JP2019002555A - 断熱シート - Google Patents
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Abstract
【課題】多孔質シリカ、有機化合物、無機化合物をベースとした断熱層において、断熱性を向上させるとともに強度と柔軟性のある断熱シートを提供すること。【解決手段】断熱層と、接着層(3)と、フィルム基材(2)を含む断熱シート(7)であって、断熱層は第1の断熱層(5)と第2の断熱層(4)を有し、フィルム基材(2)、接着層(3)、断熱層が下層から上層に向かって積層されており 、第1の断熱層(5)と第2の断熱層(4)がそれぞれの層内に複数の気泡を有し、第1の断熱層(5)の気孔率が65%以上95%未満であり、第2の断熱層(4)の気孔率が55%以上90%未満であり、第1の断熱層(5)の気孔率が第2の断熱層(4)の気孔率よりも大きく、第1の断熱層(5)と第2の断熱層(4)が、多孔質シリカと、無機化合物と、および、有機化合物と、を含む、断熱シート。【選択図】図1
Description
本発明は、柔軟性を併せ持つ断熱性に優れる断熱シートに関するものである。
一般的な断熱材として、施工現場で発泡させた断熱材をスプレーによって吹付塗装する方法(吹付塗装法)に用いる断熱材と、工場で断熱材を発泡させてボード状に形成して、断熱ボード又は断熱シートを断熱対象に取り付ける施工方法(取付法)で用いる断熱材が知られている。
吹付塗装法で用いられる断熱材は、断熱材が断熱対象に対して隙間なく施工できるというメリットがある。その一方で、吹付塗装法で用いられる断熱材の吹付けには、比較的大型の吹付け装置が必要となる他、吹き付け圧力や断熱材の温度などの調整が必要であり、専門の吹付け業者による施工とならざるを得ず、施工費用が高額になるデメリットがある。
吹付塗装法による塗装では、1回の吹付けによって形成することができる膜は非常に薄いため、膜に厚さが欲しい時は何度も吹付けて幾重にも堆積させる必要があり時間と労力がかかる。また、吹付けの際に、断熱材が周囲に飛散するので、断熱材の飛散防止と施工者の断熱材の吸い込み防止への配慮が必要となる。さらに、吹付け後の施工面には凹凸が生じ、断熱材の厚さが不均一になるので、施工面上の断熱性能のばらつきを抑制する工夫が必要となる(特許文献1)。加えて、吹付後には断熱材の乾燥時間も要するため施工時間がかかる。
したがって、ボード状、好ましくはシート状の断熱材を特に陸上交通、水上交通等の乗り物で用いるにあたり、一定の規格基準を満たす断熱性能と柔軟性を兼ね備え、薄く軽量であり、高い耐火性能を伴う施工が容易な取付法による断熱ボードまたは断熱シートが求められている。
取付法でこれまでに汎用されている断熱ボードは、吹付塗装法で用いられる断熱材の上述の問題を解決し得る。しかし、汎用されている断熱ボードは、発泡温度の関係から耐火性能に劣るウレタンフォーム製のものが大半である。断熱ボードよりも厚さの薄い断熱シートであって、アルミニウムをシート面上に塗膜し、熱反射によって断熱効果を発揮する断熱シートも汎用されているが、断熱性能は十分ではない。
断熱性の高い素材であるガラス繊維強化プラスチック(GFRP)はボード状の断熱材として用いられる素材として知られている。しかし、GFRPを断熱材として使用するためには、厚さが必要であり、全体として厚く嵩高い断熱材となってしまう他、素材の柔軟性にも劣るという欠点を有する(特許文献2、特許文献6)。
もみ殻シリカは非常に軽く、低い熱伝導率、広い表面積、多孔質性を有する低コストの断熱材として応用されることが期待されており(特許文献3、特許文献4、非特許文献1)、炭化もみ殻を家屋の土壁に混合することによって家屋の断熱性能を向上させた前例がある(非特許文献2)。しかし、もみ殻シリカなどの従来のシリカ系のエアロゲルを用いた断熱材は、断熱性については検討がされていたとしても、耐火性については、工業標準などの規格に基づいた検討の余地がある(特許文献5)。
M.M.Haslinawati, et al.Effect of Temperature on Ceramic from Rice Husk Ash, International Journal of Basic & Applied Science, Vol.09 No.09,2009,PP22−25.
水沼信著 「伝統木造住宅の再生 エコマテリアル断熱材の適用」KENCHIKUSHI 2009年2月号 第34頁−第40頁
渡辺誠著 「ノンハロ難燃材としてのポリリン酸アンモニウムの利用と製造プロセス開発」 色材、74[4]、第198頁−第203頁、2000年
尾西晃著 「水酸化アルミニウムの技術動向」、日本ゴム協会誌 第75巻、第8号、2002年
山本恭央等著 「プラスチックの熱分解・燃焼特性に及ぼす難燃材の影響」、日本機械学会論文集(B編)、第73巻、第734号(2007−10) 論文No.06−1117、第188頁−第196頁
本田亮、梶田吉晴著 「石灰焼成炉用耐火物の基礎」Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan 7、734−741(2000)
「FRP構造設計便覧」 社団法人強化プラスチック協会 編集 1994年9月発行 第1章 素材と材料特性 第47頁
本発明では、多孔質シリカ、有機化合物、および、無機化合物をベースとした断熱層において、断熱性を向上させるとともに強度と柔軟性のある断熱シートを提供することを目的とする。
本発明に係る断熱シートは下記[1]から[17]である。
[1]断熱層と、接着層と、フィルム基材を含む断熱シートであって、
前記断熱層は第1の断熱層と第2の断熱層を有し、
前記フィルム基材、前記接着層、前記断熱層が下層から上層に向かって積層されており、
前記第1の断熱層と前記第2の断熱層がそれぞれの層内に複数の気泡を有し、
前記第1の断熱層の気孔率が65%以上95%未満であり、前記第2の断熱層の気孔率が55%以上90%未満であり、
前記第1の断熱層の気孔率が前記第2の断熱層の気孔率よりも大きく、
前記第1の断熱層と前記第2の断熱層が、多孔質シリカと、無機化合物と、および、有機化合物とを含む、
ことを特徴とする断熱シートである。
[2]前記第1の断熱層の気孔率が70%以上90%未満であり、
前記第2の断熱層の気孔率が60%以上80%未満である、
ことを特徴とする[1]に記載の断熱シートである。
[3]前記第2の断熱層が前記第1の断熱層より下層側に設けられていることを特徴とする[1]または[2]に記載の断熱シートである。
[4]前記断熱層の熱伝導率が0.015W/m・Kから0.06W/m・Kであることを特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載の断熱シートである。
[5]前記断熱層がデュロメータ硬さ試験(タイプA)で40から70であることを特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載の断熱シートである。
[6]前記第1の断熱層と前記第2の断熱層が、難燃材をさらに含むことを特徴とする[1]から[5]のいずれかに記載の断熱シート。
[7]前記難燃材が、アンモニウム系化合物であることを特徴とする[6]に記載の断熱シートである。
[8]前記断熱層の組成は、多孔質シリカが15重量%から35重量%、無機化合物が15重量%から35重量%、有機化合物が40重量%から60重量%、難燃材が5重量%から30重量%であることを特徴とする[6]または[7]に記載の断熱シートである。
[9]前記無機化合物が、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、および、水酸化マグネシウムを含むことを特徴とする[1]から[8]のいずれかに記載の断熱シートである。
[10]前記多孔質シリカおよび前記無機化合物の重量の和に対する重量比率が、前記多孔質シリカが25重量%から50重量%、前記無機化合物に含まれる炭酸カルシウムが15重量%から30重量%、水酸化アルミニウムが15重量%から30重量%、酸化チタンが5重量%から15重量%、酸化亜鉛が5重量%から15重量%であることを特徴とする[9]に記載の断熱シートである。
[11]前記フィルム基材が、ポリイミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルスルホン、および、ポリエーテルイミドからなる群から選択される材料から形成されており、
前記接着層がシリコーン系ゴムおよびシリコーン系レジンを含む接着剤からなることを特徴とする[1]から[10]のいずれかに記載の断熱シートである。
[12]前記断熱層の厚さが7.0mm以下であり、
前記フィルム基材の裏面に耐熱性を有する粘着層が積層されている、
ことを特徴とする[1]から[11]のいずれかに記載の断熱シート。
[13]国際海事機関により定められた「火災試験方法の適用に関する国際コード」試験規格Part5の表面燃焼性試験に合格する耐火性を有することを特徴とする[1]から[12]のいずれかに記載の断熱シート。
[14]前記第1の断熱層が、中間層と、当該中間層の上下に形成される表面層と、を備えており、前記中間層の気泡率が、前記表面層の気泡率よりも高いことを特徴とする[1]から[13]のいずれか一項に記載の断熱シート。
[15]前記中間層には、前記表面層に含まれる気泡より大きな気泡が含まれていることを特徴とする[14]に記載の断熱シート。
[16]前記断熱層の上部に、多孔質シリカ、無機化合物、有機化合物及び難燃剤から選ばれた少なくとも一つの化合物、並びに、アルミニウムを含む、第3の断熱層がさらに積層されていることを特徴とする[1]から[15]のいずれか一項に記載の断熱シート。
[17]前記アルミニウムが、鱗片状であることを特徴とする[16]に記載の断熱シート。
[1]断熱層と、接着層と、フィルム基材を含む断熱シートであって、
前記断熱層は第1の断熱層と第2の断熱層を有し、
前記フィルム基材、前記接着層、前記断熱層が下層から上層に向かって積層されており、
前記第1の断熱層と前記第2の断熱層がそれぞれの層内に複数の気泡を有し、
前記第1の断熱層の気孔率が65%以上95%未満であり、前記第2の断熱層の気孔率が55%以上90%未満であり、
前記第1の断熱層の気孔率が前記第2の断熱層の気孔率よりも大きく、
前記第1の断熱層と前記第2の断熱層が、多孔質シリカと、無機化合物と、および、有機化合物とを含む、
ことを特徴とする断熱シートである。
[2]前記第1の断熱層の気孔率が70%以上90%未満であり、
前記第2の断熱層の気孔率が60%以上80%未満である、
ことを特徴とする[1]に記載の断熱シートである。
[3]前記第2の断熱層が前記第1の断熱層より下層側に設けられていることを特徴とする[1]または[2]に記載の断熱シートである。
[4]前記断熱層の熱伝導率が0.015W/m・Kから0.06W/m・Kであることを特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載の断熱シートである。
[5]前記断熱層がデュロメータ硬さ試験(タイプA)で40から70であることを特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載の断熱シートである。
[6]前記第1の断熱層と前記第2の断熱層が、難燃材をさらに含むことを特徴とする[1]から[5]のいずれかに記載の断熱シート。
[7]前記難燃材が、アンモニウム系化合物であることを特徴とする[6]に記載の断熱シートである。
[8]前記断熱層の組成は、多孔質シリカが15重量%から35重量%、無機化合物が15重量%から35重量%、有機化合物が40重量%から60重量%、難燃材が5重量%から30重量%であることを特徴とする[6]または[7]に記載の断熱シートである。
[9]前記無機化合物が、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、および、水酸化マグネシウムを含むことを特徴とする[1]から[8]のいずれかに記載の断熱シートである。
[10]前記多孔質シリカおよび前記無機化合物の重量の和に対する重量比率が、前記多孔質シリカが25重量%から50重量%、前記無機化合物に含まれる炭酸カルシウムが15重量%から30重量%、水酸化アルミニウムが15重量%から30重量%、酸化チタンが5重量%から15重量%、酸化亜鉛が5重量%から15重量%であることを特徴とする[9]に記載の断熱シートである。
[11]前記フィルム基材が、ポリイミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルスルホン、および、ポリエーテルイミドからなる群から選択される材料から形成されており、
前記接着層がシリコーン系ゴムおよびシリコーン系レジンを含む接着剤からなることを特徴とする[1]から[10]のいずれかに記載の断熱シートである。
[12]前記断熱層の厚さが7.0mm以下であり、
前記フィルム基材の裏面に耐熱性を有する粘着層が積層されている、
ことを特徴とする[1]から[11]のいずれかに記載の断熱シート。
[13]国際海事機関により定められた「火災試験方法の適用に関する国際コード」試験規格Part5の表面燃焼性試験に合格する耐火性を有することを特徴とする[1]から[12]のいずれかに記載の断熱シート。
[14]前記第1の断熱層が、中間層と、当該中間層の上下に形成される表面層と、を備えており、前記中間層の気泡率が、前記表面層の気泡率よりも高いことを特徴とする[1]から[13]のいずれか一項に記載の断熱シート。
[15]前記中間層には、前記表面層に含まれる気泡より大きな気泡が含まれていることを特徴とする[14]に記載の断熱シート。
[16]前記断熱層の上部に、多孔質シリカ、無機化合物、有機化合物及び難燃剤から選ばれた少なくとも一つの化合物、並びに、アルミニウムを含む、第3の断熱層がさらに積層されていることを特徴とする[1]から[15]のいずれか一項に記載の断熱シート。
[17]前記アルミニウムが、鱗片状であることを特徴とする[16]に記載の断熱シート。
本発明に係る断熱シートは、気泡率が異なる気泡を含む第1の断熱層と第2の断熱層を有し、これらの層にはさらに孔を有する多孔質シリカが含まれている。これらの気泡、孔のそれぞれが有する断熱機能の相乗効果により、厚さが薄いにもかかわらず、高い断熱性と強度と柔軟性を併せ持つ断熱シートを作製することに成功した。
本発明は、多孔質シリカ、有機化合物、無機化合物をベースとした断熱層に気孔率の異なる層を設けることにより断熱性を向上させるとともに強度と柔軟性のある断熱シートを提供する。本発明は、上述した吹付塗装法や従来の断熱シートの有する問題点を解決するものである。
本発明において用語「気泡」とは断熱層中に形成される大径気泡および小径気泡を意味するものであり、多孔質シリカに形成される孔を含むものではない。また「気泡率」とは、断熱層中に形成される大径気泡および小径気泡の体積率を意味するものであり、多孔質シリカに形成される孔の体積率を含むものではない。
本発明において用語「気孔」とは断熱層中に形成される大径気泡および小径気泡ならびに多孔質シリカに形成される孔を合わせたものを意味するものであり、用語「気孔率」とはこの気孔の体積率を意味する。
本発明において用語「柔軟性」とは可撓性を含む性質を意味する。
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施態様は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
<実施形態1>
I.実施形態1に係る断熱材の構成と材料について
1.断熱シートの構成について
実施形態1に係る断熱シートは、断熱層と、接着層と、フィルム基材を含む断熱シートであって、前記断熱層は第1の断熱層と第2の断熱層を有し、前記フィルム基材、前記接着層、前記第2の断熱層、および、前記第1の断熱層が下層から上層に向かって積層され、前記第1の断熱層と前記第2の断熱層がそれぞれの層内に複数の気泡を有し、前記第1の断熱層の気孔率が65%以上95%未満であり、前記第2の断熱層の気孔率が55%以上90%未満であり、前記第1の断熱層の気孔率が前記第2の断熱層の気孔率よりも大きく、前記第1の断熱層と前記第2の断熱層が、多孔質シリカと、および、無機化合物と、有機化合物と、難燃材を含むものである。本実施形態に係る断熱シートを、断熱対象に設置する際には、前記フィルム基材の裏面に耐熱性粘着剤を積層して粘着層を形成し、粘着層を断熱対象に面して設置することができる。断熱シートの用途により、第1の断熱層および第2の断熱層の他に断熱性能を有する断熱材をさらに積層させて使用することもできる。また、第1の断熱層と第2の断熱層の間に、さらに別の断熱層を積層させることもできる。
<実施形態1>
I.実施形態1に係る断熱材の構成と材料について
1.断熱シートの構成について
