本発明の実施の形態について、図面を用いて以下、詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの説明に限定されず、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書で説明する各図において、膜、層、基板、領域などの各要素の大きさや厚さ等は、個々に説明の明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしも各構成要素はその大きさに限定されず、また各構成要素間での相対的な大きさに限定されない。
なお、本明細書等において、第1、第2などとして付される序数詞は、便宜上用いるものであって工程の順番や積層の順番などを示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
なお、本明細書等で説明する本発明の構成において、同一部分又は同様の機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
なお、本明細書等において、蓄電装置用の正極及び負極の双方を併せて電極とよぶことがあるが、この場合、電極は正極及び負極のうち少なくともいずれか一方を示すものとする。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の蓄電池について説明する。
本発明の一態様の蓄電池は、正極と、負極と、電解液と、を有する。
本発明の一態様の蓄電池が有する電解液は、イオン液体を有することが好ましい。また、本発明の一態様の蓄電池は、イオン液体を構成するイオン以外に、第1のカチオンを有することが好ましい。第1のカチオンとして例えば、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオン等を用いることができる。アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンは蓄電池のキャリアイオンとして機能する。
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、およびカリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、およびマグネシウム等が挙げられる。
キャリアイオンとしてリチウムを用いる場合、イオン液体に例えば、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiAlCl4、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C4F9SO2)(CF3SO2)、LiN(C2F5SO2)2等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせおよび比率で溶解させることができる。
ここで、キャリアイオンの濃度は、0.1mol/Lより高く3mol/L未満であることが好ましく、0.3mol/L以上高く2.5mol/L以下であることがより好ましい。
また電解液は、イオン液体以外の溶媒を有してもよい。例えば、非プロトン性有機溶媒を有してもよい。非プロトン性有機溶媒としては例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
蓄電池の充電および放電において、電解液の分解反応が生じる場合がある。電解液の分解は、電極の表面近傍において、電気的な反応により主に生じる。
アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオン等をキャリアイオンに用いる蓄電池においては例えば、負極の反応電位が低く電解液の分解反応が生じ易い場合がある。例えば負極の表面近傍において、還元反応により電解液が分解する場合を考える。電解液の分解が不可逆反応である場合には、不可逆容量が増大する場合がある。ここで不可逆容量とは充電容量と放電容量の差である。不可逆容量の増大により、蓄電池の容量が低下する。
蓄電池の容量の低下を抑制するためには、電極表面の近傍における電解液の不可逆反応を抑制することが好ましい。例えば、電解液の構成要素のうち、主たるキャリアイオンであるアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンの反応を促進し、かつ、他の構成要素、例えばイオン液体のカチオンおよびアニオンとの反応を抑制することが好ましい。
図1(A)は、蓄電池の負極活物質671の表面における電解液の各構成要素を示す模式図である。電解液は第1のカチオン681、およびイオン液体を有する。該イオン液体は、カチオン682およびアニオン683を有する。一例として、第1のカチオン681としてリチウムイオン、カチオン682として1−ethyl−3−methylimidazolium(EMI)を用いることができる。
リチウムは、酸化還元電位が極めて低く、標準電極電位に対して−3.045Vの電位を有する。負極活物質は、反応電位が低いほど、蓄電装置の電圧を高めることができるため好ましい。一方、電位が低い場合には、電解液を還元する力も強まるため、例えば電解液に用いる有機溶媒等は還元分解される恐れがある。リチウムの酸化還元電位と比較して、リチウムイオン電池の負極における反応電位は、同等、またはやや高い電位である場合には、蓄電装置の電圧を高めることができるため好ましい。一方、電解液の溶媒、ここでは例えばイオン液体のカチオンの反応電位は、リチウムの酸化還元電位と比較して高い場合が多い。
蓄電池の充電に伴い負極活物質671の電位が低下する。負極活物質671の電位が、第1のカチオン681、カチオン682およびアニオン683の反応が顕著に生じる電位に達する前においては、負極に電荷が蓄積される。該電荷の蓄積に伴い、図1(B)に示すように第1のカチオン681は負極活物質671の表面に電気二重層を形成することが好ましい。また、第1のカチオン681が形成する電気二重層の表面には例えば、アニオン683が配列する。図1(B)においては、カチオン682の負極活物質671の表面への到達が抑制される。
カチオン682の反応電位が第1のカチオン681の反応電位よりも高い場合には、負極の電位がカチオン682の反応電位まで低下するのに伴い、カチオン682の反応が顕著に生じる。しかしながら、図1(B)に示すようにカチオン682の負極表面への到達が抑制される場合には、第1のカチオン681の反応電位に到達するまでは、カチオン682の反応を抑制することができる。
次に、負極の電位が第1のカチオン681の反応が顕著に生じる電位まで低下する場合を考える。第1のカチオン681の還元反応により、第1のカチオン681が消費される。第1のカチオン681の還元に伴い例えば、第1のカチオン681と負極活物質671の化合物を形成する場合がある。あるいは、還元により第1のカチオン681が脱イオン化し、負極活物質671の表面に析出層681bを形成する場合がある。
ここで、第1のカチオン681が消費されるのに伴い、負極活物質671の表面に形成された電気二重層が消失し、負極活物質671の表面に新たなカチオンが到達する。ここで、負極活物質671の表面にカチオン682が到達する場合には、カチオン682の不可逆な反応、例えば還元分解等が生じ、反応物684を形成する場合がある。反応物684が堆積し、負極活物質671の表面に被膜685を形成する場合がある。
よって、第1のカチオン681は、カチオン682よりも速く負極活物質671の表面に到達することが好ましい。例えば、図1(D)に示すように電解液中における第1のカチオン681の拡散速度が、カチオン682よりも速い場合には、カチオン682の反応を抑制し、主たるキャリアイオンである第1のカチオン681の反応を促進することができる。
ここで、電解液の溶媒として、非プロトン性有機溶媒を用いる場合を考える。第1のカチオン681には該溶媒が配位する(溶媒和する)。ここで、主たるキャリアイオンである第1のカチオン681が負極表面の近傍まで移動し、電気二重層を形成する際に、該溶媒は中性であるため、溶媒和した状態で負極表面の近傍まで移動し、第1のカチオン681が電気二重層を形成するのを阻害する場合がある。
一方、電解液の溶媒としてイオン液体を用いる場合には、第1のカチオン681にはアニオン683が配位すると考えられる。第1のカチオン681が負極表面の近傍まで移動し、電気二重層を形成する際に、アニオン683は負の電荷を有するため、負極表面から離れる方向に電界を受ける。よって、第1のカチオン681が負極表面に近づくのに伴い、アニオン683の配位する力は弱まり、脱離すると考えられる。よって、電解液の溶媒として非プロトン性有機溶媒を用いる場合に比べて、第1のカチオン681の電気二重層の形成がしやすいと考えられる。
[カチオンの拡散速度]
本発明の一態様の蓄電池の電解液中において、第1のカチオン681の拡散速度は、カチオン682の拡散速度よりも速いことが好ましい。カチオンの拡散速度は、分子量、電荷の偏り、立体構造、等により決定される。
例えばカチオン682の分子量が大きい場合にはカチオン682の拡散速度が小さくなるが、電解液の粘度の増大を招く。電解液の粘度の増大に伴い、主たるキャリアイオンである第1のカチオン681の拡散速度も低下してしまう。第1のカチオン681の拡散速度の低下に伴い、蓄電池の出力特性が低下する。
カチオン682として、芳香族カチオン、脂肪族オニウムカチオン、等を用いることができる。芳香族カチオンとして、ピリジニウムカチオン、およびイミダゾリウムカチオン等を用いることができる。脂肪族オニウムカチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、および四級ホスホニウムカチオン等を用いることができる。
イミダゾリウムカチオンを有するイオン液体として例えば、下記一般式(G1)で表されるイオン液体を用いることができる。一般式(G1)中において、R1は、炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、R2乃至R4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、R5は、アルキル基、または、C、O、Si、N、S、Pの原子から選択された2つ以上で構成される主鎖を表す。また、R5の主鎖に置換基が導入されていてもよい。導入される置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
三級スルホニウムカチオンを有するイオン液体として例えば、下記一般式(G2)で表されるイオン液体を用いることができる。一般式(G2)中において、R25乃至R27は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数が1以上4以下のアルキル基、またはフェニル基、を表す。または、R25乃至R27として、C、O、Si、N、S、Pの原子から選択された2つ以上で構成される主鎖を用いてもよい。
四級アンモニウムカチオンを有するイオン液体として例えば、下記一般式(G4)、(G5)および(G6)で表されるイオン液体を用いることができる。
一般式(G4)中、R12乃至R17は、それぞれ独立に、炭素数が1以上20以下のアルキル基、メトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、または水素原子のいずれかを表す。
一般式(G5)中、R18乃至R24は、それぞれ独立に、炭素数が1以上20以下のアルキル基、メトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、または水素原子のいずれかを表す。
一般式(G6)中、n及びmは1以上3以下である。αは0以上6以下とし、nが1の場合αは0以上4以下であり、nが2の場合αは0以上5以下であり、nが3の場合αは0以上6以下である。βは0以上6以下とし、mが1の場合βは0以上4以下であり、mが2の場合βは0以上5以下であり、mが3の場合βは0以上6以下である。なお、αまたはβが0であるとは、無置換であることを表す。また、αとβが共に0である場合は除くものとする。X又はYは、置換基として炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルキル基、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシ基、又は炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシアルキル基を表す。
ピリジニウムカチオンを有するイオン液体として例えば、下記一般式(G3)で表されるイオン液体を用いてもよい。一般式(G3)中において、R6は、アルキル基、または、C、O、Si、N、S、Pの原子から選択された2つ以上で構成される主鎖を表し、R7乃至R11は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が1以上4以下のアルキル基を表す。また、R6の主鎖に置換基が導入されていてもよい。導入される置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
一般式(G1)乃至(G6)に示すA−として、アニオン683に用いることができるアニオンを参照すればよい。
カチオン682として分子量が150以下のピリジニウムカチオンを用いる場合には、カチオン682の電解液中の拡散が速く、カチオン682が負極表面に到達して分解反応が生じ易い場合がある。一方、カチオン682として分子量が110以上の三級スルホニウムカチオン、分子量が100以上のイミダゾリウムカチオン、および分子量が130以上の四級アンモニウムカチオンを用いることにより、第1のカチオン681と比較してカチオン682の拡散速度を小さくできる場合があり好ましい。ここで、分子量が220以下の三級スルホニウムカチオン、および分子量が250以下、より好ましくは175以下のイミダゾリウムカチオンを用いることにより、電解液の粘度の上昇を小さく抑えることができる場合があり、より好ましい。
本発明の一態様のイオン液体として一般式(G1)乃至(G6)で表されるイオン液体を用いることが好ましく、一般式(G1)および(G2)で表されるイオン液体を用いることがより好ましく、一般式(G1)で表されるイオン液体を用いることがさらに好ましい。
アニオン683として、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF6 −)、またはパーフルオロアルキルホスフェートアニオン等を用いることができる。
アニオン683として例えば、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン(SO3F−)、フルオロアルキルスルホン酸アニオン、等を用いることが好ましい。
1価のアミド系アニオンとしては、(CnF2n+1SO2)2N−(n=0以上3以下)、1価の環状のアミド系アニオンとしては、(CF2SO2)2N−などがある。1価のメチド系アニオンとしては、(CnF2n+1SO2)3C−(n=0以上3以下)、1価の環状のメチド系アニオンとしては、(CF2SO2)2C−(CF3SO2)などがある。フルオロアルキルスルホン酸アニオンとしては、(CmF2m+1SO3)−(m=0以上4以下)などがある。フルオロアルキルボレートアニオンとしては、{BFn(CmHkF2m+1−k)4−n}−(n=0以上3以下、m=1以上4以下、k=0以上2m以下)などがある。フルオロアルキルホスフェートアニオンとしては、{PFn(CmHkF2m+1−k)6−n}−(n=0以上5以下、m=1以上4以下、k=0以上2m以下)などがある。これらのアニオンは、第1のカチオン681や、カチオン682との相互作用が小さい場合があり好ましい。第1のカチオン681とアニオン683との相互作用が小さい場合には、第1のカチオン681の拡散速度を高めることができる場合がある。また、カチオン682とアニオン683との相互作用が小さい場合には、電解液が有するイオン液体の融点を低くすることができる場合がある。
一価のアミド系アニオンとして例えば、ビス(フルオロスルホニル)アミドアニオンおよびビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドアニオンを用いることができる。
また、アニオン683として、テトラフルオロボレートアニオン(BF4 −)、フルオロアルキルボレートアニオン、またはフルオロアルキルホスフェートアニオンを用いてもよい。
本発明の一態様に係る蓄電装置に用いられる化合物は、一般式(G7)で表されるカチオンと、カチオンに対するアニオンと、を有する。
式中、R1は、炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、R2乃至R4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が1以上4以下のアルキル基を表す。また、式中、A1乃至A4は、それぞれ独立に、メチレン基または酸素原子を表し、A1乃至A4の少なくとも1つは酸素原子である。
イミダゾリウムカチオンの窒素に導入された置換基(一般式(G7)中のA1乃至A4を含む置換基)を有していると、イオン液体のカチオン種を立体的に嵩高くすることで電池内部の副反応(充電時における黒鉛へのカチオン挿入および分解、それに伴うガスの発生等)を抑制することができる。しかし、A1乃至A4の炭素数が増えるにつれて、イオン液体の粘度も増大する傾向を有するため、所望の充放電効率および所望の粘度に応じて適宜制御することが好ましい。
また、上記イオン液体におけるアニオンは、イミダゾリウムカチオンとイオン液体を構成する一価のアニオンである。当該アニオンとして、例えば、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン(SO3F−)、フルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン(BF4 −)、フルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF6 −)またはフルオロアルキルホスフェートアニオン等が挙げられる。そして、1価のアミド系アニオンとしては、(CnF2n+1SO2)2N−(n=0以上3以下)、1価の環状のアミド系アニオンとしては、(CF2SO2)2N−などがある。1価のメチド系アニオンとしては、(CnF2n+1SO2)3C−(n=0以上3以下)、1価の環状のメチド系アニオンとしては、(CF2SO2)2C−(CF3SO2)などがある。フルオロアルキルスルホン酸アニオンとしては、(CmF2m+1SO3)−(m=0以上4以下)などがある。フルオロアルキルボレートアニオンとしては、{BFn(CmHkF2m+1−k)4−n}−(n=0以上3以下、m=1以上4以下、k=0以上2m以下)などがある。フルオロアルキルホスフェートアニオンとしては、{PFn(CmHkF2m+1−k)6−n}−(n=0以上5以下、m=1以上4以下、k=0以上2m以下)などがある。なお、当該アニオンはこれらに限るものではない。
また、上記イオン液体におけるアニオンは、1価のアミド系アニオンであるビス(フルオロスルホニル)アミドアニオンであることが好ましい。ビス(フルオロスルホニル)アミドアニオンと、カチオンとを組み合わせて用いたイオン液体は、高い導電性、比較的低い粘度を有する。該イオン液体を用い、負極に黒鉛をもちいた蓄電装置は充放電が可能である。
また、本発明の一態様に係る蓄電装置に用いられる化合物は、一般式(G8)で表されるカチオンと、カチオンに対するアニオンと、を有する。
式中、R1は、炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、R2乃至R4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が1以上4以下のアルキル基を表す。
