JP2019004780A - 冷凍パン生地及び練り込み用油脂組成物 - Google Patents

冷凍パン生地及び練り込み用油脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】冷凍保存後にも関わらず、ボリューム及び食感が優れたパンを作業性よく製造可能な冷凍パン生地を提供すること
【解決手段】油脂組成物が練り込まれ、冷凍されたパン生地であって、前記油脂組成物は、融点が25〜45℃の油脂と、L−アスコルビン酸とを含有し、含気され、比重が0.2〜0.8g/mLであり、油脂組成物の含有量は穀粉100重量部に対し1〜30重量部、油脂組成物に含まれるL−アスコルビン酸の含有量は穀粉100重量部に対し1.0×10−3〜1.0×10−1重量部、油脂組成物に含まれていないがパン生地中に含まれているL−アスコルビン酸の含有量は穀粉100重量部に対し3×10−2重量部未満である、冷凍パン生地。
【選択図】なし

Description

本発明は、油脂組成物が練り込まれた冷凍パン生地、冷凍パン生地練り込み用油脂組成物、冷凍パン生地の製造方法、及びパンの製造方法に関する。
誰でも簡単に、タイムリーに焼きたてのパンを提供するための技術として、冷凍保存されたパン生地を、販売前に解凍、焼成してパンを提供する冷凍生地製法がある。この方法を用いると、製パン技術者を必要とせず、店頭で冷凍庫から冷凍パン生地を取り出し、オーブンで焼成するだけで焼きたてのパンを低コストで提供することが可能になる。そのため、近年の消費者のグルメ嗜好の高まりもあり、該製法が広がりつつある。しかしながら、冷凍パン生地を焼成して得られるパンは、冷凍時間が長くなるほど内相が荒れ、ボリュームが小さく、食感が劣化すると言った問題がある。
一方、パン生地改良剤として、パン生地中のグルテンを架橋させる効果を持つ酸化剤であるL−アスコルビン酸が広く用いられている。L−アスコルビン酸そのものは本来還元剤であるが、製パン時には酸化された後で酸化剤として作用する。具体的には、L−アスコルビン酸をパン生地に添加しミキシングすると、ミキシング中に空気中の酸素によってデヒドロアスコルビン酸に酸化され、このデヒドロアスコルビン酸が酸化剤として作用する。L−アスコルビン酸は、パン生地に添加してミキシングし始めた直後からデヒドロアスコルビン酸に酸化されグルテンの架橋効果を発現する、即効性の酸化剤である。
製パン工程においてこのような即効性の酸化剤をパン生地に直接添加すると、ミキシング段階でパン生地中のグルテンの架橋が進行してパン生地が締まり始める。その結果、ミキシング後の成型時には、パン生地は伸展性が乏しくなり、締まり気味の、切れ易い生地となり、そのパン生地を焼成して得たパンは、内相が荒れ、食感不良を生じるという欠点がある。しかも、デヒドロアスコルビン酸の存在によりパンのボリュームはある程度改善されるものの、十分なものではなかった。従って、L−アスコルビン酸を添加して製造された従来のパンは、ミキシング時に生地が損傷したり、成型時の作業性やパンの品質の点で満足できるものではなかった。
理想的には、ホイロ(最終発酵)に入るまではパン生地に伸展性があり、ホイロに入ってからグルテンの架橋が起きてパン生地が締まることが好ましく、そのような挙動を示すことによってパン生地が傷みにくくなり、内相のキメが細かく、ボリュームや食感に優れたパンを製造することができる。そこで、ホイロに入ってから架橋が起きるように、上記酸化剤の効果を遅延させる方法が望まれている。
特許文献1には、L−アスコルビン酸の効果を遅延させるために、約40℃附近で熔融するコーティング剤でL−アスコルビン酸を皮膜した粉末を食パン用酸化剤として用いる方法が開示されている。しかし、この方法では、L−アスコルビン酸の被覆は不十分であり、酸化剤の効果を遅延させる効果が十分ではなかった。さらに、L−アスコルビン酸を酸化剤として作用させるのに十分な気体が供給されないため、酸化剤としての十分な効果が得られなかった。
特許文献2には、融点が45〜63℃の油脂でL−アスコルビン酸を被覆した被覆顆粒を製パン用添加物として用いる方法が開示されている。しかし、油脂の融点が45〜63℃であるため、ホイロの段階ではL−アスコルビン酸の効果が発現せず、また、十分な気体も供給されないため、酸化剤としての十分な効果が得られなかった。
特許文献3では、トランスグルタミナーゼ、L−アスコルビン酸、及びパン用乳化剤を含有する、冷凍生地用のパン品質改良剤が開示されており、これを穀粉に混合してパン生地を作製することで、パン容積、高さ、比容積を落とさずに、冷凍パン生地からパンを製造できることが開示されている。この方法はトランスグルタミナーゼとL−アスコルビン酸を併用するものであり、L−アスコルビン酸を単独使用する場合と比較すると、ホイロ後の生地修復効果に優れている。しかし、この方法によっても、冷凍パン生地からパンを製造した場合のパンのボリュームは満足できるものではなく、パンの内相の荒れや、ソフトさ、口溶けなどの食感は十分に改善されるものではなかった。
特開昭54−52741号公報 特開昭55−68231号公報 国際公開第2014/157577号