実施形態1に係る断熱シートは、断熱層と、接着層と、フィルム基材を含む断熱シートであって、前記断熱層は第1の断熱層と第2の断熱層を有し、前記フィルム基材、前記接着層、前記第2の断熱層、および、前記第1の断熱層が下層から上層に向かって積層され、前記第1の断熱層と前記第2の断熱層がそれぞれの層内に複数の気泡を有し、前記第1の断熱層の気孔率が65%以上95%未満であり、前記第2の断熱層の気孔率が55%以上90%未満であり、前記第1の断熱層の気孔率が前記第2の断熱層の気孔率よりも大きく、前記第1の断熱層と前記第2の断熱層が、多孔質シリカと、および、無機化合物と、有機化合物と、難燃材を含むものである。本実施形態に係る断熱シートを、断熱対象に設置する際には、前記フィルム基材の裏面に耐熱性粘着剤を積層して粘着層を形成し、粘着層を断熱対象に面して設置することができる。断熱シートの用途により、第1の断熱層および第2の断熱層の他に断熱性能を有する断熱材をさらに積層させて使用することもできる。また、第1の断熱層と第2の断熱層の間に、さらに別の断熱層を積層させることもできる。
本実施形態に係る断熱シートの断面構造を図1に示す。図1における積層された断熱材の下から2番目の層は、本実施形態に係る断熱シートの基盤をなすフィルム基材(2)である。フィルム基材(2)の上には、フィルム基材(2)と第2の断熱層(4)の双方に対して親和性の高い接着層(3)が積層され、接着層(3)によりフィルム基材(2)と第2の断熱層(4)が接着される。第2の断熱層(4)の上には第1の断熱層が積層される。断熱シート(7)のフィルム基材(2)の裏面には断熱対象(8)と断熱シート(7)を粘着することができる粘着層(1)を形成する。断熱材(6)を断熱対象(8)に設置する以前に断熱材を保管したり、運搬したりする際には、粘着層(1)の下面には保護シート(図示せず)が貼り付けられ、施工現場で断熱材(6)を断熱対象(8)に接着するときに保護シートを剥がし、断熱材(6)を断熱対象(8)に粘着させることができる。粘着層(1)は、断熱材(6)を張替ができるように断熱対象(8)から剥離可能な材料から成ることが好ましい。
第2の断熱層(4)の層中には小径気泡(11)が含まれており、第1の断熱層(5)には小径気泡(11)の他に大径気泡(10)が含まれている。第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4)を構成する素材には多孔質シリカ(12)が含まれている。その他、第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4)には、有機化合物、無機化合物、難燃材、および、分散剤などが含まれる(図示せず)。
2.断熱層
断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))は、原料として多孔質シリカ、有機化合物、無機化合物、難燃材、水を含む。これらの成分の他、無機化合物を原料の溶液中に安定的に分散させる分散剤を含ませることができる。以下、それぞれの成分について詳述する。
断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))は、原料として多孔質シリカ、有機化合物、無機化合物、難燃材、水を含む。これらの成分の他、無機化合物を原料の溶液中に安定的に分散させる分散剤を含ませることができる。以下、それぞれの成分について詳述する。
(1)多孔質シリカ
本実施形態に係る断熱層に含まれる多孔質シリカとしては、中空シリカやシリカエアロゲルを用いることができる。しかし、人工的に作られた中空シリカやシリカエアロゲルは工業的に大量生産することが困難であり高価である。したがって、より安価で、大量に入手することが可能な稲や麦、その他の植物由来のもみ殻を焼成および精製することによって得られるもみ殻シリカを用いることが好ましい。本実施形態で用いられる多孔質シリカは入り組んだ孔を多数有し、これらの孔の中の空気層が断熱性の向上に寄与する。また、多孔質シリカを構成している酸化ケイ素は難燃性であることから、多孔質シリカの断熱層への使用は断熱シートの耐火性向上にも寄与する。
本実施形態に係る断熱層に含まれる多孔質シリカとしては、中空シリカやシリカエアロゲルを用いることができる。しかし、人工的に作られた中空シリカやシリカエアロゲルは工業的に大量生産することが困難であり高価である。したがって、より安価で、大量に入手することが可能な稲や麦、その他の植物由来のもみ殻を焼成および精製することによって得られるもみ殻シリカを用いることが好ましい。本実施形態で用いられる多孔質シリカは入り組んだ孔を多数有し、これらの孔の中の空気層が断熱性の向上に寄与する。また、多孔質シリカを構成している酸化ケイ素は難燃性であることから、多孔質シリカの断熱層への使用は断熱シートの耐火性向上にも寄与する。
形成された断熱層全体に対する多孔質シリカの量は、15重量%から35重量%であることが好ましい。また、形成された断熱層全体に対する多孔質シリカの量は、20重量%から35重量%であることがより好ましく、30重量%から35重量%であることがさらに好ましい。形成された断熱層全体に対する多孔質シリカの量が15重量%未満、とりわけ10重量%未満であると熱伝導性が高くなることにより断熱性が低下し、35重量%より多くなると断熱材原料塗工液の粘度が高くなり、塗工性が低下するためである。
(2)有機化合物
本実施形態に係る断熱層に含まれる有機化合物としては、断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))に柔軟性をもたらす有機化合物であることが好ましい。このような柔軟性をもたらす有機化合物としては、高分子化合物が挙げられるが、その中でも耐火性を有するものが好ましい。耐熱性が比較的弱いものであっても、難燃性の無機化合物とともに用いられることで耐火性を示すものであってもよい。例えば、そのような高分子化合物は、ラテックスに含まれるものである。本実施形態で用いられるラテックスとしては、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエン系重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、メチルメタクリレート−ブタジエン系重合体(MBR)、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系重合体(VP)、アクリロニトリル−ブタジエン系重合体(NBR)、クロロプレンラテックス(CR)およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものを含むもの挙げられる。
本実施形態に係る断熱層に含まれる有機化合物としては、断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))に柔軟性をもたらす有機化合物であることが好ましい。このような柔軟性をもたらす有機化合物としては、高分子化合物が挙げられるが、その中でも耐火性を有するものが好ましい。耐熱性が比較的弱いものであっても、難燃性の無機化合物とともに用いられることで耐火性を示すものであってもよい。例えば、そのような高分子化合物は、ラテックスに含まれるものである。本実施形態で用いられるラテックスとしては、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエン系重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、メチルメタクリレート−ブタジエン系重合体(MBR)、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系重合体(VP)、アクリロニトリル−ブタジエン系重合体(NBR)、クロロプレンラテックス(CR)およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものを含むもの挙げられる。
特に好ましいラテックスは、エマルジョンにするため乳化重合しやすいジエン系のラテックスであり、例えば、スチレン−ブタジエン系重合体(SBR)およびメチルメタクリレート−ブタジエン系重合体(MBR)の組み合わせが挙げられる。この組み合わせを断熱層に用いることにより以下の利点が得られる。
(i)例えば、直径が0.1μm以下の小さいラテックス粒子を用いることで、溶液中でラテックス粒子が分散しやすくなる。また、断熱層中の水が蒸発しやすくなるので乾燥などのプロセスが容易になる。
(ii)断熱層に柔軟性および伸長性がもたらされ、さらに断熱層の層中に容易に気泡を形成することが可能となる。
(iii)シリコーン系ゴム(ジメチルシロキサン)のジメチル基やシリコーン系レジン(ジメチルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリシロキサンの架橋体)のメチル基及びフェニル基と親和性があることから、これらを含む接着層(3)と断熱層の親和性が向上する。
(iv)ラテックス中に含有される無機化合物と接着層(3)と親和性を有する。
(v)分散剤で処理された無機化合物(金属酸化物)は、SBRとMBRの組み合わせによるラテックスのジメチル基と親和性が高いために、断熱層中に高分散される。
(vi)ラテックス中に気泡が含まれない状態において透明性を有する。したがって、白色の無機化合物を混合させることにより、熱反射率の高い白色のラテックスの層を形成することができる。
(i)例えば、直径が0.1μm以下の小さいラテックス粒子を用いることで、溶液中でラテックス粒子が分散しやすくなる。また、断熱層中の水が蒸発しやすくなるので乾燥などのプロセスが容易になる。
(ii)断熱層に柔軟性および伸長性がもたらされ、さらに断熱層の層中に容易に気泡を形成することが可能となる。
(iii)シリコーン系ゴム(ジメチルシロキサン)のジメチル基やシリコーン系レジン(ジメチルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリシロキサンの架橋体)のメチル基及びフェニル基と親和性があることから、これらを含む接着層(3)と断熱層の親和性が向上する。
(iv)ラテックス中に含有される無機化合物と接着層(3)と親和性を有する。
(v)分散剤で処理された無機化合物(金属酸化物)は、SBRとMBRの組み合わせによるラテックスのジメチル基と親和性が高いために、断熱層中に高分散される。
(vi)ラテックス中に気泡が含まれない状態において透明性を有する。したがって、白色の無機化合物を混合させることにより、熱反射率の高い白色のラテックスの層を形成することができる。
形成された断熱層中の有機化合物の量は、形成された断熱層全体の重量に対し40重量%から60重量%であることが好ましい。また、形成された断熱層中の有機化合物の量は、40重量%から50重量%であることがより好ましい。形成された断熱層中の有機化合物の量が40重量%未満であると断熱層の強度が低下し、60重量%より多いと耐火性が低下するためである。
(3)無機化合物
本実施形態に係る断熱層に含まれる無機化合物としては、断熱層に耐火性および難燃性をもたらす金属化合物であることが好ましい。例えば、難燃性を有する無機化合物としては、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、ホウ素化合物、臭素化合物、酸化ジルコニウム、硼砂亜鉛、硼砂、および、それらの組み合わせからなる群から選択することができる。無機化合物としては、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化マグネシウムから選択される群から少なくとも1種の無機化合物であることが好ましい。特に好ましい無機化合物としては、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、および、酸化チタンを含むことが好ましく、さらに、水酸化マグネシウムを含むことが好ましい。形成された断熱層の無機化合物の断熱層全体に対する量は、15重量%から35重量%であることが好ましい。また、形成された断熱層の無機化合物の断熱層全体に対する量は、15重量%から20重量%であることがより好ましい。形成された断熱層の無機化合物の断熱層全体に対する量が15重量%未満であると耐火性が低下し、35重量%より多いと断熱シートの強度が低下するためである。
本実施形態に係る断熱層に含まれる無機化合物としては、断熱層に耐火性および難燃性をもたらす金属化合物であることが好ましい。例えば、難燃性を有する無機化合物としては、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、ホウ素化合物、臭素化合物、酸化ジルコニウム、硼砂亜鉛、硼砂、および、それらの組み合わせからなる群から選択することができる。無機化合物としては、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化マグネシウムから選択される群から少なくとも1種の無機化合物であることが好ましい。特に好ましい無機化合物としては、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、および、酸化チタンを含むことが好ましく、さらに、水酸化マグネシウムを含むことが好ましい。形成された断熱層の無機化合物の断熱層全体に対する量は、15重量%から35重量%であることが好ましい。また、形成された断熱層の無機化合物の断熱層全体に対する量は、15重量%から20重量%であることがより好ましい。形成された断熱層の無機化合物の断熱層全体に対する量が15重量%未満であると耐火性が低下し、35重量%より多いと断熱シートの強度が低下するためである。
(i)水酸化アルミニウム
水酸化アルミニウムは、水酸基を有しているため水和されやすい。水和水酸化アルミニウムを加熱すると吸熱反応により水和水が脱離し、その際に冷却作用を示す。この冷却作用によって、断熱層を構成するラテックスの燃焼が抑制される。水酸化アルミニウムの過熱と脱水により生じた酸化アルミニウムも水和することができることから耐火性を有するため、断熱層の耐火性向上に寄与する。
水酸化アルミニウムは、水酸基を有しているため水和されやすい。水和水酸化アルミニウムを加熱すると吸熱反応により水和水が脱離し、その際に冷却作用を示す。この冷却作用によって、断熱層を構成するラテックスの燃焼が抑制される。水酸化アルミニウムの過熱と脱水により生じた酸化アルミニウムも水和することができることから耐火性を有するため、断熱層の耐火性向上に寄与する。
(ii)炭酸カルシウム
炭酸カルシウムは、1気圧、約825℃で分解し二酸化炭素を発生するとともに酸化カルシウムを生成する。発生した二酸化炭素が過熱時のラテックスの燃焼を抑制する。また、生成した酸化カルシウムも耐火性を有する物質であり、断熱層の耐火性向上に寄与する。
炭酸カルシウムは、1気圧、約825℃で分解し二酸化炭素を発生するとともに酸化カルシウムを生成する。発生した二酸化炭素が過熱時のラテックスの燃焼を抑制する。また、生成した酸化カルシウムも耐火性を有する物質であり、断熱層の耐火性向上に寄与する。
(iii)酸化チタン
酸化チタンを本実施形態に係る断熱層に添加した。酸化チタンは防カビ剤および抗菌剤として作用する他に、耐火性の向上にも寄与する。
酸化チタンを本実施形態に係る断熱層に添加した。酸化チタンは防カビ剤および抗菌剤として作用する他に、耐火性の向上にも寄与する。
(iv)酸化亜鉛
酸化亜鉛を本実施形態に係る断熱層に添加した。酸化亜鉛は防カビ剤および抗菌剤として作用する。したがって、断熱シートを設置する環境の湿度が高い場所であっても、断熱シート上のカビの発生を抑制することができる。
酸化亜鉛を本実施形態に係る断熱層に添加した。酸化亜鉛は防カビ剤および抗菌剤として作用する。したがって、断熱シートを設置する環境の湿度が高い場所であっても、断熱シート上のカビの発生を抑制することができる。
(v)水酸化マグネシウム
水酸化アルミニウムと同様に水酸化マグネシウムにも水分子が水和する。水酸化マグネシウムが加熱されると、水和している水分子が水酸化マグネシウムから脱離する。水分子の水酸化マグネシウムの脱離の際に吸熱反応により冷却作用を示すので、断熱シートの耐火性向上に寄与する。
水酸化アルミニウムと同様に水酸化マグネシウムにも水分子が水和する。水酸化マグネシウムが加熱されると、水和している水分子が水酸化マグネシウムから脱離する。水分子の水酸化マグネシウムの脱離の際に吸熱反応により冷却作用を示すので、断熱シートの耐火性向上に寄与する。
多孔質シリカおよび無機化合物の重量の和に対する重量比率は、多孔質シリカが25重量%から50重量%、炭酸カルシウムが15重量%から30重量%、水酸化アルミニウムが15重量%から30重量%、酸化チタンが5重量%から15重量%、酸化亜鉛が5重量%から15重量%であることが好ましい。
