本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を有し、吸収体と、前記幅方向に延出する一対のウィング部と、を備える吸収性物品であって、前記ウィング部は前記厚さ方向の非肌側面に粘着部を有し、前記幅方向における前記吸収体の両側部のうち、前記長手方向における前記粘着部の後側の端よりも後側に、一対の低剛性部が設けられるとともに、各前記低剛性部の前記長手方向の両側に前記低剛性部よりも剛性の高い第1の高剛性部が設けられ、前記幅方向における前記一対の低剛性部間に、前記低剛性部よりも剛性の高い第2の高剛性部が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、一対の低剛性部により、長手方向の中央領域に対して後方領域が立ち上がり易く、着用者の股間部から臀部にかけてフィットし易い。また、着用者の脚の挟み込み力等により、吸収体の長手方向の中央領域(ウィング部が設けられた長手方向の位置)では、幅方向の側部が立ち上がり易い。その側部の立ち上がりが吸収体の後方領域に伝わってしまうことを一対の低剛性部により抑制でき、吸収性物品の後方領域は着用者の臀部に沿った面形状に変形する。また、第2の高剛性部により、吸収性物品は折れ難くなり、扱い易くなる。
かかる吸収性物品であって、前記吸収体の前記両側部のうち、前記長手方向における前記粘着部の前側の端よりも前側に、一対の第2の低剛性部が設けられるとともに、各前記第2の低剛性部の前記長手方向の両側に前記第2の低剛性部よりも剛性の高い第3の高剛性部が設けられ、前記幅方向における前記一対の第2の低剛性部間に、前記第2の低剛性部よりも剛性の高い第4の高剛性部が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、一対の第2の低剛性部により、長手方向の中央領域に対して前方領域が立ち上がり易く、着用者の下腹部から股間部にかけてフィットし易い。また、吸収体の長手方向の中央領域における幅方向の側部の立ち上がりが前方領域に伝わってしまうことを一対の第2の低剛性部により抑制でき、吸収性物品の前方領域は着用者の下腹部に沿った面形状に変形する。また、第4の高剛性部により、吸収性物品は折れ難くなり、扱い易くなる。
かかる吸収性物品であって、前記幅方向における前記一対の低剛性部間の長さと、前記幅方向における前記一対の第2の低剛性部間の長さとが、異なることを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、吸収体の幅方向の側部の立ち上がり具合を前方領域と後方領域とで個別に調整できる。
かかる吸収性物品であって、前記幅方向における前記一対の低剛性部間の長さの方が、前記幅方向における前記一対の第2の低剛性部間の長さに比べて短いことを特徴とする吸収性物品である。
このような吸収性物品によれば、吸収体の後方領域では、幅方向の側部の立ち上がりがより確実に抑えられる。よって、吸収性物品の後方領域は、肉が張り出ている着用者の臀部に対して面状に変形し、着用者の臀部に適した形状に変形する。一方、吸収体の前方領域では、幅方向の側部の立ち上がりの抑制が弱くなる。よって、吸収性物品の前方領域は、着用者の恥骨付近の膨らみを包み込むように変形し、着用者の下腹部に適した形状に変形する。
かかる吸収性物品であって、前記一対のウィング部は、前記吸収性物品の本体部から前記幅方向に延出し、前記本体部は前記厚さ方向の非肌側面に別の粘着部を有し、前記幅方向において、前記第2の低剛性部の内側の端の位置は、前記別の粘着部の外側の端の位置よりも外側に位置することを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、吸収体の前方領域では、幅方向の側部の立ち上がりの抑制が弱くなる。よって、吸収性物品の前方領域は、着用者の恥骨付近の膨らみを包み込むように変形し、着用者の下腹部に適した形状に変形する。
かかる吸収性物品であって、前記一対のウィング部は、前記吸収性物品の本体部から前記幅方向に延出し、前記本体部は前記厚さ方向の非肌側面に別の粘着部を有し、前記幅方向において、前記低剛性部の内側の端の位置は、前記別の粘着部の外側の端の位置よりも内側に位置することを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、吸収体の後方領域では、幅方向の側部の立ち上がりがより確実に抑えられる。よって、吸収性物品の後方領域は、肉が張り出ている着用者の臀部に対して面状に変形し、着用者の臀部に適した形状に変形する。
