JP2019021810A - 電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
蓄電デバイス用の電極活物質であって、
2以上の芳香環が結合した結合多環構造及び2以上の芳香環が縮合した縮合多環構造のうち1以上を有する芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を含み、
前記結合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が10m2/g以上であり、
前記縮合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が4m2/g以上であるものである。
蓄電デバイス用の電極活物質の製造方法であって、
2以上の芳香環が結合した結合多環構造及び2以上の芳香環が縮合した縮合多環構造のうち1以上を有する芳香族ジカルボン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液から芳香族骨格を有するジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を作製する作製工程と、
前記作製した層状構造体を1時間以上12時間以下の範囲で粉砕する粉砕工程と、
を含むものである。
本明細書で開示する電極活物質は、蓄電デバイス用の電極活物質である。電極活物質は、キャリアである金属イオンを吸蔵放出するものである。キャリアである金属イオンは、アルカリ金属イオンであることが好ましく、LiイオンやNaイオン、Kイオンなどのうち1以上が挙げられる。ここでは、Liを主として説明する。この電極活物質は、芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を含む。芳香族ジカルボン酸アニオンは、2以上の芳香環が結合した結合多環構造及び2以上の芳香環が縮合した縮合多環構造のうち1以上を有する。結合多環構造としては、例えば、ビフェニル構造などが含まれる。また、縮合多環構造としては、例えば、ナフタレン構造などが含まれる。
本開示の電極活物質の製造方法は、蓄電デバイス用の電極活物質の製造方法である。この製造方法は、作製工程と、粉砕工程とを含むものとしてもよい。なお、作製工程で用いる調製溶液を調製する溶液調製工程を含むものとしてもよい。
この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとを溶解した溶液を調製し、この溶液から層状構造体を作製する。この溶液の溶媒は、特に限定されないが、水系溶媒としてもよいし、アルコールなどの有機系溶媒としてもよい。この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンの濃度が0.1mol/L以上である調製溶液を調製することが好ましい。また、この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンの濃度が5mol/L以下である調製溶液を調製することが好ましい。また、この工程では、ナフタレン、ビフェニル、ナフタレン骨格またはビフェニル骨格が拡張された有機骨格を有する芳香族ジカルボン酸アニオンを用いるものとしてもよい。更に、この工程では、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上のアルカリ金属カチオンを含む溶液を調製することが好ましい。調製した溶液を撹拌し、溶媒を除去して乾燥することにより、層状構造体の粉末を得ることができる。乾燥は、常圧で行ってもよいし、減圧状態で行ってもよい。乾燥温度は、70℃以上160℃以下の範囲が好ましい。
この工程では、作製した層状構造体を粉砕処理する。粉砕処理は、例えば、自動乳鉢で行うものとしてもよい。また、粉砕時間は、1時間以上12時間以下の範囲とする。この粉砕時間は、2時間以上がより好ましく、4時間以上としてもよい。粉砕時間がより長ければ、より大きな比表面積とすることができる。また、この粉砕時間は、10時間以下がより好ましく、8時間以下としてもよい。粉砕時間がより短ければ、層状構造体が嵩高くなってしまうのを防止でき好ましい。また、粉砕条件としては、容積500mL〜1000mLの乳鉢に30g〜50gの層状構造体を入れて行うことが好ましい。なお、乳鉢は、アルミナ製、ジルコニア製などを用いることができる。
この電極は、上述した電極活物質を含むものである。この蓄電デバイス用電極は、対極の電位に応じて正極としてもよいし負極としてもよいが、電極活物質の電位がリチウム金属基準で1.5V以下であるため、負極とすることが好ましい。この蓄電デバイス用電極は、上述した電極活物質である層状構造体と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の電極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。この蓄電デバイス用電極において、上記電極活物質は、できるだけ多く含まれることが好ましく、例えば、電極合材中に60質量%以上95質量%以下の範囲で含まれるものとしてもよい。