また、上記イオン液体におけるアニオンは、イミダゾリウムカチオンとイオン液体を構成する一価のアニオンである。当該アニオンとして、例えば、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン(SO3F−)、フルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン(BF4 −)、フルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF6 −)またはフルオロアルキルホスフェートアニオン等が挙げられる。そして、1価のアミド系アニオンとしては、(CnF2n+1SO2)2N−(n=0以上3以下)、1価の環状のアミド系アニオンとしては、(CF2SO2)2N−などがある。1価のメチド系アニオンとしては、(CnF2n+1SO2)3C−(n=0以上3以下)、1価の環状のメチド系アニオンとしては、(CF2SO2)2C−(CF3SO2)などがある。フルオロアルキルスルホン酸アニオンとしては、(CmF2m+1SO3)−(m=0以上4以下)などがある。フルオロアルキルボレートアニオンとしては、{BFn(CmHkF2m+1−k)4−n}−(n=0以上3以下、m=1以上4以下、k=0以上2m以下)などがある。フルオロアルキルホスフェートアニオンとしては、{PFn(CmHkF2m+1−k)6−n}−(n=0以上5以下、m=1以上4以下、k=0以上2m以下)などがある。なお、当該アニオンはこれらに限るものではない。
また、上記イオン液体におけるアニオンは、1価のアミド系アニオンであることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る蓄電装置に用いられる化合物は、一般式(G9)で表されるカチオンと、カチオンに対するアニオンと、を有する。
式中、R1は、炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、R2乃至R4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が1以上4以下のアルキル基を表す。
また、上記イオン液体におけるアニオンは、イミダゾリウムカチオンとイオン液体を構成する一価のアニオンである。当該アニオンとして、例えば、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン(SO3F−)、フルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン(BF4 −)、フルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF6 −)またはフルオロアルキルホスフェートアニオン等が挙げられる。そして、1価のアミド系アニオンとしては、(CnF2n+1SO2)2N−(n=0以上3以下)、1価の環状のアミド系アニオンとしては、(CF2SO2)2N−などがある。1価のメチド系アニオンとしては、(CnF2n+1SO2)3C−(n=0以上3以下)、1価の環状のメチド系アニオンとしては、(CF2SO2)2C−(CF3SO2)などがある。フルオロアルキルスルホン酸アニオンとしては、(CmF2m+1SO3)−(m=0以上4以下)などがある。フルオロアルキルボレートアニオンとしては、{BFn(CmHkF2m+1−k)4−n}−(n=0以上3以下、m=1以上4以下、k=0以上2m以下)などがある。フルオロアルキルホスフェートアニオンとしては、{PFn(CmHkF2m+1−k)6−n}−(n=0以上5以下、m=1以上4以下、k=0以上2m以下)などがある。なお、当該アニオンはこれらに限るものではない。
また、上記イオン液体におけるアニオンは、1価のアミド系アニオンであることが好ましい。
なお、一般式(G7)乃至一般式(G9)で表されるイオン液体の当該アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のどちらであってもよい。例えば、エチル基、tert−ブチル基である。また、一般式(G7)で表されるイオン液体は、A1乃至A4は酸素−酸素結合(ペルオキシド)を持たないことが好ましい。酸素‐酸素間の単結合は非常に壊れやすく、反応性が高いために爆発性を有する可能性がある。このため、蓄電装置には適さない。
上記一般式(G1)のカチオンの具体例として、例えば構造式(111)乃至構造式(174)が挙げられる。
また、上記一般式(G2)のカチオンの具体例として、例えば構造式(201)乃至構造式(215)が挙げられる。
[負極活物質]
活物質に負極活物質を用いる場合は、例えば合金系材料や炭素系材料等を用いることができる。
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。また、これらの元素を有する化合物を用いてもよい。例えば、SiO、Mg2Si、Mg2Ge、SnO、SnO2、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等がある。ここで、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素、および該元素を有する化合物等を合金系材料と呼ぶ場合がある。
特許文献1に記載の通り、例えばシリコン等の合金系材料は、リチウムの合金化反応により体積が膨張することが知られている。また、膨張した体積は、リチウムとの脱合金化反応により収縮する。蓄電池の充電および放電に伴い、負極活物質が膨張および収縮する。
負極活物質が膨張した状態において、負極活物質の表面に被膜685が形成される。その後、被膜685が表面に形成された状態で負極活物質は収縮する。収縮の際に例えば負極活物質に対して、被膜685からの応力が生じ、負極活物質にクラック等が形成されやすくなると考えられる。また、収縮の際には、クラックに被膜685が巻き込まれ、さらにクラックが生じる、あるいは活物質の微粉化が生じる、等が考えられる。負極活物質の表面には、微粉化した負極活物質と、負極活物質の間に巻き込まれた被膜と、の混合領域が形成される。微粉化した負極活物質は、電気的な導通を失う場合がある。電気的な導通を失うことにより充放電反応ができなくなり蓄電池の容量の低下を招く場合がある。よって、負極活物質のクラックおよび微粉化を抑制することが好ましい。
本明細書等において、SiOは例えば一酸化シリコンを指す。あるいはSiOは、SiOxと表すこともできる。ここでxは1近傍の値を有することが好ましい。例えばxは、0.2以上1.5以下が好ましく、0.3以上1.2以下が好ましい。
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等を用いればよい。
黒鉛としては、人造黒鉛や、天然黒鉛等が挙げられる。人造黒鉛としては例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等が挙げられる。ここで人造黒鉛として、球状の形状を有する球状黒鉛を用いることができる。例えば、MCMBは球状の形状を有する場合があり、好ましい。また、MCMBはその表面積を小さくすることが比較的容易であり、好ましい場合がある。天然黒鉛としては例えば、鱗片状黒鉛、球状化天然黒鉛等が挙げられる。
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム−黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に低い電位を示す(0.1以上0.3V以下 vs.Li/Li+)。これにより、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が比較的小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
ここで、黒鉛にリチウムイオンが挿入されたときには、例えば黒鉛の層間距離は、0.336nmが0.370nmへと増加することが知られている(非特許文献1、p.333−334参照)。つまり、層間距離が約11%増加する。
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)、リチウム−黒鉛層間化合物(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いることができる。
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつLi3−xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を示し好ましい。
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムとの合金を作らない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物でも起こる。
[プレドープ]
また、初回の充放電において被膜が形成される場合に不可逆な反応が生じる。例えば正極と負極のいずれかにおける不可逆な反応がより大きい場合には充放電のバランスが崩れ、蓄電池の容量の低下を招く場合がある。対極を用いて充放電を行った後、電極の組み換えを行うことにより容量の低下を抑制できる場合がある。例えば、負極に対して正極を組み合わせて充電、あるいは充放電を行った後、充電、あるいは充放電に用いた正極を取り外し、新たな正極と組み合わせて蓄電池を作製することにより、蓄電池の容量の低下を抑制できる場合がある。該手法をプレドープ、またはプリエージングと呼ぶ場合がある。
負極活物質の表面への被膜685の形成を抑制することにより、負極活物質のクラック、および微粉化を抑制できる場合がある。
本発明の一態様の負極は、第1の元素と、炭素と、を有することが好ましい。ここで、第1の元素は、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、またはインジウムのいずれかであることが好ましい。
[負極が有する層]
本発明の一態様の負極は、負極活物質と、負極活物質の表面の第1の層と、を有する。ここで第1の層を被膜と呼ぶ場合がある。第1の層の厚さは10nm以上1000nm以下が好ましく、50nm以上200nm以下がより好ましく、50nm以上100nm以下がさらに好ましい。
または、本発明の一態様の負極は、第1の領域と、第1の領域の表面に接する第2の領域と、第2の領域の表面に接する第3の領域と、を有する。第2の領域および第3の領域は、層状の形状を有する。第2の領域の厚さは10nm以上500nm以下が好ましく、50nm以上200nm以下がより好ましく、50nm以上100nm以下がさらに好ましい。第3の領域の厚さは10nm以上1000nm以下が好ましく、50nm以上200nm以下がより好ましく、50nm以上100nm以下がさらに好ましい。第1の領域が有する炭素と第1の元素との原子数比をx1:y1とし、第2の領域が有する炭素と第1の元素との原子数比をx2:y2とし、第3の領域が有する炭素と第1の元素との原子数比をx3:y3とする。x1/y1は3以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。x2/y2は0.1以上10未満が好ましく、0.3以上5以下がより好ましい。x3/y3は5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上がさらに好ましい。
EDX分析により得られる第1の領域が有する炭素と第1の元素との強度比をx1:y1とし、第2の領域が有する炭素と第1の元素との強度比をx2:y2とし、第3の領域が有する炭素と第1の元素との強度比をx3:y3とする。x1/y1は0.3以下が好ましい。x2/y2は0.1以上5以下が好ましく、0.3以上3以下がより好ましい。x3/y3は2以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。
EELS分析により得られる第1の領域が有する炭素と第1の元素との強度比をx1:y1とし、第2の領域が有する炭素と第1の元素との強度比をx2:y2とし、第3の領域が有する炭素と第1の元素との強度比をx3:y3とする。x1/y1は0.3以下が好ましい。x2/y2は0.1以上5以下が好ましく、0.3以上3以下がより好ましい。x3/y3は2以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。
図54(A)に、負極が第1の領域551と、第2の領域552と、第3の領域553を有する例を示す。また、図54(B)に示すように、第2の領域552は、第1の領域551を構成する材料と、第3の領域553を構成する材料の混合領域である場合がある。ここで例えば、第1の領域551は負極活物質であり、第3の領域553は電解液の分解物が堆積して形成される被膜である。負極活物質が第1の元素、例えばシリコンを有し、電解液の分解物が炭素を有する場合には、第1の領域551はシリコンと比較して炭素をより少なく有し、第3の領域553はシリコンと比較して炭素をより多く有する。すなわちx1/y1と比較して、x3/y3はより大きな値を有する。
また、本発明の一態様の負極は、XPS分析のS2pスペクトルにおいて、168eV近傍のスペクトル強度は、163eV近傍のスペクトル強度の例えば2倍以上、あるいは3倍以上、あるいは4倍以上である。
正極および負極が有する集電体として、ステンレス、金、白金、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性が高い材料をもちいることができる。また集電体を正極に用いる場合には、正極の電位で溶出しないことが好ましい。また集電体を負極に用いる場合には、リチウム等のキャリアイオンと合金化しないことが好ましい。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。集電体は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
正極活物質として例えば、オリビン型の結晶構造、層状岩塩型の結晶構造、またはスピネル型の結晶構造を有する複合酸化物等を用いることができる。
正極活物質として、LiFeO2、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、V2O5、Cr2O5、MnO2等の化合物を用いることができる。特に、LiCoO2は、容量が大きいこと、LiNiO2に比べて大気中で安定であること、LiNiO2に比べて熱的に安定であること等の利点があるため、好ましい。また、LiMn2O4等のマンガンを含むスピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料に、少量のニッケル酸リチウム(LiNiO2やLiNi1−xMxO2(M=Co、Al等))を混合すると、これを用いた二次電池の特性を向上させることができ好ましい。
正極活物質は例えば、一次粒子の平均粒子径が、5nm以上50μm以下であることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがより好ましい。また比表面積が5m2/g以上15m2/g以下であることが好ましい。また、二次粒子の平均粒子径は、5μm以上50μm以下であることが好ましい。なお平均粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)またはTEM(透過型電子顕微鏡)による観察、またはレーザ回折・散乱法を用いた粒度分布計等によって測定することができる。また比表面積は、ガス吸着法により測定することができる。
また、正極活物質として、組成式LiaMnbMcOdで表すことができるリチウムマンガン複合酸化物を用いることができる。ここで、元素Mは、リチウム、マンガン以外から選ばれた金属元素、またはシリコン、リンを用いることが好ましく、ニッケルであることがさらに好ましい。また、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体を測定する場合、放電時に0<a/(b+c)<2、かつc>0、かつ0.26≦(b+c)/d<0.5を満たすことが好ましい。なお、高容量を発現させるために、表層部と中心部で、結晶構造、結晶方位または酸素含有量が異なる領域を有するリチウムマンガン複合酸化物とすることが好ましい。このようなリチウムマンガン複合酸化物とするためには例えば、1.6≦a≦1.848、0.19≦c/b≦0.935、2.5≦d≦3とすることが好ましい。さらに、Li1.68Mn0.8062Ni0.318O3の組成式であらわされるリチウムマンガン複合酸化物を用いることが特に好ましい。本明細書等において、Li1.68Mn0.8062Ni0.318O3の組成式であらわされるリチウムマンガン複合酸化物とは、原料材料の量の割合(モル比)を、Li2CO3:MnCO3:NiO=0.84:0.8062:0.318とすることにより形成したリチウムマンガン複合酸化物をいう。そのため該リチウムマンガン複合酸化物は、組成式Li1.68Mn0.8062Ni0.318O3で表されるが、この組成からずれることもある。
なお、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の金属、シリコン、リン等の組成は、例えばICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて測定することができる。またリチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の酸素の組成は、例えばEDX(エネルギー分散型X線分析法)を用いて測定することが可能である。また、ICP−MS分析と併用して、融解ガス分析、XAFS(X線吸収微細構造)分析の価数評価を用いることで求めることができる。なお、リチウムマンガン複合酸化物とは、少なくともリチウムとマンガンとを含む酸化物をいい、クロム、コバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、インジウム、ガリウム、銅、チタン、ニオブ、シリコン、およびリンなどからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。
結晶構造、結晶方位または酸素含有量が異なる領域を有するリチウムマンガン複合酸化物の粒子の断面図の例を図2に示す。
図2(A)に示すように、結晶構造、結晶方位または酸素含有量が異なる領域を有するリチウムマンガン複合酸化物は、領域331と、領域332と、領域333を有することが好ましい。領域332は、領域331の外側の少なくとも一部に接する。ここで、外側とは、粒子の表面により近いことを示す。また、領域333は、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子の、表面と一致する領域を有することが好ましい。
また、図2(B)に示すように、領域331は、領域332に覆われない領域を有してもよい。また、領域332は、領域333に覆われない領域を有してもよい。また、例えば領域331に領域333が接する領域を有してもよい。また、領域331は、領域332および領域333のいずれにも覆われない領域を有してもよい。
領域332は、領域331と異なる組成を有することが好ましい。
