JP2019035328A - エンジンのクランク角検出装置 - Google Patents
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Abstract
Description
一般に、回転角速度は、エンジンの出力軸であるクランクシャフトに取り付けられたクランクトリガプレートと、このクランクトリガプレートの外周に所定数設けられた被検出部である歯と、クランクトリガプレートに近接して設けられた回転角(クランク角)センサとから構成されたクランク角検出機構によって検出される。
そこで、失火検出の間、クランクトリガプレートの歯間の回転角度の検出値を学習し、この検出値によって設定された公差に基づきクランクシャフトの回転角速度を補正し、エンジンの失火判定が行われている。回転角センサの検出値によって学習された公差を用いることにより、機械的なばらつきを排除できるからである。
これにより、減速燃料カット中に失火判定を行うことで、燃焼状態に係るばらつきを排除し、周期的変化を学習することで、機械的なばらつきを排除している。
図7(a)に示すように、ロックアップクラッチの締結時に回転方向に撓んで駆動源による振動を低減するダンパ機構は、ロックアップクラッチの外周側において周方向に等間隔に配設された複数のダンパスプリング51によって構成されている。
これらのダンパスプリング51は、クラッチドラムから径方向外側に延びるスプリング受け部材52の受け部52aによって周方向一端部が当接状に支持され、タービンハブに連結され且つダンパスプリングの外周部を保持するスプリング保持プレート53の受け部53aによって周方向他端部が当接状に支持されている。
これにより、エンジンからトルクが伝達されたとき、ダンパスプリング51が撓み、スプリング受け部材52が回転方向に回動する(図7(b)参照)。さらに、遠心力により外周方向に押し付けられることでダンパスプリング51が張り付く。
その状態から燃料カットが開始されると、エンジントルクが低下することからダンパスプリング51が離間した状態から復帰してダンパスプリング51の周方向一端部とスプリング受け部材52とが衝突して、所謂周期的移動現象が生じること(図7(c)参照)、更に、この周期的移動現象によりダンパスプリング51周辺の構成要素が共振する共振状態が生じることを知見した。
そして、共振が発生すると、減速燃料カット中にクランク角の公差学習を誤学習してしまうため、その公差学習を使用して失火を検出すると、エンジンの失火が誤検出されることが判明した。
補正手段は、前記運転状態判定手段によって共振誘発状態が判定されたとき、前記状態制御値の補正を制限するため、ダンパ手段自体の構造的要因に起因した回転状態の誤検出を回避することができ、精度の良い状態制御値の補正を行うことができる。
この構成によれば、ダンパ手段自体の構造的要因に起因した回転状態の誤学習を回避することができる。
この構成によれば、エンジンから伝達される出力トルクが小さい減速燃料カット中において、燃焼状態に係るばらつきを排除しつつ構造的要因に起因した回転状態の誤学習を回避することができる。
この構成によれば、共振誘発状態が解除された状態において公差に基づく状態制御値の補正を行うことができる。
この構成によれば、減速燃料カット中において、燃焼状態に係るばらつきを排除しつつ精度の良い状態制御値の補正を行うことができる。
この構成によれば、クランク角公差後学習に伴うエンジンの失火誤検出を回避することが出来る。
以下の説明は、本発明を車両のパワートレインに適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
このエンジン1は、直列状に配置された第1〜第4気筒が形成されたガソリンエンジンであり、180°CA(クランクアングル)毎に、第1気筒、第3気筒、第4気筒、第2気筒の順に燃料供給と点火が行われるように設定されている。
エンジン1は、各気筒において、燃焼室(図示略)内に吸気を供給するための吸気弁(図示略)と、燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁(図示略)と、空気と燃料の混合気に点火する点火プラグ(図示略)と、往復運動を行うピストン(図示略)と、このピストンの往復運動によって回転するクランクシャフト3(クランク軸)と、このクランクシャフト3を収納するクランクケース(図示略)と、燃焼室内で混合気の燃焼により発生した排気ガスを排気通路(図示略)へ排出する排気弁(図示略)等が夫々設けられている。
クランクシャフト3にはクランクトリガプレート(図示略)が取り付けられ、このクランクトリガプレートの外周上の所定位置(例えば、BTDC102degとATDC78deg)に被検出部としての歯(図示略)が夫々設けられている。
回転角度センサ5は、クランクトリガプレートの歯に近接した位置に設置され、最初の検出タイミングから次の検出タイミングまでの経過時間(以下、回転時間という。)Tを検出している。この回転時間Tによって、エンジン1の回転数及び回転周期が夫々算出されている。
