以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の蓄電装置について図1乃至図10を用いて説明する。
本発明の一態様の蓄電装置は、正極、負極、セパレータ、電解質及び外装体を有する。
蓄電装置の耐熱性を高めるには、電解質の耐熱性が高いことが求められる。電解質の耐熱性を高めるには、熱によって電解質が分解するのを抑制する、又は熱によって電解質が他の部材と反応して電解質が分解するのを抑制するのが効果的と考えられる。他の部材との反応として、例えば正極、負極、セパレータ又は外装体との反応が考えられる。
なお、本明細書等において、電解質とは電気伝導性を有する物質を指す。電解質は、液体に限られず、ゲルや固体であってもよい。液体の電解質を電解液と呼ぶ場合があり、電解液は溶質を溶媒に溶解させて作製できる。また、固体の電解質を固体電解質と呼ぶ場合がある。
例えば、電解質の溶質であるリチウム塩として、構造式(100)で表される六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が普及している。しかし、六フッ化リン酸リチウムは化学的、熱的安定性に乏しい。例えば、微量の水分で加水分解してHFを発生し、蓄電装置の劣化の原因となることが考えられる。また、高温でLiFとPF5に分解し、PF5が溶媒の分解を引き起こすと言われており、溶質としては高温での安定性は低いと考えられる。六フッ化リン酸リチウムの熱分解温度は、154℃程度である。なお、熱分解温度は、粉末の状態で、熱分解により重量が5%減少したときの温度を示している。熱分解による重量変動は、熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)等を用いて確認できる。
本発明の一態様で用いるリチウム塩を一般式(G1)に示す。
(一般式(G1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、フッ素又は直鎖、分岐若しくは環状の炭素数1乃至10のフルオロアルキル基を表す。)
本明細書等において、フルオロアルキル基とは、アルキル基の一部又は全ての水素原子がフッ素原子に置換された基を指す。アルキル基の60%以上の水素原子が、フッ素原子に置換されたフルオロアルキル基であることが好ましい。フルオロアルキル基は酸素、硫黄、窒素などの炭素、水素、フッ素以外の原子を有しても良い。
一般式(G1)で表されるリチウム塩は化学的、熱的安定性が高い。分解温度が高く、耐熱性が高いことから、溶質として用いることで蓄電装置の耐熱性を高くすることができる。また、一般式(G1)で表されるリチウム塩は電気陰性度が高いフッ素を有することから、フルオロアルキルスルホニル基が強い電子吸引性を示し、リチウムイオン解離度が非常に高く、リチウムイオン二次電池などの蓄電装置において電解質の溶質として用いるのに適している。フルオロアルキル基が有するフッ素原子は多いほど好ましい。
一般式(G1)において、R1はフッ素又は直鎖、分岐若しくは環状の炭素数1乃至7のフルオロアルキル基がさらに好ましい。一般式(G1)において、R2はフッ素又は直鎖、分岐若しくは環状の炭素数1乃至7のフルオロアルキル基がさらに好ましい。このようなリチウム塩を電解質の溶質として用いることで、蓄電装置の耐熱性を高めることができる。
また、一般式(G1)において、R1はフッ素又は直鎖、分岐若しくは環状の炭素数1乃至5のフルオロアルキル基がさらに好ましい。一般式(G1)において、R2はフッ素又は直鎖、分岐若しくは環状の炭素数1乃至5のフルオロアルキル基がさらに好ましい。そうすることで、一般式(G1)で表されるリチウム塩の解離度が高くなり、イオン伝導率の高い電解質とすることができる。また、一般式(G1)で表されるリチウム塩の分子量が大きくならず、溶媒に溶解させる重量が少なくて済むため、電解質の粘度が増加するのを抑制でき、電池特性の悪化を抑制できる。また、コストを抑えられる。
一般式(G1)で表されるリチウム塩の具体的な構造式を下記に示す。構造式(101)で表されるリチウムビス(フルオロスルホニル)アミド(Li(FSO2)2N、略称:LiFSA)、構造式(102)で表されるリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(Li(CF3SO2)2N、略称:LiTFSA)、構造式(103)で表されるリチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド(Li(C2F5SO2)2N、略称:LiBETA)、構造式(104)で表されるリチウム(パーフルオロブタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiN(C4F9SO2)(CF3SO2))などを、溶質として用いることが好ましい。これらは、熱分解温度が高く、溶質として用いることで蓄電装置の耐熱性を高くすることができる。例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)アミドの融点は140℃、熱分解温度は300℃程度である。リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドの融点は233℃、熱分解温度は380℃程度である。リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミドの融点は328℃、熱分解温度は350℃程度である。
しかし、一般式(G1)で表されるリチウム塩は、集電体と反応し、集電体が腐食する場合がある。集電体が腐食すると、電池の容量が低下するなどの原因となりうる。
前述した、構造式(100)で表される六フッ化リン酸リチウムは、集電体と反応して集電体表面に不動態被膜を形成し、集電体の腐食を抑制する場合がある。
そこで、本発明の一態様では、電解質の溶質に、一般式(G1)で表されるリチウム塩及び構造式(100)で表される六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を有することが好ましい。六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が集電体の表面に不動態被膜を形成し、集電体の腐食を抑制できる。六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)は、集電体の表面に不動態被膜を形成できる量を用いることが望ましい。また、一般式(G1)で表されるリチウム塩は、キャリアイオンとなるリチウムイオンを供給する役割を主に担い、また耐熱性が高い。さらに、一般式(G1)で表されるリチウム塩及び構造式(100)で表される六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を用いることで、耐熱性が高い蓄電装置とすることができる。また、蓄電池の加熱処理を行っても、充放電を繰り返した後に容量及びエネルギー密度が低下しづらい蓄電装置とすることができる。
本発明の一態様の蓄電装置では、溶解して作製した電解質を用いることが好ましい。
具体的には、電解質の溶媒としては、難燃性及び難蒸発性であるイオン液体(常温溶融塩ともいう)を一つまたは複数用いることで、蓄電装置の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電装置の破裂や発火などを防ぐことができる。これにより、蓄電装置の安全性を高めることができる。
電解質の組成は、X線光電子分光分析法(XPS:X―ray Photoelectron Spectroscopy)、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC―MS:Gas Chromatography―Mass Spectrometry)、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC―MS:Liquid Chromatography Mass Spectrometry)、イオンクロマトグラフ法(IC:Ion Chromatography)、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP―AES:Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy)、原子吸光分析法(AAS:Atomic Absorption Spectrometry)、グロー放電質量分析法(GD―MS:Glow Discharge Mass Spectrometry)、核磁気共鳴法(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR:Fourier Transform Infrared Spectroscopy)等を用いて確認できる。
また、セパレータとして一般的に使用されるポリエチレン、ポリプロピレン等は熱に弱い。高温下ではセパレータの微細孔が閉塞し、蓄電装置が動作しなくなる場合がある。
そこで、本発明の一態様の蓄電装置では、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylene sulfide)を含むセパレータ又はセルロース繊維を含むセパレータを用いることが好ましい。
