JP2019007313A - コンクリート剥落防止工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】安全に施工を完了できるとともに、コンクリート構造物の突合せ部におけるコンクリートの剥落を防止でき、施工後のコンクリート面の目視による点検が可能なコンクリート剥落防止工法を提供する。【解決手段】コンクリート構造物の突合せ部に、下塗り塗膜、繊維シート及び上塗り塗膜を備える積層体を形成させて、コンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止する方法であって、水系下塗り塗料及び水系上塗り塗料として引火点のない水系エマルジョン塗料を用いてクリアな下塗り塗膜及び上塗り塗膜を形成させ、また、繊維シートとして厚さが0.1〜1.5mmで、目合いは一辺が1〜15mmで、引張強度が200〜1000(N/5cm)である繊維シートを用いることを特徴とする方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、コンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止する方法(以下、コンクリート剥落防止工法ともいう)に関するものである。
高架橋、橋梁やその他の建造物等は、その強度や耐久性に優れることから、コンクリート製の構造物が広く用いられている。しかしながら、近年では、コンクリートの塩害による鉄筋の腐食や排ガス等による中性化、アルカリ骨材反応、ひび割れに浸入した水分の凍結等により、コンクリートが劣化し、劣化が進行するとコンクリート構造物の表面からコンクリート片が剥がれ落ち、コンクリート構造物自体の強度低下や美観の低下、剥落による事故の危険性等の課題が発生している。特に、コンクリート構造物における、鋼桁とコンクリートの突合せ部(ハンチ部)には、鋼桁の材質や形状(一般にはフランジを備える形状)からコンクリートに応力がかかりやすく、コンクリートの劣化によりこの部分が欠落しやすいことが問題となっている。通常、ハンチ部は、高所に位置し、複雑な形状を有することから、従来の一般的なコンクリート剥落防止工法の適用が困難であった。
特開2011−099209号公報(特許文献1)は、コンクリート構造物に対して、接着用ポリマーセメントモルタル及びメッシュ状シートでコンクリート構造物表面を被覆し、その上から水系塗料で被覆することを特徴とするコンクリート剥落防止工法を記載しており、これにより、コンクリート構造物に対して剥落防止性能を有し、環境中への有機溶剤排出量が極めて少なく環境に優しく、火災時には有毒ガスの発生が殆ど無いコンクリート剥落防止工法を提供できるとしている。
特開2010−265696号公報(特許文献2)は、主桁並びに横桁に一体化されたコンクリート床版の補強方法において、予め繊維補強シートが取り付けられた補強用底板を上記コンクリート床版の底面に上記主桁/上記横桁に対して離間させて接合し、上記繊維補強シートを上記主桁/上記横桁に取り付けること、又は補強用底板を上記コンクリート床版の底面に上記主桁/上記横桁に対して離間させて接合し、上記補強用底板と上記主桁/上記横桁との間に繊維補強シートを取り付けることを特徴とするコンクリート床版の補強方法を記載しており、これにより、コンクリート床版を補強する際において、ハンチ部の形状や大きさがいかなるものであっても、施工労力を軽減させつつこれを補強することができるとしている。
特開2007−146588号公報(特許文献3)は、接着剤を塗布する工程、補強オレフィン系繊維シートを貼り着ける工程を含む剥落防止工法であって、補強オレフィン系繊維シートの表面濡れ張カが25mN/m以上、45mN/m以下であることを特徴とする剥落防止工法を記載しており、これにより、施工後の耐用環境温度範囲内においても十分な性能を発揮する剥落防止工法を提供できるとしている。
特開2011−099209号公報 特開2010−265696号公報 特開2007−146588号公報
特許文献1に記載のコンクリート剥落防止工法は、コンクリートの剥落を防止するとともに、火災時には有毒ガスの発生が殆ど無い環境に優しい剥落防止工法であるが、ポリマーセメントモルタルによってコンクリート表面が隠蔽されるため、施工後に発生したコンクリート表面の亀裂を目視により確認することができない。また、コンクリート剥落防止工法をハンチ部に適用する上での検討はなされていない。
特許文献2に記載の補強方法の一実施態様において、補強対象であるコンクリート床版は、主桁又は横桁の上フランジ部に対してハンチ部を介して一体化されてなるコンクリート床版であり、ここに繊維補強シートを取り付けるものであるが、補強用底板をコンクリート床版の底面に主桁/横桁に対して離間させて接合させることを要するため、大掛かりな工事が必要となる。
特許文献3に記載の剥落防止工法は、特定の補強オレフィン系繊維シートを貼り着けることを特徴とするものであり、この点についてはハンチ部に適用することも可能であると思われるが、実際に使用されている接着剤は、エポキシ樹脂系の可燃性接着剤であるため、安全面からの課題があり、また、透明な材料であることから、暗所に設けられる場合が多いハンチ部への適用の観点からも改善の余地がある。
