JP2017152126A - 負極活物質、負極活物質を含有する負極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

負極活物質、負極活物質を含有する負極及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】十分なサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池用負極活物質を提供する。【解決手段】負極活物質が膨張する際の体積変化分を、表面に存在する多孔質無機化合物層の空隙が補償することで、バインダーの伸長が低減する。これによりバインダーの伸長に由来する電極活物質層の導電経路の切断が抑制され、サイクル特性が向上する。【選択図】 図1

Description

本発明は、負極活物質、負極活物質を含有する負極及びリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等と比べ、軽量、高容量であるため、携帯電子機器用電源として広く応用されている。また、ハイブリッド自動車や、電気自動車用に搭載される電源として有力な候補ともなっている。そして、近年の携帯電子機器の小型化、高機能化に伴い、これらの電源となるリチウムイオン二次電池への更なる高容量化が期待されている。
現在、リチウムイオン二次電池等の電気化学デバイスの負極活物質として、黒鉛等の炭素材料より充放電容量の大きいシリコンや酸化シリコン等の合金系負極活物質が数多く研究されている。しかし、負極活物質としてこのような材料を用いた場合、負極活物質が充放電に伴って膨張収縮するため、充放電を繰り返すことによりバインダーが伸長し、活物質粒子と集電体との間の導電経路が分断されることから、サイクル特性が炭素材料に比べて著しく低下する。
上述した課題を解決するために、負極活物質粒子をSi、Sn、Zn等で被覆し、負極活物質粒子の膨張を抑えることでサイクル特性の向上を図る技術が提案されている(特許文献1)。
特開2000−173593号公報
しかしながら、上記特許文献1の方法では、負極活物質粒子の膨張を抑えきることが出来ず、サイクル特性が十分に向上しなかった。
本発明は上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、サイクル特性の高い負極活物質、負極活物質を含有する負極及びその負極を有するリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記本発明にかかる負極活物質は、負極活物質粒子の表面を被覆する多孔質無機化合物層を有し、多孔質無機化合物の平均厚みと平均孔径の比(厚み/孔径)が6以上30以下であることを特徴としている。
上記本発明にかかる負極活物質を用いることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が向上する。
上記本発明にかかる負極活物質の多孔質無機化合物層の孔径が3nm以上10nm以下であることが好ましい。
上記本発明にかかる負極活物質を用いることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル特性がより向上する。
上記本発明にかかる負極活物質の多孔質無機化合物層の厚みが30nm以上150nm以下であることが好ましい。
上記本発明にかかる負極活物質を用いることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル特性がより向上する。
本発明によれば、十分なサイクル特性を有する負極活物質、その負極活物質を含有する含む負極及びその負極を有するリチウムイオン二次電池用負極活物質を提供することが出来る。
本実施形態のリチウムイオン二次電池の模式断面図である。 実施例1により得られた多孔質無機化合物層のSTEM像である。 実施例1における厚みの測定方法の概略図である。 実施例1における孔径の計測に用いる多孔質無機化合物層のSTEM像である。
以下、場合により図面を参照にしつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
(リチウムイオン二次電池)
図1は、本実施形態とするリチウムイオン二次電池を示す模式断面図である。図1に示すように、リチウムイオン二次電池100は、主として、積層体30、積層体30を密閉した状態で収容するケース50、及び積層体30に接続された一対のリード60、62を備えている。
積層体30は、一対の正極10、負極20が、セパレータ18を挟んで対向配置されたものである。正極10は、板状(膜状)の正極集電体12上に正極活物質層14が設けられたものである。負極20は、板状(膜状)の負極集電体22上に負極活物質層24が設けられたものである。正極活物質層14の主面及び負極活物質層24の主面が、セパレータ18の主面にそれぞれ接触している。正極集電体12及び負極集電体22の端部には、それぞれリード60、62が接続されており、リード60、62の端部はケース50の外部にまで延びている。
以下、正極10及び負極20を総称して、電極10、20といい、正極集電体12及び負極集電体22を総称して集電体12、22といい、正極活物質層14及び負極活物質層24を総称して活物質層14、24ということがある。まず、電極10、20について具体的に説明する。