かかる吸収性物品であって、前記吸収体は、液体吸収性繊維と、前記液体吸収性繊維よりも前記厚さ方向の肌側に上層シートと、前記液体吸収性繊維よりも前記厚さ方向の非肌側に下層シートとを有し、前記低剛性部では、前記液体吸収性繊維、前記上層シート、及び前記下層シートが存在しないことを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、低剛性部の剛性がより低くなる。そのため、長手方向の中央領域に対して後方領域がより立ち上がり易くなる。また、吸収体の長手方向の中央領域における幅方向の側部の立ち上がりが後方領域に伝わってしまうことをより確実に抑制できる。
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品は、包装状態において、前記幅方向に長い折り位置にて折られており、前記厚さ方向の平面視で、前記低剛性部の少なくとも一部と前記折り位置とが重なっていることを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、長手方向の中央領域に対して後方領域がより立ち上がり易くなる。また、着用者の股間部と臀部の境界部に一対の低剛性部が位置し易く、その境界部にて吸収体の変形を切り換えられる。よって、着用者の臀部に当接する吸収性物品の部位において、幅方向の側部が立ち上がってしまうことを抑制できる。
かかる吸収性物品であって、前記吸収体は液体吸収性繊維を有し、前記吸収体には、前記厚さ方向に凹んだ部位であり、隣接する部位に比べて前記液体吸収性繊維の密度が高い凹部が設けられているが、前記低剛性部には前記凹部が設けられていないことを特徴とする吸収性物品である。
このような吸収性物品によれば、低剛性部の剛性がより低くなる。そのため、長手方向の中央領域に対して後方領域がより立ち上がり易くなる。また、吸収体の長手方向の中央領域における幅方向の側部の立ち上がりが後方領域に伝わってしまうことをより確実に抑制できる。
かかる吸収性物品であって、前記長手方向及び前記幅方向における前記吸収体の中央領域に、前記厚さ方向の肌側に突出して折れ曲がるように誘導する折り誘導部が前記長手方向に沿って設けられていることを特徴とする吸収性物品。
このような吸収性物品によれば、長手方向及び幅方向における中央領域が着用者の排泄口(膣口等)に密着し易くなる。
以下、本発明に係る吸収性物品として生理用ナプキンを例に挙げて実施形態を説明する。
<生理用ナプキン1の基本的構成>
図1は、生理用ナプキン1(以下ナプキン)を厚さ方向の肌側から見た平面図である。図2は、ナプキン1を厚さ方向の非肌側から見た平面図である。図3は、ナプキン1の長手方向中央部の概略断面図である。ナプキン1は、互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を有する。また、ナプキン1の長手方向において、着用者の下腹部に当接する側を「前側」と呼び、着用者の臀部に当接する側を「後側」と呼ぶ。また、ナプキン1の厚さ方向において、着用者に当接する側を「肌側」と呼び、その反対側を「非肌側」と呼ぶ。
図3に示すように、ナプキン1では、厚さ方向の肌側から順に、一対のサイドシート2と、トップシート3と、セカンドシート4と、吸収体10と、バックシート5が積層されている。これらの各部材2,3,4,10,5は厚さ方向に隣接する部材と不図示の接着剤で接合されている。また、ナプキン1は、吸収体10が設けられたナプキン本体部20と、ナプキン本体部20の長手方向中央領域から幅方向の両外側に延出した一対のウィング部30とを有する。
トップシート3は、液透過性のシートであり、エアスルー不織布等を例示できる。バックシート5は、液不透過性のシートであり、ポリエチレン(PE)の樹脂フィルム等を例示できる。サイドシート2は、液透過性のシートであっても液不透過性のシートであってもよく、トップシート3と同じエアスルー不織布等を例示できる。トップシート3及びバックシート5は、平面サイズが吸収体10よりも大きく、吸収体10の平面全体を覆っている。一対のサイドシート2は、トップシート3の幅方向の両側部から幅方向の外側に延出しており、バックシート5と共に一対のウィング部30を形成する。
