JP2019021810A - 電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法 - Google Patents

電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019021810A
JP2019021810A JP2017140116A JP2017140116A JP2019021810A JP 2019021810 A JP2019021810 A JP 2019021810A JP 2017140116 A JP2017140116 A JP 2017140116A JP 2017140116 A JP2017140116 A JP 2017140116A JP 2019021810 A JP2019021810 A JP 2019021810A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
active material
electrode active
layered structure
electrode
storage device
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017140116A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6958053B2 (ja
Inventor
由佳 小澤
Yuka Ozawa
由佳 小澤
信宏 荻原
Nobuhiro Ogiwara
信宏 荻原
等 熊谷
Hitoshi Kumagai
等 熊谷
長谷川 正樹
Masaki Hasegawa
正樹 長谷川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Central R&D Labs Inc
Priority to JP2017140116A priority Critical patent/JP6958053B2/ja
Publication of JP2019021810A publication Critical patent/JP2019021810A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6958053B2 publication Critical patent/JP6958053B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Electric Double-Layer Capacitors Or The Like (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Abstract

【課題】層状構造体を含む電極活物質の充放電特性をより向上する。【解決手段】蓄電デバイス用の電極活物質は、2以上の芳香環が結合した結合多環構造及び2以上の芳香環が縮合した縮合多環構造のうち1以上を有する芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を含み、結合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が10m2/g以上であり、縮合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が4m2/g以上である。【選択図】図2