(正極集電体)
正極集電体12は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミニウム又はそれらの合金、ステンレス等の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
(正極活物質層)
正極活物質層14は、正極活物質、バインダー、及び、必要に応じた量の導電助剤から主に構成されるものである。
(正極活物質)
正極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、PF )とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知の電極活物質を使用できる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、及び、一般式:LiNiCoMnMaO(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV、LiVOPO)、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素又はVOを示す)、チタン酸リチウム(LiTi12)、LiNiCoAl(0.9<x+y+z<1.1),Li過剰系等の複合金属酸化物が挙げられる。
(正極バインダー)
バインダーは、正極活物質同士を結合すると共に、正極活物質と集電体12とを結合している。バインダーは、上述の結合が可能なものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂が挙げられる。更に、上記の他に、バインダーとして、例えば、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を用いてもよい。また、バインダーとして電子伝導性の導電性高分子やイオン伝導性の導電性高分子を用いてもよい。電子伝導性の導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン等が挙げられる。この場合は、バインダーが導電助剤粒子の機能も発揮するので導電助剤を添加しなくてもよい。イオン伝導性の導電性高分子としては、例えば、リチウムイオン等のイオンの伝導性を有するものを使用することができ、例えば、高分子化合物(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリフォスファゼン等)のモノマーと、LiClO、LiBF、LiPF等のリチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩と、を複合化させたもの等が挙げられる。複合化に使用する重合開始剤としては、例えば、上記のモノマーに適合する光重合開始剤または熱重合開始剤が挙げられる。
正極活物質層14中のバインダーの含有量も特に限定されないが、添加する場合には正極活物質、導電助剤及びバインダーの質量の和を基準にして、0.5〜5質量%であることが好ましい。
(正極導電助剤)
導電助剤も、正極活物質層14の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素系材料や、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
正極活物質層14中の導電助剤の含有量は特に限定されないが、正極活物質、導電助剤及びバインダーの質量の和を基準にして、1〜10質量%であることが好ましい。正極活物質、導電助剤及びバインダーの含有量を上記範囲とすることにより、得られた正極活物質層14において、バインダーの量が少なすぎて強固な正極活物質層を形成できなくなる傾向を抑制できる。また、電気容量に寄与しないバインダーの量が多くなり、十分な体積エネルギー密度を得ることが困難となる傾向も抑制できる。
(負極集電体)
負極集電体22は、導電性の板材であればよく、例えば、銅、ニッケル、ステンレス又はそれらの合金の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
(負極活物質層)
負極活物質層24は、負極活物質、バインダー、及び、必要に応じた量の導電助剤から主に構成されるものである。
(負極活物質)
本実施形態の負極活物質は、負極活物質粒子の表面が多孔質無機化合物層で被覆されていることを特徴とするものである。
本実施形態の負極活物質は、充電時にリチウムイオンが負極活物質にインターカレートして負極活物質が膨張する際の体積変化分を、負極活物質の表面に存在する多孔質の無機化合物層の空隙が補償するため、バインダーの膨張収縮量が低減する。このためバインダーの膨張収縮に由来する負極活物質層の導電経路の切断が抑制され、サイクル特性が向上すると考えられる。
