近年の動画配信サービスの普及やモバイルトラフィック需要の増大に伴い、ネットワークトラフィックが爆発的に増大している。大容量光ネットワークの実現に向けて、高速・大容量伝送が可能な光送信機が求められている。しかし、大容量化と同時に許容される消費電力は、現状と同じかそれ以下にすることが求められることから、伝送レートあたりに許容される消費電力は、今後飛躍的に増大してしまうことが懸念される。さらに、大規模なデータセンタの普及に伴い、光通信による伝送領域はますます拡大し、これらの光通信用設備の更改頻度が大きく上昇している。これらのことから、光送信機の大容量・低消費電力化と同時に低コスト化の要求が高まっている。
電界吸収型変調器集積型DFB(EADFB)レーザは、直接変調型のレーザと比較して高い消光特性とすぐれたチャープ特性を有することから、これまで幅広い用途で用いられてきた。図6に一般的なEADFBレーザの断面図を示す。DFBレーザ部221およびEA変調器部222が、同一のチップ内に集積されている。DFBレーザ部221は、多重量子井戸(MQW)からなる活性層203を備え、共振器内に形成された回折格子207によって単一波長で発振する。また、EA変調器部222は、MQWからなる光吸収層204を有し、DFBレーザ部221からの出力光を光吸収によって消光させることで、電気信号を光信号に変換する。
活性層203および光吸収層204は、光閉じ込め層202および光閉じ込め層205に挟まれ、分離閉じ込めヘテロ(Separate Confined Heterostructure;SCH)構造とされている。また、これらは、下部クラッド層201と上部クラッド層206とに挟まれている。DFBレーザ部221の上部クラッド層206の上には、電極211が形成されている。また、EA変調器部222の上部クラッド層206の上には、電極212が形成されている。
これらEADFBレーザの課題としては、EA変調器部222において光吸収損失が生じることから、直接変調型のレーザと比較して、光出力の高出力化が困難なことが挙げられる。通常、EADFBレーザのDFBレーザ部とEA変調器部とは、活性層のMQWと光吸収層のMQWとが異なる状態で、これらをバットジョイントにより光学的に結合している。従って、EADFBレーザの製造工程において、一方のMQW構造は、再成長によって作製している。
このとき、DFBレーザ部における発振波長と、EA変調器のMQWの持つ光吸収特性の中心波長とは、一般的に100nm程度の波長差を設けて設計される。これにより、EA変調器における挿入損失(吸収損失)を抑制することができるが、同時に製造コストの上昇を招くことになる。また、これらのバットジョイント構造を用いた一般的なEADFBレーザにおいても、変調時光出力は、ファイバ結合後に5〜6dBm程度であり、直接変調レーザに対しては光出力の面では依然として劣る。
EADFBレーザの低コスト化に向けて、EA変調器部とDFBレーザ部に同一のMQWを用いたEADFBレーザがこれまでに報告されている(非特許文献1参照)。これにより、作製プロセスにおいてバットジョイント部(活性層または光吸収層)の再成長プロセスが不要となり、製造コストは大幅に縮小が可能となる。加えて、一般的なEADFBレーザにおいて、DFBレーザの動作不安定化を招く要因となるEA変調器とDFBレーザの境界での光反射が抑制される利点がある。これにより、DFBレーザの動作を不安定化する要素が低減されチップの歩留りの向上が期待できる。
しかし、前述した通り、EA変調部における光吸収波長ピークとDFBレーザの発振波長とが近接しているため、EA変調器部における光吸収が大きく、十分な光出力を得ることが困難になる。一般的に、EA変調器部とDFBレーザ部とに共通のMQWを用いた場合の変調時光出力は、ファイバ結合時の値として0〜3dBm程度となり、一般的なEADFBレーザに対して大きく劣る値となる。