多孔質シリカの重量比率が25重量%未満であると断熱層の熱伝導率を小さくすることができず十分に断熱効果を発揮することができない。また、多孔質シリカの重量比率が50重量%を超えると断熱層形成の際に調製した原料溶液の粘度が大きくなり塗工が困難になる。炭酸カルシウムと水酸化アルミニウムのそれぞれは、15重量%未満になると耐火性能と熱反射による熱反射性能が低下してしまい、30重量%を超えると断熱材の熱伝導率が高くなる。酸化チタンと酸化亜鉛のそれぞれの重量比率は、5重量%未満になると防カビ性が低下し、15重量%を超えると断熱材の熱伝導率が高くなる。
(4)難燃材
本実施形態に係る断熱層に含まれる難燃材としては、アンモニウム系化合物、好ましくはリン酸アンモニウム系の化合物が挙げられる。このような難燃材の一例としてポリリン酸アンモニウムが挙げられる。ポリリン酸の難燃性の作用機序は以下の通りである。すなわち、ポリリン酸アンモニウムの分解によりアンモニアとリン酸が生じる。この時にリン酸の脱水縮合により生成した高分子状のメタリン酸は強酸性化合物であり、有機化合物のような可燃性物質の脱水を促進する。有機化合物の脱水により生成した炭素により可燃性物質の表面に被膜が形成され、酸素の直接接触が遮断されることにより難燃効果が発揮される(非特許文献3)。形成された断熱層全体に対する難燃材の量は5重量%から30重量%であることが好ましい。また、形成された断熱層全体に対する難燃材の量は、10重量%から30重量%がより好ましく、20重量%から30重量%であることがさらに好ましい。形成された断熱層全体に対する難燃材の量が5重量%未満であると耐火性が低下し、30重量%より多いと断熱材の強度および熱伝導率が高くなるためである。
本実施形態に係る断熱層に含まれる難燃材としては、アンモニウム系化合物、好ましくはリン酸アンモニウム系の化合物が挙げられる。このような難燃材の一例としてポリリン酸アンモニウムが挙げられる。ポリリン酸の難燃性の作用機序は以下の通りである。すなわち、ポリリン酸アンモニウムの分解によりアンモニアとリン酸が生じる。この時にリン酸の脱水縮合により生成した高分子状のメタリン酸は強酸性化合物であり、有機化合物のような可燃性物質の脱水を促進する。有機化合物の脱水により生成した炭素により可燃性物質の表面に被膜が形成され、酸素の直接接触が遮断されることにより難燃効果が発揮される(非特許文献3)。形成された断熱層全体に対する難燃材の量は5重量%から30重量%であることが好ましい。また、形成された断熱層全体に対する難燃材の量は、10重量%から30重量%がより好ましく、20重量%から30重量%であることがさらに好ましい。形成された断熱層全体に対する難燃材の量が5重量%未満であると耐火性が低下し、30重量%より多いと断熱材の強度および熱伝導率が高くなるためである。
(5)水
本実施形態に係る断熱層の形成に用いる水としては、断熱層に添加されている組成物の断熱性能、耐火性能、柔軟性を損なわせるような影響を与えない種類の水を用いることが好ましい。一例としては、無機物や有機物が含まれていない蒸留水を使用することが好ましい。
本実施形態に係る断熱層の形成に用いる水としては、断熱層に添加されている組成物の断熱性能、耐火性能、柔軟性を損なわせるような影響を与えない種類の水を用いることが好ましい。一例としては、無機物や有機物が含まれていない蒸留水を使用することが好ましい。
(6)分散剤
分散剤は、ラテックス溶液に添加されている多孔質シリカや無機化合物の溶液中での分散に寄与する。本実施形態に係る断熱層には、ラテックスの耐熱性と難燃性を向上させるために、無機化合物として金属酸化物や金属水酸化物がラテックス中に添加される。これらの無機化合物の添加量を増やすと耐火性能を向上させることができる。しかし、無機化合物の濃度が高すぎるとラテックス溶液中で無機化合物が凝集してしまう。したがって、これらの無機化合物の水溶液中での凝集を防止するために分散剤を添加する。このような分散剤の例としてポリアクリル酸が挙げられる。ポリアクリル酸はアニオン性の分子であり、溶液中の無機化合物の粒子に吸着して溶液中に安定的に分散させることができる。その他の分散剤としてはポリアクリル酸アンモニウムが好ましい。ポリアクリル酸アンモニウムは熱分解するとアンモニアを発生することから、断熱シートの耐火性の向上にも寄与する。また、多孔質シリカをラテックス溶液中で分散させる分散剤として、ポリアクリル酸系重合体を用いることができる。
分散剤は、ラテックス溶液に添加されている多孔質シリカや無機化合物の溶液中での分散に寄与する。本実施形態に係る断熱層には、ラテックスの耐熱性と難燃性を向上させるために、無機化合物として金属酸化物や金属水酸化物がラテックス中に添加される。これらの無機化合物の添加量を増やすと耐火性能を向上させることができる。しかし、無機化合物の濃度が高すぎるとラテックス溶液中で無機化合物が凝集してしまう。したがって、これらの無機化合物の水溶液中での凝集を防止するために分散剤を添加する。このような分散剤の例としてポリアクリル酸が挙げられる。ポリアクリル酸はアニオン性の分子であり、溶液中の無機化合物の粒子に吸着して溶液中に安定的に分散させることができる。その他の分散剤としてはポリアクリル酸アンモニウムが好ましい。ポリアクリル酸アンモニウムは熱分解するとアンモニアを発生することから、断熱シートの耐火性の向上にも寄与する。また、多孔質シリカをラテックス溶液中で分散させる分散剤として、ポリアクリル酸系重合体を用いることができる。
2-1.断熱層の厚さについて
断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))は、以下で説明するように、断熱層中において気孔を有することが、高い断熱性能を得るための主な要因となっている。即ち、断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))における気孔率のコントロールが必要となるものである。
断熱層の気孔率は、使用する原料、塗料や塗工等のプロセス条件のバラツキにより、ある程度のバラツキが発生し、このバラツキは、形成する断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))の厚さによって影響を受ける。
図3は、第1の断熱層(5)と第2の断熱層(4)の厚さを同一とし、また、気孔率が第1の断熱層(5)と第2の断熱層(4)においてほぼ同一〔80%〕になるように制作した断熱層全体の気孔率のバラツキ幅〔最大値と最小値の差〕と断熱層の厚さ〔第1断熱層+第2断熱層〕の関係を示したグラフである。また、図4は、断熱層全体の気孔率と熱伝導率の関係〔第1の断熱層(2.5mm)と第2の断熱層(2.5mm)の気孔率がほぼ同一の時〕を示したグラフである。
製品特性上、熱伝導率のバラツキ幅を0.01W/mK以内にしたいという要請があり、図4に基づけば、気孔率が65%〜85%である範囲においてもこれを満たすためには、気孔率のバラツキ幅を、5%以内にすることが求められる。
気孔率のバラツキ幅を5%以内にするためには、図3に基づけば、断熱層の厚さを7.0mm以下とする必要がある。
即ち、断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))の厚さを、7.0mm以下とすると、熱伝導率のバラツキ幅を0.01W/mK以内にすることができ、好適である。
断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))は、以下で説明するように、断熱層中において気孔を有することが、高い断熱性能を得るための主な要因となっている。即ち、断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))における気孔率のコントロールが必要となるものである。
断熱層の気孔率は、使用する原料、塗料や塗工等のプロセス条件のバラツキにより、ある程度のバラツキが発生し、このバラツキは、形成する断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))の厚さによって影響を受ける。
図3は、第1の断熱層(5)と第2の断熱層(4)の厚さを同一とし、また、気孔率が第1の断熱層(5)と第2の断熱層(4)においてほぼ同一〔80%〕になるように制作した断熱層全体の気孔率のバラツキ幅〔最大値と最小値の差〕と断熱層の厚さ〔第1断熱層+第2断熱層〕の関係を示したグラフである。また、図4は、断熱層全体の気孔率と熱伝導率の関係〔第1の断熱層(2.5mm)と第2の断熱層(2.5mm)の気孔率がほぼ同一の時〕を示したグラフである。
製品特性上、熱伝導率のバラツキ幅を0.01W/mK以内にしたいという要請があり、図4に基づけば、気孔率が65%〜85%である範囲においてもこれを満たすためには、気孔率のバラツキ幅を、5%以内にすることが求められる。
気孔率のバラツキ幅を5%以内にするためには、図3に基づけば、断熱層の厚さを7.0mm以下とする必要がある。
即ち、断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))の厚さを、7.0mm以下とすると、熱伝導率のバラツキ幅を0.01W/mK以内にすることができ、好適である。
3.フィルム基材
本実施形態に係る断熱シート(7)は、フィルム基材(2)上に接着層(3)と第2の断熱層(4)及び第1の断熱層(5)を積層して構築することができる。フィルム基材(2)は、断熱シート(7)を形成するための基盤であり、断熱シート(7)の生産性を向上させるために必要不可欠である。
本実施形態に係る断熱シート(7)は、フィルム基材(2)上に接着層(3)と第2の断熱層(4)及び第1の断熱層(5)を積層して構築することができる。フィルム基材(2)は、断熱シート(7)を形成するための基盤であり、断熱シート(7)の生産性を向上させるために必要不可欠である。
フィルム基材(2)の裏面に耐熱性の粘着剤からなる粘着層(1)を設けた後に、粘着層(1)の表面に取り外し可能な保護シートを貼り付けることで、保管や運搬の際の粘着層(1)の表面へのほこりや汚れの付着を防止することができる。施工の際には、保護シートをはがして粘着層(1)を露出させて、粘着層(1)の露出面を断熱対象(8)に粘着させることができるので、施工現場での施工性が向上する。
フィルム基材(2)は断熱層の保護および補強の機能も担っている。すなわち、フィルム基材(2)に積層される断熱層には高断熱性の他に高柔軟性があるものの、断熱層だけの状態で断熱層を大きく曲げた場合、断熱層に亀裂が発生して割れてばらばらに分解して飛散しまうことがある。柔軟性があり曲げても割れることがないフィルム基材(2)に接着層(3)を介して断熱層を積層しておけば、断熱層に大きな曲げの力が加わって断熱層が割れたとしても、フィルム基材(2)の上に接着された断熱層がフィルム基材(2)上に留まるので、割れた断熱層の飛散を防止することができる。
フィルム基材(2)の素材は、柔軟性、物理的強度と耐熱性を有するものを用いることができる。これらの特性を満たすフィルム基材(2)の素材としては、スーパーエンジニアリング・プラスチックや特殊エンジニアリング・プラスチックが好ましい。より具体的には、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)を使用することができるが、接着層(3)との親和性と耐熱性の観点から、ポリイミド(PI)を選択することがより好ましい。フィルム基材(2)の厚さは好ましくは10μmから100μmであり、20μmから50μmがより好ましい。このようなフィルム基材(2)の素材としては、少なくとも200℃以上の高い耐熱性を有するものであれば、特にポリイミド系の素材に限られない。
4.接着層
接着層(3)は、フィルム基材(2)と第2の断熱層(4)を接着させるための接着剤からなる。したがって、フィルム基材と第2の断熱層(4)の双方との親和力の高い接着剤を用いることが好ましい。第2の断熱層(4)は有機化合物が主成分の1つであり、またフィルム基材(2)はポリイミドを素材とするため、双方に対して親和性の高い接着剤を選択することが求められる。そのような接着剤として、シリコーン系ゴムおよびシリコーン系レジンを含む接着剤が挙げられる。シリコーン系ゴムの例としてジメチルポリシロキサンが挙げられる。また、シリコーン系レジンの例としては、メチルフェニルポリシロキサンの混合物が挙げられる。ここで、シリコーン系ゴム(ジメチルポリシロキサン)は、第2の断熱層(4)との親和性が高い素材であり、また接着層(3)に柔軟性をもたらす。ジメチルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリシロキサンの架橋体は、断熱層およびフィルム基材(2)の双方に対して親和性を有する素材である。
接着層(3)は、フィルム基材(2)と第2の断熱層(4)を接着させるための接着剤からなる。したがって、フィルム基材と第2の断熱層(4)の双方との親和力の高い接着剤を用いることが好ましい。第2の断熱層(4)は有機化合物が主成分の1つであり、またフィルム基材(2)はポリイミドを素材とするため、双方に対して親和性の高い接着剤を選択することが求められる。そのような接着剤として、シリコーン系ゴムおよびシリコーン系レジンを含む接着剤が挙げられる。シリコーン系ゴムの例としてジメチルポリシロキサンが挙げられる。また、シリコーン系レジンの例としては、メチルフェニルポリシロキサンの混合物が挙げられる。ここで、シリコーン系ゴム(ジメチルポリシロキサン)は、第2の断熱層(4)との親和性が高い素材であり、また接着層(3)に柔軟性をもたらす。ジメチルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリシロキサンの架橋体は、断熱層およびフィルム基材(2)の双方に対して親和性を有する素材である。
5.粘着層
粘着層(1)を形成するために粘着剤は、耐熱性を有する粘着剤が用いられる。フィルム基材(2)との親和性からシリコーン系の粘着剤が好ましいが、断熱対象(8)の種類により一般に汎用されている粘着剤であれば適用することが可能である。粘着層(1)は、断熱対象(8)との親和性が良いだけでなく、フィルム基材(2)とも親和性が良いものであることが好ましい。また、断熱シート(7)の断熱性能を鑑みれば200℃程度以上の耐熱性を有する粘着剤を用いることが好ましい。断熱材(6)の施工前の保管や運搬の際には、粘着層(1)の表面に脱離可能な保護シートを張り付けておき、施工現場での断熱材(6)の設置の際に、保護シートを剥がすことで断熱対象(8)に粘着させることができる。
粘着層(1)を形成するために粘着剤は、耐熱性を有する粘着剤が用いられる。フィルム基材(2)との親和性からシリコーン系の粘着剤が好ましいが、断熱対象(8)の種類により一般に汎用されている粘着剤であれば適用することが可能である。粘着層(1)は、断熱対象(8)との親和性が良いだけでなく、フィルム基材(2)とも親和性が良いものであることが好ましい。また、断熱シート(7)の断熱性能を鑑みれば200℃程度以上の耐熱性を有する粘着剤を用いることが好ましい。断熱材(6)の施工前の保管や運搬の際には、粘着層(1)の表面に脱離可能な保護シートを張り付けておき、施工現場での断熱材(6)の設置の際に、保護シートを剥がすことで断熱対象(8)に粘着させることができる。
6.断熱対象
本実施形態に係る断熱層は、0.015(W/m・K)から0.06(W/m・K)の熱伝導率を有する。これらに限られるものではないが、本実施形態に係る断熱シートの対象とし得る断熱対象としては、ヒーターなどの加温装置やクーラーや冷蔵庫などの冷却装置が挙げられる。また、本実施形態に係る断熱シートは、建築物、自動車、飛行機、船舶、航空宇宙船等に設置することもできる。
本実施形態に係る断熱層は、0.015(W/m・K)から0.06(W/m・K)の熱伝導率を有する。これらに限られるものではないが、本実施形態に係る断熱シートの対象とし得る断熱対象としては、ヒーターなどの加温装置やクーラーや冷蔵庫などの冷却装置が挙げられる。また、本実施形態に係る断熱シートは、建築物、自動車、飛行機、船舶、航空宇宙船等に設置することもできる。
II.断熱材の作製方法について
断熱材(6)の製造方法は、断熱層の原料を混合するステップと、接着剤を調製するステップと、粘着層及び保護シートが設けられているフィルム基材(2)を準備するステップと、フィルム基材(2)の片面に接着剤を積層して接着層(3)を形成するステップと、接着層(3)にさらに第2の断熱層(4)の原料を積層するステップと、第2の断熱層(4)を乾燥させるステップと、第2の断熱層(4)にさらに第1の断熱層(5)の原料を積層するステップと、第1の断熱層(5)を乾燥させるステップを含む。断熱効果をさらに高めたいときには、第1の断熱層の上、第1の断熱層と第2の断熱層の間、または、第2の断熱層の下にさらに1以上の断熱層を積層させてもよい。