なお、多孔質無機化合物層は、空孔が確認できない程度の緻密膜ではないため、上記機能を持つと考えられる。したがって上記機能を有する範囲においては多孔質であると認めることができる。ただし経験的には空隙率が10%以上の場合を多孔質、10%未満の場合を緻密と定義することが可能である。もちろんそれに限定されるものではない。また、この様な多孔質無機化合物層の確認は、負極活物質を含有する電極の断面をSTEM等の透過型電子顕微鏡により観察することで負極活物質粒子の表面を被覆する層内の空孔による像がコントラストとして観察されるのでそれにより確認でき、その空孔の占有率を画像解析による2値化処理により計算することで空隙率を算出することができる。
負極活物質粒子としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出(インターカレート・デインターカレート、或いはドーピング・脱ドーピング)可能な黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、Al、Si、Sn等のリチウムと化合することのできる金属、SiO、SiO、またはそれらの混合物等の酸化シリコンや、TiO、SnO、Fe等の酸化物を主体とする結晶質・非晶質の化合物、チタン酸リチウム(LiTi12)等を含む粒子が挙げられる。
多孔質無機化合物層は連続膜であることが好ましい。この様な構成により負極活物質が膨張収縮することによるバインダーへの影響を低減することができる。また、充放電中の多孔質無機化合物層の脱落を抑制でき、負極活物質層やセパレータの空孔を閉塞しないため、イオン伝導性を維持することができ、サイクル劣化が低減される。
なお、連続膜とは粒子の凝集体ではなく、同一材料のものが負極活物質表面に連なって形成され、一体化した被膜を示す。したがって、粒子の凝集体に通常観測される粒界が観測されないものを示す。連続膜の確認も、負極活物質を含有する電極の断面をSTEM等の透過型電子顕微鏡により観察することで容易に確認できる。
負極活物質粒子を被覆する多孔質無機化合物層の被覆率は上述した効果を有する範囲であれば特に限定されるものではないが、50%以上が好ましい。なお、多孔質無機化合物層は負極活物質粒子の表面全てを完全に被覆されていない場合でも効果はあるが、表面全てに被覆されていることが好ましい。
また、多孔質無機化合物層の孔径が3nm以上10nm以下であることが好ましい。
多孔質無機化合物層の孔径が上記範囲内である場合、充放電の体積変化分を埋め合わせる孔径として適当であり、バインダーの伸長を低減させることが出来る。
さらに多孔質無機化合物層の厚みは30nm以上150nm以下であることが好ましい。
多孔質無機化合物層の厚みが上記範囲内である場合、より効果的にバインダーの伸長を低減させることが出来る。
負極活物質粒子の表面を被覆する多孔質無機化合物層は、TiO、SnO、ZnO、NiO、ZrO、Nb、VO、CrO、MoO、RuO、RuO、WO、Fe、SiO等の酸化物が考えられる。あるいは、これらの金属との炭化物、窒化物等でもよい。また、例示した酸化物、炭化物、窒化物に他の元素を置換したものであっても良い。酸化物を被覆させる場合、液相法等により容易に形成することが出来る。
液相法の一例として、具体的には多孔質無機化合物層を形成するための原料を溶液中に錯体として存在させ、それを負極活物質粒子の表面に析出させることで多孔質無機化合物層を形成する。次に具体的な手順を順に沿って説明する。
まず、負極活物質粒子と金属フルオロ錯体を含む水溶液を用意する。
水溶液における金属フルオロ錯体の濃度は、金属フルオロ錯体の水への溶解度に制限されるが、概ね0.001〜1M程度が好ましい。なお、M=mol/Lである。
また、この水溶液には、金属フルオロ錯体からふっ化物イオン(F)を引き抜くことができる捕捉剤を含んでも良い。捕捉剤を添加すると、金属酸化物の堆積速度を速くすることができる。ほう酸を使う場合の濃度は、ほう酸の水への溶解度に制限されるが、処理溶液において0.01〜0.6M程度とすることが好ましい。
そして、酸化シリコン粉末をこの金属フルオロ錯体を含む水溶液に含浸させる。具体的には、酸化シリコン粉末を金属フルオロ錯体含有水溶液中に投入し、必要に応じて攪拌等すればよい。また、金属フルオロ錯体含有水溶液と、捕捉剤とを初めから混合してしまうのではなく、捕捉剤の水溶液に炭素材料を分散し、そこに金属フルオロ錯体水溶液を滴下しても良い。捕捉剤を用いない場合には、水に炭素材料を分散し、そこに金属フルオロ錯体水溶液を滴下しても良い。
前記負極活物質粒子の表面は疎水化されていることが望ましい。負極活物質粒子表面が疎水化されていることで、濡れ性が低下し、析出する領域が制限されるため、析出する無機化合物層は容易に空隙を含む多孔質層となる。前記の析出過程に続いて連続的に析出する無機化合物層は、前記空隙を含む多孔質層を基材とするため、同様に空隙を含む多孔質層となる。以上の全析出過程の結果、析出する無機化合物層は多孔質になると考えられる。
疎水化の方法は、疎水性の物質、例えばカーボン等により被覆する方法、あるいは負極活物質粒子の表面に、疎水化剤、例えば界面活性剤、シリコーンオイル、又はアルキルハロゲノシラン、アルキルアルコキシシラン、アルキルジシラザンなどのシリル化剤の気体を接触させる方法が挙げられる。このような上記疎水化剤等を用いその量を調整することによりのちに形成する多孔質無機化合物層中の空孔の孔径を制御できる。
前記金属フルオロ錯体としては、すずフルオロ錯体、けい素フルオロ錯体、チタンフルオロ錯体、ジルコニウムフルオロ錯体、インジウムフルオロ錯体、マグネシウムフルオロ錯体、亜鉛フルオロ錯体、アルミニウムフルオロ錯体等が挙げられ、中でも、すずフルオロ錯体、チタンフルオロ錯体が好ましい。