また、これまでに、大容量な光送信機の実現に向けて、複数チャネルのEADFBレーザ同一基板上に集積した半導体レーザがこれまでに報告されている。一例として4チャネルの光送信機の構成を図7に示す。これは、4つのDFBレーザ部221a,221b,221c,221dと、4つのEA変調器部222a,222b,222c,222dとを備える。また、4つのEA変調器部222a,222b,222c,222dからの出力光は、各々光導波路231でMMI合波器232に接続し、各チャネルからの出力光がMMI合波器232で合波され、光導波路233を介して出力される。この光送信器では、上述した各部分が、同一の基板200の上にモノリシックに集積されている。
DFBレーザ部221a,221b,221c,221dからは、各々異なる波長の光が出力され、各々の前方に集積されたEA変調器部222a,222b,222c,222dによって変調され、4チャネルの信号光を生成する。さらに各信号光は、光導波路231によってMMI合波器232に導かれて1つの光導波路233に合波され、出射端面から出力される。すなわち、4つの異なる波長の光を出力するWDM光送信器が構成されている。
図8は、上述したWDM光送信機の1チャネル分のDFBレーザ部221と、EA変調器部222と、光導波路部223との断面構造を示す。前述した単チャネルのEADFBレーザに対して、複数チャネルを構成するための図8に示すEADFBレーザアレイは、各チャネルの光出力を合波するために、光導波路部223によってチップ内に光を伝搬させる必要がある。
十分な光出力を得るためには、低損失な光導波路部223を集積する必要がある。このため、DFBレーザ部221およびEA変調器部222とは異なり、光導波路部223には、バルクコア層208を、バットジョイント構造を用いて集積している。従って、この光送信機の作製工程においては、EA変調器部222のバットジョイント再成長の工程に加えて、光導波路部223のバットジョイント再成長が必要となる。
また、4チャネルのMMIでは原理的に各チャネルに6dB以上の損失が生じることから、合波後の光出力の高出力化は、単チャネルのEADFBレーザよりもさらに困難となる。従って、マルチチャネルのEADFBレーザアレイにおいても、バットジョイント再成長による高い製造コストと光出力の高出力化のトレードオフが課題となる。
これまでに、EADFBレーザの高出力化に向けた解決策として、光出射端にさらに半導体光増幅器(SOA)を集積したEADFBレーザ(SOA Assisted Extended Reach EADFB Laser:AXEL)が提案されている(非特許文献2参照)。AXELの概略について、図9を用いて説明する。AXELでは、DFBレーザ部221で発振してEA変調器部222によって変調された信号光が、集積されたSOA部224によって増幅されるため、高出力化が可能である。
また、AXELの特徴として、SOA部224の活性層209に、DFBレーザ部221の活性層203と同一のMQW構造を用いている点が挙げられる。これにより、従来のEADFBレーザに対して新たに再成長工程を追加することなくSOA領域を集積し、従来のEADFBレーザと同一プロセスで作製が可能となる。
加えて、図9に示すように、DFBレーザ部221の電極211とSOA部224の電極213とを、同一の直流電源に接続して駆動させる。これによって、従来のEADFBレーザに対して端子数を増加させることなく同一の駆動方法で動作させることが可能となる(特許文献1参照)。
SOAを集積することによってDFBレーザの駆動電流の一部がSOAに流れる。この電流配分は、DFBレーザ長とSOA長の比率(体積)に応じた電流がそれぞれの領域に流れる。図10に、AXELのSOAとDFBレーザを同一結線で共通駆動した場合と、別々の電流源を用いて独立駆動させた場合の投入電力と光出力との関係をプロットしたグラフを示す。
図10において、共通駆動は、SOAとDFBレーザを同一電流源に接続し、同時に電流をスイープして測定した。独立駆動時には、SOA電流を10mA、30mA、50mAのいずれかに固定し、DFBレーザの駆動電流をスイープさせて測定した。また、いずれの場合も、実際の駆動時を想定し、EA変調器の逆方向印加電圧として一般的な−2Vを印加している。従って、図10には、EA変調器領域において光吸収による損失が比較的大きい状態での光出力特性が示されている。また、チップ全体の消費電力は、DFBレーザ、SOAおよびEA変調器の各消費電力の合計である。