セカンドシート4は、液透過性のシートであり、トップシート3と同じエアスルー不織布等を例示できる。セカンドシート4は、吸収体10の肌側面上に設けられ、経血等の排泄物の逆戻り防止、排泄物の拡散向上、及びクッション性の向上等の役割を果たす。但しナプキン1がセカンドシート4を有さなくてもよい。
ナプキン本体部20の厚さ方向における非肌側面(つまりバックシート5の非肌側面)には、本体部用粘着部21が設けられている。ナプキン1の使用時に本体部用粘着部21は下着等の肌側面に貼り付けられ、これによりナプキン1は下着等に固定される。図2に示す本体部用粘着部21では、長手方向に長辺を有する長方形状の3個の粘着部が長手方向に間隔を空けて並ぶと共に、その3個の粘着部の列が幅方向に間隔を空けて8列並ぶ。
同様に各ウィング部30の厚さ方向における非肌側面(つまりバックシート5の非肌側面)には、ウィング部用粘着部31が設けられている。ナプキン1の使用時にウィング部30は非肌側に折り曲げられ、ウィング部用粘着部31は下着等の非肌側面に貼り付けられ、これによりナプキン1は下着等に固定される。図2に示すウィング部用粘着部31は長手方向に長辺を有する長方形状の粘着部である。なお、上記の本体部用粘着部21及びウィング部用粘着部31の形状、数、大きさ等は図2に示すものに限らない。
吸収体10は、排泄物を吸収して内部に保持する部材であり、吸収性コア12と、吸収性コア12よりも厚さ方向の肌側に上層シート11と、吸収性コア12よりも厚さ方向の非肌側に下層シート13とを有する。吸収性コア12は、液体吸収性繊維を有するものであればよく、パルプ繊維等の液体吸収性繊維に高吸収性ポリマー(所謂SAP)を含有するものを例示できる。上層シート11は、液透過性のシートであり、ティッシュペーパー等を例示できる。下層シート13は、液透過性のシートであっても液不透過性のシートであってもよく、SMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)不織布等を例示できる。吸収性コア12、上層シート11及び下層シート13は、平面形状が同じであり、厚さ方向に積層されている。各部材11〜13は接着剤によって互いに接合されていても接合されていなくてもよいとする。
また、吸収体10には、厚さ方向の肌側に突出して折れ曲がるように誘導する折り誘導部14が設けられている。更に吸収体10には、後側欠損部15、前側欠損部16、一対の後側切欠き部17、及び一対の前側切欠き部18が設けられている。これらの部位15〜18は、吸収性コア12と上層シート11と下層シート13とが存在しない部位であり、他の部位に比べて剛性の低い部位である(詳細は後述)。
また、ナプキン1には、厚さ方向の肌側から非肌側に向かって凹んだ部位であり、隣接する部位に比べて液体吸収性繊維の密度の高い圧搾部40(凹部)が複数設けられている。圧搾部40では、トップシート3、セカンドシート4、及び吸収体10の厚さ方向の全域が、厚さ方向の肌側から圧搾(エンボス加工)され、接合一体化されている。また、圧搾部40とそれに隣接する部位とで液体吸収性繊維の目付が等しいとし、圧搾部40では液体吸収性繊維の圧搾によってその密度が高くなったとする。なお、上記に限らず、吸収体10にのみ圧搾部40を設けたり、トップシート3から吸収性コア12の厚さ方向肌側の一部までにしか圧搾部40を設けなかったり、バックシート5から吸収体10に圧搾部40を設けたりしてもよい。
複数の圧搾部40は、吸収体11の長手方向中央領域に設けられている。詳しくは、長手方向において後側欠損部15よりも前側であり前側欠損部16よりも後側に複数の圧搾部40が設けられている。そして、複数の圧搾部40は、隣り合う圧搾部40の間隔が狭い線状パターン41と、隣り合う圧搾部40の間隔が広い点状パターン42とを形成している。線状パターン41は長手方向に延びた線状のパターンであり、吸収体10の幅方向の両側部に設けられている。点状パターン42は、幅方向における一対の線状パターン41の間に設けられている。点状パターン42では、長手方向に間隔を空けて並んだ圧搾部40の列が幅方向に並ぶと共に長手方向にずれて配置されている、つまり千鳥状に圧搾部40が配置されている。但し上記に限らず、吸収体10の前方領域や後方領域に圧搾部40が設けられていてもよい。また圧搾部40のパターンも図1に示すものに限らない。
