JP6206044B2 - 負極活物質、負極活物質を含む負極、及びそれを用いたリチウムイオン二次電池 - Google Patents

負極活物質、負極活物質を含む負極、及びそれを用いたリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、負極活物質、負極活物質を含む負極、及びそれを用いたリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等と比べ、軽量、高容量であるため、携帯電子機器用電源として広く応用されている。また、ハイブリッド自動車や、電気自動車用に搭載される電源として有力な候補ともなっている。そして、近年の携帯電子機器の小型化、高機能化に伴い、これらの電源となるリチウムイオン二次電池への更なる高容量化が期待されている。
現在、リチウムイオン二次電池等の電気化学デバイスの負極活物質として、黒鉛等の炭素材料や、シリコンや酸化シリコン等の合金系負極活物質が数多く研究されている。しかし、負極活物質としてこのような材料を用いた場合、充放電に伴って負極活物質が膨張収縮するため、充放電を繰り返すことにより負極活物質層が低密度化し、活物質粒子と集電体との間の導電経路が分断されることから、サイクル特性が著しく低下する。
上述した課題を解決するために、負極活物質粒子をSi,Sn,Zn等で被覆する技術が提案されている(特許文献1)。
特開2000−173593号公報
しかしながら、上記特許文献1の方法では、負極活物質粒子の膨張を抑えきることが出来ず、サイクル特性が十分に向上しなかった。
本発明は上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、サイクル特性に優れた負極活物質、その負極活物質を含む負極、及びそれを用いたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記本発明にかかる負極活物質は、負極活物質粒子の表面に無機化合物を含有する層を有し、前記無機化合物の結晶構造がZnOHF型構造またはペロブスカイト構造である。
上記本発明にかかる負極活物質を用いることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が向上する。
前記無機化合物の結晶子サイズは、1nm以上200nm以下であることが好ましい。
上記本発明にかかる負極活物質を用いることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル特性がより向上する。
本発明にかかる負極活物質によれば、十分なサイクル特性を有する負極活物質、その負極活物質を含む負極、及びそれを用いたリチウムイオン二次電池を提供することが出来る。
本実施形態のリチウムイオン二次電池を示す模式図である。 結晶子サイズとサイクル維持率の関係である。
以下、場合により図面を参照にしつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
(リチウムイオン二次電池)
図1は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池を示す模式断面図である。図1に示すように、リチウムイオン二次電池100は、主として、積層体30、積層体30を密閉した状態で収容するケース50、及び積層体30に接続された一対のリード60、62を備えている。
積層体30は、一対の正極10、負極20が、セパレータ18を挟んで対向配置されたものである。正極10は、板状(膜状)の正極集電体12上に正極活物質層14が設けられたものである。負極20は、板状(膜状)の負極集電体22上に負極活物質層24が設けられたものである。正極活物質層14の主面及び負極活物質層24の主面が、セパレータ18の主面にそれぞれ接触している。正極集電体12及び負極集電体22の端部には、それぞれリード60、62が接続されており、リード60、62の端部はケース50の外部にまで延びている。
以下、正極10及び負極20を総称して、電極10、20といい、正極集電体12及び負極集電体22を総称して集電体12、22といい、正極活物質層14及び負極活物質層24を総称して活物質層14、24ということがある。まず、電極10、20について具体的に説明する。
(正極集電体)
正極集電体12は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミニウム、ステンレス又はそれらの合金の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
(正極活物質層)
正極活物質層14は、正極活物質、バインダー、及び、必要に応じた量の導電助剤から主に構成されるものである。
(正極活物質)
正極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、PF )とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知の電極活物質を使用できる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、及び、一般式:LiNiCoMnMaO(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV)、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素又はVOを示す)、チタン酸リチウム(LiTi12)、LiNiCoAl(0.9<a<1.3、0.9<x+y+z<1.1)等の複合金属酸化物が挙げられる。
