本発明の好適な実施形態に係るインクジェットプリンタ1の概略構成について説明する。図1に示すように、プリンタ1は、プラテン2、キャリッジ3、インクジェットヘッド5(以下、単にヘッド5とも称す)、ホルダ6、給紙ローラ7、排紙ローラ8、メンテナンスユニット9、フラッシング受け10、電源回路60(図2参照)、温度センサ160、及び制御装置100等を備えている。尚、以下では、図1の紙面手前側をプリンタ1の「上方」、紙面向こう側をプリンタ1の「下方」と定義する。また、図1に示す前後方向及び左右方向を、プリンタ1の「前後方向」及び「左右方向」と定義する。
プラテン2の上面には、被記録媒体である用紙Sが載置される。また、プラテン2の上方には、左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイドレール15,16が設けられる。キャリッジ3は、2本のガイドレール15,16に取り付けられ、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール15,16に沿って左右方向に移動可能である。また、キャリッジ3には、駆動ベルト17が取り付けられている。駆動ベルト17は、2つのプーリ18,19に巻き掛けられた無端状のベルトである。一方のプーリ18はキャリッジ駆動モータ20(図2参照)に連結されている。キャリッジ駆動モータ20によってプーリ18が回転駆動されることで駆動ベルト17が走行し、これにより、キャリッジ3が左右方向に往復移動する。また、このとき、キャリッジ3上に搭載されたヘッド5は、このキャリッジ3とともに左右方向に往復移動することになる。
ホルダ6は、左右方向に並ぶ4つのカートリッジ装着部41を備えている。各カートリッジ装着部41には、インクカートリッジ42が着脱可能に装着される。4つのカートリッジ装着部41に装着される4つのインクカートリッジ42には、それぞれ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯溜されている。尚、以下の説明において、インクジェットプリンタの構成要素のうち、ブラック(K)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)のインクにそれぞれ対応するものについては、その構成要素を示す符号の後に、どのインクに対応するかが分かるように、適宜、ブラックを示す"K"、イエローを示す"Y"、シアンを示す"C"、マゼンタを示す"M"の何れかの記号を付す。例えば、インクカートリッジ42Kは、ブラックインクを貯溜するインクカートリッジ42を示す。尚、本実施形態では、ブラックインクは、顔料インクであり、それ以外のカラーインク、即ち、イエロー、シアン、マゼンタのインクは、染料インクである。
図3に示すように、インクカートリッジ42は、略直方体状の筐体43、筐体43内に配置され、インクを貯溜する略直方体状の貯溜室44、貯溜室44の下部に接続された排出管45、及び、貯溜室44に接続された大気連通部39を備えている。
排出管45は、貯溜室44に貯溜されたインクを、インクカートリッジ42の外部に供給するための流路を画定している。カートリッジ装着部41は、インクカートリッジ42が装着されたときに、この排出管45と接続してインクを流通するニードル41aを備えている。
大気連通部39は、貯溜室44とインクカートリッジ42外とを連通させる流路、及び、当該流路上に設けられたバルブ等を備えている。インクカートリッジ42がカートリッジ装着部41に装着されたときに、このバルブが開くことにより、貯溜室44が、カートリッジ装着部41に形成された大気連通流路41bを介して大気に連通する。また、カートリッジ装着部41には、インクカートリッジ42がカートリッジ装着部41に装着されているか否かを検知するための装着検知センサ71が設けられている。
図1に戻って、ヘッド5は、キャリッジ3に搭載されている。このヘッド5は、ヘッド本体13と、4つのサブタンク14(14K,14Y,14M,14C)とを有する。4つのサブタンク14は、左右方向に沿って並べて配置されている。また、これら4つのサブタンク14にはチューブジョイント21が一体的に設けられている。そして、チューブジョイント21には、可撓性を有する4本のインク供給チューブ22(22K,22Y,22M,22C)それぞれの一端が着脱可能に接続されている。4本のインク供給チューブ22それぞれの他端は、ホルダ6の4つのカートリッジ装着部41(41K,41Y,41M,41C)のニードル41aそれぞれに接続されている。カートリッジ装着部41に装着された4つのインクカートリッジ42内のインクは、この4本のインク供給チューブ22を介して、4つのサブタンク14にそれぞれ供給される。
ヘッド本体13は、4つのサブタンク14の下部に取り付けられている。ヘッド本体13の下面は、インクを吐出するための複数のノズル46が形成されたノズル面である。ノズル面において、複数のノズル46は、前後方向に配列されており、左右方向に並ぶ4列のノズル列47を構成している。この4列のノズル列47は、イエローのインクを吐出するノズル列47Yと、マゼンタのインクを吐出するノズル列47Mと、シアンのインクを吐出するノズル列47Cと、ブラックのインクを吐出するノズル列47Kとからなる。ヘッド本体13の詳細な構成については後述する。
給紙ローラ7と排紙ローラ8は、搬送モータ29(図2参照)によってそれぞれ同期して回転駆動される。給紙ローラ7と排紙ローラ8は協働して、プラテン2に載置された用紙Sを前方(搬送方向)に搬送する。
そして、プリンタ1は、給紙ローラ7と排紙ローラ8によって用紙Sを搬送方向に搬送しつつ、キャリッジ3とともにヘッド5を左右方向(走査方向)に移動させながらインクを吐出させることにより、用紙Sに所望の画像等を印刷する。即ち、本実施形態のプリンタ1は、シリアル式のインクジェットプリンタである。
フラッシング受け10は、プラテン2よりも左側に配置されている。キャリッジ3を移動させてヘッド5をフラッシング位置に位置付けさせたとき、複数のノズル46が、フラッシング受け10と上下に対向する対向状態となる。そして、プリンタ1では、ヘッド5をフラッシング位置に位置付けさせた状態で、ヘッド5に、ノズル46からフラッシング受け10に向けてインクを吐出して排出させるフラッシングを行わせることができる。
メンテナンスユニット9は、ヘッド5の吐出機能の維持、回復のためのメンテナンス動作を行うためのものであり、キャップユニット50、吸引ポンプ51、切換装置52、及び廃液タンク53等を備えている。
キャップユニット50は、プラテン2よりも右側に配置されている。キャリッジ3がプラテン2よりも右側に移動したときにはこのキャップユニット50と上下に対向する。また、キャップユニット50は、キャップ昇降モータ24(図2参照)により駆動されて、上下方向に昇降可能である。このキャップユニット50は、ヘッド5に接触して装着可能な、キャップ55を備えている。キャップ55は、例えばゴム材料によって構成されており、ブラックキャップ部55a及びカラーキャップ部55bを有する。
キャリッジ3がキャップユニット50と対向した状態では、キャップ55がヘッド本体13の下面と対向する。そして、キャリッジ3とキャップユニット50とが対向した状態でキャップユニット50が上昇すると、キャップユニット50がヘッド5に装着される。このとき、ブラックキャップ部55aによりノズル列47Kが覆われ、カラーキャップ部55bにより、3列のノズル列47Y,47M,47Cが共通に覆われる。
ブラックキャップ部55a及びカラーキャップ部55bは、それぞれ、切換装置52を介して吸引ポンプ51に接続されている。切換装置52は、吸引ポンプ51の連通先を、ブラックキャップ部55a、及びカラーキャップ部55bの間で選択的に切り換える。廃液タンク53は、吸引ポンプ51の切換装置52とは反対側に接続されている。