例えば、領域331と領域332の組成を分けて測定し、領域331がリチウム、マンガン、元素Mおよび酸素を有し、領域332がリチウム、マンガン、元素Mおよび酸素を有し、領域331のリチウム、マンガン、元素M、および酸素の原子数比はa1:b1:c1:d1で表され、領域332のリチウム、マンガン、元素M、および酸素の原子数比はa2:b2:c2:d2で表される場合について説明する。なお、領域331と領域332のそれぞれの組成は、例えばTEMを用いたEDXで測定することができる。EDXを用いた測定では、リチウムの組成の測定が困難な場合がある。そのため、以下では、領域331と領域332の組成の違いは、リチウム以外の元素について述べる。ここで、d1/(b1+c1)は2.2以上が好ましく、2.3以上であることがより好ましく、2.35以上3以下であることがさらに好ましい。また、d2/(b2+c2)は2.2未満であることが好ましく、2.1未満であることがより好ましく、1.1以上1.9以下であることがさらに好ましい。またこの場合でも、領域331と領域332を含むリチウムマンガン複合酸化物粒子全体の組成は、前述の0.26≦(b+c)/d<0.5を満たすことが好ましい。
また、領域332が有するマンガンは、領域331が有するマンガンと異なる価数を有してもよい。また、領域332が有する元素Mは、領域331が有する元素Mと異なる価数を有してもよい。
より具体的には、領域331は、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウムマンガン複合酸化物であることが好ましい。また領域332は、スピネル型の結晶構造を有するリチウムマンガン複合酸化物であることが好ましい。
ここで、各領域の組成や、元素の価数に空間的な分布がある場合には、例えば複数の箇所についてその組成や価数を評価し、その平均値を算出し、該領域の組成や価数としてもよい。
また、領域332と領域331との間に、遷移層を有してもよい。ここで遷移層とは、例えば組成が連続的、あるいは段階的に変化する領域である。または、遷移層とは、結晶構造が連続的、あるいは段階的に変化する領域である。または、遷移層とは、結晶の格子定数が連続的、あるいは段階的に変化する領域である。または、領域332と領域331との間に、混合層を有してもよい。ここで混合層とは、例えば異なる結晶方位を有する2以上の結晶が混合する場合を指す。あるいは、混合層とは、例えば異なる結晶構造を有する2以上の結晶が混合する場合を指す。あるいは、混合層とは、例えば異なる組成を有する2以上の結晶が混合する場合を指す。
領域333には、炭素または金属化合物を用いることができる。ここで、金属としては例えばコバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マンガン、チタン、亜鉛、リチウム等が挙げられる。金属化合物の一例として、これらの金属の酸化物や、フッ化物が挙げられる。
領域333は、上記の中でも、炭素を有することが特に好ましい。炭素は導電性が高いため、炭素で被覆された粒子を蓄電装置の電極に用いることにより、例えば電極の抵抗を低くすることができる。また、領域333はグラフェン化合物を有することが好ましい。領域333にグラフェン化合物を用いることにより、リチウムマンガン複合酸化物の粒子を効率よく被覆することができる。グラフェン化合物については後述する。また、領域333はより具体的には例えば、グラフェンを有してもよく、酸化グラフェンを有してもよい。また、グラフェンとして、酸化グラフェンを還元して得られるグラフェンを用いることが好ましい。グラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性と、高い柔軟性および高い機械的強度を有するという優れた物理特性と、を有する。領域333に酸化グラフェンを用い、還元を行うことで、領域333と接する領域332が酸化される場合がある。
領域333が、グラフェン化合物を有することで、リチウムマンガン複合酸化物を正極材料に用いた二次電池の、サイクル特性を向上させることができる。
領域333の膜厚は、0.4nm以上40nm以下とすることが好ましい。
また、リチウムマンガン複合酸化物は、例えば、一次粒子の平均粒子径が、5nm以上50μm以下であることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがより好ましい。また比表面積が5m2/g以上15m2/g以下であることが好ましい。また、二次粒子の平均粒子径は、5μm以上50μm以下であることが好ましい。
また、正極および負極は導電助剤を有してもよい。導電助剤として例えば、炭素材料、金属材料、又は導電性セラミックス材料等を用いることができる。また、導電助剤として繊維状の材料を用いてもよい。活物質層の総量に対する導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
導電助剤により、電極中に電気伝導のネットワークを形成することができる。導電助剤により、正極活物質どうしの電気伝導の経路を維持することができる。活物質層中に導電助剤を添加することにより、高い電気伝導性を有する活物質層を実現することができる。
導電助剤としては、例えば天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素繊維などを用いることができる。炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナノチューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。また、導電助剤として、例えばカーボンブラック(アセチレンブラック(AB)など)、グラファイト(黒鉛)粒子、グラフェン、フラーレンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
また、導電助剤としてグラフェン化合物を用いてもよい。
グラフェン化合物は、高い導電性を有するという優れた電気特性と、高い柔軟性および高い機械的強度を有するという優れた物理特性と、を有する場合がある。また、グラフェン化合物は平面的な形状を有する。グラフェン化合物は、接触抵抗の低い面接触を可能とする。また、薄くても導電性が非常に高い場合があり、少ない量で効率よく活物質層内で導電パスを形成することができる。そのため、グラフェン化合物を導電助剤として用いることにより、活物質と導電助剤との接触面積を増大させることができるため好ましい。また、電気的な抵抗を減少できる場合があるため好ましい。ここでグラフェン化合物として例えば、グラフェンまたはマルチグラフェンまたはreduced Graphene Oxide(以下、RGO)を用いることが特に好ましい。ここで、RGOは例えば、酸化グラフェン(graphene oxide:GO)を還元して得られる化合物を指す。
粒径の小さい活物質、例えば1μm以下の活物質を用いる場合には、活物質の比表面積が大きく、活物質同士を繋ぐ導電パスがより多く必要となる。このような場合には、少ない量でも効率よく導電パスを形成することができるグラフェン化合物を用いることが、特に好ましい。
以下では一例として、活物質層に、導電助剤としてグラフェン化合物を用いる場合の断面構成例を説明する。
図3(A)に、活物質層の縦断面図を示す。活物質層は、粒状の活物質103と、導電助剤としてのグラフェン化合物321と、結着剤(図示せず)と、を含む。ここで、グラフェン化合物321として例えばグラフェンまたはマルチグラフェンを用いればよい。ここで、グラフェン化合物321はシート状の形状を有することが好ましい。また、グラフェン化合物321は、複数のマルチグラフェン、または(および)複数のグラフェンが部分的に重なりシート状となっていてもよい。
活物質層の縦断面においては、図3(A)に示すように、活物質層の内部において概略均一にシート状のグラフェン化合物321が分散する。図3(A)においてはグラフェン化合物321を模式的に太線で表しているが、実際には炭素分子の単層又は多層の厚みを有する薄膜である。複数のグラフェン化合物321は、複数の粒状の活物質103を包むように、覆うように、あるいは複数の粒状の活物質103の表面上に張り付くように形成されているため、互いに面接触している。
ここで、複数のグラフェン化合物同士が結合することにより、網目状のグラフェン化合物シート(以下グラフェン化合物ネットまたはグラフェンネットと呼ぶ)を形成することができる。活物質をグラフェンネットが被覆する場合に、グラフェンネットは活物質同士を結合するバインダーとしても機能することができる。よって、バインダーの量を少なくすることができる、又は使用しないことができるため、電極体積や電極重量に占める活物質の比率を向上させることができる。すなわち、蓄電装置の容量を増加させることができる。
ここで、グラフェン化合物321として酸化グラフェンを用い、活物質と混合して活物質層となる層を形成後、還元することが好ましい。グラフェン化合物321の形成に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いることにより、グラフェン化合物321を活物質層の内部において概略均一に分散させることができる。均一に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還元するため、活物質層に残留するグラフェン化合物321は部分的に重なり合い、互いに面接触する程度に分散していることで三次元的な導電パスを形成することができる。なお、酸化グラフェンの還元は、例えば熱処理により行ってもよいし、還元剤を用いて行ってもよい。
従って、活物質と点接触するアセチレンブラック等の粒状の導電助剤と異なり、グラフェン化合物321は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、通常の導電助剤よりも少量で粒状の活物質103とグラフェン化合物321との電気伝導性を向上させることができる。よって、活物質103の活物質層における比率を増加させることができる。これにより、蓄電装置の放電容量を増加させることができる。
また、正極および負極は結着剤を有してもよい。結着剤として例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレン−スチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。また結着剤として、フッ素ゴムを用いることができる。
また、結着剤としては、例えば水溶性の高分子を用いることが好ましい。水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉などを用いることができる。また、これらの水溶性の高分子を、前述のゴム材料と併用して用いると、さらに好ましい。
または、結着剤としては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いることが好ましい。
結着剤は上記のうち複数を組み合わせて使用してもよい。
例えば粘度調整効果の特に優れた材料と、他の材料とを組み合わせて使用してもよい。例えばゴム材料等は接着力や弾性力に優れる反面、溶媒に混合した場合に粘度調整が難しい場合がある。このような場合には例えば、粘度調整効果の特に優れた材料と混合することが好ましい。粘度調整効果の特に優れた材料としては、例えば水溶性高分子を用いるとよい。また、粘度調整効果に特に優れた水溶性高分子としては、前述の多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉を用いることができる。
なお、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えばカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩などの塩とすることにより溶解度が上がり、粘度調整剤としての効果を発揮しやすくなる。溶解度が高くなることにより電極のスラリーを作製する際に活物質や他の構成要素との分散性を高めることもできる。本明細書においては、電極のバインダーとして使用するセルロースおよびセルロース誘導体としては、それらの塩も含むものとする。
水溶性高分子は水に溶解することにより粘度を安定化させ、また活物質や、結着剤として組み合わせる他の材料、例えばスチレンブタジエンゴムなどを、水溶液中に安定して分散させることができる。また、官能基を有するために活物質表面に安定に吸着しやすいことが期待される。また、例えばカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えば水酸基やカルボキシル基などの官能基を有する材料が多く、官能基を有するために高分子同士が相互作用し、活物質表面を広く覆って存在することが期待される。
活物質表面を覆う、または表面に接するバインダーが膜を形成する場合には、不動態膜としての役割を果たして電解液の分解を抑える効果も期待される。ここで、不動態膜とは、電子の伝導性のない膜、または電気伝導性の極めて低い膜であり、例えば活物質の表面に不動態膜が形成された場合には、電池反応電位において、電解液の分解を抑制することができる。また、不動態膜は、電気の伝導性を抑えるとともに、リチウムイオンは伝導できるとさらに望ましい。
[電極の作製方法]
負極および正極の作製方法の一例として、スラリーを作製し、該スラリーを塗工することにより電極を作製することができる。電極作製に用いるスラリーの作製方法の一例を述べる。
ここで、スラリーの作製に用いる溶媒は、極性溶媒であることが好ましい。例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)及びジメチルスルホキシド(DMSO)のいずれか一種又は二種以上の混合液を用いることができる。
まず、活物質、導電助剤、および結着剤を混合し、混合物Aを作製する(ステップS110)。次に、混合物Aに溶媒を添加し、固練り(高粘度における混練)を行い、混合物Bを作製する(ステップS120)。ここで、混合物Bは例えばペースト状であることが好ましい。ここで、後のステップS141において第2の結着剤を添加する場合には、ステップS110において第1の結着剤を添加しなくてもよい場合がある。
次に、混合物Bに溶媒を添加し、混練を行い、混合物Cを作製する(ステップS130)。
次に、第2の結着剤を用いる場合には、第2の結着剤を添加し、混合物Dを作製する(ステップS141)。この時、溶媒を加えてもよい。また、第2の結着剤を用いない場合には、必要に応じて溶媒を添加し、混合物Eを作製する(ステップS142)。
次に、例えば減圧雰囲気で作製した混合物Dまたは混合物Eを混練し、混合物Fを作製する(ステップS150)。この時、溶媒を加えてもよい。ここでステップS110乃至ステップS150の混合および混練の工程において、例えば混練機を用いることができる。
次に、混合物Fの粘度を測定する(ステップS160)。その後、必要に応じて溶媒を添加し、粘度の調整を行う。以上の工程により、活物質層を塗工するためのスラリーを得る。
ここで例えば、ステップS130乃至ステップS160において、混合物C乃至混合物Fの粘度がより高いほど、混合物内において、活物質、結着剤、および導電助剤の分散性が優れる(互いによく混じり合う)場合がある。よって、例えば混合物Fの粘度はより高いことが好ましい。一方、混合物Fの粘度が高すぎる場合には、例えば電極の塗工速度が低くなる場合があり、生産性の観点から好ましくない場合がある。
次に、作製したスラリーを用いて、集電体上に活物質層を作製する方法について説明する。
まず、集電体上に、スラリーを塗布する。ここで、スラリーを塗布する前に、集電体上に表面処理を行ってもよい。表面処理としては例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等が挙げられる。ここでアンダーコートとは、集電体上にスラリーを塗布する前に、活物質層と集電体との界面抵抗を低減する目的や、活物質層と集電体との密着性を高める目的で集電体上に形成する膜を指す。なお、アンダーコートは、必ずしも膜状である必要はなく、島状に形成されていてもよい。また、アンダーコートが活物質として容量を発現しても構わない。アンダーコートとしては、例えば炭素材料を用いることができる。炭素材料としては例えば、黒鉛や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)等のカーボンブラック、カーボンナノチューブなどを用いることができる。
スラリーの塗布には、スロットダイ方式、グラビア、ブレード法、およびそれらを組み合わせた方式等を用いることができる。また、塗布には連続塗工機などを用いてもよい。
次に、スラリーの溶媒を揮発させることにより、活物質層を形成することができる。
スラリーの溶媒の揮発工程は、50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下の温度範囲で行うとよい。
例えば、30℃以上70℃以下、10分以上の条件で大気雰囲気下でホットプレートで加熱処理を行い、その後、例えば、室温以上100℃以下、1時間以上10時間以下の条件で減圧環境下にて加熱処理を行えばよい。
あるいは、乾燥炉等を用いて加熱処理を行ってもよい。乾燥炉を用いる場合は、例えば30℃以上120℃以下の温度で、30秒以上20分以下の加熱処理を行えばよい。
または、温度は段階的に上げてもよい。例えば、60℃以下で10分以下の加熱処理を行った後、65℃以上の温度で更に1分以上の加熱処理を行ってもよい。
このようにして形成された活物質層の厚さは、例えば好ましくは5μm以上300μm以下、より好ましくは10μm以上150μm以下であればよい。また、活物質層の活物質担持量は、例えば好ましくは2mg/cm2以上50mg/cm2以下であればよい。
活物質層は集電体の両面に形成されていてもよいし、片面のみに形成されていてもよい。または、部分的に両面に活物質層が形成されている領域を有しても構わない。
活物質層から溶媒を揮発させた後、ロールプレス法や平板プレス法等の圧縮方法によりプレスを行ってもよい。プレスを行う際に、熱を加えてもよい。
なお、活物質層に、プレドープを行っても良い。活物質層にプレドープを行う方法は特に限定されないが、例えば、電気化学的に行うことができる。例えば、電池組み立て前に、対極としてリチウム金属を用いて、後述の電解液中において、リチウムを活物質層にプレドープすることができる。あるいは、負極に対して、対極をプレドープ用の正極を準備してプレドープを行い、その後、プレドープ用の正極を取り除いてもよい。プレドープを行うことにより、特に初回の充放電効率の低下を抑制し、蓄電池の容量を高めることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の蓄電装置について説明する。
本発明の一態様の蓄電装置の一例として、リチウムイオン電池等の電気化学反応を用いる二次電池、電気二重層キャパシタ、レドックスキャパシタ等の電気化学キャパシタ、空気電池、燃料電池等が挙げられる。
〈薄型蓄電池〉
図4に、蓄電装置の一例として、薄型の蓄電池について示す。薄型の蓄電池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて蓄電池も曲げることもできる。
図4は薄型の蓄電池である蓄電池500の外観図を示す。また、図5(A)および図5(B)は、図4に一点鎖線で示すA1−A2断面およびB1−B2断面を示す。蓄電池500は、正極集電体501および正極活物質層502を有する正極503と、負極集電体504および負極活物質層505を有する負極506と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外装体509内に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置されている。また、外装体509内は、電解液508で満たされている。
蓄電装置に用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単に「不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好ましい。具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。
