以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である電極について、図1乃至図4を用いて説明する。なお、本実施の形態では、本発明の一態様である電極について説明するために、電極50を例に挙げて説明する。
<電極の構成>
図1(A)は、電極50を説明する正面図である。図1(B)は、図1(A)に示す一点鎖線A1−B1における電極50の断面図の一例である。図1(C)は、図1(A)に示す一点鎖線A1−B1における電極50の断面図の別の例である。また、図1(D)および図1(E)は、それぞれ、図1(B)および図1(C)に示す領域55の拡大図である。
図1(A)乃至図1(C)に示すように、電極50は、シート状の集電体51と、シート状の活物質層52と、保護層53と、を有する。電極50において、活物質層52は、集電体51上に設けられる。また、電極50において、保護層53は、活物質層52および集電体51の両方を囲むように設けられる。また、保護層53は、リチウムイオン等のキャリアイオンを透過する機能を有する層である。
なお、図1(B)に示すように、活物質層52は、シート状の集電体51の一方の面上に設けられてもよい。また、図1(C)に示すように、活物質層52は、シート状の集電体51の両方の面上に設けられていてもよい。
集電体51には、導電性を有する材料を用いることができる。特に、導電性を有し、耐熱性の高い材料を集電体51に用いると、集電体51の熱による変形、または、熱による劣化等の発生を防ぐことができ、好ましい。例えば、集電体51に耐熱性の高い材料を用いると、電極50の製造方法において、保護層53の形成等のために、集電体51が高温に加熱される工程が含まれるとしても、集電体51の変形または劣化を防ぐことができ、好ましい。
従って、電極50を蓄電装置の正極として機能させる場合、導電性を有し、耐熱性の高い材料である、鉄、ステンレス、ニッケル、コバルト、チタン等の金属、及びこれらの合金などを集電体51に用いると好ましい。または、導電性を有する材料である金、白金、アルミニウム等の金属、およびこれらの合金などを集電体51に用いてもよい。
また、電極50を蓄電装置の負極として機能させる場合、集電体51に、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることができる。したがって、電極50を蓄電装置の負極として機能させる場合、導電性を有し、耐熱性が高く、リチウムイオン等のキャリアイオンと合金化しない材料であるチタン、タンタル等の金属、及びこれらの合金などを集電体51に用いると好ましい。または、導電性を有し、リチウムイオン等のキャリアイオンと合金化しない材料であるステンレス、白金、鉄、銅などを集電体51に用いてもよい。
集電体51は、箔状、板状(シート状)、網状、円柱状、コイル状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。
また、集電体51の表面に、フッ素化合物を含む被覆層を設けてもよい。これによって、集電体51の有する金属が溶解し、拡散するのを抑制できる場合がある。
なお、被覆層として用いることのできるフッ素化合物としては、例えば、四フッ化チタン(TiF4)、二フッ化ニッケル(NiF2)等が挙げられる。
図1(B)および図1(C)に示すように、保護層53が集電体51および活物質層52を囲むように設けられることで、集電体51および活物質層52を保護することができ、また、電極50の耐久性を向上させることができる。また、電極50を用いる蓄電装置において充電および放電を繰り返すことにより、活物質54が劣化し、粒径が非常に小さくなってしまった場合であっても、当該粒子が活物質層から離れることを抑制することができる。したがって、急速な充放電を繰り返すことによって電極50を有する蓄電装置のサイクル特性が低下するのを抑制することができる。また、当該粒子が、セパレータを通過し、ショートが発生することを防ぐことができるため、蓄電装置の安全性を高めることができる。
また、保護層53は、リチウムイオン等のキャリアイオン以外の物質を透過しにくい場合がある。保護層53に囲まれた領域には、他の領域から、キャリアイオン以外の物質が入ってくるのを抑制することができる場合がある。また、保護層53に囲まれた領域から、他の領域へ、キャリアイオン以外の物質が出ていくのを抑制することができる場合がある。したがって、保護層53が集電体51および活物質層52を囲むように設けられることで、電極50を用いる蓄電装置においては、保護層53の外側から活物質層52の周囲にキャリアイオン以外の物質が入ってくるのを抑制することができ、活物質層52の周囲から、保護層53の外側へ、キャリアイオン以外の物質が出ていくのを抑制することができる場合がある。そのため、例えば、コバルトイオンのような活物質層52の成分が溶け出した場合であっても、当該成分が保護層53の外側へ出ていくのを抑制することができる可能性がある。したがって、保護層53に囲まれる領域における当該成分の濃度の低下を抑制することができるため、活物質層52の成分がそれ以上に溶け出すのを抑制することができる。よって、電極50を用いる蓄電装置のサイクル特性の低下を抑制することができる。
また、保護層53が活物質層52上にのみ設けられる場合と比較すると、保護層53が集電体51および活物質層52を囲むように設けられる場合の方が、保護層53が電極50から剥離しにくく、好ましい。
活物質層52は、粒子状の活物質54を有する。電極50が活物質54として正極活物質を有する場合、電極50は、蓄電装置の正極として機能することができる。一方、電極50が活物質54として負極活物質を有する場合、電極50は、蓄電装置の負極として機能することができる。正極活物質および負極活物質に用いることのできる材料については後述する。
図1(D)および図1(E)に示すように、保護層53は、活物質54と接触する領域を有すると好ましい。なお、図1(B)乃至図1(D)において、保護層53は、ひと続きの層状またはひと続きのシート状として表すが、図1(E)に示すように、保護層53は、複数の層または複数のシートによって構成されていてもよい。なお、保護層53が複数の層または複数のシートによって構成されていたとしても、ひと続きの層上またはひと続きのシート状として観察されることがある。また、保護層53は、活物質層52の有する空隙等に入り込んでいてもよい。
また、活物質層52は、活物質54を囲む保護層56を有していてもよい。保護層56が活物質54を囲むことで、活物質54の表面を保護することができる。したがって、電極50を用いる蓄電装置において充電および放電を繰り返すことにより、活物質54が劣化するのを抑制することができる。また、活物質54が劣化し、粒径が非常に小さくなってしまった場合であっても、当該粒子が活物質層から離れることを抑制することができる。したがって、急速な充放電を繰り返すことによって電極50を有する蓄電装置のサイクル特性が低下するのを抑制することができる。また、当該粒子が、セパレータを通過し、ショートが発生することを防ぐことができるため、蓄電装置の安全性を高めることができる。
また、保護層56が活物質54を囲むことで、電極50を用いる蓄電装置において活物質54と電解液とが接触する領域が小さくなるため、活物質54と電解液との間の副反応を抑制することができる場合がある。
図2に、活物質54を囲む保護層56を有する場合の活物質層52の断面図を示す。なお、図2に示す活物質層52は、活物質54、保護層56に加えて、導電助剤62およびバインダ61を有する。導電助剤およびバインダに用いることのできる材料については後述する。
図2において、活物質54は、その表面において、他の粒状の活物質と接触する領域を有する場合がある。また、活物質54は、その表面において、導電助剤62と接触する領域を有する。また、活物質54は、その表面において、バインダ61と接触する領域を有する。これらの領域を除いた活物質54の表面は、その一部または全部が、保護層56によって覆われている。保護層56は、上記領域を除いた活物質54の表面の全てを覆うことが好ましいが、活物質54の表面の一部に設けられているだけでもよい。また、複数の活物質54どうしは、互いに接触する領域を有する状態、導電助剤62を介して隣接している状態、導電助剤62及び保護層56を介して隣接している状態で、バインダ61によって結着されている。また、活物質層52には、複数の活物質54によって形成された空隙63が存在することもある。
なお、本明細書等において、活物質層52は、複合体であるということもできる。
保護層53および保護層56に、導電性を有する材料を有する層を使用すると活物質層52において導電パスを形成することができる。活物質層52において導電パスが形成されることにより、電極50を使用する蓄電装置の放電容量を向上させることができる。保護層53および保護層56に用いることのできる導電性を有する材料としては、例えば、グラフェン化合物を用いると好ましい。
[グラフェン化合物]
ここで、保護層53および保護層56に用いることのできるグラフェン化合物について説明する。
グラフェン化合物は、グラフェンまたはマルチグラフェンが、炭素以外の原子、または炭素以外の原子を有する原子団に修飾された化合物である。また、グラフェン化合物は、グラフェンまたはマルチグラフェンが、アルキル基、アルキレン等の炭素を主とした原子団に修飾された化合物であってもよい。
ここで、グラフェンとは、炭素原子が1原子層配列したものであり、炭素原子間にπ結合を有する。グラフェンが2層以上100層以下重なったものを、マルチグラフェンと呼ぶ場合がある。グラフェンおよびマルチグラフェンは、例えば、長手方向、あるいは面における長軸の長さが50nm以上100μm以下または800nm以上50μm以下である。
なお、グラフェンまたはマルチグラフェンを修飾する原子団を、置換基、官能基、または特性基等と呼ぶ場合がある。ここで、本明細書等において修飾とは、置換反応、付加反応またはその他の反応により、グラフェン、マルチグラフェン、グラフェン化合物、または酸化グラフェン(後述)に、炭素以外の原子、炭素以外ン原子団、または炭素以外の原子を有する原子団を導入することをいう。
炭素以外の原子、または炭素以外の原子を有する原子団に修飾されたグラフェンまたはマルチグラフェンの一例として、酸素または酸素を含む官能基に修飾されたグラフェンまたはマルチグラフェンが挙げられる。ここで酸素を含む官能基として例えば、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、または水酸基等が挙げられる。酸素または酸素を有する官能基により修飾されたグラフェン化合物を、酸化グラフェンと呼ぶ場合がある。また、本明細書においては、酸化グラフェンは多層の酸化グラフェンをも含むものとする。
酸化グラフェンは、上記グラフェンまたはマルチグラフェンを酸化して得ることができる。または、酸化グラフェンは、酸化グラファイトを分離して得ることができる。酸化グラファイトは、グラファイトを酸化して得ることができる。ここで、酸化グラフェンに、さらに上述の原子または原子団を修飾してもよい。
また、酸化グラフェンを還元して得られる化合物を、「RGO(Reduced Graphene Oxide)」と呼ぶ場合がある。なお、RGOには、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素または酸素を含む原子団が炭素に結合した状態で残存する場合がある。例えばRGOは、エポキシ基、カルボキシル基などのカルボニル基、または水酸基等の官能基を有する場合がある。
グラフェン化合物は薄くても導電性が高い場合があり、また面接触によりグラフェン化合物同士、あるいはグラフェン化合物と活物質との間の接触面積を増加させることができる。よって、体積あたりの量が少なくても効率よく導電パスを形成することができる。
