理中にスラグシュートが移動してスラグピットに処理前スラグを排出することができるので、処理前スラグの掻き出し、脱硫処理及び処理後スラグの掻き出しの間の待ち時間を短縮して、溶銑処理のサイクルタイムを比較的短くすることができる。
以上のように、本発明の溶銑処理方法及び溶銑処理装置は、溶銑処理のサイクルタイムを比較的短くできる。
本発明の一実施形態の溶銑処理装置を示す模式的平面図である。 図1の溶銑処理装置の模式的側面図である。 図1の溶銑処理装置を用いた溶銑処理方法の手順を示す流れ図である。
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
[溶銑処理装置]
図1及び図2に示す本発明の一実施形態に係る溶銑処理装置は、溶銑の脱硫処理及び溶銑スラグの分別回収を行う装置である。
当該溶銑処理装置は、溶銑を貯留し、脱硫処理を行う所定の基準位置Psに配置可能な溶銑鍋1と、上記脱硫処理のために基準位置Psの溶銑鍋1に対して脱硫剤の投入及び溶銑の撹拌を行う脱硫機構2と、上記基準位置Psの溶銑鍋1から溶銑表面のスラグを掻き出すドラッガー3と、上記ドラッガー3が掻き出したスラグを受け取るスラグシュート4と、上記スラグシュート4からスラグが排出される複数のスラグピット(処理前スラグピット5a及び処理後スラグピット5b)とを備える。
当該溶銑処理装置で処理する溶銑としては、特に限定されないが、例えば炭素(C)含有量が4質量%以上4.5質量%以下、硫黄(S)含有量が0.01質量%以下、温度が1200℃以上1400℃以下のものとすることができる。
<溶銑鍋>
溶銑鍋1は、少なくとも内壁面が耐火物から形成され、上部開口を有する容器であり、高炉等から排出される溶銑を貯留して搬送するために用いられる。このような溶銑鍋1としては、公知の構成のものを用いることができる。
また、溶銑鍋1の容量としては、特に限定されないが、溶銑の質量に換算して例えば220t以上280t以下とすることができる。具体例として、溶銑鍋1の寸法としては、直径3m以上5m以下、高さ5m以上7m以下とすることができる。
また、溶銑鍋1は、当該溶銑処理装置を配設する建屋内上部に設けられるクレーン装置6によって移動させられる。また、溶銑鍋1は、後述する脱硫機構2によって脱硫処理を行うことができる所定の基準位置Psに配設される鍋傾斜機構7によって支持することができる。
クレーン装置6は、水平なX方向に延在するよう配設される一対の搬送レール8と、この搬送レール8の間にX方向と垂直で水平なY方向に延在するよう架設され、搬送レール8に沿って移動可能な搬送ビーム9と、搬送ビーム9に沿って移動可能に設けられ、溶銑鍋1を吊り下げ可能かつ吊り下げ長さが調節可能な1又は複数のチェーンを有するホイストブロック10とを有する。このような、クレーン装置6の各構成要素は、公知の構成のものを用いることができる。
鍋傾斜機構7は、溶銑鍋1の上部開口をY方向に傾斜させられるよう、溶銑鍋1をX方向の軸を中心に揺動可能に支持する。この鍋傾斜機構7による溶銑鍋1のY方向への傾動は、溶銑鍋1は、後述するドラッガー3によるスラグの掻き出しを容易にする。このような鍋傾斜機構7としては、公知の構成のものを用いることができる。
<脱硫機構>
脱硫機構2は、基準位置Psの溶銑鍋1に対して、脱硫剤及び滓化剤の投入及び溶銑の撹拌を行うよう構成される。具体的には、脱硫機構2は、脱硫剤及び滓化剤を投入する脱硫剤投入装置11と、溶銑内に挿入されて溶銑を撹拌するインペラー12とを備える。この脱硫機構2は、X方向に伸びるよう床面に敷設された脱硫機構用レール13の上を走行可能なフレーム14に鉛直方向(Z方向)に昇降可能に保持される。このようなフレーム14に保持される脱硫機構2としては、公知の構成の移動式の機械撹拌脱硫設備を用いることができる。