なお、圧搾部40とそれに隣接する部位との液体吸収性繊維の密度の比較は周知の方法で行えばよい。例えば、吸収体10を厚さ方向に切った断面を電子顕微鏡等により撮影し、圧搾部40と隣接する部位とで繊維の密度差を目視で比較したり、各部位の繊維の本数で比較したりするとよい。その他、圧搾部40と隣接する部位とを吸収体10から切り出して、各部位の質量を面積で除することで坪量(g/cm2)を算出し、その坪量を厚さで除することで繊維密度(g/cm3)を算出して比較してもよい。
<吸収体10について>
図4は吸収体10を説明するナプキン1の概略平面図である。図5はナプキン1着用時の吸収体10の変形を説明する概略斜視図である。図6はナプキン1着用時の吸収体10の変形を説明する概略断面図である。図7Aから図7Cは前側欠損部16周辺の変形を説明する概略断面図である。
吸収体10の長手方向中央領域では、排泄物の吸収力を確保するために、幅方向の長さが着用者の股間幅よりも広く設定されている。そのため、ナプキン1の着用時に、吸収体10の長手方向中央領域では、着用者の脚の挟み込み力や、下着の脚繰りに配されたゴムの伸縮力により、幅方向の側部が肌側に立ち上がる(図6参照)。特に本実施形態のナプキン1では、幅方向の側部に長手方向に延びた圧搾部40の線状パターン41が設けられているため、線状パターン41を起点に線状パターン41よりも幅方向の外側の部位が立ち上がり易い。よって、吸収体10の幅方向の側部が着用者の鼠蹊部に入り込み、排泄物の横漏れを抑制すると共に、着用者にフィット感を付与できる。但し、吸収体10の後方領域及び前方領域は着用者の鼠蹊部から離れるため、幅方向の側部が立ち上がっていないことが好ましい。
そこで、吸収体10には、幅方向における両側部のうち、長手方向におけるウィング部用粘着部31の後側の端31aよりも後側に、上層シート11、吸収性コア12及び下層シート13が切欠かれた「一対の後側切欠き部17(低剛性部)」が設けられている。そして、各後側切欠き部17の長手方向の両側には、上層シート11、吸収性コア12、及び下層シート13が存在する部位であり、後側切欠き部17よりも剛性の高い第1の高剛性部171が設けられている。
そのため、ウィング部30が設けられた長手方向の位置、つまり吸収体10の長手方向中央領域における幅方向の側部の立ち上がりが、後側切欠き部17にて断たれ、吸収体10の後方領域に伝わってしまうことを抑制できる。よって、吸収体10の後方領域は着用者の臀部に沿った面形状に変形する。換言すると、後側切欠き部17は、剛性が低く、変形の自由度が高いため、吸収体10の長手方向中央領域の変形や後方領域の変形(第1の高剛性部171の変形)に連動し難い。したがって、ナプキン1の長手方向中央領域にて立ち上がった幅方向の側部を後方領域に向かってなだらかに倒すことができる。ゆえに、ナプキン1では、着用者の股間部から臀部にかけて隙間が生じ難く、排泄物の漏れを抑えられるとともに、着用者に良好なフィット感を付与できる。
また、後側切欠き部17は、長手方向におけるウィング部用粘着部31の後側の端31aよりも後側に設けられている。ウィング部30は下着のクロッチ部に取り付けられ、長手方向においてウィング部30と重なる吸収体10の部位に着用者の排泄口が位置し易い。そのため、ウィング部用粘着部31の後方に後側切欠き部17を設けることで、着用者の股間部と臀部の境界部に後側切欠き部17が位置し易く、その境界部にて吸収体10の変形を切り換えられる。つまり、着用者の臀部に当接するナプキン1の部位において、幅方向の側部が立ち上がりを抑制でき、ナプキン1は着用者によりフィットする。
また、幅方向における一対の後側切欠き部17の間に、後側切欠き部17よりも剛性の高い第2の高剛性部172が設けられている。第2の高剛性部172では、吸収体10を構成する上層シート11、吸収性コア12、及び下層シート13が存在する。仮に、第2の高剛性部172が存在せず、後側切欠き部17が後側欠損部15と繋がり、幅方向の全域に亘って吸収性コア12等が存在しないとする。その場合、後側切欠き部17が設けられた長手方向の位置にてナプキン1が折れ易く、扱い難くなってしまう。例えばナプキン1の装着途中に、着用者に把持されたナプキン1の長手方向中央領域に対して後方領域が折れ、後方領域が下着の不適当な部位にくっ付いたり、粘着部21,31同士がくっついたりしてしまう。そのため、上記のように吸収体10に第2の高剛性部172を設けることで、ナプキン1は扱い易く、装着し易くなる。