そして、プリンタ1では、制御装置100の制御の下、メンテナンス動作として、ノズル46からインクを強制的に排出させる吸引パージを、メンテナンスユニット9に行わせることができる。
具体的には、ノズル列47Kに属するノズル46Kからブラックインクを強制的に排出させる吸引パージを行う際には、ブラックキャップ部55aでノズル列47Kを覆った状態で、ブラックキャップ部55aを吸引ポンプ51と連通させたうえで、吸引ポンプ51を駆動させる。これにより、ブラックキャップ部55a内が負圧となることで、ノズル列47Kのノズル46Kからブラックインクが強制的に排出される。
同様に、ノズル列47Y,47M,47Cに属するノズル46Y,46M,46Cからカラーインクを強制的に排出させる吸引パージを行う際には、カラーキャップ部55bでノズル列47Y,47M,47Cを覆った状態で、カラーキャップ部55bを吸引ポンプ51と連通させたうえで、吸引ポンプ51を駆動させる。
電源回路60は、図2に示すように、電源スイッチ61、整流回路62、電圧出力回路63、設定回路64等を有する。電源スイッチ61は、100Vの交流電源との接続/遮断を行う。整流回路62は、交流電源から供給された交流を直流に変換する。また、その際に、電圧を100Vから、それよりも低い電圧(例えば、30V程度)まで降圧させる。整流回路62からの直流電圧は電圧出力回路63に供給される。電圧出力回路63では、後述するドライバIC90等のプリンタ1を構成する様々な駆動部を駆動するための出力電圧(VDD)を生成して出力する。また、電圧出力回路63は、生成した出力電圧を、各駆動部への出力電圧の供給/非供給を切り換える機能を兼ね備えている。設定回路64は、出力電圧を所定の電圧に維持するためのフィードバック制御の制御目標値を、電圧出力回路63に対して設定するためのPMW回路である。電源回路60は、複数レベルの電圧を出力可能に構成されている。
温度センサ160は、ホルダ6近傍に配置されており、周囲温度を計測する。
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、不揮発性メモリ104、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)105等を含む。ROM102には、CPU101が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM103には、プログラム実行時に必要なデータ(印刷データ等)が一時的に記憶される。ASIC105には、ヘッド5、キャリッジ駆動モータ20等、プリンタ1の様々な装置あるいは駆動部と接続されている。また、ASIC105は、PC等の外部装置31と接続されている。
制御装置100は、外部装置31から受信した印刷指示に基づいて、ヘッド5やキャリッジ駆動モータ20等を制御して、用紙Sに画像等を印刷させる印刷処理を実行する。本実施形態では、この印刷処理の印刷モードとして、ブラックインクを少なくとも使用して印刷を行う第1印刷モードと、ブラックインクを使用せずに、カラーインクのみを使用して印刷を行う第2印刷モード(例えば、写真印刷用のモード)を有している。
尚、本実施形態において、制御装置100が行う印刷処理等の各種処理は、単一のCPUで行ってもよく、CPUと、ASICとの協動で行ってもよい。また、制御装置100が複数のCPUを備え、複数のCPUによって処理を分担して行ってもよい。また、制御装置100が複数のASICを備え、複数のASICによって処理を分担してもよい。あるいは、1つのASIC単独で処理を行ってもよい。
次に、ヘッド本体13について詳細に説明する。ヘッド本体13は、図4(a)に示すように、複数のノズル46及び複数のノズル46にそれぞれ連通する複数の圧力室83が形成された流路構造体81と、流路構造体81の上面に配置された圧電アクチュエータ86とを備えている。
図4(c)に示すように、流路構造体81は4枚のプレートが積層された構造を有する。この流路構造体81の下面には複数のノズル46が形成されている。図4(a)に示すように、複数のノズル46は前後方向(用紙Sの搬送方向)に配列されており、4色のインクにそれぞれ対応した、4列のノズル列47を構成している。複数の圧力室83は、複数のノズル46と同様に4列に配列されている。
さらに、図4(a),(b)に示すように、流路構造体81には、それぞれ前後方向に延在する4本のマニホールド84(84K,84Y,84M,84C)が形成されている。4本のマニホールド84は、4列の圧力室列に、4色のインクをそれぞれ供給する。また、4本のマニホールド84は、流路構造体81の上面に形成された4つのインク供給孔85(85K,85Y,85M,85C)に接続されている。4つのインク供給孔85には、4つのサブタンク14(図1参照)から4色のインクがそれぞれ供給される。以上の構成より、流路構造体81内には、各マニホールド84から分岐して、圧力室83を経てノズル46に至る個別流路が複数形成されている。
図4(c)に示すように、圧電アクチュエータ86は、複数の圧力室83を覆う振動板87と、この振動板87の上面に配置された圧電層88と、複数の圧力室83に対応した複数の個別電極89とを備えている。圧電層88の上面に位置する複数の個別電極89は、圧電アクチュエータ86を駆動するドライバIC90とそれぞれ電気的に接続されている。このドライバIC90には、図2に示すように、電源線99a、グランド線99b、制御信号線99c等の配線が接続されている。電源線99aは、電源回路60で生成された出力電圧をドライバIC90に供給するための線である。グランド線99bは、ドライバIC90をグランドに接続するための線である。制御信号線99cは、制御装置100からドライバIC90へ、後述するパルス波形データや波形選択データ等の制御信号を入力するための線である。
圧電層88の下面に位置する振動板87は金属材料で形成されており、圧電層88を挟んで複数の個別電極89と対向する共通電極の役割を果たす。尚、この振動板87はドライバIC90のグランド線99bに接続されて常にグランド電位に保持される。
以上の構成において、1つの個別電極89、共通電極としての振動板87の1つの圧力室83に対向する電極部分、及び、圧電層88の1つの圧力室83と対向する部分によって、1つの圧電素子95(図4(c)参照)が構成されている。
ドライバIC90は、制御装置100からの制御信号に基づいて、各圧電素子95の個別電極89に対して駆動パルス信号を出力し、個別電極89に印加させる電圧を、Highレベル(電源線99aを通じて電源回路60から受電した出力電圧のレベル)とLowレベル(グランドレベル)との間で切り換える。このように、本実施形態では、電源回路60により出力された出力電圧が、各圧電素子95に共通に印加される。
上記の圧電アクチュエータ86の、ノズル46からインクを吐出させる際の動作は、以下の通りである。ドライバIC90により、ある圧電素子95の個別電極89の電圧がLowからHighに切り換えられたとする。このとき、個別電極89と共通電極としての振動板87との間に電位差が生じ、両者の間に挟まれた圧電層88に圧電変形が生じる。この圧電層88の圧電変形によって圧力室83に体積変化が生じて、圧力室83(ノズル46)内のインクに圧力(エネルギー)が付与される。これにより、上記圧力室83に連通するノズル46からインクの液滴が吐出される。また、以下では、説明の便宜上、図1に示すように、ニードル41aから複数のノズル46に至る流路全体をインク流路30(30K,30Y,30M,30C)と総称する。
次に、上記圧電アクチュエータ86を駆動するための、電気的な構成の詳細について説明する。まず、圧電アクチュエータ86に駆動パルス信号を供給する、ドライバIC90の構成について説明する。