具体的には、金属フルオロ錯体としては、ふっ化ジルコン酸(HZrF)、ふっ化ケイ酸(HSiF)、ふっ化チタン酸(HTiF)、又はこれらの塩、ふっ化すず(SnF、SnF)、ふっ化インジウム(InF)、ふっ化銅(CuF)、ふっ化マグネシウム(MgF)、ふっ化亜鉛(ZnF)、ふっ化アルミニウム(AlF)等からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。中でも、ふっ化チタン酸、これらの塩、及び、ふっ化すずからなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
金属フルオロ錯体の塩としては、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられ、例えば、KZrF,KSiF,KTiF,CaZrF,CaSiF,CaTiF,(NHZrF,(NHSiF,(NHTiF等が挙げられる。
また、このような金属フルオロ錯体は、例えば、フルオロ錯体ではない金属化合物をふっ酸(HF)水溶液、ふっ化水素アンモニウム(NHF・HF)水溶液、ふっ化アンモニウム(NHF)水溶液等に溶解させることによっても得ることができる。例えばオキシ水酸化鉄(FeOOH)、水酸化コバルト(Co(OH))をNHF・HF水溶液に溶解させると、水溶液中でFeF 3−、CoF 4−のような金属フルオロ錯体になるので、本発明に利用可能である。
前記捕捉剤としては、ほう酸(HBO)、アルミニウム(Al)、塩化第1鉄(FeCl)、塩化第2鉄(FeCl)、水酸化ナトリウム(NaOH)、アンモニア(NH)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、シリコン(Si)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)等が挙げられ、中でもほう酸が好ましい。付け加えるが、補足剤は必ずしも使う必要はない。
水溶液中では、例えば、
MF (x−2n)+nHO⇔MO+xF+2nH (1)
という平衡反応が成立しており、捕捉剤としてのHBOやAlが存在すると、
BO+4H+4F=HBF+3HO (2)
Al+6H+6F=HAlF+3/2H (3)
となり、(1)式の平衡を右側にシフトさせる。
詳しくは、ほう酸は(2)式のようにふっ化物イオンと反応しHBFとなる。ふっ化物イオンが消費されると(1)の平衡が右に進み金属酸化物であるMOが生成することを促進する。また、Alもまた(3)式のようにふっ化物イオンと反応しHAlFとなる。その結果(1)式において金属酸化物であるMOが生成する方向に平衡が進むことになる。金属フルオロ錯体の種類により(1)式の反応速度が十分速い場合や、生成する金属酸化物自身が捕捉剤として機能する場合には、捕捉剤を用いなくてもよい。
また、前記多孔質無機化合物層には、F、及び/又は、Bが含まれている場合がある。例えば、負極活物質全体(前記負極活物質粒子+多孔質無機化合物層+F+B)に対するFの濃度は50〜5000質量ppm、Bの濃度は10〜1000質量ppmであることができる。
(負極バインダー及び負極導電助剤)
バインダー及び導電助剤には、上述した正極10に用いる材料に加え、PAA等のアクリル系樹脂も用いることができる。また、バインダー及び導電助剤の含有量も、負極活物質の体積変化の大きさや箔との密着性を加味しなければならない場合は適宜調整し、上述した正極10における含有量と同様の含有量を採用すればよい。添加する場合にはバインダーの添加量は、負極活物質の質量に対して2〜20質量%であることが好ましい。導電助剤の添加量は、負極活物質の質量に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。
上述した構成要素により、電極10、20は、通常用いられる方法により作製できる。例えば、活物質(正極活物質または負極活物質)、バインダー(正極バインダーまたは負極バインダー)、溶媒、及び、導電助剤(正極導電助剤または負極導電助剤)を含む塗料を集電体上に塗布し、集電体上に塗布された塗料中の溶媒を除去することにより製造することができる。
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、水等を用いることができる。
塗布方法としては、特に制限はなく、通常電極を作製する場合に採用される方法を用いることができる。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。
集電体12、22上に塗布された塗料中の溶媒を除去する方法は特に限定されず、塗料が塗布された集電体12、22を、例えば80℃〜150℃の雰囲気下で乾燥させればよい。
そして、このようにして活物質層14、24が形成された電極を、その後、必要に応じて例えば、ロールプレス装置等によりプレス処理すればよい。ロールプレスの線圧は例えば、10〜50kgf/cmとすることができる。
次に、リチウムイオン二次電池100の他の構成要素を説明する。
(セパレータ)