同様に、吸収体10の幅方向における両側部のうち、長手方向におけるウィング部用粘着部31の前側の端31bよりも前側に、上層シート11、吸収性コア12及び下層シート13が切欠かれた一対の前側切欠き部18(第2の低剛性部)が設けられている。また、各前側切欠き部18の長手方向の両側には、上層シート11、吸収性コア12、及び下層シート13が存在する部位であり、前側切欠き部18よりも剛性の高い第3の高剛性部181が設けられている。
そのため、吸収体10の長手方向中央領域における幅方向の側部の立ち上がりが、前側切欠き部18にて断たれ、吸収体10の前方領域に伝わってしまうことを抑制できる。よって、吸収体10の前方領域は着用者の下腹部に沿った面形状に変形する。換言すると、前側切欠き部18は、吸収体10の長手方向中央領域の変形や前方領域の変形(第3の高剛性部181の変形)に連動し難く、ナプキン1の長手方向中央領域にて立ち上がった幅方向の側部を前方領域に向かってなだらかに倒すことができる。ゆえに、ナプキン1では、着用者の下腹部から股間部にかけて隙間が生じ難く、排泄物の漏れを抑えられるとともに、着用者に良好なフィット感を付与できる。
また、幅方向における一対の前側切欠き部18の間に、前側切欠き部18よりも剛性の高い第4の高剛性部182が設けられている。そのため、前側切欠き部18が設けられた長手方向の位置にてナプキン1は折れ難くなるため、ナプキン1は扱い易く、装着し易くなる。
以上のように、本実施形態のナプキン1は、着用者の各部(下腹部、股間部、臀部)に適した形状に変形する。但し、排泄物は後側により漏れ易く、ナプキン1の後方領域を臀部にフィットさせることがより重要となる。そのため、吸収体10に前側切欠き部18を設けずに、後側切欠き部17を設けるだけでもよい。また、一対の前側切欠き部18の間に第4の高剛性部182を設けるに限らず、前側切欠き部18が前側欠損部16に繋がっていてもよい。また、後側切欠き部17と前側切欠き部18とで剛性(存在する部材や目付等)が異なってもよい。
また、一対の後側切欠き部17及び一対の後側切欠き部18により、ナプキン1の後方領域(全体)、及び、前方領域(全体)が、中央領域に対して立ち上がり易くなる。このことからも、ナプキン1は着用者にフィットし易いと言える。
後側切欠き部17及び前側切欠き部18の平面形状は、幅方向の内側に凸となる山型形状である。つまり、幅方向の内側に向かうに従って、後側切欠き部17及び前側切欠き部18の長手方向の長さが短くなっている。そのため、吸収体10の後方領域及び前方領域は中央領域に対して立ち上がると共に、着用者の臀部や下腹部に沿って非肌側に凸となるように湾曲し易い。そのため、ナプキン1は着用者によりフィットし易くなる。但し、後側切欠き部17及び前側切欠き部18の形状はこれに限らない。
なお、後側切欠き部17の剛性を第1の高剛性部171や第2の高剛性部172の剛性よりも低くする方法は、吸収体10を構成する部材の全てを切欠く方法に限らない。例えば、後側切欠き部17において、吸収性コア12だけ存在させず、上層シート11及び下層シート13は存在させてもよい。その他、後側切欠き部17の吸収性コア12の目付を、第1の高剛性部171や第2の高剛性部171に比べて低くしてもよい。また、後側切欠き部17の全域に亘って剛性を低くするに限らず、部分的に剛性を低くしてもよい。また、後側切欠き部17の厚さ方向の一部に切り込みを入れることで剛性を低くしてもよい。なお、前側切欠き部18や後述の後側欠損部15や前側欠損部16についても同様に剛性を低くできる。
また、後側切欠き部17と第1の高剛性部171等、吸収体10の各部の剛性の比較は周知の方法で行えばよい。例えば、吸収体10の各部の剛性値として、ガーレー剛軟度によって測定された値をサンプル片の長さで割った値を例示できる。ガーレー剛軟度の測定は、(株)安田精機製作所製のNo311のガーレー式柔軟度試験機を用いて、JIS−L1096に準拠して測定できる。その他、後側切欠き部17等の低剛性部が第1の高剛性部171等の高剛性部に比べて、構成する部材が少なくなっていることや、吸収性コア12の目付が低くなっていることを、目視で比較したり、吸収体10から低剛性部と高剛性部を切り出して、各部位の質量を面積で除した値(g/cm2)で比較したりしてもよい。
