JP2020161770A - 電極用組成物、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイス - Google Patents
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Abstract
Description
蓄電デバイスの電極に用いられる電極用組成物であって、
芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体の電極活物質と、導電材と、前記電極活物質と前記導電材との100質量部に対して7質量部以上のポリエチレンオキサイド及びスチレンブタジエンゴムを含む結着材と、を含有したものである。
本開示の電極組成物は、電極活物質と、導電材と、結着材と、を含有する。また、この電極組成物は、溶媒を含有したペーストや坏土としてもよい。電極活物質は、芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体である。この層状構造体は、2以上の芳香環構造が接続した有機骨格層を有するものとしてもよい。この層状構造体は、芳香族化合物のπ電子相互作用により層状に形成され、空間群P21/cに帰属される単斜晶型の結晶構造を有するものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。この層状構造体は、式(1)〜(3)のうち1以上で表される構造を有するものとしてもよい。但し、この式(1)〜(3)において、aは2以上5以下の整数であり、bは0以上3以下の整数であり、これらの芳香族化合物は、この構造中に置換基、ヘテロ原子を有してもよい。具体的には、芳香族化合物の水素の代わりに、ハロゲン、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、水酸基を置換基として持っていてもよいし、芳香族化合物の炭素の代わりに、窒素、硫黄、酸素が導入された構造であってもよい。より具体的には、この層状構造体は、式(4)〜(5)に示す芳香族化合物としてもよい。なお、式(1)〜(5)において、Aはアルカリ金属である。また、層状構造体は、異なるジカルボン酸アニオンの酸素4つとアルカリ金属元素とが4配位を形成する次式(6)の構造を備えているものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。但し、この式(6)において、Rは2以上の芳香環構造を有し、複数あるRのうち2以上が同じであってもよいし、1以上が異なっていてもよい。また、Aはアルカリ金属である。このように、アルカリ金属元素によって有機骨格層が結合した構造を有することが好ましい。
本開示の蓄電デバイス用電極は、電極活物質としての上述した層状構造体と、結着材と、導電材とを含む電極組成物を電極合材とし、集電体に形成されているものとしてもよい。集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。このうち、集電体は、アルミニウム金属とすることがより好ましい。即ち、層状構造体は、アルミニウム金属の集電体に形成されていることが好ましい。アルミニウムは、豊富に存在し、耐食性に優れるからである。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
本開示の蓄電デバイスは、正極と、負極と、イオン伝導媒体とを備えている。この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、リチウムイオン電池などとしてもよい。この負極は、上述した蓄電デバイス用電極としてもよい。電極活物質としての層状構造体は、キャリアであるアルカリ金属イオンを吸蔵放出するものである。キャリアのアルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンなどが挙げられ、このうちリチウムイオンが好ましい。以下、キャリアをリチウムイオンとする蓄電デバイスについて主として説明する。
(噴霧乾燥法での4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムの層状構造体の合成)
スプレードライ法により層状構造体を作製した。4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムの合成には、出発原料として4,4’−ビフェニルジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いた。0.44mol/Lとなるように水に水酸化リチウムを加え撹拌し、水溶液を調製した。そして、4,4’−ビフェニルジカルボン酸のモル数A(mol)に対する水酸化リチウムのモル数B(mol)であるモル比B/Aが2.2となるように、すなわち、4,4’−ビフェニルジカルボン酸が0.20mol/Lとなるように水溶液を調製した。調製した水溶液を用いてスプレードライヤー(Mini Spray Dryer B−290、日本ビュッヒ製)を用いて噴霧乾燥させ、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムを析出させた。用いたスプレードライヤーのノズル直径は1.4mm、溶液の噴霧量は0.4L/時間、乾燥温度は150℃で行い、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムを合成した。