セパレータは、電解液に対して安定であり、保液性に優れていれば特に制限はないが、一般的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンの多孔質シート、又は不織布が挙げられる。
(電解質)
電解質は、正極活物質層14、負極活物質層24、及び、セパレータ18の内部に含有させるものである。電解質としては、特に限定されず、例えば、本実施形態では、リチウム塩を含む電解液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いことにより、充電時の耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する電解液(非水電解質溶液)であることが好ましい。電解液としては、リチウム塩を非水溶媒(有機溶媒)に溶解したものが好適に使用される。リチウム塩としては特に限定されず、リチウムイオン二次電池の電解質として用いられるリチウム塩を用いることができる。例えば、リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiFSI、LiBOB等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、(CFSONLi等の有機酸陰イオン塩等を用いることができる。
また、有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、等の非プロトン性高誘電率溶媒や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、等の酢酸エステル類あるいはプロピオン酸エステル類等の非プロトン性低粘度溶媒が挙げられる。これらの非プロトン性高誘電率溶媒と非プロトン性低粘度溶媒を適当な混合比で併用することが望ましい。更には、イミダゾリウム、アンモニウム、及びピリジニウム型のカチオンを用いたイオン性液体を使用することができる。対アニオンは特に限定されるものではないが、BF 、PF 、(CFSO等が挙げられる。イオン性液体は前述の有機溶媒と混合して使用することが可能である。
電解液のリチウム塩の濃度は、電気伝導性の点から、0.5〜2.0Mが好ましい。なお、この電解質の温度25℃における導電率は0.01S/m以上であることが好ましく、電解質塩の種類あるいはその濃度により調整される。
電解質を固体電解質やゲル電解質とする場合には、ポリ(ビニリデンフルオライド)等を高分子材料として含有することが可能である。
更に、本実施形態の電解液中には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、サイクル寿命向上を目的としたビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート等や、過充電防止を目的としたビフェニル、アルキルビフェニル等や、脱酸や脱水を目的とした各種カーボネート化合物、各種カルボン酸無水物、各種含窒素及び含硫黄化合物が挙げられる。
(ケース)
ケース50は、その内部に積層体30及び電解液を密封するものである。ケース50は、電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。例えば、ケース50として、図1に示すように、金属箔52を高分子膜54で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔52としては例えばアルミ箔を、高分子膜54としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜54の材料としては融点の高い高分子、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜54の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が好ましい。
(リード)
リード60、62は、アルミ等の導電材料から形成されている。
そして、公知の方法により、リード60、62を正極集電体12、負極集電体22にそれぞれ溶接し、正極10の正極活物質層14と負極20の負極活物質層24との間にセパレータ18を挟んだ状態で、電解液と共にケース50内に挿入し、ケース50の入り口をシールすればよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、リチウムイオン二次電池は図1に示した形状のものに限定されず、コイン形状に打ち抜いた電極とセパレータとを積層したコインタイプや、電極シートとセパレータとをスパイラル状に巻回したシリンダータイプ等であってもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(正極の作製)