本発明の目的は、冷凍保存後にも関わらず、内相がきめ細かく、ボリューム及び食感が優れたパンを作業性よく製造可能な冷凍パン生地、冷凍パン生地練り込み用油脂組成物、冷凍パン生地の製造方法、及びパンの製造方法を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、L−アスコルビン酸が穀粉に対して特定量含まれるように、特定融点の油脂とL−アスコルビン酸とを含有し、さらに含気され比重が特定範囲にある油脂組成物が穀粉に対して特定量練り込まれた冷凍パン生地からは、内相がきめ細かく、ボリューム及び食感が優れたパンを作業性よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち第一の本発明は、油脂組成物が練り込まれ、冷凍されたパン生地であって、前記油脂組成物は、融点が25〜45℃の油脂と、L−アスコルビン酸とを含有し、前記油脂組成物は、含気されたものであり、比重が0.2〜0.8g/mLであり、前記油脂組成物の含有量は、パン生地を構成する穀粉100重量部に対し1〜30重量部であり、前記油脂組成物に含まれる前記L−アスコルビン酸の含有量は、前記穀粉100重量部に対し1.0×10−3〜1.0×10−1重量部であり、前記油脂組成物に含まれていないが前記パン生地中に含まれているL−アスコルビン酸の含有量は、前記穀粉100重量部に対し3×10−2重量部未満である、冷凍パン生地に関する。好ましくは、前記油脂組成物における水分量は5重量%以下である。また、好ましくは、前記冷凍パン生地は、最終発酵(ホイロ)後に冷凍されたものである。
第二の本発明は、冷凍パン生地練り込み用油脂組成物であって、融点が25〜45℃の油脂と、L−アスコルビン酸とを含有し、前記油脂組成物全体に対するL−アスコルビン酸の含有量が35〜25000ppmであり、前記油脂組成物は含気されたものであり、比重が0.2〜0.8g/mLである、冷凍パン生地練り込み用油脂組成物に関する。好ましくは、水分量が5重量%以下である。
第三の本発明は、冷凍パン生地の製造方法であって、穀粉、水、パン酵母、及び、請求項4又は5に記載の油脂組成物を混合する工程と、上記混合工程により得られたパン生地を冷凍する工程を含み、前記油脂組成物の含有量は、前記穀粉100重量部に対し1〜30重量部であり、前記油脂組成物に含まれるL−アスコルビン酸の含有量は、前記穀粉100重量部に対し1.0×10−3〜1.0×10−1重量部であり、前記油脂組成物に含まれていないが前記パン生地中に含まれているL−アスコルビン酸の含有量は、前記穀粉100重量部に対し3×10−2重量部未満である、冷凍パン生地の製造方法に関する。
第四の本発明は、前記冷凍パン生地を加熱調理する工程を含む、パンの製造方法、又は、前記冷凍パン生地が加熱調理されたパンに関する。
本発明に従えば、冷凍保存後にも関わらず、内相がきめ細かく、ボリューム及び食感が優れたパンを作業性よく製造可能な冷凍パン生地、冷凍パン生地練り込み用油脂組成物、冷凍パン生地の製造方法、及びパンの製造方法を提供することができる。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
第一の本発明は、油脂組成物が練り込まれた冷凍パン生地に関する。本願における冷凍パン生地とは、パン生地を冷凍したものであって、これをそのまま、あるいは解凍した後に、加熱調理することでパンになる生地のことをいう。本発明の冷凍パン生地は、ホイロ(最終発酵)前のものであってもよいし、ホイロ後のものであってもよい。ホイロ後に冷凍されたパン生地は、パン生地中のグルテンの膜が薄くなった状態で冷凍されることになるため、一般にはより品質が劣化しやすい傾向があり、本発明をホイロ後の冷凍パン生地に適用することによって本発明の効果を享受しやすい。本願における冷凍パン生地は、前記油脂組成物の他、穀粉、水、及びパン酵母を含むものである。
本発明の冷凍パン生地に含まれる穀粉としては特に限定されず、通常のパン生地に含まれる穀粉であればよく、例えば、小麦粉、ライ麦粉、ライ小麦粉、大麦粉、モロコシ粉などが挙げられる。また、パン酵母の種類としても特に限定されず、市販のパン酵母であってよい。
本発明の冷凍パン生地における水の含有量は特に限定されず、通常のパン生地における含水量であってもよいが、具体的には、穀粉100重量部に対して水分を40〜100重量部含むことが好ましい。また、本発明の冷凍パン生地におけるパン酵母の含有量も特に限定されず、通常用いられる含有量であってもよいが、具体的には、穀粉100重量部に対してパン酵母を0.5〜6重量部含むことが好ましい。
本発明の冷凍パン生地に練り込まれている油脂組成物は、油脂を主体とする組成物であって、油脂と、L−アスコルビン酸とが含まれており、さらに含気されており、すなわち組成物内部に気体を含むものである。なお、冷凍パン生地に、互いに異なる複種類の油脂組成物が練り込まれている場合には、その複種類の油脂組成物全体を、本発明の冷凍パン生地に練り込まれている油脂組成物とする。ここで、複種類の油脂組成物とは、油脂の種類や量、L−アスコルビン酸配合の有無や量、含気の有無、比重などが互いに異なる複種類の油脂組成物をいう。
前記油脂は、食用の油脂であって融点が25〜45℃の範囲にある油脂であることが好ましい。なお、油脂の融点とは、本発明の冷凍パン生地に練り込まれている油脂組成物の油脂全体が示す融点のことをいう。前記油脂の融点は30〜40℃の範囲にあることがより好ましい。前記油脂の融点が25℃より低いと、生地に油脂組成物を混和した直後より油脂が融解し、油脂組成物から気体が放出され、ホイロ中の生地で気体不足となり、ホイロ以降のL−アスコルビン酸によるグルテンの架橋が進まない場合がある。一方、45℃より高いと、ホイロ中油脂の融解が進まないため、油脂組成物から気体が放出されず、ホイロ中の生地で気体不足となり、ホイロ以降のL−アスコルビン酸によるグルテンの架橋が進まない場合がある。なお、油脂の融点は、上昇融点測定法等により測定することができる。
前記油脂の具体的な種類としては食用油脂である限り特に限定されない。例えば、パーム系油脂、菜種油、大豆油、コーン油、米油、綿実油等の液油、パーム核油、ヤシ油等のラウリン系油脂、牛脂、豚脂等の動物脂、魚油、乳脂肪等や、それらの分別油、エステル交換油、極度硬化油等が挙げられる。これらの中から、融点が25〜45℃の範囲にある油脂を適宜選択するか、又は、融点が25〜45℃の範囲に収まるよう複種類の油脂を適宜組み合わせて使用すればよい。