このような状況下において、本発明の目的は、安全に施工を完了できるとともに、コンクリート構造物の突合せ部におけるコンクリートの剥落を防止でき、施工後のコンクリート面の目視による点検が可能なコンクリート剥落防止工法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、コンクリート構造物の突合せ部に、下塗り塗膜、繊維シート及び上塗り塗膜を備える積層体を形成させて、コンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止する方法において、水系下塗り塗料及び水系上塗り塗料として引火点のない水系エマルジョン塗料を用いてクリアな下塗り塗膜及び上塗り塗膜を形成させ、また、繊維シートとして特定の厚さ、目合い及び引張強度を有する繊維シートを用いることで、環境への負荷が少ない上、安全でかつ塗装時の作業性に優れるとともに、コンクリート構造物の突合せ部におけるコンクリートの剥落を防止でき、施工後のコンクリート面の目視による点検が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のコンクリート剥落防止工法は、鋼桁、コンクリート部、及び該鋼桁と該コンクリート部の突合せ部を備えるコンクリート構造物の突合せ部に、下塗り塗膜、繊維シート及び上塗り塗膜を備える積層体を形成させて、コンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止する方法であって、
水系下塗り塗料でコンクリート構造物の表面を塗装し、少なくとも突合せ部を覆うように下塗り塗膜を形成させる第1の工程と、
下塗り塗膜上に繊維シートを配置させる第2の工程と、
下塗り塗膜及び繊維シートを覆うように水系上塗り塗料による塗装を行い、上塗り塗膜を形成させる第3の工程とを含み、
前記水系下塗り塗料及び前記水系上塗り塗料が、引火点のない水系エマルジョン塗料であり、
前記下塗り塗膜及び前記上塗り塗膜が、クリア塗膜であり、
前記繊維シートが、厚さが0.1〜1.5mmで、目合いは一辺が1〜15mmで、引張強度が200〜1000(N/5cm)である繊維シートであることを特徴とする。
本発明のコンクリート剥落防止工法の好適例においては、前記繊維シートが、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維及びポリエチレン繊維よりなる群から選択される繊維からなる。
本発明のコンクリート剥落防止工法の他の好適例においては、前記積層体の厚さが200〜2000μmの範囲内にあり、前記積層体の厚さに対してコンクリート構造物表面からの厚さが30〜70%となる範囲のいずれかの位置に前記繊維シートが配置されている。
本発明のコンクリート剥落防止工法の他の好適例においては、第1の工程を開始してから第2の工程を完了するまでの時間が1〜420分である。
本発明のコンクリート剥落防止工法の他の好適例においては、前記下塗り塗料および前記上塗り塗料の塗装手段が、ローラー塗装である。
本発明のコンクリート剥落防止工法の他の好適例においては、前記水系下塗り塗料及び前記水系上塗り塗料が、同一の2液反応硬化型の水系エポキシ樹脂エマルジョン塗料である。
本発明によれば、安全に施工を完了できるとともに、コンクリート構造物の突合せ部におけるコンクリートの剥落を防止でき、施工後のコンクリート面の目視による点検が可能なコンクリート剥落防止工法を提供することができる。
以下に、本発明のコンクリート剥落防止工法を詳細に説明する。本発明のコンクリート剥落防止工法は、鋼桁、コンクリート部、及び該鋼桁と該コンクリート部の突合せ部を備えるコンクリート構造物の突合せ部に、下塗り塗膜、繊維シート及び上塗り塗膜を備える積層体を形成させて、コンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止する方法であって、水系下塗り塗料でコンクリート構造物の表面を塗装し、少なくとも突合せ部を覆うように下塗り塗膜を形成させる第1の工程と、下塗り塗膜上に繊維シートを配置させる第2の工程と、下塗り塗膜及び繊維シートを覆うように水系上塗り塗料による塗装を行い、上塗り塗膜を形成させる第3の工程とを含み、前記水系下塗り塗料及び前記水系上塗り塗料が、引火点のない水系エマルジョン塗料であり、前記下塗り塗膜及び前記上塗り塗膜が、クリア塗膜であり、前記繊維シートが、厚さが0.1〜1.5mmで、目合いは一辺が1〜15mmで、引張強度が200〜1000(N/5cm)である繊維シートであることを特徴とする。
本発明のコンクリート剥落防止工法において、下塗り塗料及び上塗り塗料は、引火点のない水系エマルジョン塗料である。このため、本発明のコンクリート剥落防止工法は、環境への負荷が少ない上、塗料自体は引火点を有さない完全水系の剥落防止工法であると言える。また、引火点のない水系塗料は、作業者への有機溶剤中毒の防止の観点からも好ましい健康や安全面を考慮された塗料であるし、たとえ火災が発生しても延焼等の二次災害を引き起こすこともない。更に、水系塗料であれば、都市部や繁華街等でも臭気が気にならず、近隣への臭気対策が可能である。
水系塗料とは、水を主溶媒として含む塗料である。本発明のコンクリート剥落防止工法において、下塗り塗料及び上塗り塗料中における水の含有量は、それぞれ独立して、20〜65質量%であることが好ましい。また、水系エマルジョン塗料とは、樹脂が水等の水性媒体中で分散し乳濁液(エマルジョン)を形成している塗料を指す。
また、引火点のない水系塗料とは、JIS K 2265に規定の引火点評価試験を行った場合に引火を起こさない水系塗料を意味する。