(正極バインダー)
バインダーは、活物質同士を結合すると共に、活物質と集電体12とを結合している。バインダーは、上述の結合が可能なものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂が挙げられる。更に、上記の他に、バインダーとして、例えば、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を用いてもよい。また、バインダーとして電子伝導性の導電性高分子やイオン伝導性の導電性高分子を用いてもよい。電子伝導性の導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン等が挙げられる。この場合は、バインダーが導電助剤粒子の機能も発揮するので導電助剤を添加しなくてもよい。イオン伝導性の導電性高分子としては、例えば、リチウムイオン等のイオンの伝導性を有するものを使用することができ、例えば、高分子化合物(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリフォスファゼン等)のモノマーと、LiClO、LiBF、LiPF等のリチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩と、を複合化させたもの等が挙げられる。複合化に使用する重合開始剤としては、例えば、上記のモノマーに適合する光重合開始剤または熱重合開始剤が挙げられる。
正極活物質層14中のバインダーの含有量も特に限定されないが、添加する場合には活物質の質量に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。
(正極導電助剤)
導電助剤も、正極活物質層14の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素系材料や、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
正極活物質層14中のバインダーの含有量は特に限定されないが、活物質、導電助剤及びバインダーの質量の和を基準にして、1〜10質量%であることが好ましい。活物質とバインダーの含有量を上記範囲とすることにより、得られた電極活物質層14において、バインダーの量が少なすぎて強固な活物質層を形成できなくなる傾向を抑制できる。また、電気容量に寄与しないバインダーの量が多くなり、十分な体積エネルギー密度を得ることが困難となる傾向も抑制できる。
正極活物質層14中の導電助剤の含有量も特に限定されないが、添加する場合には活物質の質量に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。
(負極集電体)
負極集電体22は、導電性の板材であればよく、例えば、銅、ニッケル、ステンレス又はそれらの合金の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
(負極活物質層)
負極活物質層24は、負極活物質、バインダー、及び、必要に応じた量の導電助剤から主に構成されるものである。
(負極活物質)
本実施形態にかかる負極活物質は、負極活物質粒子の表面に無機化合物を含有する層を有し、前記無機化合物の結晶構造がZnOHF型構造またはペロブスカイト構造である。
無機化合物の結晶構造がZnOHF型構造またはペロブスカイト構造であると、結晶構造自身の柔軟性が高く、充電時にリチウムイオンが負極活物質にインターカレートして負極活物質が膨張する際の体積変化分を、活物質の表面に存在する無機化合物層の伸縮により補償するため、負極活物質層全体の膨張収縮量が低減し、負極活物質層の導電経路が分断されるのを軽減できる。このためサイクル特性が向上すると予想される。
結晶構造がZnOHF型構造である無機化合物としては、ZnOHF、RuZnCl、KSeOなどがある。その中でもZnOHFが好ましい。
また結晶構造がペロブスカイト構造である無機化合物としては、一般式ABO(例えば、Aはアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属など、Bは遷移金属)であらわされる化合物などがあげられる。(3)具体的にはBaTiO、SrTiO、CaTiO、NaNbOが挙げられ、中でもBaTiOが好ましい。
ZnOHF型構造及びペロブスカイト構造の柔軟性が高い理由としては、単位格子内に占める原子の充填率が低いことにより、原子変位が容易であることが考えられる。
この様なことから、無機化合物の結晶構造はZnOHF型構造またはペロブスカイト構造の単一構造であることが好ましい。
なお、ZnOHF型構造とは、ICDD(International Centre for Diffraction Data)の PDF(Powder Diffraction. Files)のリファレンスコード01‐074‐1816に掲載されている回折パターンを示す構造を指す。
また、負極活物質粒子の表面の無機化合物層は、電極断面をTEM−EDSにより観察し、無機化合物層の電子線回折を測定することにより結晶構造を判別することが出来る。したがって電池からも分析可能である。