Description

本明細書で開示する発明は、電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法に関する。
従来、蓄電デバイス用の電極活物質としては、2以上の芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含む有機骨格層と、カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を有する層状構造体を負極活物質に用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この活物質は、結晶面の間隔を好適な範囲にすることにより、アルカリ金属元素層の欠陥を抑制するなどして容量密度や充放電サイクルの安定性を高めることができる。
特開2013−225413号公報
しかしながら、上述の特許文献1の蓄電デバイスでは、充放電サイクル特性の安定性をより高めることができるものの、まだ十分でなく、例えば、充放電サイクルの容量維持率などをより向上することが求められていた。また、特許文献1の蓄電デバイスでは、負極抵抗が高いことがあり、この抵抗を低減することなども求められていた。このように、層状構造体を含む電極活物質において、充放電特性を高めることが求められていた。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、層状構造体を電極活物質に用いた電極の充放電特性をより高めることができる電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、芳香族ジカルボン酸金属塩の層状構造体を粉砕して、所定の比表面積範囲とすると、放電容量をより向上し、電極抵抗をより低減することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本明細書で開示する電極活物質は、
蓄電デバイス用の電極活物質であって、
2以上の芳香環が結合した結合多環構造及び2以上の芳香環が縮合した縮合多環構造のうち1以上を有する芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を含み、
前記結合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が10m2/g以上であり、
前記縮合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が4m2/g以上であるものである。
本明細書で開示する蓄電デバイス用電極は、上述した電極活物質を含むものである。また、本明細書で開示する蓄電デバイスは、上述した蓄電デバイス用電極である負極と、正極活物質を含む正極と、正極と負極との間に介在し、キャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体とを備えたものである。
本明細書で開示する電極活物質の製造方法は、
蓄電デバイス用の電極活物質の製造方法であって、
2以上の芳香環が結合した結合多環構造及び2以上の芳香環が縮合した縮合多環構造のうち1以上を有する芳香族ジカルボン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液から芳香族骨格を有するジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を作製する作製工程と、
前記作製した層状構造体を1時間以上12時間以下の範囲で粉砕する粉砕工程と、
を含むものである。
本明細書で開示する電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法では、層状構造体を電極活物質に用いたものにおいて、充放電特性をより向上することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推測される。例えば、従来の芳香族ジカルボン酸ジアルカリ金属塩の層状構造体では、反応抵抗が大きかった。これは、おそらく、比表面積が小さくLiインターカレーション反応の起こる反応面積が小さいためであると予想される。本明細書で開示する製造方法では、層状構造体を粉砕することにより、比表面積をより大きくすることができ、放電時におけるインターカレーション反応が起こる表面積を十分に増加させ、充放電時に活物質全体が十分に充放電できるようなるため活物質使用率が上がり、電極容量が増加するものと推察される。また、反応頻度が上がるため反応抵抗が低減されるものと推察される。更に、電極の抵抗が下がるため、この電極を用いた蓄電デバイスの抵抗も減少し、セルのレート特性や低温特性が向上する。また、低抵抗となることでサイクル繰り返し時の副反応が少なく、蓄電デバイスのサイクル寿命も向上するものと推察される。
層状構造体を粉砕することによる生じる構造変化の概念図。 蓄電デバイス20の一例を示す模式図。 実施例1、2、4、5及び比較例1、2のSEM写真。 比表面積(m2/g)に対する放電容量(mAh/g)の関係図。 ナイキストプロット及び比表面積とセル抵抗との関係図。 エネルギー密度とパワー密度及び比表面積との関係図。 実施例1〜3、比較例1の充放電サイクル図。 実施例1〜3、比較例1の活物質比表面積とサイクル維持率との関係図。
(電極活物質)
本明細書で開示する電極活物質は、蓄電デバイス用の電極活物質である。電極活物質は、キャリアである金属イオンを吸蔵放出するものである。キャリアである金属イオンは、アルカリ金属イオンであることが好ましく、LiイオンやNaイオン、Kイオンなどのうち1以上が挙げられる。ここでは、Liを主として説明する。この電極活物質は、芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を含む。芳香族ジカルボン酸アニオンは、2以上の芳香環が結合した結合多環構造及び2以上の芳香環が縮合した縮合多環構造のうち1以上を有する。結合多環構造としては、例えば、ビフェニル構造などが含まれる。また、縮合多環構造としては、例えば、ナフタレン構造などが含まれる。
この電極活物質は、結合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が10m2/g以上であるものとする。また、この電極活物質は、縮合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が4m2/g以上であるものとする。比表面積がこのような範囲では、抵抗が低減できることや、より理論容量に近い放電容量を示すことなど、充放電特性が飛躍的に向上する。これは、電極活物質の比表面積が大きいほど、インターカレーション反応が起こる活物質とイオン伝導媒体(電解液)との界面の面積が増え、反応頻度が上昇するためである。この電極活物質は、結合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が20m2/g以下であることが好ましい。また、この電極活物質は、縮合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が10m2/g以下であることが好ましい。比表面積がこのような範囲では、抵抗の増加を抑制することができるなど、充放電特性を向上することができる。比表面積がこれらの値を超えると、例えば、電極活物質がかさ高くなり、蓄電デバイスの電極としたときに、絶縁体である電極活物質と導電材との接触が悪くなり、電極内の直流抵抗が増加する。また、比表面積がこの範囲内であれば、電極のペースト作製時に、少ない導電材と結着材とで活物質を分散させることができ、直流抵抗の増加をより抑制することができる。