本発明のコンクリート剥落防止工法において、下塗り塗料及び上塗り塗料は、水系エマルジョン塗料であるため、塗装直後に形成される塗膜は白濁しているため、膜厚の確認が容易で、施工時の膜厚の管理がし易い。一方、本発明のコンクリート剥落防止工法において、最終的に形成される下塗り塗膜及び上塗り塗膜は、クリア塗膜であるため、コンクリート面の変状を目視で確認することもできる。このように、水系エマルジョン塗料及びクリア塗膜の両立を達成する観点から、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ふっ素樹脂等のエマルジョン樹脂を用いることが好ましい。本発明において、エマルジョン樹脂とは、水等の水性媒体中で分散し乳濁液(エマルジョン)を形成可能な樹脂である。なお、これら樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のコンクリート剥落防止工法において、下塗り塗膜及び上塗り塗膜は、クリア塗膜であるが、具体的には、乾燥膜厚400μmの塗膜を形成させた際の波長360〜750nmの可視光透過率が50%以上であり且つヘーズが70以下である塗膜であることが好ましい。乾燥膜厚が400μmである塗膜の、波長360〜750nmの可視光透過率が50%以上であり且つヘーズが70以下であれば、施工後のコンクリート面の目視での点検が容易であるため、コンクリート面の変状を目視で確認することもできる。上記可視光透過率について言えば、その上限は100%であるが、60〜95%であることが好ましい。また、ヘーズについては、完全に透明な塗膜であれば0となるが、0.2〜50であることが好ましく、5〜40であることがより好ましい。
ここで、可視光透過率及びヘーズを測定する際に用いる塗膜としては、既知の塗装手段により水系エマルジョン塗料をガラス板上に塗布し、23℃、50%相対湿度の条件で24時間乾燥させることによって形成される乾燥膜厚400μmの塗膜を使用できる。上記可視光透過率は、可視領域(360nm〜750nm)における全光線透過率を意味し、塗膜の全光線透過率をJIS R3106「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法」に基づき測定される。可視光透過率の測定装置には、例えば紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製「MPC3100UV−3100PC」等)を使用できる。また、上記ヘーズは、曇り度とも称されるものであり、透明度を示す指標となる。JIS K7136「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に基づき、塗膜のヘーズを測定することができる。ヘーズの測定装置には、例えばヘーズメーター(日本電色工業株式会社「HAZE METER NDH5000」等)を使用できる。
上記水系エマルジョン塗料から、上記特定した範囲の可視光透過率及びヘーズを有する乾燥膜厚400μmの塗膜を形成するためには、上記エマルジョン樹脂の使用に加え、顔料の含有量を調整することが好ましい。好ましくは、上記水系エマルジョン塗料の塗膜形成成分中における顔料全体の含有量を0質量%〜10質量%に調整し且つ該塗膜形成成分中の着色顔料の含有量を0質量%〜0.5質量%に調整することで、上記特定した範囲の可視光透過率及びヘーズを有する乾燥膜厚400μmの塗膜を形成することが可能となる。
なお、本発明においては、上記水系エマルジョン塗料を150℃で60分間乾燥させた際に残存する成分を塗膜形成成分として取り扱う。上記水系エマルジョン塗料に占める塗膜形成成分の割合(R)(質量%)は、以下の式により求められる。
R=(塗膜形成成分の質量)×100/(塗料組成物の質量)
本発明のコンクリート剥落防止工法において、下塗り塗料及び上塗り塗料は、それぞれ独立して、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ウレタン樹脂及びふっ素樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂を含む水系エマルジョン塗料であることが好ましいが、エポキシ樹脂を含むことが更に好ましい。エポキシ樹脂は、コンクリート構造物に対する付着性に優れるため、高度なコンクリート剥落防止性能を提供することができる。また、下塗り塗料及び上塗り塗料の両方が、エポキシ樹脂を含む水系エマルジョン塗料であれば、積層体の層間付着性をも向上できると共に、施工期間を短縮することが可能である。なお、下塗り塗料及び上塗り塗料は、施工期間の短縮(具体的には1日での施工の完了)及び層間付着性の向上の観点から、同一の2液反応硬化型の水系エポキシ樹脂エマルジョン塗料であることが特に好ましい。
上記水系エマルジョン塗料に使用できるエポキシ樹脂としては、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する樹脂であることが好ましく、例えば、多価アルコール又は多価フェノールとハロヒドリンとを反応させて得られるものであり、具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ化油、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル及びネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、塗膜の耐久性やコンクリート構造物に対する付着性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。なお、これらエポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記エポキシ樹脂は、塗膜の仕上がり性や硬化性の観点から、通常、エポキシ当量は100〜1,000g/eqが好ましく、160〜980g/eqがより好ましく、160〜550g/eqが更に好ましい。エポキシ当量が100g/eq未満では、十分な塗膜物性が得られないおそれがあり、一方でエポキシ当量が1,000g/eqより大きい場合には、レベリング性が低下し、均一な塗膜が得られないおそれがある。
