JP2019011462A - 修飾ポリロタキサンおよびその製造方法並びに樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
−NH−(CO−(CH2)m−NH)n−H …(I)
(m:繰り返し数を示す2〜15の整数、n:重合度を示す1〜100の整数)
−NH−R−NH−(CO−(CH2)m−NH)n−H …(II)
(R:炭化水素基、m:繰り返し数を示す2〜15の整数、n:重合度を示す1〜100の整数)
本発明におけるポリロタキサンは、直鎖状分子および複数のシクロデキストリンからなり、複数のシクロデキストリンの開口部に直鎖状分子が貫通した構造を有し、且つ直鎖状分子の両末端にはシクロデキストリンが直鎖状分子から脱離しないように嵩高い封鎖基を有する。ポリロタキサンにおいて、シクロデキストリンは直鎖状分子上を自由に移動することが可能であるが、封鎖基により直鎖状分子から抜け出せない構造を有する。すなわち、直鎖状分子およびシクロデキストリンは、化学的な結合ではなく、機械的な結合により形態を維持する構造を有する。このようなポリロタキサンは、シクロデキストリンの運動性が高いため、外部からの応力や内部に残留した応力を緩和する効果がある。
本発明の修飾ポリロタキサンは、上述したポリロタキサンにおけるシクロデキストリンが、ラクタム由来の修飾基を有する変性シクロデキストリンである。
−NH−(CO−(CH2)m−NH)n−H…(I)
−NH−R−NH−(CO−(CH2)m−NH)n−H…(II)
ここで、一般式(I)、(II)におけるmは繰り返し数を示す2〜15の整数であり、m=5または11であることが好ましく例示でき、中でもm=5であること、すなわち、ε−カプロラクタム由来の構造であることが特に好ましい。一般式(I)、(II)における繰り返し数mがこれらの好ましい値であることにより、修飾ポリロタキサンとポリアミドとの相溶性が良くなる傾向にある。さらに、一般式(I)、(II)におけるnは重合度を示す正の整数であり、好適には、n=1〜100、より好適には、1〜50、さらに好適には、1〜20である。重合度nがこれらの範囲にあることにより、修飾ポリロタキサンの合成が簡便となり、修飾ポリロタキサンとポリアミドとの相溶性が良くなる傾向にある。なお、ここでの重合度nは、NMR構造解析におけるシクロデキストリンと一般式(I)、(II)における−(CH2)m−基のプロトン比により算出することができる。
本発明によるポリアミドは、アミノ酸、ラクタム、またはジアミンとジカルボン酸の残基を主たる構成成分とする。その原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、および1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを2種以上配合しても良い。
本発明による樹脂組成物は、少なくとも上述した(2)修飾ポリロタキサン、および(3)ポリアミドを配合してなる樹脂組成物である。なお、本発明による樹脂組成物は、修飾ポリロタキサンおよびポリアミド以外にも、修飾ポリロタキサンとポリアミドとが反応した反応物をも含むが、当該反応物の構造を特定することは実際的でない。そのため、本発明は配合する各成分により発明を特定するものである。
反応物の構造解析は、下記に示す核磁気共鳴装置(NMR)を用いて下記の条件にて実施した。
装置 :日本電子株式会社製 AL−400
重溶媒 :重水素化ジメチルスルホキシド、重水素化テトラフルオロ酢酸
サンプル濃度:サンプル1mg/重溶媒1mL
樹脂組成物の溶融状態における相構造観察は、光学顕微鏡およびホットステージを用いて実施した。
光学顕微鏡本体:Nicon OPTIPHOTO−POL
溶融温度:240℃
下記熱可塑性樹脂に配合するポリアミドには、以下のものを使用した。
ナイロン6樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標))、ηr=2.70、融点は225℃、アミド基濃度は10.5mmol/g
ここで、上述した溶液粘度ηrは、98%濃硫酸の0.01g/mL溶液を用いて25℃にて測定した。また、融点は、示差走査熱量計を用いて、不活性ガス雰囲気下、ポリアミドを溶融状態から20℃/分の降温速度で30℃まで降温した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度とした。ただし、吸熱ピークが2つ以上検出される場合には、ピーク強度の最も大きい吸熱ピークの温度を融点とした。また、アミド基濃度は、構造単位の構造式から次式により算出した。
アミド基濃度(mol/g)=(構造単位のアミド基数/構造単位の分子量)
ここでは、特許文献6を参考にしたポリロタキサンの合成について記す。まず、ポリエチレングリコール(PEG)(分子量20000)を10gと、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル)を100mgと、臭化ナトリウムを100mgとを水100mLに溶解させた。