図10において、AXELの独立駆動時には、必要となる光出力に応じてSOAとDFBレーザとの電流バランスを調整する必要がある。すなわち、独立駆動時のそれぞれの曲線群の包絡線上にあたる条件が最も高効率な動作条件となり、所望の光出力に応じてDFBレーザとSOAの電流量をそれぞれ設定する必要がある。一方、共通駆動においては図10に示す独立駆動時の包絡線とほぼ一致していることが分かる。
このことから、AXELの駆動条件においては、SOAとDFBレーザとを、同一の電流源で共通駆動させることで高効率な動作が可能となる。また、この傾向は、EA変調器の印加電圧を変化させた場合にも同様の結果が得られている。このように、EA変調器における光吸収に伴う損失の大きさによらず、SOAとDFBレーザとを同一の電流源で共通駆動させた場合に、常に高効率な動作が可能となる。
以下、本発明の実施の形態における半導体光集積装置について図1を参照して説明する。この半導体光集積装置は、モノリシックに集積されたレーザ部121、変調部122、増幅部123を備える。レーザ部121からの光出力は集積された変調部122に入射し、変調部122において強度変調され、増幅部123に入射し増幅された後、出射端面に達し端面から出力される。
ここで、この半導体光集積装置は、基板100の上に形成された下部クラッド層101と、下部クラッド層101の上に形成された下部光閉じ込め層102と、下部光閉じ込め層102の上に形成された活性層103と、活性層103の上に形成された上部光閉じ込め層104と、上部光閉じ込め層104の上に形成された上部クラッド層105とを備える。活性層103は、多重量子井戸構造とされている。活性層103は、積層方向に下部光閉じ込め層102と上部光閉じ込め層104とに挟まれ、分離閉じ込めヘテロ(SCH)構造とされている。
上述したように構成した活性層103をコアとする光導波路構造の導波方向に、レーザ部121と、変調部122と、増幅部123とが、これらの順に配置されて形成されている。レーザ部121は、回折格子106を備える分布帰還型レーザである。変調部122は、電界吸収型変調器である。増幅部123は、半導体光増幅器である。また、この半導体光集積装置は、レーザ部121と増幅部123とは、同一の直流電源に接続している。
なお、レーザ部121において、上部クラッド層105の上に、第1コンタクト層108を介して第1電極111が形成されている。また、変調部122において、上部クラッド層105の上に、第2コンタクト層109を介して第2電極112が形成されている。また、増幅部123において、上部クラッド層105の上に、第3コンタクト層110を介して第3電極113が形成されている。
実施の形態によれば、レーザ部121、変調部122、増幅部123は、活性層103を共通としている。従って、レーザ部121と変調部122との間に、バットジョイント構造はない。同様に、変調部122と増幅部123との間に、バットジョイント構造はない。
例えば、基板100は、n型のInPから構成され、下部クラッド層101は、n−InPから構成され、下部光閉じ込め層102は、ノンドープのi−InAlAsから構成されている。また、上部光閉じ込め層104は、ノンドープのi−InAlAsから構成され、上部クラッド層105は、p−InPから構成されている。また、各コンタクト層は、p+−InGaAsから構成されている。
活性層103は、ノンドープのi−InAlGaAsから構成された井戸層とInAlGaAsから構成された障壁層とが交互に複数積層された多重量子井戸である。井戸層は、例えば、厚さ10nm程度とされ、障壁層は、厚さ5nm程度とされている。
ここで、製造方法について簡単に説明する。まず、n型のInPからなる基板100を用意し、この上に、下部クラッド層101となるn−InP層、下部光閉じ込め層102となるi−InAlAs層,井戸層となるi−InAlGaAs層,障壁層となるInAlGaAs層を順次に結晶成長する。次に、下部クラッド層101となるn−InP層の所定の箇所に回折格子106を形成する。例えば、レーザ部121が、1.3μm帯を発振波長として動作するように回折格子106を形成する。