前記油脂組成物には、L−アスコルビン酸が含まれている。すなわち、L−アスコルビン酸は、油脂に包含され分散した状態で冷凍パン生地中に含まれている。このようにすると、ホイロ時の温度上昇にあわせて油脂が融解することで、L−アスコルビン酸が油脂から放出され、あわせて油脂に含まれていた気体と接触することで、L−アスコルビン酸がデヒドロアスコルビン酸になるため、ホイロに入ってからグルテンの架橋が進行することとなる。これにより、内相がきめ細かく、ボリューム及び食感が優れたパンを作業性よく製造することが可能となる。なお、L−アスコルビン酸としては、発酵法や合成法などで得られるL−アスコルビン酸や、L−アスコルビン酸の含有量が多いカムカム(CAMUCAMU;学名Myrciariadubia)、アセロラ、オレンジ、レモン等の果実のエキス、粉末、抽出物などを使用すればよい。
本発明において、油脂組成物に含まれるL−アスコルビン酸の量は、冷凍パン生地を構成する穀粉100重量部に対して1.0×10−3〜1.0×10−1重量部であることが好ましい。当該量が1.0×10−3重量部より少ないと、グルテンの架橋反応が十分に進まずパンのボリュームが不足する場合があり、1.0×10−1重量部より多いと、グルテンの架橋反応が過剰に進行し、パンの内相が荒れ、食感が悪くなる場合がある。前記L−アスコルビン酸の量は、より好ましくは3.0×10−3〜7.0×10−2重量部、さらに好ましくは4.0×10−3〜5.0×10−2重量部、特に好ましくは5.0×10−3〜3.0×10−2重量部である。
以上のように本発明ではL−アスコルビン酸は油脂組成物に包含された状態で冷凍パン生地に含まれており、油脂組成物に包含されずに冷凍パン生地に直接分散しているL−アスコルビン酸は含まれないことが好ましい。しかし、一部のL−アスコルビン酸は、本発明の効果を阻害しない範囲において、油脂組成物に包含されずに、冷凍パン生地に直接分散されていてもよい。具体的には、油脂組成物に含まれていないが冷凍パン生地中に含まれているL−アスコルビン酸の含有量は、穀粉100重量部に対して0重量部以上3×10−2重量部未満であることが好ましい。当該量が3×10−2重量部以上であると、ホイロ前にL−アスコルビン酸がデヒドロアスコルビン酸になるため、パンのボリュームが十分には得られず、内相が荒れ、食感が悪くなる傾向が強い。前記L−アスコルビン酸の量は、好ましくは1×10−2重量部未満であり、より好ましくは5×10−3重量部未満であり、さらに好ましくは1×10−3重量部未満であり、特に好ましくは5×10−4重量部未満であり、最も好ましくは1×10−4重量部未満である。
本発明の冷凍パン生地に練り込まれている油脂組成物は、内部に気体が含まれているものである。これにより、ホイロの進行に伴い油脂から放出されたL−アスコルビン酸の酸化を促進することができる。油脂組成物内部に含まれる気体としては特に限定されず、例えば、空気、酸素、窒素等であってよいが、L−アスコルビン酸を直接酸化する観点から、酸素を含む気体が好ましく、酸素を5%(体積比)以上含む気体がより好ましい。
前記油脂組成物の比重は、油脂組成物の気体含有量を示す指標となる。本発明では、油脂組成物の比重が0.2〜0.8g/mLとなるように油脂組成物に含気することが好ましい。なお、油脂組成物の比重とは、本発明の冷凍パン生地に練り込まれている油脂組成物全体の比重のことをいう。油脂組成物の比重が0.2g/mLより小さいと、油脂組成物を製造する際に過剰なコストが発生する場合があり、0.8g/mLより大きいと、油脂組成物の気体含有量が少ないため、パン生地中に十分量の気体を混和することができず、L−アスコルビン酸の酸化反応を十分に進められない場合がある。前記油脂組成物の比重は、好ましくは0.3〜0.7g/mLであり、より好ましくは0.4〜0.6g/mLである。
前記油脂組成物は、油脂組成物全体の含有量が穀粉100重量部に対して1〜30重量部となるように配合されることが好ましい。油脂組成物の含有量が1重量部より少ないと、冷凍パン生地中に十分量の気体を混和することができず、L−アスコルビン酸の酸化反応を十分に進められない場合があり、30重量部より多いと、冷凍パン生地に対して油脂組成物の体積が過剰に大きくなり穀粉と油脂組成物の混和が進みにくい場合がある。前記油脂組成物の含有量は、より好ましくは2〜25重量部であり、さらに好ましくは3〜20重量部であり、特に好ましくは3〜15重量部であり、最も好ましくは4〜12重量部である。
前記油脂組成物は、水分をあまり含まないものであることが好ましく、具体的には、水分量が5重量%以下であることが好ましい。油脂組成物に含まれる水分量が5重量%を超えると、L−アスコルビン酸が水に溶解することで分解が進む場合がある。
本発明の冷凍パン生地に練り込まれている油脂組成物は、全体として、上述した油脂の融点、含気、比重、油脂の含有量、及びL−アスコルビン酸の含有量の要件を満足すればよい。これらの要件が互いに異なる複種類の油脂組成物を併用してパン生地に練り込み、それら複種類の油脂組成物の全体として、上述した各要件を満足するように構成することも可能である。このような場合の1つの具体例として、L−アスコルビン酸を含有する油脂組成物と、含気した油脂組成物それぞれをパン生地に練り込むことも可能である。