断熱材(6)の製造方法は、断熱層の原料を混合するステップと、接着剤を調製するステップと、粘着層及び保護シートが設けられているフィルム基材(2)を準備するステップと、フィルム基材(2)の片面に接着剤を積層して接着層(3)を形成するステップと、接着層(3)にさらに第2の断熱層(4)の原料を積層するステップと、第2の断熱層(4)を乾燥させるステップと、第2の断熱層(4)にさらに第1の断熱層(5)の原料を積層するステップと、第1の断熱層(5)を乾燥させるステップを含む。断熱効果をさらに高めたいときには、第1の断熱層の上、第1の断熱層と第2の断熱層の間、または、第2の断熱層の下にさらに1以上の断熱層を積層させてもよい。
1.断熱層の原料を混合するステップについて
断熱材(6)の断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))に用いられる原料塗工液は、多孔質シリカ、有機化合物、無機化合物、難燃材、および、水を含む原料を混合することによって調製する。必要に応じて、無機化合物を分散させる分散剤を添加してもよい。混合には、断熱層中の気泡の大きさを調節するために、エアーレーションによる混合や、シェーカーの反復転倒による混合を行ってもよい。
断熱材(6)の断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))に用いられる原料塗工液は、多孔質シリカ、有機化合物、無機化合物、難燃材、および、水を含む原料を混合することによって調製する。必要に応じて、無機化合物を分散させる分散剤を添加してもよい。混合には、断熱層中の気泡の大きさを調節するために、エアーレーションによる混合や、シェーカーの反復転倒による混合を行ってもよい。
2.接着剤を調製するステップについて
溶媒に混合したシリコーン系ゴム及びシリコーン系レジンは加熱により重合を促進させることができる。接着層(3)を形成するための接着剤の調製の過程で、溶媒を追加して溶液中のシリコーン系ゴム及びシリコーン系レジンの濃度を調節してもよい。接着剤は、耐熱性を有するものであれば、市販品を購入して使用してもよい。
溶媒に混合したシリコーン系ゴム及びシリコーン系レジンは加熱により重合を促進させることができる。接着層(3)を形成するための接着剤の調製の過程で、溶媒を追加して溶液中のシリコーン系ゴム及びシリコーン系レジンの濃度を調節してもよい。接着剤は、耐熱性を有するものであれば、市販品を購入して使用してもよい。
3.フィルム基材および接着剤を準備するステップについて
粘着層及び保護シートが設けられているフィルム基材(2)及び調製した接着剤を準備する。
粘着層及び保護シートが設けられているフィルム基材(2)及び調製した接着剤を準備する。
4.フィルム基材の片面に接着剤を積層するステップについて
準備したフィルム基材(2)の一面に、調製した接着剤を塗布する。接着剤を塗布したフィルム基材を加熱してフィルム基材に定着させて接着層(3)を形成する。
準備したフィルム基材(2)の一面に、調製した接着剤を塗布する。接着剤を塗布したフィルム基材を加熱してフィルム基材に定着させて接着層(3)を形成する。
5.接着層にさらに第2の断熱層の原料塗工液を積層するステップについて
接着層(3)に調製した断熱層の原料塗工液を塗布して第2の断熱層(4)を形成する。断熱層の原料塗工液の塗布の方法は、スクリーン印刷方式、スピーンコーター式、ロールコーター式、バーコーター等による塗工、および、ハケ塗り等により塗布することができる。第2の断熱層(4)に気泡を設けるために、塗布の前に断熱層の原料を予めエアーレーションや撹拌装置を用いた撹拌を行うことが好ましい。
接着層(3)に調製した断熱層の原料塗工液を塗布して第2の断熱層(4)を形成する。断熱層の原料塗工液の塗布の方法は、スクリーン印刷方式、スピーンコーター式、ロールコーター式、バーコーター等による塗工、および、ハケ塗り等により塗布することができる。第2の断熱層(4)に気泡を設けるために、塗布の前に断熱層の原料を予めエアーレーションや撹拌装置を用いた撹拌を行うことが好ましい。
6.第2の断熱層を乾燥させるステップについて
積層された第2の断熱層(4)は、加熱器により100℃〜130℃で、断熱材に含まれる水を蒸発させることにより乾燥させる。乾燥時間は固化するために十分な時間、例えば、2時間以上である。加熱は積層された面全体に対して均一に加熱することが好ましい。
積層された第2の断熱層(4)は、加熱器により100℃〜130℃で、断熱材に含まれる水を蒸発させることにより乾燥させる。乾燥時間は固化するために十分な時間、例えば、2時間以上である。加熱は積層された面全体に対して均一に加熱することが好ましい。
7.前記第2の断熱層の面にさらに第1の断熱層の原料を積層するステップについて
第2の断熱層(4)が乾燥により固化するほどに十分に乾燥したことを確認し、第2の断熱層(4)の上部の面にさらに、第1の断熱層(5)を積層する。積層方法は、上述した第2の断熱層(4)を積層するステップと同様である。断熱層に含有される気泡の径の大きさは、基本的には撹拌時間を長くするほど小さくなる。したがって、第2の断熱層のように小径気泡のみからなる断熱層を設ける場合には、塗工前の原料塗工溶液の撹拌時間を第1の断熱層で用いられる原料塗工溶液を撹拌するときよりも長くすることが好ましい。
第2の断熱層(4)が乾燥により固化するほどに十分に乾燥したことを確認し、第2の断熱層(4)の上部の面にさらに、第1の断熱層(5)を積層する。積層方法は、上述した第2の断熱層(4)を積層するステップと同様である。断熱層に含有される気泡の径の大きさは、基本的には撹拌時間を長くするほど小さくなる。したがって、第2の断熱層のように小径気泡のみからなる断熱層を設ける場合には、塗工前の原料塗工溶液の撹拌時間を第1の断熱層で用いられる原料塗工溶液を撹拌するときよりも長くすることが好ましい。
8.第1の断熱層を乾燥させるステップについて
積層された第1の断熱層(5)の乾燥方法は、上述した第2の断熱層(4)を乾燥させるステップと同様である。
積層された第1の断熱層(5)の乾燥方法は、上述した第2の断熱層(4)を乾燥させるステップと同様である。
III.断熱性向上のメカニズムについて
実施形態1の断熱シート(7)の断熱層は、気泡中に空気を有する大径気泡(10)と小径気泡(11)を有する第1の断熱層(5)と小径気泡(11)を有する第2の断熱層(4)を含む。さらに、断熱層に添加される多孔質シリカ(12)の孔の中にも空気が存在する。断熱層に存在するこれらの大径気泡(10)、小径気泡(11)、および、多孔質シリカ(12)の孔の中に存在する空気が断熱効果に寄与する。空気は熱を伝える力が小さく、また、蓄熱する力も小さいので空気の層が多くなるほど断熱効果は高くなる。したがって、シート内の大径気泡(10)、小径気泡(11)、および、多孔質シリカ(12)の孔の中の空気の存在により本実施形態の断熱シートの断熱性は発揮される。
実施形態1の断熱シート(7)の断熱層は、気泡中に空気を有する大径気泡(10)と小径気泡(11)を有する第1の断熱層(5)と小径気泡(11)を有する第2の断熱層(4)を含む。さらに、断熱層に添加される多孔質シリカ(12)の孔の中にも空気が存在する。断熱層に存在するこれらの大径気泡(10)、小径気泡(11)、および、多孔質シリカ(12)の孔の中に存在する空気が断熱効果に寄与する。空気は熱を伝える力が小さく、また、蓄熱する力も小さいので空気の層が多くなるほど断熱効果は高くなる。したがって、シート内の大径気泡(10)、小径気泡(11)、および、多孔質シリカ(12)の孔の中の空気の存在により本実施形態の断熱シートの断熱性は発揮される。
1.大径気泡および小径気泡による断熱性能向上の設計
空気は熱を伝える力が小さく、また、蓄熱する力も小さいので空気の層が多くなるほど断熱力は高くなる。その一方、気泡率が大きい断熱層は、柔軟性は高いものの、強度が不足する。したがって、本実施形態の断熱シート(7)においては、強度を維持しつつ断熱対象から熱エネルギーを遮断するための設計として、断熱対象からの熱エネルギーを直接的に受ける側(下側)に大径気泡(10)を基本的に含まない小径気泡(11)から構成され、気泡率が小さく強度のある第2の断熱層(4)を配置し、上側に大径気泡(10)を含む第1の断熱層(5)を配置する。このような配置にすることで、断熱性を維持しながら、強度を両立させることが可能となる。また、強度が強い層(第2の断熱層(4))を下側に配置して、断熱材(6)の全体としての構造的安定性を高めることもできる。
空気は熱を伝える力が小さく、また、蓄熱する力も小さいので空気の層が多くなるほど断熱力は高くなる。その一方、気泡率が大きい断熱層は、柔軟性は高いものの、強度が不足する。したがって、本実施形態の断熱シート(7)においては、強度を維持しつつ断熱対象から熱エネルギーを遮断するための設計として、断熱対象からの熱エネルギーを直接的に受ける側(下側)に大径気泡(10)を基本的に含まない小径気泡(11)から構成され、気泡率が小さく強度のある第2の断熱層(4)を配置し、上側に大径気泡(10)を含む第1の断熱層(5)を配置する。このような配置にすることで、断熱性を維持しながら、強度を両立させることが可能となる。また、強度が強い層(第2の断熱層(4))を下側に配置して、断熱材(6)の全体としての構造的安定性を高めることもできる。
外界からの断熱対象への熱エネルギーを断熱する際の断熱層の配置の形態として、大径気泡(10)を有する気泡率が大きい第1の断熱層(5)の上にさらに小径気泡(11)のみからなる気泡率が小さい断熱層を積層させることもできる。また、第1の断熱層(5)と第2の断熱層(4)の積層の順番を逆にして、大径気泡(10)を有する断熱層の上に小径気泡(11)のみからなる気泡率が小さい断熱層を積層して、気泡率が小さい断熱層を、熱エネルギーを受ける断熱層上部に積層することも可能である。
しかしながら、前述したように、断熱対象(8)側(下側)に第2の断熱層(4)を配置し、熱エネルギーを直接的に受ける側(上側)に第1の断熱層(5)を配置する方が好ましい。
断熱対象(8)が発する熱を断熱させることを考えた場合、断熱層は、熱エネルギーを受ける側(断熱対象側)でフィルム基材(2)によって拘束されることになるため、この部分で熱応力が発生することになる。従って、断熱層のフィルム基材(2)と接する側では、これに耐えうる強度が必要である。よって、小径気泡(11)のみからなり、気泡率が小さく、強度が高い第2の断熱層(4)を断熱層のフィルム基材(2)と接する側(下側)に配することによって、前述の熱応力にも対応することができるものである。
また、気泡径が大きいと、微視的には温度分布が生じ易くなるため、熱エネルギーを受ける側(断熱対象側)に第1の断熱層(5)を配置すると、上述の熱応力の問題を助長するおそれがあるが、このような問題も、断熱対象側に第2の断熱層(4)を配置することによって防止することができる。
しかしながら、前述したように、断熱対象(8)側(下側)に第2の断熱層(4)を配置し、熱エネルギーを直接的に受ける側(上側)に第1の断熱層(5)を配置する方が好ましい。
断熱対象(8)が発する熱を断熱させることを考えた場合、断熱層は、熱エネルギーを受ける側(断熱対象側)でフィルム基材(2)によって拘束されることになるため、この部分で熱応力が発生することになる。従って、断熱層のフィルム基材(2)と接する側では、これに耐えうる強度が必要である。よって、小径気泡(11)のみからなり、気泡率が小さく、強度が高い第2の断熱層(4)を断熱層のフィルム基材(2)と接する側(下側)に配することによって、前述の熱応力にも対応することができるものである。
また、気泡径が大きいと、微視的には温度分布が生じ易くなるため、熱エネルギーを受ける側(断熱対象側)に第1の断熱層(5)を配置すると、上述の熱応力の問題を助長するおそれがあるが、このような問題も、断熱対象側に第2の断熱層(4)を配置することによって防止することができる。
図5は、第1の断熱層と第2の断熱層のそれぞれについて、気孔率と熱伝導率の関係〔第1の断熱層(5mm単層)、第2の断熱層(5mm単層)〕を示したグラフである。
また、表1に、図5の第1の断熱層と第2の断熱層のそれぞれについての、柔軟性〔耐屈曲性試験〕の比較を示した。なお、耐屈曲性試験は、耐屈曲性を測定する屈曲試験装置を用いた円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1)を使用した。
また、表1に、図5の第1の断熱層と第2の断熱層のそれぞれについての、柔軟性〔耐屈曲性試験〕の比較を示した。なお、耐屈曲性試験は、耐屈曲性を測定する屈曲試験装置を用いた円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1)を使用した。
図5及び表1に示されるように、気孔率が同じ場合、大径気泡が存在する方が、熱伝導率が小さく、また、柔軟性〔耐屈曲性〕においても優れている。
これに基づけば、大径気泡を有する第1の断熱層(5)のみによって断熱層を構成した方がよいということになるが、引っ張り強度に関しては大径気泡を有しない第2の断熱層(4)が優れており、前述のごとく、第2の断熱層(4)を設けることによって、断熱材自体の強度〔熱応力等に対する強度〕を維持することができるものである。
なお、本実施形態に係る断熱層では、上述の大径気泡(10)と小径気泡(11)のコンビネーションによる断熱層の断熱性と構造安定性の向上に加えて、多孔質シリカの孔の中の空気も断熱性能向上に寄与している。
これに基づけば、大径気泡を有する第1の断熱層(5)のみによって断熱層を構成した方がよいということになるが、引っ張り強度に関しては大径気泡を有しない第2の断熱層(4)が優れており、前述のごとく、第2の断熱層(4)を設けることによって、断熱材自体の強度〔熱応力等に対する強度〕を維持することができるものである。
なお、本実施形態に係る断熱層では、上述の大径気泡(10)と小径気泡(11)のコンビネーションによる断熱層の断熱性と構造安定性の向上に加えて、多孔質シリカの孔の中の空気も断熱性能向上に寄与している。
本実施形態に係る断熱シートは、第1の断熱層(5)の気孔率が前記第2の断熱層(4)の気孔率よりも大きい。このとき、第1の断熱層(5)の気孔率は65%以上95%未満であり、第2の断熱層(4)の気孔率が55%以上90%未満であることが好ましい。第1の断熱層(5)の気孔率が70%以上90%未満であり、第2の断熱層(4)の気孔率が60%以上80%未満であることがより好ましい。
2.熱反射効果による断熱性向上の効果
本実施形態で用いられる無機化合物である、多孔質シリカ(SiO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)は、いずれも白色となる。これらの白色の無機化合物が透明であるラテックスに混合されることから、断熱層の表面は白色である。形成された断熱層の表面は白色であるので熱を反射しやすい。したがって、本実施形態に係る断熱シート(7)の断熱性は、上述の大径気泡(10)、小径気泡(11)、および、多孔質シリカ(12)の孔による断熱効果と白色の無機化合物による熱の反射性能により相乗的に向上する。
本実施形態で用いられる無機化合物である、多孔質シリカ(SiO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)は、いずれも白色となる。これらの白色の無機化合物が透明であるラテックスに混合されることから、断熱層の表面は白色である。形成された断熱層の表面は白色であるので熱を反射しやすい。したがって、本実施形態に係る断熱シート(7)の断熱性は、上述の大径気泡(10)、小径気泡(11)、および、多孔質シリカ(12)の孔による断熱効果と白色の無機化合物による熱の反射性能により相乗的に向上する。
IV.耐火性向上のメカニズムについて
1.シート内の気泡の耐火性向上のメカニズム
水酸化アルミニウムの表面には水分子が水和しており、加熱により水和している水分子が水酸化アルミニウム分子から脱離する。この水和水酸化アルミニウムの水分子の脱離による吸熱反応に伴う冷却効果により、水和水酸化アルミニウムは難燃性剤としての機能を発揮する。したがって、ラテックスに水酸化アルミニウムを含有させると、水酸化アルミニウムに水和している水分子の脱離により、ラテックスの耐火性能が向上する。
1.シート内の気泡の耐火性向上のメカニズム
水酸化アルミニウムの表面には水分子が水和しており、加熱により水和している水分子が水酸化アルミニウム分子から脱離する。この水和水酸化アルミニウムの水分子の脱離による吸熱反応に伴う冷却効果により、水和水酸化アルミニウムは難燃性剤としての機能を発揮する。したがって、ラテックスに水酸化アルミニウムを含有させると、水酸化アルミニウムに水和している水分子の脱離により、ラテックスの耐火性能が向上する。
本実施形態に係る断熱材の断熱層では、断熱層内部に多数の気泡を設計したことにより、水酸化アルミニウムの難燃補助剤としての機能をさらに向上させることが可能になった。これは、断熱シートを加熱した際に、気泡内壁近傍に存在している水和水酸化アルミニウムより生じた水分子が気泡の気相内に拡散され、断熱層内における吸熱反応が促進されるためである。