次に,上部光閉じ込め層104となるi−InAlAs層、上部クラッド層105となるp−InP層、およびコンタクト層となるp+−InGaAs層を、順次に結晶成長する。井戸層となるi−InAlGaAs層および障壁層となるInAlGaAs層は、交互に所定回数堆積する。例えば、よく知られた有機金属気相成長法により、上記各層を結晶成長させればよい。各クラッド層の厚さは、一般的な半導体レーザで用いられる2.0μmとすればよい。
次に、p+−InGaAs層の上に、プラズマCVD法などによりシリコン酸化物などからなる絶縁膜を形成し、この絶縁膜を公知のフォトリソグラフィにより形成したレジストパターンをマスクとしてエッチングし、上記絶縁膜からなる選択エッチングマスクを形成する。なお、このエッチングは、C2F6などのフロロカーボン系ガスを用いたリアクティブイオンエッチングなどで行えばよい。
次に、レジストパターンを除去した後、形成した選択エッチングマスクを用い、基板100の上に結晶成長した各層を選択的に除去し、下部クラッド層101,下部光閉じ込め層102,活性層103,上部光閉じ込め層104,上部クラッド層105,およびコンタクト層からなる所定の幅のハイメサ構造とした光導波路構造を形成する。
次いで、選択エッチングマスクを、今度は選択成長マスクとして用い、メサ構造周囲の基板100の上に、Feがドープされて高抵抗とされたInPを再成長させ、層(不図示)を形成する。次に、レーザ部121、変調部122、増幅部123の各領域を電気的に絶縁するために、領域間のコンタクト層を除去し、第1コンタクト層108、第2コンタクト層109、第3コンタクト層110を形成する。
この後、よく知られたリフトオフ法などにより、p側の電極となる第1電極111、第2電極112、第3電極113を形成する。次いで、裏面研磨によって基板100を薄膜化した後、基板100の裏面全面に、n側の第4電極(不図示)を形成した。最後に、光が出射する増幅部123側の半導体端面には無反射膜(不図示)を成膜し、レーザ部121側の端面には高反射膜(不図示)を形成した。
ところで、一般的にDFBレーザの発振波長は、電流を注入して動作させたときに、活性層の発光スペクトルの中心ピークと発振波長とが一致するように設計される。また、活性層の発光スペクトルをフォトルミネッセンス(PL)測定で評価した場合、電流注入時よりも短波長側に中心ピークが観測される。従って、一般的にはDFBレーザの発振波長は、活性層のフォトルミネッセンス光のスペクトルにおけるピーク波長(PL波長)の20〜40nmほど長波長側に設計されることになる。
これに対し、実施の形態では、レーザ部121の発振波長を、活性層103のPL波長の60nm長波長側に設計している。これは、変調部122にレーザ部121と同一の活性層103を用いている実施の形態では、通常の変調部122よりも光吸収の損失が増大するためであり、変調部122における吸収損失とレーザ部121の動作特性を考慮し、レーザ部121の発振波長における最適なデチューニング量を設計している。
次に、実際に作製した半導体光集積装置の評価結果について説明する。作成した試料は、レーザ部121、変調部122の導波方向の長さを、各々300μm、150μm、とした。また、増幅部123の長さによる特性への依存性を確認するために、増幅部123長50μm、100μm、150μmの試料を各々作製した。また、本発明における半導体光集積装置の優位性を確認するために、一般的なEADFBレーザを作製し、この比較試料についても評価を行った。この比較試料においては、EA変調器の部分は、バットジョイント再成長によって、DFBレーザ部とは異なる組成のMQWを形成して光吸収層とした。
ここで、レーザ部121と変調部122の発光波長スペクトルをPL測定で確認したところ、レーザ部121の発光波長スペクトルの中心ピークに対して変調部122の中心ピークは約100nm短波長であることを確認した。また、比較試料は、一般的なEADFBレーザと同様に、レーザ部の発振波長を、電流注入時の活性層の発振スペクトルの中心波長と一致するように設計している。従って、比較試料では、レーザ部の発振波長と変調部の吸収スペクトルの中心波長とは100nmのデチューニング量に設計されていることになる。なお、比較試料においては、レーザ部および変調部の導波方向の長さは、実施の形態における試料と同様とした。