脱硫機構2を保持するフレーム14の移動速度としては、特に限定されないが、例えば15m/min以上30m/min以下とすることができ、典型的には20m/minとすることができる。
脱硫剤としては、例えば石灰(CaO)等を用いることができ、滓化剤としては、例えばアルミドロス(アルミニウム酸化物)等を用いることができる。溶銑1t当たりの脱硫剤の投入量としては、例えば4kg/t以上8kg/t以下とすることができる。また、溶銑1t当たりの滓化剤の投入量としては、例えば0.4kg/t以上1.6kg/t以下とすることができる。
インペラー12の形状としては、略方形板状の羽根を軸の周りに平面視放射状に配設したものとすることができる。インペラー12の寸法としては、溶銑鍋1の大きさにもよるが、例えば外径1.4m、高さ0.8m、羽根の厚さ0.25m、羽根の枚数4枚とすることができる。また、インペラー12の材質としては、例えばAl−SiO−SiCを用いることができる。
インペラー12の回転速度としては、インペラー12の形状等にもよるが、例えば120rpm以上150rpm以下とすることができる。また、脱硫剤及び滓化剤の投入後のインペラー12による溶銑の撹拌時間としては、例えば8分以上15分以下とすることができる。
上記脱硫剤及び滓化剤の投入並びに溶銑の撹拌によって、溶銑中の硫黄(S)が脱硫剤と反応して、硫化カルシウム(CaS)を生成する。この硫化カルシウムがスラグ中に固定されることで、溶銑中の硫黄が除去される。この脱硫処理によって生成され、硫黄分を含むスラグを処理後スラグと呼ぶ。一方、脱硫処理の前に生成されるスラグを処理前スラグと呼び、後述するように、当該溶銑処理装置において、処理後スラグとは分別して回収される。
<ドラッガー>
ドラッガー3は、基準位置Psに配置した溶銑鍋1、つまり鍋傾斜機構7に支持されている溶銑鍋1に貯留されている溶銑の表面に浮かぶスラグを掻き出す掻出アーム15を有する。ドラッガー3がスラグを掻き出す際、鍋傾斜機構7は、溶銑鍋1の上部開口をドラッガー3の側に傾斜させることで、スラグの掻き出しを促進する。
ドラッガー3は、掻出アーム15を溶銑の表面で例えば400mm/secの速度で往復させるテレスコピック機構又は間接機構を有するものとすることができる。また、上記掻出アーム15の往復方向は、溶銑鍋1の表面全体をカバーできるよう、Y方向に対してX方向両側に10°程度傾斜できるよう構成されるとよい。また、溶銑鍋1内の溶銑の湯面の高さに合わせて、ドラッガー3全体又はドラッガー3の掻出アーム15の先端をZ方向に高さ調節できるよう構成してもよい。このようなドラッガー3としては、公知の構成のものを用いることができる。
また、このドラッガー3は、鍋傾斜機構7にY方向に対向する位置に設置される架台16に配設される。ドラッガー3は、スラグを掻き出すとき以外は掻出アーム15を後退させて、特に脱硫処理の際に脱硫機構2との干渉を避けるようになっている。また、ドラッガー3は、全体的に架台16の内部に収容することができるよう、Y方向に進退可能に配設してもよい。
<スラグシュート>
スラグシュート4は、ドラッガー3によって溶銑鍋1から掻き出されるスラグを受け取って、後述するスラグピット5a,5bに排出するホッパーである。
このスラグシュート4の容積としては、後述する1回のスラグ掻出工程で排出されるスラグの全量を受け入れられるものとすることが好ましく、例えば3m以上8m以下とすることができ、典型的には5mとすることができる。また、スラグはスラグシュート4の上に山積みすることができるので、上記容積よりもさらに多くの体積のスラグを保持することができる。具体例として、スラグシュート4は、容積が5mの場合にも約6.7mのスラグを受け取り可能なものとなり得る。
スラグシュート4は、脱硫機構用レール13に平行にX方向に延在するよう床面に敷設されるシュート用レール17に沿ってX方向に移動可能なシュート移動台車18に支持され、シュート移動台車18上で傾動することによってスラグを排出する。