前記無機化合物の結晶子サイズは1nm以上200nm以下であることが好ましく、20nm以上50nmであることが特に好ましい。
無機化合物の結晶子サイズが上記範囲内である場合、無機化合物からなる層の弾性が十分であり、負極活物質層の導電経路が分断されるのを抑制することができ、サイクル特性が向上する。無機化合物層の結晶子サイズが上記範囲に満たない場合、無機化合物からなる層の弾性が低下するおそれがあり、サイクル特性の向上が小さくなる可能性がある。また無機化合物層の結晶子サイズが上記範囲を超える場合、負極活物質層の電子伝導性が低下し、十分に高い放電容量が得られない可能性がある。必ずしも限定されるわけではないが、上述した範囲は、優れたサイクル特性のみならず、良好な電子伝導性によるレート特性の向上も期待できる。
さらに、前記無機化合物からなる層の厚さが1nm以上200nm以下であることが好ましい。
前記無機化合物層の厚さが上記範囲内である場合、無機化合物からなる層の変位が十分であり、負極活物質層の導電経路が分断されるのを抑制することができ、サイクル特性が向上する。無機化合物層の結晶子サイズが上記範囲に満たない場合、無機化合物からなる層の変位が不十分となるそれがあり、サイクル特性が向上しない可能性がある。また無機化合物層の厚さが上記範囲を超える場合、負極活物質層の電子伝導性が低下し、十分な放電容量が得られない可能性がある。
前記無機化合物層は負極活物質粒子の表面全部を被覆する必要はなく、本発明の効果を奏する程度に被覆されていればよい。例えば負極活物質表面を被覆する割合が負極活物質粒子表面全体に対して50%以上であればよい。
なお、結晶子サイズは、XRD回折装置(PANalytical社製)により負極活物質表面の無機化合物のXRDパターンを2θ=10°から100℃まで測定し、得られた全てのピークを用いて、Williamson−Hall法により算出できる。
(負極活物質粒子)
負極活物質粒子は、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出(インターカレート・デインターカレート、或いはドーピング・脱ドーピング)可能な黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、Al、Si、Sn等のリチウムと化合することのできる金属、TiO、SnO、SiO、SiO、Fe等の酸化物を主体とする結晶質・非晶質の化合物、チタン酸リチウム(LiTi12)等を含む粒子を用いることができる。また、負極活物質粒子の平均粒径は50nm以上50μm以下であることが好ましい。
前記無機化合物層を形成する方法としては、例えば、液相法、メカノケミカル法等の手法を用いることができる。例えば液相法では、以下のような手順で行うことが好ましい。
具体的には無機化合物層を形成するための原料を溶液中に錯体として存在させ、それを負極活物質粒子の表面に析出させることで無機化合物層を形成する方法である。
この方法は、まず、負極活物質粒子と金属フルオロ錯体を含む水溶液を用意する。
水溶液における金属フルオロ錯体の濃度は、金属フルオロ錯体の水への溶解度に制限されるが、概ね0.001〜1M程度が好ましい。なお、M=mol/Lである。
また、この水溶液には、金属フルオロ錯体からふっ化物イオン(F)を引き抜くことができる捕捉剤を含んでも良い。捕捉剤を添加すると、金属酸化物の堆積速度を速くすることができる。ほう酸を使う場合の濃度は、ほう酸の水への溶解度に制限されるが、処理溶液において0.01〜0.6M程度とすることが好ましい。
そして、負極活物質粒子をこの金属フルオロ錯体を含む水溶液に含浸させる。また、金属フルオロ錯体含有水溶液と、捕捉剤とを初めから混合してしまうのではなく、捕捉剤の水溶液に炭素材料を分散し、そこに金属フルオロ錯体水溶液を滴下しても良い。捕捉剤を用いない場合には、水に炭素材料を分散し、そこに金属フルオロ錯体水溶液を滴下しても良い。
負極活物質粒子を、前記金属フルオロ錯体を含む水溶液に含浸させる際に、例えば超音波振動を加えることや、金属フルオロ錯体を含む水溶液のpHを変更することで、析出する無機化合物の結晶子サイズを制御することができる。
前記金属フルオロ錯体としては、亜鉛フルオロ錯体、インジウムフルオロ錯体等が挙げられる。
前記捕捉剤としては、ほう酸(HBO)、アルミニウム(Al)、塩化第1鉄(FeCl)、塩化第2鉄(FeCl)、水酸化ナトリウム(NaOH)、アンモニア(NH)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、シリコン(Si)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)等が挙げられ、中でもほう酸が好ましい。付け加えるが、補足剤は必ずしも使う必要はない。
水溶液中では、例えば、
MF (x−2n)+nHO⇔MO+xF+2nH (1)
という平衡反応が成立しており、捕捉剤としてのHBOやAlが存在すると、
BO+4H+4F=HBF+3HO (2)
Al+6H+6F=HAlF+3/2H (3)
となり、(1)式の平衡を右側にシフトさせる。
詳しくは、ほう酸は(2)式のようにふっ化物イオンと反応しHBFとなる。ふっ化物イオンが消費されると(1)の平衡が右に進み金属酸化物であるMOが生成することを促進する。また、Alもまた(3)式のようにふっ化物イオンと反応しHAlFとなる。その結果(1)式において金属酸化物であるMOが生成する方向に平衡が進むことになる。金属フルオロ錯体の種類により(1)式の反応速度が十分速い場合や、生成する金属酸化物自身が捕捉剤として機能する場合には、捕捉剤を用いなくてもよい。