作製した試料および比較試料の特性評価を実施した。同一ロットで作製した試料および比較試料ついて発振特性評価を実施し、駆動電流150mA以下でのキンクの有無によって選別を行った。この結果、実施の形態における試料は、従来のAXELに対して、製造歩留りが10%向上していることを確認した。
従来のAXELでは、変調部とレーザ部との界面、および増幅部と変調部との界面の2か所のバットジョイント部で反射戻り光が生じ、レーザ部の動作を不安定にしていた。これに対して実施の形態では、バットジョイントを持たない構造により、反射戻り光が抑制され、歩留りが大きく改善した。
次に、比較試料および増幅部123の長の異なる試料の静特性評価を行った。前述した通り、レーザ部121と増幅部123とは、同一の直流電源に接続して動作させた。
比較試料では、変調部の光吸収層とレーザ部の活性層とが、異なる構造であり、レーザ部の発振波長と変調部での吸収波長のピークとが離れている。このため、比較試料で十分な消光を得るためには、変調部へ比較的大きな印加電圧が必要となる。ここでは、一般的な駆動電圧であるVdc=−2.0Vを用いた。
これに対して、実施の形態における試料では、レーザ部121と変調部122とが、同一の活性層103を用いていることから、変調部122とへの印加電圧は小さくても十分な消光が得られる。ここではVdc=−0.5Vを用いている。
図2に示すように、試料および比較試料への注入電流100mAにおける光出力を比較すると、増幅部123の長さが50μmの試料の光出力と、比較試料の光出力がほぼ一致していることが確認された。この結果から、実施の形態における半導体光集積装置において、変調部122での光吸収の増大とレーザ部121のデチューニングによる光出力の低下を補償するためには、増幅部123の長さを最低でも50μmとすることが重要である。
また、増幅部123の長の設計には、上限に関しても制約がある。増幅部123において、NRZ(Non Return to Zero)方式で変調された信号光を入射し増幅した場合、パターン効果によって信号波形品質の劣化が生じる。これは、信号光を増幅する増幅部123の長さおよび電流密度に依存する。パターン効果を抑制するためには、増幅部123の長を150μm以下に設計することが重要となる(非特許文献2参照)。
次に、実施の形態における試料(半導体光集積装置)の伝送特性について評価した。この評価では、増幅部123の長さを50μmとした試料を用い、レーザ部121および増幅部123(活性領域)への注入電流を100mAとした。また、変調部122への印加電圧およびスイープ電圧は、−0.5V、2.0Vとし、「25Gbps NRZ、PRBS:231−1」の電気信号で変調を行った。
出射端面からの出力光を、レンズを通して光ファイバに接続し、10kmの伝送特性評価を実施した。ファイバ結合された変調時光強度は5.1dBmであった。また、光波形を確認したところ、動的消光比8dB以上の十分な消光を確認していた。また、ビット誤り率測定を実施したところ、エラーフリー伝送が確認され、光送信機として十分な特性が確認された。
次に、4チャネルの光送信器とする構成について図3を用いて説明する。4つのレーザ部121a,121b,121c,121dと、4つの変調部122a,122b,122c,122dと、4つの増幅部123a,123b,123c,123dとを備える。4つの増幅部123a,123b,123c,123dで増幅された各信号光は、各々光導波路131で合波器132に接続し、各チャネルからの出力光が合波器132で合波され、光導波路133を介して出力される。この光送信器では、上述した各部分が、同一の基板100の上にモノリシックに集積されている。合波器132は、例えば、多モード干渉により信号光を合波する。