ドライバIC90は、各吐出周期(用紙Sに1ドットを形成する周期)において、圧電素子95の個別電極89に対して、4種類の信号(図5参照)の中から1種類の信号を選択して供給する。
これら4種類の信号のうち、1種類の信号(図5(a))はパルスPを有さない非吐出信号であり、3種類の信号(図5(b)〜(d))はパルスPを有する吐出信号である。3種類の吐出信号は、多階調印刷を可能とするために、1つのノズル46からサイズの異なる3種類の液滴(小玉、中玉、大玉)を吐出させるための駆動パルス信号である。本実施形態では、3種類の吐出信号は、1吐出周期に含まれるパルスPの数が互いに異なっている。
ドライバIC90は、制御装置100から送信された後述する波形選択データに基づいて、各圧電素子95の個別電極89に対して、4種類の信号のうちの1つを選択して出力する。
図6に示すように、ドライバIC90は、シフトレジスタ91、ラッチ回路92、波形選択回路93、及び、出力回路94を有する。シフトレジスタ91には、制御装置100から、複数の圧電素子95のそれぞれに対応した波形選択データが入力される。1つの圧電素子95に対応する波形選択データは、後述する波形選択回路93において上記4種類の信号から1種類の信号を選択させるための数ビットのビットデータである。また、1吐出周期における、複数の圧電素子95に対応する波形選択データの総ビット数は、(1つの波形選択データのビット数)×(圧電素子95の総数)となり、これら多数のビットデータは制御装置100からドライバIC90へシリアル入力される。
シフトレジスタ91は、上記のシリアル入力された多数のビットデータを、パラレル変換してラッチ回路92へ順次出力する。また、ラッチ回路92は、シフトレジスタ91からパラレル出力される多数のビットデータ(波形選択データ)を、1吐出周期に係る全てのデータの入力が完了するまで保持する。そして、全ての波形選択データの入力が完了すると、保持している波形選択データを波形選択回路93へパラレル出力する。
波形選択回路93には、制御装置100から4種類の信号(図5参照)のパルス波形データが入力される。そして、波形選択回路93は、ラッチ回路92から入力された、複数の個別電極89のそれぞれに対応する波形選択データに基づいて、4種類の信号の中から1種類を選択し、その波形信号を出力回路94へ出力する。
波形選択回路93から出力される波形信号は、シフトレジスタ91、ラッチ回路92、及び、波形選択回路93等のロジック回路の制御電圧レベルの信号である。そして、出力回路94は、この波形選択回路93から入力された波形信号を、電源回路60により出力された出力電圧に応じた電圧レベルまで増幅して駆動パルス信号(吐出信号)を生成し、圧電素子95の個別電極89へ駆動パルス信号を出力する。
次に、上記圧電アクチュエータ86を駆動するための、制御装置100のASIC105の構成について説明する。図2に示すように、ASIC105は、波形データ記憶回路151、駆動データ生成回路152、選択データ生成回路153、及び信号出力回路154を有する。波形データ記憶回路151は、4種類の信号(図5参照)のパルス波形に関するデータ(パルス波形データ)を記憶するものである。
駆動データ生成回路152は、印刷処理の際には、印刷データに基づいて、吐出周期それぞれにおける、各圧電素子95の駆動に係る駆動データを生成する。この駆動データは、圧電素子95それぞれについて、各吐出周期での吐出信号の出力の有無、及び出力する場合にはその吐出信号の種類(小玉、中玉、大玉)を示すデータである。
選択データ生成回路153は、駆動データ生成回路152により生成された駆動データに基づいて、圧電素子95のそれぞれに関して、各吐出周期において、4種類のパルス波形から1つを選択するための波形選択データを生成する。
信号出力回路154は、波形データ記憶回路151に記憶されたパルス波形データと、選択データ生成回路153で生成された波形選択データとを、ドライバIC90に出力する。これを受けて、ドライバIC90は複数の圧電素子95のそれぞれについて、電源回路60により生成された出力電圧に応じた電圧レベルの駆動パルス信号を生成し、複数の圧電素子95にそれぞれ供給する。
また、制御装置100は、ノズル46からインクを吐出して排出させるフラッシングをヘッド5に行わせるフラッシング処理を実行可能である。本実施形態では、フラッシング処理の際には、大玉の吐出信号を複数連ねた吐出信号群が各圧電素子95に対して出力される。不揮発性メモリ104には、フラッシングの設定に関する係数情報123が記憶されている。この係数情報123には、吐出信号群に含ませる大玉の吐出信号の数(以下、フラッシング発数)の基準数BBを規定した情報を含む。駆動データ生成回路152は、ノズル46K内のインクの粘度が閾値未満である通常時には、フラッシング処理の際に、大玉の吐出信号を基準数BB連ねた吐出信号群(以下、基準吐出信号群と称す)を各圧電素子95に出力するように構成されている。従って、駆動データ生成回路152は、フラッシング処理の際には、基準数BBだけ、各圧電素子95に大玉の吐出信号が出力されるように駆動データを生成する。
ところで、ブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42Kが、長時間静置状態にされると、ヘッド5においてブラックインクの吐出不良が生じる場合がある。以下、詳細に説明する。
顔料インクでは、顔料が溶媒中に分散された状態で存在しており、長時間静置状態にあると比重の大きい顔料がインクカートリッジ42の底部に沈降する。このため、ブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42Kにおいては、長時間静置状態にあると、インクカートリッジ42Kの底部に顔料が多量に沈降する。その結果として、インクカートリッジ42の底部において顔料インクの顔料濃度が局所的に高くなり、その粘度も局所的に高くなる。この増粘した顔料インクがノズル46K内に供給されると、ノズル46K内のインクの粘度が閾値以上に上昇する場合がある。この場合、ブラックインクに対応する圧電素子95Kに、上記のように通常電圧に応じた電圧レベルの吐出信号を出力したとしても、ノズル46Kから所望量のブラックインクが吐出されない、あるいは、ブラックインクがノズル46Kから全く吐出されない問題が生じる。
これに対して、染料インクは、顔料インクとは異なり、その成分が沈降することは殆どない。従って、これら染料インクを貯溜するインクカートリッジ42Y,42M,42Cが長時間静置状態に置かれたとしても、これらインクカートリッジ42Y,42M,42Cの底部において、粘度が局所的に高くなることはない。このため、ノズル46Y,46M,46C内のインクの粘度も上記閾値以上となることは殆どない。
以上のように、ブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42Kが、長時間静置状態にされると、ヘッド5においてブラックインクの吐出不良が生じる場合がある。そこで、本実施形態では、CPU101は、印刷指示を受信した後、印刷処理を実行する前に、ノズル46K内のインクの粘度を推定するノズル内粘度推定処理を実行する。そして、ノズル内粘度推定処理により推定したノズル46K内のインクの粘度が閾値以上の場合には、通常電圧よりも高い高電圧を電源回路60に出力させる電圧生成処理を実行する。具体的には、推定したノズル46K内のインクの粘度が高いほど、高い電圧値に設定する。これにより、圧電素子95Kに出力される吐出信号の電圧レベルが上昇して、ノズル46K内のインクに付与されるエネルギーが上昇する。その結果として、ノズル46Kから所望量のブラックインクを吐出させることが可能となる。