本発明の冷凍パン生地は、上述した成分に加えて、糖類、乳製品、卵、食塩、酸化防止剤など、パン生地に通常配合される材料を適宜含有することができる。また、本発明の冷凍パン生地は、L−アスコルビン酸の酸化反応と共役してグルテンの架橋を進める目的で、L−シスチンを含有してもよい。L−シスチンの含有量は、穀粉100重量部に対して0〜5×10−2重量部が好ましい。当該含有量が5×10−2重量部より多いと、グルテンの架橋反応が過剰に進行して、内相が荒れ、食感が悪くなる場合がある。L−シスチンは、油脂組成物に包含された状態でパン生地に含まれてもよいし、油脂組成物には包含されずにパン生地に直接含まれてもよい。
(冷凍パン生地及びパンの製法)
本発明の冷凍パン生地の製造方法は特に限定されず、油脂組成物が練り込まれたパン生地を製造するための通常の方法を適用することができるが、一例を以下に記載する。まず、常法に従って、穀粉、パン酵母、及び水を混合して中種を作製する。次いで、本捏ね材料として、穀粉、1種類又は複種類の油脂組成物、及び水を添加、混合して捏ね上げる。あるいは、ストレート製法により、穀粉、パン酵母、1種類又は複種類の油脂組成物、及び水を一括的に混合して捏ね上げてもよい。この後、フロアタイム(一次発酵)をとった後、ベンチタイム(二次発酵)をとってパン生地を得る。このパン生地は成型したものであってもよいし、成型前のものであってもよい。以上により得られたパン生地は、成型及びホイロを行なった後、生地温度が、例えば0.8〜2.8℃/分の速度で生地の中心温度が−15〜−25℃になるように冷凍することで本発明の冷凍パン生地を得ることができる。ただし、上述のように、本発明の冷凍パン生地は、ホイロ前に冷凍したものであってもよい。冷凍パン生地は、そのまま、あるいは解凍した後に、常法により焼成、フライ、蒸しなどの加熱調理をすることでパンを得ることができる。ここで前記パンとしては、具体的には食パン、バンズ、ロールパン、ベーグル、バゲットやパリジャン等のフランスパン、菓子パン、包あんパン、惣菜パン、デニッシュパン、蒸しパン、中華まんじゅう、ドーナツ等が挙げられる。
この際、1種類の油脂組成物を添加混合する場合には、当該1種類の油脂組成物は、上述した油脂組成物の要件を満足するように構成される。また、複種類の油脂組成物を添加混合する場合には、当該複種類の油脂組成物が全体として、上述した油脂組成物の要件を満足するように各油脂組成物は構成される。ただし、本願でいう油脂組成物は、パン生地に練り込んで使用する油脂組成物のみを意味し、デニッシュパンなどを作製する際にパン生地に折り込んで使用するロールインマーガリンを含むものではない。
(冷凍パン生地練り込み用油脂組成物)
本発明の冷凍パン生地を容易に製造するためには、上述した油脂組成物の要件を満足する特定の冷凍パン生地練り込み用油脂組成物を用いることが好ましい。具体的には、このような冷凍パン生地練り込み用油脂組成物は、融点が25〜45℃の油脂と、L−アスコルビン酸とを含有するものであり、前記油脂組成物全体に対するL−アスコルビン酸の含有量が35〜25000ppmであり、比重が0.2〜0.8g/mLとなるように含気されている。前記L−アスコルビン酸の含有量は、40〜12000ppmが好ましく、50〜10000ppmがより好ましく、300〜7000ppmが更に好ましく、400〜5000ppmが特に好ましく、500〜3000ppmが最も好ましい。前記L−アスコルビン酸の含有量が35ppm未満であると、本発明の冷凍パン生地を製造する際に前記油脂組成物を多量に配合する必要が生じ、穀粉と油脂組成物の混和が進みにくい場合がある。一方、前記含有量が25000ppmを超えると、例えば前記油脂組成物がマーガリンの場合にはその乳化安定性が低下する場合があり、また、前記油脂組成物がショートニングの場合には製造時に使用する密閉式急冷かきとり捏和装置でシール漏れが生じる場合があり、いずれの場合も、油脂組成物の製造安定性が低下する場合があり、しかも原料コストがかかり、好ましくない。
本発明の冷凍パン生地練り込み用油脂組成物は、単一の組成物であってもよいし、互いに組成が異なる複種類の油脂組成物を組合せてなる組成物であってもよい。この冷凍パン生地練り込み用油脂組成物は、冷凍パン生地を構成する穀粉100重量部に対する油脂の含有量が1〜30重量部となり、当該油脂組成物に含まれるL−アスコルビン酸の含有量が前記穀粉100重量部に対し1.0×10−3〜1.0×10−1重量部となるような量でパン生地に配合される。これにより、本発明に係る冷凍パン生地を容易に製造することが可能になる。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<融点の測定>
製造例5及び6で得られた油脂組成物の油脂の融点は、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.2.4.2(1996)1996年版」に準拠して測定した。
<比重の測定>
製造例5及び6で得られた油脂組成物を計量カップ(100ml)に入れて、重量(g)を測定し、容量(ml)で除して比重(g/ml)を算出した。
(製造例1)油脂Aの作製
パーム極度硬化油(太陽油脂(株)製、ヨウ素価=1):23重量部、パームステアリン((株)カネカ製、ヨウ素価=33):47重量部、及びパーム核オレイン((株)カネカ製、ヨウ素価=28):30重量部の混合油脂を500Paの減圧下90℃に加熱し、ナトリウムメチラート(日本曹達株式会社製):0.2重量部を加えて30分攪拌してランダムエステル交換を行なった。水洗した後、500Paの減圧下、90℃において白土(水澤化学工業株式会社製):2重量部を加えて脱色し、240℃、200Paの条件で1時間脱臭してエステル交換油である油脂Aを得た。
(製造例2)油脂Bの作製