より詳しくは、スラグシュート4は、基準位置Psの溶銑鍋1からスラグを受け取る受取位置(基準位置PsにY方向に正対する位置)Prと、後述する複数のスラグピット5a,5bにスラグを排出する複数の排出位置(スラグピット5a,5bにY方向にそれぞれ正対する位置)Pa,Pbとの間を移動可能に構成される。
シュート移動台車18は、例えば電動モーターによりシュート用レール17上を移動し、例えば油圧シリンダを用いたチルト機構によりX方向の軸を中心にスラグシュート4を傾動させる構成とすることができる。
シュート移動台車18の移動速度としては、特に限定されないが、例えば5m/min以上20m/min以下、典型的には10m/minとすることができる。また、シュート移動台車18によるスラグシュート4の傾動速度としては、特に限定されないが、例えば90°/min以上360°/min以下、典型的には180°/minとすることができる。
シュート移動台車18によるスラグシュート4の傾動角度としては、スラグシュート4からスラグを完全に排出することができる角度であればよく、例えば60°以上120°以下、典型的には90°とすることができる。
<スラグピット>
複数のスラグピットは、脱硫処理前にドラッガー3によって溶銑鍋1から掻き出された処理前スラグをスラグシュート4から受け取って一時的に保管する処理前スラグピット5aと、脱硫処理後にドラッガー3によって溶銑鍋1から排出された処理後スラグをスラグシュート4から受け取って一時的に保管する処理後スラグピット5bとを含む。
これらのスラグピット5a,5bは、シュート用レール17の鍋傾斜機構7と反対側に、シュート用レール17に沿ってX方向に並んで配置される。
スラグピット5a,5bは、耐火物で形成される矩形状の床及びこの床のシュート用レール17と反対側の側縁を除く三方の側縁上に設けられる3つの壁(奥壁及び両側壁)を有し、スラグを堆積させる。スラグピット5a,5bに堆積されたスラグは、例えばブルドーザー、ショベルカー等の重機(不図示)を用いて台車等の運搬装置(不図示)に積載し直すことで搬出される。
このスラグピット5a,5bの大きさとしては、スラグの搬出能力等に応じて選択すればよいが、例えば床面の幅4m以上6m以下、奥行き2m以上3m以下、壁の高さ1m以上3m以下とすることができる。また、スラグピット5a,5bの床面は、奥壁側に向かって下降するよう傾斜していてもよい。
[溶銑処理方法]
図3に示す本発明の別の実施形態に係る溶銑処理方法は、溶銑の脱硫処理及びスラグの分別回収を行う方法であって、上述の当該溶銑処理装置を用いて行うことができる。
当該溶銑処理方法は、溶銑を貯留する溶銑鍋1を基準位置Psに、スラグシュート4をスラグの受取位置Prにそれぞれ配置する工程(ステップS1:配置工程)と、脱硫処理前に、ドラッガー3により基準位置Psの溶銑鍋1からスラグシュート4に処理前スラグを掻き出す工程(ステップS2:処理前スラグ掻出工程)と、脱硫機構2により基準位置Psの溶銑鍋1に対して脱硫剤の投入及び溶銑の撹拌を行う工程(ステップS3:脱硫処理工程)と、脱硫処理工程と並行して、スラグシュート4を処理前スラグピット5aへの排出位置Paに移動する工程(ステップS4:第一移動工程)と、スラグシュート4から処理前スラグピット5aに処理前スラグを排出する工程(ステップS5:第一排出工程)と、スラグシュート4を基準位置Psの溶銑鍋からのスラグの受取位置Prに復帰させる工程(ステップS6:復帰工程)と、脱硫処理後にドラッガー3により基準位置Psの溶銑鍋1からスラグシュート4に処理後スラグを掻き出す工程(ステップS7:処理後スラグ掻出工程)と、スラグシュート4を処理後スラグピット5bへの排出位置Pbに移動する工程(ステップS8:第二移動工程)と、スラグシュート4から処理後スラグピット5bに処理後スラグを排出する工程(ステップS9第二排出工程)とを備える。