ところで、インク流路30K内においても、サブタンク14K等で顔料の沈降が生じ得るが、インクカートリッジ42Kと比べて、その沈降量は極めて少ない。従って、顔料の沈降による粘度上昇は主にインクカートリッジ42K内で生じる。そこで、本実施形態では、CPU101は、ノズル内粘度推定処理において、推定精度を高めるために、インクカートリッジ42Kにおける貯溜室44の下部のインクの粘度、即ち、貯溜室44内の排出管45との接続部分(以下、排出管接続部分)のインクの粘度を推定するカートリッジ内粘度推定処理を、まず、実行する。そして、このカートリッジ内粘度推定処理により推定した排出管接続部分のインクの粘度を用いて、ノズル46K内のインクの粘度を推定する。以下、カートリッジ内粘度推定処理について詳細に説明する。
インクカートリッジ42K内に沈降する顔料の沈降量は、当該インクカートリッジ42Kが静置状態に置かれていた期間が長いほど多くなる。また、インクカートリッジ42K内に沈降する顔料の沈降量は、インクカートリッジ42K内からインク流路30内へのインクの供給頻度が少ないほど多くなる。加えて、顔料インクは、インクカートリッジ42内の温度が高いほど、粘度が低くなるため、顔料の沈降が促進される。
そこで、不揮発性メモリ104のカートリッジ情報121Kは、図2に示すように、総供給量カウント情報131、経過時間情報132、及び温度履歴情報133を有している。
総供給量カウント情報131は、装着検知センサ71によりインクカートリッジ42Kがカートリッジ装着部41Kに装着されたことを検知した装着検知時点から、インクカートリッジ42K内からインク流路30へ供給されたインクの供給量を示すカウント情報である。CPU101は、印刷処理、フラッシング、吸引パージ等、インクカートリッジ42K内からインク流路30へインクが供給される毎に、その供給量を算出して、総供給量カウント情報131のカウント値に加算する。なお、本実施形態では、電源回路60の出力電圧を調整することで、各吐出信号それぞれを圧電素子95Kに1回出力した際にノズル46Kから吐出されるインクの液滴量が、ノズル46K内のインクの粘度に関わらず略同じとなるように構成されている。このため、印刷処理やフラッシングの際に供給されたインクの供給量は、各種類の吐出信号が圧電素子95Kに対して出力された回数を取得することで算出することができる。また、吸引パージの際に供給されたインクの供給量については、吸引ポンプ51の回転速度や駆動時間により算出することができる。
経過時間情報132は、上記装着検知時点からの経過時間を示す情報であり、装着検知時点以降において、制御装置100の内部時計により逐次更新される。温度履歴情報133は、上記装着検知時点から温度センサ160により計測された温度の履歴情報である。CPU101は、内部時計により一定時間を計時する毎に、そのときに温度センサ160により計測されていた温度を温度履歴情報133に追加する。
CPU101は、カートリッジ内粘度推定処理では、これら総供給量カウント情報131、経過時間情報132、及び温度履歴情報133に基づいて、顔料の沈降量を推定して、インクカートリッジ42K内の排出管接続部分のインクの粘度を推定する。これにより、インクカートリッジ42K内の排出管接続部分のインクの粘度を精度よく推定することができる。従って、このカートリッジ内粘度推定処理の推定結果を用いることで、ノズル46K内のインクの粘度を精度よく推定することができる。
ところで、電源回路60により出力される出力電圧が通常電圧から高電圧に上昇すると、圧電素子95Y,95M,95Cに出力される吐出信号の電圧レベルも上昇することになる。しかしながら、先に触れたように、染料インクを吐出する、ノズル46Y,46M,46C内のインクの粘度は、閾値以上には殆どならない。このため、電源回路60により出力される出力電圧が通常電圧から高電圧へ上昇したときに、吐出信号を圧電素子95Y,95M,95Cに出力すると、所望の液滴量よりも大きいインク滴が吐出されることになる。その結果として、印刷処理により印刷される画像の品質が劣化したり、フラッシング処理の際に余分にインクが排出される等の種々の問題が生じる。
本実施形態では、これら種々の問題のうち、フラッシング処理の際にインクが余分に排出される問題に着目して、この問題を解決すべく制御装置100が以下の処理を実行する。つまり、制御装置100は、電源回路60により出力される出力電圧が通常電圧から高電圧に上昇した場合には、フラッシング処理の際におけるフラッシング発数を、この電圧上昇に伴う吐出量の増加量を減らすように少なく設定する。即ち、係数情報123に規定された基準数BBよりも少ない数の、大玉の吐出信号を連ねた吐出信号群(以下、高電圧用吐出信号群)を圧電素子95Y,95M,95Cに対して出力する。以下、具体的に説明する。
電源回路60により通常電圧が出力されるときに、圧電素子95Y,95M,95Cに基準吐出信号群を出力した際に排出されるインクの排出量NEそれぞれは、下記の式1により求めることができる。
NE=BB×CC・・・式1
BB:基準吐出信号群のフラッシング発数(基準数)
CC:大玉の吐出信号の1出力当たりに吐出されるインクの液滴量
一方で、電源回路60により高電圧が出力されるときに、圧電素子95Y,95M,95Cに基準吐出信号群を出力した際に排出される排出量HEそれぞれは、下記の式2により求めることができる。
HE=BB×CC×(1+α×V)・・・式2
α:増加係数
V:電圧上昇幅
なお、増加係数αは、大玉の吐出信号を圧電素子95に1回出力したときのインクの吐出量の、電圧上昇幅の単位量に対する増加割合を示す。つまり、増加係数αは、電源回路60に出力させる出力電圧を通常電圧から高電圧に上昇させた際のインクの増加量に関する情報である。ここで、「α×V」は、電圧上昇幅Vが大きいほど、その値が大きくなる正の値である。このため、排出量HEは、排出量NEよりも、電源回路60の出力電圧の電圧上昇に起因して多くなる。不揮発性メモリ104の係数情報123には、この増加係数αが含まれている。
また、電源回路60により高電圧が出力される場合に、圧電素子95Y,95M,95Cに高電圧用吐出信号群を出力した際に排出される排出量IEそれぞれは、下記の式3により求めることができる。
IE=XX×CC×(1+α×V)・・・式3
XX:高電圧用吐出信号群のフラッシング発数
本実施形態では、下記の式4に示すように上記排出量IEが、排出量NEと同じとなるよう、フラッシング発数XXを設定する。つまり、式5を満たすように、高電圧用吐出信号群のフラッシング発数XXを設定する。
NE=IE・・・式4
XX=BB/(1+α×V)・・・式5
例えば、基準数BBが60、「α×V」の値が0.2の場合、フラッシング発数XXを50(=60/(1+0.2)に設定する。以上のようにして、制御装置100は、電源回路60により高電圧が出力される場合には、電圧上昇幅V及び係数情報123に基づいて、圧電素子95Y,95M,95Cに出力する高電圧用吐出信号群のフラッシング発数XXを設定することで、フラッシング処理の際にカラーインクが余分に排出されることを抑制することができる。
また、上述したように、本実施形態では、印刷モードとして、ブラックインクを使用せずに、カラーインクのみを使用して印刷を行う第2印刷モードを有している。この第2印刷モードでは、用紙Sへの画像印刷のためにはブラックインクを吐出させる必要がないため、ノズル46K内のインクの粘度が閾値以上の場合でも、電源回路60により高電圧を出力させる必要がない。そこで、本実施形態では、第2印刷モードで印刷を行う際には、ノズル46K内のインクの粘度が閾値以上の場合でも、電源回路60により出力される出力電圧を通常電圧に維持する。これにより、消費電力を抑えることができる。