水和水酸化アルミニウムから発生した水分子により、気泡内の空気が気泡外部に追い出され、気相内の燃焼に寄与する酸素分子を含む空気を構成する分子の数が減少する。本実施形態では、さらに水酸化アルミニウムの他に難燃材としてポリリン酸アンモニウムが添加されているため、ポリリン酸アンモニウムの加熱によって発生したアンモニア分子が気泡の気相中の空気を構成する分子が気泡内から追い出し、気泡内の空気を構成する分子の数が減少する。この時、空気内の燃焼に寄与する酸素分子も気泡内から排除され酸素分子数も減少するので、断熱層の耐火性が向上する。
2.気泡の大きさと耐火性向上の関係
本実施形態に係る断熱層には、第1の断熱層(5)に大径気泡(10)と小径気泡(11)を設け、第2の断熱層(4)に小径気泡(11)を設け、さらに入り組んだ孔を有する多孔質シリカ(12)を添加した。上述のとおり、温度の上昇により、水和水酸化アルミニウムからは水分子が生じ、ポリリン酸アンモニウムからは、アンモニア分子が生じる。大径気泡(10)および小径気泡(11)のひとつひとつに着目すると、体積が大きい大径気泡(10)は、体積が小さい小径気泡(11)よりも、熱分解により生じた水分子やアンモニア分子を多く受容できる。気泡内がそれらの分子で飽和するまでの時間は、大径気泡(10)のほうが長時間要するので、体積が大きいだけ大径気泡(10)の内壁近傍に存在する無機化合物や難燃材の分解反応が促進され吸熱反応による冷却効果の時間が長くなる。したがって、小径気泡(11)のみからなる断熱シートよりも、大径気泡(10)を含む断熱シートのほうが耐火性能を発揮する時間が長い。
本実施形態に係る断熱層には、第1の断熱層(5)に大径気泡(10)と小径気泡(11)を設け、第2の断熱層(4)に小径気泡(11)を設け、さらに入り組んだ孔を有する多孔質シリカ(12)を添加した。上述のとおり、温度の上昇により、水和水酸化アルミニウムからは水分子が生じ、ポリリン酸アンモニウムからは、アンモニア分子が生じる。大径気泡(10)および小径気泡(11)のひとつひとつに着目すると、体積が大きい大径気泡(10)は、体積が小さい小径気泡(11)よりも、熱分解により生じた水分子やアンモニア分子を多く受容できる。気泡内がそれらの分子で飽和するまでの時間は、大径気泡(10)のほうが長時間要するので、体積が大きいだけ大径気泡(10)の内壁近傍に存在する無機化合物や難燃材の分解反応が促進され吸熱反応による冷却効果の時間が長くなる。したがって、小径気泡(11)のみからなる断熱シートよりも、大径気泡(10)を含む断熱シートのほうが耐火性能を発揮する時間が長い。
一方で、断熱層中の気泡が大径気泡(10)のみであると、単位体積当たりの気泡の内表面の総面積が小さくなる。したがって、大径気泡(10)だけでなく小径気泡(11)を断熱層内部に設けることにより気泡内表面の総面積を増大させることができる。内表面積を増大すると、気泡内表面に存在する無機化合物および難燃材と気泡内の気相との接触面積も増大する。気泡の内表面は無機化合物と難燃材の耐熱性付与の反応場としての機能を有しているので、気泡の内表面積が増大により無機化合物および難燃材がより活性化される。特に小径気泡(11)が有する耐火性能は加熱初期における耐火性の付与に寄与し、大径気泡(10)は小径気泡(11)よりも長時間にわたり耐火性の付与に寄与する。
また、気泡内に拡散した水分子やアンモニア分子は、温度の上昇とともに分子の運動エネルギーが増大し断熱層に含まれる高分子化合物の構造を破壊する。本実施形態においては、気泡内に拡散した水分子やアンモニア分子は、気泡内表面に存在する多孔質シリカ(12)の入り組んだ孔内に入り込むことができる。孔内に水分子やアンモニア分子が入り込むことにより、これらの分子の熱運動に伴う断熱層中の有機化合物分子への衝突回数が減少し、断熱層中の有機化合物の水分子やアンモニア分子の熱運動による劣化が抑制される。
大径気泡(10)が有する長時間に及ぶ冷却能力、小径気泡(11)が有する加熱初期における耐火性能、および、多孔質シリカ(12)の有する孔の水分子等の捕捉による有機化合物の劣化抑制の相乗効果により、本実施形態に係る断熱シートの耐火性は向上する。
3.温度に対する段階的耐火性能の付与
断熱シート(7)に耐火性および難燃性を付与する上述の無機化合物である水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、および、難燃性物質のポリリン酸アンモニウムの熱分解温度はそれぞれ異なる温度範囲にあることから、断熱シート(7)は、広い温度領域にわたる耐火性能を有する。例えば、水酸化アルミニウムに水和している水は、245℃、320℃、550℃において段階的に脱離するために、この温度領域内での断熱層の耐火性に寄与する(非特許文献4)。難燃性物質のポリリン酸アンモニウムは、275℃において分解してアンモニアが発生するので、同じ温度領域で水酸化アルミニウムから脱離する水分子とともに、断熱層の耐火性能の向上に寄与する(非特許文献5)。したがって、本実施形態に係る断熱シートが最も耐火性を発揮する温度範囲は、水酸化アルミニウムの脱水とポリリン酸アンモニウムの分解が重複する250℃から300℃である。炭酸カルシウムから二酸化炭素への分解は825℃で起こるので、水酸化アルミニウムの水分子の脱離やポリリン酸アンモニウムからのアンモニアの発生の温度よりも高い温度で断熱層の耐火性に寄与する(非特許文献6)。したがって、断熱層に水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム、炭酸カルシウムを含ませることによって、およそ200℃から900℃の範囲にわたって断熱層に耐火性能が付与される。
断熱シート(7)に耐火性および難燃性を付与する上述の無機化合物である水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、および、難燃性物質のポリリン酸アンモニウムの熱分解温度はそれぞれ異なる温度範囲にあることから、断熱シート(7)は、広い温度領域にわたる耐火性能を有する。例えば、水酸化アルミニウムに水和している水は、245℃、320℃、550℃において段階的に脱離するために、この温度領域内での断熱層の耐火性に寄与する(非特許文献4)。難燃性物質のポリリン酸アンモニウムは、275℃において分解してアンモニアが発生するので、同じ温度領域で水酸化アルミニウムから脱離する水分子とともに、断熱層の耐火性能の向上に寄与する(非特許文献5)。したがって、本実施形態に係る断熱シートが最も耐火性を発揮する温度範囲は、水酸化アルミニウムの脱水とポリリン酸アンモニウムの分解が重複する250℃から300℃である。炭酸カルシウムから二酸化炭素への分解は825℃で起こるので、水酸化アルミニウムの水分子の脱離やポリリン酸アンモニウムからのアンモニアの発生の温度よりも高い温度で断熱層の耐火性に寄与する(非特許文献6)。したがって、断熱層に水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム、炭酸カルシウムを含ませることによって、およそ200℃から900℃の範囲にわたって断熱層に耐火性能が付与される。
V.断熱対象への設置方法について
断熱材(6)は、粘着剤をフィルム基材(2)の裏面に積層して粘着層(1)を形成し、粘着層(1)の表面を断熱対象(8)に粘着させることで断熱対象に設置することができる。断熱材(6)の保管や運搬の時には、断熱材(6)の粘着層(1)の表面に保護シートが貼り付けられており、使用時に保護シートを剥がして、断熱対象(8)の表面に粘着層(1)の表面を張り付けて断熱材(6)を設置することができる。断熱材(6)は、薄いシート状であるので、現場における取扱いと施工が容易となる。加えて、シートが柔軟性を有するので、平面状の断熱対象(8)のみならず、円形のパイプ、曲面のあるダクト等であっても、曲面状の断熱対象に断熱材(6)を設置する事ができる。曲面を有する断熱対象に断熱材(6)が設置されている場合において、経年変化により断熱対象に変形やゆがみが生じても、断熱材(6)の柔軟性により断熱対象の変形に合わせて断熱シートが変形するので、断熱対象から断熱材が脱落しにくい。
断熱材(6)は、粘着剤をフィルム基材(2)の裏面に積層して粘着層(1)を形成し、粘着層(1)の表面を断熱対象(8)に粘着させることで断熱対象に設置することができる。断熱材(6)の保管や運搬の時には、断熱材(6)の粘着層(1)の表面に保護シートが貼り付けられており、使用時に保護シートを剥がして、断熱対象(8)の表面に粘着層(1)の表面を張り付けて断熱材(6)を設置することができる。断熱材(6)は、薄いシート状であるので、現場における取扱いと施工が容易となる。加えて、シートが柔軟性を有するので、平面状の断熱対象(8)のみならず、円形のパイプ、曲面のあるダクト等であっても、曲面状の断熱対象に断熱材(6)を設置する事ができる。曲面を有する断熱対象に断熱材(6)が設置されている場合において、経年変化により断熱対象に変形やゆがみが生じても、断熱材(6)の柔軟性により断熱対象の変形に合わせて断熱シートが変形するので、断熱対象から断熱材が脱落しにくい。
さらに、断熱材(6)は薄いシートであるので、断熱対象に設置する前に、断熱対象の大きさ、形状に合わせてシートをハサミやカッターで加工成形することが可能である。したがって、従来の吹付塗装等の手間が省けるだけでなく、一定の厚さを有する断熱材を簡便にかつ確実に設置することができる。また、断熱材(6)は気泡を有する薄いシートで軽量であるので施工現場への運搬も容易である。このような断熱材の施工性を持たせるために本実施形態に係る断熱材の断熱層は、デュロメータ硬さ試験(タイプA)で測定したときに40〜70の範囲にあることが好ましい。また、断熱層の厚さは、第1の断熱層と第2の断熱層の2層構造の場合には、7.0mm以下であることか好ましい。断熱層の厚さが7.0mmを超えると断熱層の柔軟性が低下し、施工性が悪くなる。ただし、断熱層の組成や気孔率をコントロールすることで断熱層の柔軟性を維持できる場合は断熱層の厚さは7.0mm以上であってもよい。
<実施形態2>
次に、実施形態2の断熱材について説明する。
実施形態2の断熱材(6´)は、図2に示されるように、実施形態1の断熱材(6)に対して、さらに第3断熱層(13)を積層することで、耐火性能を向上させたものである。
アルミニウムを含有させ、有機物(可燃性)の含有量を低下させた第3断熱層(13)を、断熱材(6´)の上部側に設けることにより、断熱材(6´)に対して外部からかかる輻射熱等の熱を、第3断熱層(13)に含まれるアルミニウムによって反射することで、耐火性能を向上させるものである。
なお、第3断熱層(13)以外の構成は、実施形態1と同様であるため、ここでの説明を省略する。
次に、実施形態2の断熱材について説明する。
実施形態2の断熱材(6´)は、図2に示されるように、実施形態1の断熱材(6)に対して、さらに第3断熱層(13)を積層することで、耐火性能を向上させたものである。
アルミニウムを含有させ、有機物(可燃性)の含有量を低下させた第3断熱層(13)を、断熱材(6´)の上部側に設けることにより、断熱材(6´)に対して外部からかかる輻射熱等の熱を、第3断熱層(13)に含まれるアルミニウムによって反射することで、耐火性能を向上させるものである。
なお、第3断熱層(13)以外の構成は、実施形態1と同様であるため、ここでの説明を省略する。
第3断熱層(13)は、多孔質シリカ、無機化合物、有機化合物及び難燃剤から選ばれた少なくとも一つの化合物、並びに、アルミニウムを含み、本実施形態においては、その原料として多孔質シリカ、無機化合物、有機化合物、難燃材、アルミニウム、水を含む。これらの成分の他、無機化合物を原料の溶液中に安定的に分散させる分散剤を含ませることができる。即ち、第3断熱層(13)は、実施形態1における第1の断熱層(5)、第2の断熱層(4)に対して、アルミニウムを含有させたものである。第3断熱層(13)の原料を構成する成分のうち、アルミニウム以外の成分については実施形態1と同様であるため、ここでの説明を省略する。
アルミニウムは、その形態としては鱗片状であることが好ましい。本実施形態では厚さ1から2μmで平均長さが15μm程度の鱗片状のアルミニウム片(アルミニウム粉)を用いている。図2に示されるように、鱗片状のアルミニウム片14を、第3断熱層(13)の膜面と略平行となるように、第3断熱層(13)中で配向させることで、耐火性能をより向上させることができる。即ち、鱗片状のアルミニウム片(14)が、第3断熱層(13)の膜面と略平行に配置されていることによって、より効率的に熱を反射することができ、耐火性能が向上されるものである。ここで用いるアルミニウムは、純アルミニウム〔純度99%以上〕が好ましい。純アルミニウムは延性があるため、紛体処理(ボ−ルミルなど)により鱗片状にしやすく、また、赤外線の反射能が非常に高いからである。
以上のごとく、本実施形態の断熱材(6´)によれば、アルミニウムを含有する第3断熱層(13)を、断熱材(6´)の上部側に備えることにより、耐火性能が向上する。
実施形態1の断熱層(第1の断熱層、第2の断熱層)においても、以下の実施例に示すように難燃剤、無機化物、多孔質シリカを含有するため、ある程度の耐火性能を有している。しかし、気孔率が80%超えるような断熱層において耐火性向上のために難燃剤、無機物、多孔質シリカの含有量を増加させる事、換言すれば可燃性である有機物を低下させる事は、断熱材(6)若しくは断熱シ−ト(7)としての強度の関係から難しい。これに対し、本実施形態の断熱材(6´)では、実施形態1の断熱層(第1の断熱層、第2の断熱層)の表面に、耐火性機能が高い「第3断熱層」を形成することによって、耐火性能を向上させたものである。
なお、アルミニウムは熱伝導率が高く、従ってアルミニウムを含有させた第3断熱層(13)は、断熱性においては不利な面がある。従って、第1の断熱層(5)や第2の断熱層(4)と同様に、気泡を存在させることが有効である。
実施形態1の断熱層(第1の断熱層、第2の断熱層)においても、以下の実施例に示すように難燃剤、無機化物、多孔質シリカを含有するため、ある程度の耐火性能を有している。しかし、気孔率が80%超えるような断熱層において耐火性向上のために難燃剤、無機物、多孔質シリカの含有量を増加させる事、換言すれば可燃性である有機物を低下させる事は、断熱材(6)若しくは断熱シ−ト(7)としての強度の関係から難しい。これに対し、本実施形態の断熱材(6´)では、実施形態1の断熱層(第1の断熱層、第2の断熱層)の表面に、耐火性機能が高い「第3断熱層」を形成することによって、耐火性能を向上させたものである。
なお、アルミニウムは熱伝導率が高く、従ってアルミニウムを含有させた第3断熱層(13)は、断熱性においては不利な面がある。従って、第1の断熱層(5)や第2の断熱層(4)と同様に、気泡を存在させることが有効である。
1.実施例1
(1)原材料
[多孔質シリカ]
多孔質シリカは、株式会社バイオリシカ研究所製のイネ籾殻由来アモルファスシリカ(上白灰)をボ−ルミルで粉砕し、分級機(日清エンジニアリング株式会社「ターボクラシファイア TV−15」)を用いて0.5μmから10μm(平均粒子径2.5μm)の粒子径に分級したものを使用した。
(1)原材料
[多孔質シリカ]
多孔質シリカは、株式会社バイオリシカ研究所製のイネ籾殻由来アモルファスシリカ(上白灰)をボ−ルミルで粉砕し、分級機(日清エンジニアリング株式会社「ターボクラシファイア TV−15」)を用いて0.5μmから10μm(平均粒子径2.5μm)の粒子径に分級したものを使用した。
[無機化合物]
断熱層を組成する無機化合物は、炭酸カルシウム(日東粉化学工業株式会社製「MM#100」、平均粒子径2.2μm)、水酸化アルミニウム(巴工業株式会社製「B−303」、平均粒子径4.3μm)、酸化チタン(堺化学工業株式会社製「GTR−100」、平均粒子径0.26μm)、および、酸化亜鉛(ハクスイテック株式会社製「UF末」、平均粒子径2.5μm)を使用した。
断熱層を組成する無機化合物は、炭酸カルシウム(日東粉化学工業株式会社製「MM#100」、平均粒子径2.2μm)、水酸化アルミニウム(巴工業株式会社製「B−303」、平均粒子径4.3μm)、酸化チタン(堺化学工業株式会社製「GTR−100」、平均粒子径0.26μm)、および、酸化亜鉛(ハクスイテック株式会社製「UF末」、平均粒子径2.5μm)を使用した。
[有機化合物]
断熱層を組成する有機化合物は、スチレン・ブタジエン系重合体ラテックス(SBR;日本エイアドエル株式会社製「ナルスタ−SR116」、固形分50.5%)とメチルメタアクリレ−ト・ブタジエン系重合体ラテックス(MBR;日本エイアドエル株式会社製「ナルスタ−MR171」、固形分48%)を使用した。
断熱層を組成する有機化合物は、スチレン・ブタジエン系重合体ラテックス(SBR;日本エイアドエル株式会社製「ナルスタ−SR116」、固形分50.5%)とメチルメタアクリレ−ト・ブタジエン系重合体ラテックス(MBR;日本エイアドエル株式会社製「ナルスタ−MR171」、固形分48%)を使用した。