また、電解液にビニレンカーボネート、プロパンスルトン(PS)、tert−ブチルベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、LiBOBなどの添加剤を添加してもよい。添加剤の濃度は、例えば溶媒全体に対して0.1weight%以上5weight%以下とすればよい。
また、ポリマーを電解液で膨潤させたポリマーゲル電解質を用いてもよい。
ポリマーとしては、例えばポリエチレンオキシド(PEO)などのポリアルキレンオキシド構造を有するポリマーや、PVDF、およびポリアクリロニトリル等、およびそれらを含む共重合体等を用いることができる。例えばPVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるPVDF−HFPを用いることができる。また、形成されるポリマーは、多孔質形状を有してもよい。
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、PEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることができる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
セパレータ507としては、例えば、紙、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。
セパレータ507は袋状に加工し、正極503または負極506のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。例えば、図6(A)に示すように、正極503を挟むようにセパレータ507を2つ折りにし、正極503と重なる領域よりも外側で封止部514により封止することで、正極503をセパレータ507内に確実に担持することができる。そして、図6(B)に示すように、セパレータ507に包まれた正極503と負極506とを交互に積層し、これらを外装体509内に配置することで蓄電池500を形成するとよい。
次に、蓄電池を作製した後のエージングについて説明する。蓄電池を作製した後に、エージングを行うことが好ましい。エージング条件の一例について以下に説明する。まず初めに0.001C以上0.2C以下のレートで充電を行う。温度は例えば室温以上、50℃以下とすればよい。ここで、正極や負極の反応電位が電解液508の電位窓の範囲を超える場合には、蓄電池の充放電により電解液の分解が生じる場合がある。電解液の分解によりガスが発生した場合には、そのガスがセル内にたまると、電解液が電極表面と接することができない領域が発生してしまう。つまり電極の実効的な反応面積が減少し、実効的な抵抗が高くなることに相当する。
また、過度に抵抗が高くなると、負極電位が下がることによって、黒鉛へのリチウム挿入が起こると同時に、黒鉛表面へのリチウム析出も生じてしまう。このリチウム析出は容量の低下を招く場合がある。例えば、リチウムが析出した後、表面に被膜等が成長してしまうと、表面に析出したリチウムが再溶出できなくなり、容量に寄与しないリチウムが増えてしまう。また、析出したリチウムが物理的に崩落し、電極との導通を失った場合にも、やはり容量に寄与しないリチウムが生じてしまう。よって、負極の電位が充電電圧上昇によりリチウム電位まで到達する前に、ガスを抜くことが好ましい。
また、ガス抜きを行った後に、室温よりも高い温度、好ましくは30℃以上60℃以下、より好ましくは35℃以上50℃以下において、例えば1時間以上100時間以下、充電状態で保持してもよい。初めに行う充電の際に、表面で分解した電解液は黒鉛の表面に被膜を形成する。よって、例えばガス抜き後に室温よりも高い温度で保持することにより、形成された被膜が緻密化する場合も考えられる。
図7には、リード電極に集電体を溶接する例を示す。図7(A)に示すように、セパレータ507に包まれた正極503と、負極506と、を交互に重ねる。次に、正極集電体501を正極リード電極510に、負極集電体504を負極リード電極511に、それぞれ溶接する。正極集電体501を正極リード電極510に溶接する例を図7(B)に示す。正極集電体501は、超音波溶接などを用いて溶接領域512で正極リード電極510に溶接される。また、正極集電体501は、図7(B)に示す湾曲部513を有することにより、蓄電池500の作製後に外から力が加えられて生じる応力を緩和することができ、蓄電池500の信頼性を高めることができる。
図4および図5に示す蓄電池500において、正極リード電極510は正極503が有する正極集電体501と、負極リード電極511は負極506が有する負極集電体504と、それぞれ超音波接合される。また、外部との電気的接触を得る端子の役割を正極集電体501および負極集電体504で兼ねることもできる。その場合は、リード電極を用いずに、正極集電体501および負極集電体504の一部を外装体509から外側に露出するように配置してもよい。
また、図4では正極リード電極510と負極リード電極511は同じ辺に配置されているが、図8に示すように、正極リード電極510と負極リード電極511を異なる辺に配置してもよい。このように、本発明の一態様の蓄電池は、リード電極を自由に配置することができるため、設計自由度が高い。よって、本発明の一態様の蓄電池を用いた製品の設計自由度を高めることができる。また、本発明の一態様の蓄電池を用いた製品の生産性を高めることができる。
蓄電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。
また図5では、一例として、向かい合う正極活物質層と負極活物質層の組の数を5組としているが、勿論、電極活物質層の組は5組に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。電極活物質層数が多い場合には、より多くの容量を有する蓄電池とすることができる。また、電極活物質層数が少ない場合には、薄型化でき、可撓性に優れた蓄電池とすることができる。
[プレドープ]
ここで、蓄電池500が有する負極506にプレドープを行う場合の一例を示す。図9(A)は正極、負極およびセパレータを積層した積層体の上面を示し、図9(B)は図9(A)の斜視図を示す。負極506上にセパレータ507iを積層し、セパレータ507i上にプレドープ用の正極503iを積層し、正極503i上にセパレータ507を積層し、セパレータ507上に正極503を積層する。ここで、セパレータ507iは、セパレータ507についての記載を参照することができる。また、正極503iは、正極活物質層502iおよび正極集電体501iを有する。正極503i、正極活物質層502iおよび正極集電体501iはそれぞれ、正極503、正極活物質層502および正極集電体501についての記載を参照することができる。また、正極503と正極503iは、異なる正極活物質を用いてもよい。
次に、図9(A)および(B)に示した積層体を、図10(A)の斜視図に示すように、外装体となるシート509aで挟む。
次に、図10(B)の上面図に示すように、シート509aの3辺を熱などにより封止して外装体509を形成し、薄型の蓄電池である蓄電池500を作製する。図10(B)に示す蓄電池の一点鎖線B1−B2方向の断面図を図11(A)に示す。
次に、作製した蓄電池500の負極506と、正極503iとを用いてプレドープを行う。プレドープは例えば、充電のみとしてもよいし、充電と放電を行ってもよい。
プレドープを行った後、外装体509の一辺を切断し、開封する。その後、図11(B)の断面図に示すように、開封された外装体509から正極503iおよびセパレータ507iを取り出す。このとき、セパレータ507iではなくセパレータ507を取り出してもよい。あるいは、セパレータ507iを取り出さずに蓄電池500に残してもよい。
その後、図11(C)の断面図に示すように、外装体509の開封した一辺を封止する。以上の工程により、プレドープを行うことができる。
ここで、図9乃至11においては、向かい合う正極活物質層と負極活物質層が1組の場合の例を示したが、プレドープを行う場合の正極活物質層および負極活物質層は1組でなくてもよい。図12は3組の正極活物質層と負極活物質層が向かい合う例を示す。図12(A)において、正極503iは、向かい合う正極503および負極506の間に配置される。まず正極503iと負極506を用いてプレドープを行う。その後、図12(B)に示すように、正極503iを取り除き、図12(C)に示すように、正極活物質層と負極活物質層が3組向かい合う蓄電池とする。
上記構成において、蓄電池の外装体509は、最小の曲率半径が例えば、3mm以上30mm以下、より好ましくは3mm以上10mm以下となるように変形することができる。二次電池の外装体であるフィルムは、1枚または2枚で構成されており、積層構造の蓄電池である場合、湾曲させた電池の断面構造は、外装体であるフィルムの2つの曲線で挟まれた構造となる。
面の曲率半径について、図13を用いて説明する。図13(A)において、曲面1700を切断した平面1701において、曲面1700に含まれる曲線1702の一部を円の弧に近似して、その円の半径を曲率半径1703とし、円の中心を曲率中心1704とする。図13(B)に曲面1700の上面図を示す。図13(C)に、平面1701で曲面1700を切断した断面図を示す。曲面を平面で切断するとき、曲面に対する平面の角度や切断位置に応じて、断面に現れる曲線の曲率半径は異なるものとなるが、本明細書等では、最も小さい曲率半径を面の曲率半径とする。
2枚のフィルムを外装体として電極・電解液など1805を挟む二次電池を湾曲させた場合には、二次電池の曲率中心1800に近い側のフィルム1801の曲率半径1802は、曲率中心1800から遠い側のフィルム1803の曲率半径1804よりも小さい(図14(A))。二次電池を湾曲させて断面を円弧状とすると曲率中心1800に近いフィルムの表面には圧縮応力がかかり、曲率中心1800から遠いフィルムの表面には引っ張り応力がかかる(図14(B))。外装体の表面に凹部または凸部で形成される模様を形成すると、このように圧縮応力や引っ張り応力がかかったとしても、ひずみによる影響を許容範囲内に抑えることができる。そのため、二次電池は、曲率中心に近い側の外装体の最小の曲率半径が例えば、3mm以上30mm以下、より好ましくは3mm以上10mm以下となるように変形することができる。
なお、二次電池の断面形状は、単純な円弧状に限定されず、一部が円弧を有する形状にすることができ、例えば図14(C)に示す形状や、波状(図14(D))、S字形状などとすることもできる。二次電池の曲面が複数の曲率中心を有する形状となる場合は、複数の曲率中心それぞれにおける曲率半径の中で、最も曲率半径が小さい曲面において、2枚の外装体の曲率中心に近い方の外装体の最小の曲率半径が例えば、3mm以上30mm以下、より好ましくは3mm以上10mm以下となるように変形することができる。
次に、正極、負極およびセパレータの積層の様々な例を示す。
図17(A)には、正極111及び負極115を6層ずつ積層する例について示す。正極111が有する正極集電体121の片面に正極活物質層122が設けられている。また、負極115が有する負極集電体125の片面に負極活物質層126が設けられている。
また、図17(A)に示す構成では、正極111の正極活物質層122を有さない面同士が接し、負極115の負極活物質層126を有さない面同士が接するように、正極111及び負極115が積層される。このような積層順とすることで、正極111の正極活物質層122を有さない面同士、負極115の負極活物質層126を有さない面同士という、金属同士の接触面をつくることができる。金属同士の接触面は、活物質とセパレータとの接触面と比較して摩擦係数を小さくすることができる。
そのため、蓄電池500を湾曲したとき、正極111の正極活物質層122を有さない面同士、負極115の負極活物質層126を有さない面同士が滑ることで、湾曲の内径と外径の差により生じる応力を逃がすことができる。ここで湾曲の内径とは例えば、蓄電池500を湾曲させる場合に、蓄電池500の外装体509において、湾曲部の内側に位置する面が有する曲率半径を指す。そのため、蓄電池500の劣化を抑制することができる。また、信頼性の高い蓄電池500とすることができる。
また、図17(B)に、図17(A)と異なる正極111と負極115の積層の例を示す。図17(B)に示す構成では、正極集電体121の両面に正極活物質層122を設けている点において、図17(A)に示す構成と異なる。図17(B)のように正極集電体121の両面に正極活物質層122を設けることで、蓄電池500の単位体積あたりの容量を大きくすることができる。
また、図17(C)に、図17(B)と異なる正極111と負極115の積層の例を示す。図17(C)に示す構成では、負極集電体125の両面に負極活物質層126を設けている点において、図17(B)に示す構成と異なる。図17(C)のように負極集電体125の両面に負極活物質層126を設けることで、蓄電池500の単位体積あたりの容量をさらに大きくすることができる。
また、図17に示す構成では、セパレータ123が正極111を袋状に包む構成であったが、本発明はこれに限られるものではない。ここで、図18(A)に、図17(A)と異なる構成のセパレータ123を有する例を示す。図18(A)に示す構成では、正極活物質層122と負極活物質層126との間にシート状のセパレータ123を1枚ずつ設けている点において、図17(A)に示す構成と異なる。図18(A)に示す構成では、正極111及び負極115を6層ずつ積層しており、セパレータ123を6層設けている。
また、図18(B)に図18(A)とは異なるセパレータ123を設けた例を示す。図18(B)に示す構成では、1枚のセパレータ123が正極活物質層122と負極活物質層126の間に挟まれるように複数回折り返されている点において、図18(A)に示す構成と異なる。また、図18(B)の構成は、図18(A)に示す構成の各層のセパレータ123を延長して層間をつなぎあわせた構成ということもできる。図18(B)に示す構成では、正極111及び負極115を6層ずつ積層しており、セパレータ123を少なくとも5回以上折り返す必要がある。また、セパレータ123は、正極活物質層122と負極活物質層126の間に挟まれるように設けるだけでなく、延長して複数の正極111と負極115を一まとめに結束するようにしてもよい。
また図19に示すように正極、負極およびセパレータを積層してもよい。図19(A)は第1の電極組立体130、図19(B)は第2の電極組立体131の断面図である。図19(C)は、図4の一点破線A1−A2における断面図である。なお、図19(C)では図を明瞭にするため、第1の電極組立体130、第2の電極組立体131およびセパレータ123を抜粋して示す。
図19(C)に示すように、蓄電池500は、複数の第1の電極組立体130および複数の第2の電極組立体131を有する。
図19(A)に示すように、第1の電極組立体130では、正極集電体121の両面に正極活物質層122を有する正極111a、セパレータ123、負極集電体125の両面に負極活物質層126を有する負極115a、セパレータ123、正極集電体121の両面に正極活物質層122を有する正極111aがこの順に積層されている。また図19(B)に示すように、第2の電極組立体131では、負極集電体125の両面に負極活物質層126を有する負極115a、セパレータ123、正極集電体121の両面に正極活物質層122を有する正極111a、セパレータ123、負極集電体125の両面に負極活物質層126を有する負極115aがこの順に積層されている。
さらに図19(C)に示すように、複数の第1の電極組立体130および複数の第2の電極組立体131は、捲回したセパレータ123によって覆われている。
[コイン型蓄電池]
次に蓄電装置の一例として、コイン型の蓄電池の一例について、図15を参照して説明する。図15(A)はコイン型(単層偏平型)の蓄電池の外観図であり、図15(B)は、その断面図である。
コイン型の蓄電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。
また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。
正極304は、正極503の記載を参照すればよい。正極活物質層306は、正極活物質層502を参照すればよい。負極307は、負極506を参照すればよい。負極活物質層309は、負極活物質層505の記載を参照すればよい。セパレータ310は、セパレータ507の記載を参照すればよい。電解液は、電解液508の記載を参照すればよい。
なお、コイン型の蓄電池300に用いる正極304および負極307は、それぞれ活物質層は片面のみに形成すればよい。
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
これら負極307、正極304およびセパレータ310を電解質に含浸させ、図15(B)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の蓄電池300を製造する。
[円筒型蓄電池]
次に蓄電装置の一例として、円筒型の蓄電池を示す。円筒型の蓄電池について、図16を参照して説明する。円筒型の蓄電池600は、図16(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップ601と電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
図16(B)は、円筒型の蓄電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の蓄電池と同様のものを用いることができる。
正極604は、正極503を参照すればよい。また負極606は、負極506を参照すればよい。また、正極604および負極606は、例えば実施の形態1に示す電極の作製方法を参照することができる。円筒型の蓄電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
図16に示すような円筒型の蓄電池のように電極を捲回する際には、捲回時に電極に大きな応力が作用する。また、電極の捲回体を筐体に収納した場合に、電極には常に捲回軸の外側に向かう応力が作用する。このように電極に大きな応力が作用したとしても、活物質が劈開してしまうことを防止することができる。
なお、本実施の形態では、蓄電池として、コイン型、円筒型および薄型の蓄電池を示したが、その他の封止型蓄電池、角型蓄電池等様々な形状の蓄電池を用いることができる。また、正極、負極、およびセパレータが複数積層された構造、正極、負極、およびセパレータが捲回された構造であってもよい。例えば、他の蓄電池の例を図20乃至図24に示す。
[薄型の蓄電池の構成例]
図20および図21に、薄型の蓄電池の構成例を示す。図20(A)に示す捲回体993は、負極994と、正極995と、セパレータ996と、を有する。
捲回体993は、セパレータ996を挟んで負極994と、正極995とが重なり合って積層され、該積層シートを捲回したものである。この捲回体993を角型の封止容器などで覆うことにより角型の二次電池が作製される。
なお、負極994、正極995およびセパレータ996からなる積層の積層数は、必要な容量と素子体積に応じて適宜設計すればよい。負極994はリード電極997およびリード電極998の一方を介して負極集電体(図示せず)に接続され、正極995はリード電極997およびリード電極998の他方を介して正極集電体(図示せず)に接続される。
図20(B)および図20(C)に示す蓄電池990は、外装体となるフィルム981と、凹部を有するフィルム982とを熱圧着などにより貼り合わせて形成される空間に上述した捲回体993を収納したものである。捲回体993は、リード電極997およびリード電極998を有し、フィルム981と、凹部を有するフィルム982との内部で電解液に含浸される。