但し、本実施形態のように、後側切欠き部17及び前側切欠き部18において、吸収性コア12(液体吸収性繊維)、上層シート11、及び下層シート13が存在しないことが好ましい。そうすることで、後側切欠き部17及び前側切欠き部18が位置するナプキン1の部位の剛性がより低くなる。よって、吸収体10の長手方向中央領域における幅方向の側部の立ち上がりが、吸収体10の後方領域や前方領域に伝わってしまうことをより確実に抑えられる。また、ナプキン1の後方領域及び前方領域が中央領域に対して立ち上がり易くなる。
また、本実施形態のナプキン1は、個別の包装状態において、図1に示す幅方向に長い2つの折り位置P1,P2にて三つ折りにされている。この折り位置P1,P2にて、ナプキン1の後方領域及び前方領域は中央領域に対して立ち上がり易くなっている。そこで、厚さ方向の平面視で、後側切欠き部17の少なくとも一部と折り位置P2とが重なっており、前側切欠き部18の少なくとも一部と折り位置P1とが重なっていることが好ましい。
そうすることで、ナプキン1の後方領域及び前方領域が中央領域に対してより立ち上がり易くなる。更に、ナプキン1の後方領域の立ち上がり起点、つまり着用者の股間部と臀部の境界部に後側切欠き部17が位置し易く、ナプキン1の前方領域の立ち上がり起点、つまり着用者の下腹部と股間部の境界部に前側切欠き部18が位置し易く、着用者の各部の境界部にて吸収体10の変形を切り換えられる。つまり、着用者の下腹部や臀部に当接するナプキン1の部位において、幅方向の側部が立ち上がってしまうことを抑制できる。そのため、ナプキン1は、着用者の各部に適した形状により変形し易くなる。但し上記に限らず、長手方向において後側切欠き部17や前側切欠き部18が折り位置P1,P2と重なっていなくてもよい。
また、吸収体10には、厚さ方向に凹んだ部位であり、隣接する部位に比べて吸収性コア12(液体吸収性繊維)の密度が高い圧搾部40(凹部)が設けられている。但し、後側切欠き部17及び前側切欠き部18には圧搾部40が設けられていない。そのため、ナプキン1の前方領域や後方領域が立ち上がったり、ナプキン1の長手方向の各領域がそれぞれに適した形状に変形したりする際に、吸収体10よりも上層のトップシート3及びセカンドシート4や下層のバックシート5が伸び縮みし易い。よって、ナプキン1が着用者の身体にフィットするように変形し易くなる。また、後側切欠き部17及び前側切欠き部18が位置するナプキン1の部位の剛性がより低くなる。よって、吸収体10の長手方向中央領域における幅方向の側部の立ち上がりが、吸収体10の後方領域や前方領域に伝わってしまうことをより確実に抑えられる。但し上記に限らず、後側切欠き部17や前側切欠き部18に圧搾部40が設けられていてもよい。
また、図2に示すように、幅方向における一対の後側切欠き部17間の長さL4の方が、幅方向における一対の前側切欠き部18間の長さL5に比べて短くなっている。つまり、後側切欠き部17の方が前側切欠き部18に比べて幅方向に深く切欠かれている。そのため、吸収体1の後方領域では、幅方向の側部の立ち上がりがより確実に抑えられる。したがって、ナプキン1の後方領域は、肉が張り出ている着用者の臀部に対して面状に変形し、着用者の臀部により適した形状に変形する。一方、吸収体10の前方領域では、幅方向の側部の立ち上がりの抑制が弱く、側部が若干立ち上がる。したがって、ナプキン1の前方領域は、着用者の恥骨付近の膨らみを包み込むように変形し、着用者の下腹部により適した形状に変形する。
但し上記に限らず、幅方向における一対の後側切欠き部17間の長さと一対の前側切欠き部18間の長さとが等しくてもよい。また、幅方向における一対の後側切欠き部17間の長さの方が、一対の前側切欠き部18間の長さに比べて長くてもよい。
このように、幅方向における一対の後側切欠き部17間の長さL4と、幅方向における一対の前側切欠き部18間の長さL5とを異ならせるとよい。そうすることで、ナプキン1の後方領域及び前方領域が着用者の臀部及び下腹部にそれぞれ適した形状に変形するように、吸収体10の幅方向側部の立ち上がり具合を前方領域と後方領域とで個別に調整できる。
また、図2に示すように、幅方向において、後側切欠き部17の内側の端17cの位置は、本体部用粘着部21(別の粘着部)の外側の端21aの位置よりも内側に位置する。つまり、後側切欠き部17の先端部が設けられた幅方向の位置ではナプキン1が下着等に固定される。そのため、吸収体1の後方領域では、幅方向の側部の立ち上がりがより確実に抑えられる。したがって、ナプキン1の後方領域は、肉が張り出ている着用者の臀部に対して面状に変形し、着用者の臀部により適した形状に変形する。なお、図2では、後側切欠き部17が設けられた位置に本体部用粘着部21が設けられていないが、後側切欠き部17が設けられた位置に本体部用粘着部21を設けてもよい。