図1に示すように、トルクコンバータ2は、その全体がクランクボルトを介してクランクシャフト3に連結され、エンジン1によって駆動可能に構成されている。
トルクコンバータ2は、ポンプ21と、タービン22と、ステータ23と、ワンウエイクラッチ24と、ロックアップクラッチ25と、ダンパスプリング26,27と、これらの構成要素を収納したケース28と、ダンパ機構D(ダンパ手段)等を有し、このケース27内には動力伝達用流体であるオイルが充填されている。
図2に示すように、ダンパスプリング26,27は、周方向に等間隔に夫々複数配置され、各々が軸方向にオーバーラップして設けられている。
図1に示すように、ダンパスプリング26は、クラッチドラム29に一体形成されてクラッチドラム29から径方向外側に延びるスプリング受け部材30に設けられた受部30aに周方向一端部が当接状に支持され、ダンパスプリング26の外周を覆うスプリング保持プレート31に設けられた受部31aに周方向他端部が当接状に支持されている。
ダンパスプリング27は、スプリング保持プレート31の径方向中段部に設けられ、ダンパスプリング26よりも高い捩りばね剛性を備えている。これにより、捩り作動角度を広角化することができ、エンジン1のトルク変動に起因した駆動系の振動を減衰している。
それ故、ダンパスプリング26,27、スプリング受け部材30及びスプリング保持プレート31等がダンパ機構Dに相当している。
ECU10は、回転角度センサ5の検出値に基づきクランクシャフト3の角速度ω(状態制御値)を演算し、この角速度ωの角速度変動に相当する角加速度Δωが失火判定閾値α以上の場合、エンジン1の失火を判定している。エンジン1の失火が判定されたとき、例えば、乗員に対する報知(警告灯点灯或いはワーニング)、失火対象気筒への燃料供給停止等が行われている。
図1に示すように、ECU10は、学習部11(学習手段)と、運転状態判定部12(運転状態判定手段)と、補正部13(補正手段)と、失火検出部14(失火検出手段)等を備えている。
学習部11は、回転角度センサ5により検出された回転時間Tを用いてクランク角検出機構の公差に相当する周期比rを演算し、学習実行条件が成立した際、確定された周期比rを確定学習値Rに設定している。前回の回転時間をTn−1、今回の回転時間をTn(2≦n)としたとき、周期比rは、次式(1)によって演算される。
r=Tn−1/Tn …(1)
尚、この周期比rは、学習実行条件の成立の有無に拘らず演算されている。
(1)減速燃料カット後、所定点火数中経過のこと
(2)ブレーキペダルがオフ操作であること(ブレーキスイッチ・オフ)
(3)周期比rの変動が小さいこと
(4)エンジン1の回転数が所定範囲内にあること
(5)車速が所定範囲内にあること
(6)吸入空気量充填効率が所定範囲内にあること
(7)学習禁止フラグFが0であること
これらの条件の内、何れかの条件が成立しない場合、学習は禁止される。
また、ノイズが除去されても、周期比rが学習値の真値に収束していない場合があるため、学習部11では、安定判定処理を行っている。
安定判定処理では、暫定学習値f2と4サイクル(例えば、2sec)が1セットの加重平均値とが所定期間の間で且つ所定範囲内に収まること、減速燃料カット中継続して学習値を取得して加重平均化処理すること、収束除外条件が成立したこと(加重平均値が一様に漸増又は漸減する、或いは変動幅が所定閾値以上等)を条件として学習の完了可否を判断している。
学習部11は、周期比rと暫定学習値f2の一致状況を2回(r1,r2)判定し、2回目の一致点r2に相当する周期比rを確定学習値Rに設定している。
図4に示すように、非共振領域は、エンジン回転数と角速度変動一次成分とで規定される運転領域によって設定することができる。本実施例では、エンジン回転数が、例えば、1600〜1800rpm、2900rpm以上の運転領域を非共振領域、所謂学習実行可能領域としている。
運転状態判定部12は、エンジン1の運転状態に基づき、例えば、所定のエンジン回転数以上で且つ減速運転状態のとき、減速燃料カット実行領域であることを判定している。
また、この運転状態判定部12は、エンジン1の運転状態に基づき、共振誘発状態を判定し、学習禁止フラグFを1に設定している。
そして、共振が発生すると、減速燃料カット中にクランク角の公差学習を誤学習してしまうため、その公差学習を使用して失火を検出すると、エンジンの失火が誤検出される。
そこで、共振誘発状態が判定された場合、運転状態判定部12が学習禁止フラグFを1に設定することにより、周期比rの学習(確定学習値Rの演算)を制限している。
減速燃料カット停止中、換言すれば、次の減速燃料カット開始前においてエンジン負荷が学習禁止負荷β(例えば、100Nm)以上のとき(時刻tb)、学習禁止フラグFは1に設定される。エンジン負荷が学習禁止負荷β以上の場合、ダンパスプリング26に作用する遠心力の影響により共振誘発状態が発生し、その後の燃料カット状態時にクランクシャフト3の1次振動が生じるためである。
減速燃料カット停止中において、エンジン負荷が学習禁止負荷β以上のとき(時刻td)、学習禁止フラグFは1に設定される。