<配置工程>
ステップS1の配置工程では、溶銑鍋1を基準位置Psに配置、つまり溶銑鍋1を鍋傾斜機構7に保持させると共に、スラグシュート4を基準位置Psに正対する受取位置Prに配置する。このとき、溶銑鍋1は、その烏口がドラッガー3に対向するよう配向される。なお、この配置工程は、溶銑鍋1及びスラグシュート4が基準位置Ps及び受取位置Prに配置されていることを確認できればよく、必ずしも溶銑鍋1及びスラグシュート4の移動を伴わなくてもよい。
<処理前スラグ掻出工程>
ステップS2の処理前スラグ掻出工程では、先ず、鍋傾斜機構7により溶銑鍋1をスラグシュート4側に、溶銑の湯面が烏口に近くなる程度に傾動させる。続いて、ドラッガー3を溶銑鍋1に向かって突出させ、このドラッガー3によって溶銑表面のスラグ(処理前スラグ)を溶銑鍋1から掻き出して、スラグシュート4上に排出する。その後、鍋傾斜機構7により溶銑鍋1の開口の向きを鉛直方向に復帰させる。
上記溶銑鍋1の傾動角度としては、溶銑鍋の形状や溶銑の量に応じて選択されるが、例えば38°以上42°以下とすることができる。また、上記処理前スラグの掻き出しを行う時間、つまりドラッガー3の動作時間としては、溶銑鍋1のサイズ、掻き出すスラグの量等に応じて選択されるが、例えば4分以上6分以下とすることができる。また、この処理前スラグ掻出工程では、溶銑の湯面の露出面積率が60%以上80%以下となるまで行うことが好ましい。
この処理前スラグ掻出工程で溶銑鍋1から排出される処理前スラグは、脱硫処理前に生成されているものであって、例えば高炉滓、脱珪滓等が考えられる。処理前スラグの成分としては、例えばCaOの含有量が20質量%以上40質量%以下、SiOの含有量が20質量%以上40質量%以下、Feの含有量が5質量%以上15質量%以下、塩基度(CaOのSiOに対する質量比)が0.5以上1.5以下となる。また、溶銑1t当たりの処理前スラグの排出量としては、当該溶銑処理方法に供する前の溶銑の処理等にもよるが、例えば4kg/t以上8kg/t以下となる。
処理前スラグ掻出工程で溶銑から塩基度が比較的小さく、SiOの含有量が大きい処理前スラグを除去することにより、溶銑中のSiOを取り除くことができる。これにより、次の脱硫処理工程においてSiOが脱硫剤(CaO)と反応して2CaO・SiOを生成すること、つまりSiOが脱硫剤を消費して脱硫を妨げることを抑制し、脱硫率を向上することができる。
<脱硫処理工程>
ステップS3の脱硫処理工程は、溶銑鍋1の上に脱硫機構2を配置する工程(脱硫機構配置工程)と、脱硫剤投入装置11により脱硫剤及び滓化剤を溶銑に投入する工程(投入工程)と、インペラー12により溶銑を撹拌する工程(撹拌工程)と、脱硫機構2を溶銑鍋1から上方に脱離させる工程(脱硫機構脱離工程)とを有する。
(脱硫機構配置工程)
脱硫機構配置工程では、先ず、フレーム14を脱硫機構用レール13に沿って移動させることにより脱硫機構2を溶銑鍋1の上方に配置し、続いて、脱硫機構2を下降させることで、インペラー12が溶銑鍋1の溶銑に挿入され、脱硫処理を行うことが可能となるよう配置する。
(投入工程)
投入工程では、脱硫剤投入装置11を用いて、溶銑鍋1の溶銑に脱硫剤及び滓化剤を溶銑に投入する。溶銑脱硫剤及び滓化剤の種類並びにその投入量については、上述のとおりである。
(撹拌工程)
撹拌工程では、インペラー12により溶銑を撹拌し、脱硫剤及び滓化剤を反応させて、溶銑中の硫黄をスラグに固定する。溶銑の撹拌速度及び撹拌時間については、上述のとおりである。
(脱硫機構脱離工程)
脱硫機構脱離工程では、先ず、脱硫機構2を上昇させてインペラー12を溶銑鍋1から引き抜き、続いて、フレーム14を脱硫機構用レール13に沿って移動させることにより脱硫機構2を溶銑鍋1から脱離させる。
<第一移動工程>