一方、幅方向において、前側切欠き部18の内側の端18cの位置は、本体部用粘着部21の外側の端21aの位置よりも外側に位置する。つまり、前側切欠き部18が設けられた幅方向の位置ではナプキン1が下着等に固定されない。そのため、吸収体10の前方領域では、幅方向の側部の立ち上がりの抑制が弱く、側部が若干立ち上がる。したがって、ナプキン1の前方領域は、着用者の恥骨付近の膨らみを包み込むように変形し、着用者の下腹部により適した形状に変形する。
但し上記に限らず、幅方向において、後側切欠き部17の内側の端17cの位置が、本体部用粘着部21の外側の端21aの位置よりも外側に位置してもよい。逆に、幅方向において、前側切欠き部18の内側の端18cの位置が、本体部用粘着部21の外側の端21aの位置よりも内側に位置してもよい。
また、吸収体10には、長手方向及び幅方向における中央領域に、厚さ方向の肌側に突出して折れ曲がるように誘導する折り誘導部14が長手方向に沿って設けられている。そのため、ナプキン1の着用時に、吸収体10の長手方向中央領域では、幅方向の側部が立ち上がると共に、幅方向の中央部が肌側に突出する。つまり、吸収体10の長手方向中央領域の断面形状は図6に示すようにW字形状となる。そのため、ナプキン1の長手方向及び幅方向における中央領域が着用者の排泄口(膣口)に密着し易くなる。よって、ナプキン1では、吸収体10による排泄物の吸収性が向上すると共に、排泄物の漏れを抑制でき、また、着用者に良好なフィット感を付与できる。
なお、図1では、吸収体10の前端10aから後側欠損部15の前端15aにかけて折り誘導部14が設けられているが、これに限らない。少なくとも吸収体10の長手方向中央領域、つまり、着用者の排泄口が位置する領域に折り誘導部14が設けられていればよい。例えば、長手方向においてウィング部30と重なる位置に折り誘導部14が設けられているとよい。
また、吸収体10に折り誘導部14を設ける方法としては、吸収体10の幅方向中央部に、吸収体10を厚さ方向に圧搾した複数の圧搾部(エンボス)を長手方向に沿って設けたり、長手方向に連続した溝状の圧搾部を設けたりする方法を例示できる。その他、吸収体10の幅方向中央部の液体吸収性繊維の目付を長手方向に沿って小さくしたり、製造段階において吸収体10を長手方向に沿って予め折ったりする方法を例示できる。
また、吸収体10には、長手方向における中央領域と後方領域の境界部10Aから後端10bにかけて、長手方向に長いスリット状の切れ込みである「後側欠損部15」が設けられている。後側欠損部15は、幅方向において折り誘導部14と重なる位置に設けられている。そのため、折り誘導部14による吸収体10の長手方向中央領域の変形、つまり幅方向の中央部が肌側に突出する変形が、後側欠損部15にて断たれ、吸収体10の後方領域に伝わってしまうことを抑制できる。よって、吸収体10の後方領域は着用者の臀部に沿った面形状に変形し、ナプキン1の後方領域は着用者の臀部にフィットする。なお、吸収体10の長手方向中央領域と後方領域との境界部10Aに後方欠損部15が存在すればよく、後側欠損部15が吸収体10の後端10bまで延びている必要はない。
同様に、吸収体10には、長手方向における中央領域と前方領域の境界部10Bに、幅方向に対して湾曲してくり抜かれた「前側欠損部16」が設けられている。前側欠損部16は、折り誘導部14が設けられた幅方向の位置を跨いで設けられている。そのため、吸収体10の長手方向中央領域において幅方向の中央部が肌側に突出する変形が、前側欠損部16にて断たれ、吸収体10の前方領域に伝わってしまうことを抑制できる。よって、吸収体10の前方領域は着用者の下腹部に沿った面形状に変形し、ナプキン1の前方領域は着用者の下腹部にフィットする。
また、後側欠損部15の平面形状は、長手方向に細長い形状である。そのため、吸収体10の後方領域が、着用者の張り出ている臀部に沿って湾曲した面形状に変形し易い。よって、ナプキン1の後方領域は着用者の臀部によりフィットする。一方、前側欠損部16の平面形状は、幅方向に長く、長手方向の前側に凸となる湾曲した形状である。そのため、吸収体10の前方領域が厚さ方向の非肌側に湾曲して凸となるように変形し易い。よって、ナプキン1の前方領域が、着用者の恥骨付近の膨らみを包み込むように変形し、着用者の下腹部によりフィットする。