一方で、グラフェン化合物を絶縁体として用いることもできる。例えばグラフェン化合物シートをシート状の絶縁体として用いることができる。ここで例えば、酸化グラフェンは酸化されていないグラフェン化合物またはRGOと比較して絶縁性が高い場合がある。また、原子団に修飾されたグラフェン化合物は、修飾する原子団の種類により、絶縁性を高めることができる場合がある。
また、原子団に修飾されたグラフェン化合物は、修飾された原子団の種類により、高いリチウムイオン伝導性を有する場合がある。例えば、保護層53が有するグラフェン化合物が、絶縁性およびリチウムイオン伝導性を有する場合には、電極50を有する蓄電装置において、保護層53がリチウムイオンの透過を妨げることを抑制することができるため好ましい。また、保護層56が有するグラフェン化合物が、絶縁性及びリチウムイオン導電性を有する場合には、電極50を有する蓄電装置における、活物質54と電解液との間の副反応を抑制することができるため好ましい。
また、本明細書等においてグラフェン化合物には、グラフェン前駆体が含まれる。グラフェン前駆体とは、グラフェンを製造するために用いられる物質のことをいい、グラフェン前駆体には例えば、上述の酸化グラフェンや、酸化グラファイトなどを含んでもよい。
なお、アルカリ金属を有するグラフェンや、酸素等の炭素以外の元素を有するグラフェンを、グラフェン類似体と呼ぶ場合がある。本明細書等においてグラフェン化合物には、グラフェン類似体も含まれる。
以上が、保護層53および保護層56に用いることのできるグラフェン化合物についての説明である。
以上が、電極50の構成に関する説明である。続いて、電極50の製造方法について説明する。
<保護層56の形成方法>
まず、図3を用いて、活物質54を囲む保護層56の形成方法について説明する。
[第1のステップ]
まず、活物質54、グラフェン化合物および溶媒を有する第1の混合物を形成する(図3(T1)参照)。
第1の混合物に用いる溶媒は、極性溶媒であることが好ましい。例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、N,Nージメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびグリセリンのいずれか一種又は二種以上の混合液を用いることができる。
第1の混合物の形成には、例えば混練機などを用いればよい。
[第2のステップ]
次に、第1の混合物に含まれる溶媒を蒸発させることにより、第2の混合物を形成する(図3(T2)参照)。溶媒が蒸発することにより、活物質の表面にグラフェン化合物が被覆される。
例えば、第1の混合物を40℃以上170℃以下、好ましくは60℃以上100℃以下の温度で、1分以上15時間以下加熱することにより、溶媒を蒸発させることができる。また、本工程は、減圧雰囲気下で行うとより好ましい。
ここで、乳鉢等を用いて第2の混合物を解砕し、粒径を小さくしてもよい。また、ふるい等を用いて粒径を揃える工程をおこなってもよい。
上記の第1のステップおよび第2のステップを行うことにより、グラフェン化合物を有する保護層56を形成することができる。
また、グラフェン化合物が酸化グラフェンである場合、第2のステップでの第2の加熱に加えて、減圧雰囲気下または不活性雰囲気下、1分以上10時間以下、100℃以上300℃以下で加熱を行うことによって、酸化グラフェンが還元され、RGOが生成する場合がある。また、保護層56の有するグラフェン化合物が酸化グラフェンである場合、下記の第3のステップ以降を行うことによっても、酸化グラフェンを還元しRGOとすることができる。
なお、本製造方法は、保護層56の有するグラフェン化合物が酸化グラフェンである場合であっても、酸化グラフェンを還元することに限定されない。また、本製造方法は、保護層56の有するグラフェン化合物が、酸化グラフェンである場合であっても下記の第3のステップ以降を行うことに限定されない。
[第3のステップ]
第2のステップの次に、第2の混合物に対して、還元剤および溶媒を加え、第3の混合物を形成する(図3(T3)参照)。このとき、pH調整剤を加えてもよい。第3の混合物を形成し、撹拌することによって、保護層56の有するグラフェン化合物は還元される。したがって、保護層56が酸化グラフェンを有する場合には、酸化グラフェンが還元され、RGOが生成する。
還元剤としては、アスコルビン酸、ヒドラジン、ジメチルヒドラジン、ヒドロキノン、水素化硼素ナトリウム(NaBH4)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、またはN,N−ジエチルヒドロキシルアミン、あるいはそれらの誘導体を用いることができる。特に、アスコルビン酸及びヒドロキノンは、ヒドラジンや水素化硼素ナトリウムに比べ還元力が弱いため安全性が高く、工業的に利用しやすい点において好ましい。
溶媒としては、極性溶媒を用いることができる。還元剤を溶解することができるものであれば、限定されない。例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、THF、DMF、NMP、DMSO、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびグリセリンのいずれか一種または二種以上の混合液を用いることができる。
pH調整剤としては、各種アルカリ溶液またはアルカリ塩を用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムまたは炭酸リチウム等を用いることができる。
[第4のステップ]
次に、第3の混合物をろ過し、固形物を回収する(図3(T4)参照)。このとき、得られた固形物を水およびアセトン等で洗浄してもよい。このとき固形物には、活物質54およびグラフェン化合物が含まれ、ろ液には、還元剤、溶媒およびpH調整剤等が含まれる。したがって、ろ過することによって、還元剤、溶媒およびpH調整剤等を除去し、活物質54およびグラフェン化合物のみを回収することができる。
[第5のステップ]
次に、得られた固形物を減圧雰囲気下または不活性雰囲気下、加熱する(図3(T5)参照)。これによって、当該固形物中に残留した溶媒を蒸発させることができる。また、第3のステップにおけるグラフェン化合物の還元反応が十分に進行していなかったとしても、本ステップにおいて加熱を行うことにより、再度グラフェン化合物の還元反応を進行させることができる。
減圧雰囲気下、40℃以上300℃以下の温度で、1分以上10時間以下加熱することにより、当該固形物に残留した溶媒を蒸発させ、また、酸化グラフェンを還元することができる。
以上が、活物質54を囲む保護層56の形成方法である。
<電極の製造方法>
次に、図4を用いて保護層53を有する電極50の製造方法について説明する。
[第1のステップ]
まず、活物質54および溶媒を有する第1の混合物を形成する(図4(S1)参照)。
第1の混合物に用いる溶媒は、極性溶媒であることが好ましい。例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、THF、DMF、NMP及びDMSOのいずれか一種又は二種以上の混合液を用いることができる。
活物質54として、正極活物質を用いると、蓄電装置の正極として機能する電極を製造することができる。また、活物質54として負極活物質を用いると、蓄電装置の負極として機能する電極を製造することができる。
なお、活物質54として保護層56に囲まれる活物質54を使用することにより、保護層56に囲まれる活物質54を有する電極50を製造することが可能である。
また、第1の混合物は、活物質54及び溶媒の他に、導電助剤およびバインダ等を有していてもよい。
正極活物質、負極活物質層、導電助剤およびバインダとして用いることのできる材料については、後述する。
[第2のステップ]
次に、第1の混合物を集電体51上に設ける(図4(S2)参照)。第1の混合物を集電体51上に設ける方法としては、アプリケータロールなどのロールコート法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スピンコート法、バーコート法等の塗布方法を適用することができる。
上述のように、集電体51には、耐熱性の高い材料を用いることができる。
[第3のステップ]
次に、第1の混合物に含まれる溶媒を蒸発させ、活物質層52を形成する(図4(S3)参照)。
例えば、40℃以上170℃以下、好ましくは60℃以上100℃以下の温度で、1分以上10時間以下加熱することにより、溶媒を蒸発させることができる。
[第4のステップ]
次に、グラフェン化合物および溶媒を有する第2の混合物を形成する(図4(S4)参照)。
グラフェン化合物としては、例えば、酸化グラフェンを用いることができる。
第2の混合物に用いる溶媒は、極性溶媒であることが好ましい。例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、THF、DMF、NMP、DMSO、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびグリセリンのいずれか一種又は二種以上の混合液を用いることができる。
[第5のステップ]
次に、第2の混合物を集電体51上および活物質層52上に設ける(図4(S5)参照)。第2の混合物を集電体51上および活物質層52上に設ける方法としては、第1の混合物を集電体51上に設ける方法と同様の方法を用いる、または、ディップコート法、キャスト法または電気泳動電着法等を用いることができる。
次に、第2の混合物を大気雰囲気下、加熱する。これによって、第4の混合物に含まれる溶媒が蒸発し、保護層53が形成される。
例えば、40℃以上170℃以下、好ましくは60℃以上100℃以下の温度で、1分以上10時間以下加熱することにより、溶媒を蒸発させることができる。
[第6のステップ]
次に、集電体51、活物質層52および保護層53を、窒素および水素雰囲気下で加熱する(図4(S6)参照)。
保護層53がグラフェン化合物として酸化グラフェンを有する場合、第7のステップにおいて保護層53に含まれる酸化グラフェンは還元され、RGOが生成する。したがって、グラフェン化合物としてRGOを有する層である保護層53が形成される。ただし、本製造方法は、第2の混合物がグラフェン化合物として酸化グラフェンを有する場合、酸化グラフェンを還元することに限定されない。第2の混合物がグラフェン化合物として酸化グラフェンを有する場合に、酸化グラフェンを還元しなくてもよい。
窒素および水素雰囲気下、400℃以上800℃以下の温度で、1分以上10時間以下加熱することにより、酸化グラフェンを還元することができる。
上述のように、集電体に耐熱性の高い材料を用いることにより、集電体の熱による変形、または、熱による劣化等を防ぐことができる。したがって、第6のステップに記載のように高温での加熱を行っても集電体51の変形または劣化を防ぐことができ、好ましい。
以上が、電極50の製造方法に関する説明である。
<材料>
次に、電極50の有する材料について説明する。
[正極活物質]
正極活物質として例えば、層状岩塩型の結晶構造、またはスピネル型の結晶構造を有する複合酸化物等を用いることができる。また、正極活物質として例えば、ポリアニオン系の正極材料を用いることができる。ポリアニオン系の正極材料として例えば、オリビン型の結晶構造を有する材料、ナシコン型の材料、等が挙げられる。また、正極活物質として例えば、硫黄を有する正極材料を用いることができる。
正極活物質として、様々な複合酸化物を用いることができる。例えば、LiFeO2、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、Li2MnO3、V2O5、Cr2O5、MnO2等の化合物を用いることができる。