正極活物質としてLi1.05Ni0.77Co0.20Al0.025を96重量%と、導電助剤としてカーボンブラックを2重量%と、グラファイトを0.5重量%と、バインダーとしてPVDFを1.5重量%と、N−メチル−2−ピロリドンの溶媒とを混合分散させて、ペースト状の正極スラリーを作製した。そして、コンマロールコーターを用いて、この正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に、均一に正極活物質層を塗布した。次いで、乾燥炉内にて、110℃の大気雰囲気下で上記正極活物質中のN−メチル−2−ピロリドン溶媒を乾燥させた。正極活物質の塗布量は22.0mg/cmとした。なお、上記アルミニウム箔の両面に塗布された正極活物質層の塗膜の厚みは、ほぼ同じ膜厚に調整した。上記正極活物質が形成された正極をロールプレス機によって、正極活物質層を正極集電体の両面に圧着させ、正極活物質層の密度が3.6g/cmとなるように正極を作製した。以上により正極シートを得た。
(負極活物質の作製)
前記負極活物質への多孔質無機化合物層の被覆は以下の手順で行った。
(NHTiF(森田化学工業社製)を40℃の水に5分間溶解させ、0.3Mの水溶液とした。この水溶液に活物質に対して0.2wt%のヘキサメチルジシラザンを用いて疎水化処理したシリコン含有酸化シリコン粉末40gを分散させた後、HBO(関東化学社製)を(NHTiF水溶液の1.5倍の濃度になるように添加し、回転速度500rpmで撹拌を行った。3時間後、溶液をろ過・水洗した後60℃で乾燥させ、Ti酸化物により被覆された酸化シリコンを回収した。
(負極の作製)
負極活物質87.9重量%と、アセチレンブラック2.1重量%と、ポリアミドイミド樹脂10重量%と、N−メチル−2−ピロリドンの溶媒とを混合分散させて、負極活物質層形成用のスラリーを調製した。このスラリーを、厚さ10μmの銅箔の一面に、負極活物質の塗布量が3.3mg/cmとなるように塗布し、100℃で乾燥することで負極活物質層を形成した。上記負極活物質が形成された負極をロールプレス機によって、負極活物質層を負極集電体の両面に圧着させ、負極活物質層の密度が1.5g/cmになるように負極を作製した。以上により負極シートを得た。得られた電極断面をSTEMにて観察した。その結果を図2に示す。負極活物質粒子表面に多孔質無機化合物層ができていることが確認された。
<多孔質無機化合物層の厚みの測定方法>
負極活物質表面の多孔質無機化合物層の厚み測定は以下の手順で行った。まず、乾燥後の負極活物質粒子の断面をSTEMにて観察し、得られた断面STEM像から多孔質無機化合物層の部分の面積を画像解析にて2値化処理し算出する。その多孔質無機化合物層の断面積を負極活物質粒子の外周で除したものを多孔質無機化合物層の厚みとした。上記の操作を任意の10粒子それぞれについて行った。たとえば実施例1で得られた図2を用いて具体的に説明すると、まず図2のように得られたSTEM像の写真中央に位置する円で囲んだ粒子に注目する。その注目した粒子について図3に模式的に示す。図3に示した通り、多孔質無機化合物層(A)の部分の面積を画像解析にて2値化処理して算出し、それを負極活物質粒子(B)の外周で除した。以上のようにして得られた値を多孔質無機化合物層の厚み(C)とした。なお、(B)と(B)の間に(C)が存在する場合は(C)の値の1/2とした。
<多孔質無機化合物層の孔径の測定方法>
負極活物質表面の多孔質無機化合物層の孔径測定は以下の手順で行った。STEM(JEOL社製)を用いて負極活物質表面の多孔質無機化合物層を撮影した(図4)。任意に選択した一負極活物質粒子表面の多孔質無機化合物層の断面図において測定領域を任意に選び、当該領域内の孔径を計測した。この操作を10か所について行い、平均したものを多孔質無機化合物層の孔径とした。
(評価用リチウムイオン二次電池の作製)
上記で作製した正極、負極を用いて、これらの間にポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを挟んで、アルミラミネートパックに入れ、このアルミラミネートパックに、電解液として1MのLiPF溶液(溶媒:EC/DEC=3/7(体積比))を注液した後に真空シールし、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。
[実施例2〜5]
(NHTiF(森田化学工業社製)を40℃の水に5分間溶解させ、0.3Mの水溶液とした。この水溶液に表1に示す量のヘキサメチルジシラザンを用いて疎水化処理したシリコン含有酸化シリコン粉末40gを分散させた後、HBO(関東化学社製)を(NHTiF水溶液の1.5倍の濃度になるように添加し、回転速度500rpmで撹拌を行った。3時間後、溶液をろ過・水洗した後60℃で乾燥させ、Ti酸化物により被覆された酸化シリコン粒子を回収し、負極活物質とした。上記の方法により作製した負極活物質を用いた事以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例6〜11]
(NHTiF(森田化学工業社製)を40℃の水に5分間溶解させ、表1に示す濃度の水溶液とした。この水溶液に活物質に対して0.4wt%のヘキサメチルジシラザンを用いて疎水化処理したシリコン含有酸化シリコン粉末40gを分散させた後、HBO(関東化学社製)を(NHTiF水溶液の1.5倍の濃度になるように添加し、表1に示す回転速度で撹拌を行った。3時間後、溶液をろ過・水洗した後60℃で乾燥させ、Ti酸化物により被覆された酸化シリコン粒子を回収し、負極活物質とした。上記の方法により作製した負極活物質を用いた事以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例12]