パームステアリン((株)カネカ製、ヨウ素価=33):5重量部、パーム油((株)カネカ製、ヨウ素価=52):69重量部、及びパーム核オレイン((株)カネカ製、ヨウ素価=29):26重量部の混合油脂を500Paの減圧下90℃に加熱し、ナトリウムメチラート(日本曹達株式会社製):0.2重量部を加えて30分攪拌してランダムエステル交換を行なった。水洗した後、500Paの減圧下、90℃において白土(水澤化学工業株式会社製):2重量部を加えて脱色し、240℃、200Paの条件で1時間脱臭してエステル交換油である油脂Bを得た。
(製造例3)油脂Cの作製
パームステアリン((株)カネカ製、ヨウ素価=33):100重量部を500Paの減圧下90℃に加熱し、ナトリウムメチラート(日本曹達株式会社製):0.2重量部を加えて30分攪拌してランダムエステル交換を行なった。水洗した後、500Paの減圧下、90℃において白土(水澤化学工業株式会社製):2重量部を加えて脱色し、250℃、200Paの条件で1時間脱臭してエステル交換油である油脂Cを得た。
(製造例4)L−アスコルビン酸含有粉末油脂の作製
シアステアリン((株)カネカ製、融点37℃):80重量部を60℃で融解し、L−アスコルビン酸(扶桑化学工業株式会社製):20重量部を混合して攪拌し、三本ロールで緩やかに冷却して結晶が出始めたところで容器に入れて1日冷蔵した。冷蔵後温度が上がらないように注意しながら三本ロールで粉砕し、L−アスコルビン酸20重量%を含む粉末油脂を得た。
(製造例5)油脂組成物1〜18の作製
表1及び2に記載の配合に従って、油脂組成物1〜18を作製した。即ち、それぞれの油脂を融解して表1及び2に記載の配合比で混合し、さらにL−アスコルビン酸を混合して攪拌した。これを急冷かきとり捏和装置で急冷して、L−アスコルビン酸が分散したショートニング(油脂組成物)を作製した。なお、油脂組成物9は、L−アスコルビン酸の混合時にシスチンも混合した。油脂組成物1〜12、及び14〜18では含気させており、これらの場合、送液ポンプに窒素、又は空気のボンベを接続し、ガスを吹き込みながらショートニングを作製した。また油脂組成物16は、L−アスコルビン酸を添加せずにショートニングを作製した。各ショートニングの比重、融点、及び水分量を表1及び2に記載した。なお、表1及び2に記載の各材料の配合量の単位は重量部である。
(製造例6)油脂組成物19の作製
表2に記載の配合に従って、油脂組成物19を作製した。即ち、それぞれの油脂を融解して表2に記載の配合比で混合し、さらにL−アスコルビン酸を分散させ、撹拌しながら水を加えて乳化した。乳化液に空気を吹き込みながら、急冷かきとり捏和装置で急冷し、マーガリン(油脂組成物)を作製した。作製したマーガリンの比重、融点、及び水分量を表2に記載した。
Figure 2019004780
Figure 2019004780
(実施例1)コッペパンの作製
ストレート製法に基づき、表3に示す生地組成によってコッペパンを製造した。コッペパンの製造条件を下記に示す。
[コッペパンの製造条件]
ミキシング:表3に示した配合の材料のうち油脂組成物1以外の材料を製パン用縦型ミキサー(関東ミキサー20コートタイプ)に入れ、低速で2分間、その後中速で4分間、さらに中高速で2分間混和し、さらに油脂組成物1を添加した後、低速で2分間、その後中速で4分間、さらに中高速で2分間混和し、捏ね上げ温度20℃で生地を得た。
フロアタイム:20分
分割:70gずつ24本
ベンチタイム:5分
コッペパン成型:モルダーにてロール型に成型し、長さ17cmになるよう成型後、金属製のトレーに取り、直ちに次の急速冷凍を行った。
急速冷凍:金属製のトレー上で、−35℃で45分間急速冷凍を行って冷凍生地を得た。
冷凍保存:冷凍生地をビニール袋に入れ、−20℃で1ヶ月間冷凍保存を行った。
解凍:1カ月冷凍保存後の冷凍生地を焼成用のトレーに取り、25℃、相対湿度75%で、生地表面温度19℃まで解凍を行った。
ホイロ:38℃、相対湿度80%で60分間発酵を行なった。
焼成:上火210℃、下火190℃で10分間焼成してコッペパンを得た。
得られたコッペパンにおいて、パン生地作製時の作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感(ソフトさ、歯切れの良さ、口溶け)を評価し、それらの結果を表3に示した。
Figure 2019004780
(実施例2及び3、比較例1及び2)コッペパンの作製
表3の配合に従い、油脂組成物1を他の油脂組成物2,3,11,12に変更した以外は、実施例1と同様にしてコッペパンを得た。得られたコッペパンの生地作製時の作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感(ソフトさ、歯切れの良さ、口溶け)の評価を表3に示した。
表3から明らかなように、油脂全体の融点が23℃の油脂組成物11を配合したコッペパン(比較例1)は、パン生地作製時の作業性が明らかに劣り、パンの内相が不十分で、食感も劣るものであった。また、油脂全体の融点が48℃の油脂組成物12を配合したコッペパン(比較例2)は、パン生地作製時の作業性は良好であったが、パンの内相が不十分で、食感の点でも満足できるものではなかった。一方、油脂全体の融点が25〜45℃の油脂組成物1〜3をそれぞれ配合したコッペパン(実施例1〜3)は、油脂全体の融点が23℃の油脂組成物11を配合したコッペパン(比較例1)、及び油脂全体の融点が48℃の油脂組成物12を配合したコッペパン(比較例2)よりも、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感が明らかに好ましく、パン生地作製時の作業性も良好もしくは問題ないレベルで、品質的に良好なものであった。特に、油脂全体の融点が35℃の油脂組成物1を配合したコッペパン(実施例1)は、パンの内相及びパンの食感は最も好ましく、パンのボリュームも大きく腰高の形状のパンであった。