フィルム981と、凹部を有するフィルム982は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。フィルム981および凹部を有するフィルム982の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときにフィルム981と、凹部を有するフィルム982を変形させることができ、可撓性を有する蓄電池を作製することができる。
また、図20(B)および図20(C)では2枚のフィルムを用いる例を示しているが、1枚のフィルムを折り曲げることによって空間を形成し、その空間に上述した捲回体993を収納してもよい。
また蓄電装置の外装体や、封止容器を樹脂材料などにすることによって可撓性を有する蓄電装置を作製することができる。ただし、外装体や、封止容器を樹脂材料にする場合、外部に接続を行う部分は導電材料とする。
例えば、可撓性を有する別の薄型蓄電池の例を図21に示す。図21(A)の捲回体993は、図20(A)に示したものと同一であるため、詳細な説明は省略することとする。
図21(B)および図21(C)に示す蓄電池990は、外装体991の内部に上述した捲回体993を収納したものである。捲回体993は、リード電極997およびリード電極998を有し、外装体991、992の内部で電解液に含浸される。外装体991、992は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。外装体991、992の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときに外装体991、992を変形させることができ、可撓性を有する薄型蓄電池を作製することができる。
本発明の一態様に係る活物質を含む電極を、可撓性を有する薄型蓄電池に用いることにより、薄型蓄電池を繰り返し折り曲げることによって電極に応力が作用したとしても、活物質が劈開してしまうことを防止することができる。
以上により、劈開面の少なくとも一部にグラフェンで覆われた活物質を電極に用いることにより、電池の電圧の低下や、放電容量の低下を抑制することができる。これにより、充放電に伴う電池のサイクル特性を向上させることができる。
[蓄電システムの構造例]
また、蓄電システムの構造例について、図22乃至図24を用いて説明する。ここで蓄電システムとは、例えば、蓄電装置を搭載した機器を指す。
図22(A)および図22(B)は、蓄電システムの外観図を示す図である。蓄電システムは、回路基板900と、蓄電池913と、を有する。蓄電池913には、ラベル910が貼られている。さらに、図22(B)に示すように、蓄電システムは、端子951と、端子952と、アンテナ914と、アンテナ915と、を有する。
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951、端子952、アンテナ914、アンテナ915、および回路912に接続される。なお、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914およびアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914若しくはアンテナ915は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
蓄電システムは、アンテナ914およびアンテナ915と、蓄電池913との間に層916を有する。層916は、例えば蓄電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。
なお、蓄電システムの構造は、図22に示す構造に限定されない。
例えば、図23(A−1)および図23(A−2)に示すように、図22(A)および図22(B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよい。図23(A−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図23(A−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図22(A)および図22(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図22(A)および図22(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
図23(A−1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914が設けられ、図23(A−2)に示すように、蓄電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば蓄電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用いることができる。
上記構造にすることにより、アンテナ914およびアンテナ915の両方のサイズを大きくすることができる。
または、図23(B−1)および図23(B−2)に示すように、図22(A)および図22(B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれに別のアンテナを設けてもよい。図23(B−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図23(B−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図22(A)および図22(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図22(A)および図22(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
図23(B−1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914およびアンテナ915が設けられ、図23(B−2)に示すように、蓄電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914およびアンテナ915に適用可能な形状のアンテナを適用することができる。アンテナ918を介した蓄電システムと他の機器との通信方式としては、NFCなど、蓄電システムと他の機器の間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
又は、図24(A)に示すように、図22(A)および図22(B)に示す蓄電池913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子919を介して端子911に電気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。なお、図22(A)および図22(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図22(A)および図22(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
又は、図24(B)に示すように、図22(A)および図22(B)に示す蓄電池913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に接続される。なお、図22(A)および図22(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図22(A)および図22(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
センサ921としては、例えば、力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むものを用いることができる。センサ921を設けることにより、例えば、蓄電システムが置かれている環境を示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
本実施の形態で示す蓄電池や蓄電システムには、本発明の一態様に係る電極が用いられている。そのため、蓄電池や蓄電システムの容量を大きくすることができる。また、エネルギー密度を高めることができる。また、信頼性を高めることができる。また、寿命を長くすることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態では、可撓性を有する蓄電装置を電子機器に実装する例について説明する。
実施の形態2に示す可撓性を有する蓄電装置を電子機器に実装する例を図25に示す。フレキシブルな形状を備える蓄電装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
また、フレキシブルな形状を備える蓄電装置を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
図25(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、蓄電装置7407を有している。
図25(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている蓄電装置7407も湾曲される。また、その時、曲げられた蓄電装置7407の状態を図25(C)に示す。蓄電装置7407は薄型の蓄電池である。蓄電装置7407は曲げられた状態で固定されている。なお、蓄電装置7407は集電体7409と電気的に接続されたリード電極7408を有している。例えば、集電体7409は銅箔であり、一部ガリウムと合金化させて、集電体7409と接する活物質層との密着性を向上し、蓄電装置7407が曲げられた状態での信頼性が高い構成となっている。
図25(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び蓄電装置7104を備える。また、図25(E)に曲げられた蓄電装置7104の状態を示す。蓄電装置7104は曲げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して蓄電装置7104の一部または全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半径の値で表したものを曲率半径であり、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または蓄電装置7104の主表面の一部または全部が変化する。蓄電装置7104の主表面における曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。
図25(F)は、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200は、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン7205、入出力端子7206などを備える。
携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン7207に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
また、携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
また、携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により行ってもよい。
携帯情報端末7200の表示部7202には、本発明の一態様の電極を備える蓄電装置を有している。例えば、図25(E)に示した蓄電装置7104を、筐体7201の内部に湾曲した状態で、またはバンド7203の内部に湾曲可能な状態で組み込むことができる。
携帯情報端末7200はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋センサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサや、タッチセンサ、加圧センサ、加速度センサ、等が搭載されることが好ましい。
図25(G)は、腕章型の表示装置の一例を示している。表示装置7300は、表示部7304を有し、本発明の一態様の蓄電装置を有している。また、表示装置7300は、表示部7304にタッチセンサを備えることもでき、また、携帯情報端末として機能させることもできる。
表示部7304はその表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示装置7300は、通信規格された近距離無線通信などにより、表示状況を変更することができる。
また、表示装置7300は入出力端子を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子を介さずに無線給電により行ってもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態4)
本実施の形態では、蓄電装置を搭載することのできる電子機器の一例を示す。
図26(A)および図26(B)に、2つ折り可能なタブレット型端末の一例を示す。図26(A)および図26(B)に示すタブレット型端末9600は、筐体9630a、筐体9630b、筐体9630aと筐体9630bを接続する可動部9640、表示部9631aと表示部9631bを有する表示部9631、表示モード切り替えスイッチ9626、電源スイッチ9627、省電力モード切り替えスイッチ9625、留め具9629、操作スイッチ9628、を有する。図26(A)は、タブレット型端末9600を開いた状態を示し、図26(B)は、タブレット型端末9600を閉じた状態を示している。
また、タブレット型端末9600は、筐体9630aおよび筐体9630bの内部に蓄電体9635を有する。蓄電体9635は、可動部9640を通り、筐体9630aと筐体9630bに渡って設けられている。
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示された操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
また、表示モード切り替えスイッチ9626は、縦表示又は横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9625は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
また、図26(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
図26(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、DCDCコンバータ9636を含む充放電制御回路9634を有する。また、蓄電体9635として、本発明の一態様に係る蓄電体を用いる。
なお、タブレット型端末9600は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630aおよび筐体9630bを重ね合せるように折りたたむことができる。折りたたむことにより、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、タブレット型端末9600の耐久性を高めることができる。また、本発明の一態様の蓄電体を用いた蓄電体9635は可撓性を有し、曲げ伸ばしを繰り返しても充放電容量が低下しにくい。よって、信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
また、この他にも図26(A)および図26(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の片面又は両面に設けることができ、蓄電体9635の充電を効率的に行う構成とすることができる。なお蓄電体9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
また、図26(B)に示す充放電制御回路9634の構成、および動作について図26(C)にブロック図を示し説明する。図26(C)には、太陽電池9633、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図26(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、蓄電体9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにして蓄電体9635の充電を行う構成とすればよい。
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による蓄電体9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
図27に、他の電子機器の例を示す。図27において、表示装置8000は、本発明の一態様に係る蓄電装置8004を用いた電子機器の一例である。具体的に、表示装置8000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部8002、スピーカ部8003、蓄電装置8004等を有する。本発明の一態様に係る蓄電装置8004は、筐体8001の内部に設けられている。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8004を無停電電源として用いることで、表示装置8000の利用が可能となる。
表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
図27において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を用いた電子機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体8101、光源8102、蓄電装置8103等を有する。図27では、蓄電装置8103が、筐体8101及び光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置8103は、筐体8101の内部に設けられていても良い。照明装置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を無停電電源として用いることで、照明装置8100の利用が可能となる。
なお、図27では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示しているが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井8104以外、例えば側壁8105、床8106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
図27において、室内機8200及び室外機8204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を用いた電子機器の一例である。具体的に、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、蓄電装置8203等を有する。図27では、蓄電装置8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置8203は室外機8204に設けられていても良い。或いは、室内機8200と室外機8204の両方に、蓄電装置8203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機8200と室外機8204の両方に蓄電装置8203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