上記手法で作製した4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウムを79質量%、粒子状炭素導電材としてカーボンブラック(東海カーボン、TB5500)を14質量%、水溶性ポリマーであるポリビニルアルコール(ゴウセネックス,T−330,日本合成化学)を2.8質量%、スチレンブタジエン共重合体(SBR:日本ゼオン、BM−400B)を4.2質量%を混合し、分散媒として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に単位面積当たりの4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム活物質が3mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2cm2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を準備した。
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で30:40:30の割合で混合した非水溶媒に、支持電解質の六フッ化リン酸リチウムを1.0mol/Lになるように添加して非水電解液を作製した。上記の手法にて作製した4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚さ300μm)を対極として、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東レ東燃製)を挟んで二極式評価セルを作製した。
スプレードライヤーにて4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムを合成した後に、120℃で真空乾燥を行った以外は,参考例1と同様の処理を行ったものを参考例2とした。4,4’−ビフェニルジカルボン酸に対する水酸化リチウムのモル比を2.5として水溶液を調製し,スプレードライヤーにて合成した以外は,参考例1と同様の処理を行ったものを参考例3とした。また、スプレードライヤーにて4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウムを合成した後に、120℃で真空乾燥を行った以外は参考例3と同様の処理を行ったものを参考例4とした。
溶液混合法により層状構造体を作製した。出発原料として4,4’−ビフェニルジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いて、水酸化リチウム1水和物(0.556g)にメタノール(100mL)を加え撹拌した後に4,4’−ビフェニルジカルボン酸1.0gを加え、1時間撹拌した。その後、撹拌後溶媒を除去し、真空下150℃で16時間乾燥することにより、白色の粉末試料の4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウムを得た。これを用いた以外は、参考例1と同様の処理を行ったものを参考例5とした。
参考例1〜5の電極のX線回折測定を行った。測定は、放射線としてCuKα線(波長1.54051Å)を使用し、X線回折装置(リガク製UltimaIV)を用いて行った。また、測定は、X線の単色化にはグラファイトの単結晶モノクロメーターを用い、印加電圧を40kV、電流30mAに設定し、5°/分の走査速度で、電極活物質については2θ=5°〜60°の角度範囲で行い、電極については2θ=5°〜35°の角度範囲で行った。
上記作製した二極式評価セルを20℃の温度環境下、0.1mAで0.5Vまで還元した容量を放電容量とした。また、その後0.1mAで1.5Vまで酸化した容量を充電容量とした。また、得られた充放電カーブを用い、電位差に対して充放電カーブの微分値を算出し微分曲線を得た。また、この微分曲線にある2つの異なる内部抵抗性微分カーブのピーク差から充放電分極を算出し、印加電流を考慮してIV抵抗を算出した。なお、IV抵抗は、2サイクル目の充放電カーブを用いた。
表1に参考例1〜5の製造方法、電極のピーク強度比とIV抵抗値とをまとめて示した。また、図3は、参考例1〜5の電極のXRD測定結果である。図3に示すように、スプレードライ法により作製した電極活物質を含む参考例1〜4の電極においては、従来の溶液混合法と同じ2θ位置にピークが出現した。ピーク強度においてはスプレードライ法により作製した電極において、n00面に相当するピーク強度が大きくなる傾向を示した。これは電極内部に存在する活物質の小さな剥片が特異的な配向をしていることを示す。特に、参考例1〜4の電極では、X線回折測定において(300)のピーク強度が(111)や(011)のピーク強度の2倍以上を示し、また、(100)のピーク強度が(111)や(011)のピーク強度の5倍以上を示すことがわかった。具体的には、ピーク強度比P(300)/P(111)が2.0以上、P(300)/P(011)が2.0以上、P(100)/P(111)が6.0以上、P(100)/P(011)が5.0以上、及びP(100)/P(300)が1.5以上を示した。このピーク強度比は、いずれか1以上を満たせば、剥片状の配向した活物質であると推定できるものと推察された。また、表1に示すように、スプレードライ法で合成した層状構造体により作製した電極では、溶液混合法に比してIV抵抗がより低減することがわかった。また、上記ピーク強度比を満たせば、層状構造体がスプレードライ法で作製されたものであると特定できることがわかった。