ポリフェニレンサルファイドを含むセパレータ及びセルロース繊維を含むセパレータは、耐熱性や耐薬品性に優れる。
また、ポリフェニレンサルファイドを含むセパレータ及びセルロース繊維を含むセパレータは、高温下における電解液との反応性が低い。そのため、出力特性や充放電サイクル特性の低下を抑制できる。
<蓄電装置の構成例>
次に、本発明の一態様の蓄電装置の具体的な構成について説明する。
図1(A)に、本発明の一態様の蓄電装置である、蓄電装置500を示す。図1(A)では、蓄電装置500の一例として、薄型の蓄電装置の形態を示すが、本発明の一態様の蓄電装置はこれに限られない。
図1(A)に示すように、蓄電装置500は、正極503、負極506、第1のセパレータ507、第2のセパレータ520及び外装体509を有する。蓄電装置500は、正極リード510及び負極リード511を有してもよい。また接合部518は、外装体509の外周を熱圧着によって接合した部位である。
図1(B)に、正極503の外観図を示す。正極503は、正極集電体501及び正極活物質層502を有する。
図1(B)に示すように、正極503は、タブ領域281を有することが好ましい。タブ領域281の一部は、正極リード510と溶接されることが好ましい。タブ領域281は正極集電体501が露出する領域を有することが好ましく、正極集電体501が露出する領域に正極リード510を溶接することにより、接触抵抗をより低くすることができる。また、図1(B)ではタブ領域281の全域において正極集電体501が露出している例を示すが、タブ領域281は、その一部に正極活物質層502を有してもよい。
図1(C)に、負極506の外観図を示す。負極506は、負極集電体504及び負極活物質層505を有する。
図1(C)に示すように、負極506は、タブ領域282を有することが好ましい。タブ領域282の一部は、負極リード511と溶接されることが好ましい。タブ領域282は負極集電体504が露出する領域を有することが好ましく、負極集電体504が露出する領域に負極リード511を溶接することにより、接触抵抗をより低くすることができる。また、図1(C)ではタブ領域282の全域において負極集電体504が露出している例を示すが、タブ領域282は、その一部に負極活物質層505を有してもよい。
図1(A)に示すように、第1のセパレータ507は、正極503及び負極506と重なる領域を有する。第2のセパレータ520は、タブ領域281及びタブ領域282と重なる領域を有する。なお、第2のセパレータ520を設けない構造としてもよい。
図2(A)及び図2(B)に、図1(A)における一点鎖線A1−A2間の断面図の一例をそれぞれ示す。図2(A)及び図2(B)には、正極503と負極506を1組用いて作製した蓄電装置500の断面構造をそれぞれ示す。
図2(A)及び図2(B)に示すように、蓄電装置500は、正極503、負極506、第1のセパレータ507、第2のセパレータ520、電解質508及び外装体509を有する。第1のセパレータ507は、正極503と負極506の間に位置する。第2のセパレータ520は、正極503と外装体509の間、及び負極506と外装体509の間に位置する。外装体509内は、電解質508で満たされている。
正極503は、正極活物質層502と、正極集電体501とを含む。負極506は、負極活物質層505と、負極集電体504とを含む。活物質層は、集電体の片面又は両面に形成すればよい。第1のセパレータ507は、正極集電体501と負極集電体504の間に位置する。
蓄電装置は、正極及び負極をそれぞれ1つ以上有していればよい。例えば、蓄電装置は、複数の正極及び複数の負極からなる積層構造とすることもできる。
ここで、正極503及び負極506は、積層される複数の正極同士又は複数の負極同士を電気的に接続するために、タブ領域を有することが好ましい。また、タブ領域にはリードを電気的に接続することが好ましい。
図1(A)における一点鎖線B3−B4間の断面図の一例を図3(A)、一点鎖線B5−B6間の断面図の一例を図3(B)に示す。一点鎖線B3−B4間は、正極リード510及び正極503を有する領域の断面図である。一点鎖線B5−B6間は、負極リード511及び負極506を有する領域の断面図である。図3(A)及び図3(B)には、正極503と負極506を1組用いて作製した蓄電装置500の断面構造をそれぞれ示す。
図3(A)に示すように、第2のセパレータ520は、正極503と外装体509の間に設けられる。第2のセパレータ520は、正極が有するタブ領域281及び正極リード510と重なる領域を有することが好ましい。図3(B)に示すように、第2のセパレータ520は、負極506と外装体509の間に設けられる。第2のセパレータ520は、負極が有するタブ領域282及び負極リード511と重なる領域を有することが好ましい。
外装体509として、外装体の外面に導電性を有する材料を用い、外装体の内側(正極及び負極側)に絶縁性を有する樹脂を用いる場合、加熱処理により該樹脂が溶解し、外面の導電性を有する材料が露出する場合がある。外装体の導電性を有する材料が、正極リード510、負極リード511、正極集電体501又は負極集電体504と接触するとリークする原因となりうる。第2のセパレータ520を、正極503と外装体509の間、負極506と外装体509の間に設けることにより、前述のリークを抑制できる。なお、第2のセパレータ520を設けない構造としてもよい。
図4(A)に、図1(A)における一点鎖線A1−A2間の断面図の別の例を示す。また、図4(B)に図1(A)における一点鎖線B1−B2間の断面図を示す。
図4(A)及び図4(B)には、正極503と負極506を複数組用いて作製した蓄電装置500の断面構造を示す。蓄電装置500が有する電極層数に限定はない。電極層数が多い場合には、より多くの容量を有する蓄電装置とすることができる。
図4(A)及び図4(B)では、正極集電体501の片面に正極活物質層502を有する正極503を2つと、正極集電体501の両面に正極活物質層502を有する正極503を2つと、負極集電体504の両面に負極活物質層505を有する負極506を3つ用いる例を示す。つまり、蓄電装置500は、6層の正極活物質層502と、6層の負極活物質層505を有する。なお、図4(A)及び図4(B)では、第1のセパレータ507が袋状の例を示すが、これに限定されず、第1のセパレータ507は短冊状であっても、蛇腹状であってもよい。
また、図4において、正極集電体501の両面に正極活物質層502を有する一の正極を、正極集電体501の片面に正極活物質層502を有する2つの正極に置き換えることが好ましい。同様に、負極集電体504の両面に負極活物質層505を有する一の負極を、負極集電体504の片面に負極活物質層505を有する2つの負極に置き換えることが好ましい。図5に示す蓄電装置500は、正極集電体501の正極活物質層502が付着していない面同士、ならびに負極集電体504の負極活物質層505が付着していない面同士が向かい合わせとなって接している。
なお、図1(A)では、正極503と負極506の端部が概略揃っている例を示すが、正極503は、負極506の端部よりも外側に位置する部分を有していてもよい。
蓄電装置500において、負極506の正極503と重ならない領域の面積は小さいほど好ましい。
図2(A)では、負極506の端部が、正極503の内側に位置する例を示す。このような構成とすることにより、負極506を全て正極503と重ねる、又は負極506の正極503と重ならない領域の面積を小さくすることができる。
または、蓄電装置500において、正極503と負極506の面積は概略同じであることが好ましい。例えば、第1のセパレータ507を挟んで向かい合う正極503と負極506の面積は、概略同じであることが好ましい。例えば、第1のセパレータ507を挟んで向かい合う正極活物質層502の面積と負極活物質層505の面積は概略同じであることが好ましい。
図2(B)では、正極503の端部が、負極506の内側に位置する例を示す。このような構成とすることにより、正極503を全て負極506と重ねる、又は正極503の負極506と重ならない領域の面積を小さくすることができる。負極506の端部が正極503の端部よりも内側に位置すると、負極506の端部に電流が集中してしまう場合がある。例えば、負極506の一部に電流が集中することで、負極506上にリチウムが析出してしまうことがある。正極503の負極506と重ならない領域の面積を小さくすることで、負極506の一部に電流が集中することを抑制できる。これにより、例えば、負極506上へのリチウムの析出が抑制でき、好ましい。
図4(A)及び図4(B)に示すように、正極503と負極506を複数組用いる場合においても、正極503の端部が、負極506の内側に位置してもよい。また、正極503の端部と負極506の端部は概略揃うようにしてもよい。また、負極506の端部が、正極503の内側に位置してもよい。
図1(A)に示すように、正極リード510は、正極503に電気的に接続することが好ましい。同様に、負極リード511は、負極506に電気的に接続することが好ましい。正極リード510及び負極リード511は外装体509の外側に露出し、外部との電気的接触を得る端子として機能する。