導電材は、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルアルコール(PVA)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどを用いることができる。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、リチウムイオン電池などとしてもよい。蓄電デバイスは、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、イオン伝導媒体とを備えている。正極は、キャリアイオンを吸蔵放出する正極活物質を含むものとしてもよい。負極は、キャリアである金属イオンを吸蔵放出する上述した層状構造体の電極活物質を含む蓄電デバイス用電極であるものとしてもよい。また、イオン伝導媒体は、正極と負極との間に介在しキャリアイオン(カチオン及びアニオン)を伝導するものである。
出発原料として4,4’−ビフェニルジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いた。まず、水酸化リチウム1水和物にメタノールを加え、撹拌した。水酸化リチウム1水和物を溶解したのち、4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウムを加え1時間撹拌した。撹拌後溶媒を除去し、真空下150℃で16時間乾燥することにより白色の粉末試料の4,4’−ビフェニルジカルボン酸(Bph粉末とも称する)を得た。得られたBph粉末に対して粉末X線回折測定を行った。測定は、放射線としてCuKα線(波長1.54051Å)を使用し、X線回折装置(リガク製RINT2200)を用いて行った。その結果、この粉末は、空間群P21/cに帰属される単斜晶を仮定したときの(001)、(111)、(102)、(112)ピークが明確に現れており、リチウム層と有機骨格層からなる層状構造を形成していると推察された。また、この粉末は、空間群P21/cに帰属される単斜晶であることから、4つの異なる芳香族ジカルボン酸分子の酸素とリチウムとが4配位を形成する構造を形成し、有機骨格の部分でπ電子共役雲による相互作用が働いているものと推察された。
出発原料として2、6−ナフタレンジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いた。まず、水酸化リチウム1水和物にメタノールを加え撹拌した。水酸化リチウム1水和物を溶解したのち、2、6−ナフタレンジカルボン酸を加え1時間撹拌した。撹拌後溶媒を除去し、真空下150℃で16時間乾燥することにより、白色の粉末試料の2、6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウム(Naph粉末とも称する)を得た。得られたNaph粉末に対して粉末X線回折測定を行った結果、Bph粉末と同様の結果が得られた。
電極活物質と、導電材としてのカーボンブラックと、水系バインダ(PVA)と、ゴム系バインダ(SBR)とを質量比で85:15:3:2の比率で混合し、分散剤として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に単位面積当たりの電極活物質が3mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2cm2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を準備した。
電極活物質を含む電極を評価する単極充放電セルの構成としては、上記作製した電極と、Li金属箔を対極とし、これらの間にセパレータを挟んで単極充放電セルを作製した。非水系電解液として、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で30:40:30の割合で混合した非水溶媒に、支持塩のLiPF6を1.0mol/Lになるように添加したものを用いた。セパレータは、Celgard2500(PP,25μm)とした。
正極は、活物質としての活性炭(クラレケミカル製YP−50F)と、導電材としてのカーボンブラックと、水系バインダ(PVA)とを質量比で83:10.7:4.0:2.3の比率で混合し、分散剤として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚のAl箔集電体に単位面積当たりの電極活物質が1.5mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2cm2の面積に打ち抜いて円盤状の正極とした。負極は、上記単極充放電セルの電極を用い、プレドープ処理したものを用いた。電解液及びセパレータは、2極式評価セルと同じものを用いた。
作製した電極活物質を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。SEM観察は、走査型電子顕微鏡(日本FEI社製Quanta200FEG)を用い、1000〜50000倍の条件で行った。
作製した電極活物質の比表面積を測定した。比表面積の測定は、日本ベル社製Belsorp−Max−12−N−T−HLを用い、液体窒素温度(77K)におけるKr吸着測定を行い、Kr吸着等温線からBET法により比表面積を算出した。