ステップS4の第一移動工程は、上記脱硫処理工程と並行して行われる。この第一移動工程では、シュート移動台車18をシュート用レール17に沿って移動させることにより、処理前スラグ掻出工程で掻き出した処理前スラグを保持するスラグシュート4を処理前スラグピット5aに正対する第一の排出位置Paに位置決めする。
<第一排出工程>
ステップS5の第一排出工程は、上記脱硫処理工程と並行して行われる。この第一排出工程では、先ずスラグシュート4を処理前スラグピット5a側に傾動させることによって、スラグシュート4から処理前スラグを処理前スラグピット5aに排出する。続いて、スラグシュート4の傾斜を元に戻して、再度スラグを保持できる状態とする。
<復帰工程>
ステップS6の復帰工程は、上記脱硫処理工程と並行して行われる。この復帰工程では、シュート移動台車18をシュート用レール17に沿って移動させることにより、スラグシュート4を受取位置Prに再配置する。
<処理後スラグ掻出工程>
ステップS7の処理後スラグ掻出工程は、上記ステップS3からステップS6までの処理が全て終了したことを確認してから行われる。なお、通常は、これらの処理のうち、ステップS3の脱硫処理が最も遅く終了する。
この処理後スラグ掻出工程では、先ず、鍋傾斜機構7により溶銑鍋1をスラグシュート4側に傾動させる。続いて、ドラッガー3を溶銑鍋1に向かって突出させ、このドラッガー3によって溶銑表面のスラグ(処理後スラグ)を溶銑鍋1から掻き出して、スラグシュート4上に排出する。その後、鍋傾斜機構7により溶銑鍋1の開口の向きを鉛直方向に復帰させる。
この処理後スラグ掻出工程では、上述のようにCaSを含む処理後スラグが排出される。処理後スラグの成分としては、例えばCaOの含有量が40質量%以上60質量%以下、SiOの含有量が10質量%以上20質量%以下、Alの含有量が10質量%以上20質量%以下、Sの含有量が1質量%以上2質量%以下となる。また、処理後スラグ掻出工程での溶銑1t当たりの処理前スラグの排出量としては、例えば4kg/t以上8kg/t以下となる。
<第二移動工程>
ステップS8の第二移動工程では、シュート移動台車18をシュート用レール17に沿って移動させることにより、処理後スラグ掻出工程で掻き出した処理前スラグを保持するスラグシュート4を処理後スラグピット5bに正対する第一の排出位置Pbに位置決めする。
<第二排出工程>
ステップS9の第二排出工程では、先ずスラグシュート4を処理後スラグピット5b側に傾動させることによって、スラグシュート4から処理後スラグを処理後スラグピット5bに排出する。続いて、スラグシュート4の傾斜を元に戻す。
当該溶銑処理方法は、この第二排出工程の後に、シュート移動台車18をシュート用レール17に沿って移動させることにより、スラグシュート4を受取位置Prに再配置する工程をさらに備えてもよい。
また、当該溶銑処理方法は、処理前スラグピット5aに排出された処理前スラグを搬出する工程と、搬出した処理前スラグから地金を除去する工程と、地金を除去した処理前スラグを路盤材として使用する工程とを備えることが好ましい。
上記地金除去工程は、例えば磁選機を用いて、地金とスラグとを選別するとよい。また、スラグから分別された地金は、製鋼工程で原料として利用することができる。
また、当該溶銑処理方法は、処理後スラグピット5bに排出された処理後スラグを搬出する工程と、搬出した処理後スラグを分級する工程と、分級した処理後スラグを製鋼工程で使用する工程とを備えることが好ましい。
分級工程では、例えば処理後スラグを平均目開き100mmの篩を用いて分級し、篩を通過した処理後スラグを再度平均目開き15mmの篩を用いて分級することで、処理後スラグを3つの粒度に分級する。通過目開き100mm以上の処理後スラグは、転炉での鉄源又は脱燐炉に投入する脱燐剤として使用することができる。通過目開き100mm未満15mm以上の処理後スラグは、転炉での鉄源又は脱硫工程で投入する脱硫剤として使用することができる。通過目開き15mm未満の処理後スラグは、焼結材料の製造原料として使用することができる。