または、正極集電体501及び負極集電体504は、外部との電気的接触を得る端子の役割を兼ねることもできる。その場合は、リードを用いずに、正極集電体501及び負極集電体504の一部を外装体509から外側に露出するように配置してもよい。
また、図1(A)では、正極リード510と負極リード511は、蓄電装置500の同じ辺に配置されているが、図6に示すように、正極リード510と負極リード511を蓄電装置500の異なる辺に配置してもよい。このように、本発明の一態様の蓄電装置は、リードを自由に配置することができるため、設計自由度が高い。よって、本発明の一態様の蓄電装置を用いた製品の設計自由度を高めることができる。また、本発明の一態様の蓄電装置を用いた製品の生産性を高めることができる。
<蓄電装置の作製方法例>
次に、本発明の一態様の蓄電装置である蓄電装置500の作製方法の一例を、図7乃至図10を用いて説明する。
まず、正極503、負極506、及び第1のセパレータ507を積層する。具体的には、正極503の上に第1のセパレータ507を配置する。その後、第1のセパレータ507の上に負極506を配置する。正極と負極を2組以上用いる場合は、さらに負極506の上に第1のセパレータ507を配置した後、正極503を配置する。このように第1のセパレータ507を正極503と負極506の間に挟みながら正極503と負極506を交互に積層する。
あるいは、第1のセパレータ507を袋状にしてもよい。第1のセパレータ507で電極を包むことで、該電極が製造工程中に損傷しにくくなり、好ましい。
まず、第1のセパレータ507上に正極503を配置する。次いで、第1のセパレータ507を図7(A)の破線で示した部分で折り、第1のセパレータ507で正極503を挟む。なお、ここでは正極503を第1のセパレータ507で挟む例について説明したが、負極506を第1のセパレータ507で挟んでもよい。
ここで、正極503の外側の第1のセパレータ507の外周部分を接合して、第1のセパレータ507を袋状(又はエンベロープ状)とすることが好ましい。第1のセパレータ507の外周部分の接合は、接着剤などを用いて行ってもよいし、超音波溶接や、加熱による融着により行ってもよい。
次に、第1のセパレータ507の外周部分を加熱により接合する。図7(A)に接合部514を示す。このようにして、正極503を第1のセパレータ507で覆うことができる。
なお、接着剤などを用いて第1のセパレータ507の外周部を接合する場合、接着剤の量は少ないことが好ましい。第1のセパレータ507に挟み込む電極(図7(A)においては正極503)が第1のセパレータ507からはみ出ないように外周部を接合すればよいため、例えば図7(B)に示すように接合部514を形成することで、接着剤の量を減らすことができる。図7(B)では、第1のセパレータ507の外周部のうち、折り目が形成された辺と交わる2辺の折り目近傍部と、折り目が形成された辺と向かい合う辺の一部に接合部514が形成されている。
次に、図7(C)に示すように、負極506と、セパレータに覆われた正極503と、を交互に重ねる。また、封止層115を有する正極リード510及び負極リード511を準備する。封止層115には、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
次に、図8(A)に示すように、正極503のタブ領域281に、封止層115を有する正極リード510を接続する。図8(B)に接続部の拡大図を示す。接合部512に圧力を加えながら超音波を照射して、正極503のタブ領域281及び正極リード510を電気的に接続する(超音波溶接)。このとき、タブ領域281に湾曲部513を設けるとよい。
湾曲部513を設けることによって、蓄電装置500の作製後に外から力が加えられて生じる応力を緩和することができる。よって、蓄電装置500の信頼性を高めることができる。
同様の方法を用いて、負極506のタブ領域282と、負極リード511と、を電気的に接続することができる。
次に、第2のセパレータ520上に、正極503、負極506及び第1のセパレータ507を配置する。
次に、第2のセパレータ520を図8(C)の中央付近に破線で示した部分で折り、第2のセパレータ520で、正極503、負極506及び第1のセパレータ507を挟む。なお、第2のセパレータ520は、タブ領域281及びタブ領域282を覆うようにすると好ましい。
ここで、第2のセパレータ520の外周部分を接合して、第2のセパレータ520を袋状(又はエンベロープ状)とすることが好ましい。第2のセパレータ520の外周部分の接合は、接着剤などを用いて行ってもよいし、超音波溶接や、加熱による融着により行ってもよい。
次に、第2のセパレータ520の外周部分を加熱により接合する。図9(A)に接合部521を示す。このようにして、正極503、負極506及び第1のセパレータ507を第2のセパレータ520で覆うことができる。
なお、接着剤などを用いて第2のセパレータ520の外周部を接合する場合、接着剤の量は少ないことが好ましい。第2のセパレータ520に挟み込む正極503、負極506及び第1のセパレータ507が第2のセパレータ520からはみ出ないように外周部を接合すればよいため、例えば図9(B)に示すように接合部521を形成することで、接着剤の量を減らすことができる。図9(B)では、第2のセパレータ520の外周部のうち、折り目が形成された辺と交わる2辺の折り目近傍部と、タブ領域281及びタブ領域282の近傍に接合部521が形成されている。
なお、第2のセパレータ520を設けない構造としてもよい。第2のセパレータ520を設けない場合は、第2のセパレータ520に関わる工程を削除すればよい。
次に、外装体509上に、正極503、負極506、第1のセパレータ507及び第2のセパレータ520を配置する。
次に、外装体509を、図9(C)の外装体509の中央付近に破線で示した部分で折り曲げる。
図10に、外装体509の外周を熱圧着により接合した部位を、接合部118として示す。電解質508を入れるための導入口119以外の外装体509の外周部を、熱圧着により接合する。熱圧着の際、リードに設けられた封止層も溶けてリードと外装体509との間を固定することができる。また、外装体509とリードとの間の密着性を向上することができる。
そして、減圧雰囲気下、或いは不活性ガス雰囲気下で所望の量の電解質508を導入口119から外装体509の内側に入れる。そして、最後に、導入口119を熱圧着により接合する。このようにして、薄型の蓄電装置である蓄電装置500を作製することができる。
蓄電装置500を作製した後には、エージングを行ってもよい。エージング条件の一例について以下に説明する。まず初めに0.001C以上0.2C以下のレートで充電を行う。温度は例えば室温以上50℃以下とすればよい。このときに、電解質の分解が生じ、ガスが発生した場合には、そのガスが電極間にたまると、電解質が電極表面と接することができない領域が発生してしまう。つまり、電極の実効的な反応面積が減少し、実効的な抵抗が高くなることに相当する。
過度に抵抗が高くなると、負極電位が下がることによって、黒鉛へのリチウムの挿入が起こると同時に、黒鉛表面にリチウムが析出してしまう。このリチウムの析出は容量の低下を招く場合がある。例えば、リチウムが析出した後、表面に被膜等が成長してしまうと、表面に析出したリチウムが再溶出できなくなり、容量に寄与しないリチウムが生じてしまう。また、析出したリチウムが物理的に崩落し、電極との導通を失った場合にも、やはり容量に寄与しないリチウムが生じてしまう。よって、負極電位が充電電圧上昇によりリチウム電位まで到達しないように、ガスを抜くことが好ましい。
ガス抜きを行う場合には、例えば薄型の蓄電装置の外装体の一部を切断し、開封すればよい。ガスにより外装体が膨張している場合には、再度、外装体の形を整えることが好ましい。また、再封止の前に必要に応じて電解質を足してもよい。ガス抜きを実施できない場合は、セル内部にガス退避用の空間を設け、電極間に溜まったガスを電極間から退避させてもよい。
また、ガス抜きを行った後に、室温よりも高い温度、好ましくは30℃以上60℃以下、より好ましくは35℃以上50℃以下において、例えば1時間以上100時間以下の間、充電状態で保持してもよい。初めに行う充電の際に、表面で分解した電解質は被膜を形成する。よって、例えばガス抜き後に室温よりも高い温度で保持することにより、形成された被膜が緻密化する場合も考えられる。
ここで充電及び放電のレートについて説明する。充電レートとは、電池容量に対する定電流充電時の電流の相対値、つまり充電時の電流値[A]÷電池の容量[Ah]の値を指し、Cレートとも呼ばれる。単位はCで表される。例えば、容量10Ahの電池を2Aの定電流で充電させた場合は、0.2Cのレートで充電させたと言う。1Cの充電レートとは、電池の全容量を1時間で充電させるだけの電流量となる。充電レートの値が高いほど、充電の速度が速いことを示す。また、放電レートとは、電池容量に対する定電流放電時の電流の相対値、つまり放電時の電流値[A]÷電池の容量[Ah]の値を指し、Cレートとも呼ばれる。単位はCで表される。例えば、容量10Ahの電池を2Aの定電流で放電させた場合は、0.2Cのレートで放電させたと言う。1Cの放電レートとは、電池の全容量を1時間で放電させるだけの電流量となる。放電レートの値が高いほど、放電の速度が速いことを示す。