この、層状構造体は、c軸に対して垂直方向に粉砕されているものとしてもよい。図1は、層状構造体を粉砕することによる生じる構造変化の概念図である。図1に示すように、層状構造体を粉砕すると、ニードル状の結晶が短くなった状態で粒子が小さくなる。また、結晶構造から,c軸に対して垂直方向に粉砕が進行する。また、粉砕により、Li受入面の露出が増加する。これは、比表面積の増加に相当する。そして、Li受入面の増加に伴い、Li受入性が向上し,低抵抗で長寿命な電極材料となる。種々の結晶性芳香族ジカルボン酸ジリチウムにおいて、粉砕により同様の効果が予想される。層状構造体の粉砕は、特に限定されないが、乳鉢で自動粉砕するものとしてもよい。粉砕処理は、例えば、1時間以上で行うことが好ましく、2時間以上で行うことがより好ましく、4時間以上で行うものとしてもよい。粉砕時間がより長ければ、より大きな比表面積とすることができる。また、この粉砕処理は、12時間以下で行うことが好ましく、10時間以下で行うことが好ましく、8時間以下で行うものとしてもよい。粉砕時間がより短ければ、層状構造体が嵩高くなってしまうのを防止でき好ましい。
電極活物質は、理論容量に対する放電容量の割合である理論容量率(%)が85%以上であることが好ましい。電極活物質の比表面積がより大きければ、理論容量率をより高めることができ、好ましい。この理論容量率は、より高い方が好ましく、90%以上であるものとしてもよいし、92%以上であるものとしてもよい。なお、層状構造体がビフェニルジカルボン酸ジリチウムである場合は、理論容量が210mAh/gであり、層状構造体がナフタレンジカルボン酸ジリチウムである場合は、理論容量が220mAh/gである。
この層状構造体は、1又は2以上の芳香環構造が接続した有機骨格層を有するものとしてもよい。この層状構造体は、芳香族化合物のπ電子相互作用により層状に形成され、空間群P21/cに帰属される単斜晶型の結晶構造を有するものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。この層状構造体は、式(1)〜(3)のうち1以上で表される構造を有するものとしてもよい。但し、この式(1)〜(3)において、aは1以上5以下の整数であり、bは0以上3以下の整数であり、これらの芳香族化合物は、この構造中に置換基、ヘテロ原子を有してもよい。具体的には、芳香族化合物の水素の代わりに、ハロゲン、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、水酸基を置換基として持っていてもよいし、芳香族化合物の炭素の代わりに、窒素、硫黄、酸素が導入された構造であってもよい。より具体的には、この層状構造体は、式(4)、(5)に示す芳香族化合物としてもよい。なお、式(1)〜(5)において、Aは、アルカリ金属である。また、層状構造体は、異なるジカルボン酸アニオンの酸素4つとアルカリ金属元素とが4配位を形成する次式(6)の構造を備えているものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。但し、この式(6)において、Rは1又は2以上の芳香環構造を有し、複数あるRのうち2以上が同じであってもよいし、1以上が異なっていてもよい。また、Aはアルカリ金属である。このように、アルカリ金属元素によって有機骨格層が結合した構造を有することが好ましい。
この層状構造体において、有機骨格層は、例えば、ビフェニルなど2以上の芳香環が結合した結合多環化合物としてもよいし、ナフタレンやアントラセン、ピレンなど2以上の芳香環が縮合した縮合多環化合物としてもよい。この芳香環は、五員環や六員環、八員環としてもよく、六員環が好ましい。また、芳香環は、2以上5以下とするのが好ましい。芳香環が2以上では層状構造を形成しやすく、芳香環が5以下ではエネルギー密度をより高めることができる。この有機骨格層は、芳香環に2以上のカルボキシアニオンが結合した構造を有するものとしてもよい。有機骨格層は、ジカルボン酸アニオンのうちカルボン酸アニオンの一方と他方とが芳香環構造の対角位置に結合されている芳香族化合物を含むものとするのが好ましい。カルボン酸が結合されている対角位置とは、一方のカルボン酸の結合位置から他方のカルボン酸の結合位置までが最も遠い位置としてもよく、例えば芳香環構造がナフタレンであれば2,6位が挙げられる。
アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属は、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができるが、Liが好ましい。なお、蓄電デバイスのキャリアであり、充放電により層状構造体に吸蔵・放出される金属イオンは、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素と異なるものとしてもよいし、同じものとしてもよく、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができる。また、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素は、層状構造体の骨格を形成することから、充放電に伴うイオン移動には関与しないもの、すなわち、充放電時に吸蔵放出されないものと推察される。エネルギー貯蔵メカニズムにおいては、層状構造体の有機骨格層はレドックス(e-)サイトとして機能する一方、アルカリ金属元素層はキャリアである金属イオンの吸蔵サイト(アルカリ金属イオン吸蔵サイト)として機能するものと考えられる。この層状構造体は、例えば、4、4’−ビフェニルジカルボン酸アルカリ金属塩及び2、6−ナフタレンジカルボン酸アルカリ金属塩のうち1以上が好ましい。
(電極活物質の製造方法)
本開示の電極活物質の製造方法は、蓄電デバイス用の電極活物質の製造方法である。この製造方法は、作製工程と、粉砕工程とを含むものとしてもよい。なお、作製工程で用いる調製溶液を調製する溶液調製工程を含むものとしてもよい。
(作製工程)
この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとを溶解した溶液を調製し、この溶液から層状構造体を作製する。この溶液の溶媒は、特に限定されないが、水系溶媒としてもよいし、アルコールなどの有機系溶媒としてもよい。この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンの濃度が0.1mol/L以上である調製溶液を調製することが好ましい。また、この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンの濃度が5mol/L以下である調製溶液を調製することが好ましい。また、この工程では、ナフタレン、ビフェニル、ナフタレン骨格またはビフェニル骨格が拡張された有機骨格を有する芳香族ジカルボン酸アニオンを用いるものとしてもよい。更に、この工程では、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上のアルカリ金属カチオンを含む溶液を調製することが好ましい。調製した溶液を撹拌し、溶媒を除去して乾燥することにより、層状構造体の粉末を得ることができる。乾燥は、常圧で行ってもよいし、減圧状態で行ってもよい。乾燥温度は、70℃以上160℃以下の範囲が好ましい。
(粉砕工程)