上記エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂エマルジョンの形態で配合されるのが好ましい。本発明において、エポキシ樹脂エマルジョンとは、エポキシ樹脂が水等の水性媒体中で分散してなる乳濁液を意味する。上記エポキシ樹脂エマルジョンは、特に制限されないが、通常の強制乳化方式(乳化剤及び高速攪拌機等を使用する方式)によって、水等の水性媒体中でエポキシ樹脂を乳化させることにより調製される。ここで、乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル系ノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のポリエーテル類、或いは該ノニオン界面活性剤及び該ポリエーテル類の少なくとも一方とジイソシアネート化合物との付加物等が挙げられる。なお、これら乳化剤は、1種単独でも、2種以上のブレンドとして用いてもよい。また、エポキシ樹脂エマルジョンの市販品としては、例えば、エポルジョンEA1、2、3、7、12、20、55及びHD2(ヘンケルジャパン社製);ユカレジンKE−002、KE−116、E−1022、KE−301C(吉村油化学社製);アデカレジンEM−101−50(アデカ社製);jER−W3435R67、W1155R55(三菱化学社製)等が挙げられる。
本発明のコンクリート剥落防止工法において、下塗り塗料及び上塗り塗料として用いられる水系エマルジョン塗料は、付着性の観点から、エポキシ樹脂を含む2液反応硬化型塗料であることが更に好ましい。ここでいう2液反応硬化型塗料とは、塗装時にエポキシ樹脂(通常、既にエマルジョン形態で存在する)を含む主剤と硬化剤とを混合することで使用されるものであり、常温乾燥型の塗料として容易に使用可能である。このため、既に建設されたコンクリート構造物への塗装までを考慮すると、2液反応硬化型塗料は好適である。なお、ここでいう「常温」とは5〜35℃である。
上記エポキシ樹脂含有2液反応硬化型塗料に用いる硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤である限り特に限定されるものではないが、アミン化合物が好ましく、1分子中に2個以上のアミノ基を含有し、分子量120以上のポリアミン化合物が更に好ましい。上記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、トリアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、及び1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂肪族ポリアミン;フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、及びジアミノジフエニルメタン等の芳香族ポリアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、トリエチレングリコールジアミン、及びトリプロピレングリコールジアミン等の他のポリアミン化合物と、これらポリアミン化合物のアミノ基を変性してなる変性ポリアミン化合物とが挙げられる。なお、上記ポリアミン化合物の変性には、既知の方法が利用でき、変性反応の例としては、アミノ基のアミド化、アミノ基とカルボニル化合物のマンニッヒ反応、アミノ基とエポキシ基の付加反応等が挙げられる。ここで、アミノ基にエポキシ基等が付加したタイプの変性ポリアミン化合物をアダクトタイプの変性ポリアミン化合物といい、アミノ基にエポキシ基が付加したエポキシアダクトタイプの変性ポリアミン化合物が好ましい。なお、これらアミン化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記アミン化合物は、アミン化合物のエマルジョン、アミン化合物のディスパージョン又はアミン化合物の水溶液の形態で使用してもよいが、アミン化合物それ自体を直接使用することも可能である。なお、本発明において、アミン化合物のエマルジョンとは、アミン化合物が水等の水性媒体中で分散してなる乳濁液を意味し、アミン化合物のディスパージョンとは、アミン化合物が水等の水性媒体中で分散してなる分散液を意味する。なお、上記アミン化合物としては、市販品を好適に使用できる。
上記エポキシ樹脂含有2液反応硬化型塗料において、硬化剤がアミン化合物である場合、該硬化剤の配合割合は、塗膜の硬化性の観点から、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、アミン化合物の活性水素が、0.5〜3.0当量であることが好ましく、0.6〜1.5当量であることが更に好ましい。なお、上記エポキシ樹脂含有2液反応硬化型塗料中において、エポキシ樹脂と硬化剤の合計含有量は、10〜80質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることが更に好ましい。
上記水系エマルジョン塗料は、着色顔料や体質顔料等の各種顔料を含むことができる。上記水系エマルジョン塗料は、上記特定した範囲の可視光透過率及びヘーズを有する乾燥膜厚400μmの塗膜を形成する観点から、塗膜形成成分中の顔料全体の含有量が0質量%〜10質量%であることが好ましく、0.1質量%〜5質量%であることがより好ましく、0.5〜3質量%であることが更に好ましい。なお、顔料は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記水系エマルジョン塗料は、上記特定した範囲の可視光透過率及びヘーズを有する乾燥膜厚400μmの塗膜を形成する観点から、塗膜形成成分中の着色顔料の含有量が0質量%〜0.5質量%であることが好ましく、0質量%〜0.1質量%であることがより好ましい。着色顔料としては、例えば、酸化チタン及びカーボンブラック等が好適に挙げられる。