<蓄電装置の各構成要素>
以下では、本発明の一態様の蓄電装置の構成要素について、詳述する。
≪電解質≫電解質は、溶質および溶媒を含む。
電解質の溶媒としては、難燃性及び難蒸発性であるイオン液体(常温溶融塩ともいう)を一つまたは複数用いることで、蓄電装置の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電装置の破裂や発火などを防ぐことができる。これにより、蓄電装置の安全性を高めることができる。
溶質としては、キャリアイオンを移動することが可能であり、且つキャリアイオンを有する材料を用いることができる。キャリアイオンがリチウムイオンである場合、溶質はリチウム塩である。用いるリチウム塩としては、耐熱性の高いLiBETA、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(Li(CF3SO2)2N、略称:LiTFSA)、リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド(Li(FSO2)2N、略称:LiFSA)、LiBF4、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiB(C2O4)2、略称:LiBOB)などが好ましい。
ところで、蓄電装置中の電池反応において、電解質が正極の集電体と反応し該集電体に含まれる金属が溶出すると、蓄電装置の容量の低下を生じ蓄電装置が劣化する。すなわち蓄電装置のサイクル特性試験を行うと充放電を重ねる毎に容量の低下が著しく、短寿命の蓄電装置となる。また、リードとの接続部の集電体の溶出が進行すると、断線に至る場合もある。そこで、本発明の一態様においては、電解質が有する溶質材料は、該集電体との反応が抑制され、かつ該集電体中の金属の溶出が抑制された材料を用いる。
正極の集電体材料中の金属としては、例えばアルミニウムまたはステンレスが挙げられる。本発明の一態様において、電解質に用いる溶質の材料は、これらの金属の正極集電体からの溶出が抑制される溶質を用いる。具体的には、本発明の一態様に用いることができる溶質には、リチウム塩として、前述の一般式(G1)で表されるリチウム塩、及び六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が挙げられる。
本発明の一態様に係る蓄電装置は、正極集電体中の金属の電解質への溶出が抑制されるため、正極集電体の劣化が抑制され、また、負極表面での金属の析出も抑制されるため、容量の劣化が小さくサイクル寿命の良好な蓄電装置とすることができる。
また、上記の溶質以外には、例えばLiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiAlCl4、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(C4F9SO2)(CF3SO2)等のリチウム塩を1種以上、任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
なお、上記の溶質では、キャリアイオンがリチウムイオンである場合について説明したが、リチウムイオン以外のキャリアイオンも用いることができる。リチウムイオン以外のキャリアイオンとしては、アルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオンの場合、溶質として、上記リチウム塩において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、またはマグネシウム等)を用いてもよい。
また、電解質にビニレンカーボネート(VC)、プロパンスルトン(PS)、tert−ブチルベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、又はスクシノニトリル、アジポニトリル等のジニトリル化合物などの添加剤を添加してもよい。添加剤の濃度は、例えば溶媒全体に対して0.1wt%以上5wt%以下とすればよい。
上述の溶媒及び溶質を用いると、本発明の一態様に係る蓄電装置の電解質を作製することができる。
≪集電体≫集電体は、蓄電装置内で顕著な化学変化を引き起こさずに高い導電性を示す限り、特別な制限はない。正極集電体及び負極集電体には、例えば、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、タンタル、マンガン等の金属、これらの合金、又は焼結した炭素などをそれぞれ用いることができる。または、銅もしくはステンレス鋼を炭素、ニッケルもしくはチタン等で被覆して用いてもよい。または、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。または、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で集電体を形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。
正極集電体の表面や、負極集電体の表面では、電解質との不可逆な反応が生じる場合がある。よって、正極集電体や負極集電体は、電解質との反応性が低いことが好ましい。
また、正極集電体及び負極集電体には、それぞれ、箔状、板状(シート状)、網状、円柱状、コイル状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状、多孔質状、及び不織布を包括する様々な形態の形状を適宜用いることができる。さらに、活物質層との密着性を上げるために、正極集電体及び負極集電体は、それぞれ、表面に細かい凹凸を有していてもよい。また、正極集電体及び負極集電体は、それぞれ、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
また、集電体の表面の一部にアンダーコート層を設けてもよい。ここでアンダーコート層とは、集電体と活物質層との接触抵抗の低減や、集電体と活物質層との密着性向上のための被覆層をいう。また、イオン液体と集電体との反応を抑制するアンダーコート層を設けてもよい。なお、アンダーコート層は、集電体の一面全体に形成されていなくてもよく、島状に(部分的に)形成されていてもよい。また、アンダーコート層が活物質として容量を発現しても構わない。アンダーコート層としては、例えば炭素材料を用いることができる。炭素材料としては、例えば、黒鉛や、アセチレンブラック等のカーボンブラック、カーボンナノチューブなどを用いることができる。また、アンダーコート層として、金属層、炭素及び高分子を含む層、並びに金属及び高分子を含む層を用いることもできる。
≪活物質層≫活物質層は、活物質を含む。活物質とは、キャリアであるイオンの挿入・脱離に関わる物質のみを指し、本明細書等では、活物質が含まれている層を活物質層と呼ぶ。活物質層には活物質に加えて導電助剤および結着剤(バインダー)が含まれていても良い。
正極活物質層は、1種類以上の正極活物質を有する。負極活物質層は、1種類以上の負極活物質を有する。
正極活物質及び負極活物質は、蓄電装置の電池反応の中心的役割を担いキャリアイオンの放出及び吸収を行う物質である。蓄電装置の寿命を高めるためには、活物質が、電池反応の不可逆反応に係る容量が小さい材料であることが好ましく、充放電効率の高い材料であることが好ましい。
正極活物質として例えば、層状岩塩型の結晶構造、またはスピネル型の結晶構造を有する複合酸化物等を用いることができる。また、正極活物質として例えば、ポリアニオン系の正極材料を用いることができる。ポリアニオン系の正極材料として例えば、オリビン型の結晶構造を有する材料、ナシコン型の材料、等が挙げられる。また、正極活物質として例えば、硫黄を有する正極材料を用いることができる。
正極活物質として、様々な複合酸化物を用いることができる。例えば、LiFeO2、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、Li2MnO3、V2O5、Cr2O5、MnO2等の化合物を用いることができる。
層状岩塩型の結晶構造を有する材料として例えば、LiMO2で表される複合酸化物を用いることができる。元素Mは、CoまたはNiより選ばれる一以上であることが好ましい。LiCoO2は、容量が大きいこと、大気中で安定であること、熱的に比較的安定であること等の利点があるため、好ましい。また、元素Mとして、CoおよびNiより選ばれる一以上に加えて、AlおよびMnより選ばれる一以上を有してもよい。
例えば、LiNixMnyCozOw(x、y、zおよびwはそれぞれ例えばx=y=z=1/3またはその近傍、w=2またはその近傍)を用いることができる。また、例えば、LiNixMnyCozOw(x、y、zおよびwはそれぞれ例えばx=0.8またはその近傍、y=0.1またはその近傍、z=0.1またはその近傍、w=2またはその近傍)を用いることができる。また、例えば、LiNixMnyCozOw(x、y、zおよびwはそれぞれ例えばx=0.5またはその近傍、y=0.3またはその近傍、z=0.2またはその近傍、w=2またはその近傍)を用いることができる。また、例えば、LiNixMnyCozOw(x、y、zおよびwはそれぞれ例えばx=0.6またはその近傍、y=0.2またはその近傍、z=0.2またはその近傍、w=2またはその近傍)を用いることができる。また、例えば、LiNixMnyCozOw(x、y、zおよびwはそれぞれ例えばx=0.4またはその近傍、y=0.4またはその近傍、z=0.2またはその近傍、w=2またはその近傍)を用いることができる。