この工程では、作製した層状構造体を粉砕処理する。粉砕処理は、例えば、自動乳鉢で行うものとしてもよい。また、粉砕時間は、1時間以上12時間以下の範囲とする。この粉砕時間は、2時間以上がより好ましく、4時間以上としてもよい。粉砕時間がより長ければ、より大きな比表面積とすることができる。また、この粉砕時間は、10時間以下がより好ましく、8時間以下としてもよい。粉砕時間がより短ければ、層状構造体が嵩高くなってしまうのを防止でき好ましい。また、粉砕条件としては、容積500mL〜1000mLの乳鉢に30g〜50gの層状構造体を入れて行うことが好ましい。なお、乳鉢は、アルミナ製、ジルコニア製などを用いることができる。
(蓄電デバイス用電極)
この電極は、上述した電極活物質を含むものである。この蓄電デバイス用電極は、対極の電位に応じて正極としてもよいし負極としてもよいが、電極活物質の電位がリチウム金属基準で1.5V以下であるため、負極とすることが好ましい。この蓄電デバイス用電極は、上述した電極活物質である層状構造体と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の電極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。この蓄電デバイス用電極において、上記電極活物質は、できるだけ多く含まれることが好ましく、例えば、電極合材中に60質量%以上95質量%以下の範囲で含まれるものとしてもよい。導電材は、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルアルコール(PVA)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどを用いることができる。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
(蓄電デバイス)
この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、リチウムイオン電池などとしてもよい。蓄電デバイスは、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、イオン伝導媒体とを備えている。正極は、キャリアイオンを吸蔵放出する正極活物質を含むものとしてもよい。負極は、キャリアである金属イオンを吸蔵放出する上述した層状構造体の電極活物質を含む蓄電デバイス用電極であるものとしてもよい。また、イオン伝導媒体は、正極と負極との間に介在しキャリアイオン(カチオン及びアニオン)を伝導するものである。
この蓄電デバイスにおいて、正極は、キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどに用いられている公知の正極を用いてもよい。正極は、例えば、正極活物質として炭素材料を含むものとしてもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極では、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着・脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入、脱離して充放電するものとしてもよい。
あるいは、正極は、一般的なリチウムイオン電池に用いられる正極としてもよい。この場合、正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMnc2(a+b+c=1)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV23などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV25などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、正極活物質は、リン酸鉄リチウムなどとしてもよい。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiV23などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素を含んでもよい趣旨である。
正極は、例えば上述した正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極に用いる導電材、結着材、溶剤、集電体は、例えば、蓄電デバイス用電極で例示したものなどを適宜用いることができる。
この蓄電デバイスにおいて、イオン伝導媒体は、例えば、支持塩(支持電解質)と有機溶媒とを含む非水系電解液としてもよい。支持塩としては、例えば、キャリアをリチウムイオンとした場合、公知のリチウム塩を含むものとしてもよい。このリチウム塩としては、例えば、LiPF6,LiBF4、LiClO4,LiAsF6,Li(CF3SO22N,LiN(C25SO22などが挙げられ、このうちLiPF6やLiBF4などが好ましい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩を溶解する濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。また、この非水電解液には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。有機溶媒としては、例えば、非プロトン性の有機溶媒を用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル等が挙げられる。環状カーボネートとしては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等がある。鎖状カーボネートとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等がある。環状エステルカーボネートとしては、例えばガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン等がある。環状エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等がある。鎖状エーテルとしては、例えばジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等がある。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。また、非水系電解液としては、そのほかにアセトニトリル、プロピルニトリルなどのニトリル系溶媒やイオン液体、ゲル電解質などを用いてもよい。
この蓄電デバイスは、正極と負極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、蓄電デバイスの使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
この蓄電デバイスは、内部抵抗が3.0Ω以下であることが好ましい。また、この内部抵抗は、より低いことが好ましく、2.5Ω以下であることがより好ましく、2.0Ω以下であることが更に好ましい。層状構造体を含む電極活物質は、粉砕されており、比表面積が良好な範囲にあるから、内部抵抗をより低減することができる。内部抵抗は、例えば、蓄電デバイスのインピーダンス測定を行い、ナイキストプロットの円弧より求めるものとする。インピーダンス測定は、20℃、周波数0.01〜10000Hz、電流振幅5mAの条件で行うものとする。
この蓄電デバイスの形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、蓄電デバイス20の一例を示す模式図である。この蓄電デバイス20は、カップ形状のセルケース21と、正極活物質を有しこのセルケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、セルケース21の開口部に配設されガスケット25を介してセルケース21を密封する封口板26と、を備えている。この蓄電デバイス20は、正極22と負極23との間の空間にイオン伝導媒体27が満たされている。また、この負極23は、芳香族ジカルボン酸金属塩の層状構造体を負極活物質として有する。