上記水系エマルジョン塗料は、塗膜形成成分中の体質顔料の含有量が0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.3質量%〜8質量%であることがより好ましく、0.5質量%〜5質量%であることが更に好ましい。体質顔料を配合することで、塗膜のヘーズをより確実に低下させることができるとともに、塗料をたれずに厚みをつけて塗装することができる。また、体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、水和アルミナ、マグネシア、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、ウォラストナイト、セラミック粉末、ガラス繊維粉末、ホワイトカーボン、珪酸マグネシウム等が挙げられ、これらの中でも、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウムが好ましく、特に、水中での分散安定性やヘーズの低減効果の観点から、ホワイトカーボンが好ましい。上記水系エマルジョン塗料において、塗膜形成成分中のホワイトカーボンの含有量は0.1質量%〜5質量%であることが好ましく、0.5質量%〜3質量%であることがより好ましい。塗膜形成成分中のホワイトカーボンの含有量が5質量%を超えると、光沢が低下したり、レベリング性が低下して均一な塗膜が得られないおそれがある。
上記水系エマルジョン塗料に用いる顔料は、50%体積平均径が1μm以下であることが好ましく、0.003〜0.5μmであることがより好ましく、0.003〜0.1μmであることが更に好ましい。顔料の50%体積平均径が1μm以下であれば、塗膜のヘーズをより確実に低下させることができる。本発明において、50%体積平均径は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D50)を指し、粒度分布測定装置(例えばレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。そして、本発明における粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
上記水系エマルジョン塗料は、上記特定した範囲の可視光透過率及びヘーズを有する乾燥膜厚400μmの塗膜を形成する観点から、液状増粘剤を含むことが好ましい。なお、本発明において、液状の増粘剤とは、5〜35℃において液体である増粘剤を指す。液状増粘剤としては、例えば、チクゾールK−130B(共栄社)、BYK−7420ES(BYK)等が挙げられる。
上記水系エマルジョン塗料には、その他の成分として、イソシアネート化合物等のその他硬化剤、防錆剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、ダレ止め剤、硬化促進剤、防藻剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を必要に応じて適宜配合してもよい。なお、添加剤には有機溶剤が使用されている場合もあるが、本発明に使用される水系塗料中においては、環境への負荷を抑える観点から、有機溶剤の含有量が10質量%未満であることが好ましい。
本発明のコンクリート剥落防止工法において、上記水系エマルジョン塗料は、塗膜形成成分の割合が35〜80質量%であることが好ましい。塗膜形成成分の割合が35質量%以上であれば、環境負荷が小さいだけでなく、厚膜塗装性に優れるという効果も得られる。なお、本発明において、塗膜形成成分とは、塗膜を形成するための塗料中に含まれる成分を意味し、樹脂の他、必要に応じて配合される顔料、添加剤等が挙げられる。
上記水系エマルジョン塗料は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製できる。2液反応硬化型塗料の場合、樹脂を含む主剤と硬化剤は分けて保存されており、塗装直前にこれらを混合して調製される。主剤は、樹脂や水の他、必要に応じて適宜選択される各種成分と組み合わせて保存されており、既にエマルション形態であることが好ましい。また、硬化剤も、通常、水や必要に応じて適宜選択される各種成分と組み合わせて保存されており、これを硬化剤配合物と称する。上記水系エマルジョン塗料の粘度を調整するため、上記主剤と、硬化剤又は硬化剤配合物とを混合した後に、水を更に加えてもよい。
上記水系エマルジョン塗料は、ずり速度0.1(1/s)における粘度が1〜1000(Pa・s、23℃)であり、ずり速度1000(1/s)における粘度が0.05〜10(Pa・s、23℃)であることが好ましい。上述の特定した範囲内に粘度を調整することにより、塗装作業性を向上させることができる。それぞれのせん断速度での粘度が上記の範囲内にあることで、塗装作業性、タレ性に優れるため、膜厚の均一な塗膜を容易に形成することが可能となる。なお、本発明において、粘度は、TAインスツルメンツ社製レオメーターARESを用い、液温を23℃に調整した後に測定される。
本発明のコンクリート剥落防止工法においては、水系下塗り塗料及び水系上塗り塗料としての上記水系エマルジョン塗料の塗装により下塗り塗膜及び上塗り塗膜を形成することになるが、塗装方法は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、エアースプレー塗装、エアレススプレー塗装等が利用できるが、既に建設されたコンクリート構造物への塗装までを考慮すると、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装及びヘラ塗装が好適である。特に、塗装作業性の観点から、下塗り塗料および上塗り塗料の塗装手段がローラー塗装であることが好ましい。