近傍とは例えば、その値の0.9倍より大きく1.1倍より小さい値である。
正極活物質が有する遷移金属やリチウムの一部をFe、Co、Ni、Cr、Al、Mgなどから選ばれる一以上の元素で置換した材料や、正極活物質にFe、Co、Ni、Cr、Al、Mgなどから選ばれる一以上の元素をドープした材料を正極活物質として使用してもよい。
また、正極活物質として例えば、複合酸化物を複数組み合わせた固溶体を正極活物質として用いることができる。例えば、LiNixMnyCozO2(x、y、z>0、x+y+z=1)とLi2MnO3の固溶体を正極活物質として用いることができる。
スピネル型の結晶構造を有する材料として例えば、LiM2O4で表される複合酸化物を用いることができる。元素MとしてMnを有することが好ましい。例えば、LiMn2O4を用いることができる。また元素Mとして、Mnに加えてNiを有することにより、二次電池の放電電圧が向上し、エネルギー密度が向上する場合があり、好ましい。また、LiMn2O4等のマンガンを含むスピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料に、少量のニッケル酸リチウム(LiNiO2やLiNi1−xMxO2(M=Co、Al等))を混合することにより、二次電池の特性を向上させることができ好ましい。
正極活物質は例えば、一次粒子の平均粒子径が、1nm以上100μm以下であることが好ましく、50nm以上50μm以下であることがより好ましく、1μm以上30μm以下であることがより好ましい。また比表面積が1m2/g以上20m2/g以下であることが好ましい。また、二次粒子の平均粒子径は、5μm以上50μm以下であることが好ましい。なお平均粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)またはTEMによる観察、またはレーザ回折・散乱法を用いた粒度分布計等によって測定することができる。また比表面積は、ガス吸着法により測定することができる。
正極活物質の表面に炭素層などの導電性材料を設けてもよい。炭素層などの導電性材料を設けることで、電極の導電性を向上させることができる。例えば、正極活物質への炭素層の被覆は、正極活物質の焼成時にグルコース等の炭水化物を混合することで形成することができる。また、導電性材料として、グラフェン、マルチグラフェン、酸化グラフェン(GO:Graphene Oxide)又はRGO(Reduced Graphene Oxide)を用いることができる。ここで、RGOは例えば、酸化グラフェン(GO)を還元して得られる化合物を指す。
正極活物質の表面に酸化物又はフッ化物の一以上を有する層を設けてもよい。酸化物は、正極活物質と異なる組成を有してもよい。また、酸化物は、正極活物質と同じ組成を有してもよい。
ポリアニオン系の正極材料として例えば、酸素と、元素Xと、金属Aと、金属Mと、を有する複合酸化物を用いることができる。金属MはFe、Mn、Co、Ni、Ti、V、Nbの一以上であり、金属AはLi、Na、Mgの一以上であり、元素XはS、P、Mo、W、As、Siの一以上である。
オリビン型の結晶構造を有する材料として例えば、複合材料(一般式LiMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上))を用いることができる。一般式LiMPO4の代表例としては、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等のリチウム化合物を用いることができる。
特にLiFePO4は、安全性、安定性、高容量密度、初期酸化(充電)時に引き抜けるリチウムイオンの存在等、正極活物質に求められる事項をバランスよく満たしているため、好ましい。
オリビン型の結晶構造を有する正極活物質は例えば、一次粒子の平均粒子径が、1nm以上20μm以下であることが好ましく、10nm以上5μm以下であることがより好ましく、50nm以上2μm以下であることがより好ましい。また比表面積が1m2/g以上20m2/g以下であることが好ましい。また、二次粒子の平均粒子径は、5μm以上50μm以下であることが好ましい。
また、一般式Li(2−j)MSiO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等の複合材料を用いることができる。一般式Li(2−j)MSiO4の代表例としては、Li(2−j)FeSiO4、Li(2−j)NiSiO4、Li(2−j)CoSiO4、Li(2−j)MnSiO4、Li(2−j)FekNilSiO4、Li(2−j)FekColSiO4、Li(2−j)FekMnlSiO4、Li(2−j)NikColSiO4、Li(2−j)NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(2−j)FemNinCoqSiO4、Li(2−j)FemNinMnqSiO4、Li(2−j)NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、Li(2−j)FerNisCotMnuSiO4(r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等のリチウム化合物を材料として用いることができる。
また、AxM2(XO4)3(A=Li、Na、Mg、M=Fe、Mn、Ti、V、Nb、X=S、P、Mo、W、As、Si)の一般式で表されるナシコン型化合物を用いることができる。ナシコン型化合物としては、Fe2(MnO4)3、Fe2(SO4)3、Li3Fe2(PO4)3等がある。また、正極活物質として、Li2MPO4F、Li2MP2O7、Li5MO4(M=Fe、Mn)の一般式で表される化合物を用いることができる。
また、Vを有するポリアニオン系正極材料を用いることができる。代表例として、α−LiVOPO4、β−LiVOPO4、α1−LiVOPO4、LiVPO4F、LiVPO4O、LiVP2O7、LiVOSO4、Li2VOSiO4、LiVMoO6、等が挙げられる。
また、正極活物質として、NaFeF3、FeF3等のペロブスカイト型フッ化物、TiS2、MoS2等の金属カルコゲナイド(硫化物、セレン化物、テルル化物)、LiMVO4等の逆スピネル型の結晶構造を有する酸化物、バナジウム酸化物系(V2O5、V6O13、LiV3O8等)、マンガン酸化物、有機硫黄化合物等の材料を用いることができる。
また、正極活物質として、一般式LiMBO3(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II))で表されるホウ酸塩系正極材料を用いることができる。
また、正極活物質として、組成式LiaMnbMcOdで表すことができるリチウムマンガン複合酸化物を用いることができる。ここで、元素Mは、リチウム、マンガン以外から選ばれた金属元素、またはシリコン、リンを用いることが好ましく、ニッケルであることがさらに好ましい。また、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体を測定する場合、放電時に0<a/(b+c)<2、かつc>0、かつ0.26≦(b+c)/d<0.5を満たすことが好ましい。なお、高容量を発現させるために、表層部と中心部で、結晶構造、結晶方位または酸素含有量が異なる領域を有するリチウムマンガン複合酸化物とすることが好ましい。このようなリチウムマンガン複合酸化物とするためには例えば、1.6≦a≦1.848、0.19≦c/b≦0.935、2.5≦d≦3とすることが好ましい。さらに、Li1.68Mn0.8062Ni0.318O3の組成式であらわされるリチウムマンガン複合酸化物を用いることが特に好ましい。本明細書等において、Li1.68Mn0.8062Ni0.318O3の組成式であらわされるリチウムマンガン複合酸化物とは、原料材料の量の割合(モル比)を、Li2CO3:MnCO3:NiO=0.84:0.8062:0.318とすることにより形成したリチウムマンガン複合酸化物をいう。そのため該リチウムマンガン複合酸化物は、組成式Li1.68Mn0.8062Ni0.318O3で表されるが、この組成からずれることもある。