層状岩塩型の結晶構造を有する材料として例えば、LiMO2で表される複合酸化物を用いることができる。元素Mは、CoまたはNiより選ばれる一以上であることが好ましい。LiCoO2は、容量が大きいこと、大気中で安定であること、熱的に比較的安定であること等の利点があるため、好ましい。また、元素Mとして、CoおよびNiより選ばれる一以上に加えて、AlおよびMnより選ばれる一以上を有してもよい。
例えば、LiNixMnyCozOw(x、y、zおよびwはそれぞれ例えばx=y=z=1/3またはその近傍、w=2またはその近傍)を用いることができる。また、例えば、LiNixMnyCozOw(x、y、zおよびwはそれぞれ例えばx=0.8またはその近傍、y=0.1またはその近傍、z=0.1またはその近傍、w=2またはその近傍)を用いることができる。また、例えば、LiNixMnyCozOw(x、y、zおよびwはそれぞれ例えばx=0.5またはその近傍、y=0.3またはその近傍、z=0.2またはその近傍、w=2またはその近傍)を用いることができる。また、例えば、LiNixMnyCozOw(x、y、zおよびwはそれぞれ例えばx=0.6またはその近傍、y=0.2またはその近傍、z=0.2またはその近傍、w=2またはその近傍)を用いることができる。また、例えば、LiNixMnyCozOw(x、y、zおよびwはそれぞれ例えばx=0.4またはその近傍、y=0.4またはその近傍、z=0.2またはその近傍、w=2またはその近傍)を用いることができる。
近傍とは例えば、その値の0.9倍より大きく1.1倍より小さい値である。
正極活物質が有する遷移金属やリチウムの一部をFe、Co、Ni、Cr、Al、Mgなどから選ばれる一以上の元素で置換した材料や、正極活物質にFe、Co、Ni、Cr、Al、Mgなどから選ばれる一以上の元素をドープした材料を正極活物質として使用してもよい。
また、正極活物質として例えば、複合酸化物を複数組み合わせた固溶体を正極活物質として用いることができる。例えば、LiNixMnyCozO2(x、y、z>0、x+y+z=1)とLi2MnO3の固溶体を正極活物質として用いることができる。
スピネル型の結晶構造を有する材料として例えば、LiM2O4で表される複合酸化物を用いることができる。元素MとしてMnを有することが好ましい。例えば、LiMn2O4を用いることができる。また元素Mとして、Mnに加えてNiを有することにより、二次電池の放電電圧が向上し、エネルギー密度が向上する場合があり、好ましい。また、LiMn2O4等のマンガンを含むスピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料に、少量のニッケル酸リチウム(LiNiO2やLiNi1−xMxO2(M=Co、Al等))を混合することにより、二次電池の特性を向上させることができ好ましい。
正極活物質は例えば、一次粒子の平均粒子径が、1nm以上100μm以下であることが好ましく、50nm以上50μm以下であることがより好ましく、1μm以上30μm以下であることがより好ましい。また比表面積が1m2/g以上20m2/g以下であることが好ましい。また、二次粒子の平均粒子径は、5μm以上50μm以下であることが好ましい。なお平均粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)またはTEMによる観察、またはレーザ回折・散乱法を用いた粒度分布計等によって測定することができる。また比表面積は、ガス吸着法により測定することができる。
正極活物質の表面に炭素層などの導電性材料を設けてもよい。炭素層などの導電性材料を設けることで、電極の導電性を向上させることができる。例えば、正極活物質への炭素層の被覆は、正極活物質の焼成時にグルコース等の炭水化物を混合することで形成することができる。また、導電性材料として、グラフェン、マルチグラフェン、酸化グラフェン(GO:Graphene Oxide)又はRGO(Reduced Graphene Oxide)を用いることができる。ここで、RGOは例えば、酸化グラフェン(GO)を還元して得られる化合物を指す。
正極活物質の表面に酸化物又はフッ化物の一以上を有する層を設けてもよい。酸化物は、正極活物質と異なる組成を有してもよい。また、酸化物は、正極活物質と同じ組成を有してもよい。
ポリアニオン系の正極材料として例えば、酸素と、元素Xと、金属Aと、金属Mと、を有する複合酸化物を用いることができる。金属MはFe、Mn、Co、Ni、Ti、V、Nbの一以上であり、金属AはLi、Na、Mgの一以上であり、元素XはS、P、Mo、W、As、Siの一以上である。
オリビン型の結晶構造を有する材料として例えば、複合材料(一般式LiMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上))を用いることができる。一般式LiMPO4の代表例としては、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等のリチウム化合物を用いることができる。
特にLiFePO4は、安全性、安定性、高容量密度、初期酸化(充電)時に引き抜けるリチウムイオンの存在等、正極活物質に求められる事項をバランスよく満たしているため、好ましい。
オリビン型の結晶構造を有する正極活物質は例えば、一次粒子の平均粒子径が、1nm以上20μm以下であることが好ましく、10nm以上5μm以下であることがより好ましく、50nm以上2μm以下であることがより好ましい。また比表面積が1m2/g以上20m2/g以下であることが好ましい。また、二次粒子の平均粒子径は、5μm以上50μm以下であることが好ましい。
また、一般式Li(2−j)MSiO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等の複合材料を用いることができる。一般式Li(2−j)MSiO4の代表例としては、Li(2−j)FeSiO4、Li(2−j)NiSiO4、Li(2−j)CoSiO4、Li(2−j)MnSiO4、Li(2−j)FekNilSiO4、Li(2−j)FekColSiO4、Li(2−j)FekMnlSiO4、Li(2−j)NikColSiO4、Li(2−j)NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(2−j)FemNinCoqSiO4、Li(2−j)FemNinMnqSiO4、Li(2−j)NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、Li(2−j)FerNisCotMnuSiO4(r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等のリチウム化合物を材料として用いることができる。
また、AxM2(XO4)3(A=Li、Na、Mg、M=Fe、Mn、Ti、V、Nb、X=S、P、Mo、W、As、Si)の一般式で表されるナシコン型化合物を用いることができる。ナシコン型化合物としては、Fe2(MnO4)3、Fe2(SO4)3、Li3Fe2(PO4)3等がある。また、正極活物質として、Li2MPO4F、Li2MP2O7、Li5MO4(M=Fe、Mn)の一般式で表される化合物を用いることができる。
また、正極活物質として、NaFeF3、FeF3等のペロブスカイト型フッ化物、TiS2、MoS2等の金属カルコゲナイド(硫化物、セレン化物、テルル化物)、LiMVO4等の逆スピネル型の結晶構造を有する酸化物、バナジウム酸化物系(V2O5、V6O13、LiV3O8等)、マンガン酸化物、有機硫黄化合物等の材料を用いることができる。
また、正極活物質として、一般式LiMBO3(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II))で表されるホウ酸塩系正極材料を用いることができる。
また、正極活物質として、組成式LiaMnbMcOdで表すことができるリチウムマンガン複合酸化物を用いることができる。ここで、元素Mは、リチウム、マンガン以外から選ばれた金属元素、またはシリコン、リンを用いることが好ましく、ニッケルであることがさらに好ましい。また、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体を測定する場合、放電時に0<a/(b+c)<2、かつc>0、かつ0.26≦(b+c)/d<0.5を満たすことが好ましい。なお、高容量を発現させるために、表層部と中心部で、結晶構造、結晶方位または酸素含有量が異なる領域を有するリチウムマンガン複合酸化物とすることが好ましい。このようなリチウムマンガン複合酸化物とするためには例えば、1.6≦a≦1.848、0.19≦c/b≦0.935、2.5≦d≦3とすることが好ましい。さらに、Li1.68Mn0.8062Ni0.318O3の組成式であらわされるリチウムマンガン複合酸化物を用いることが特に好ましい。本明細書等において、Li1.68Mn0.8062Ni0.318O3の組成式であらわされるリチウムマンガン複合酸化物とは、原料材料の量の割合(モル比)を、Li2CO3:MnCO3:NiO=0.84:0.8062:0.318とすることにより形成したリチウムマンガン複合酸化物をいう。そのため該リチウムマンガン複合酸化物は、組成式Li1.68Mn0.8062Ni0.318O3で表されるが、この組成からずれることもある。
なお、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の金属、シリコン、リン等の組成は、例えばICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて測定することができる。またリチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の酸素の組成は、例えばEDX(エネルギー分散型X線分析法)を用いて測定することが可能である。また、ICP−MS分析と併用して、融解ガス分析、XAFS(X線吸収微細構造)分析の価数評価を用いることで求めることができる。なお、リチウムマンガン複合酸化物とは、少なくともリチウムとマンガンとを含む酸化物をいい、クロム、コバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、インジウム、ガリウム、銅、チタン、ニオブ、シリコン、およびリンなどからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオンの場合、正極活物質として、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。例えばナトリウム含有層状酸化物を用いることができる。
ナトリウムを有する材料として例えば、NaFeO2や、Na2/3[Fe1/2Mn1/2]O2、Na2/3[Ni1/3Mn2/3]O2、Na2Fe2(SO4)3、Na3V2(PO4)3、Na2FePO4F、NaVPO4F、NaMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II))、Na2FePO4F、Na4Co3(PO4)2P2O7、などのナトリウム含有酸化物を正極活物質として用いることができる。
また、正極活物質として、リチウム含有金属硫化物を用いることができる。例えば、Li2TiS3、Li3NbS4などが挙げられる。
[負極活物質]
負極活物質としては、例えば合金系材料や炭素系材料等を用いることができる。
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。また、これらの元素を有する化合物を用いてもよい。例えば、SiO、Mg2Si、Mg2Ge、SnO、SnO2、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等がある。ここで、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素、および該元素を有する化合物等を合金系材料と呼ぶ場合がある。