本発明のコンクリート剥落防止工法において、コンクリート構造物は、鋼桁、コンクリート部、及び該鋼桁と該コンクリート部の突合せ部を備えるものであり、その具体例としては、高架橋、橋梁、橋脚、橋台、桁、床版、高欄等の各種コンクリート構造物やその部材等が挙げられる。コンクリート部は、コンクリートを単体で利用した部材や鉄筋コンクリートを利用した部材などが挙げられる。鋼桁とコンクリート部の突合せ部は、ハンチ部とも呼ばれる。上述のとおり、ハンチ部では、鋼桁の材質や形状(一般にはフランジを備える形状)からコンクリートに応力がかかりやすく、欠落しやすいという問題があるが、本発明のコンクリート剥落防止工法によれば、このハンチ部においても十分なコンクリートの剥落防止効果を発揮することが可能である。
本発明のコンクリート剥落防止工法においては、まず、水系下塗り塗料でコンクリート構造物の表面を塗装し、少なくとも突合せ部を覆うように下塗り塗膜を形成させる(第1の工程)。上記第1の工程によって得られる下塗り塗膜は、その乾燥膜厚が50〜1000μmであることが好ましい。本発明において、塗膜の乾燥膜厚とは、最終的に形成される塗膜の厚さを指すが、具体的には23℃、50%相対湿度の条件にて24時間乾燥した後の膜厚を例示することができる。なお、上記コンクリート構造物は、下塗り塗料による塗装を行う前に、その表面をプライマーやパテ材で塗装される場合もある。この場合、水系下塗り塗料及び水系上塗り塗料をエポキシ樹脂系塗料とし、プライマーやパテ材にもエポキシ樹脂系のものを使用することで施工期間を短縮することができる。
本発明のコンクリート剥落防止工法においては、次に、上記第1の工程により形成された下塗り塗膜上に繊維シートを配置させる(第2の工程)。ここで、繊維シートは、上記下塗り塗料の乾燥や硬化が完了する前に塗膜上に置くことが好ましい。これにより、繊維シートを下塗り塗膜上へ容易に貼り付けることができる。
特に、本発明のコンクリート剥落防止工法においては、第1の工程を開始してから第2の工程を完了するまでの時間が1〜420分であることが好ましく、より具体的には、水系下塗り塗料によるコンクリート構造物表面の塗装後、繊維シートの配置を完了するまでの時間が、5℃にて1〜420分又は23℃にて1〜180分であることが好ましい。これにより、下塗り塗膜の硬化の過程において、繊維シートの配置を完了できると共に、水系上塗り塗料による塗装の開始乃至完了までを行うことができるため、施工期間を大幅に短縮できると共に、層間付着性をも大幅に向上させることができる。
本発明のコンクリート剥落防止工法に用いる繊維シートは、施工後の目視での点検を容易にすると共に、ハンチ部におけるコンクリートの剥落を防止する観点から、その厚さが0.1〜1.5mmで、目合いは一辺が1〜15mmで、引張強度が200〜1000(N/5cm)である。尚、引張強度は、JIS L 1096に準じて測定した値であり、本発明においては、繊維シートの縦方向及び横方向のいずれにおいても、引張強度が200〜1000(N/5cm)である。繊維シートの厚さは、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.2〜0.5mmであることがより好ましい。また、目合いは一辺が2〜10mmが好ましく、中でも2〜5mmがより好ましく、引張強度は400〜800(N/5cm)が好ましく、特に500〜700(N/5cm)が好ましい。当該繊維シートは、その形状が通常格子状であるが、上記特定した範囲内の厚さ、目合いの大きさ及び引張強度を有することにより、形状が複雑で、応力がかかりやすいハンチ部のような対象に対しても適用するのに十分な柔軟性及び強度を確保することができる。
上記繊維シートとしては、例えば、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレン繊維、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、炭素繊維等の繊維で構成されるシートが挙げられるが、望ましい点検の容易さ、柔軟性及び強度を確保する観点から、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維及びポリエチレン繊維等の繊維で構成されるシートが好ましい。
本発明のコンクリート剥落防止工法において、繊維シートとしては、市販品を使用できる。
本発明のコンクリート剥落防止工法においては、次に、下塗り塗膜及び繊維シートを覆うように水系上塗り塗料による塗装を行い、上塗り塗膜を形成させる(第3の工程)。上記下塗り塗膜の乾燥や硬化が完了する前に、繊維シートの貼り付けと、上塗り塗料の塗装までを終わらせることで、施工期間を大幅に短縮できると共に、層間付着性をも大幅に向上させることができる。上記第3の工程によって得られる上塗り塗膜は、その乾燥膜厚が50〜1000μmであることが好ましい。本発明において、塗膜の乾燥膜厚とは、最終的に形成される塗膜の厚さを指すが、具体的には23℃、50%相対湿度の条件にて24時間乾燥した後の膜厚を例示することができる。
本発明のコンクリート剥落防止工法において、上記積層体は、厚さが200〜2000μmの範囲内であることが好ましい。また、本発明のコンクリート剥落防止工法においては、上記積層体の厚さに対してコンクリート構造物表面からの厚さが30〜70%となる範囲のいずれかの位置に繊維シートが配置されていることが好ましい。これによりコンクリート構造物への十分な付着性の確保と繊維シートの保護が可能になる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
表1〜2に示す配合処方に従い、主剤1〜8及び硬化剤配合物1〜3を調製した。
Figure 2019007313
Figure 2019007313