なお、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の金属、シリコン、リン等の組成は、例えばICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて測定することができる。またリチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の酸素の組成は、例えばEDX(エネルギー分散型X線分析法)を用いて測定することが可能である。また、ICP−MS分析と併用して、融解ガス分析、XAFS(X線吸収微細構造)分析の価数評価を用いることで求めることができる。なお、リチウムマンガン複合酸化物とは、少なくともリチウムとマンガンとを含む酸化物をいい、クロム、コバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、インジウム、ガリウム、銅、チタン、ニオブ、シリコン、およびリンなどからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオンの場合、正極活物質として、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。例えばナトリウム含有層状酸化物を用いることができる。
ナトリウムを有する材料として例えば、NaFeO2や、Na2/3[Fe1/2Mn1/2]O2、Na2/3[Ni1/3Mn2/3]O2、Na2Fe2(SO4)3、Na3V2(PO4)3、Na2FePO4F、NaVPO4F、NaMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II))、Na2FePO4F、Na4Co3(PO4)2P2O7、などのナトリウム含有酸化物を正極活物質として用いることができる。
また、正極活物質として、リチウム含有金属硫化物を用いることができる。例えば、Li2TiS3、Li3NbS4などが挙げられる。
負極活物質としては、例えば炭素系材料、合金系材料等を用いることができる。
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等がある。黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等の人造黒鉛や、球状化天然黒鉛等の天然黒鉛がある。また、黒鉛の形状としては鱗片状のものや球状のものなどがある。
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム−黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に卑な電位を示す。これにより、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。前述の通り、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
ここで、黒鉛材料について説明する。黒鉛とは複数のグラフェン層が、ファンデルワールス力によって互いに平行に積層した層状化合物である。黒鉛材料の表面は、グラフェン層に平行な面(ベーサル面、基底面ともいう。)と、複数のグラフェン層の端部が配列して形成される面(エッジ面、端面ともいう。)と、を含んでいる。ベーサル面では黒鉛を構成するグラフェン層のうち最外層に位置するグラフェン層の一方の面が露出しており、エッジ面では複数のグラフェン層の端部が露出している。二次電池の充放電に際しては、リチウムの挿入脱離は黒鉛材料のエッジ面が黒鉛材料への主たる出入り口となる。
負極活物質として黒鉛を用いる場合、エッジ面が露出した箇所においてPCを含む電解質が触れると、充放電時に黒鉛とPCとの副反応が生じる場合がある。本発明の一態様の蓄電装置が有する負極活物質として用いる球状化天然黒鉛は、上記エッジ面に接して、黒鉛層よりも結晶性の低い層が形成されているため、黒鉛とPCとの副反応を抑制できる場合がある。
キャリアイオンがリチウムイオンである場合、合金系材料としては、例えば、Mg、Ca、Ga、Si、Al、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、In等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高いため、蓄電装置の容量を高めることができる。このような元素を用いた合金系材料(化合物系材料)としては、例えば、Mg2Si、Mg2Ge、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等がある。
また、負極活物質として、SiO、SnO、SnO2、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)、リチウム−黒鉛層間化合物(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いることができる。ここで、SiOとは、珪素と酸素を有する化合物であり、珪素と酸素の原子数比を珪素:酸素=α:βとすると、αは、βの近傍の値を有することが好ましい。ここで近傍の値を有するとは、例えばαとβの差の絶対値は、βの値に対して好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下であればよい。
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつLi3−xMxN(MはCo、Ni又はCu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を示し好ましい。
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせることができる。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムと合金化反応を行わない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物が挙げられる。
負極活物質の一次粒子の平均粒径は、例えば5nm以上100μm以下が好ましい。
正極活物質層及び負極活物質層は、それぞれ、導電助剤を有してもよい。
導電助剤としては、例えば炭素材料、金属材料、又は導電性セラミックス材料等を用いることができる。また、導電助剤として繊維状の材料を用いてもよい。活物質層の総量に対する導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
導電助剤により、電極中に電気伝導のネットワークを形成することができる。導電助剤により、負極活物質どうしの電気伝導の経路を維持することができる。活物質層中に導電助剤を添加することにより、高い電気伝導性を有する活物質層を実現することができる。
導電助剤としては、例えば天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素繊維などを用いることができる。炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナノチューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。また、導電助剤として、例えばカーボンブラック(アセチレンブラック(AB)など)、グラファイト(黒鉛)粒子、グラフェン、酸化グラフェン、フラーレンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
薄片状のグラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性、及び柔軟性並びに機械的強度という優れた物理特性を有する。そのため、グラフェンを、導電助剤として用いることにより、活物質同士の接触点や、接触面積を増大させることができる。
グラフェンは、接触抵抗の低い面接触を可能とするものであり、また、薄くても導電性が非常に高く、少ない量でも効率よく活物質層内で導電パスを形成することができる。
平均粒径の小さい活物質、例えば1μm以下の活物質を用いる場合には、活物質の比表面積が大きく、活物質同士を繋ぐ導電パスがより多く必要となる。このような場合には、導電性が非常に高く少ない量でも効率よく導電パスを形成することができるグラフェンを用いることが、特に好ましい。
正極活物質層及び負極活物質層は、それぞれ、結着剤を有してもよい。
本明細書中において、結着剤は、活物質と活物質を結着もしくは接着させる機能、及び/又は、活物質層と集電体を結着もしくは接着させる機能を有する。また、結着剤は、電極又は電池の作製中に、その状態が変化する場合がある。例えば、結着剤は、液体、固体、又はゲル等の少なくともいずれか一の状態をとることがある。また、結着剤は、電極又は電池の作製中に、単量体(モノマー)から重合体(ポリマー)に変化する場合がある。
例えば、結着剤として水溶性の高分子を用いることができる。水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉などを用いることができる。
また、結着剤として、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン・イソプレン・スチレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体などのゴム材料を用いることができる。これらのゴム材料は、前述の水溶性の高分子と併用して用いてもよい。これらのゴム材料は、ゴム弾性を有し、伸び縮みしやすいため、充放電に伴う活物質の膨張収縮や、電極の曲げなどに伴うストレスに強く、信頼性の高い電極を得ることができる一方で、疎水基を有し水に溶けにくい場合がある。このような場合には、水溶液中で粒子が水に溶解しない状態で分散するので、活物質層の形成に使用する溶剤を含む組成物(電極合剤組成物ともいう)を、塗布するために適した粘度にまで高めることが難しいことがある。この際に、粘度調整機能の高い水溶性高分子、例えば多糖類を用いると、溶液の粘度を適度に高める効果が期待できるうえに、ゴム材料と互いに均一に分散し、均一性の高い良好な電極、例えば電極膜厚や電極抵抗の均一性が高い電極を得ることができる。