なお、図27では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることもできる。
図27において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を用いた電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、蓄電装置8304等を有する。図27では、蓄電装置8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫8300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
なお、上述した電子機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電子機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることで、電子機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
また、電子機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫8300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われない夜間において、蓄電装置8304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われる昼間において、蓄電装置8304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)
本実施の形態では、車両に蓄電装置を搭載する例を示す。
また、蓄電装置を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
図28において、本発明の一態様を用いた車両を例示する。図28(A)に示す自動車8400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。また、自動車8400は蓄電装置を有する。蓄電装置は電気モーター8406を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
また、蓄電装置は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、蓄電装置は、自動車8400が有するナビゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
図28(B)に示す自動車8500は、自動車8500が有する蓄電装置にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図28(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された蓄電装置8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された蓄電装置8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電装置の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
本発明の一態様によれば、蓄電装置のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させることができる。また、本発明の一態様によれば、蓄電装置の特性を向上することができ、よって、蓄電装置自体を小型軽量化することができる。蓄電装置自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した蓄電装置を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態6)
上記実施の形態で説明した材料を含む電池セルと組み合わせて用いることができる電池制御ユニット(Battery Management Unit:BMU)、及び該電池制御ユニットを構成する回路に適したトランジスタについて、図29乃至図35を参照して説明する。本実施の形態では、特に直列に接続された電池セルを有する蓄電装置の電池制御ユニットについて説明する。
直列に接続された複数の電池セルに対して充放電を繰り返していくと、電池セル間において、充放電特性にばらつきが生じて、各電池セルの容量(出力電圧)が異なってくる。直列に接続された複数の電池セルでは、全体の放電時の容量が、容量の小さい電池セルに依存する。各電池セルの容量にばらつきがあると放電時の全体の容量が小さくなる。また、容量が小さい電池セルを基準にして充電を行うと、充電不足となる虞がある。また、容量の大きい電池セルを基準にして充電を行うと、過充電となる虞がある。
そのため、直列に接続された電池セルを有する蓄電装置の電池制御ユニットは、充電不足や、過充電の原因となる、電池セル間の容量のばらつきを揃える機能を有する。電池セル間の容量のばらつきを揃える回路構成には、抵抗方式、キャパシタ方式、あるいはインダクタ方式等あるが、ここではオフ電流の小さいトランジスタを利用して容量のばらつきを揃えることのできる回路構成を一例として挙げて説明する。
オフ電流の小さいトランジスタとしては、チャネル形成領域に酸化物半導体を有するトランジスタ(OSトランジスタ)が好ましい。オフ電流の小さいOSトランジスタを蓄電装置の電池制御ユニットの回路構成に用いることで、電池から漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。
チャネル形成領域に用いる酸化物半導体は、In−M−Zn酸化物(Mは、Ga、Sn、Y、Zr、La、Ce、またはNd)を用いる。酸化物半導体膜を成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x1:y1:z1とすると、x1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であって、z1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z1/y1を1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜としてCAAC−OS膜が形成されやすくなる。
ここで、CAAC−OS膜について説明する。
CAAC−OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OS膜の明視野像および回折パターンの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察することで複数の結晶部を確認することができる。一方、高分解能TEM像によっても明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
試料面と略平行な方向から、CAAC−OS膜の断面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
一方、試料面と略垂直な方向から、CAAC−OS膜の平面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
CAAC−OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
また、CAAC−OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源となることがある。
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。したがって、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
また、CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。
なお、OSトランジスタは、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(Siトランジスタ)に比べてバンドギャップが大きいため、高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。直列に電池セルを接続する場合、数100Vの電圧が生じることになるが、蓄電装置においてこのような電池セルに適用される電池制御ユニットの回路構成には、前述のOSトランジスタで構成することが適している。
図29には、蓄電装置のブロック図の一例を示す。図29に示す蓄電装置BT00は、端子対BT01と、端子対BT02と、切り替え制御回路BT03と、切り替え回路BT04と、切り替え回路BT05と、変圧制御回路BT06と、変圧回路BT07と、直列に接続された複数の電池セルBT09を含む電池部BT08と、を有する。
また、図29の蓄電装置BT00において、端子対BT01と、端子対BT02と、切り替え制御回路BT03と、切り替え回路BT04と、切り替え回路BT05と、変圧制御回路BT06と、変圧回路BT07とにより構成される部分を、電池制御ユニットと呼ぶことができる。
切り替え制御回路BT03は、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05の動作を制御する。具体的には、切り替え制御回路BT03は、電池セルBT09毎に測定された電圧に基づいて、放電する電池セル(放電電池セル群)、及び充電する電池セル(充電電池セル群)を決定する。
さらに、切り替え制御回路BT03は、当該決定された放電電池セル群及び充電電池セル群に基づいて、制御信号S1及び制御信号S2を出力する。制御信号S1は、切り替え回路BT04へ出力される。この制御信号S1は、端子対BT01と放電電池セル群とを接続させるように切り替え回路BT04を制御する信号である。また、制御信号S2は、切り替え回路BT05へ出力される。この制御信号S2は、端子対BT02と充電電池セル群とを接続させるように切り替え回路BT05を制御する信号である。
また、切り替え制御回路BT03は、切り替え回路BT04、切り替え回路BT05、及び変圧回路BT07の構成を踏まえ、端子対BT01と放電電池セル群との間、または端子対BT02と充電電池セル群との間で、同じ極性の端子同士が接続されるように、制御信号S1及び制御信号S2を生成する。
切り替え制御回路BT03の動作の詳細について述べる。
まず、切り替え制御回路BT03は、複数の電池セルBT09毎の電圧を測定する。そして、切り替え制御回路BT03は、例えば、所定の閾値以上の電圧の電池セルBT09を高電圧の電池セル(高電圧セル)、所定の閾値未満の電圧の電池セルBT09を低電圧の電池セル(低電圧セル)と判断する。
なお、高電圧セル及び低電圧セルを判断する方法については、様々な方法を用いることができる。例えば、切り替え制御回路BT03は、複数の電池セルBT09の中で、最も電圧の高い、又は最も電圧の低い電池セルBT09の電圧を基準として、各電池セルBT09が高電圧セルか低電圧セルかを判断してもよい。この場合、切り替え制御回路BT03は、各電池セルBT09の電圧が基準となる電圧に対して所定の割合以上か否かを判定する等して、各電池セルBT09が高電圧セルか低電圧セルかを判断することができる。そして、切り替え制御回路BT03は、この判断結果に基づいて、放電電池セル群と充電電池セル群とを決定する。
なお、複数の電池セルBT09の中には、高電圧セルと低電圧セルが様々な状態で混在し得る。例えば、切り替え制御回路BT03は、高電圧セルと低電圧セルが混在する中で、高電圧セルが最も多く連続して直列に接続された部分を放電電池セル群とする。また、切り替え制御回路BT03は、低電圧セルが最も多く連続して直列に接続された部分を充電電池セル群とする。また、切り替え制御回路BT03は、過充電又は過放電に近い電池セルBT09を、放電電池セル群又は充電電池セル群として優先的に選択するようにしてもよい。
ここで、本実施形態における切り替え制御回路BT03の動作例を、図30を用いて説明する。図30は、切り替え制御回路BT03の動作例を説明するための図である。なお、説明の便宜上、図30では4個の電池セルBT09が直列に接続されている場合を例に説明する。
まず、図30(A)の例では、電池セルa乃至dの電圧を電圧Va乃至電圧Vdとすると、Va=Vb=Vc>Vdの関係にある場合を示している。つまり、連続する3つの高電圧セルa乃至cと、1つの低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路BT03は、連続する3つの高電圧セルa乃至cを放電電池セル群として決定する。また、切り替え制御回路BT03は、低電圧セルdを充電電池セル群として決定する。
次に、図30(B)の例では、Vc>Va=Vb>>Vdの関係にある場合を示している。つまり、連続する2つの低電圧セルa、bと、1つの高電圧セルcと、1つの過放電間近の低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路BT03は、高電圧セルcを放電電池セル群として決定する。また、切り替え制御回路BT03は、低電圧セルdが過放電間近であるため、連続する2つの低電圧セルa及びbではなく、低電圧セルdを充電電池セル群として優先的に決定する。
最後に、図30(C)の例では、Va>Vb=Vc=Vdの関係にある場合を示している。つまり、1つの高電圧セルaと、連続する3つの低電圧セルb乃至dとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路BT03は、高電圧セルaを放電電池セル群と決定する。また、切り替え制御回路BT03は、連続する3つの低電圧セルb乃至dを充電電池セル群として決定する。
切り替え制御回路BT03は、上記図30(A)乃至(C)の例のように決定された結果に基づいて、切り替え回路BT04の接続先である放電電池セル群を示す情報が設定された制御信号S1と、切り替え回路BT05の接続先である充電電池セル群を示す情報が設定された制御信号S2を、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05に対してそれぞれ出力する。
以上が、切り替え制御回路BT03の動作の詳細に関する説明である。
切り替え回路BT04は、切り替え制御回路BT03から出力される制御信号S1に応じて、端子対BT01の接続先を、切り替え制御回路BT03により決定された放電電池セル群に設定する。
端子対BT01は、対を成す端子A1及びA2により構成される。切り替え回路BT04は、この端子A1及びA2のうち、いずれか一方を放電電池セル群の中で最も上流(高電位側)に位置する電池セルBT09の正極端子と接続し、他方を放電電池セル群の中で最も下流(低電位側)に位置する電池セルBT09の負極端子と接続することにより、端子対BT01の接続先を設定する。なお、切り替え回路BT04は、制御信号S1に設定された情報を用いて放電電池セル群の位置を認識することができる。
切り替え回路BT05は、切り替え制御回路BT03から出力される制御信号S2に応じて、端子対BT02の接続先を、切り替え制御回路BT03により決定された充電電池セル群に設定する。
端子対BT02は、対を成す端子B1及びB2により構成される。切り替え回路BT05は、この端子B1及びB2のうち、いずれか一方を充電電池セル群の中で最も上流(高電位側)に位置する電池セルBT09の正極端子と接続し、他方を充電電池セル群の中で最も下流(低電位側)に位置する電池セルBT09の負極端子と接続することにより、端子対BT02の接続先を設定する。なお、切り替え回路BT05は、制御信号S2に設定された情報を用いて充電電池セル群の位置を認識することができる。
切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05の構成例を示す回路図を図31及び図32に示す。
図31では、切り替え回路BT04は、複数のトランジスタBT10と、バスBT11及びBT12とを有する。バスBT11は、端子A1と接続されている。また、バスBT12は、端子A2と接続されている。複数のトランジスタBT10のソース又はドレインの一方は、それぞれ1つおきに交互に、バスBT11及びBT12と接続されている。また、複数のトランジスタBT10のソース又はドレインの他方は、それぞれ隣接する2つの電池セルBT09の間に接続されている。
なお、複数のトランジスタBT10のうち、最上流に位置するトランジスタBT10のソース又はドレインの他方は、電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタBT10のうち、最下流に位置するトランジスタBT10のソース又はドレインの他方は、電池部BT08の最下流に位置する電池セルBT09の負極端子と接続されている。
切り替え回路BT04は、複数のトランジスタBT10のゲートに与える制御信号S1に応じて、バスBT11に接続される複数のトランジスタBT10のうちの1つと、バスBT12に接続される複数のトランジスタBT10のうちの1つとをそれぞれ導通状態にすることにより、放電電池セル群と端子対BT01とを接続する。これにより、放電電池セル群の中で最も上流に位置する電池セルBT09の正極端子は、端子対の端子A1又はA2のいずれか一方と接続される。また、放電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セルBT09の負極端子は、端子対の端子A1又はA2のいずれか他方、すなわち正極端子と接続されていない方の端子に接続される。
トランジスタBT10には、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタはオフ電流が小さいため、放電電池セル群に属しない電池セルから漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。またOSトランジスタは高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。そのため、放電電池セル群の出力電圧が大きくても、非導通状態とするトランジスタBT10が接続された電池セルBT09と端子対BT01とを絶縁状態とすることができる。
また、図31では、切り替え回路BT05は、複数のトランジスタBT13と、電流制御スイッチBT14と、バスBT15と、バスBT16とを有する。バスBT15及びBT16は、複数のトランジスタBT13と、電流制御スイッチBT14との間に配置される。複数のトランジスタBT13のソース又はドレインの一方は、それぞれ1つおきに交互に、バスBT15及びBT16と接続されている。また、複数のトランジスタBT13のソース又はドレインの他方は、それぞれ隣接する2つの電池セルBT09の間に接続されている。
なお、複数のトランジスタBT13のうち、最上流に位置するトランジスタBT13のソース又はドレインの他方は、電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタBT13のうち、最下流に位置するトランジスタBT13のソース又はドレインの他方は、電池部BT08の最下流に位置する電池セルBT09の負極端子と接続されている。
トランジスタBT13には、トランジスタBT10と同様に、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタはオフ電流が小さいため、充電電池セル群に属しない電池セルから漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。またOSトランジスタは高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。そのため、充電電池セル群を充電するための電圧が大きくても、非導通状態とするトランジスタBT13が接続された電池セルBT09と端子対BT02とを絶縁状態とすることができる。