(注1)Beckpox EP2381(オルネクス社製水系ビスフェノールA型エポキシ樹脂エマルジョン、塗膜形成成分55質量%、エポキシ当量500g/eq(塗膜形成成分))
(注2)エポルジョンEA55(日本NSC社製水系ビスフェノールA型エポキシ樹脂エマルジョン、塗膜形成成分55質量%、エポキシ当量495g/eq(塗膜形成成分))
(注3)バーノック WE−301(DIC社製水系アクリル樹脂エマルジョン、塗膜形成成分45質量%、水酸基価80g/eq(塗膜形成成分))
(注4)EPICLON 1050−70X(DIC社製有機溶剤系ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液、塗膜形成成分70質量%、エポキシ当量475g/eq(塗膜形成成分))
(注5)AEROSIL R972(日本アエロジル社製疎水性フォームドシリカ、平均粒子径0.016μm)
(注6)タイペークCR−90(石原産業社製、平均粒子径0.25μm)
(注7)チクゾールK−130B(共栄社化学製アルカリ増粘型増粘剤、塗膜形成成分21質量%)
(注8)A−S−A T−550F(伊藤製油社製脂肪酸アミド系増粘剤、塗膜形成成分100質量%)
(注9)フジキュアーFXS−918−FA(T&K TOKA社製、アミノ基にエポキシ基が付加したエポキシアダクトタイプの変性ポリアミン化合物の水分散液、塗膜形成成分60質量%)
(注10)DNW−6000(DIC社製、水分散タイプの無溶剤型ポリイソシアネート、塗膜形成成分100質量%)
(注11)LUCKAMIDE TD961(DIC社製、有機溶剤系ポリアミドアダクトタイプの変性ポリアミン化合物溶液、塗膜形成成分50質量%)
なお、表1及び表2中、塗膜形成成分とは、主剤又は硬化剤混合物を150℃で60分間加熱した際に残存する成分を指す。
(実施例1〜22及び比較例1〜5)
表3〜4に示す配合処方に従う塗料を下塗り塗料として用意し、各種試験を行った。結果を表3〜4に示す。なお、上塗り塗料は、下塗り塗料と同一の塗料を用いた。
<塗装作業性>
ローラーにより、塗料でコンクリート床版のハンチ部及びその周囲を塗装して下塗り塗膜を形成させ、次いで繊維シートを配置させ、次いで、ローラーにより、同一の塗料で下塗り塗膜及び繊維シートを塗装して上塗り塗膜を形成させ、積層体を作製した。使用した塗料及び繊維シートの組み合わせを表3〜4に示す。また、表3〜4の施工条件の欄には、下塗り塗膜、繊維シート、上塗り塗膜及び積層体の厚さ、積層体の厚さに対するコンクリート床版表面からの繊維シートの配置位置(平均値)、並びに下塗り塗膜用の塗料での塗装の開始から繊維シートの貼り付けを完了するまでの時間を示す。なお、塗装作業性に関する評価項目は、たれ性、ハンチ部の形状に対する繊維シートの追従性、塗装箇所管理のしやすさとした。
<たれ性>
下記の基準に従って評価した。
○:たれることなく均一な膜を塗装することができる。
△:部分的にたれを生じ、膜厚ムラを生じる。
<繊維シートの追従性>
下記の基準に従って評価した。
○:ハンチ部の形状にシートが追従し、容易に貼り付けることができる。
△:下塗り塗料が表面乾燥してシートを張り付けることができないため、再度下塗り塗料を薄く塗布し、シートを張り付けた後、上塗り塗料を塗装する必要がある。
×:繊維シートが硬く、ハンチ部の形状に追従しないため、部分的なシート浮きを生じる。
<塗装箇所管理のしやすさ>
下記の基準に従って評価した。
○:塗装箇所の判別が容易であり、塗装漏れの恐れがない。
×:塗装箇所の判断が困難であり、塗装漏れの恐れがある。
<可視光透過率>
基材をコンクリート床版からポリプロピレン板に変更した以外は、上記<塗装作業性>に記載される方法と同様にして積層体を作製した。
その後、積層体を温度23℃相対湿度50%で168時間乾燥させ、ポリプロピレン板から剥がした。積層体から50mm×50mmの試験片を切り出した。サカタインクス株式会社製マクベス分光光度計CE−3100を用いて、JIS K 7375に基づき、該試験片の全光線透過率を測定した。具体的には、360nm〜750nmまで10nm置きに全光線透過率を測定し、得られた40データの合計を、データ数で割った値を可視光透過率とした。
<基材可視性>
上記<塗装作業性>に記載される方法と同様にして積層体を作製した。その後、積層体を温度23℃相対湿度50%で168時間乾燥させ、積層体の上からコンクリート床版を目視で観察し、下記の基準に従って評価を行った。
◎:基材表面を鮮明に確認できる。
〇:鮮明ではないものの基材表面を確認することが出来る。
×:基材表面を確認することが出来ない。
<剥落防止性能>
基材をコンクリート床版から下記コンクリート基材に変更した以外は、上記<塗装作業性>に記載される方法と同様にして積層体を作製した。その後、積層体を温度23℃相対湿度50%で168時間乾燥させた。
なお、コンクリート基材としては、JIS A 5372:2004(プレキャスト鉄筋コンクリート製品)に規定するU形ふた、呼び名1種(400×600×60mm)を用いた。
次いで、積層体を備えるコンクリート基材に対して、「首都高速道路株式会社 橋梁構造物設計要領 コンクリート片剥落防止編 平成18年8月版」に準拠して剥落防止性能試験を行い、下記基準に従い評価した。本評価による押抜き荷重が0.3kN以上であればハンチ部に求められる剥落防止性能が確保できる。
・耐荷性
◎:φ10cmあたりの押抜き荷重0.5kN以上。
〇:φ10cmあたりの押抜き荷重0.3kN〜0.5kN未満。
×:φ10cmあたりの押抜き荷重0.3kN未満。
<付着性試験>
上記<塗装作業性>に記載される方法と同様にして積層体を作製した。その後、積層体を、23℃及び5℃の恒温室(湿度50%RH)にて、それぞれ7日間、30日間養生を行った。次いで、積層体を備えるコンクリート床版に対して、建研式付着力試験機を用いた剥離試験を行い、剥離時の数値を下記基準により評価した。