以上詳述した電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法では、層状構造体を電極活物質に用いたものにおいて、充放電特性をより向上することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推測される。例えば、従来の芳香族ジカルボン酸ジアルカリ金属塩の層状構造体では、反応抵抗が大きかった。これは、おそらく、比表面積が小さくLiインターカレーション反応の起こる反応面積が小さいためであると予想される。本明細書で開示する製造方法では、層状構造体を粉砕することにより、比表面積をより大きくすることができ、放電時におけるインターカレーション反応が起こる表面積を十分に増加させ、充放電時に活物質全体が十分に充放電できるようになるため活物質使用率が上がり、電極容量が増加するものと推察される。また、反応頻度が上がるため反応抵抗が低減されるものと推察される。更に、電極の抵抗が下がるため、この電極を用いた蓄電デバイスの抵抗も減少し、セルのレート特性や低温特性が向上する。また、低抵抗となることでサイクル繰り返し時の副反応が少なく、キャパシタセルのサイクル寿命も向上するものと推察される。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、電極活物質及び蓄電デバイスを具体的に実施した例を実施例として説明する。なお、本開示はこの実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
(結合多環構造を有する層状構造体の合成)
出発原料として4,4’−ビフェニルジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いた。まず、水酸化リチウム1水和物にメタノールを加え、撹拌した。水酸化リチウム1水和物を溶解したのち、4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウムを加え1時間撹拌した。撹拌後溶媒を除去し、真空下150℃で16時間乾燥することにより白色の粉末試料の4,4’−ビフェニルジカルボン酸(Bph粉末とも称する)を得た。得られたBph粉末に対して粉末X線回折測定を行った。測定は、放射線としてCuKα線(波長1.54051Å)を使用し、X線回折装置(リガク製RINT2200)を用いて行った。その結果、この粉末は、空間群P21/cに帰属される単斜晶を仮定したときの(001)、(111)、(102)、(112)ピークが明確に現れており、リチウム層と有機骨格層からなる層状構造を形成していると推察された。また、この粉末は、空間群P21/cに帰属される単斜晶であることから、4つの異なる芳香族ジカルボン酸分子の酸素とリチウムとが4配位を形成する構造を形成し、有機骨格の部分でπ電子共役雲による相互作用が働いているものと推察された。
次に、得られたBphを粉砕処理した。粉砕処理は、50gの上記Bph粉末を自動乳鉢(日陶科学社製自動乳鉢AMM−1000,乳鉢容積1000mL)を用いて所定時間行った。粉砕処理を0h、2h、7h、12h行ったものをそれぞれ比較例1、実施例1〜3の電極活物質とした。
(縮合多環構造を有する層状構造体の合成)
出発原料として2、6−ナフタレンジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いた。まず、水酸化リチウム1水和物にメタノールを加え撹拌した。水酸化リチウム1水和物を溶解したのち、2、6−ナフタレンジカルボン酸を加え1時間撹拌した。撹拌後溶媒を除去し、真空下150℃で16時間乾燥することにより、白色の粉末試料の2、6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウム(Naph粉末とも称する)を得た。得られたNaph粉末に対して粉末X線回折測定を行った結果、Bph粉末と同様の結果が得られた。
次に、得られたNaph粉末を粉砕処理した。粉砕処理は、30gの上記Naph粉末を自動乳鉢を用いて所定時間行った。粉砕処理を0h、2h、7h行ったものをそれぞれ比較例2、実施例4、5の電極活物質とした。
(電極の作製)
電極活物質と、導電材としてのカーボンブラックと、水系バインダ(PVA)と、ゴム系バインダ(SBR)とを質量比で85:15:3:2の比率で混合し、分散剤として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に単位面積当たりの電極活物質が3mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2cm2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を準備した。
(単極充放電セルの作製)
電極活物質を含む電極を評価する単極充放電セルの構成としては、上記作製した電極と、Li金属箔を対極とし、これらの間にセパレータを挟んで単極充放電セルを作製した。非水系電解液として、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で30:40:30の割合で混合した非水溶媒に、支持塩のLiPF6を1.0mol/Lになるように添加したものを用いた。セパレータは、Celgard2500(PP,25μm)とした。
(キャパシタセルの作製)
正極は、活物質としての活性炭(クラレケミカル製YP−50F)と、導電材としてのカーボンブラックと、水系バインダ(PVA)とを質量比で83:10.7:4.0:2.3の比率で混合し、分散剤として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚のAl箔集電体に単位面積当たりの電極活物質が1.5mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2cm2の面積に打ち抜いて円盤状の正極とした。負極は、上記単極充放電セルの電極を用い、プレドープ処理したものを用いた。電解液及びセパレータは、2極式評価セルと同じものを用いた。
キャパシタセルにおけるプレドープ処理は、以下のように行った。まず、単極充放電セルと同じセルを組み、一定時間放電させることで4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム電極のリチウム吸蔵量がSOC75%となるようにした。プレドープした負極は、不活性雰囲気下のグローブボックス内でセルを解体することで取り出して洗浄、乾燥し、キャパシタセルの構成となるようにセルを作製した。
(SEM観察)
作製した電極活物質を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。SEM観察は、走査型電子顕微鏡(日本FEI社製Quanta200FEG)を用い、1000〜50000倍の条件で行った。
(電極活物質の比表面積の評価)
作製した電極活物質の比表面積を測定した。比表面積の測定は、日本ベル社製Belsorp−Max−12−N−T−HLを用い、液体窒素温度(77K)におけるKr吸着測定を行い、Kr吸着等温線からBET法により比表面積を算出した。
(単極充放電の評価)
単極充放電は、単極充放電セルを用い、電極に対して1/10C相当となる電流密度で充放電を行った。