その後、減速燃料カット実行条件が成立しても(時刻te)、共振誘発状態が解消しない限り、学習禁止フラグFは1に維持されている。
補正部13は、学習禁止フラグFが0のとき、エンジン1の失火判定に用いる角速度ωの補正を実行し、学習禁止フラグFが1のとき、角速度ωの補正を制限している。
この補正部13は、学習禁止フラグFが0のとき、共振誘発状態が解消されたと見做し、学習禁止フラグFが1のとき、共振誘発状態が判定されたと見做すことで、補正の実行可否を判断している。
ω=1000×180/T×R …(2)
尚、この確定学習値Rは、エンジン1の失火判定用角速度ωを演算するときのみ使用され、失火判定用角速度ωの演算以外では使用されない。
失火検出部14は、クランクシャフト3の角速度ωの単位時間当りの変動量、所謂角加速度Δωを算出し、この算出された角加速度Δωが失火判定閾値α以上の場合、エンジン1の失火を判定している。
尚、Si(i=1,2…)は、各処理のためのステップを示している。
S2では、回転角度センサ5の出力に基づき回転時間Tを演算して、S3に移行する。
S3では、前回の回転時間Tと今回の回転時間Tを用いて周期比rを演算して、S4に移行する。
前述した(1)〜(7)の学習実行条件が成立したか否か判定する。尚、回転数変動が少ない場合、(4)〜(6)の条件を省略しても良い。
S4の判定の結果、7つの学習実行条件が成立した場合、S5に移行し、7つの学習実行条件の何れかが成立していない場合、S2にリターンする。
S7では、安定判定されたか否か判定する。
S7の判定の結果、安定判定された場合、S8に移行し、安定判定されない場合、学習を完了させることなく終了する。
S8の判定の結果、減速燃料カットが実行されていない場合、S9に移行する。
S8の判定の結果、減速燃料カットが実行されている場合、S6にリターンし、再度学習値を求めた上で加重平均化処理する。減速燃料カットが実行されている間、学習値は加重平均値にされている。
S9では、最終学習値である周期比rを確定学習値Rに設定し、終了する。
本クランク角検出装置によれば、ダンパ機構Dによる共振を誘発する運転状態を判定する運転状態判定部12を有しているため、周期的移動現象によりダンパスプリング26周辺の構成要素が共振する共振誘発状態を判定することができる。
補正部13は、運転状態判定部12によって共振誘発状態が判定されたとき、角速度ωの補正を制限するため、ダンパ機構D自体の構造的要因に起因した回転状態の誤検出を回避することができ、精度の良い角速度ωの補正を行うことができる。
1〕前記実施形態においては、ダンパ機構付自動変速機構を備えたエンジンの例を説明したが、ダンパ機構付手動変速機構を備えたエンジンに適用しても良く、パワートレインの動力伝達機構の種類や型式に関わりなく適用可能である。
3 クランクシャフト
5 回転角度センサ
11 学習部
12 運転状態判定部
13 補正部
14 失火判定部
D ダンパ機構
Claims (6)
- エンジンに起因した振動の発生を抑制可能なダンパ手段と、クランク軸の回転状態を検出する回転状態検出手段と、前記回転状態検出手段の検出値に基づき回転状態に関する状態制御値を補正する補正手段とを備えたエンジンのクランク角検出装置において、
前記ダンパ手段による共振を誘発する運転状態を判定する運転状態判定手段を有し、
前記補正手段は、前記運転状態判定手段によって共振誘発状態が判定されたとき、前記状態制御値の補正を制限することを特徴とするエンジンのクランク角検出装置。 - 前記回転状態検出手段の検出値を学習する学習手段を有し、
前記補正手段は、前記検出値により設定された公差に基づき状態制御値を補正することを特徴とする請求項1に記載のエンジンのクランク角検出装置。 - 前記補正手段は、減速燃料カット中において前記状態制御値の補正を実行すると共に、減速燃料カット開始前においてエンジン負荷が所定値以上のとき、前記共振誘発状態が判定されたと見做して前記学習を制限することを特徴とする請求項2に記載のエンジンのクランク角検出装置。
- 前記補正手段は、減速燃料カット開始前にエンジン負荷の所定値以上の状態が検出された後で且つエンジン回転数が設定値未満のとき、前記共振誘発状態が解除されたと見做して前記学習の制限を解除することを特徴とする請求項3に記載のエンジンのクランク角検出装置。
- 前記補正手段は、減速燃料カット実行条件が成立し且つ前記共振誘発状態以外の状態のとき、前記状態制御値の補正を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のエンジンのクランク角検出装置。
- 前記回転状態検出手段の検出値に基づきエンジンの失火を検出する失火検出手段を有し、
前記失火検出手段は、前記補正手段による状態制御値の補正完了後、失火検出を実行することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のエンジンのクランク角検出装置。
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