一方で、この第2印刷モードでの印刷中においても、ノズル46K内のインクの増粘を抑制する目的で、ノズル46Kからインクを吐出して排出するフラッシングを行う必要がある。しかしながら、ノズル46K内のインクの粘度が閾値以上に増粘していると、基準吐出信号群を圧電素子95Kに出力したとしても、ノズル46Kから排出されるインクの排出量が少なくなる。その結果、ノズル46K内のインクの増粘を十分に解消することができない。そこで、ノズル46K内のインクの粘度が閾値以上の場合でも、電源回路60により出力される出力電圧を通常電圧に維持するときには、フラッシング処理の際におけるフラッシング発数を、この粘度上昇に伴う吐出量の減少量を減らすように多く設定する。即ち、係数情報123に規定された基準数BBよりも多い数の、大玉の吐出信号を連ねた吐出信号群(以下、高粘度用吐出信号群)を圧電素子95Kに対して出力する。以下、具体的に説明する。
電源回路60により通常電圧が出力され、且つ、推定したノズル46K内のインクの粘度が閾値以上の場合に、圧電素子95Kに高粘度用吐出信号群を出力した際に排出される排出量MEは、下記の式6により求めることができる。
ME=YY×CC×(1−β×J)・・・式6
YY:高粘度用吐出信号群のフラッシング発数
β:減少係数
J:粘度上昇幅
なお、減少係数βは、大玉の吐出信号を圧電素子95に1回出力した際のインクの吐出量の、粘度上昇幅の単位量に対する減少割合を示す。ここで、「β×J」は、粘度上昇幅が大きいほど、その値が大きくなる1未満の正の値である。不揮発性メモリ104の係数情報123には、この減少係数βも含まれている。本実施形態では、排出量MEが排出量NEと同じとなるよう、高粘度用吐出信号群を設定する。つまり、下記式7を満たすように、高粘度用吐出信号群のフラッシング発数YYを設定する。
YY=BB/(1−β×J)・・・式7
例えば、基準数BBが60、「β×J」の値が0.2の場合、フラッシング発数YYは75(=60/(1―0.2)となる。以上のようにして、制御装置100は、電源回路60により通常電圧が出力され、且つ、推定したノズル46K内のインクの粘度が閾値以上の場合には、推定したノズル46K内のインクの粘度、及び係数情報123に基づいて、フラッシング処理の際に圧電素子95Kに出力する高粘度用吐出信号群のフラッシング発数YYを設定する。その結果として、ノズル46K内のインクの増粘を解消することができる。
(インクジェットプリンタの動作)
次に、プリンタ1の処理動作の一例について、図7を参照しつつ説明する。
制御装置100は、外部装置31から印刷指示を受信する受信処理を実行する(S1:YES)と、後で図8を参照して説明するノズル内粘度推定処理を実行する(S2)。このノズル内粘度推定処理により、ノズル46K内のインクの粘度が推定される。この後、制御装置100は、推定したノズル46K内のインクの粘度が閾値以上か否かを判断する(S3)。閾値以上と判断した場合(S3:YES)には、制御装置100は、不揮発性メモリ104の増粘フラグ125をオン状態にする(S4)。この増粘フラグ125は、ノズル46K内のインクの粘度が閾値以上と推定した場合にオン状態、閾値未満と推定した場合にオフ状態となるフラグである。
S4の処理の後、制御装置100は、受信した印刷指示に基づいて、印刷処理中にブラックインクをノズル46Kから吐出させる必要があるか否かを判断するブラックインク吐出要否判断処理を実行する(S5)。具体的には、印刷指示が、上記第1印刷モードでの印刷処理の実行を指示している場合には、ブラックインクを吐出させる必要があると判断し、第2印刷モードでの印刷処理の実行を指示している場合には、ブラックインクを吐出させる必要がないと判断する。
印刷処理中にブラックインクを吐出させる必要があると判断した場合(S5:YES)には、制御装置100は、電源回路60により出力させる出力電圧を通常電圧よりも高い高電圧に設定し、その設定した高電圧の電圧値を電圧設定情報122として不揮発性メモリ104に記憶する(S6)。尚、このとき、S2により推定したノズル46K内のインクの粘度が高いほど、高い電圧値を設定する。この後、制御装置100は、電圧設定情報122の電圧値、及び係数情報123に基づいて、印刷処理中に、カラーインクに対応する圧電素子95Y,95M,95Cに対して出力する高電圧用吐出信号群に係るフラッシング発数XXを設定し、その設定を不揮発性メモリ104のフラッシング設定情報124に記憶する(S7)。
この後、制御装置100は、ブラックインクに対応する圧電素子95Kに対して、印刷処理中に出力する吐出信号群を基準吐出信号群に設定(フラッシング発数を基準数BBに設定)し、その設定をフラッシング設定情報124に記憶する(S8)。
S3の処理でノズル46K内のインクの粘度が閾値未満と判断した場合(S3:NO)には、制御装置100は、増粘フラグ125をオフ状態にする(S9)。S9の処理の後、あるいは、S5の処理で印刷処理中にブラックインクを吐出させる必要がないと判断した場合(S5:NO)には、制御装置100は、電源回路60により出力させる出力電圧を通常電圧に設定し、その設定した通常電圧の電圧値を電圧設定情報122として不揮発性メモリ104に記憶する(S10)。この後、制御装置100は、カラーインクに対応する圧電素子95Y,95M,95Cに出力する吐出信号群を基準吐出信号群に設定(フラッシング発数を基準数BBに設定)し、その設定をフラッシング設定情報124に記憶する(S11)。次に、制御装置100は、増粘フラグ125がオン状態でない場合(S12:NO)には、上記S8の処理に移る。
一方で、S12において、増粘フラグ125がオン状態である場合(S12:YES)には、制御装置100は、S2の粘度推定処理により推定したノズル46K内のインクの粘度、及び係数情報123に基づいて、ブラックインクに対応する圧電素子95Kに出力する高粘度用吐出信号群に係るフラッシング発数YYを設定し、その設定をフラッシング設定情報124に記憶する(S13)。
S8又はS13の処理の後、制御装置100は、電圧設定情報123に設定された電圧値の出力電圧を電源回路60に出力させた上で、キャリッジ駆動モータ20を駆動してキャリッジ3を移動させつつ、外部装置31から受信した印刷データに基づいて、各圧電素子95に吐出信号を出力して、ノズル46からインクを吐出させる印刷処理を開始する(S14)。そして、制御装置100は、この印刷処理中において、フラッシング処理の実施時期か否かを判断する(S15)。具体的には、例えば、フラッシング処理の前回実施時点から所定時間以上経過している場合に、フラッシング処理の実施時期と判断する。フラッシング処理の実施時期ではないと判断した場合(S15:NO)には印刷処理を継続して、S17の処理に移る。一方で、フラッシング処理の実施時期と判断した場合(S15:YES)には、制御装置100は、印刷処理を中断した後に、キャリッジ駆動モータ20を制御して、ヘッド5をフラッシング受け10と対向する位置に移動させ、フラッシング設定情報124において、各インク色の圧電素子95それぞれに対して設定されたフラッシング発数の吐出信号群を各圧電素子95に出力して、フラッシング処理を実行する(S16)。S16の処理の後、印刷処理を再開してS17の処理に移る。
S17の処理では、制御装置100は印刷処理が終了したか否かを判断する。印刷処理が終了していないと判断した場合(S17:NO)には、S15の処理に戻る。一方で、印刷処理が終了したと判断した場合(S17:YES)には、制御装置100は、S1の処理で印刷指令を受信した以降において、印刷処理やフラッシング処理により吐出されたインクの総吐出量をインク色毎に算出する(S18)。そして、算出した各インク吐出量を、各カートリッジ情報121の総供給量カウント情報131のカウント値に加算して(S19)、本処理を終了する。