または、結着剤として、PVDF、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いることができる。
結着剤は上記のうち二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
活物質層の総量に対する結着剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、2wt%以上8wt%以下がより好ましく、2wt%以上5wt%以下がさらに好ましい。
≪セパレータ≫本発明の一態様の蓄電装置では、ポリフェニレンサルファイド(PPS)またはセルロース繊維を含むセパレータを用いる。セパレータは、単層構造であっても積層構造であってもよい。例えば、セルロース繊維を含むセパレータと、他のセパレータと、の積層構造であってもよい。
セパレータに用いることができる材料として、ポリフェニレンサルファイドやセルロース繊維の他に、ポリプロピレンサルファイド、フッ素系ポリマー、セルロース、紙、不織布、ガラス繊維、セラミックス、あるいは、ナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンといった合成繊維等から選ばれる一種以上を用いることができる。
≪外装体≫外装体509は、電解質508と接する面、すなわち内側の面が電解質508と顕著な反応を生じないことが好ましい。また、蓄電装置500の外部から蓄電装置500内に水分が混入すると、電解質508の成分等と水との反応が生じる場合がある。よって外装体509は、水分の透過性が低いことが好ましい。
外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等を用いた膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。このような三層構造とすることで、電解質や気体の透過を遮断するとともに、絶縁性を確保し、併せて耐電解質性を有する。外装体を内側に折り曲げて重ねて、又は、2つの外装体それぞれの内面を向かい合わせて重ねて熱を加えることにより、内面の材料が融け2つの外装体を融着することができ、封止構造を作製することができる。
外装体が融着等され封止構造が形成されている箇所を封止部とすると、外装体を内側に折り曲げて重ねた場合は、折り目以外の個所に封止部が形成され、外装体の第1の領域と、該第1の領域と重なる第2の領域とが融着等された構造となる。また、2枚の外装体を重ねた場合は熱融着等の方法で外周全てに封止部が形成される。
蓄電装置500は、可撓性を有する外装体509を用いることで、可撓性を有する構成とすることができる。可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機器に実装することができ、電子機器の変形に合わせて蓄電装置500も曲げることもできる。
なお、本発明の一態様において、蓄電装置を構成する各部材にグラフェン化合物を用いることができる。グラフェン化合物は後述の通り、修飾により構造及び特性を幅広く選択することができため、グラフェン化合物を適用しようとする部材に応じて、好ましい性質を発現させることができる。また、グラフェン化合物は機械的強度が高いため、グラフェン化合物は可撓性を有する蓄電装置を構成する各部材にも適用することができる。以下、グラフェン化合物について説明する。
グラフェンは、炭素原子が1原子層配列したものであり、炭素原子間にπ結合を有する。グラフェンが2層以上100層以下重なったものを、マルチグラフェンと呼ぶ場合がある。グラフェンおよびマルチグラフェンは、例えば、長手方向、あるいは面における長軸の長さが50nm以上100μm以下または800nm以上50μm以下である。
本明細書等において、グラフェンまたはマルチグラフェンを基本骨格として有する化合物をグラフェン化合物(グラフェンコンパウンド:Graphene Compoundともいう)と呼ぶ。グラフェン化合物には、グラフェンとマルチグラフェンを含む。
以下に、グラフェン化合物について詳細を説明する。
グラフェン化合物は例えば、グラフェンまたはマルチグラフェンが、炭素以外の原子、または炭素以外の原子を有する原子団に修飾された化合物である。また、グラフェンまたはマルチグラフェンが、アルキル基、アルキレン等の炭素を主とした原子団に修飾された化合物であってもよい。なお、グラフェンまたはマルチグラフェンを修飾する原子団を、置換基、官能基、または特性基等と呼ぶ場合がある。ここで、本明細書等において修飾とは、置換反応、付加反応またはその他の反応により、グラフェン、マルチグラフェン、グラフェン化合物、または酸化グラフェン(後述)に、炭素以外の原子、炭素以外の原子を有する原子団、または炭素を主とした原子団を導入することをいう。
なお、グラフェンの表面と裏面は、それぞれ異なる原子や原子団により修飾されていてもよい。また、マルチグラフェンにおいては、それぞれの層が異なる原子や原子団に修飾されていてもよい。
上述の原子または原子団により修飾されたグラフェンの一例として、酸素または酸素を含む官能基に修飾されたグラフェンまたはマルチグラフェンが挙げられる。ここで酸素を含む官能基として例えば、エポキシ基、カルボキシル基などのカルボニル基、または水酸基等が挙げられる。酸素または酸素を有する官能基により修飾されたグラフェン化合物を、酸化グラフェンと呼ぶ場合がある。また、本明細書においては、酸化グラフェンは多層の酸化グラフェンをも含むものとする。
酸化グラフェンにおける修飾の一例として、酸化グラフェンのシリル化について説明する。まず、窒素雰囲気中において、容器内に酸化グラフェンを入れ、容器にn−ブチルアミン(C4H9NH2)を加え、60℃に保ち1時間撹拌する。次に、容器にトルエンを加え、シリル化剤として、アルキルトリクロロシランをさらに加えて、窒素雰囲気中において、60℃に保ち5時間撹拌する。次に、容器にさらにトルエンを加え、吸引濾過して固体粉末を得て、これをエタノール中に分散させる。さらにこれを吸引濾過して固体粉末を得て、アセトンに分散させる。さらに、これを吸引濾過して固体粉末を得て、液体成分を気化してシリル化された酸化グラフェンが得られる。
なお修飾は、シリル化に限定されず、シリル化も上述の方法に限定されない。また、1種類の原子または原子団を導入するだけでなく、複数の種類の修飾を施し、複数の種類の原子または原子団を導入してもよい。グラフェン化合物に特定の原子団を導入することで、グラフェン化合物の物性を変化させることができる。従って、グラフェン化合物の用途に応じて望ましい修飾を施すことにより、グラフェン化合物に所望の性質を意図的に発現させることができる。
次に、酸化グラフェンの作製方法の一例を説明する。酸化グラフェンは、上記グラフェンまたはマルチグラフェンを酸化して得ることができる。または、酸化グラフェンは、酸化グラファイトを分離して得ることができる。酸化グラファイトは、グラファイトを酸化して得ることができる。ここで、酸化グラフェンに、さらに上述の原子または原子団を修飾してもよい。
酸化グラフェンを還元して得られる化合物を、RGO(Reduced Graphene Oxide)と呼ぶ場合がある。なお、RGOには、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素または酸素を含む原子団が炭素に結合した状態で残存する場合がある。例えばRGOは、エポキシ基、カルボキシル基などのカルボニル基、または水酸基等の官能基を有する場合がある。
グラフェン化合物は、複数のグラフェン化合物が部分的に重なりながら1枚のシート状となっていてもよい。このようなグラフェン化合物を、グラフェン化合物シートと呼ぶ場合がある。グラフェン化合物シートは例えば、厚さが0.33nm以上10mm以下、より好ましくは0.34nmより大きく10μm以下の領域を有する。グラフェン化合物シートは、炭素以外の原子、炭素以外の原子を有する原子団、またはアルキル基等の炭素を主とした原子団等により修飾されていてもよい。また、グラフェン化合物シートが有する複数の層のそれぞれにおいて、異なる原子または原子団により修飾されていてもよい。
グラフェン化合物は、炭素で構成される六員環の他に、炭素で構成される五員環や、炭素で構成される七員環以上の多員環を有してもよい。ここで、七員環以上の多員環の近傍では、リチウムイオンが通過可能な領域が生じる場合がある。
また例えば、複数のグラフェン化合物が集まって、シート状の形状となっていてもよい。
グラフェン化合物は平面的な形状を有するため、面接触を可能とする。
グラフェン化合物は薄くても導電性が高い場合があり、また面接触によりグラフェン化合物同士、あるいはグラフェン化合物と活物質との間の接触面積を増加させることができる。よって、体積あたりの量が少なくても効率よく導電パスを形成することができる。