合成例1において合成した10gのポリロタキサンを1Lの1mol/L濃度の水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、94gのプロピレンオキシドを滴下により添加して、窒素雰囲気下において一晩撹拌を行った。その後、1mol/L濃度の塩酸水溶液によって中和し、透析チューブによって透析した後、凍結乾燥させて、ヒドロキシプロピル化されたポリロタキサンを得た。
実施例1においては、上述した合成例1の方法によって調製したポリロタキサンから、修飾ポリロタキサンを得る方法について説明する。
合成例1の方法によって調製した1gのポリロタキサンを、30mLのピリジン中に分散させ、氷浴中で冷却を行った。その後、2.0gのパラトルエンスルホニルクロリドを加え、氷浴中で6時間反応を行った。その後、500mLの脱イオン水中に反応液を流し込むことによって固形分を析出させ、ガラスフィルターを用いて固形分の回収を行った。得られた固形分を多量の脱イオン水、およびジエチルエーテルによって洗浄後、真空乾燥させることによってトシル化されたポリロタキサンを得た。ポリロタキサンのトシル化は、NMRにより構造解析を行った。
合成した1gのトシル化ポリロタキサンを30mLのジメチルホルムアミドに溶解させた。この溶液を予め70℃に加熱しておいた40mLのエチレンジアミンと20mLのジメチルホルムアミドの混合溶液に滴下添加を行い、滴下終了後70℃で5時間反応を行った。その後、反応液を1Lのジエチルエーテルに流し込むことによって固形分を析出させ、遠心分離によって析出固形分の回収を行った。その後、固形分をジメチルホルムアミドに溶解させて、ジエチルエーテルに再沈殿精製を行った後、得られた固形分を乾燥させることによりアミノ化されたポリロタキサンを得た。ポリロタキサンのアミノ化は、NMRにより構造解析を行った。
6.8gのε−カプロラクタムを窒素フロー下、150℃で加熱溶解させ、上述したアミノ化ポリロタキサンを0.2gと、0.3gのオクチル酸スズを0.8gのトルエンに溶解させた溶液とを添加した。その後、190℃まで段階的に昇温させた後、190℃で1時間反応を行った。得られた反応物を200mLのメタノール中に流し込むことによって固形分を析出した後、真空乾燥させることにより目的となるラクタム由来の修飾基を有する修飾ポリロタキサンを得た。修飾ポリロタキサンの構造解析は、NMRにより行った。
実施例2においては、上述した実施例1の方法によって得られた修飾ポリロタキサンとポリアミド樹脂とを、修飾ポリロタキサン/ポリアミド樹脂の組成がそれぞれ5w%/95w%となるように配合してプレブレンドし、シリンダー温度を230℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した小型二軸混練機(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製HAAKE MiniLabIIマイクロコンパウンダー)に供給して、溶融混練を行った。
実施例3においては合成例2記載の方法で調製したポリロタキサンから修飾ポリロタキサンを得る工程について記す。
上述した合成例2の方法によって調製したヒドロキシプロピル化されたポリロタキサンの1gを30mLのピリジン中に溶解させて氷浴中で冷却を行った。その後、パラトルエンスルホニルクロリドを2.0g加えて、氷浴中で6時間、反応を行った。その後、500mLの脱イオン水中に反応液を流し込むことにより固形分を析出、ガラスフィルターを用いて固形分の回収を行った。得られた固形分を多量の脱イオン水、ジエチルエーテルで洗浄後、真空乾燥に処することによりトシル化されたヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを得た。ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンのトシル化は、NMRにより構造解析を行った。
合成したトシル化ポリロタキサンの1gを30mLのジメチルホルムアミドに溶解させた。この溶液を予め70℃に加熱しておいた40mLのエチレンジアミンと20mLのジメチルホルムアミドの混合溶液に滴下添加して、滴下終了後に70℃で5時間反応を行った。その後、反応液を1Lのジエチルエーテルに流し込むことによって固形分を析出させ、遠心分離により析出固形分の回収を行った。その後、固形分をジメチルホルムアミドに溶解させ、ジエチルエーテルを用いて再沈殿精製を行った後、得られた固形分を乾燥させることによって、アミノ化されたポリロタキサンを得た。ポリロタキサンのアミノ化は、NMRにより構造解析を行った。
6.8gのε−カプロラクタムを窒素フロー下、150℃で加熱溶解させ、上述したアミノ化ポリロタキサンを0.2gと、0.3gのオクチル酸スズを0.8gのトルエンに溶解させた溶液とを添加した。その後、190℃まで段階的に昇温させた後、190℃で1時間反応を行った。得られた反応物を200mLのメタノール中に流し込むことによって固形分を析出させ、回収した固形分を真空乾燥に処することによって目的のラクタム由来の修飾基を有する修飾ポリロタキサンを得た。修飾ポリロタキサンの構造解析は、NMRにより行った。