本明細書等において、SiOは例えば一酸化シリコンを指す。あるいはSiOは、SiOxと表すこともできる。ここでxは1近傍の値を有することが好ましい。例えばxは、0.2以上1.5以下が好ましく、0.3以上1.2以下が好ましい。
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等を用いればよい。
黒鉛としては、人造黒鉛や、天然黒鉛等が挙げられる。人造黒鉛としては例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等が挙げられる。ここで人造黒鉛として、球状の形状を有する球状黒鉛を用いることができる。例えば、MCMBは球状の形状を有する場合があり、好ましい。また、MCMBはその表面積を小さくすることが比較的容易であり、好ましい場合がある。天然黒鉛としては例えば、鱗片状黒鉛、球状化天然黒鉛等が挙げられる。
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム−黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に低い電位を示す(0.05V以上0.3V以下 vs.Li/Li+)。これにより、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が比較的小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)、リチウム−黒鉛層間化合物(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いることができる。
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつLi3−xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を示し好ましい。
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムとの合金を作らない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物でも起こる。
[導電助剤]
導電助剤としては、炭素材料、金属材料、又は導電性セラミックス材料等を用いることができる。また、導電助剤として繊維状の材料を用いてもよい。活物質層の総量に対する導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
導電助剤により、活物質層中に電気伝導のネットワークを形成することができる。また、導電助剤により、活物質どうしの電気伝導の経路を維持することができる。活物質層中に導電助剤を添加することにより、高い電気伝導性を有する活物質層を実現することができる。
導電助剤としては、例えば天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素繊維などを用いることができる。炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナノチューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。また、導電助剤として、例えばカーボンブラック(アセチレンブラック(AB)など)、グラファイト(黒鉛)粒子、グラフェン、フラーレンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
また、導電助剤として導電性の高いグラフェン化合物を用いてもよい。また、上記の保護層53または保護層56等が導電助剤として機能してもよい。
[バインダ]
バインダとしては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレン−スチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。またバインダとして、フッ素ゴムを用いることができる。
また、バインダとしては、例えば水溶性の高分子を用いることが好ましい。水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉などを用いることができる。また、これらの水溶性の高分子を、前述のゴム材料と併用して用いると、さらに好ましい。
または、バインダとしては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いることが好ましい。
バインダは上記のうち複数を組み合わせて使用してもよい。
例えば粘度調整効果の特に優れた材料と、他の材料とを組み合わせて使用してもよい。例えばゴム材料等は接着力や弾性力に優れる反面、溶媒に混合した場合に粘度調整が難しい場合がある。このような場合には例えば、粘度調整効果の特に優れた材料と混合することが好ましい。粘度調整効果の特に優れた材料としては、例えば水溶性高分子を用いるとよい。また、粘度調整効果に特に優れた水溶性高分子としては、前述の多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉を用いることができる。
なお、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えばカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩などの塩とすることにより溶解度が上がり、粘度調整剤としての効果を発揮しやすくなる。溶解度が高くなることにより電極のスラリーを作製する際に活物質や他の構成要素との分散性を高めることもできる。本明細書においては、電極のバインダとして使用するセルロースおよびセルロース誘導体としては、それらの塩も含むものとする。
水溶性高分子は水に溶解することにより粘度を安定化させ、また活物質や、バインダとして組み合わせる他の材料、例えばスチレンブタジエンゴムなどを、水溶液中に安定して分散させることができる。また、官能基を有するために活物質表面に安定に吸着しやすいことが期待される。また、例えばカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えば水酸基やカルボキシル基などの官能基を有する材料が多く、官能基を有するために高分子同士が相互作用し、活物質表面を広く覆って存在することが期待される。
活物質表面を覆う、または表面に接するバインダが膜を形成する場合には、不動態膜としての役割を果たして電解液の分解を抑える効果も期待される。ここで、不動態膜とは、電気の伝導性のない膜、または電気伝導性の極めて低い膜であり、例えば活物質の表面に不動態膜が形成された場合には、電池反応電位において、電解液の分解を抑制することができる。また、不動態膜は、電気の伝導性を抑えるとともに、リチウムイオンは伝導できるとさらに望ましい。
以上が、電極50の有する材料についての説明である。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明した本発明の一態様の電極を使用することのできる蓄電装置について説明する。なお、本発明の一態様の電極は、下記で説明する蓄電装置の正極および負極のいずれか一方または両方として用いることができる。
本発明の一態様の蓄電装置の一例として、リチウムイオン電池等の電気化学反応を用いる二次電池、電気二重層キャパシタ、レドックスキャパシタ等の電気化学キャパシタ、空気電池、燃料電池等が挙げられる。
<薄型蓄電池>
図5に、蓄電装置の一例として、薄型の蓄電池について示す。図5は、薄型の蓄電池の一例を示す。薄型の蓄電池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて蓄電池も曲げることもできる。
図5は薄型の蓄電池である蓄電池500の外観図を示す。また、図6(A)および図6(B)は、図11に一点鎖線で示すA1−A2断面およびB1−B2断面を示す。蓄電池500は、正極集電体501および正極活物質層502を有する正極503と、負極集電体504および負極活物質層505を有する負極506と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外装体509内に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置されている。また、外装体509内は、電解液508で満たされている。
電解液508の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
また、電解液の溶媒として、難燃性および難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つ又は複数用いることで、蓄電装置の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電装置の破裂や発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。電解液に用いる有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、および四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオンおよびピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、電解液に用いるアニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、またはパーフルオロアルキルホスフェートアニオン等が挙げられる。
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、キャリアにリチウムイオンを用いる場合、例えばLiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiAlCl4、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C4F9SO2)(CF3SO2)、LiN(C2F5SO2)2等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
蓄電装置に用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単に「不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好ましい。具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。
また、電解液にビニレンカーボネート、プロパンスルトン(PS)、tert−ブチルベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)などの添加剤を添加してもよい。添加する材料の濃度は、例えば溶媒全体に対して0.1weight%以上5weight%以下とすればよい。
また、ポリマーを電解液で膨潤させたポリマーゲル電解質を用いてもよい。ポリマーゲル電解質を用いることで、漏液等に対する安全性が高まる。また、二次電池の薄型化および軽量化が可能である。
ゲル化されるポリマーとして、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド系ゲル、ポリプロピレンオキサイド系ゲル、フッ素系ポリマーのゲル等を用いることができる。ポリマーとしては、例えばポリエチレンオキシド(PEO)などのポリアルキレンオキシド構造を有するポリマーや、PVdF、およびポリアクリロニトリル等、およびそれらを含む共重合体等を用いることができる。例えばPVdFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるPVdF−HFPを用いることができる。また、形成されるポリマーは、多孔質形状を有してもよい。