スプレードライ法で作製した4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム(SD−Bph)を80質量部、導電材としてカーボンブラック(東海カーボン、TB5500(直径約50nm))を20質量部、結着材としてのカルボキシメチルセルロース(CMC:ダイセルファインケム、CMCダイセル1120)を3.0質量部、ポリエチレンオキサイド(PEO:分子量200万、ガラス転移温度−65℃)を2.0質量部、スチレンブタジエン共重合体(SBR:JSR製TRD2001、ガラス転移温度−5℃)を5.0質量部となるように秤量して混合し、分散媒として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔の集電体に単位面積当たりの4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム活物質が2.5mg/cm2となるように均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、10cm2の面積に打ち抜いて電極とした。
上記作製した電極を実験例1とした。また、CMC、PEO及びSBRの配合比を表2に示したものとしたものを適宜、実験例2〜15とした。
作製した電極の柔軟性を表化した。柔軟性評価は、JIS−K5600−5−1「塗料一般試験方法第5部:塗膜の機械的性質第1節:耐屈曲性」に基づいて、直径10mmの金属棒に、作製した電極を巻き付け、割れの発生の有無を評価した。割れの生じなかったものを「○」、割れが生じたものを「×」とした。
表2に実験例1〜15の添加剤の種別、電極材料の配合比(質量部)、柔軟性の評価結果をまとめた。図4は、実験例1〜15の結着剤の配合比と柔軟性の評価結果である。図4に示すように、ポリエチレンオキサイド(PEO)の配合量とスチレンブタジエンゴム(SBR)の配合量との和が、活物質及び導電材の100質量部に対して7質量部以上とすると、電極に柔軟性が付与され、割れなどを生じなくなることがわかった。この配合比は、PEO、SBR共に、活物質及び導電材の100質量部に対して2〜5質量部の範囲が好ましいことがわかった。一般的に、微粉末を用いる際は、溶媒を加えてペースト状にする際に、粘度を下げるために溶媒を増やし固形分濃度を下げることがある。この場合に、乾燥時の収縮が大きくなり内部応力が大きくなるため、塗膜が脆くなる傾向にあり、割れなどが生じやすい。特に、噴霧乾燥したビフェニル構造を有する層状構造体は、剥片の微粒子であり、PEO及びSBRを活物質及び導電材の100質量部に対して7質量部以上として電極を作製すると、それにより得られる柔軟性の効果が大きいと推察された。
Claims (8)
- 蓄電デバイスの電極に用いられる電極用組成物であって、
芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体の電極活物質と、導電材と、前記電極活物質と前記導電材との100質量部に対して7質量部以上のポリエチレンオキサイド及びスチレンブタジエンゴムを含む結着材と、を含有した、電極用組成物。 - 前記電極活物質と前記導電材との100質量部に対して10質量部以下の範囲で前記結着材を含有する、請求項1に記載の電極用組成物。
- 前記電極活物質と前記導電材との100質量部に対して1.5質量部以上6.0質量部以下の範囲のカルボキシメチルセルロースを更に含む、請求項1又は2に記載の電極用組成物。
- 前記結着材は、前記ポリエチレンオキサイドを前記電極活物質と前記導電材との100質量部に対して2質量部以上5質量部以下の範囲で含み、前記スチレンブタジエンゴムを前記電極活物質と前記導電材との100質量部に対して2質量部以上5質量部以下の範囲で含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極用組成物。
- 前記電極活物質は、式(1)〜(3)のうち1以上で表される構造を有する前記層状構造体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極用組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極用組成物が集電体上に形成された、蓄電デバイス用電極。
- 下記(1)〜(5)のうち1以上を満たす、請求項6に記載の蓄電デバイス用電極。
(1)蓄電デバイス用電極をX線回折測定したときの(111)のピーク強度に対する(300)のピーク強度比P(300)/P(111)が2.0以上を示す。
(2)前記X線回折測定での(011)のピーク強度に対する(300)のピーク強度比P(300)/P(011)が2.0以上を示す。
(3)前記X線回折測定での(111)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(111)が6.0以上を示す。
(4)前記X線回折測定での(011)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(011)が5.0以上を示す。
(5)前記X線回折測定での(300)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(300)が1.5以上を示す。 - 請求項5又は6に記載の蓄電デバイス用電極を備えた、蓄電デバイス。
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