◎:1.5N/mm以上。
〇:1.0N/mm〜1.5N/mm未満。
×:1.0N/mm未満。
<耐久性(耐候性)試験>
コンクリート構造物の種類及び積層体の乾燥条件以外は、<剥落防止性能>と同様に、積層体を形成させた。コンクリート構造物としては、寸法20×70×70mmのモルタル片を用いた。乾燥条件としては、積層体を温度23℃相対湿度50%で168時間乾燥させ、試験板を作製した。得られた試験板に、岩崎電気社製EYE SUPER UV TESTER SUV−W23を用いて400時間の照射試験を行った。照射後の試験板に対して、積層体の上からコンクリート構造物を目視で観察し、下記基準により評価を行った。
◎:基材表面を鮮明に確認できる。
〇:鮮明ではないものの基材表面を確認することが出来る。
×:基材表面を確認することが出来ない。
×1:シートの目合いが密であるため、基材表面を確認することが出来ない。
×2:シートの目合いが密であり、さらに着色されているため、基材表面を確認することが出来ない。
Figure 2019007313
Figure 2019007313
(注12)ガラスクレネット G2200[倉敷紡績株式会社製、厚さ:0.25mm、目合い:5mm、引張強度(縦:510、横:550(N/5cm)(糸本数、縦:10本、横:10本))]
(注13)ガラスクロス[倉敷紡績株式会社製、厚さ:0.14mm、目合い:0.5mm、引張強度(縦:800、横:800(N/5cm)(糸本数、縦:40本、横:35本))]
(注14)ポリエステルクレネット E4500[倉敷紡績株式会社製、厚さ:0.26mm、目合い:2mm、引張強度(縦:800、横:860(N/5cm)(糸本数、縦:23本、横:23本))]
(注15)ポリエステルクレネット E1100[倉敷紡績株式会社製、厚さ:0.18mm、目合い:10mm、引張強度(縦:82、横:97(N/5cm)(糸本数、縦:5本、横:5本))]
(注16)KSMシート[キョーワ株式会社製、厚さ:0.40mm、目合い:4mm、引張強度(縦:490、横:490(N/3cm)(糸本数、縦:8本、横:8本))]
(注17)リペラークMRK−M6−30[三菱ケミカルインフラテック株式会社製、厚さ:0.14mm、目合い:0mm、引張強度:1900N/mm
比較例1は剥落防止性能、基材可視性には優れるものの、塗装時にも透明な溶剤系塗料を用いているため、塗装時の塗装箇所管理が困難であったとともに、該溶剤系塗料は引火点を有する塗料であるので、塗装時の安全性が不十分である。比較例2は可視光透過率が20%と低く、基材表面を目視で確認することができなかった。比較例3は繊維シートの目合いが小さく、剥落防止性能は確保されるものの、繊維シート追従性、基材可視性が不十分であった。比較例4は繊維シートの引張強度が弱く、十分な剥落防止性能が得られなかった。比較例5は繊維シートに目合いがないことから、基材可視性が得られなかった。これに対して、実施例1〜22は、本願の目的を達成し、安全に施工を完了できるとともに、コンクリート構造物の突合せ部におけるコンクリートの剥落を防止でき、施工後のコンクリート面の目視による点検が可能なコンクリート剥落防止工法であった。

Claims (6)

  1. 鋼桁、コンクリート部、及び該鋼桁と該コンクリート部の突合せ部を備えるコンクリート構造物の突合せ部に、下塗り塗膜、繊維シート及び上塗り塗膜を備える積層体を形成させて、コンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止する方法であって、
    水系下塗り塗料でコンクリート構造物の表面を塗装し、少なくとも突合せ部を覆うように下塗り塗膜を形成させる第1の工程と、
    下塗り塗膜上に繊維シートを配置させる第2の工程と、
    下塗り塗膜及び繊維シートを覆うように水系上塗り塗料による塗装を行い、上塗り塗膜を形成させる第3の工程とを含み、
    前記水系下塗り塗料及び前記水系上塗り塗料が、引火点のない水系エマルジョン塗料であり、
    前記下塗り塗膜及び前記上塗り塗膜が、クリア塗膜であり、
    前記繊維シートが、厚さが0.1〜1.5mmで、目合いは一辺が1〜15mmで、引張強度が200〜1000(N/5cm)である繊維シートであることを特徴とする方法。
  2. 前記繊維シートが、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維及びポリエチレン繊維よりなる群から選択される繊維からなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記積層体の厚さが200〜2000μmの範囲内にあり、前記積層体の厚さに対してコンクリート構造物表面からの厚さが30〜70%となる範囲のいずれかの位置に前記繊維シートが配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 第1の工程を開始してから第2の工程を完了するまでの時間が1〜420分であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記下塗り塗料および前記上塗り塗料の塗装手段が、ローラー塗装であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記水系下塗り塗料及び前記水系上塗り塗料が、同一の2液反応硬化型の水系エポキシ樹脂エマルジョン塗料であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
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