また、電解液の代わりに、キャリアイオン伝導性を有する液晶材料を用いたゲル状の電解質を用いることもできる。キャリアイオン伝導性を有する液晶材料としては、例えば、エチレンオキシド鎖またはプロピレンオキシド鎖を有する化合物と、キャリアイオン等の金属イオンを含む金属塩とを有し、自己組織化する機能を有する材料を用いることができる。また、キャリアイオン伝導性を有する液晶材料は、スメクチック相を示す液晶であると好ましい。エチレンオキシド鎖またはプロピレンオキシド鎖を有する化合物としては、カチオンとアニオンからなる複合体を用いてもよい。キャリアイオン等の金属イオンを含む金属塩としては、例えば、キャリアにリチウムイオンを用いる場合、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3またはLi(CF3SO2)2N等を用いることができる。
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、PEO系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることができる。
キャリアイオン伝導性を有する液晶材料を用いたゲル状の電解質や、固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置を不要とすることができる。また、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。すなわち、蓄電装置の爆発、発火、発煙等の可能性を大幅に減らすことができる。
セパレータ507としては、例えば、紙、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。
セパレータ507は袋状に加工し、正極503または負極506のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。例えば、図7(A)に示すように、正極503を挟むようにセパレータ507を2つ折りにし、正極503と重なる領域よりも外側で封止部514により封止することで、正極503をセパレータ507内に確実に担持することができる。そして、図7(B)に示すように、セパレータ507に包まれた正極503と負極506とを交互に積層し、これらを外装体509内に配置することで蓄電池500を形成するとよい。
次に、蓄電池を作製した後のエージングについて説明する。蓄電池を作製した後に、エージングを行うことが好ましい。エージング条件の一例について以下に説明する。まず初めに0.001C以上0.2C以下のレートで充電を行う。温度は例えば室温以上、50℃以下とすればよい。ここで、正極や負極の反応電位が電解液508の電位窓の範囲を超える場合には、蓄電池の充放電により電解液の分解が生じる場合がある。電解液の分解によりガスが発生した場合には、そのガスがセル内にたまると、電解液が電極表面と接することができない領域が発生してしまう。つまり電極の実効的な反応面積が減少し、実効的な抵抗が高くなることに相当する。
また、過度に抵抗が高くなると、負極電位が下がることによって、黒鉛へのリチウム挿入が起こると同時に、黒鉛表面へのリチウム析出も生じてしまう。このリチウム析出は容量の低下を招く場合がある。例えば、リチウムが析出した後、表面に被膜等が成長してしまうと、表面に析出したリチウムが再溶出できなくなり、容量に寄与しないリチウムが増えてしまう。また、析出したリチウムが物理的に崩落し、電極との導通を失った場合にも、やはり容量に寄与しないリチウムが生じてしまう。よって、負極電極の電位が充電電圧上昇によりリチウム電位まで到達する前に、ガスを抜くことが好ましい。
また、ガス抜きを行った後に、室温よりも高い温度、好ましくは30℃以上60℃以下、より好ましくは35℃以上50℃以下において、例えば1時間以上100時間以下、充電状態で保持してもよい。初めに行う充電の際に、表面で分解した電解液は黒鉛の表面に被膜を形成する。よって、例えばガス抜き後に室温よりも高い温度で保持することにより、形成された被膜が緻密化する場合も考えられる。
図8には、リード電極に集電体を溶接する例を示す。図8(A)に示すように、セパレータ507に包まれた正極503と、負極506と、を交互に重ねる。次に、正極集電体501を正極リード電極510に、負極集電体504を負極リード電極511に、それぞれ溶接する。正極集電体501を正極リード電極510に溶接する例を図8(B)に示す。正極集電体501は、超音波溶接などを用いて溶接領域512で正極リード電極510に溶接される。また、正極集電体501は、図8(B)に示す湾曲部513を有することにより、蓄電池500の作製後に外から力が加えられて生じる応力を緩和することができ、蓄電池500の信頼性を高めることができる。
図5および図6に示す蓄電池500において、正極リード電極510は正極503が有する正極集電体501と、負極リード電極511は負極506が有する負極集電体504と、それぞれ超音波接合される。また、外部との電気的接触を得る端子の役割を正極集電体501および負極集電体504で兼ねることもできる。その場合は、リード電極を用いずに、正極集電体501および負極集電体504の一部を外装体509から外側に露出するように配置してもよい。
また、図5では正極リード電極510と負極リード電極511は同じ辺に配置されているが、図9に示すように、正極リード電極510と負極リード電極511を異なる辺に配置してもよい。このように、本発明の一態様の蓄電池は、リード電極を自由に配置することができるため、設計自由度が高い。よって、本発明の一態様の蓄電池を用いた製品の設計自由度を高めることができる。また、本発明の一態様の蓄電池を用いた製品の生産性を高めることができる。
蓄電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。
また図6では、一例として、正極と負極の数を合計6としているが、勿論、電極の数は6に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。電極の数が多い場合には、より多くの容量を有する蓄電池とすることができる。また、電極の数が少ない場合には、薄型化でき、可撓性に優れた蓄電池とすることができる。
上記構成において、二次電池の外装体509は、最小の曲率半径が例えば、3mm以上30mm以下、より好ましくは3mm以上10mm以下となるように変形することができる。二次電池の外装体であるフィルムは、1枚または2枚で構成されており、積層構造の二次電池である場合、湾曲させた電池の断面構造は、外装体であるフィルムの2つの曲線で挟まれた構造となる。
面の曲率半径について、図10を用いて説明する。図10(A)において、曲面1700を切断した平面1701において、曲面1700に含まれる曲線1702の一部を円の弧に近似して、その円の半径を曲率半径1703とし、円の中心を曲率中心1704とする。図10(B)に曲面1700の上面図を示す。図10(C)に、平面1701で曲面1700を切断した断面図を示す。曲面を平面で切断するとき、曲面に対する平面の角度や切断位置に応じて、断面に現れる曲線の曲率半径は異なるものとなるが、本明細書等では、最も小さい曲率半径を面の曲率半径とする。
2枚のフィルムを外装体として電極・電解液など1805を挟む二次電池を湾曲させた場合には、二次電池の曲率中心1800に近い側のフィルム1801の曲率半径1802は、曲率中心1800から遠い側のフィルム1803の曲率半径1804よりも小さい(図11(A))。二次電池を湾曲させて断面を円弧状とすると曲率中心1800に近いフィルムの表面には圧縮応力がかかり、曲率中心1800から遠いフィルムの表面には引っ張り応力がかかる(図11(B))。外装体の表面に凹部または凸部で形成される模様を形成すると、このように圧縮応力や引っ張り応力がかかったとしても、ひずみによる影響を許容範囲内に抑えることができる。そのため、二次電池は、曲率中心に近い側の外装体の最小の曲率半径が例えば、3mm以上30mm以下、より好ましくは3mm以上10mm以下となるように変形することができる。
なお、二次電池の断面形状は、単純な円弧状に限定されず、一部が円弧を有する形状にすることができ、例えば図11(C)に示す形状や、波状(図11(D))、S字形状などとすることもできる。二次電池の曲面が複数の曲率中心を有する形状となる場合は、複数の曲率中心それぞれにおける曲率半径の中で、最も曲率半径が小さい曲面において、2枚の外装体の曲率中心に近い方の外装体の最小の曲率半径が例えば、3mm以上30mm以下、より好ましくは3mm以上10mm以下となるように変形することができる。
次に、正極、負極およびセパレータの積層の様々な例を示す。
図14(A)には、正極111及び負極115を6層ずつ積層する例について示す。正極111が有する正極集電体121の片面に正極活物質層122が設けられている。また、負極115が有する負極集電体125の片面に負極活物質層126が設けられている。
また、図14(A)に示す構成では、正極111の正極活物質層122を有さない面同士が接し、負極115の負極活物質層126を有さない面同士が接するように、正極111及び負極115が積層される。このような積層順とすることで、正極111の正極活物質層122を有さない面同士、負極115の負極活物質層126を有さない面同士という、金属同士の接触面をつくることができる。金属同士の接触面は、活物質とセパレータとの接触面と比較して摩擦係数を小さくすることができる。
そのため、二次電池10を湾曲したとき、正極111の正極活物質層122を有さない面同士、負極115の負極活物質層126を有さない面同士が滑ることで、湾曲の内径と外径の差により生じる応力を逃がすことができる。ここで湾曲の内径とは例えば、蓄電池500を湾曲させる場合に、蓄電池500の外装体509において、湾曲部の内側に位置する面が有する曲率半径を指す。そのため、蓄電池500の劣化を抑制することができる。また、信頼性の高い蓄電池500とすることができる。
また、図14(B)に、図14(A)と異なる正極111と負極115の積層の例を示す。図14(B)に示す構成では、正極集電体121の両面に正極活物質層122を設けている点において、図14(A)に示す構成と異なる。図14(B)のように正極集電体121の両面に正極活物質層122を設けることで、蓄電池500の単位体積あたりの容量を大きくすることができる。
また、図14(C)に、図14(B)と異なる正極111と負極115の積層の例を示す。図11(C)に示す構成では、負極集電体125の両面に負極活物質層126を設けている点において、図11(B)に示す構成と異なる。図11(C)のように負極集電体125の両面に負極活物質層126を設けることで、蓄電池500の単位体積あたりの容量をさらに大きくすることができる。
また、図14および図14に示す構成では、セパレータ123が正極111を袋状に包む構成であったが、本発明はこれに限られるものではない。ここで、図15(A)に、図14(A)と異なる構成のセパレータ123を有する例を示す。図15(A)に示す構成では、正極活物質層122と負極活物質層126との間にシート状のセパレータ123を1枚ずつ設けている点において、図14(A)に示す構成と異なる。図15(A)に示す構成では、正極111及び負極115を6層ずつ積層しており、セパレータ123を6層設けている。