単極充放電は、単極充放電セルを用い、電極に対して1/10C相当となる電流密度で充放電を行った。
キャパシタセルは、以下の条件で評価した。キャパシタセルを電流密度1C相当の充電と、電流密度1C、2C、4C、10C、20C、40C、60C相当の放電とを5サイクルずつ繰り返すことで、放電時のエネルギー密度、パワー密度を測定した。充放電後には毎回10分間の休止時間を設けた。測定温度は、20℃、0℃、−20℃とした。セルの内部抵抗は、インピーダンス測定を行い評価した。インピーダンス測定は、キャパシタセルを用いて、ACインピーダンスアナライザー(Agilent4294A)により、20℃、周波数0.01〜10000Hz、電流振幅5mAの条件で、交流インピーダンス測定を行い、ナイキストプロットの円弧より内部抵抗を求めた。キャパシタセルの評価として、耐久性能評価を行った。耐久性能評価は、10C相当の電流密度で1000サイクルの連続充放電試験を行い、その容量維持率の推移を調べた。充放電後には毎回10分間の休止を設けた。
表1に、電極活物質の種別、粉砕時間(h)、Kr吸着による比表面積(m2/g)、単極放電容量(mAh/g)、理論容量に対する単極放電容量の割合である理論容量率(%)、キャパシタセルの抵抗(Ω)、1000サイクルの充放電での容量維持率(%)、高レート(60C)でのエネルギー密度(Wh/kg)をまとめて示す。図3は、実施例1〜5、比較例1,2のSEM写真である。表1、図3に示すように、ビフェニルジカルボン酸ジリチウム(Bph)の層状構造体は、図3(a)に示すように1次粒子が凝集して大きな塊を作っていた。この凝集により、活物質の比表面積が小さく(4.4m2/g)、 活物質と電解液との界面の面積が十分でないと考えられた。また、ナフタレンジカルボン酸ジリチウム(Naph)の層状構造体は、図3(d)に示すように、大きな結晶を作りやすく、活物質と電解液との界面比表面積が不足していると考えられた(比表面積は1.2m2/g)。また、粉砕を行った実施例1〜5では、結晶粒子のサイズが小さくなり、比表面積が向上することがわかった。また、層状構造体の粒子のc軸方向(平板面に平行な方向)に対して垂直な方向で粒子が粉砕されていると推察された(図1参照)。
Claims (10)
- 蓄電デバイス用の電極活物質であって、
2以上の芳香環が結合した結合多環構造及び2以上の芳香環が縮合した縮合多環構造のうち1以上を有する芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を含み、
前記結合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が10m2/g以上であり、
前記縮合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が4m2/g以上である、
電極活物質。 - 前記結合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が20m2/g以下であり、
前記縮合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が10m2/g以下である、請求項1に記載の電極活物質。 - 前記層状構造体は、c軸に対して垂直方向に粉砕されている、請求項1又は2に記載の電極活物質。
- 前記電極活物質は、理論容量に対する放電容量の割合である理論容量率(%)が85%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極活物質。
- 前記層状構造体は、式(1)〜(3)のうち1以上で表される構造を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極活物質。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極活物質を含む、蓄電デバイス用電極。
- 請求項6に記載の蓄電デバイス用電極である負極と、
正極活物質を含む正極と、
正極と負極との間に介在し、キャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えた蓄電デバイス。 - 前記蓄電デバイスは、内部抵抗が3.0Ω以下である、請求項7に記載の蓄電デバイス。
- 蓄電デバイス用の電極活物質の製造方法であって、
2以上の芳香環が結合した結合多環構造及び2以上の芳香環が縮合した縮合多環構造のうち1以上を有する芳香族ジカルボン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液から芳香族骨格を有するジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を作製する作製工程と、
前記作製した層状構造体を1時間以上12時間以下の範囲で粉砕する粉砕工程と、
を含む電極活物質の製造方法。 - 前記粉砕工程では、10時間以下の範囲で前記層状構造体を粉砕する、請求項9に記載の電極活物質の製造方法。
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