[分散剤]
無機化合物の分散剤は、ポリアクリル酸アンモニウム(東亜合成株式会社製「アロンA−30SL」)を使用した。多孔質シリカ用分散剤は、ポリアクリル酸系重合体(東亜合成株式会社製「アロンSD−10」)を使用した。
無機化合物の分散剤は、ポリアクリル酸アンモニウム(東亜合成株式会社製「アロンA−30SL」)を使用した。多孔質シリカ用分散剤は、ポリアクリル酸系重合体(東亜合成株式会社製「アロンSD−10」)を使用した。
[難燃材]
難燃剤は、ポリリン酸アンモニウム(クラリアントケミカルズ株式会社製「Exolit AP423」)を使用した。
難燃剤は、ポリリン酸アンモニウム(クラリアントケミカルズ株式会社製「Exolit AP423」)を使用した。
(2)断熱材原料塗工液の調製
[ラテックス分散液の調製]
SBRラテックス(48重量%)、MBRラテックス(48重量%)、および、ポリリン酸アンモニウム(8重量%)をホモミキサー(プライミクス株式会社製MARK II2.5型)を用いて4000rpmで5分間攪拌しラテックス分散液を調製した。
[ラテックス分散液の調製]
SBRラテックス(48重量%)、MBRラテックス(48重量%)、および、ポリリン酸アンモニウム(8重量%)をホモミキサー(プライミクス株式会社製MARK II2.5型)を用いて4000rpmで5分間攪拌しラテックス分散液を調製した。
[多孔質シリカ分散液の調製]
多孔質シリカ(25重量%)、ポリアクリル酸系重合体(2重量%)、および、蒸留水(73重量%)を混合してpHが3.0から5.0であることを確認し、ホモミキサーを用いて2000rpmで10分間攪拌し多孔質シリカ分散液を調製した。
多孔質シリカ(25重量%)、ポリアクリル酸系重合体(2重量%)、および、蒸留水(73重量%)を混合してpHが3.0から5.0であることを確認し、ホモミキサーを用いて2000rpmで10分間攪拌し多孔質シリカ分散液を調製した。
[無機化合物分散液の調製]
炭酸カルシウム(16重量%)、水酸化アルミニウム(15重量%)、酸化チタン(5.5重量%)、酸化亜鉛(5.5重量%)、ポリアクリル酸アンモニウム(3重量%)、および、蒸留水(55重量%)を混合した。混合物のpHが7.0から9.0であることを確認し、ホモミキサーを用いて4000rpmで10分間攪拌し無機物化合物分散液を調製した。
炭酸カルシウム(16重量%)、水酸化アルミニウム(15重量%)、酸化チタン(5.5重量%)、酸化亜鉛(5.5重量%)、ポリアクリル酸アンモニウム(3重量%)、および、蒸留水(55重量%)を混合した。混合物のpHが7.0から9.0であることを確認し、ホモミキサーを用いて4000rpmで10分間攪拌し無機物化合物分散液を調製した。
[断熱シート原料塗工溶液の調製]
ラテックス分散液(40重量%)、多孔質シリカ分散液(40重量%)、および、無機物分散液(20重量%)を混合し、ホモミキサーを用いて3000rpmで10分間攪拌し断熱シート原料塗工溶液を調製した。
ラテックス分散液(40重量%)、多孔質シリカ分散液(40重量%)、および、無機物分散液(20重量%)を混合し、ホモミキサーを用いて3000rpmで10分間攪拌し断熱シート原料塗工溶液を調製した。
(3)接着剤の調製
重量平均分子量50万のゴム状のジメチルポリシロキサン(40重量%)、ならびに、ジメチルポリシロキサン(信越シリコーン社製、KR−220LP)およびメチルフェニルポリシロキサン(信越シリコーン社製、KR271)を重量比で1:2に配合したシリコーンレジン(60重量%)をキシレンで希釈し、シリコーン接着剤原液Aとした。このシリコーン接着剤原液Aを115℃、3時間加熱処理し、ジメチルポリシロキサンとシリコーンレジン(ジメチルポリシロキサンとメチルフェニルポリシロキサン)を部分的に架橋させて固形分を得た。その後、キシレンを添加して得られた固形分濃度が50重量%となるように調製し、シリコーン接着剤原液Bを得た。シリコーン接着剤原液Bに固形分の重量%に基づく換算で1重量%の過酸化ベンゾイルのキシレン溶液(日本油脂社製、ナイパ−BMT−K40)を添加し、シリコーン系接着剤塗工液とした。
重量平均分子量50万のゴム状のジメチルポリシロキサン(40重量%)、ならびに、ジメチルポリシロキサン(信越シリコーン社製、KR−220LP)およびメチルフェニルポリシロキサン(信越シリコーン社製、KR271)を重量比で1:2に配合したシリコーンレジン(60重量%)をキシレンで希釈し、シリコーン接着剤原液Aとした。このシリコーン接着剤原液Aを115℃、3時間加熱処理し、ジメチルポリシロキサンとシリコーンレジン(ジメチルポリシロキサンとメチルフェニルポリシロキサン)を部分的に架橋させて固形分を得た。その後、キシレンを添加して得られた固形分濃度が50重量%となるように調製し、シリコーン接着剤原液Bを得た。シリコーン接着剤原液Bに固形分の重量%に基づく換算で1重量%の過酸化ベンゾイルのキシレン溶液(日本油脂社製、ナイパ−BMT−K40)を添加し、シリコーン系接着剤塗工液とした。
(4)接着剤の塗工と熱処理
株式会社ミノグル−プ製スクリ−ン印刷機「キュ−ブ1515」を用いて、ポリイミドシート(株式会社寺岡製作所製のカプトンフィルム粘着テ−プ「No.50S」、厚さ25μm)表面に厚さ30μmのシリコーン系接着剤塗工液を、スクリーンメッシュを形成するように塗工した。シリコーン系接着剤塗工後のポリイミドシートを200℃で5分間熱処理してシリコーン系接着剤をポリイミドシートに定着させた。
株式会社ミノグル−プ製スクリ−ン印刷機「キュ−ブ1515」を用いて、ポリイミドシート(株式会社寺岡製作所製のカプトンフィルム粘着テ−プ「No.50S」、厚さ25μm)表面に厚さ30μmのシリコーン系接着剤塗工液を、スクリーンメッシュを形成するように塗工した。シリコーン系接着剤塗工後のポリイミドシートを200℃で5分間熱処理してシリコーン系接着剤をポリイミドシートに定着させた。
(5)断熱層の形成
[第2の断熱層の形成]
断熱シート原料塗工溶液をフリッチュ・ジャパン株式会社製「遊星型ボ−ルミル クラシックラインP−6」を用いて20分間混合して、第2の断熱層用の塗工液(第2の断熱層塗工液)を調製した。ポリイミドシートに塗工したシリコーン系接着剤の上部表面に第2の断熱層塗工液を厚さが2.5mmとなるように塗布した。第2の断熱層塗工液の塗布は株式会社サンタメタル製「卓上マルチコーター EZ−COTER300」にドクターブレードを取り付けて行った。第2の断熱層塗工液を塗布した後のポリイミドシートを、乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥させて第2の断熱層を形成した。
[第2の断熱層の形成]
断熱シート原料塗工溶液をフリッチュ・ジャパン株式会社製「遊星型ボ−ルミル クラシックラインP−6」を用いて20分間混合して、第2の断熱層用の塗工液(第2の断熱層塗工液)を調製した。ポリイミドシートに塗工したシリコーン系接着剤の上部表面に第2の断熱層塗工液を厚さが2.5mmとなるように塗布した。第2の断熱層塗工液の塗布は株式会社サンタメタル製「卓上マルチコーター EZ−COTER300」にドクターブレードを取り付けて行った。第2の断熱層塗工液を塗布した後のポリイミドシートを、乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥させて第2の断熱層を形成した。
[第1の断熱層の形成]
第1の断熱層用の原料塗工液(第1の断熱層塗工液)は、混合時間を10分間とすること以外は、上述の第2の断熱層塗工液と同様に調製した。形成した第2の断熱層の上部表面に、第1の断熱層塗工液を第2の断熱層の塗布の方法と同様に塗布した(厚さ:2.5mm)。第1の断熱層塗工液を塗布した後に、乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥させて第1の断熱層を形成した。第1の断熱層の厚さと第2の断熱層のそれぞれの厚さは3.5mm以下になるように形成するとよい。したがって、第1の断熱層と第2の断熱層の厚さの合計は7mm以下となる。
第1の断熱層用の原料塗工液(第1の断熱層塗工液)は、混合時間を10分間とすること以外は、上述の第2の断熱層塗工液と同様に調製した。形成した第2の断熱層の上部表面に、第1の断熱層塗工液を第2の断熱層の塗布の方法と同様に塗布した(厚さ:2.5mm)。第1の断熱層塗工液を塗布した後に、乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥させて第1の断熱層を形成した。第1の断熱層の厚さと第2の断熱層のそれぞれの厚さは3.5mm以下になるように形成するとよい。したがって、第1の断熱層と第2の断熱層の厚さの合計は7mm以下となる。
2.実施例2
(1)原料および原料塗工液調製
実施例2の断熱層の形成に用いられる原料は実施例1と同じである。実施例2の原料塗工液で混合した原料の量は、ラテックス分散液(30重量%)、多孔質シリカ分散液(50重量%)、および、無機物分散液(20重量%)である。また、断熱層の形成方法は、第1の断熱層の形成の際の断熱シート原料塗工溶液の混合時間は20分間混合であり、第2の断熱層の形成の際の断熱シート原料塗工溶液の混合時間は30分間であること以外は、実施例1と同じである。
(2)断熱シートの形成方法
実施例2の断熱シートの形成で用いる接着剤の調製、塗工、および、熱処理、第2の断熱層の形成、ならびに、第1の断熱層の形成については実施例1と同じである。
(1)原料および原料塗工液調製
実施例2の断熱層の形成に用いられる原料は実施例1と同じである。実施例2の原料塗工液で混合した原料の量は、ラテックス分散液(30重量%)、多孔質シリカ分散液(50重量%)、および、無機物分散液(20重量%)である。また、断熱層の形成方法は、第1の断熱層の形成の際の断熱シート原料塗工溶液の混合時間は20分間混合であり、第2の断熱層の形成の際の断熱シート原料塗工溶液の混合時間は30分間であること以外は、実施例1と同じである。
(2)断熱シートの形成方法
実施例2の断熱シートの形成で用いる接着剤の調製、塗工、および、熱処理、第2の断熱層の形成、ならびに、第1の断熱層の形成については実施例1と同じである。
3.比較例1
(1)原料塗工溶液調製
比較例1の吹付け塗装法に用いる原料塗工溶液の調製は、実施例1と同じである。
(2)吹付塗装方法
比較例として、実施例1で調製した断熱層の原料塗工液を、フィルム基材(2)上に吹付塗装して積層することによって、5.0mmの厚さの断熱層を形成した。吹付け塗装はエアレス塗装機を用いた手吹き塗装法にて行った。吹付け塗装は、25℃の室温で、吹付けは20MPaの圧力で行った。
(1)原料塗工溶液調製
比較例1の吹付け塗装法に用いる原料塗工溶液の調製は、実施例1と同じである。
(2)吹付塗装方法
比較例として、実施例1で調製した断熱層の原料塗工液を、フィルム基材(2)上に吹付塗装して積層することによって、5.0mmの厚さの断熱層を形成した。吹付け塗装はエアレス塗装機を用いた手吹き塗装法にて行った。吹付け塗装は、25℃の室温で、吹付けは20MPaの圧力で行った。
表2は実施例1、2および比較例1において原料塗工液に添加した成分のうちラテックス分散液、多孔質シリカ分散液、および、無機化合物分散液の重量率を表わしたものである。
表3は、実施例1、2、および比較例1における形成後の断熱層に含まれる有機化合物、多孔質シリカ、無機化合物、および、難燃材の組成の重量率を表わしたものである。
4.構造の比較検討
(1)断面観察
(i)観察方法
実施例1で作製された断熱シートの断面および比較例1の吹付塗装法により作成した膜の断面を顕微鏡カメラ株式会社キーエンス社製 VHX−1000(レンズVH−Z20R)を用いて観察した。
(ii)断面の構造
顕微鏡カメラにより50倍のレンズ倍率で撮影した写真を図6に示す。第2の断熱層(4)には、気泡径がおよそ50μmから300μm未満(平均約90μm)の不定形の小径気泡(11)が存在する。小径気泡(11)の密度は、接着層(写真では目視できない厚さである)と第2の断熱層(4)の境界近傍における第2の断熱層(4)中でやや高いことがわかる。第1の断熱層(5)には、小径気泡(11)の他に気泡径が300μmから800μm(平均約350μm)の不定形の大径気泡(10)が第1の断熱層(5)の厚さ方向における中央部付近に存在する(図6)。第1の断熱層(5)は、その中央付近において大径気泡(10)を備えており、従って、第1の断熱層(5)は、中間層と当該中間層の上下に形成される表面層とを備え、中間層には、表面層に含まれる気泡より大きな気泡が含まれている(これにより、中間層の気泡率が、表面層の気泡率よりも高い)ものと言える。
(1)断面観察
(i)観察方法
実施例1で作製された断熱シートの断面および比較例1の吹付塗装法により作成した膜の断面を顕微鏡カメラ株式会社キーエンス社製 VHX−1000(レンズVH−Z20R)を用いて観察した。
(ii)断面の構造
顕微鏡カメラにより50倍のレンズ倍率で撮影した写真を図6に示す。第2の断熱層(4)には、気泡径がおよそ50μmから300μm未満(平均約90μm)の不定形の小径気泡(11)が存在する。小径気泡(11)の密度は、接着層(写真では目視できない厚さである)と第2の断熱層(4)の境界近傍における第2の断熱層(4)中でやや高いことがわかる。第1の断熱層(5)には、小径気泡(11)の他に気泡径が300μmから800μm(平均約350μm)の不定形の大径気泡(10)が第1の断熱層(5)の厚さ方向における中央部付近に存在する(図6)。第1の断熱層(5)は、その中央付近において大径気泡(10)を備えており、従って、第1の断熱層(5)は、中間層と当該中間層の上下に形成される表面層とを備え、中間層には、表面層に含まれる気泡より大きな気泡が含まれている(これにより、中間層の気泡率が、表面層の気泡率よりも高い)ものと言える。
図7に示す写真は、比較例1の断熱層の50倍のレンズ倍率で撮影した断面写真である。図6に示す実施例1の断熱シートと比較すると、断熱層内部は気泡が少なく密度が高い。比較例1の断熱層の密度が高い(気泡率が低い)のは、後述するように、チキソトロピー性を有する原料塗工液の高圧による吹付で原料塗工液の粘度が低下し、原料塗工液中の気泡が排除されたためである。
(2)多孔質シリカの電子顕微鏡観察
図8は、多孔質シリカの電子顕微鏡(SEM)写真である。電子顕微鏡は日本電子株式会社製 JSM6610LAを用いた。実施例1で用いられる原料を1000℃で焼成した後に電子顕微鏡で500倍の倍率で観察した。添加した多孔質シリカには図8の写真で観察される入り組んだ孔を有することがわかる。
図8は、多孔質シリカの電子顕微鏡(SEM)写真である。電子顕微鏡は日本電子株式会社製 JSM6610LAを用いた。実施例1で用いられる原料を1000℃で焼成した後に電子顕微鏡で500倍の倍率で観察した。添加した多孔質シリカには図8の写真で観察される入り組んだ孔を有することがわかる。
(3)気泡率
(i)算出方法
顕微鏡カメラによる写真を用いて実施例に係る断熱シートの断面の画像処理による気泡率の算出を行った。画像処理の前処理として、モノクロ変換後の画像から平滑フィルタを用いてカメラでの撮影時の照度による不均一性から生じるノイズを除去した。次に、ノイズを除去した画像を画像処理ソフト(三谷商事株式会社製の「Winroof」)を用いて判別分析法により二値化処理をした。次いで、二値化した画像の空隙部分(白色部分)の面積を計測し、空隙部分の面積を全体に対する面積率として算出し、この面積率を気泡率とした。本方法によるカメラの写真では多孔質シリカの孔は観察できないほど小さいため、算出した気泡率には多孔質シリカの孔の面積率は含まれない。
(ii)算出データ
実施例1の第1の断熱層(5)における気泡率は70%であり、第2の断熱層(4)における気泡率は60%であった。また、比較例1の吹付塗工法により形成した断熱層の気泡率はおよそ45%であった。
(i)算出方法
顕微鏡カメラによる写真を用いて実施例に係る断熱シートの断面の画像処理による気泡率の算出を行った。画像処理の前処理として、モノクロ変換後の画像から平滑フィルタを用いてカメラでの撮影時の照度による不均一性から生じるノイズを除去した。次に、ノイズを除去した画像を画像処理ソフト(三谷商事株式会社製の「Winroof」)を用いて判別分析法により二値化処理をした。次いで、二値化した画像の空隙部分(白色部分)の面積を計測し、空隙部分の面積を全体に対する面積率として算出し、この面積率を気泡率とした。本方法によるカメラの写真では多孔質シリカの孔は観察できないほど小さいため、算出した気泡率には多孔質シリカの孔の面積率は含まれない。
(ii)算出データ
実施例1の第1の断熱層(5)における気泡率は70%であり、第2の断熱層(4)における気泡率は60%であった。また、比較例1の吹付塗工法により形成した断熱層の気泡率はおよそ45%であった。
(4)気孔率
(i)測定方法および算出方法
断熱材の気孔率は次式で定義する。