また、図15(B)に図15(A)とは異なるセパレータ123を設けた例を示す。図15(B)に示す構成では、1枚のセパレータ123が正極活物質層122と負極活物質層126の間に挟まれるように複数回折り返されている点において、図15(A)に示す構成と異なる。また、図15(B)の構成は、図15(A)に示す構成の各層のセパレータ123を延長して層間をつなぎあわせた構成ということもできる。図15(B)に示す構成では、正極111及び負極115を6層ずつ積層しており、セパレータ123を少なくとも5回以上折り返すことが好ましい。また、セパレータ123は、正極活物質層122と負極活物質層126の間に挟まれるように設けるだけでなく、延長して複数の正極111と負極115を一まとめに結束するようにしてもよい。
また図16に示すように正極、負極およびセパレータを積層してもよい。図16(A)は第1の電極組立体130、図16(B)は第2の電極組立体131の断面図である。図16(C)は、図1(A)の一点破線A1−A2における断面図である。なお、図16(C)では図を明瞭にするため、第1の電極組立体130、電極組立体131およびセパレータ123を抜粋して示す。
図16(C)に示すように、蓄電池500は、複数の第1の電極組立体130および複数の電極組立体131を有する。
図16(A)に示すように、第1の電極組立体130では、正極集電体121の両面に正極活物質層122を有する正極111a、セパレータ123、負極集電体125の両面に負極活物質層126を有する負極115a、セパレータ123、正極集電体121の両面に正極活物質層122を有する正極111aがこの順に積層されている。また図16(B)に示すように、第2の電極組立体131では、負極集電体125の両面に負極活物質層126を有する負極115a、セパレータ123、正極集電体121の両面に正極活物質層122を有する正極111a、セパレータ123、負極集電体125の両面に負極活物質層126を有する負極115aがこの順に積層されている。
さらに図16(C)に示すように、複数の第1の電極組立体130および複数の電極組立体131は、捲回したセパレータ123によって覆われている。
[コイン型蓄電池]
次に蓄電装置の一例として、コイン型の蓄電池の一例について、図12を参照して説明する。図12(A)はコイン型(単層偏平型)の蓄電池の外観図であり、図12(B)は、その断面図である。
コイン型の蓄電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。
また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。
正極304は、正極503の記載を参照すればよい。正極活物質層306は、正極活物質層502を参照すればよい。負極307は、負極506を参照すればよい。負極活物質層309は、負極活物質層505の記載を参照すればよい。セパレータ310は、セパレータ507の記載を参照すればよい。電解液は、電解液508の記載を参照すればよい。
なお、コイン型の蓄電池300に用いる正極304および負極307は、それぞれ活物質層は片面のみに形成すればよい。
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
これら負極307、正極304およびセパレータ310を電解質に含浸させ、図12(B)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の蓄電池300を製造する。
[円筒型蓄電池]
次に蓄電装置の一例として、円筒型の蓄電池を示す。円筒型の蓄電池について、図13を参照して説明する。円筒型の蓄電池600は、図13(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
図13(B)は、円筒型の蓄電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の蓄電池と同様のものを用いることができる。
正極604は、正極503を参照すればよい。また負極606は、負極506を参照すればよい。また、正極604および負極606は、例えば実施の形態1に示す電極の作製方法を参照することができる。円筒型の蓄電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
図13に示すような円筒型の蓄電池のように電極を捲回する際には、捲回時に電極に大きな応力が作用する。また、電極の捲回体を筐体に収納した場合に、電極には常に捲回軸の外側に向かう応力が作用する。このように電極に大きな応力が作用したとしても、活物質が劈開してしまうことを防止することができる。
なお、本実施の形態では、蓄電池として、コイン型、円筒型および薄型の蓄電池を示したが、その他の封止型蓄電池、角型蓄電池等様々な形状の蓄電池を用いることができる。また、正極、負極、およびセパレータが複数積層された構造、正極、負極、およびセパレータが捲回された構造であってもよい。例えば、他の蓄電池の例を図17乃至図21に示す。
[薄型の蓄電池の構成例]
図17および図18に、薄型の蓄電池の構成例を示す。図17(A)に示す捲回体993は、負極994と、正極995と、セパレータ996と、を有する。
捲回体993は、セパレータ996を挟んで負極994と、正極995とが重なり合って積層され、該積層シートを捲回したものである。この捲回体993を角型の封止容器などで覆うことにより角型の二次電池が作製される。
なお、負極994、正極995およびセパレータ996からなる積層の積層数は、必要な容量と素子体積に応じて適宜設計すればよい。負極994はリード電極997およびリード電極998の一方を介して負極集電体(図示せず)に接続され、正極995はリード電極997およびリード電極998の他方を介して正極集電体(図示せず)に接続される。
図17(B)および図17(C)に示す蓄電池990は、外装体となるフィルム981と、凹部を有するフィルム982とを熱圧着などにより貼り合わせて形成される空間に上述した捲回体993を収納したものである。捲回体993は、リード電極997およびリード電極998を有し、フィルム981と、凹部を有するフィルム982との内部で電解液に含浸される。
フィルム981と、凹部を有するフィルム982は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。フィルム981および凹部を有するフィルム982の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときにフィルム981と、凹部を有するフィルム982を変形させることができ、可撓性を有する蓄電池を作製することができる。
また、図17(B)および図17(C)では2枚のフィルムを用いる例を示しているが、1枚のフィルムを折り曲げることによって空間を形成し、その空間に上述した捲回体993を収納してもよい。
また蓄電装置の外装体や、封止容器を樹脂材料などにすることによって可撓性を有する蓄電装置を作製することができる。ただし、外装体や、封止容器を樹脂材料にする場合、外部に接続を行う部分は導電材料とする。
例えば、可撓性を有する別の薄型蓄電池の例を図18に示す。図18(A)の捲回体993は、図17(A)に示したものと同一であるため、詳細な説明は省略することとする。
図18(B)および図18(C)に示す蓄電池990は、外装体991の内部に上述した捲回体993を収納したものである。捲回体993は、リード電極997およびリード電極998を有し、外装体991、992の内部で電解液に含浸される。外装体991、992は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。外装体991、992の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときに外装体991、992を変形させることができ、可撓性を有する薄型蓄電池を作製することができる。
本発明の一態様に係る活物質を含む電極を、可撓性を有する薄型蓄電池に用いることにより、薄型蓄電池を繰り返し折り曲げることによって電極に応力が作用したとしても、活物質が劈開してしまうことを防止することができる。
以上により、劈開面の少なくとも一部にグラフェンで覆われた活物質を電極に用いることにより、電池の電圧の低下や、放電容量の低下を抑制することができる。これにより、充放電に伴う電池のサイクル特性を向上させることができる。
[蓄電システムの構造例]
また、蓄電システムの構造例について、図19乃至図21を用いて説明する。ここで蓄電システムとは、例えば、蓄電装置を搭載した機器を指す。
図19(A)および図19(B)は、蓄電システムの外観図を示す図である。蓄電システムは、回路基板900と、蓄電池913と、を有する。蓄電池913には、ラベル910が貼られている。さらに、図19(B)に示すように、蓄電システムは、端子951と、端子952と、アンテナ914と、アンテナ915と、を有する。
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951、端子952、アンテナ914、アンテナ915、および回路912に接続される。なお、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914およびアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914若しくはアンテナ915は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
蓄電システムは、アンテナ914およびアンテナ915と、蓄電池913との間に層916を有する。層916は、例えば蓄電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。
なお、蓄電システムの構造は、図19に示す構造に限定されない。
例えば、図20(A−1)および図20(A−2)に示すように、図19(A)および図19(B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよい。図20(A−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図20(A−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図19(A)および図19(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図19(A)および図19(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
図20(A−1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914が設けられ、図20(A−2)に示すように、蓄電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば蓄電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用いることができる。
上記構造にすることにより、アンテナ914およびアンテナ915の両方のサイズを大きくすることができる。
または、図20(B−1)および図20(B−2)に示すように、図19(A)および図19(B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれに別のアンテナを設けてもよい。図20(B−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図20(B−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図19(A)および図19(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図19(A)および図19(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