また、前記無機化合物層には、F、及び/又は、Bが含まれている場合がある。例えば、活物質全体(前記負極活物質粒子+無機化合物層+F+B)に対するFの濃度は50〜5000質量ppm、Bの濃度は10〜1000質量ppmとすることができる。
(負極バインダー及び負極導電助剤)
バインダー及び導電助剤には、上述した正極10に用いる材料と同様の材料を用いることができる。また、バインダー及び導電助剤の含有量も、負極活物質の体積変化の大きさや箔との密着性を加味しなければならない場合は適宜調整し、上述した正極10における含有量と同様の含有量を採用すればよい。添加する場合にはバインダーの添加量は、活物質の質量に対して2〜20質量%であることが好ましい。導電助剤の添加量は、活物質の質量に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。
電極10、20は、通常用いられる方法により作製できる。例えば、活物質、バインダー、溶媒、及び、導電助剤を含む塗料を集電体上に塗布し、集電体上に塗布された塗料中の溶媒を除去することにより製造することができる。
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。
塗布方法としては、特に制限はなく、通常電極を作製する場合に採用される方法を用いることができる。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。
集電体12、22上に塗布された塗料中の溶媒を除去する方法は特に限定されず、塗料が塗布された集電体12、22を、例えば80℃〜150℃の雰囲気下で乾燥させればよい。
そして、このようにして活物質層14、24が形成された電極を、その後、必要に応じて例えば、ロールプレス装置等によりプレス処理すればよい。ロールプレスの線圧は例えば、10〜50kgf/cmとすることができる。
次に、リチウムイオン二次電池100の他の構成要素を説明する。
(セパレータ)
セパレータは、電解液に対して安定であり、保液性に優れていれば特に制限はないが、一般的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンの多孔質シート、又は不織布が挙げられる。また、セパレータとして、固体電解質を使用することもできる。
(電解質)
電解質は、正極活物質層14、負極活物質層24、及び、セパレータ18の内部に含有させるものである。電解質としては、特に限定されず、例えば、本実施形態では、リチウム塩を含む電解液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いことにより、充電時の耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する電解液(非水電解質溶液)であることが好ましい。電解液としては、リチウム塩を非水溶媒(有機溶媒)に溶解したものが好適に使用される。リチウム塩としては特に限定されず、リチウムイオン二次電池の電解質として用いられるリチウム塩を用いることができる。例えば、リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiFSI、LiBOB等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、LiTFSI、LiBETI等の有機酸陰イオン塩等を用いることができる。
また、有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等の非プロトン性高誘電率溶媒や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、等の酢酸エステル類あるいはプロピオン酸エステル類等の非プロトン性低粘度溶媒が挙げられる。これらの非プロトン性高誘電率溶媒と非プロトン性低粘度溶媒を適当な混合比で併用することが望ましい。更には、イミダゾリウム、アンモニウム、及びピリジニウム型のカチオンを用いたイオン性液体を使用することができる。対アニオンは特に限定されるものではないが、BF 、PF 、(CFSO等が挙げられる。
電解液のリチウム塩の濃度は、電気伝導性の点から、0.5〜2.0Mが好ましい。なお、この電解質の温度25℃における導電率は0.01S/m以上であることが好ましく、電解質塩の種類あるいはその濃度により調整される。
電解質を固体電解質とする場合には、特に限定されないが、ゲル電解質、有機固体電解質、無機固体電解質が挙げられる。
ゲル電解質とする場合には、シリコーンゲル、ポリ(ビニリデンフルオライド)等を高分子材料として含有することが可能である。
前記有機固体電解質の具体例としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等が挙げられる。