(実施例4及び5、比較例3)コッペパンの作製
表4の配合に従い、油脂組成物1を他の油脂組成物4,5,13に変更した以外は、実施例1と同様にしてコッペパンを得た。得られたコッペパンの生地作製時の作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感(ソフトさ、歯切れの良さ、口溶け)の評価を表4に示した。
Figure 2019004780
表4から明らかなように、含気していない比重が0.9g/mlの油脂組成物13を配合したコッペパン(比較例3)は、パンの内相が不十分で、食感も劣っていた。一方、比重が0.3〜0.7g/mlの油脂組成物1、4及び5を配合したコッペパン(実施例1、4、及び5)は、パン生地作製時の作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感が全て良好であった。特に、比重が0.5g/mlの油脂組成物1を配合したコッペパン(実施例1)、及び比重が0.3g/mlの油脂組成物5を配合したコッペパン(実施例5)は、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感に優れ、更に実施例5のコッペパンの食感は、極めて良好であった。
(実施例6及び7、比較例4及び5)コッペパンの作製
表5の配合に従い、油脂組成物1を他の油脂組成物6,7,14,15に変更した以外は、実施例1と同様にしてコッペパンを得た。得られたコッペパンの生地作製時の作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感(ソフトさ、歯切れの良さ、口溶け)の評価を表5に示した。
Figure 2019004780
表5から明らかなように、穀粉100重量部に対し5.0×10−4重量部のL−アスコルビン酸を含有する油脂組成物14を配合したコッペパン(比較例4)、及び穀粉100重量部に対しL−アスコルビン酸の含有量が1.3×10−1重量部の油脂組成物15を配合したコッペパン(比較例5)は、パンのボリュームが不十分で、内相と食感も悪いものであり、特に比較例5のコッペパンはパン生地作製時の作業性が非常に悪かった。一方、穀粉100重量部に対し1.2×10−3〜7.9×10−2重量部のL−アスコルビン酸を含有する油脂組成物1、6及び7を配合したコッペパン(実施例1、6及び7)は、穀粉100重量部に対し5.0×10−4重量部のL−アスコルビン酸を含有する油脂組成物14を配合したコッペパン(比較例4)及び、穀粉100重量部に対しL−アスコルビン酸の含有量が1.3×10−1重量部の油脂組成物15を配合したコッペパン(比較例5)よりもパンの内相、パンのボリューム、パンの食感が明らかに好ましく、パン生地作製時の作業性も良好もしくは問題ないレベルで、品質的に良好なものであった。特に、穀粉100重量部に対L−アスコルビン酸の含有量が1.0×10−2重量部の油脂組成物1を配合したコッペパン(実施例1)は、パンのボリュームが大きく、パンの内相と食感が極めて良好であった。
(実施例8)コッペパンの作製
表6の配合に従い、油脂組成物1を、窒素を含気させた油脂組成物8に変更した以外は、実施例1と同様にしてコッペパンを得た。得られたコッペパンの生地作製時の作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感(ソフトさ、歯切れの良さ、口溶け)の評価を表6に示した。
Figure 2019004780
表6から明らかなように、空気を吹き込んだ油脂組成物1を配合した実施例1のコッペパンは、パンのボリュームが大きく、パンの内相と食感が極めて良好であった。また、窒素を吹き込んだ油脂組成物8を配合したコッペパン(実施例8)は、パンの内相、パンのボリューム、食感が若干劣ったものの、品質的には良好なものであった。
(実施例9)コッペパンの作製
表6の配合に従い、油脂組成物1を、シスチンを配合した油脂組成物9に変更した以外は、実施例1と同様にしてコッペパンを得た。得られたコッペパンの生地時の作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感(ソフトさ、歯切れの良さ、口溶け)の評価を表6に示した。
表6から明らかなように、シスチンを配合した油脂組成物9を使用したコッペパン(実施例9)は、シスチンを配合していない油脂組成物1を使用したコッペパン(実施例1)に比べ、パン生地作製時の作業性とパンのボリュームは同等であり、パンの内相と食感が優れており、特に口溶けは極めて良好であった。
(実施例10)コッペパンの作製
表6の配合に従い、油脂組成物1を、L−アスコルビン酸を含有していない油脂組成物16に変更し、更にL−アスコルビン酸含有粉末油脂(製造例4)を配合した以外は、実施例1と同様にしてコッペパンを得た。得られたコッペパンの生地作製時の作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感(ソフトさ、歯切れの良さ、口溶け)の評価を表6に示した。
(比較例6)コッペパンの作製
表6の配合に従い、油脂組成物1を、L−アスコルビン酸を含有していない油脂組成物16に変更し、更にL−アスコルビン酸を直接生地に配合した以外は、実施例1と同様にしてコッペパンを得た。得られたコッペパンの生地作製時の作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感(ソフトさ、歯切れの良さ、口溶け)の評価を表6に示した。