図20(B−1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914およびアンテナ915が設けられ、図20(B−2)に示すように、蓄電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914およびアンテナ915に適用可能な形状のアンテナを適用することができる。アンテナ918を介した蓄電システムと他の機器との通信方式としては、NFCなど、蓄電システムと他の機器の間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
又は、図21(A)に示すように、図19(A)および図19(B)に示す蓄電池913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子919を介して端子911に電気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。なお、図19(A)および図19(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図19(A)および図19(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
又は、図21(B)に示すように、図19(A)および図19(B)に示す蓄電池913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に接続される。なお、図19(A)および図19(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図19(A)および図19(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
センサ921としては、例えば、力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むものを用いることができる。センサ921を設けることにより、例えば、蓄電システムが置かれている環境を示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
本実施の形態で示す蓄電池や蓄電システムには、本発明の一態様に係る電極が用いられている。そのため、蓄電池や蓄電システムの容量の大きくすることができる。また、エネルギー密度を高めることができる。また、信頼性を高めることができる。また、寿命を長くすることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の電極を適用することができる形態として、可撓性を有する蓄電池を電子機器に実装する例について説明する。
実施の形態4に示す可撓性を有する蓄電池を電子機器に実装する例を図22に示す。フレキシブルな形状を備える蓄電装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
また、フレキシブルな形状を備える蓄電装置を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
図22(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、蓄電装置7407を有している。
図22(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている蓄電装置7407も湾曲される。また、その時、曲げられた蓄電装置7407の状態を図22(C)に示す。蓄電装置7407は薄型の蓄電池である。蓄電装置7407は曲げられた状態で固定されている。なお、蓄電装置7407は集電体7409と電気的に接続されたリード電極7408を有している。例えば、集電体7409は銅箔であり、一部ガリウムと合金化させて、集電体7409と接する活物質層との密着性を向上し、蓄電装置7407が曲げられた状態での信頼性が高い構成となっている。
図22(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び蓄電装置7104を備える。また、図22(E)に曲げられた蓄電装置7104の状態を示す。蓄電装置7104は曲げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して蓄電装置7104の一部または全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半径の値で表したものを曲率半径であり、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または蓄電装置7104の主表面の一部または全部が変化する。蓄電装置7104の主表面における曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。
図22(F)は、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200は、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン7205、入出力端子7206などを備える。
携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン7207に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
また、携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
また、携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により行ってもよい。
携帯情報端末7200の表示部7202には、本発明の一態様の電極を備える蓄電装置を有している。例えば、図22(E)に示した蓄電装置7104を、筐体7201の内部に湾曲した状態で、またはバンド7203の内部に湾曲可能な状態で組み込むことができる。
携帯情報端末7200はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋センサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサや、タッチセンサ、加圧センサ、加速度センサ、等が搭載されることが好ましい。
図22(G)は、腕章型の表示装置の一例を示している。表示装置7300は、表示部7304を有し、本発明の一態様の蓄電装置を有している。また、表示装置7300は、表示部7304にタッチセンサを備えることもでき、また、携帯情報端末として機能させることもできる。
表示部7304はその表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示装置7300は、通信規格された近距離無線通信などにより、表示状況を変更することができる。
また、表示装置7300は入出力端子を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子を介さずに無線給電により行ってもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態4)
本実施の形態では、蓄電装置を搭載することのできる電子機器の一例を示す。
図23(A)および図23(B)に、2つ折り可能なタブレット型端末の一例を示す。図23(A)および図23(B)に示すタブレット型端末9600は、筐体9630a、筐体9630b、筐体9630aと筐体9630bを接続する可動部9640、表示部9631aと表示部9631bを有する表示部9631、表示モード切り替えスイッチ9626、電源スイッチ9627、省電力モード切り替えスイッチ9625、留め具9629、操作スイッチ9628、を有する。図23(A)は、タブレット型端末9600を開いた状態を示し、図23(B)は、タブレット型端末9600を閉じた状態を示している。
また、タブレット型端末9600は、筐体9630aおよび筐体9630bの内部に蓄電体9635を有する。蓄電体9635は、可動部9640を通り、筐体9630aと筐体9630bに渡って設けられている。
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示された操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
また、表示モード切り替えスイッチ9626は、縦表示又は横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9625は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
また、図23(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
図23(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、DCDCコンバータ9636を含む充放電制御回路9634有する。また、蓄電体9635として、本発明の一態様に係る蓄電体を用いる。
なお、タブレット型端末9600は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630aおよび筐体9630bを重ね合せるように折りたたむことができる。折りたたむことにより、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、タブレット型端末9600の耐久性を高めることができる。また、本発明の一態様の蓄電体を用いた蓄電体9635は可撓性を有し、曲げ伸ばしを繰り返しても充放電容量が低下しにくい。よって、信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
また、この他にも図23(A)および図23(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の片面又は両面に設けることができ、蓄電体9635の充電を効率的に行う構成とすることができる。なお蓄電体9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
また、図23(B)に示す充放電制御回路9634の構成、および動作について図23(C)にブロック図を示し説明する。図23(C)には、太陽電池9633、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図23(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、蓄電体9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにして蓄電体9635の充電を行う構成とすればよい。
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による蓄電体9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
図24に、他の電子機器の例を示す。図24において、表示装置8000は、本発明の一態様に係る蓄電装置8004を用いた電子機器の一例である。具体的に、表示装置8000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部8002、スピーカ部8003、蓄電装置8004等を有する。本発明の一態様に係る蓄電装置8004は、筐体8001の内部に設けられている。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8004を無停電電源として用いることで、表示装置8000の利用が可能となる。