前記無機固体電解質の具体例としては、LiS−P、LiS−SiS、Li4−xGe1−x(0≦x≦1)、Li11、LiS−SiS−LiPO等の硫化物が挙げられる。またLiPO70LiPO30LiPO、LiO−SiO、LiO−SiO−P−B−BaO、Li3+x2−v12(A、G、MおよびBは金属カチオンであり、0≦x≦5、0≦y≦3、0≦z≦3、0≦v≦2の関係を満たす)、Li(XはB、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、SbおよびSeからなる群から選択される少なくとも1種であり、YはTi、Zr、Ge、In、Ga、SnおよびAlからなる群から選択される少なくとも1種であり、a〜fは、0≦a≦5、0≦b≦3、0≦c≦3、0≦d≦3、3≦e≦12、0≦f≦2の関係を満たす)等の酸化物も好適に用いられる。
更に、本実施形態の電解液中には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、サイクル寿命向上を目的としたビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート等や、過充電防止を目的としたビフェニル、アルキルビフェニル等や、脱酸や脱水を目的とした各種カーボネート化合物、各種カルボン酸無水物、各種含窒素及び含硫黄化合物が挙げられる。
前記リチウム塩を含む電解液、イオン性液体、固体電解質は、これらを混合して使用してもよい。
(ケース)
ケース50は、その内部に積層体30及び電解液を密封するものである。ケース50は、電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。例えば、ケース50として、図1に示すように、金属箔52を高分子膜54で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔52としては例えばアルミ箔を、高分子膜54としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜54の材料としては融点の高い高分子、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜54の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が好ましい。
(リード)
リード60、62は、アルミ等の導電材料から形成されている。そして、公知の方法により、リード60、62を正極集電体12、負極集電体22にそれぞれ溶接し、正極10の正極活物質層14と負極20の負極活物質層24との間にセパレータ18を挟んだ状態で、電解液と共にケース50内に挿入し、ケース50の入り口をシールすればよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、リチウムイオン二次電池は図1に示した形状のものに限定されず、コイン形状に打ち抜いた電極とセパレータとを積層したコインタイプや、電極シートとセパレータとをスパイラル状に巻回したシリンダータイプ等であってもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(正極の作製)
正極活物質としてLi1.05Ni0.77Co0.20Al0.025(JFEミネラル株式会社製)を96重量%と、導電助剤としてカーボンブラックを2重量%と、グラファイトを0.5重量%と、バインダーとしてPVDFを1.5重量%と、N−メチル−2−ピロリドンの溶媒とを混合分散させて、ペースト状の正極スラリーを作製した。そして、コンマロールコーターを用いて、この正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に、均一に正極活物質層を塗布した。次いで、乾燥炉内にて、110℃の大気雰囲気下で上記正極活物質中のN−メチル−2−ピロリドン溶媒を乾燥させた。活物質の塗布量は13.3mg/cmとした。なお、上記アルミニウム箔の両面に塗布された正極活物質層の塗膜の厚みは、ほぼ同じ膜厚に調整した。上記正極活物質が形成された正極をロールプレス機によって、正極活物質層を正極集電体の両面に圧着させ、正極活物質層の密度が3.6g/cmなるように正極を作製した。以上により正極シートを得た。
(負極活物質の作製)
実施例1では負極活物質としてSi(平均粒径100 nm、純度98%以上)を用い、ZnOHF型構造をもつ無機化合物層を液相法により被覆した。前記無機化合物の被覆は以下の手順により行った。
ZnFを40℃の水に5分間溶解させ、0.1Mの水溶液とした。この水溶液にSi粉末40gを分散させた後、HBO(関東化学社製)をZnF水溶液の1.5倍の濃度になるように添加し、回転速度500rpmで撹拌を行った。また、撹拌時には30kHzの超音波振動を印加した。3時間後、溶液をろ過・水洗した後60℃で乾燥させ、ZnOHFにより被覆されたSi粉末を回収した。以上の手順により、実施例1の負極活物質が得られた。
(負極の作製)
前記負極活物質70.0重量%、アセチレンブラック15.0重量%、ポリアクリル酸15重量%及びN−メチル−2−ピロリドンの溶媒を混合分散させて、活物質層形成用のスラリーを調製した。このスラリーを、厚さ10μmの集電体である銅箔の一面に、活物質の塗布量が2.0mg/cmとなるように塗布し、100℃で乾燥することで活物質層を形成した。この工程により活物質層を銅箔両面に形成した後、上記負極活物質が形成された負極をプレスし、負極活物質層の密度が1.2g/cmなるように負極を作製した。以上により負極を得た。
(評価用リチウムイオン二次電池の作製)