(蓄電デバイス:キャパシタセルの評価)
キャパシタセルは、以下の条件で評価した。キャパシタセルを電流密度1C相当の充電と、電流密度1C、2C、4C、10C、20C、40C、60C相当の放電とを5サイクルずつ繰り返すことで、放電時のエネルギー密度、パワー密度を測定した。充放電後には毎回10分間の休止時間を設けた。測定温度は、20℃、0℃、−20℃とした。セルの内部抵抗は、インピーダンス測定を行い評価した。インピーダンス測定は、キャパシタセルを用いて、ACインピーダンスアナライザー(Agilent4294A)により、20℃、周波数0.01〜10000Hz、電流振幅5mAの条件で、交流インピーダンス測定を行い、ナイキストプロットの円弧より内部抵抗を求めた。キャパシタセルの評価として、耐久性能評価を行った。耐久性能評価は、10C相当の電流密度で1000サイクルの連続充放電試験を行い、その容量維持率の推移を調べた。充放電後には毎回10分間の休止を設けた。
(結果と考察)
表1に、電極活物質の種別、粉砕時間(h)、Kr吸着による比表面積(m2/g)、単極放電容量(mAh/g)、理論容量に対する単極放電容量の割合である理論容量率(%)、キャパシタセルの抵抗(Ω)、1000サイクルの充放電での容量維持率(%)、高レート(60C)でのエネルギー密度(Wh/kg)をまとめて示す。図3は、実施例1〜5、比較例1,2のSEM写真である。表1、図3に示すように、ビフェニルジカルボン酸ジリチウム(Bph)の層状構造体は、図3(a)に示すように1次粒子が凝集して大きな塊を作っていた。この凝集により、活物質の比表面積が小さく(4.4m2/g)、 活物質と電解液との界面の面積が十分でないと考えられた。また、ナフタレンジカルボン酸ジリチウム(Naph)の層状構造体は、図3(d)に示すように、大きな結晶を作りやすく、活物質と電解液との界面比表面積が不足していると考えられた(比表面積は1.2m2/g)。また、粉砕を行った実施例1〜5では、結晶粒子のサイズが小さくなり、比表面積が向上することがわかった。また、層状構造体の粒子のc軸方向(平板面に平行な方向)に対して垂直な方向で粒子が粉砕されていると推察された(図1参照)。
図4は、実施例1〜5、比較例1,2の比表面積(m2/g)に対する単極充放電セルの放電容量(mAh/g)の関係図である。表1、図4に示すように、ビフェニルジカルボン酸ジリチウム(Bph)の層状構造体は、粉砕して比表面積を10m2/g以上にすることにより粉砕前(比較例1)と比較して放電容量が30mAh/g程度増加した。ナフタレンジカルボン酸ジリチウム(Naph)の層状構造体は、粉砕して比表面積を4m2/g以上にすることにより放電容量が15〜30mAh/g程度増加した。粉砕により放電容量が増加したのは、活物質と電解液の界面が増加したことにより、電極活物質の利用率が増加したためであると推察された。Bphの理論容量は、210mAh/gであり、Naphの理論容量は220mAh/gである。表1に示すように、単極放電量から求めた理論容量率は、実施例1〜5では、85%以上を示し、粉砕による結晶構造の破壊は少なく、比表面積の増加によって理論容量に近い放電容量を示すことがわかった。図3に示した粉砕前後のSEM画像からは、粉砕により電極活物質が細かくなることで比表面積が大きくなることがわかった。
図5は、キャパシタセルの抵抗に関する図であり、図5(a)が実施例1〜3、比較例1のナイキストプロット、図5(b)が比表面積とセル抵抗との関係図、図5(c)が実施例1、比較例1のナイキストプロットの詳細、図5(d)が実施例3、比較例1のナイキストプロットの詳細である。キャパシタセルの抵抗値は、図5におけるインピーダンス測定結果のナイキストプロットのうち、円弧の大きさで求めることができる。図5(b)に示すように、電極活物質の比表面積が10〜20m2/gのキャパシタセルの抵抗が最も小さくなることがわかった。キャパシタの正極にはいずれも同じ活性炭電極を用いたため、各試料で抵抗値が異なるのは、負極抵抗が異なるためである。キャパシタセルの抵抗成分は電子伝導のしやすさに関わる「直流抵抗」と電極界面で起こるインターカレーション反応のしやすさに関わる「反応抵抗」とに分類できる。インピーダンス測定から得られるナイキストプロットにおいて、高周波数側の円弧として現れるのが「直流抵抗」であり、低周波数側の円弧として現れるのが「反応抵抗」である(図5(c)(d)参照)。比較例1と実施例1とを比べると、粉砕することにより反応抵抗が大幅に減少することがわかった。これはインターカレーション反応が起こる界面が増加したことにより反応の頻度因子が上昇し、反応抵抗が小さくなったためであると推察された。一方、比較例1と実施例3とを比較すると、反応抵抗は減少しているものの直流抵抗が増加した。これは、粉砕することにより、電極活物質のかさが大きくなり、同じ導電材の量では活物質全体の電子伝導が保てなくなったためであると推察された。このように、活物質の比表面積が大きくなると電極の反応抵抗は減少するが、活物質が嵩高くなり直流抵抗が増加する傾向を示した。このような結果より、比表面積は反応抵抗と直流抵抗のバランスが取れる範囲とすることが好ましく、Bphでは、10〜20m2/gの範囲が好ましく、Naphでは、4〜10m2/gの範囲が好ましいことがわかった。
図6は、エネルギー密度とパワー密度及び比表面積との関係図であり、図6(a)が実施例1〜3、比較例1の20℃でのラゴンプロット(エネルギー密度に対するパワー密度の関係図)、図6(b)が実施例1〜3、比較例1の0℃でのラゴンプロット、図6(c)が実施例1〜3、比較例1の−20℃でのラゴンプロット、図6(d)が実施例1〜3、比較例1の各温度での比表面積に対する60Cにおけるエネルギー密度を示す図である。60Cは1分間の急速放電であるため、このときのエネルギー密度が高いほど出力特性が高いといえる。また、低温におけるエネルギー密度が大きいほど低温特性が高いといえる。図6に示すように、比較例1に対して、負極活物質の比表面積を増加させた実施例1、2では急速放電や低温での放電でも高いエネルギー密度を示した。一方、実施例3では比較例1よりも低いエネルギー密度を示した。セルの出力特性は、セル抵抗が小さいことと密接に関係するため、セル抵抗の傾向(図5)と同様の結果となったと考えられた。
図7は、実施例1〜3、比較例1の充放電サイクル図である。図8は、実施例1〜3、比較例1の活物質比表面積とサイクル維持率との関係図である。キャパシタセルの容量維持率は、実施例1〜3でより良好になることがわかり、実施例1、2が最も良かった。図5に示すように実施例1、2ではキャパシタセルの抵抗が少なく過電圧による副反応が少ないため、容量維持率の低下抑制につながっていると考えられた。
以上の結果より、層状構造体を粉砕することにより、放電容量が増加し、負極の抵抗が低減し、これを用いたキャパシタセルの出力特性、低温特性が向上し、更にキャパシタセルのサイクル寿命が向上することがわかった。Bphの層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が10m2/g以上であることが好ましく、抵抗低減の観点からは20m2/g以下であることが好ましいことがわかった。また、Naphの層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が4m2/g以上であることが好ましく、10m2/g以下であることが好ましいことがわかった。また、実施例2、3では内部抵抗を3.0Ω以下とより低減することができた。
本発明は、電池産業に利用可能である。
20 蓄電デバイス、21 セルケース、22 正極、23 負極、24 セパレータ、25 ガスケット、26 封口板、27 イオン伝導媒体。