実施例4においては、上述した実施例3の方法により得られた修飾ポリロタキサンとポリアミド樹脂とを、修飾ポリロタキサン/ポリアミド樹脂の組成がそれぞれ5w%/95w%となるように配合してプレブレンドし、シリンダー温度を230℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した小型二軸混練機(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製HAAKE MiniLabIIマイクロコンパウンダー)に供給して溶融混練を行った。
比較例1においては、グラフト鎖として、ポリカプロラクトンによりシクロデキストリンが修飾されたポリロタキサン(アドバンスト・ソフトマテリアル(株)製“セルム”(登録商標)スーパーポリマーSH2400P)とポリアミド樹脂とを、ポリロタキサン/ポリアミド樹脂の組成が5w%/95w%となるように配合してプリブレンドし、シリンダー温度を230℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した小型二軸混練機(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製HAAKE MiniLabIIマイクロコンパウンダー)に供給して、溶融混練を行った。
実施例5においては、上述した実施例1の方法によって得られた修飾ポリロタキサンとポリアミド樹脂とを、修飾ポリロタキサン/ポリアミド樹脂の組成がそれぞれ2.5w%/97.5w%となるように配合してプレブレンドし、シリンダー温度を230℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した小型二軸混練機(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製HAAKE MiniLabIIマイクロコンパウンダー)に供給して、溶融混練を行った。
実施例6においては、上述した実施例3の方法によって得られた修飾ポリロタキサンとポリアミド樹脂とを、修飾ポリロタキサン/ポリアミド樹脂の組成がそれぞれ2.5w%/97.5w%となるように配合してプレブレンドし、シリンダー温度を230℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した小型二軸混練機(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製HAAKE MiniLabIIマイクロコンパウンダー)に供給して、溶融混練を行った。
Claims (9)
- (A)ラクタム由来の修飾基を有する変性シクロデキストリンと、
(B)シクロデキストリンの開口部を串刺し状に貫通する直鎖状分子と、
(C)前記変性シクロデキストリンが脱離しないように配置される封鎖基と、から少なくともなる
ことを特徴とする修飾ポリロタキサン。 - 前記ラクタム由来の修飾基を有する変性シクロデキストリンが、一般式(I)で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載の修飾ポリロタキサン。
−NH−(CO−(CH2)m−NH)n−H …(I)
(m:繰り返し数を示す2〜15の整数、n:重合度を示す1〜100の整数) - 前記ラクタム由来の修飾基を有する変性シクロデキストリンが、一般式(II)で表される構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の修飾ポリロタキサン。
−NH−R−NH−(CO−(CH2)m−NH)n−H …(II)
(R:炭化水素基、m:繰り返し数を示す2〜15の整数、n:重合度を示す1〜100の整数) - 前記ラクタム由来の修飾基が、ε−カプロラクタム由来の修飾基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の修飾ポリロタキサン。
- 前記直鎖状分子が、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の修飾ポリロタキサン。
- 少なくとも、ポリアミドと請求項1〜5のいずれか1項に記載の修飾ポリロタキサンとを配合してなる
ことを特徴とする樹脂組成物。 - シクロデキストリン、シクロデキストリンの開口部を串刺し状に貫通する直鎖状分子、およびシクロデキストリンが脱離しないように配置される封鎖基からなるポリロタキサンに、少なくとも(a)シクロデキストリン上の水酸基をラクタムと反応し得る官能基に変換する工程と、(b)シクロデキストリン上の官能基とラクタムを反応させる工程とを順に行う
ことを特徴とする修飾ポリロタキサンの製造方法。 - 前記ラクタムと反応し得る官能基が、アミノ基であることを特徴とする請求項7に記載の修飾ポリロタキサンの製造方法。
- 前記ラクタムが、ε−カプロラクタムであることを特徴とする請求項7または8に記載の修飾ポリロタキサンの製造方法。
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