上記で作製した正極、負極を用いて、これらの間にポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを挟んで、アルミラミネートパックに入れ、このアルミラミネートパックに、電解液として1MのLiPF溶液(溶媒:EC/DEC=3/7(体積比))を注液した後に真空シールし、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。
[実施例2〜12]
負極活物質粒子の平均粒径、撹拌する際に印加した超音波振動の振動数を表1記載の値で作製した負極活物質を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例13〜24]
表2記載の平均粒径をもつ負極活物質粒子表面に、ペロブスカイト構造を持ち、結晶子サイズが表2記載のBaTiOをメカノケミカル処理により被覆した負極活物質を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
実施例13〜24の負極活物質は以下の手順で作製した。平均粒子径が5nmの酸化チタン粒子が水に6wt%分散した酸化チタンゾル溶液に、含有される酸化チタンより2モル%過剰の水酸化バリウム8水和物を添加し、オートクレーブ(高圧反応容器)を用いて280℃1時間反応させた。得られた反応物のスラリーをろ過し、これを乾燥させて乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末を700℃にて表2記載の時間焼成した。これらをSiと共に500rpmで1時間ボールミル処理を行い、実施例13〜24の負極活物質を得た。
[実施例25〜31]
表3記載の平均粒径をもつ負極活物質粒子表面に、ペロブスカイト構造を持ち、結晶子サイズが表3記載のNaNbOを、遊星ボールミルを用いたメカノケミカル処理により被覆した負極活物質を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
実施例25〜31の負極活物質は以下の手順で作製した。8wt%の水酸化ナトリウム水溶液110mLに、酸化ニオブ4.6gを添加し、オートクレーブ(高圧反応容器)を用いて160℃、20時間反応させた。得られた反応物のスラリーをろ過し、これを乾燥させて乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末を700℃にて表3記載の時間焼成した。これらをSiと共に500rpmで1時間遊星ボールミル処理を行い、実施例25〜31の負極活物質を得た。
[比較例]
SiとAgを共に500rpmで1時間ボールミル処理を行うことにより、AgがSiに被覆された負極活物質を作製し、前記負極活物質を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。結果を表4に示す。
<無機化合物の結晶構造の確認方法>
各実施例にて作製した負極の断面をTEM−EDSを用いて負極活物質表面に形成された無機化合物を確認した。このとき、EDSにより構成元素を確認し、電子線回折により結晶構造を同定した。
<無機化合物の結晶子サイズの測定方法>
XRD回折装置(PANalytical社製)により負極活物質表面の無機化合物のXRDパターンを2θ=10°から100℃まで測定し、得られた全てのピークを用いて、Williamson−Hall法により結晶子サイズを算出した。
<サイクル特性の評価方法>
実施例及び比較例で作製した評価用リチウムイオン二次電池について、二次電池充放電試験装置(北斗電工株式会社製)を用い、室温にてサイクル特性の測定を行った。0.5Cで4.0Vまで定電流定電圧充電し、1Cで2.5Vまで定電流放電する充放電サイクルを500サイクル繰り返し、500サイクル後の容量維持率を測定し、サイクル特性を評価した。
Figure 0006206044
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実施例1から31で作製した負極活物質の分析結果と、その後作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を表1〜4にまとめた。また結晶子サイズとサイクル維持率の関係を図2に示す。結果からわかる通り、実施例1から31では高いサイクル特性を示した。比較例ではサイクル特性が低下した。比較例では無機化合物の結晶構造が面心立方構造であったため、無機化合物の柔軟性が低下したためであると考えられる。
10…正極、12…正極集電体、14…正極活物質層、18…セパレータ、20…負極、22…負極集電体、24…負極活物質層、30…積層体、50…ケース、52…金属箔、54…高分子膜、60,62…リード、100…リチウムイオン二次電池。

Claims (4)

  1. 負極活物質粒子の表面に無機化合物を含有する層を有し、前記無機化合物の結晶構造は、ZnOHF型結晶構造であり、前記層の厚さが1nm以上200nm以下であり、前記負極活物質粒子の表面を被覆する前記層の割合が、前記負極活物質粒子表面全体に対して50%以上であることを特徴とする負極活物質。
  2. 前記無機化合物の結晶子サイズが1nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
  3. 請求項1または2のいずれか一項に記載の負極活物質を含有する負極。
  4. 請求項3に記載の負極と、正極と、電解質と、を有するリチウムイオン二次電池。
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