表6から明らかなように、L−アスコルビン酸を油脂組成物に含有させずに直接生地に配合したコッペパン(比較例6)は、作製時の生地が締まってパン生地作製時の作業性が悪く、パンの内相が不十分で、食感も劣るものであった。一方、L−アスコルビン酸を含有せずに含気した油脂組成物16とL−アスコルビン酸含有粉末油脂(製造例4)を併用したコッペパン(実施例10)は、パン生地中のL−アスコルビン酸含有量が同じでパン生地に直接アスコルビン酸を添加したコッペパン(比較例6)に比べると、パン作製時の作業性が良好であり、パンの内相、ボリューム、食感のいずれも優れていた。
また、ホイロ後の生地の抗張力は、L−アスコルビン酸を含有する油脂組成物1を配合したパン生地(実施例1)では、250BUと値が高く、ホイロ発酵時のデヒドロアスコルビン酸の架橋効果が発揮されていることが示唆される結果であった。一方、L−アスコルビン酸を直接生地に配合したパン生地(比較例6)では、150BUと値が小さく、デヒドロアスコルビン酸の架橋は十分に起こっていないと思われる結果であり、想定したホイロ発酵でのメカニズムを支持するものであった。
(実施例11、比較例7及び8)コッペパンの作製
表7の配合に従い、油脂組成物1を他の油脂組成物10,17,18に変更し、パン生地中の穀粉100重量部に対するL−アスコルビン酸の含有量が同じになるように夫々の油脂組成物の配合量を変えた以外は、実施例1と同様にしてコッペパンを得た。得られたコッペパン生地作製時の作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感(ソフトさ、歯切れの良さ、口溶け)の評価を表7に示した。
Figure 2019004780
表7から明らかなように、穀粉100重量部に対して0.5重量部の油脂組成物17を配合したコッペパン(比較例7)、及び35重量部の油脂組成物18を配合したパン(比較例8)は、どちらもパンの内相、パンのボリューム、パンの食感が悪いものであり、特に比較例7のコッペパンは、生地作製時の作業性が明らかに劣るものであった。一方、穀粉100重量部に対して10重量部の油脂組成物1を配合したコッペパン(実施例1)はパン生地作製時の作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感は全て良好であった。また、穀粉100重量部に対して30重量部の油脂組成物10を配合したコッペパン(実施例11)は、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感がやや劣ったものの、パン生地作製時の作業性は極めて良好であり、品質的には良好なものであった。
(実施例12)コッペパンの作製
表7の配合に従い、油脂組成物1を油脂組成物19に変更した以外は、実施例1と同様にしてコッペパンを得た。得られたコッペパンの生地作製時の作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感(ソフトさ、歯切れの良さ、口溶け)の評価を表7に示した。
表7から明らかなように、水分含量が3重量%の油脂組成物19を配合したコッペパン(実施例12)は、パン生地作製時の作業性が良好で、内相、ボリューム、食感も優れており、品質的には十分良好なものであった。
なお、製造例、実施例及び比較例に記載の各材料としては以下のものを使用した。各材料の配合量の単位は重量部である。
1)(株)カネカ製「菜種油(ヨウ素価:117)」
2)扶桑化学工業(株)製「L−アスコルビン酸」
3)トープロ(株)製「シスチン」
4)日清製粉(株)製「カメリヤ」
5)東洋精糖(株)製「上白糖」
6)公益財団法人塩事業センター製「精製塩」
7)よつ葉乳業(株)製「脱脂粉乳」
8)新化食品(株)製「SS−25」
9)(株)カネカ製「ドウインプルーバーEF4」
10)(株)カネカ製「イーストGA」
11)キュピータマゴ(株)製「液全卵(殺菌)」
[捏上後又はホイロ後の生地の抗張力の測定方法]
生地の物性は次の手法により、ブラベンダー社製のエクステンソグラフE型を用いて生地抗張力を測定した。ミキシング直後の生地、分割時の生地、成型時の生地それぞれを150g分割し、すぐにモルダーでロールに成型した。ロール生地をエクステンソグラフの生地ホルダーにセットし、生地の抗張力を測定し、抗張力の最大値を捏上後の生地の抗張力とした。また成型時の生地をエクステンソグラフの生地ホルダーにセットし、ホイロで50分発酵後、抗張力を測定し、抗張力の最大値をホイロ後の生地の抗張力とした。
<捏上後の生地物性評価>
捏上後の生地の抗張力であるブラベンダーユニットの数値に基づき、生地物性として下記の通り評価した。この評価項目は、パン生地製造時の作業性を示す指標であり、パンの種類に応じた適切な範囲に調整することで、生地作製時の生地損傷が少なく、パン生地の成形性が良くなる。
(コッペパン生地作製時の作業性)
5点:生地作製時の生地損傷が殆どなく、且つ成形性も良好で、作業性が極めて良い(300BU以上、400BU未満)
4点:生地作製時の生地損傷は少なく、且つ成形性も比較的良好で、作業性が良い(250BU以上、300BU未満、又は400BU以上、500BU未満)
3点:生地作製時の生地損傷が少ないが、成形性がやや劣る、或いは生地作製時の生地損傷が若干あるが、成形性は良好で、作業性が普通である(200BU以上、250BU未満、又は500BU以上、600BU未満)
2点:生地作製時の生地損傷が酷い、及び/又は成形性が劣り、作業性が悪い(150BU以上、200BU未満、又は600BU以上、700BU未満)
1点:生地作製時の生地損傷が非常に酷く、且つ成形性も不良で、作業性が非常に悪い(150BU未満、又は700BU以上)
<パンの内相の評価>
コッペパンの内相の評価は、訓練された10名(男性5人、女性5人)のパネラーにより、以下の基準により目視で実施し、それらの平均点を評価値とした。