Claims (10)

  1. 蓄電デバイス用の電極活物質であって、
    2以上の芳香環が結合した結合多環構造及び2以上の芳香環が縮合した縮合多環構造のうち1以上を有する芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を含み、
    前記結合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が10m2/g以上であり、
    前記縮合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が4m2/g以上である、
    電極活物質。
  2. 前記結合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が20m2/g以下であり、
    前記縮合多環構造を有する層状構造体では、Kr吸着により測定された比表面積が10m2/g以下である、請求項1に記載の電極活物質。
  3. 前記層状構造体は、c軸に対して垂直方向に粉砕されている、請求項1又は2に記載の電極活物質。
  4. 前記電極活物質は、理論容量に対する放電容量の割合である理論容量率(%)が85%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極活物質。
  5. 前記層状構造体は、式(1)〜(3)のうち1以上で表される構造を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極活物質。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極活物質を含む、蓄電デバイス用電極。
  7. 請求項6に記載の蓄電デバイス用電極である負極と、
    正極活物質を含む正極と、
    正極と負極との間に介在し、キャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
    を備えた蓄電デバイス。
  8. 前記蓄電デバイスは、内部抵抗が3.0Ω以下である、請求項7に記載の蓄電デバイス。
  9. 蓄電デバイス用の電極活物質の製造方法であって、
    2以上の芳香環が結合した結合多環構造及び2以上の芳香環が縮合した縮合多環構造のうち1以上を有する芳香族ジカルボン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液から芳香族骨格を有するジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を作製する作製工程と、
    前記作製した層状構造体を1時間以上12時間以下の範囲で粉砕する粉砕工程と、
    を含む電極活物質の製造方法。
  10. 前記粉砕工程では、10時間以下の範囲で前記層状構造体を粉砕する、請求項9に記載の電極活物質の製造方法。
JP2017140116A 2017-07-19 2017-07-19 電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法 Active JP6958053B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017140116A JP6958053B2 (ja) 2017-07-19 2017-07-19 電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017140116A JP6958053B2 (ja) 2017-07-19 2017-07-19 電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019021810A true JP2019021810A (ja) 2019-02-07
JP6958053B2 JP6958053B2 (ja) 2021-11-02