前記(NHTiF(森田化学工業社製)をKZrF(純正化学社製)に変更した以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例13]
前記(NHTiF(森田化学工業社製)をKSiF(森田化学工業社製)に変更した以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例14]
前記負極活物質粒子をシリコン含有酸化シリコンからシリコンに変更した以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例15]
前記負極活物質粒子をシリコン含有酸化シリコンから5wt%カーボン被覆酸化シリコンと95wt%黒鉛の混合系に変更した以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例16]
前記負極活物質粒子をシリコン含有酸化シリコンから50wt%カーボン被覆酸化シリコンと50wt%黒鉛の混合系に変更した以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例17]
前記負極活物質粒子をシリコン含有酸化シリコンから95wt%カーボン被覆酸化シリコンと5wt%黒鉛の混合系に変更した以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[比較例1、2]
(NHTiF(森田化学工業社製)を40℃の水に5分間溶解させ、0.3Mの水溶液とした。この水溶液に表1に示す量のヘキサメチルジシラザンを用いて疎水化処理したシリコン含有酸化シリコン粉末40gを分散させた後、HBO(関東化学社製)を(NHTiF水溶液の1.5倍の濃度になるように添加し、回転速度500rpmで撹拌を行った。3時間後、溶液をろ過・水洗した後60℃で乾燥させ、Ti酸化物により被覆された酸化シリコン粒子を回収し、負極活物質とした。上記の方法により作製した負極活物質を用いた事以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[比較例3、4]
(NHTiF(森田化学工業社製)を40℃の水に5分間溶解させ、表1に示す濃度の水溶液とした。この水溶液に活物質に対して0.4wt%のヘキサメチルジシラザンを用いて疎水化処理したシリコン含有酸化シリコン粉末40gを分散させた後、HBO(関東化学社製)を(NHTiF水溶液の1.5倍の濃度になるように添加し、表1に示す回転速度で撹拌を行った。3時間後、溶液をろ過・水洗した後60℃で乾燥させ、Ti酸化物により被覆された酸化シリコン粒子を回収し、負極活物質とした。上記の方法により作製した負極活物質を用いた事以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[比較例5]
負極活物質粒子に疎水化処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
<サイクル特性の評価方法>
実施例及び比較例で作製した評価用リチウムイオン二次電池について、二次電池充放電試験装置(北斗電工株式会社製)を用い、25度におけるサイクル特性の測定を行った。0.5Cで4.2Vまで定電流定電圧充電し、1Cで2.5Vまで定電流放電する充放電サイクルを500サイクル繰り返し、500サイクル後の容量維持率を測定し、サイクル特性を評価した。
表1に実施例1〜17及び比較例1〜5の無機化合物、膜形態、前駆体濃度、疎水化剤量、多孔質無機化合物の厚み・孔径、厚み/孔径及び容量維持率@500サイクルについて示す。
実施例1〜17における多孔質無機化合物層の断面をSTEMにより観察したところ、すべての実施例において多孔質の連続膜であることが確認された。
実施例1から17では高い容量維持率を示した。比較例1から5の電池では多孔質無機化合物層の厚みと孔径の比(厚み/孔径)が6未満及び30より大きい場合には容量維持率の顕著な低下が見られた。
本発明のリチウムイオン二次電池を用いることにより、サイクル特性が向上したリチウムイオン二次電池を提供することができる。
10…正極、12…正極集電体、14…正極活物質層、18…セパレータ、20…負極、22…負極集電体、24…負極活物質層、30…積層体、50…ケース、52…金属箔、54…高分子膜、60,62…リード、100…リチウムイオン二次電池。

Claims (5)

  1. 負極活物質粒子の表面を被覆する多孔質無機化合物層を有し、多孔質無機化合物層の厚みと平均孔径の比(厚み/孔径)が6以上30以下であることを特徴とする負極活物質。
  2. 前記多孔質無機化合物層の孔径が3nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の負極活物質。
  3. 前記多孔質無機化合物層の厚みが30nm以上150nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の負極活物質を含有する負極。
  5. 請求項4に記載の負極と、正極と、電解質と、を有するリチウムイオン二次電池。

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