以上のS6又はS10における不揮発性メモリ104に電圧設定情報123を記憶する処理、及びS14の電圧設定情報123に設定された電圧値の出力電圧を電源回路60に出力させる処理が、「電圧生成処理」に相当する。また、S7又はS11のカラーインクに対応する圧電素子95Y,95M,95Cに対して出力する吐出信号群に係るフラッシング発数を設定する処理、及び、S16において、設定したフラッシング発数の吐出信号群を圧電素子95Y,95M,95Cに出力する処理が「第2インク用信号出力処理」に相当する。また、S8又はS13のブラックインクに対応する圧電素子95Kに対して出力する吐出信号群のフラッシング発数を設定する処理、及び、S16において、設定したフラッシング発数の吐出信号群を圧電素子95Kに出力する処理が「第1インク用信号出力処理」に相当する。
次に、図8を参照して、ノズル内粘度推定処理について説明する。
まず、制御装置100は、総供給量カウント情報131、経過時間情報132及び温度履歴情報133を参照して、インクカートリッジ42K内の排出管接続部分の現在のインクの粘度を推定するカートリッジ内粘度推定処理を実行する(A1)。この後、制御装置100は、推定した現在のインクの粘度と、総供給量カウント情報131の現在のカウント値とを関連付けて、不揮発性メモリ104のカートリッジ情報121Kの粘度履歴情報134に新たに記憶して、粘度履歴情報134を更新する(A2)。尚、粘度履歴情報134は、インクカートリッジ42K内の排出管接続部分のインクの粘度と、総供給量カウント情報131のカウント値とを関連付けた、排出管接続部分のインクの粘度の履歴情報である。
次に、制御装置100は、粘度履歴情報134を参照して、インクカートリッジ42K内の排出管接続部分のインクの粘度が過去に閾値以上であったことがあるか否かを判断する(A3)。インクの粘度が過去に閾値以上であったことがないと判断した場合(A3:NO)には、制御装置100は、A2の処理で推定した現在のインクの粘度が閾値以上か否かを判断する(A4)。現在のインクの粘度が閾値以上であると判断した場合(A4:YES)には、制御装置100は、インクカートリッジ42K内の排出管接続部分のインクの粘度が閾値未満から閾値以上に遷移したとして、総供給量カウント情報131の現在のカウント値を増粘カウント値としてカートリッジ情報121Kのカウント情報135に記憶する(A5)。A5の処理の後、あるいは、A4の処理において、現在のインクの粘度が閾値未満と判断した場合(A4:NO)には、制御装置100は、ノズル46K内のインクの粘度は閾値未満と推定して(A6)、本処理を終了する。
A3の処理で、インクの粘度が過去に閾値以上であったことがあると判断した場合(A3:YES)には、制御装置100は、A2で推定した現在のインクの粘度が閾値以上か否かを判断する(A7)。現在のインクの粘度が閾値以上と判断した場合(A7:YES)には、制御装置100は、インクカートリッジ42K内の排出管接続部分のインクの粘度が閾値未満から閾値以上に遷移した(増粘した)以降において、インクカートリッジ42K内からインク流路30Kに供給されたインクの供給量を算出する(A8)。具体的には、総供給量カウント情報131の現在のカウント値から、カウント情報135の増粘カウント値を減算した量を、増粘後の供給量とする。この後、制御装置100は、増粘後の供給量が、インク流路30Kの流路容量未満か否かを判断する(A9)。増粘後の供給量が、インク流路30Kの流路容量未満と判断した場合(A9:YES)には、制御装置100は、増粘したインクがノズル46内には未だ到達していないとして、ノズル46K内のインクの粘度は閾値未満と推定し(A6)、本処理を終了する。
一方で、A9の処理で、増粘後の供給量が、インク流路30Kの流路容量以上と判断した場合(A9:NO)には、制御装置100は、増粘したインクがノズル46内に到達しているとして、ノズル46K内のインクの粘度は閾値以上と推定し、且つその粘度を推定する(A10)。具体的には、粘度履歴情報134において、総供給量カウント情報131の現在のカウント値から、インク流路30Kの流路容量を減算した値に最も近いカウント値に関連付けられた粘度を、ノズル46K内のインクの粘度と推定する。A10の処理が終了すると、本処理を終了する。
A7の処理で、A2で推定したインクカートリッジ42Kの排出管接続部分の現在のインクの粘度が閾値未満と判断した場合(A7:NO)には、粘度履歴情報134を参照して、前回のカートリッジ内粘度推定処理により推定したインクカートリッジ42Kの排出管接続部分のインクの粘度が閾値以上か否かを判断する(A11)。前回のインクの粘度が閾値以上と判断した場合(A11:YES)には、制御装置100は、インクカートリッジ42Kの排出管接続部分のインクの粘度が閾値以上から閾値未満に遷移したとして、総供給量カウント情報131の現在のカウント値を増粘解消後カウント値としてカウント情報135に記憶する(A12)。この後、制御装置100は、A10の処理に移り、ノズル46K内のインクの粘度は閾値以上と推定し、且つ、その粘度を推定して、本処理を終了する。
A11の処理で、前回のインクの粘度が閾値未満と判断した場合(A11:NO)には、制御装置100は、インクカートリッジ42K内の排出管接続部分のインクの粘度が閾値以上から閾値未満に遷移した(増粘解消)以降において、インクカートリッジ42K内からインク流路30Kに供給されたインクの供給量を算出する(A13)。具体的には、総供給量カウント情報131の現在のカウント値から、カウント情報135の増粘解消後カウント値を減算した量を、増粘解消後の供給量とする。この後、制御装置100は、増粘解消後の供給量が、インク流路30Kの流路容量未満か否かを判断する(A14)。増粘解消後の供給量が、インク流路30Kの流路容量未満と判断した場合(A14:YES)には、制御装置100は、増粘したインクがノズル46K内に未だ留まっているとし、A10の処理に移り、ノズル46K内のインクの粘度は閾値以上と推定し、且つ、その粘度を推定して、本処理を終了する。一方で、増粘解消後の供給量が、インク流路30Kの流路容量以上と判断した場合(A14:NO)には、制御装置100は、インク流路30K内の増粘したインクはノズル46Kから全て吐出されたとして、ノズル46K内のインクの粘度は閾値未満と推定し(A15)、本処理を終了する。
以上、本実施形態によると、ノズル46K内でのブラックインクの粘度が閾値以上に上昇すると、電源回路60が出力する出力電圧が通常電圧から高電圧に上昇するため、印刷処理において、ブラックインクの増粘によりブラックインクが不吐出となることを抑制することができる。また、電源回路60により出力される出力電圧が高電圧に上昇した場合には、フラッシング処理の際には、この電圧上昇に伴うカラーインクの吐出量の増加量を減らすように、高電圧用吐出信号群が圧電素子95Y,95M,95Cに出力される。これにより、フラッシング処理の際にカラーインクが余分に排出されることを抑制することができる。
以上説明した実施形態において、ノズル46Kが「第1ノズル」に相当し、ノズル46Y,46M,46Cが「第2ノズル」に相当する。インクカートリッジ42Kが「第1インクタンク」に相当し、インクカートリッジ42Y,42M,42Cが「第2インクタンク」に相当する。ブラックの顔料インクが「第1インク」に相当し、カラーの染料インクが「第2インク」に相当する。インク流路30Kが「第1流路」に相当し、インク流路30Y,30M,30Cが「第2流路」に相当する。圧電素子95Kが「第1駆動素子」に相当し、圧電素子95Y,95M,95Cが「第2駆動素子」に相当する。電源回路60が「電圧生成回路」に相当する。圧電素子95Kに吐出信号群を出力するフラッシング処理が「第1インク用フラッシング処理」に相当する。圧電素子95Y,95M,95Cに吐出信号群を出力するフラッシング処理が「第2インク用フラッシング処理」に相当する。基準吐出信号群が「第1吐出信号群」に相当し、高電圧用吐出信号群が「第2吐出信号群」に相当する。制御装置100及びドライバIC90を合わせたものが「制御部」に相当する。カートリッジ装着部41が「タンク装着部」に相当する。温度センサ160が「温度計測部」に相当する。フラッシング設定情報124の増加係数αが「吐出量増加量情報」に相当する。ブラックインク吐出要否判断処理(S5の処理)が「第1インク吐出要否判断処理」に相当する。印刷処理が「吐出処理」に相当し、印刷指示が「吐出指示」に相当する。