電流制御スイッチBT14は、スイッチ対BT17とスイッチ対BT18とを有する。スイッチ対BT17の一端は、端子B1に接続されている。また、スイッチ対BT17の他端は2つのスイッチで分岐しており、一方のスイッチはバスBT15に接続され、他方のスイッチはバスBT16に接続されている。スイッチ対BT18の一端は、端子B2に接続されている。また、スイッチ対BT18の他端は2つのスイッチで分岐しており、一方のスイッチはバスBT15に接続され、他方のスイッチはバスBT16に接続されている。
スイッチ対BT17及びスイッチ対BT18が有するスイッチは、トランジスタBT10及びトランジスタBT13と同様に、OSトランジスタを用いることが好ましい。
切り替え回路BT05は、制御信号S2に応じて、トランジスタBT13、及び電流制御スイッチBT14のオン/オフ状態の組み合わせを制御することにより、充電電池セル群と端子対BT02とを接続する。
切り替え回路BT05は、一例として、以下のようにして充電電池セル群と端子対BT02とを接続する。
切り替え回路BT05は、複数のトランジスタBT13のゲートに与える制御信号S2に応じて、充電電池セル群の中で最も上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されているトランジスタBT13を導通状態にする。また、切り替え回路BT05は、複数のトランジスタBT13のゲートに与える制御信号S2に応じて、充電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セルBT09の負極端子に接続されているトランジスタBT13を導通状態にする。
端子対BT02に印加される電圧の極性は、端子対BT01と接続される放電電池セル群、及び変圧回路BT07の構成によって変わり得る。また、充電電池セル群を充電する方向に電流を流すためには、端子対BT02と充電電池セル群との間で、同じ極性の端子同士を接続する必要がある。そこで、電流制御スイッチBT14は、制御信号S2により、端子対BT02に印加される電圧の極性に応じてスイッチ対BT17及びスイッチ対BT18の接続先をそれぞれ切り替えるように制御される。
一例として、端子B1が正極、端子B2が負極となるような電圧が端子対BT02に印加されている状態を挙げて説明する。この時、電池部BT08の最下流の電池セルBT09が充電電池セル群である場合、スイッチ対BT17は、制御信号S2により、当該電池セルBT09の正極端子と接続されるように制御される。すなわち、スイッチ対BT17のバスBT16に接続されるスイッチがオン状態となり、スイッチ対BT17のバスBT15に接続されるスイッチがオフ状態となる。一方、スイッチ対BT18は、制御信号S2により、当該電池セルBT09の負極端子と接続されるように制御される。すなわち、スイッチ対BT18のバスBT15に接続されるスイッチがオン状態となり、スイッチ対BT18のバスBT16に接続されるスイッチがオフ状態となる。このようにして、端子対BT02と充電電池セル群との間で、同じ極性をもつ端子同士が接続される。そして、端子対BT02から流れる電流の方向が、充電電池セル群を充電する方向となるように制御される。
また、電流制御スイッチBT14は、切り替え回路BT05ではなく、切り替え回路BT04に含まれていてもよい。
図32は、図31とは異なる、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05の構成例を示す回路図である。
図32では、切り替え回路BT04は、複数のトランジスタ対BT21と、バスBT24及びバスBT25とを有する。バスBT24は、端子A1と接続されている。また、バスBT25は、端子A2と接続されている。複数のトランジスタ対BT21の一端は、それぞれトランジスタBT22とトランジスタBT23とにより分岐している。トランジスタBT22のソース又はドレインの一方は、バスBT24と接続されている。また、トランジスタBT23のソース又はドレインの一方は、バスBT25と接続されている。また、複数のトランジスタ対BT21の他端は、それぞれ隣接する2つの電池セルBT09の間に接続されている。なお、複数のトランジスタ対BT21のうち、最上流に位置するトランジスタ対BT21の他端は、電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタ対BT21のうち、最下流に位置するトランジスタ対BT21の他端は、電池部BT08の最下流に位置する電池セルBT09の負極端子と接続されている。
切り替え回路BT04は、制御信号S1に応じてトランジスタBT22及びトランジスタBT23の導通/非導通状態を切り換えることにより、当該トランジスタ対BT21の接続先を、端子A1又は端子A2のいずれか一方に切り替える。詳細には、トランジスタBT22が導通状態であれば、トランジスタBT23は非導通状態となり、その接続先は端子A1になる。一方、トランジスタBT23が導通状態であれば、トランジスタBT22は非導通状態となり、その接続先は端子A2になる。トランジスタBT22及びトランジスタBT23のどちらが導通状態になるかは、制御信号S1によって決定される。
端子対BT01と放電電池セル群とを接続するには、2つのトランジスタ対BT21が用いられる。詳細には、制御信号S1に基づいて、2つのトランジスタ対BT21の接続先がそれぞれ決定されることにより、放電電池セル群と端子対BT01とが接続される。2つのトランジスタ対BT21のそれぞれの接続先は、一方が端子A1となり、他方が端子A2となるように、制御信号S1によって制御される。
切り替え回路BT05は、複数のトランジスタ対BT31と、バスBT34及びバスBT35とを有する。バスBT34は、端子B1と接続されている。また、バスBT35は、端子B2と接続されている。複数のトランジスタ対BT31の一端は、それぞれトランジスタBT32とトランジスタBT33とにより分岐している。トランジスタBT32により分岐する一端は、バスBT34と接続されている。また、トランジスタBT33により分岐する一端は、バスBT35と接続されている。また、複数のトランジスタ対BT31の他端は、それぞれ隣接する2つの電池セルBT09の間に接続されている。なお、複数のトランジスタ対BT31のうち、最上流に位置するトランジスタ対BT31の他端は、電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタ対BT31のうち、最下流に位置するトランジスタ対BT31の他端は、電池部BT08の最下流に位置する電池セルBT09の負極端子と接続されている。
切り替え回路BT05は、制御信号S2に応じてトランジスタBT32及びトランジスタBT33の導通/非導通状態を切り換えることにより、当該トランジスタ対BT31の接続先を、端子B1又は端子B2のいずれか一方に切り替える。詳細には、トランジスタBT32が導通状態であれば、トランジスタBT33は非導通状態となり、その接続先は端子B1になる。逆に、トランジスタBT33が導通状態であれば、トランジスタBT32は非導通状態となり、その接続先は端子B2になる。トランジスタBT32及びトランジスタBT33のどちらが導通状態となるかは、制御信号S2によって決定される。
端子対BT02と充電電池セル群とを接続するには、2つのトランジスタ対BT31が用いられる。詳細には、制御信号S2に基づいて、2つのトランジスタ対BT31の接続先がそれぞれ決定されることにより、充電電池セル群と端子対BT02とが接続される。2つのトランジスタ対BT31のそれぞれの接続先は、一方が端子B1となり、他方が端子B2となるように、制御信号S2によって制御される。
また、2つのトランジスタ対BT31のそれぞれの接続先は、端子対BT02に印加される電圧の極性によって決定される。具体的には、端子B1が正極、端子B2が負極となるような電圧が端子対BT02に印加されている場合、上流側のトランジスタ対BT31は、トランジスタBT32が導通状態となり、トランジスタBT33が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。一方、下流側のトランジスタ対BT31は、トランジスタBT33が導通状態、トランジスタBT32が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。また、端子B1が負極、端子B2が正極となるような電圧が端子対BT02に印加されている場合は、上流側のトランジスタ対BT31は、トランジスタBT33が導通状態となり、トランジスタBT32が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。一方、下流側のトランジスタ対BT31は、トランジスタBT32が導通状態、トランジスタBT33が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。このようにして、端子対BT02と充電電池セル群との間で、同じ極性をもつ端子同士が接続される。そして、端子対BT02から流れる電流の方向が、充電電池セル群を充電する方向となるように制御される。
変圧制御回路BT06は、変圧回路BT07の動作を制御する。変圧制御回路BT06は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数と、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数とに基づいて、変圧回路BT07の動作を制御する変圧信号S3を生成し、変圧回路BT07へ出力する。
なお、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数よりも多い場合は、充電電池セル群に対して過剰に大きな充電電圧が印加されることを防止する必要がある。そのため、変圧制御回路BT06は、充電電池セル群を充電できる範囲で放電電圧(Vdis)を降圧させるように変圧回路BT07を制御する変圧信号S3を出力する。
また、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数以下である場合は、充電電池セル群を充電するために必要な充電電圧を確保する必要がある。そのため、変圧制御回路BT06は、充電電池セル群に過剰な充電電圧が印加されない範囲で放電電圧(Vdis)を昇圧させるように変圧回路BT07を制御する変圧信号S3を出力する。
なお、過剰な充電電圧とする電圧値は、電池部BT08で使用される電池セルBT09の製品仕様等に鑑みて決定することができる。また、変圧回路BT07により昇圧及び降圧された電圧は、充電電圧(Vcha)として端子対BT02に印加される。
ここで、本実施形態における変圧制御回路BT06の動作例を、図33(A)乃至(C)を用いて説明する。図33(A)乃至(C)は、図30(A)乃至(C)で説明した放電電池セル群及び充電電池セル群に対応させた、変圧制御回路BT06の動作例を説明するための概念図である。なお図33(A)乃至(C)は、電池制御ユニットBT41を図示している。電池制御ユニットBT41は、上述したように、端子対BT01と、端子対BT02と、切り替え制御回路BT03と、切り替え回路BT04と、切り替え回路BT05と、変圧制御回路BT06と、変圧回路BT07とにより構成される。
図33(A)に示される例では、図30(A)で説明したように、連続する3つの高電圧セルa乃至cと、1つの低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、図30(A)を用いて説明したように、切り替え制御回路BT03は、高電圧セルa乃至cを放電電池セル群として決定し、低電圧セルdを充電電池セル群として決定する。そして、変圧制御回路BT06は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数を基準とした時の、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数の比に基づいて、放電電圧(Vdis)から充電電圧(Vcha)への変換比Nを算出する。
なお放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数よりも多い場合に、放電電圧を変圧せずに端子対BT02にそのまま印加すると、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09に、端子対BT02を介して過剰な電圧が印加される可能性がある。そのため、図33(A)に示されるような場合では、端子対BT02に印加される充電電圧(Vcha)を、放電電圧よりも降圧させる必要がある。さらに、充電電池セル群を充電するためには、充電電圧は、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の合計電圧より大きい必要がある。そのため、変圧制御回路BT06は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数を基準とした時の、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数の比よりも、変換比Nを大きく設定する。
変圧制御回路BT06は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数を基準とした時の、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数の比に対して、変換比Nを1乃至10%程度大きくするのが好ましい。この時、充電電圧は充電電池セル群の電圧よりも大きくなるが、実際には充電電圧は充電電池セル群の電圧と等しくなる。ただし、変圧制御回路BT06は変換比Nに従い充電電池セル群の電圧を充電電圧と等しくするために、充電電池セル群を充電する電流を流すこととなる。この電流は変圧制御回路BT06に設定された値となる。
図33(A)に示される例では、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が3個で、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の数が1個であるため、変圧制御回路BT06は、1/3より少し大きい値を変換比Nとして算出する。そして、変圧制御回路BT06は、放電電圧を当該変換比Nに応じて降圧し、充電電圧に変換する変圧信号S3を変圧回路BT07に出力する。そして、変圧回路BT07は、変圧信号S3に応じて変圧された充電電圧を、端子対BT02に印加する。そして、端子対BT02に印加される充電電圧によって、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09が充電される。
また、図33(B)や図33(C)に示される例でも、図33(A)と同様に、変換比Nが算出される。図33(B)や図33(C)に示される例では、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数以下であるため、変換比Nは1以上となる。よって、この場合は、変圧制御回路BT06は、放電電圧を昇圧して充電電圧に変換する変圧信号S3を出力する。
変圧回路BT07は、変圧信号S3に基づいて、端子対BT01に印加される放電電圧を充電電圧に変換する。そして、変圧回路BT07は、変換された充電電圧を端子対BT02に印加する。ここで、変圧回路BT07は、端子対BT01と端子対BT02との間を電気的に絶縁している。これにより、変圧回路BT07は、放電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セルBT09の負極端子の絶対電圧と、充電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セルBT09の負極端子の絶対電圧との差異による短絡を防止する。さらに、変圧回路BT07は、上述したように、変圧信号S3に基づいて放電電池セル群の合計電圧である放電電圧を充電電圧に変換する。
また、変圧回路BT07は、例えば絶縁型DC(Direct Current)−DCコンバータ等を用いることができる。この場合、変圧制御回路BT06は、絶縁型DC−DCコンバータのオン/オフ比(デューティー比)を制御する信号を変圧信号S3として出力することにより、変圧回路BT07で変換される充電電圧を制御する。
なお、絶縁型DC−DCコンバータには、フライバック方式、フォワード方式、RCC(Ringing Choke Converter)方式、プッシュプル方式、ハーフブリッジ方式、及びフルブリッジ方式等が存在するが、目的とする出力電圧の大きさに応じて適切な方式が選択される。
絶縁型DC−DCコンバータを用いた変圧回路BT07の構成を図34に示す。絶縁型DC−DCコンバータBT51は、スイッチ部BT52とトランス部BT53とを有する。スイッチ部BT52は、絶縁型DC−DCコンバータの動作のオン/オフを切り替えるスイッチであり、例えば、MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)やバイポーラ型トランジスタ等を用いて実現される。また、スイッチ部BT52は、変圧制御回路BT06から出力される、オン/オフ比を制御する変圧信号S3に基づいて、絶縁型DC−DCコンバータBT51のオン状態とオフ状態を周期的に切り替える。なお、スイッチ部BT52は、使用される絶縁型DC−DCコンバータの方式によって様々な構成を取り得る。トランス部BT53は、端子対BT01から印加される放電電圧を充電電圧に変換する。詳細には、トランス部BT53は、スイッチ部BT52のオン/オフ状態と連動して動作し、そのオン/オフ比に応じて放電電圧を充電電圧に変換する。この充電電圧は、スイッチ部BT52のスイッチング周期において、オン状態となる時間が長いほど大きくなる。一方、充電電圧は、スイッチ部BT52のスイッチング周期において、オン状態となる時間が短いほど小さくなる。なお、絶縁型DC−DCコンバータを用いる場合、トランス部BT53の内部で、端子対BT01と端子対BT02は互いに絶縁することができる。
本実施形態における蓄電装置BT00の処理の流れを、図35を用いて説明する。図35は、蓄電装置BT00の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、蓄電装置BT00は、複数の電池セルBT09毎に測定された電圧を取得する(ステップS101)。そして、蓄電装置BT00は、複数の電池セルBT09の電圧を揃える動作の開始条件を満たすか否かを判定する(ステップS102)。この開始条件は、例えば、複数の電池セルBT09毎に測定された電圧の最大値と最小値との差分が、所定の閾値以上か否か等とすることができる。この開始条件を満たさない場合は(ステップS102:NO)、各電池セルBT09の電圧のバランスが取れている状態であるため、蓄電装置BT00は、以降の処理を実行しない。一方、開始条件を満たす場合は(ステップS102:YES)、蓄電装置BT00は、各電池セルBT09の電圧を揃える処理を実行する。この処理において、蓄電装置BT00は、測定されたセル毎の電圧に基づいて、各電池セルBT09が高電圧セルか低電圧セルかを判定する(ステップS103)。そして、蓄電装置BT00は、判定結果に基づいて、放電電池セル群及び充電電池セル群を決定する(ステップS104)。さらに、蓄電装置BT00は、決定された放電電池セル群を端子対BT01の接続先に設定する制御信号S1、及び決定された充電電池セル群を端子対BT02の接続先に設定する制御信号S2を生成する(ステップS105)。蓄電装置BT00は、生成された制御信号S1及び制御信号S2を、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05へそれぞれ出力する。そして、切り替え回路BT04により、端子対BT01と放電電池セル群とが接続され、切り替え回路BT05により、端子対BT02と放電電池セル群とが接続される(ステップS106)。また、蓄電装置BT00は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数と、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数とに基づいて、変圧信号S3を生成する(ステップS107)。そして、蓄電装置BT00は、変圧信号S3に基づいて、端子対BT01に印加される放電電圧を充電電圧に変換し、端子対BT02に印加する(ステップS108)。これにより、放電電池セル群の電荷が充電電池セル群へ移動される。