Family

ID=65354467

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017140116A Active JP6958053B2 (ja) 2017-07-19 2017-07-19 電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6958053B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020161770A (ja) * 2019-03-28 2020-10-01 株式会社豊田中央研究所 電極用組成物、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイス
CN112086299A (zh) * 2020-09-30 2020-12-15 华南理工大学 一种超级电容器柔性薄膜电极材料及其制备方法
JP2021028957A (ja) * 2019-08-09 2021-02-25 株式会社豊田中央研究所 蓄電デバイス及び電極

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012053553A1 (ja) * 2010-10-21 2012-04-26 株式会社豊田中央研究所 非水系二次電池用電極、それを備えた非水系二次電池及び組電池
JP2012221754A (ja) * 2011-04-08 2012-11-12 Toyota Central R&D Labs Inc リチウム二次電池用負極及びリチウム二次電池
JP2013225413A (ja) * 2012-04-20 2013-10-31 Toyota Central R&D Labs Inc 電極活物質、非水系二次電池用電極及び非水系二次電池
JP2017022186A (ja) * 2015-07-07 2017-01-26 株式会社豊田中央研究所 蓄電デバイス

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012053553A1 (ja) * 2010-10-21 2012-04-26 株式会社豊田中央研究所 非水系二次電池用電極、それを備えた非水系二次電池及び組電池
JP2012221754A (ja) * 2011-04-08 2012-11-12 Toyota Central R&D Labs Inc リチウム二次電池用負極及びリチウム二次電池
JP2013225413A (ja) * 2012-04-20 2013-10-31 Toyota Central R&D Labs Inc 電極活物質、非水系二次電池用電極及び非水系二次電池
JP2017022186A (ja) * 2015-07-07 2017-01-26 株式会社豊田中央研究所 蓄電デバイス

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020161770A (ja) * 2019-03-28 2020-10-01 株式会社豊田中央研究所 電極用組成物、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイス
JP7207077B2 (ja) 2019-03-28 2023-01-18 株式会社豊田中央研究所 電極用組成物、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイス
JP2021028957A (ja) * 2019-08-09 2021-02-25 株式会社豊田中央研究所 蓄電デバイス及び電極
CN112086299A (zh) * 2020-09-30 2020-12-15 华南理工大学 一种超级电容器柔性薄膜电极材料及其制备方法
CN112086299B (zh) * 2020-09-30 2022-04-22 华南理工大学 一种超级电容器柔性薄膜电极材料及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6958053B2 (ja) 2021-11-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6889582B2 (ja) 電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法
JP6361599B2 (ja) 蓄電デバイス
JP5897971B2 (ja) 電極活物質、非水系二次電池用電極、非水系二次電池及び非水系二次電池用電極の製造方法
JP2018026497A (ja) 蓄電デバイスの製造方法および蓄電デバイスのプレドープ方法
JP6958053B2 (ja) 電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法
JP7243377B2 (ja) 評価方法、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイス
JP7152965B2 (ja) 蓄電デバイス
JP6954249B2 (ja) 電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法
JP2021028957A (ja) 蓄電デバイス及び電極
JP5942716B2 (ja) リチウム内包炭素化合物の製法、リチウム内包炭素化合物粉末、負極活物質及びリチウムイオン二次電池
JP7147719B2 (ja) リチウムイオンキャパシタ
JP7181709B2 (ja) 蓄電デバイス
JP6831180B2 (ja) 蓄電デバイス及びその製造方法
JP2020149941A (ja) 蓄電デバイス
JP2020150213A (ja) 蓄電デバイス
JP7180499B2 (ja) 電極用組成物、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極用組成物の製造方法
JP7311973B2 (ja) 蓄電デバイス
JP2020009846A (ja) 蓄電システム及び蓄電デバイスの制御方法
JP2020107774A (ja) 蓄電システム及び蓄電デバイスの制御方法
JP6990159B2 (ja) 蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び蓄電デバイス用電極の製造方法
JP7263860B2 (ja) 蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイス
JP7472926B2 (ja) 電極、蓄電デバイス、電極の製造方法
JP7147725B2 (ja) リチウムイオンキャパシタ
JP2018098439A (ja) 蓄電デバイス
JP6922209B2 (ja) 蓄電デバイス

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200424

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210216

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210316

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210415

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210907

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210920

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6958053

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150