一方で、グラフェン化合物を絶縁体として用いることもできる。例えばグラフェン化合物シートをシート状の絶縁体として用いることができる。ここで例えば、酸化グラフェンは酸化されていないグラフェン化合物と比較して絶縁性が高い場合がある。また、原子団に修飾されたグラフェン化合物は、修飾する原子団の種類により、絶縁性を高めることができる場合がある。
ここで、本明細書等においてグラフェン化合物は、グラフェン前駆体を有してもよい。グラフェン前駆体とは、グラフェンを製造するために用いられる物質のことをいい、グラフェン前駆体には例えば、上述の酸化グラフェンや、酸化グラファイトなどを含んでもよい。
なお、アルカリ金属を有するグラフェンや、酸素等の炭素以外の元素を有するグラフェンを、グラフェン類似体と呼ぶ場合がある。本明細書等においてグラフェン化合物には、グラフェン類似体も含まれる。
また、本明細書等におけるグラフェン化合物は、層間に原子、原子団、およびそれらのイオンを有してもよい。なお、グラフェン化合物が層間に原子、原子団、およびそれらのイオンを有することにより、グラフェン化合物の物性、例えば電気伝導性やイオン伝導性が変化する場合がある。また、層間距離が大きくなる場合がある。
グラフェン化合物は、高い導電性を有するという優れた電気特性と、高い柔軟性および高い機械的強度を有するという優れた物理特性と、を有する場合がある。また、グラフェン化合物は、修飾の種類に応じて、導電性を極めて低くし絶縁体とすることができる場合がある。また、グラフェン化合物は平面的な形状を有する。グラフェン化合物は、接触抵抗の低い面接触を可能とする。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の蓄電装置の使用例について図11を用いて説明する。
本発明の一態様の蓄電装置は、車両に搭載することができる。
蓄電装置を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
図11において、本発明の一態様である蓄電システムを用いた車両を例示する。図11(A)に示す自動車8400は、走行のための動力源として電気モータを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モータとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。自動車8400は蓄電システムを有する。蓄電システムは電気モータ8406を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
また、蓄電装置は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、蓄電装置は、自動車8400が有するナビゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
図11(B)に示す自動車8500は、自動車8500が有する蓄電装置にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図11(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された蓄電システム8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された蓄電システム8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両同士で電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電装置の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
また、図11(C)は、本発明の一態様の蓄電システムを用いた二輪車の一例である。図11(C)に示すスクータ8600は、蓄電システム8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。蓄電システム8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。
また、図11(C)に示すスクータ8600は、座席下収納8604に、蓄電システム8602を収納することができる。蓄電システム8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。
本発明の一態様によれば、蓄電装置のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させることができる。また、本発明の一態様によれば、蓄電装置の特性を向上することができ、よって、蓄電装置自体を小型軽量化することができる。蓄電装置自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した蓄電装置を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
本実施例では、本発明の一態様であるイオン液体を有する二次電池と、比較例の二次電池を作製し、これらの特性を評価した。
[二次電池の作製]
<サンプル1>
本発明の一態様であるサンプル1の二次電池は、電解液として、LiTFSAを1mol/L溶解させたpoEMI−FSAを用いた。poEMI−FSAの化学式を下記に示す。
正極活物質としてリン酸鉄リチウムを用い、還元された酸化グラフェンと混合して正極集電体に塗布した。還元として化学還元と熱還元を行い、まずNMP中でリン酸鉄リチウム、酸化グラフェン、アスコルビン酸を混合して、60℃で1時間、化学還元した。その後、170℃で10時間、熱還元した。正極集電体にはアルミニウム箔を用いた。
負極活物質として球状化天然黒鉛を用い、負極バインダとしてCMCとSBRを用い、これらを負極集電体である銅箔に塗布した。
サンプル1の容量比(正極/負極)は58.7%であった。
セパレータとして厚さ約50μmのセルロースを用いた。外装体としてラミネートフィルムを用いた。エンベロープ状にしたセパレータで正極を覆った。
セパレータで覆われた正極と負極を積層し、これらをポリイミドテープで固定し、正極に正極タブを超音波溶接し、負極に負極タブを超音波溶接した。正極タブにはアルミニウム箔、負極タブには銅とニッケルが積層された箔を用いた。これらを80℃で10時間乾燥させた後、ラミネートフィルムで覆った。そして上述の電解液を注入し、−100kPaの減圧下で封止してセルを作製した。
<サンプル2>
本発明の一態様であるサンプル2の二次電池も、サンプル1と同様に作製した。サンプル2の容量比(正極/負極)は77.3%であった。
<サンプル3>
比較例であるサンプル3の二次電池は、電解液として、LiTFSAを1mol/L溶解させたEMI−FSAを用いた。その他はサンプル1と同様に作製した。サンプル3の容量比(正極/負極)は57.9%であった。EMI−FSAの化学式を下記に示す。
[エージング]
サンプル1乃至サンプル3の二次電池に25℃でエージング処理をした。まず3.2Vまで0.01Cで充電した。そしてラミネートセルを開封して余剰なガスを除いてから、再度封止した。次に4Vまで0.05CでCC充電を行った。次に2Vまで0.2CでCC放電を行った。次に4Vまで0.2CでCC充電し、2Vまで0.2CでCC放電するサイクルを2回行った。
[サイクル特性]
<25℃での評価>
本発明の一態様のサンプル1および比較例のサンプル3の二次電池のサイクル特性を、25℃で評価した。25℃のサイクル特性は、4Vまで0.2CでCC充電し、2Vまで0.2CでCC放電して評価した。また200サイクル毎に0.1Cの充放電を行い、容量の変化を確認した。図12(A)にサンプル1、図12(B)にサンプル3の、25℃におけるサイクル特性を示す。
図12(B)に示すように、電解液にEMI−FSAを用いたサンプル3では100サイクル以内に急激に放電容量が低下し、200サイクル時点での放電容量維持率は7.3%であった。一方、本発明の一態様である、電解液にpoEMI−FSAを用いたサンプル1では、800サイクル時点での放電容量維持率が77%と極めて良好であった。なお図12(A)のサイクル試験終了時に容量が低下しているように見えるのは、放電途中でサイクル試験を終了したためであり、二次電池の劣化によるものではない。
<60℃での評価>
次に、本発明の一態様のサンプル2のサイクル特性を60℃で評価した。60℃のサイクル特性は、4Vまで0.5CでCC充電し、2Vまで0.5CでCC放電して評価した。また200サイクル毎に0.1Cの充放電を行い、容量の変化を確認した。図13にサンプル2の、60℃におけるサイクル特性を示す。
図13に示すように、より高い温度で充放電を行っても、本発明の一態様のサンプル2は良好なサイクル特性を示した。200サイクル時点の放電容量維持率は82.7%、400サイクル時点で76.4%、600サイクル時点で71.6%であった。
以上のように、本発明の一態様のイオン液体を用いた二次電池は、60℃で保持しても極めて良好なサイクル特性を示すことが明らかとなった。