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。上述の実施形態では、イエロー、シアン、マゼンタのカラーインクは染料インクであったが、顔料インクであってもよい。ここで、ブラックの顔料インクは、イエロー、シアン、マゼンタのカラーの顔料インクと比べて、顔料が沈降しやすい顔料インクである。これは、ブラックの顔料インクの方が、カラーの顔料インクよりも、顔料粒子の粒子径が大きくて重く、且つその顔料粒子の含有量が多いことに主に起因する。従って、各インクカートリッジ42が、長時間静置状態にあった場合には、インクカートリッジ42Kの方が、インクカートリッジ42Y,42M,42Cと比べて底部に顔料が多量に沈降して、その粘度も高くなる。このため、ノズル46K内のインクは、ノズル46Y,46M,46C内のインクと比べて、その粘度が閾値以上になり易い。従って、この変更形態についても、上述の実施形態と同じく、ノズル46K内のインクの粘度を推定して、その推定結果に応じて電源回路60から出力させる出力電圧を調整することで、ブラックインクが不吐出となることを抑制することができる。また、電源回路60により高電圧が出力される場合には、フラッシング処理の際に、高電圧用吐出信号群を圧電素子95Y,95M,95Cに出力することで、カラーインクが余分に排出されることを抑制することができる。
尚、このとき、カラーのインク色毎に、フラッシング処理の際のフラッシング発数を変更してもよい。つまり、各圧電素子95Y,95M,95Cに出力する高電圧用吐出信号群の吐出信号の数を互いに異ならせてもよい。例えば、カラーの顔料インクの中でも、マゼンタの顔料インクの方が、イエロー、シアンの顔料インクと比べて、顔料が沈降しやすい顔料インクである。従って、例えば、フラッシング処理の際に、圧電素子95Mに出力する高粘度用吐出信号群の吐出信号の数よりも、圧電素子95Y,95Cに出力する高粘度用吐出信号群の吐出信号の数を少なくしてもよい。
また、粘度推定処理において、ノズル46K内のインクの粘度に加えて、ノズル46Y,46M,46C内のインクの粘度も推定する。そして、電源回路60により高電圧が出力される場合には、フラッシング処理の際において、推定された各ノズル46Y,46M,46C内のインクの粘度に応じて、インク色毎に、フラッシング処理の際のフラッシング発数を変更してもよい。つまり、ノズル46内のインクの粘度が高いインク色ほど、フラッシング処理の際のフラッシング発数を多くしてもよい。これにより、ノズル46内のインクの増粘を解消しつつ、余分にインクが排出されることを抑制することができる。
また、上述の実施形態では、ノズル内粘度推定処理は、インクカートリッジ42内での顔料の沈降を考慮した推定処理であったが、インクの水分蒸発を考慮した推定処理であってもよい。具体的には、インクカートリッジ42内にインクが滞在する間、及び、インクカートリッジ42内のインクがノズル46に移動する過程において、インクの水分は時間の経過とともに蒸発する。このときの、単位時間当たりの蒸発量はインクの種類によって互いに異なる。例えば、染料インクは、その種類によって、水分含有量が異なるため、単位時間当たりの蒸発量が互いに異なる。その結果として、単位時間当たりの蒸発量が大きいインク色に係るノズル46内のインクの粘度が、単位時間当たりの蒸発量が小さいインク色に係るノズル46内のインクの粘度よりも、水分の蒸発に起因して大きく上昇することがある。従って、例えば、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの全色が染料インクの場合、CPU101は、単位時間当たりの蒸発量が大きいインク色に係るノズル46内のインクの粘度を総供給量カウント情報131や経過時間情報132に基づいて推定してもよい。この場合、単位時間当たりの蒸発量が大きいインク色に係るノズル46内のインクの粘度が閾値以上になった場合に、電源回路60から出力させる出力電圧を高電圧に上昇させる。一方で、電源回路60により出力される出力電圧が高電圧である場合には、フラッシング処理の際に、単位時間当たりの蒸発量が小さいインク色に対応する圧電素子95に対して、高電圧用吐出信号群を出力することで、余分にインクが排出されることを抑制することができる。
次に、別の変更形態について説明する。上述の実施形態ではブラックインクを吐出するノズル46K内のインクの粘度のみを推定し、その推定した粘度が閾値以上となったときに、電源回路60が出力する出力電圧を通常電圧から高電圧に上昇させている。しかしながら、カラーインクを吐出するノズル46Y,46M,46C内のインクの粘度も閾値以上となる可能性もあり、これらカラーインクが吐出できない場合も生じ得る。特に、カラーインクが顔料インクである場合、染料インクである場合と比べて、ノズル46Y,46M,46C内のインクの粘度は上昇しやすい。このため、各インクカートリッジ42のカートリッジ装着部41への装着時期等によっては、ノズル46K内のインクの粘度よりも、ノズル46Y,46M,46C内のインクの粘度が高くなる場合もあり得る。そこで、本変更形態では、ノズル内粘度推定処理では、各ノズル46内のインクの粘度を推定する。そして、何れかのノズル46内のインクの粘度が閾値以上の場合には、電源回路60が出力する出力電圧を通常電圧から高電圧に上昇させる。これにより、各インク色について、インクの増粘によりノズル46からインクが吐出できなくなることを抑制することができる。
以下、本変更形態のプリンタ1の処理動作の一例について、図9を参照しつつ説明する。尚、各カートリッジ情報121には、総供給量カウント情報131、経過時間情報132、温度履歴情報133、粘度履歴情報134、及びカウント情報135が記憶されている。
制御装置100は、外部装置31から印刷指示を受信する受信処理を実行する(B1:YES)と、図8を参照して説明したノズル内粘度推定処理をインク色毎に実行する(B2)。このノズル内粘度推定処理により、ノズル46K内のインクの粘度だけでなく、ノズル46Y,46M,46C内それぞれのインクの粘度も推定される。この後、制御装置100は、推定した何れかのノズル46内のインクの粘度が閾値以上か否かを判断する(B3)。何れかのノズル46内のインクの粘度が閾値以上と判断した場合(B3:YES)には、制御装置100は、増粘フラグ125をオン状態にし(B4)、この後、受信した印刷指示に基づいて、印刷処理中にノズル46内のインクの粘度が閾値以上となっているインクをノズル46から吐出させる必要があるか否かを判断する(B5)。
印刷処理中に粘度が閾値以上となっているインクを吐出させる必要があると判断した場合(B5:YES)には、制御装置100は、電源回路60により出力させる出力電圧を通常電圧よりも高い高電圧に設定し、その設定した高電圧の電圧値を電圧設定情報122として不揮発性メモリ104に記憶する(B6)。この後、制御装置100は、ノズル46内のインクの粘度が閾値未満と推定したインク色に対応する圧電素子95に対して出力する高電圧用吐出信号群に係るフラッシング発数XXを、電圧設定情報122の電圧値、及び係数情報123に基づいて設定し、その設定をフラッシング設定情報124に記憶する(B7)。この後、制御装置100は、ノズル46内のインクの粘度が閾値未満と推定したインク色に対応する圧電素子95に対して出力する吐出信号群を基準吐出信号群に設定(フラッシング発数を基準数BBに設定)し、その設定をフラッシング設定情報124に記憶する(B8)。