(気孔率)=〔(1−(見かけの密度)/(真密度))〕×100 (式1)
見かけの密度は、アルキメデス法で測定した。断熱材には外気と連続しているオ−プン気泡が存在し、さらに、オープン気泡内の内壁には入り組んだ孔を有する多孔質シリカが露出している。アルキメデス法では、測定で用いる液体が断熱層のオープン気泡やオープン気泡と連通している多孔質シリカの孔にまで浸透してしまうため、オープン気泡等の体積を含めた密度(真密度)の測定が可能な乾式の定容体積膨張法による測定を行った。測定には島津製作所製の乾式自動密度計(アクピックII 1340−10ml)を使用した。今回の乾式自動密度計を用いた測定では、試料である断熱層のオープン気泡およびオープン気泡に連通している多孔質シリカの孔の内部にまで計測時の試料室内の圧力が及ぶのに十分な時間(24時間〜30時間)をかけて試料内の圧力が一定になった事を確認したので、本測定で測定された値は断熱層の真密度に極めて近い。
(ii)算出データ
実施例1、実施例2の真密度は1.189g/cm3であった。また、比較例1の真密度は1.320g/cm3であった。式1にそれぞれの値を代入して気孔率を算出し表4の結果を得た。
(i)測定方法および算出方法
断熱材の気孔率は次式で定義する。
(気孔率)=〔(1−(見かけの密度)/(真密度))〕×100 (式1)
見かけの密度は、アルキメデス法で測定した。断熱材には外気と連続しているオ−プン気泡が存在し、さらに、オープン気泡内の内壁には入り組んだ孔を有する多孔質シリカが露出している。アルキメデス法では、測定で用いる液体が断熱層のオープン気泡やオープン気泡と連通している多孔質シリカの孔にまで浸透してしまうため、オープン気泡等の体積を含めた密度(真密度)の測定が可能な乾式の定容体積膨張法による測定を行った。測定には島津製作所製の乾式自動密度計(アクピックII 1340−10ml)を使用した。今回の乾式自動密度計を用いた測定では、試料である断熱層のオープン気泡およびオープン気泡に連通している多孔質シリカの孔の内部にまで計測時の試料室内の圧力が及ぶのに十分な時間(24時間〜30時間)をかけて試料内の圧力が一定になった事を確認したので、本測定で測定された値は断熱層の真密度に極めて近い。
(ii)算出データ
実施例1、実施例2の真密度は1.189g/cm3であった。また、比較例1の真密度は1.320g/cm3であった。式1にそれぞれの値を代入して気孔率を算出し表4の結果を得た。
5.物性の比較検討
(1)断熱性試験
(i)試験方法
断熱性試験は、熱拡散率(α)、比熱(Cp)、密度(ρ)のそれぞれについて独立に測定を行い、それぞれの測定値を以下の式2に代入して熱伝導率(λ)を算出した。
λ=α・Cp・ρ (式2)
熱伝導率:λ[W/m・K]
熱拡散率:α[mm2/sec]
比熱:Cp[J/g・K]
密度:ρ[g/cm3]
(熱拡散率測定)
熱拡散率測定は、ネッチ・ジャパン株式会社製のLFA477 Nanoflashを用いて行った。厚さ0.5mmから2.5mm、大きさ10mm角の実施例1の断熱層の両面をカーボンスプレーで黒化処理を行ったものを測定試料とした。
(比熱測定)
比熱測定は、株式会社島津製作所製の示差走査熱量計DSC−60を用いて行った。比熱を算出するために、空のセル、α−アルミナ、実施例1に係る断熱層の3つの測定を行った。
(密度測定)
密度測定は、アルキメデス法にて行った。測定結果を表3に「みかけ密度」として示す。表3の比較例1において、「断熱材」とはフィルム基材表面に吹付け塗装により塗工された断熱層(20)と粘着剤を含むものであり、「断熱層のみ」とはフィルム基材と接着層を含まないものを意味する。
(1)断熱性試験
(i)試験方法
断熱性試験は、熱拡散率(α)、比熱(Cp)、密度(ρ)のそれぞれについて独立に測定を行い、それぞれの測定値を以下の式2に代入して熱伝導率(λ)を算出した。
λ=α・Cp・ρ (式2)
熱伝導率:λ[W/m・K]
熱拡散率:α[mm2/sec]
比熱:Cp[J/g・K]
密度:ρ[g/cm3]
(熱拡散率測定)
熱拡散率測定は、ネッチ・ジャパン株式会社製のLFA477 Nanoflashを用いて行った。厚さ0.5mmから2.5mm、大きさ10mm角の実施例1の断熱層の両面をカーボンスプレーで黒化処理を行ったものを測定試料とした。
(比熱測定)
比熱測定は、株式会社島津製作所製の示差走査熱量計DSC−60を用いて行った。比熱を算出するために、空のセル、α−アルミナ、実施例1に係る断熱層の3つの測定を行った。
(密度測定)
密度測定は、アルキメデス法にて行った。測定結果を表3に「みかけ密度」として示す。表3の比較例1において、「断熱材」とはフィルム基材表面に吹付け塗装により塗工された断熱層(20)と粘着剤を含むものであり、「断熱層のみ」とはフィルム基材と接着層を含まないものを意味する。
(ii)データ比較
(熱伝導率)
実施例1で作製した断熱シートの断熱層の熱伝導率を算出したところ30℃において第1層から第5層で0.05(W/m・K)であり、第2層から第5層で0.05(W/m・K)であった。
(比較例1の熱伝導率)
比較例1の熱伝導率は、30℃において断熱材の場合は0.07(W/m・K)であり、断熱層のみの場合で0.08(W/m・K)あった。空気は伝熱性が低く、蓄熱作用も低いため、塗装後の膜中の気泡が多いほど断熱性能が高くなるが、吹付け塗装法により形成された膜には気泡が少ないため、実施例に比べて熱伝導率が高くなり断熱性能が劣ることが明らかとなった。
(熱伝導率)
実施例1で作製した断熱シートの断熱層の熱伝導率を算出したところ30℃において第1層から第5層で0.05(W/m・K)であり、第2層から第5層で0.05(W/m・K)であった。
(比較例1の熱伝導率)
比較例1の熱伝導率は、30℃において断熱材の場合は0.07(W/m・K)であり、断熱層のみの場合で0.08(W/m・K)あった。空気は伝熱性が低く、蓄熱作用も低いため、塗装後の膜中の気泡が多いほど断熱性能が高くなるが、吹付け塗装法により形成された膜には気泡が少ないため、実施例に比べて熱伝導率が高くなり断熱性能が劣ることが明らかとなった。
従来技術である水上の交通機関に使用されているガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の熱伝導率は、0.7(W/m・K)との報告がある(非特許文献7)。仮に実施例の断熱層全体の熱伝導率を0.05(W/m・K)としたとき、GFRPの両表面の温度差と本実施例のシート状の断熱材(6)の両表面の温度差が同じである場合、実施例に係る断熱材(6)はGFRPの厚さのおよそ1/14で足り、実施例に係る断熱材(6)はGFRP製の断熱材のおよそ1/14の厚さでGFRPと同等の断熱効果を示すと見積もることができる。
(密度)
実施例1と比較例1の密度を比較すると、比較例1の断熱層は実施例1の断熱層のおおよそ2倍の密度を有することが明らかとなった。
実施例1と比較例1の密度を比較すると、比較例1の断熱層は実施例1の断熱層のおおよそ2倍の密度を有することが明らかとなった。
(2)断熱性基準値設定
実施例1に係る断熱シートの断熱層の断熱性の目標として、加熱物体に厚さが10mmの仮想の断熱層を設置し、加熱物体の温度を250℃に昇温したときの断熱シート表面の温度が100℃以下となる断熱層、すなわち熱伝導率が0.06(W/m・K)以下となる断熱層を実現する断熱層を目指した(図9)。さらに、厚さが5mmの断熱層を設置し、加熱物体の温度を300℃に昇温したときの断熱シート表面の温度が100℃以下となる断熱シート、すなわち熱伝導率が0.02(W/m・K)以下となる断熱層をさらなる目標とした(図10)。
実施例1に係る断熱シートの断熱層の断熱性の目標として、加熱物体に厚さが10mmの仮想の断熱層を設置し、加熱物体の温度を250℃に昇温したときの断熱シート表面の温度が100℃以下となる断熱層、すなわち熱伝導率が0.06(W/m・K)以下となる断熱層を実現する断熱層を目指した(図9)。さらに、厚さが5mmの断熱層を設置し、加熱物体の温度を300℃に昇温したときの断熱シート表面の温度が100℃以下となる断熱シート、すなわち熱伝導率が0.02(W/m・K)以下となる断熱層をさらなる目標とした(図10)。
(3)硬度(押し込み硬さ)及び柔軟性評価試験
(i)試験方法
実施例1で作製した断熱シートの断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))と比較例1の硬度(押し込み硬さ)をデュロメータ硬度計によって測定した。デュロメータ硬度計のタイプはタイプAを用いて行った。
(ii)データ比較
結果を表5に示す。
(i)試験方法
実施例1で作製した断熱シートの断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))と比較例1の硬度(押し込み硬さ)をデュロメータ硬度計によって測定した。デュロメータ硬度計のタイプはタイプAを用いて行った。
(ii)データ比較
結果を表5に示す。
デュロメータ硬度計を用いた測定結果の平均値では、比較例1の断熱材は実施例1断熱シートよりもおよそ1.5倍の硬さを有する。したがって、実施例1の断熱材は比較例1よりも押し込みに対する柔軟性を有する。
また、表6には、耐屈曲性を測定する屈曲試験装置を用いた円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1)に基づく耐屈曲性試験の結果を示した。なお、比較例2はガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製の断熱材であり、70mmの厚さの断熱材である。実施例1や2と同レベルの断熱性能を、ガラス繊維強化プラスチックによって得るためには、少なくとも70mmの厚さを要するものであり、従って、これを比較対象としているものである。
表6に示されるように、実施例1、2では十分な柔軟性を有する(シートをマンドレルに巻き付けた際に、割れなどが生じない強度及び柔軟性を有すること)が示され、比較例1、2においては柔軟性が不足する結果となった。十分な柔軟性を有する断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))としては、デュロメータ硬さ試験(タイプA)で40から70であることが好ましい。
また、表6には、耐屈曲性を測定する屈曲試験装置を用いた円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1)に基づく耐屈曲性試験の結果を示した。なお、比較例2はガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製の断熱材であり、70mmの厚さの断熱材である。実施例1や2と同レベルの断熱性能を、ガラス繊維強化プラスチックによって得るためには、少なくとも70mmの厚さを要するものであり、従って、これを比較対象としているものである。
表6に示されるように、実施例1、2では十分な柔軟性を有する(シートをマンドレルに巻き付けた際に、割れなどが生じない強度及び柔軟性を有すること)が示され、比較例1、2においては柔軟性が不足する結果となった。十分な柔軟性を有する断熱層(第1の断熱層(5)および第2の断熱層(4))としては、デュロメータ硬さ試験(タイプA)で40から70であることが好ましい。
(4)耐火性試験
(i)試験方法
実施例1に係る耐火性試験は、国際海事機関により定められ、国際的に合意された試験方法「火災試験方法の適用に関する国際コード(FTPコード)」の試験規格Part5、試験名称「表面燃焼性試験、試験対象:表面材(塗料・壁紙・床張り材等)」を行った。
(ii)データ比較
本実施例に係る耐熱性試験の結果を表7に示す。
(i)試験方法
実施例1に係る耐火性試験は、国際海事機関により定められ、国際的に合意された試験方法「火災試験方法の適用に関する国際コード(FTPコード)」の試験規格Part5、試験名称「表面燃焼性試験、試験対象:表面材(塗料・壁紙・床張り材等)」を行った。
(ii)データ比較
本実施例に係る耐熱性試験の結果を表7に示す。
本実施例1に係る断熱シートはいずれの指標においても合格基準を満たし、高い耐火性能を有することを確認した。
(5)原料塗工液のレオロジー特性評価
(i)測定方法
実施例1および比較例1で用いた原料塗工液のレオロジー特性の測定を行った。測定には、英弘精機株式会社製 デジタル粘度系 DV2Tを用いた。測定温度は25℃で行った。
(ii)データの検討と考察
図11は断熱層の原料塗工液のレオロジー特性の測定結果を縦軸に「粘度(Pa・s)」、横軸に「せん断速度(1/s)」として表わしたグラフである。レオロジー特性の測定結果によれば、実施例1および比較例1で用いた原料塗工液はせん断速度を上げていくと粘性が低下し、せん断速度を下げていくと粘性が増大するチキソトロピー性を示すことがわかる。比較例1における原料の断熱対象への吹付塗装では、吹付けの際に原料塗工液に20MPaという大きな圧力がかかる。吹付けの際に原料塗工液にかかる圧力はレオロジー特性の測定におけるせん断速度に相当するものであり、換算すれば吹付けの際のせん断速度は1、000(1/s)以上になる。したがって、吹付けの際の圧力による原料塗工液のチキソトロピー性のために原料塗工液の粘性が下がり、原料塗工液は流動性が高い状態で断熱対象に衝突する。吹付けの圧力ために粘度が下がった原料塗工液中に含まれる空気の泡は、断熱対象に衝突する際に原料塗工液中から叩き出される。その後、断熱対象に吹付けられた原料塗工液は吹付ける際の圧力から解放され、断熱対象上で粘度を増大させ気泡が排除された状態で断熱対象表面にとどまる。このチキソトロピー性に伴う作用機構により吹付け塗装法により形成される断熱層には大径気泡が含まれていない(図7)。一方、実施例1の断熱層の形成には、吹付け塗装よりも塗工の際に原料塗工液に加えられるせん断速度が小さいコーターが用いられる。したがって、コーターによる塗工では、原料塗工液の粘度は比較的高く、原料塗工液中に存在する気泡が断熱層中から追い出されることなく断熱層中に留まるため、断熱層中に大径気泡が形成される(図6)。
(i)測定方法
実施例1および比較例1で用いた原料塗工液のレオロジー特性の測定を行った。測定には、英弘精機株式会社製 デジタル粘度系 DV2Tを用いた。測定温度は25℃で行った。
(ii)データの検討と考察
図11は断熱層の原料塗工液のレオロジー特性の測定結果を縦軸に「粘度(Pa・s)」、横軸に「せん断速度(1/s)」として表わしたグラフである。レオロジー特性の測定結果によれば、実施例1および比較例1で用いた原料塗工液はせん断速度を上げていくと粘性が低下し、せん断速度を下げていくと粘性が増大するチキソトロピー性を示すことがわかる。比較例1における原料の断熱対象への吹付塗装では、吹付けの際に原料塗工液に20MPaという大きな圧力がかかる。吹付けの際に原料塗工液にかかる圧力はレオロジー特性の測定におけるせん断速度に相当するものであり、換算すれば吹付けの際のせん断速度は1、000(1/s)以上になる。したがって、吹付けの際の圧力による原料塗工液のチキソトロピー性のために原料塗工液の粘性が下がり、原料塗工液は流動性が高い状態で断熱対象に衝突する。吹付けの圧力ために粘度が下がった原料塗工液中に含まれる空気の泡は、断熱対象に衝突する際に原料塗工液中から叩き出される。その後、断熱対象に吹付けられた原料塗工液は吹付ける際の圧力から解放され、断熱対象上で粘度を増大させ気泡が排除された状態で断熱対象表面にとどまる。このチキソトロピー性に伴う作用機構により吹付け塗装法により形成される断熱層には大径気泡が含まれていない(図7)。一方、実施例1の断熱層の形成には、吹付け塗装よりも塗工の際に原料塗工液に加えられるせん断速度が小さいコーターが用いられる。したがって、コーターによる塗工では、原料塗工液の粘度は比較的高く、原料塗工液中に存在する気泡が断熱層中から追い出されることなく断熱層中に留まるため、断熱層中に大径気泡が形成される(図6)。
(6)抗菌性試験
実施例1の断熱シートについて、抗菌性の試験を行った。
試験方法は、JIS Z 2801:2010(フィルム密着法)を用い、試験菌株としては、黄色ブドウ球菌と、大腸菌について試験を行った。
黄色ブドウ球菌に対する結果は以下の通りである。
・24時間培養後の生菌数の常用対数値[At]<−0.20
・抗菌活性値=5.1
また、大腸菌に対する結果は以下の通りである。
・24時間培養後の生菌数の常用対数値[At]<−0.20
・抗菌活性値=6.1
なお、黄色ブドウ球菌の試験菌株としてStaphylococcus aureus NBCR 12732、大腸菌の試験菌株としてEscherichia coli NBRC 3972をそれぞれ用いた。
抗菌性能の評価基準は、抗菌活性値が2.0以上であるため、実施例1の断熱シートの抗菌効果が確認された。
実施例1の断熱シートについて、抗菌性の試験を行った。
試験方法は、JIS Z 2801:2010(フィルム密着法)を用い、試験菌株としては、黄色ブドウ球菌と、大腸菌について試験を行った。