表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
図24において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を用いた電子機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体8101、光源8102、蓄電装置8103等を有する。図24では、蓄電装置8103が、筐体8101及び光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置8103は、筐体8101の内部に設けられていても良い。照明装置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を無停電電源として用いることで、照明装置8100の利用が可能となる。
なお、図24では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示しているが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井8104以外、例えば側壁8105、床8106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
図24において、室内機8200及び室外機8204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を用いた電子機器の一例である。具体的に、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、蓄電装置8203等を有する。図24では、蓄電装置8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置8203は室外機8204に設けられていても良い。或いは、室内機8200と室外機8204の両方に、蓄電装置8203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機8200と室外機8204の両方に蓄電装置8203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
なお、図24では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることもできる。
図24において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を用いた電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、蓄電装置8304等を有する。図24では、蓄電装置8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫8300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
なお、上述した電子機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電子機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることで、電子機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
また、電子機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫8300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われない夜間において、蓄電装置8304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われる昼間において、蓄電装置8304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)
本実施の形態では、車両に蓄電装置を搭載する例を示す。
また、蓄電装置を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
図25において、本発明の一態様を用いた車両を例示する。図25(A)に示す自動車8400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。また、自動車8400は蓄電装置を有する。蓄電装置は電気モーター8406を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
また、蓄電装置は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、蓄電装置は、自動車8400が有するナビゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
図25(B)に示す自動車8500は、自動車8500が有する蓄電装置にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図25(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された蓄電装置8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された蓄電装置8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電装置の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
本発明の一態様によれば、蓄電装置のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させることができる。また、本発明の一態様によれば、蓄電装置の特性を向上することができ、よって、蓄電装置自体を小型軽量化することができる。蓄電装置自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した蓄電装置を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。本実施例では、実施の形態1で示した方法により活物質を囲む保護層を形成し、当該活物質を用いて電極を作成した結果について説明する。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
(活物質を囲む保護層の形成)
まず、活物質を囲む保護層の形成をおこなった。活物質としてLiCoO2、保護層の原料として酸化グラフェン(GO)を用いた。LiCoO2(10g)およびGO(0.205g)に対し、徐々に純水(6.2ml)を加えながら、混練機を用いて混合物を形成した。その後、当該混合物を大気雰囲気下、12時間、50℃で加熱することにより、乾燥させた。
乾燥させた混合物を、乳鉢を用いて解砕した後、目開き53μmのふるいにかけた。なお、本明細書等において、目開きは、線と線の間の隙間の大きさを表す。
以上が、活物質を囲む保護層の形成方法である。
次に、上記方法で保護層を形成したLiCoO2を用いて電極Aおよび電極Bの作製を行った方法について説明する。なお、電極Aでは、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)を用いた。また、電極Bでは、導電助剤として、アセチレンブラック(AB)、バインダとしてPVdF、溶媒としてNMPを用いた。
なお、以下の示す電極の作製方法では、実際には、0.5%(重量)のPVdFをNMPに溶解させた溶液(以下、PVdfを含む溶液と記載する)を用いて、PVdFおよびNMPを加えた。
(電極Aの作製)
まず、保護層を形成したLiCoO2(1.0003g)と、PVdFを含む溶液(0.1618g)とを、20分、2000rpmで混合した。当該混合物に、PVdFを含む溶液(0.0831g)を加えて混練機を用いて20分、2000rpmで混合した。さらに、当該混合物に、PVdFを含む溶液(0.1666g)を加えて混練機を用いて15分、2000rpmで混合した。
次に、当該混合物をシート状の集電体(アルミニウム)の片面に塗布し、大気雰囲気下、30分、80℃で加熱することにより電極Bを作製した。
(電極Bの作製)
まず、AB(0.0217g)、PVdFを含む溶液(0.1853g)を、混練機を用いて5分、2000rpmで混合した。当該混合物に、保護層を形成したLiCoO2(0.8015g)を加えて混練機を用いて40分、2000rpmで混合した後、PVdFを含む溶液(0.2365g)を加えて混練機を用いて15分、2000rpmで混合した。
次に、当該混合物をシート状の集電体(アルミニウム)の片面に塗布し、大気雰囲気下、30分、80℃で加熱することにより電極Bを作製した。
作製した電極Aおよび電極Bそれぞれの活物質層の構造を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて観察した結果について、図26を用いて示す。
図26(A)に、電極Aの活物質層の断面SEM像を示す。図26(A)に示すように、電極Aの活物質層において、活物質201は、保護層202に囲まれていた。また、活物質201と、保護層202とは、接触する領域を有していた。
図26(B)に、電極Bの活物質層の断面SEM像を示す。図26(B)に示すように、電極Bの活物質層において、活物質201は、保護層202に囲まれていた。また、活物質201と、保護層202とは、接触する領域を有していた。また、活物質層において、導電助剤203が存在していた。
以上が、実施の形態1で示した方法により活物質を囲む保護層を形成し、当該活物質を用いて電極を製造した結果である。本実施例によって、実施の形態1で示した方法により活物質を囲む保護層の形成が可能であることが示された。
本実施例では、実施の形態1で示した方法により活物質層上に保護層を形成し、当該活物質を用いて電極Cを作成した結果について説明する。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
なお、電極Cでは、バインダとしてPVdF、溶媒としてNMPを用いた。また、活物質層上の保護層に用いる導電性を有する材料を有する層として、酸化グラフェンを用いた。
(電極Cの作製)
まず、LiCoO2:AB:PVdF=95:3:2(重量比)となるように、LiCoO2、AB、PVdFを含む溶液を秤量し、混練機を用いて、これらの材料を有する混合物を形成した。
次に、当該混合物をシート状の集電体(アルミニウム)の片面に塗布し(20mg/cm2)、減圧雰囲気下、120分、50℃で加熱することにより、活物質層を形成した。
次に、酸化グラフェン(0.08g)を超脱水エタノール(8.5ml)に分散させ、混練機を用いて混合物を用意した。活物質層および集電体を当該混合物に5秒ディップした後、フッ素樹脂のシート上に乗せ、大気雰囲気下、約15分、50℃での加熱を3回行うことにより、集電体および活物質層の全体を囲む保護層を形成し、電極Cを作成した。
作製した電極の側面をSEMを用いて観察した結果について、図27を用いて示す。
図27(A)には、電極Cの側面のSEM像を示す。図27に示すように、電極Cの表面は、保護層204に覆われていることがわかった。
図27(B)には、比較例として、保護層を形成していない電極を側面から観察したSEM像を示す。図27(B)に示すように、保護層を形成していない電極の側面から、活物質層205および集電体206を観察することができた。
以上が、実施の形態1で示した方法により集電体および活物質層を囲む保護層を有する電極を製造した結果である。本実施例によって、実施の形態1で示した方法により集電体および活物質層を囲む保護層の形成が可能であることが示された。