但し上記に限らず、吸収体10に折り誘導部14や後側欠損部15や前側欠損部16が設けられていなくてもよい。また、後側欠損部15の形状と前側欠損部16の形状とが同じであってもよい。また、例えば、後側欠損部15の形状が幅方向に長い形状であってもよく、前側欠損部16の形状が、長手方向に長いスリット形状であったり、複数の直線で長手方向の前側に凸となる形状であったりしてもよい。また、両欠損部15,16が円形状であってもよい。
また、後側欠損部15の長手方向の位置と、後側切欠き部17の長手方向の位置とが、少なくとも一部重なっており、前側欠損部16の長手方向の位置と、前側切欠き部18の長手方向の位置とが、少なくとも一部重なっているとことが好ましい。
また、後側欠損部15が、ウィング部用粘着部31の後端31aよりも後側に設けられ、前側欠損部16が、ウィング部用粘着部31の前端31bよりも前側に設けられていることが好ましい。
また、厚さ方向の平面視で、後側欠損部15の少なくとも一部と折り位置P2とが重なっており、前側欠損部16の少なくとも一部と折り位置P1とが重なっていることが好ましい。
そうすることで、ナプキン1の後方領域の立ち上がり起点、つまり着用者の股間部と臀部の境界部に後側欠損部15が位置し易く、ナプキン1の前方領域の立ち上がり起点、つまり着用者の下腹部と股間部の境界部に前側欠損部16が位置し易く、着用者の各部の境界部にて吸収体10の変形を切り換えられる。つまり、着用者の下腹部や臀部に当接するナプキン1の部位において、幅方向の中央部が肌側に突出してしまうことを抑制できる。そのため、ナプキン1は、着用者の各部に適した形状により変形し易くなる。
また、後側欠損部15及び前側欠損部16に圧搾部40が設けられていないことが好ましい。そうすることで、吸収体10よりも上層のトップシート3及びセカンドシート4や下層のバックシート5が伸び縮みし易く、ナプキン1が着用者の身体にフィットするように変形し易くなる。また、後側欠損部15及び前側欠損部16が位置するナプキン1の部位の剛性を低くでき、変形の自由度を高められる。よって、吸収体10の長手方向中央領域の変形、つまり幅方向の中央部が肌側に突出する変形が、吸収体10の前方領域や後方領域に伝わってしまうことをより確実に抑えられる。
また、図1及び図7に示すように、長手方向における前側欠損部16の長さL1は、長手方向の少なくとも一方側に前側欠損部16に隣接する吸収体の部位161a、161bの厚さL2以上であることが好ましい。例えば、前側欠損部16の長さL1が前側に隣接する吸収体の部位161aの厚さL2以上である場合、図7Bに示すように、前側の隣接部位161aが前側欠損部16にて立ち上がることができる。また、前側欠損部16の長さL1が後側に隣接する吸収体の部位161bの厚さL2以上である場合、図7Cに示すように、前側の隣接部位161aが後側の隣接部位161b上に立ち上がることができる。つまり、ナプキン1の長手方向中央領域に対して前方領域が立ち上がる際に、吸収体10よりも下層のバックシート5が伸ばされるが、上記のように前側欠損部16の長手方向の長さL1を設定することで、前方領域が立ち上がるために必要なバックシート5の長さを確保できる。そのため、ナプキン1の後方領域が立ち上がり易く、着用者の身体にフィットし易い。
同様に、長手方向における後側欠損部15の長さL3が、長手方向の少なくとも一方側に後側欠損部15に隣接する吸収体10の部位151の厚さL2以上であることが好ましい。本実施形態の後側欠損部15は吸収体10の後端10bまで達しているので、後側欠損部15の長さL3が前側に隣接する吸収体の部位151の厚さL2以上であることが好ましい。そうすることで、ナプキン1の後方領域が立ち上がるために必要なバックシート5の長さを確保できるので、ナプキン1の後方領域が立ち上がり易く、着用者の身体にフィットし易い。但し上記に限らず、後側欠損部15や前側欠損部16の長手方向の長さL1,L3が、前後の吸収体10の部位の厚さL2より小さくてもよい。
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
上記の実施形態では、本発明の吸収性物品を生理用ナプキンとしているがこれに限らず、本発明の吸収性物品を例えばパンティーライナー、尿取りパッド、使い捨ておむつ等に利用してもよい。