黄色ブドウ球菌に対する結果は以下の通りである。
・24時間培養後の生菌数の常用対数値[At]<−0.20
・抗菌活性値=5.1
また、大腸菌に対する結果は以下の通りである。
・24時間培養後の生菌数の常用対数値[At]<−0.20
・抗菌活性値=6.1
なお、黄色ブドウ球菌の試験菌株としてStaphylococcus aureus NBCR 12732、大腸菌の試験菌株としてEscherichia coli NBRC 3972をそれぞれ用いた。
抗菌性能の評価基準は、抗菌活性値が2.0以上であるため、実施例1の断熱シートの抗菌効果が確認された。
6.検討
(1)第1の断熱層の気孔率についての検討
以上の気孔率の測定、熱伝導率の測定、柔軟性評価に基づき、汎用するために適切な断熱層の気孔率の範囲を定めた。第2の断熱層の気孔率を60%および85%としたときの第1の断熱層の気孔率の適当な範囲について表8に示す。表中の気孔率の値は上述の気孔率の計算により算出したものである。表8における熱伝導率の評価は、0.06(W/m・K)以下を、原則的に基準を満たすものとして(○)と評価し、それ以下のものを(X)として評価した。柔軟性評価は、耐屈曲性を測定する屈曲試験装置を用いた円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1)で行った。マンドレルは直径が12mm、10mm、8mmのものを用いて試験を行い断熱層のクラックの有無を目視で観察した。断熱層を12mmのマンドレルを用いて試験をしたときに断熱層にクラックが見られなかったものを(○)とし、断熱層が完全に割れたものには(X)とし、小さなクラックが入ったものを(△)と評価した([表8]、[表9])。
(1)第1の断熱層の気孔率についての検討
以上の気孔率の測定、熱伝導率の測定、柔軟性評価に基づき、汎用するために適切な断熱層の気孔率の範囲を定めた。第2の断熱層の気孔率を60%および85%としたときの第1の断熱層の気孔率の適当な範囲について表8に示す。表中の気孔率の値は上述の気孔率の計算により算出したものである。表8における熱伝導率の評価は、0.06(W/m・K)以下を、原則的に基準を満たすものとして(○)と評価し、それ以下のものを(X)として評価した。柔軟性評価は、耐屈曲性を測定する屈曲試験装置を用いた円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1)で行った。マンドレルは直径が12mm、10mm、8mmのものを用いて試験を行い断熱層のクラックの有無を目視で観察した。断熱層を12mmのマンドレルを用いて試験をしたときに断熱層にクラックが見られなかったものを(○)とし、断熱層が完全に割れたものには(X)とし、小さなクラックが入ったものを(△)と評価した([表8]、[表9])。
第2の断熱層の気孔率が60%であり第1の断熱層の気孔率が60%であるときは、第1の断熱層及び第2の断熱層を組み合わせた断熱層全体の熱伝導率が上述した熱伝導率の評価基準の0.060(W/m・K)を上回り不適であった。第2の断熱層の気孔率が60%であり第1の断熱層の気孔率が65%のときは、全体の断熱層の熱伝導率が評価基準の0.060(W/m・K)以下であり熱伝導率の基準を満たした。また柔軟性も評価基準を満たし、熱伝導率および柔軟性の双方で実施例としての基準を満たした。したがって、第2の断熱層の気孔率が60%以上であり第1の断熱層の気孔率が65%以上の断熱層の組み合わせで実施例の基準を充足する断熱シートが得られることが明らかとなった。
第2の断熱層の気孔率が85%であり第1の断熱層の気孔率が90%のときは、全体の熱伝導率が0.019(W/m・K)となり熱伝導率の基準を満たし、また、柔軟性評価においても基準を満たした。しかし、第2の断熱層の気孔率が85%であり第1の断熱層の気孔率を95%にすると断熱層全体の強度が不足して割れてしまうため柔軟性評価の基準を十分に満たすものではなかった。したがって、第2の断熱層の気孔率が85%以下であり第1の断熱層の気孔率が95%未満、より好ましくは第2の断熱層の気孔率が85%以下であり第1の断熱層の気孔率が90%以下の断熱層の組み合わせで実施例の基準を充足する断熱シートが得られることが明らかとなった。
(2)第2の断熱層の気孔率についての検討
第1の断熱層の気孔率を65%および90%としたときの第2の断熱層の気孔率の適当な範囲について表9に示す。
第1の断熱層の気孔率を65%および90%としたときの第2の断熱層の気孔率の適当な範囲について表9に示す。
第1の断熱層の気孔率が65%であり第2の断熱層の気孔率が50%のときは、第1の断熱層及び第2の断熱層を組み合わせた断熱層全体の熱伝導率が評価基準の0.060(W/m・K)を上回り不適であった。第1の断熱層の気孔率が65%であり第2の断熱層の気孔率が55%のときは全体の断熱層の熱伝導率が0.061(W/m・K)であり熱伝導性の評価基準の0.060(W/m・K)に0.001(W/m・K)及ばなかったが柔軟性の評価基準を満たしていることから実施例の範囲内にあるものとして許容した。第1の断熱層の気孔率が65%であり第2の断熱層の気孔率が60%のときは全体の断熱層の熱伝導率が0.059(W/m・K)であり熱伝導性の評価基準と柔軟性の評価基準を満たした。第1の断熱層の気孔率が65%以上であり第2の断熱層の気孔率が55%以上の断熱層の組み合わせで実施例の基準を充足する断熱シートが得られることが明らかとなった。
第1の断熱層の気孔率が90%であり第2の断熱層の気孔率が85%のときは、第1の断熱層及び第2の断熱層を組み合わせた断熱シート全体の熱伝導率および柔軟性の評価基準を満たした。しかし、第1の断熱層の気孔率が90%であり第2の断熱層の気孔率を90%にすると全体の断熱層の柔軟性を満たすものではなかった。したがって、第1の断熱層の気孔率が90%以下であり第2の断熱層の気孔率が90%未満、より好ましくは第1の断熱層の気孔率が90%以下であり第2の断熱層の気孔率が85%以下の断熱層の組み合わせで実施例の基準を充足する断熱シートが得られることが明らかとなった。
(3)第1及び第2の断熱層の気孔率についての検討
さらに、第1の断熱層及び第1の断熱層の気孔率をそれぞれ変化させたときの熱伝導率の測定、柔軟性評価、及び、総合評価について、表10に示す。
さらに、第1の断熱層及び第1の断熱層の気孔率をそれぞれ変化させたときの熱伝導率の測定、柔軟性評価、及び、総合評価について、表10に示す。
(3)実施例1、2、および、比較例1の気孔率と熱伝導率の比較検討
表11は実施例1、2、および、比較例1の多孔質シリカの含有量、断熱層(第1の断熱層および第2の断熱層)の気孔率、および、断熱層の熱伝導率を比較したものである。多孔質シリカの含有量は、形成後の断熱層全体に対する重量%である。実施例2では、多孔質シリカの含有量を31.8重量%にまで増量し、さらに、気孔率を87.5%にまで向上させることにより、断熱層の熱伝導率を0.018(W/m・K)まで向上させることに成功した。さらに、熱伝導率を低下させるために気孔率を90%の断熱層とし、また、多孔質シリカの含有量を35重量%にすると熱伝導率を0.015(W/m・K)にまで向上させることができると推定する。
表11は実施例1、2、および、比較例1の多孔質シリカの含有量、断熱層(第1の断熱層および第2の断熱層)の気孔率、および、断熱層の熱伝導率を比較したものである。多孔質シリカの含有量は、形成後の断熱層全体に対する重量%である。実施例2では、多孔質シリカの含有量を31.8重量%にまで増量し、さらに、気孔率を87.5%にまで向上させることにより、断熱層の熱伝導率を0.018(W/m・K)まで向上させることに成功した。さらに、熱伝導率を低下させるために気孔率を90%の断熱層とし、また、多孔質シリカの含有量を35重量%にすると熱伝導率を0.015(W/m・K)にまで向上させることができると推定する。
7.まとめ
実施例1、比較例1である吹付塗装法による断熱材、および、比較例2(ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製の断熱材)について、これらの断熱性、柔軟性、耐火性、および施工性についての比較表を表12に示す。表12において、断熱性の評価は熱伝導率0.06(W/m・K)以下のものを(○)と評価し、それ以上のものを(X)と評価した。また、柔軟性は、実施例1および比較例1は上述のデュロメータ硬度計による柔軟性評価試験に基づき評価した。比較例2のそれぞれの性能の評価は非特許文献7等に基づいて評価した。
実施例1、比較例1である吹付塗装法による断熱材、および、比較例2(ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製の断熱材)について、これらの断熱性、柔軟性、耐火性、および施工性についての比較表を表12に示す。表12において、断熱性の評価は熱伝導率0.06(W/m・K)以下のものを(○)と評価し、それ以上のものを(X)と評価した。また、柔軟性は、実施例1および比較例1は上述のデュロメータ硬度計による柔軟性評価試験に基づき評価した。比較例2のそれぞれの性能の評価は非特許文献7等に基づいて評価した。
従来の吹付塗装法で作成した断熱材、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を用いた断熱材と、実施例のシート状の断熱材を比較すると、総ての項目において、本発明に係る実施例のほうが優位である。
実施例3
実施例3として、実施例2の断熱材の断熱層の上部に、多孔質シリカ、無機化合物、有機化合物、難燃剤、及び、アルミニウムを含む、第3の断熱層をさらに積層した断熱材を作成した。
第3の断熱層の形成方法は以下の通りである。
(1)原料
先ず、アルミニウム粉〔堀金箔株式会社製「アルミニウム粉(スーパーファインNO18000・15ミクロン、64重量%)、ミネラルスピリツ(18重量%)とソルベントナフサ(18重量%)とを、ホモミキサー(2000rpm、10分)で混合し、アルミニウム分散液とした。
次に、アルミニウム分散液(30重量%)、ラテックス分散液(10重量%)、及び、断熱シート原料塗工溶液(60重量%)を混合し、ホモミキサーを使用して3000rpmで10分攪拌し、第3の断熱層用の原料塗工溶液とした。
(2)塗工及び乾燥
第3の断熱層用原料塗工溶液を実施例2の第2断熱層の形成条件と同じ方法で、実施例2で得られた断熱層の上面に形成した。なお、第3の断熱層の厚さは2mmとした。
上記によって得られた第3の断熱層用の組成は表13の通りである。
実施例3として、実施例2の断熱材の断熱層の上部に、多孔質シリカ、無機化合物、有機化合物、難燃剤、及び、アルミニウムを含む、第3の断熱層をさらに積層した断熱材を作成した。
第3の断熱層の形成方法は以下の通りである。
(1)原料
先ず、アルミニウム粉〔堀金箔株式会社製「アルミニウム粉(スーパーファインNO18000・15ミクロン、64重量%)、ミネラルスピリツ(18重量%)とソルベントナフサ(18重量%)とを、ホモミキサー(2000rpm、10分)で混合し、アルミニウム分散液とした。
次に、アルミニウム分散液(30重量%)、ラテックス分散液(10重量%)、及び、断熱シート原料塗工溶液(60重量%)を混合し、ホモミキサーを使用して3000rpmで10分攪拌し、第3の断熱層用の原料塗工溶液とした。
(2)塗工及び乾燥
第3の断熱層用原料塗工溶液を実施例2の第2断熱層の形成条件と同じ方法で、実施例2で得られた断熱層の上面に形成した。なお、第3の断熱層の厚さは2mmとした。
上記によって得られた第3の断熱層用の組成は表13の通りである。
1 粘着層
2 フィルム基材
3 接着層
4 第2の断熱層(断熱層下部)
5 第1の断熱層(断熱層上部)
6 断熱材
7 断熱シート
8 断熱対象
10 大径気泡
11 小径気泡
12 多孔質シリカ
13 第3の断熱層
14 アルミニウム片
20 吹付塗装による断熱層
2 フィルム基材
3 接着層
4 第2の断熱層(断熱層下部)
5 第1の断熱層(断熱層上部)
6 断熱材
7 断熱シート
8 断熱対象
10 大径気泡
11 小径気泡
12 多孔質シリカ
13 第3の断熱層
14 アルミニウム片
20 吹付塗装による断熱層
Claims (17)
- 断熱層と、接着層と、フィルム基材を含む断熱シートであって、
前記断熱層は第1の断熱層と第2の断熱層を有し、
前記フィルム基材、前記接着層、前記断熱層が下層から上層に向かって積層されており、
前記第1の断熱層と前記第2の断熱層がそれぞれの層内に複数の気泡を有し、
前記第1の断熱層の気孔率が65%以上95%未満であり、前記第2の断熱層の気孔率が55%以上90%未満であり、
前記第1の断熱層の気孔率が前記第2の断熱層の気孔率よりも大きく、
前記第1の断熱層と前記第2の断熱層が、多孔質シリカと、無機化合物と、および、有機化合物とを含む、
ことを特徴とする断熱シート。 - 前記第1の断熱層の気孔率が70%以上90%未満であり、
前記第2の断熱層の気孔率が60%以上80%未満である、
ことを特徴とする請求項1に記載の断熱シート。 - 前記第2の断熱層が前記第1の断熱層より下層側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の断熱シート。
- 前記断熱層の熱伝導率が0.015W/m・Kから0.06W/m・Kであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の断熱シート。
- 前記断熱層がデュロメータ硬さ試験(タイプA)で40から70であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の断熱シート。
- 前記第1の断熱層と前記第2の断熱層が、難燃材をさらに含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の断熱シート。
- 前記難燃材が、アンモニウム系化合物であることを特徴とする請求項6に記載の断熱シート。
- 前記断熱層の組成は、多孔質シリカが15重量%から35重量%、無機化合物が15重量%から35重量%、有機化合物が40重量%から60重量%、難燃材が5重量%から30重量%であることを特徴とする請求項6または7に記載の断熱シート。
- 前記無機化合物が、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、および、水酸化マグネシウムを含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の断熱シート。
- 前記多孔質シリカおよび前記無機化合物の重量の和に対する重量比率が、前記多孔質シリカが25重量%から50重量%、前記無機化合物に含まれる炭酸カルシウムが15重量%から30重量%、水酸化アルミニウムが15重量%から30重量%、酸化チタンが5重量%から15重量%、酸化亜鉛が5重量%から15重量%であることを特徴とする請求項9に記載の断熱シート。
- 前記フィルム基材が、ポリイミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルスルホン、および、ポリエーテルイミドからなる群から選択される材料から形成されており、
前記接着層がシリコーン系ゴムおよびシリコーン系レジンを含む接着剤からなることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の断熱シート。 - 前記断熱層の厚さが7.0mm以下であり、
前記フィルム基材の裏面に耐熱性を有する粘着層が積層されている、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の断熱シート。 - 国際海事機関により定められた「火災試験方法の適用に関する国際コード」試験規格Part5の表面燃焼性試験に合格する耐火性を有することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の断熱シート。
- 前記第1の断熱層が、中間層と、当該中間層の上下に形成される表面層と、を備えており、前記中間層の気泡率が、前記表面層の気泡率よりも高いことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の断熱シート。
- 前記中間層には、前記表面層に含まれる気泡より大きな気泡が含まれていることを特徴とする請求項14に記載の断熱シート。
- 前記断熱層の上部に、多孔質シリカ、無機化合物、有機化合物及び難燃剤から選ばれた少なくとも一つの化合物、並びに、アルミニウムを含む、第3の断熱層がさらに積層されていることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の断熱シート。
- 前記アルミニウムが、鱗片状であることを特徴とする請求項16に記載の断熱シート。
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