5点:気泡膜が薄く、均一でタテ目である、極めてきめ細かい内相
4点:気泡膜が薄く、均一である、非常にきめ細かい内相
3点:気泡膜が薄く、均一である、きめ細かい内相
2点:気泡膜がやや厚く、不均一で目が詰まっている、ややきめの粗い内相
1点:気泡膜が厚く、不均一で目が詰まっている、きめの粗い内相
[焼成パンの比容積測定方法]
焼成されたコッペパンの体積を、ASTEX社3D LaserScannerで測定し、パンの重量で割った比率を比容積(mL/g)とした。
<コッペパンのボリュームの評価>
コッペパンのボリュームの評価は、以下の基準に従い評価した。
5点:比容積が7.8以上
4点:比容積が7.6以上、7.8未満
3点:比容積が7.4以上、7.6未満
2点:比容積が7.2以上、7.4未満
1点:比容積が7.2未満
<食感の評価>
コッペパンの食感の評価は、訓練された10名(男性5人、女性5人)のパネラーにより、ソフトさ、歯切れの良さ、口溶けの3項目について以下の基準により実施し、評価項目毎のそれらの平均点をそれぞれの項目の評価値とした。そして、上記3項目の平均値を、パンの総合的な食感の評価値とした。
(ソフトさ)
5点:非常にソフトである
4点:ソフトである
3点:ソフトさがやや劣るが、商品としては問題ないレベルである
2点:やや硬さが有り、ソフトさに欠ける
1点:硬くて、ソフトでない
(歯切れの良さ)
5点:非常に歯切れが良い
4点:歯切れが良い
3点:歯切れがやや劣るが、商品としては問題ないレベルである
2点:歯切れが悪い
1点: 非常に歯切れが悪い
(口溶け)
5点:非常に口溶けが良い
4点:口溶けが良い
3点:口溶けがやや劣るが、商品としては問題ないレベルである
2点:口溶けが悪い
1点: 非常に口溶けが悪い
<パンの総合評価>
パン生地作製時の作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感(ソフトさ、歯切れの良さ、口溶け)の各評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
A:作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感が全て4.0点以上5.0点以下を満たすもの。
B:作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感が全て3.5点以上5.0点以下であって、且つ3.5以上4.0未満が少なくとも一つあるもの。
C:作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感が全て3.0点以上5.0点以下であって、且つ3.0以上3.5未満が少なくとも一つあるもの。
D:作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感が全て2.0点以上5.0点以下であって、且つ2.0以上3.0未満が少なくとも一つあるもの。
E:作業性、パンの内相、パンのボリューム、パンの食感の評価において、2.0未満が少なくとも一つあるもの。

Claims (8)

  1. 油脂組成物が練り込まれ、冷凍されたパン生地であって、
    前記油脂組成物は、融点が25〜45℃の油脂と、L−アスコルビン酸とを含有し、
    前記油脂組成物は、含気されたものであり、比重が0.2〜0.8g/mLであり、
    前記油脂組成物の含有量は、パン生地を構成する穀粉100重量部に対し1〜30重量部であり、
    前記油脂組成物に含まれる前記L−アスコルビン酸の含有量は、前記穀粉100重量部に対し1.0×10−3〜1.0×10−1重量部であり、
    前記油脂組成物に含まれていないが前記パン生地中に含まれているL−アスコルビン酸の含有量は、前記穀粉100重量部に対し3×10−2重量部未満である、冷凍パン生地。
  2. 前記油脂組成物における水分量は5重量%以下である、請求項1に記載の冷凍パン生地。
  3. 前記冷凍パン生地は、最終発酵(ホイロ)後に冷凍されたものである、請求項1又は2に記載の冷凍パン生地。
  4. 冷凍パン生地練り込み用油脂組成物であって、
    融点が25〜45℃の油脂と、L−アスコルビン酸とを含有し、
    前記油脂組成物全体に対するL−アスコルビン酸の含有量が35〜25000ppmであり、
    前記油脂組成物は含気されたものであり、比重が0.2〜0.8g/mLである、冷凍パン生地練り込み用油脂組成物。
  5. 水分量が5重量%以下である、請求項4に記載の冷凍パン生地練り込み用油脂組成物。
  6. 冷凍パン生地の製造方法であって、
    穀粉、水、パン酵母、及び、請求項4又は5に記載の油脂組成物を混合する工程と、
    上記混合工程により得られたパン生地を冷凍する工程を含み、
    前記油脂組成物の含有量は、前記穀粉100重量部に対し1〜30重量部であり、
    前記油脂組成物に含まれるL−アスコルビン酸の含有量は、前記穀粉100重量部に対し1.0×10−3〜1.0×10−1重量部であり、
    前記油脂組成物に含まれていないが前記パン生地中に含まれているL−アスコルビン酸の含有量は、前記穀粉100重量部に対し3×10−2重量部未満である、冷凍パン生地の製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載の冷凍パン生地を加熱調理する工程を含む、パンの製造方法。
  8. 請求項1〜3のいずれかに記載の冷凍パン生地が加熱調理されたパン。
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