また、図35のフローチャートでは、複数のステップが順番に記載されているが、各ステップの実行順序は、その記載の順番に制限されない。
以上、本実施形態によれば、放電電池セル群から充電電池セル群へ電荷を移動させる際、キャパシタ方式のように、放電電池セル群からの電荷を一旦蓄積し、その後充電電池セル群へ放出させるような構成を必要としない。これにより、単位時間あたりの電荷移動効率を向上させることができる。また、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05により、放電電池セル群及び充電電池セル群のうち、変圧回路と接続する電池セルを、個別に切り替えられる。
さらに、変圧回路BT07により、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数と充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数とに基づいて、端子対BT01に印加される放電電圧が充電電圧に変換され、端子対BT02に印加される。これにより、放電側及び充電側の電池セルBT09がどのように選択されても、問題なく電荷の移動を実現できる。
さらに、トランジスタBT10及びトランジスタBT13にOSトランジスタを用いることにより、充電電池セル群及び放電電池セル群に属しない電池セルBT09から漏洩する電荷量を減らすことができる。これにより、充電及び放電に寄与しない電池セルBT09の容量の低下を抑制することができる。また、OSトランジスタは、Siトランジスタに比べて熱に対する特性の変動が小さい。これにより、電池セルBT09の温度が上昇しても、制御信号S1、S2に応じた導通状態と非導通状態の切り替えといった、正常な動作をさせることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
本実施例では、電解液のCV(サイクリックボルタンメトリー)測定を行った。
電解液A−1、電解液A−2、電解液A−3および電解液A−4の4種類の電解液を準備した。4種類の電解液とも、溶媒としてEMI−FSA(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)アミド)を用いた。電解液A−2、電解液A−3および電解液A−4において、電解質としてLiFSA(リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド)を用いた。電解液A−1は電解質を用いなかった。電解液に対する電解質の濃度は、電解液A−2において1mol/L、電解液A−3において0.1mol/L、電解液A−4において0.01mol/Lとした。
参照電極をリチウム、作用電極を銅、対極を白金とした。作用電極の面積を0.02cm2とした。参照電極用の電解液は、溶媒としてPP13−TFSA(N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド)を用い、電解質としてLiTFSA(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド)を用い、電解液に対する電解質の濃度を0.4mol/Lとした。
走査速度を50mV/sec.とし、電圧範囲を3Vから−0.5Vとした。電解液A−1、電解液A−2、電解液A−3および電解液A−4のCV測定結果を図36(A)、(B)、図37(A)および(B)に示す。横軸にはLi/Li+に対する電位、縦軸には電流密度を示す。
リチウム塩を用いていない電解液A−1では、約0.7Vに還元電流が観測され、EMI−FSAの還元反応が示唆された。電解液A−2では、電解液A−1で見られた0.7V近傍の還元電流が抑制され、0V近傍の還元電流および酸化電流が観測され、それぞれリチウムの析出およびリチウムの溶出に対応することが示唆された。電解液A−2では、リチウムイオンが電極の表面において電気二重層を形成し、EMIカチオン、およびFSAアニオンのいずれかまたは両方の還元反応を抑制できたと考えられる。
電解液A−3では、0V近傍まで顕著な還元電流が観測されず、EMIの分解の抑制が示唆されるものの、リチウムの析出を示唆する酸化電流が観測されなかった。一方、電解液A−4では、0Vよりも高い電位で還元電流が観測され、EMIカチオン、およびFSAアニオンのいずれかまたは両方の還元反応が生じることが示唆された。
図38(A)および(B)は、電解液A−4における2サイクル目および3サイクル目のCV測定結果を示す。2サイクル目および3サイクル目のCV測定の波形は、リチウム塩を用いない電解液A−1のCV測定の波形とほぼ同等な結果となった。電解液A−4においては、リチウム塩の濃度が低く、電極の表面への電気二重層を充分に形成できず、EMIカチオン等の還元反応を抑制するのにはリチウム塩の濃度が不充分であると考えられる。
また、電解液A−4において、掃引速度を0.5mV/sec.とし、電圧範囲を3Vから−0.3VとしてCV測定を行うことにより、還元反応が抑制されることがわかった。結果を図39に示す。
次に、電解液A−5および電解液A−6を準備した。電解液A−5および電解液A−6において、溶媒としてEMI−TFSAを用い、電解質としてLiTFSAを用いた。電解液に対する電解質の濃度は、電解液A−5において1mol/L、電解液A−6において2mol/Lとした。
図40には電解液A−5において、挿引速度を0.5mV/s、電圧範囲を3Vから−0.15V、図41(A)には電解液A−6において、挿引速度を0.5mV/s、電圧範囲を3Vから0V、図41(B)には電解液A−6において、挿引速度を0.1mV/s、電圧範囲を3Vから0Vとした結果をそれぞれ示す。リチウム塩の濃度を2mol/Lとした電解液A−6において、リチウムの溶出を示唆するピークが観測され、形成された電気二重層によりEMIカチオン等の還元反応が抑制された可能性が考えられる。
本実施例では、蓄電池を作製し、充放電サイクルの測定を行った。
まず電解液A−7、および電解液AC−1を準備した。電解液A−7では溶媒としてBMI−FSAを用い、電解質としてLiFSAを用い、電解液に対する電解質の濃度は1.5mol/Lとした。比較電解液である電解液AC−1では溶媒としてECとDECを体積比でEC:DEC=3:7として混合した溶媒を用い、電解質としてLiPF6を用い、電解液に対する電解質の濃度は1mol/Lとした。
[電極の作製]
次に、負極E1、正極E2および正極E3を準備した。
負極E1の配合および作製方法について説明する。活物質にカーボンコートされたSiOを用い、結着剤としてポリイミドを用い、導電助剤としてアセチレンブラックを用いた。電極を作製するためのスラリーの配合は、SiO:アセチレンブラック:ポリイミド=80:5:15(重量%)とした。
初めに、アセチレンブラックと溶媒であるNMPを、混練機を用いて混練し、第1の混合物を得た。
次に、第1の混合物に活物質を添加し、第2の混合物を得た。
次に、第2の混合物にポリイミドのNMP溶液を添加し、混練機を用いて混練した。以上の工程により、スラリーを作製した。
次に、作製したスラリーを、厚さ10μmのステンレス製の集電体の片面に塗布した。塗布には連続塗工機を用い、塗布速度は0.15m/minとした。その後、乾燥炉を用いて乾燥を行った。乾燥条件は、40℃で20分間の処理を行った。
次に、作製した電極を加熱処理しイミド化した。加熱処理にはマッフル炉を用いた。加熱条件は、窒素雰囲気中で400℃で5時間の処理を行った。以上の工程により、負極を作製した。
次に、正極E2および正極E3を準備した。
正極E2の配合および作製条件について説明する。活物質に平均粒子径10μmのLiCoO2を用い、結着剤としてPVdFを用い、導電助剤としてアセチレンブラックを用いた。電極を作製するためのスラリーの配合は、LiCoO2:アセチレンブラック:PVdF=90:5:5(重量%)とした。
活物質、結着剤および導電助剤を混練し、スラリーを作製した。作製したスラリーを厚さ20μmのアルミ集電体の片面に塗布した。その後、溶媒を揮発させた。その後、正極活物質層をプレスした。以上の工程により、正極E2を作製した。
正極E3の配合および作製条件について説明する。活物質に比表面積15.6m2/gのLiFePO4を用い、結着剤としてPVdFを用い、導電助剤としてアセチレンブラックを用いた。電極を作製するためのスラリーの配合は、LiFePO4:アセチレンブラック:PVdF=85:8:7(重量%)とした。
初めに、アセチレンブラックと結着剤であるPVdFを、混練機を用いて混練し、第1の混合物を得た。
次に、第1の混合物に活物質を添加し、第2の混合物を得た。
次に、第2の混合物に溶媒であるNMPを添加し、混練機を用いて混練した。以上の工程により、スラリーを作製した。
次に、大型の混練機で混練を行った。
次に、作製したスラリーを、あらかじめアンダーコートを施した厚さ20μmのアルミ集電体の片面に塗布した。塗布には連続塗工機を用い、塗布速度は0.2m/minとした。その後、乾燥炉を用いて溶媒を揮発させた。乾燥炉の条件は、70℃で7.5分間の処理を行った後に90℃で7.5分間の処理を行った。
次に、正極活物質層を、ロールプレス法によりプレスして圧密化した。以上の工程により、正極E3を作製した。
[蓄電池の作製]
次に、負極E1、正極E2および正極E3を切断し、タブ領域にリード電極をそれぞれ溶接により接着した。負極E1の面積は23.8cm2、正極E2および正極E3の面積は20.5cm2とした。
次に、負極E1と正極E2を第1のセパレータを介して向かい合うように配置し、さらに第2のセパレータを正極E2上に配置し、第2のセパレータ上に正極E3を配置した。正極E3と、負極E1と、の間には、正極E3に近いほうから、第2のセパレータ、正極E2、および第1のセパレータが配置されている。セパレータとして、厚さ40μmのセルロース製のTF40を用いた。
外装体を形成するためのシートとして、アルミニウムの両面に樹脂を被覆したシートを準備した。積層した負極E1、第1のセパレータ、正極E2、第2のセパレータおよび正極E3からなる積層体を、2つ折りした該シートで包んだ。
次に、2つ折りしたシートの三つの辺のうち、二辺を熱により封止し、外装体を形成した。それぞれの電極に接着されたリード電極の端部が、シートの外側に位置するようにした。その後、80℃で乾燥を行った。
次に、−60kPa以下の減圧雰囲気下において、外装体の封止していない辺から電解液を注液した。電解液の注液量は約0.6mlとした。電解液A−7を用いた蓄電池を蓄電池BA、比較電解液である電解液AC−1を用いた比較蓄電池を蓄電池BCとする。
蓄電池BAに用いた負極E1、正極E2および正極E3の担持量は2.0mg/cm2、20mg/cm2、および9.3mg/cm2であった。また、密度は0.55g/cc、約2.2g/ccおよび1.0g/ccであった。
蓄電池BCに用いた負極E1、正極E2および正極E3の担持量は2.0mg/cm2、20mg/cm2および9.4mg/cm2であった。また、密度は0.63g/cc、2.1g/ccおよび1.1g/ccであった。ここで担持量とは、単位面積あたりの活物質重量を指す。
次に、封止していない辺を、熱により封止した。以上の工程により、蓄電池を作製した。
[プレドープ]
25℃において、正極E2を正極に用い、負極E1を負極に用いて定電流充電を行った。充電条件は、電流密度を17.9mA/g(負極活物質容量に対して約0.01Cに相当)とし、600mAh/gまで充電した。充電後に休止時間を0.5時間設けた。
充電を行った後、外装体の一辺を切断した。その後、切断した辺から、正極E2および第2のセパレータの抜き取りを行った。
次に、蓄電池BAには電解液A−7を、蓄電池BCには電解液AC−1を、それぞれ0.3ml、注液した。
次に、切断して開封した辺を、熱により封止した。
[エージング]
次に、エージング工程を行った。まず25℃において、正極を正極E3、負極を負極E1として、定電流充電を行った。充電条件は、電流密度を1.7mA/g(正極活物質容量に対して約0.01Cに相当)とし、上限電圧を3.2Vとした。充電後に休止時間を2時間設けた。
充電を行った後、外装体の一辺を切断し、ガス抜きを行った。その後、切断して開封した辺を、熱により封止した。
次に、電流密度を8.5mA/g(約0.05C相当)とし、上限電圧を4Vとして定電流充電を行った。その後、電流密度を34mA/g(約0.2C相当)とし、下限電圧を2Vとして定電流放電を行った。充電および放電の後にそれぞれ、休止時間を2時間設けた。
次に、電流密度を34mA/gとして、定電流の充放電を2サイクル行った。該2サイクルの充放電カーブを図42に示す。図中の実線が1回目の、点線が2回目の充放電を示す。図42(A)は蓄電池BCの、図42(B)は蓄電池BAの、充放電サイクルをそれぞれ示す。充電の上限電圧を4V、放電の下限電圧を2Vとした。充電および放電の後にそれぞれ、休止時間を2時間設けた。以上の工程をエージング工程とした。
[充放電サイクル]
エージング工程を行った蓄電池BAおよび蓄電池BCについて、充放電サイクル特性を評価した。充電および放電は、電流密度を51mA/g(約0.3C相当)とし、定電流で行った。充電の上限電圧を4V、放電の下限電圧を2Vとした。充電および放電の後にそれぞれ、休止時間を0.5時間設けた。図43に充放電サイクル特性を示す。横軸はサイクル回数、縦軸は放電容量を示す。蓄電池BCでは、500サイクルにおける放電容量は、初回の放電容量の約60%まで減少したのに対し、蓄電池BAでは、500サイクルにおける放電容量は初回の放電容量の80%以上であり、優れた充放電サイクル特性を示すことがわかった。
実施例2において作製した蓄電池BAおよび蓄電池BCについて、充放電を行った後の負極の表面のXPS分析を行った。
充放電サイクル後、蓄電池BAおよび蓄電池BCの解体を行った。解体後、重水素置換アセトニトリルを加えて蓄電池に残存した電解液と混合し、ピペットで混合液を抽出した。その後、シャーレに入れたDMCに負極を浸して洗浄した。DMCを2回入れ替え、計3回の洗浄を行った。その後、減圧雰囲気において、溶媒を揮発させた。
次に、蓄電池BAおよび蓄電池BCのそれぞれの負極のXPS分析を行った。C、O、F、S、Li、P、N、AlおよびSiの割合(atomic%)を表1に示す。
図44(A)にC1sの、図44(B)にO1sの、図45(A)にF1sの、図45(B)にS2pの、図46にLi1sのスペクトルをそれぞれ示す。
S2pのピークにおいて、顕著な違いが観測された。蓄電池BAの負極においては、SOxのピークは、金属−Sのピークに対して3倍以上であった。
実施例2において作製した蓄電池BAおよび蓄電池BCについて、充放電を行った後の負極の断面を観察した。
充放電サイクル後、蓄電池BAおよび蓄電池BCの解体を行った。解体後、重水素置換アセトニトリルを加えて蓄電池に残存した電解液と混合し、ピペットで混合液を抽出した。その後、シャーレに入れたDMCに負極を浸して洗浄した。DMCを2回入れ替え、計3回の洗浄を行った。その後、減圧雰囲気において、溶媒を揮発させた。
次に、負極の断面を観察するために、FIBによる薄片化を行った。その後、TEMを用いて負極の断面を観察した。蓄電池BCおよび蓄電池BAのそれぞれの負極の観察結果を、図47および図48に示す。
次に、負極断面のSTEM観察を行い、元素分析としてSTEM−EDXの線分析を行った。炭素、酸素、フッ素、シリコン、リンおよび硫黄の計6元素について分析を行った。蓄電池BCについて、線分析を行った箇所のSTEM像を図49(A)に、得られた線分析のスペクトルを図49(B)および図51(A)に示す。蓄電池BAについて、線分析を行った箇所のSTEM像を図50(A)に、得られた線分析のスペクトルを図50(B)および図51(B)に示す。ここで図49(B)および図50(B)の縦軸は信号強度を示す。また、図51(A)および図51(B)の縦軸は、各元素の存在割合を、単位をatomic%として示す。
図49(B)および図51(A)において、表面から0.2μm近傍までの領域を第3の領域とする。また、0.2μm近傍から0.45μm近傍までの領域を第2の領域とする。また、0.45μm近傍よりも深い領域を第1の領域とする。第1の領域は主として、負極活物質であるSiOの成分が検出されていると考えられる。第3の領域は主として、電解液が分解して生成した被膜の成分が検出されていると考えられる。第2の領域は、負極活物質と、被膜と、の混合領域であると考えられる。図49(B)に示すEDX分析結果において、第3の領域の炭素の強度は、シリコンの強度に対して10倍以上であるのに対し、第2の領域においては約1倍程度、第1の領域においては6分の1以下である。また図51(A)に示すEDX分析結果において、第3の領域の炭素の原子数は、シリコンの原子数に対して20倍以上であるのに対し、第2の領域においては約4倍程度、第1の領域においては約1倍程度である。
図50(B)および図51(B)において、表面から0.1μm近傍までの領域を第3の領域とする。また、0.1μm近傍から0.2μm近傍までの領域を第2の領域とする。また、0.2μm近傍よりも深い領域を第1の領域とする。図50(B)に示すEDX分析結果において、第3の領域の炭素の強度は、シリコンの強度に対して10倍以上、第2の領域においては約1倍程度、第1の領域においては6分の1以下である。また図51(B)に示すEDX分析結果において、第3の領域の炭素の原子数は、シリコンの原子数に対して20倍以上であるのに対し、第2の領域においては約3倍程度、第1の領域においては約1倍程度である。
次に、元素分析としてEELSの線分析を行った。蓄電池BCについて、線分析を行った箇所のSEM像を図52(A)に、得られた線分析のスペクトルを図52(B)に示す。蓄電池BAについて、線分析を行った箇所のSEM像を図53(A)に、得られた線分析のスペクトルを図53(B)に示す。ここで縦軸は、信号強度を示す。
図52(B)において、表面から0.2μm近傍までの領域を第3の領域とする。また、0.2μm近傍から0.45μm近傍までの領域を第2の領域とする。また、0.45μm近傍よりも深い領域を第1の領域とする。図52(B)に示すEELS分析結果において、第3の領域の炭素の強度は、シリコンの強度に対して10倍以上であるのに対し、第2の領域においては約2分の1程度、第1の領域においては10分の1以下である。
図53(B)において、表面から0.1μm近傍までの領域を第3の領域とする。また、0.1μm近傍から0.2μm近傍までの領域を第2の領域とする。また、0.2μm近傍よりも深い領域を第1の領域とする。図53(B)に示すEELS分析結果において、第3の領域の炭素の強度は、シリコンの強度に対して10倍以上、第1の領域においてはおよそ10分の1以下である。
図47乃至図53より、蓄電池BAの負極は、蓄電池BCの負極に比べて第2の領域の厚さが薄く、活物質表面のクラックや微粉化が抑制されることが示唆された。