B3の処理で全てのノズル46内のインクの粘度が閾値未満と判断した場合(B3:NO)、制御装置100は、増粘フラグ125をオフ状態にする(B9)。B9の処理の後、あるいは、B5の処理で印刷処理中に粘度が閾値以上となっているインクを吐出させる必要がないと判断した場合(B5:NO)には、制御装置100は、電源回路60により出力させる出力電圧を通常電圧に設定し、その設定した通常電圧の電圧値を電圧設定情報122として不揮発性メモリ104に記憶する(B10)。この後、制御装置100は、ノズル46内のインクの粘度が閾値未満と推定したインク色に対応する圧電素子95に対して出力する吐出信号群を基準吐出信号群(フラッシング発数を基準数BBに設定)に設定し、その設定をフラッシング設定情報124に記憶する(B11)。次に、制御装置100は、増粘フラグ125がオン状態でない場合(B12:NO)には、上記B8の処理に移る。
B12において、増粘フラグ125がオン状態である場合(B12:YES)には、制御装置100は、ノズル46内のインクの粘度が閾値以上のインク色に対応する圧電素子95に出力する高粘度用吐出信号群に係るフラッシング発数YYを、S2の粘度推定処理により推定したノズル46内のインクの粘度、及び係数情報123に基づいて設定し、その設定をフラッシング設定情報124に記憶する(B13)。
B8またB13の処理の後は、S14〜S19の処理と同様なB14〜B19の処理を実行して、本処理を終了する。
以上、本変更形態によると、或るノズル46内でのインクの粘度が閾値以上に上昇すると、電源回路60が出力する出力電圧が通常電圧から高電圧に上昇するため、印刷処理において、インクの増粘により当該或るノズル46からインクが吐出できなくなることを抑制することができる。また、ノズル46内のインクの粘度が閾値未満であると推定しているインク色に対応する圧電素子95に対しては、電源回路60により高電圧が出力される場合には、フラッシング処理の際に、高電圧用吐出信号群が出力される。その結果として、インクが余分に排出されること抑制することができる。
以下、その他の変更形態について説明する。
ノズル内粘度推定処理は、少なくともノズル46を含む流路領域に存在するインクの粘度を推定する処理であればよい。従って、例えば、ノズル内粘度推定処理が、圧力室83からノズル46内に至る流路等、インク吐出に影響を及ぼす流路内に存在するインクの粘度を推定する処理であってもよい。
上述の実施形態では、高電圧用吐出信号群は、基準吐出信号群よりもフラッシング発数を少なくすることで、電圧上昇に伴う吐出量の増加量を減らすように設定されていたが、これに限定されるものではない。例えば、基準吐出信号群の吐出信号が大玉の吐出信号の場合、高電圧用吐出信号群の吐出信号を、大玉の吐出信号よりも1吐出周期に含まれるパルスPの数が少ない中玉の吐出信号や小玉の吐出信号に設定してもよい。この場合、吐出信号の圧電素子95への1回の出力当たりに吐出されるインクの吐出量を減らすことができるため、電圧上昇に伴う吐出量の増加量を減らすことが可能となる。
また、基準吐出信号群の吐出信号のパルスPのパルス幅W1(図10(a)参照)と比べて、高電圧用吐出信号群の吐出信号のパルスPのパルス幅W2(図10(b)参照)を短くしてもよい。この場合、吐出信号におけるパルスPの1回の出力当たりの圧電素子95の変形量が小さくなるため、ノズル46内のインクに付与されるエネルギーを小さくすることができる。その結果、電圧上昇に伴う吐出量の増加量を減らすことが可能となる。
また、1吐出周期内において続けて出力されるパルスPのパルス間隔を、各パルスPで付与されるエネルギーが重ね合わされるように調整することで、ノズル46内のインクに大きなエネルギーを付与することが可能である。即ち、吐出信号のパルスPのパルス間隔を調整することで、ノズル46内のインクに付与するエネルギーを調整することもできる。従って、図10(a)及び図10(b)に示すように、高電圧用吐出信号群の吐出信号に含まれる複数のパルスPのパルス間隔G2を、基準吐出信号群の吐出信号に含まれる複数のパルスPのパルス間隔G1と異ならせることで、電圧上昇に伴う吐出量の増加量を減らしてもよい。
以上のように、高電圧用吐出信号群の吐出信号を、基準吐出信号群の吐出信号と異ならせることで、電圧上昇に伴う吐出量の増加量を減らしてもよい。
また、ノズル46K内のインクの粘度が閾値以上と推定した場合でも、電源回路60の出力電圧を通常電圧に維持する際(第2印刷モードで印刷する際)には、圧電素子95Kに出力する吐出信号群を高粘度用吐出信号群に設定していたが、基準吐出信号群に設定してもよい。この場合、印刷処理後に、ノズル46K内の増粘したインクを排出するために、吸引パージ等を行なえばよい。また、ノズル46K内のインクの粘度が閾値以上の場合には、印刷モードに関わらず、電源回路60に高電圧を出力させるように構成されていてもよい。
また、電源回路60により高電圧が出力されている際に高電圧用吐出信号群を圧電素子95に出力したときの排出量IEと、電源回路60により通常電圧が出力されている際に基準吐出信号群を圧電素子95に出力したときの排出量NEとが同じとなるように、高電圧用吐出信号群が設定されていなくてもよい。即ち、少なくとも電圧上昇に伴う吐出量の増加量を減らすように高電圧用吐出信号群が設定されていればよい。
ノズル46内のインクにエネルギーを付与する駆動素子は、圧電素子であったが、これに限定されるものではない。例えば、駆動素子として、インクを加熱して膜沸騰を生じさせる発熱体を採用してもよい。また、圧電素子95に共通の電圧を生成する電圧生成回路が、ヘッド5に搭載されていてもよい。カートリッジ内粘度推定処理では、総供給量カウント情報131、経過時間情報132、及び温度履歴情報133に基づいて、顔料の沈降量を推定して、インクカートリッジ42K内の排出管接続部分のインクの粘度を推定していたが、総供給量カウント情報131、及び経過時間情報132のみに基づいて推定してもよい。また、インクカートリッジ42内のインクの残量が減ると、顔料の沈降量が少なくなる。このため、インクカートリッジ42K内の排出管接続部分のインクの粘度が閾値以上から閾値未満に遷移したか否かについては、増粘後のインク供給量のみに基づいて推定してもよい。
インクカートリッジが装着されるカートリッジ装着部がキャリッジに搭載された、いわゆるオンキャリッジタイプのプリンタにも適用することができる。インクカートリッジ42の排出管45は、貯溜室44の下部に接続されていなくてもよく、例えば、貯溜室44の中部に接続されていてもよい。
加えて、上述の実施形態では、インクの供給源であるタンクは、インクカートリッジであったが、これに限定されるものではなく、例えば、可撓性を有する樹脂からなるパウチ式のインク収容袋であってもよい。このインク収容袋には、インク供給チューブ22を接続可能なキャップが設けられており、インク供給チューブ22をこのキャップに接続したときにインク収容袋内のインクがインク供給チューブ22に流通可能となる。各インクカートリッジ42に貯溜されているインクは、互いに異なるインク色であったが、種類(成分)が異なるならば、同じインク色であってもよい。また、フラッシング処理は、印刷処理中に限定されず、印刷処理前や印刷処理後に行ってもよい。
また、本発明は、インクジェットヘッドを固定した状態で、搬送機構により搬送される用紙に画像を印刷する、所謂ライン式のインクジェットプリンタにも適用されうる。