<利点>
当該溶銑処理装置を用いる当該溶銑処理方法によれば、脱硫処理工程と並行して、溶銑鍋1及びドラッガー3とは独立してスラグシュート4を移動させ、第一移動工程、第一排出工程及び復帰工程を行うので、溶銑鍋1を移動させることなく、処理前スラグと処理後スラグとを処理前スラグピット5aと処理後スラグピット5bとに分別して回収することができる。これにより、溶銑鍋1を基準位置Psの鍋傾斜機構7に保持させたまま、前処理スラグ掻出工程、脱硫処理工程及び後処理スラグ掻出工程を待ち時間なく連続して行うことができるので、溶銑処理のサイクルタイムを比較的短くすることができる。
仮に、溶銑鍋1を処理前スラグピット5aに正対する位置に配置して処理前スラグを排出し、溶銑鍋1を基準位置に移動して脱硫処理を行い、溶銑鍋1を処理後スラグピット5bに正対する位置に移動して処理後スラグを排出すれば、溶銑鍋1の2回の移動が必要となり、溶銑鍋1の移動1回につき約5分の時間が必要となると考えられる。つまり、当該溶銑処理方法によれば、溶銑処理のサイクルタイムを従来の溶銑処理方法と比べて合計約10分短縮できると考えられる。
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
当該溶銑処理装置において、溶銑鍋を基準位置に搬送する機構としては、クレーン装置以外にも、例えば搬送台車等を用いることができる。このような溶銑鍋を搬送する機構は、基準位置に配設される鍋傾斜機構に溶銑鍋を受け渡すものとされず、それ自体が鍋傾斜機構を有してもよい。
また、1つの溶銑鍋搬送機構に対して当該溶銑処理装置を複数配設してもよい。複数の当該溶銑処理装置を設ける場合、処理前スラグピットや処理後スラグピットが複数の当該溶銑処理装置間で共用されてもよい。
また、当該溶銑処理装置において、スラグシュートの移動を案内する構成としては、床面上に敷設されるレール以外にも、例えば床に形成される溝等、任意の構成を採用することができる。
当該溶銑処理方法に供される溶銑は、高炉から排出された溶銑だけでなく、高炉から排出された溶銑に例えば脱珪処理、脱燐処理等の処理を行ったものであってもよい。
本発明の溶銑処理装置及び溶銑処理方法は、脱硫を行う溶銑の処理に広く適用することができる。
1 溶銑鍋
2 脱硫機構
3 ドラッガー
4 スラグシュート
5a 処理前スラグピット
5b 処理後スラグピット
6 クレーン装置
7 鍋傾斜機構
8 搬送レール
9 搬送ビーム
10 ホイストブロック
11 脱硫剤投入装置
12 インペラー
13 脱硫機構用レール
14 フレーム
15 掻出アーム
16 架台
17 シュート用レール
18 シュート移動台車
Pa,Pb 排出位置
Pr 受取位置
Ps 基準位置

Claims (1)

  1. 溶銑の脱硫処理及び脱硫処理前のスラグと焼結材料及び製鋼工程で使用される脱硫処理後のスラグとの分別回収を行う溶銑処理装置であって、
    溶銑を貯留する溶銑鍋と、
    基準位置の溶銑鍋に対して脱硫剤の投入及び溶銑の撹拌を行う脱硫機構と、
    上記基準位置の溶銑鍋から溶銑表面のスラグを掻き出すドラッガーと、
    上記ドラッガーが掻き出したスラグを受け取る1つのスラグシュートと、
    上記スラグシュートからスラグが排出される複数のスラグピットと
    を備え、
    上記スラグシュートが、上記基準位置の溶銑鍋からスラグを受け取る受取位置とスラグピットにスラグを排出する複数の排出位置との間を移動可能に構成されることを特徴とする溶銑処理装置。
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