レーザ部121a,121b,121c,121dからは、各々異なる波長の光が出力され、各々の前方に集積された変調部122a,122b,122c,122dによって強度変調され、増幅部123a,123b,123c,123dで増幅され、4チャネルの信号光を生成する。さらに各信号光は、光導波路131によって合波器132に導かれて1つの光導波路133に合波され、出射端面から出力される。ここでは4つの信号光を生成する場合を例に説明するが、本発明はこのチャネル数に依存するものではなく、異なるチャネル数あるいは単一チャネルとしても同様の効果を発揮する。
上述したように複数のチャネルの構成とする場合、図4に示すように、活性層103をコアとする光導波路構造の、増幅部123の出力側において活性層103に接続するコア層114から構成された光導波路部124を備えるようにする。
この場合においても、前述同様に製造すればよい。4チャネルとする場合、各レーザ部121の回折格子106を調節することで、所望とする波長帯が発振状態とする。例えば、レーザ部121aは、発振波長を1294.53−1296.59nmとする。レーザ部121bは、発振波長を1299.02−1301.09nmとする。レーザ部121cは、発振波長を1303.54−1305.63nmとする。レーザ部121dは、発振波長を1308.09−1310.19nmとする。いか、各々のチャネルを、短波長側からlane0、lane1、lane2、lane3と呼ぶ。
ここでの発振波長のデチューニングはm最も短波長側のlane0に対して、前述同様に、レーザ部121の特性と変調部122での吸収損失とのバランスからデチューニング量を60nmとなるように設計している。
この場合、製造方法は、各レーザ部、各変調部122、各増幅部については、前述同様である。光導波路部124は、バルクのコア層114とコア層114の上下を、下部クラッド層101と上部クラッド層105とで挾む。なお、ハイメサ構造とする導波路幅は、1.5μmとする。各レーザ部121の導波方向の長さは300μmとし、各変調部122の長さは150μmとすればよい。また、各増幅部123の導波方向の長さは120μmとすればよい。
前述同様に、上述した4チャネルの構成とした光送信器(半導体光集積装置)を実際に作製して評価した。この評価においても、前述同様に、レーザ部121と増幅部123とは、同一の直流電源に接続して動作させた。この半導体光集積装置では、レーザ部121と変調部122とが、同一の活性層103を用いていることから、変調部122とへの印加電圧は小さくても十分な消光が得られる。ここでは、Vdc=−0.5Vとした。
図5に、lane0、lane1、lane2、lane3の光出力特性を示す。各光出力は、合波器132よる合波後の出射端面からの出力をプロットした結果である。lane0、lane1、lane2、lane3の各チャネルへの注入電流150mAにおける光出力を比較すると。lane0〜lane3に対して6〜8mW程度の光出力が得られた。ここで、短波長よりのlaneの光出力が小さいのは、変調部122における吸収損失が長波長側のlaneよりも大きいためである。
続いて、上述した4チャネルの構成とした光送信器の伝送特性評価を実施した。レーザ部121および増幅部123(活性領域)への注入電流は、lane0で150mA、lane1〜3で130mAとした。変調部122への印加電圧およびスイープ電圧は、すべてのlaneで−0.5V、2.0Vとし、「25Gbps NRZ、PRBS:231−1」の電気信号で変調を行った。lane0、lane1、lane2、lane3の各々出射端面からの出力光を、各々レンズを通して別々の光ファイバに接続し、10kmの伝送特性評価を実施した。
ファイバ結合された変調時光強度は、lane0で4.8dBm、lane1で5.1dBm、lane2で5.2dBm、lane3で5.5dBmであった。また、いずれのチャネルにおいても、光波形を確認したところ動的消光比8dB以上の十分な消光を確認している。ビット誤り率測定を実施したところ、各チャネルでエラーフリー伝送が確認され、光送信機として十分な特性が確認された。
以上に説明したように、本発明によれば、レーザ部と変調部と増幅部とを、活性層を共通として集積したので、製造の歩留りの低下や製造コストの増加を招くことなく、より高効率に光出力が得られるようになる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。