JP2019001737A - 2−クロロプロパンの合成方法 - Google Patents

2−クロロプロパンの合成方法 Download PDF

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聡洋 齋藤
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大 角田
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正之 森脇
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【課題】長期間にわたってプロピレン転化率の低下を抑制し得る2−クロロプロパンの合成方法を提供する。
【解決手段】2−クロロプロパンの合成方法は、プロピレンを含有する原料ガスと塩化水素とを気相にて触媒存在下で反応させて2−クロロプロパンを合成する2−クロロプロパンの合成方法であって、原料ガスの含水率を400ppm〜1500ppmに調整して反応させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、2−クロロプロパンの合成方法に関する。
2−クロロプロパンは、溶媒、農・医薬の原料など多岐に亘る用途を有する有用な化合物である。2−クロロプロパンの合成方法として、液相反応、気相反応を利用した合成法がある。気相反応は、触媒存在下、プロピレンと塩化水素を接触させて2−クロロプロパンを合成する方法であり、触媒としてアルミナ等が用いられる(例えば、特許文献1〜3)。
通常、上記2−クロロプロパンの合成には市販のプロピレンガスが用いられるが、市販のプロピレンガスには実質的に水分が含まれず、水分含有量は、10ppm未満である。また、用いられる塩化水素は、水分を含有すると腐食性が増し、水分を含んだ状態では保管時の設備等コストがかかるため実質的に水分を含まない。
特開昭50−130702号公報 特開2006−346594号公報 国際公開第2003/045879号
気相反応による2−クロロプロパンの合成において、プロピレンと塩化水素を反応容器に連続的に供給して行う際の原料ガスとして、工場内の他のプラントから排出される未反応のプロピレンを含有するガスを用いた場合など、触媒活性が徐々に低下し、プロピレン転化率の低下が生じる。活性が低下した触媒の取替が必要になるので、取替の間は2−クロロプロパンの合成ができなくなるとともに、頻繁に触媒の取替が必要になるとランニングコストも高くなってしまう。
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、長期間にわたってプロピレン転化率の低下を抑制し得る2−クロロプロパンの合成方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、原料ガスの含水率が2−クロロプロパンの合成反応において、プロピレンの転化率、および2−クロロプロパンの選択率に大きく影響しており、含水率が高いと時間の経過とともに触媒活性が低下してしまい、プロピレンの転化率が低下していくことを見出した。さらに、原料ガスがある一定量の水分を含有することにより、2−クロロプロパンの選択率の低下を抑制できることを見出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係る2−クロロプロパンの合成方法は、
プロピレンを含有する原料ガスと塩化水素とを気相にて触媒存在下で反応させて2−クロロプロパンを合成する2−クロロプロパンの合成方法であって、
前記原料ガスの含水率が400ppm〜1500ppmである、
ことを特徴とする。
また、前記触媒としてアルミナ系触媒を用いることが好ましい。
また、前記原料ガスとしてプロピレンとプロパンとの混合ガスを用いることが好ましい。
また、直接水和法におけるイソプロピルアルコールの合成、又は、酸化プロピレンの合成の際に排出される水分を含有する前記混合ガスを用いることが好ましい。
また、前記原料ガスを水分吸着剤に接触させて前記原料ガスの含水率を調整してもよい。
また、前記原料ガスを圧縮して水分を液化して前記原料ガスの含水率を調整してもよい。
また、前記2−クロロプロパンの合成における反応温度が100〜160℃であることが好ましい。
本発明に係る2−クロロプロパンの合成方法では、原料ガスの含水率を一定の範囲内とすることにより、長期間にわたってプロピレン転化率の低下を抑制することが可能である。さらに、2−クロロプロパンの選択率を向上することが可能である。
実施例1における経過時間とプロピレン転化率の関係を示すグラフである。
本実施の形態に係る2−クロロプロパンの合成方法は、プロピレンを含有する原料ガスと塩化水素とを気相にて触媒存在下で反応させて2−クロロプロパンを合成する方法であり、原料ガスの含水率が400ppm〜1500ppmである。
2−クロロプロパンの合成方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。触媒を充填した反応容器を所定の反応温度まで昇温、維持する。この反応容器に原料ガスと塩化水素を供給する。
本発明において、上記原料ガスは、プロピレンを含有するガスであれば特に限定されないが、生産効率の面からプロピレン含有量が30重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましい。プロピレン含有量の上限は特に限定されず、99.9重量%以下であることが好ましい。
上記プロピレンを含有する原料ガスとして、商業的に取引されているプロピレンとして、ポリマーグレード(純度99.5%以上)、ケミカルグレード(純度93〜94%以上)、リファイナリーグレード(純度60%以上)等が挙げられる。
市販品の他に、工場内の他のプラントから排出される未反応のプロピレンを含有するガスなどが挙げられる。例えば、プロピレンを原料として、酸化プロピレン(PO)をクロロヒドリン法にて合成する際に排出されるガス、或いは、イソプロピルアルコール(IPA)を直接水和法にて合成する際に排出されるガス等が挙げられる。本発明の原料ガスとしては、上記ガスを複数混合して使用することもできる。
上記のプロピレンを含有する原料ガスとして、特に限定されないが、具体的には、プロピレンとプロパンとの混合ガスが挙げられる。上記POやIPAを合成する際に排出されるガスは、プロピレンとプロパンとを含有する混合ガスであり、特に以下に説明する理由により、好ましく使用できる。
プロピレンとプロパンを含有する混合ガスは、プロピレンの沸点(−47.6℃)とプロパンの沸点(−42℃)が近いことから、蒸溜等でプロパンとプロピレンに分離するには高額な設備投資が必要となる。このため、分離して別々に利用することは困難であり、斯様な混合ガスは、燃料としてボイラ等の加熱炉で燃焼させ、熱回収に利用されているに過ぎないという実情がある。そして、プロパンとプロピレンはほぼ同等の発熱量であるところ、プロパンよりも高価なプロピレンを、プロパンとともに燃料として使用することは、不経済である。したがって、斯様な混合ガスを本発明の原料ガスとして用いることは、混合ガス中に存在するプロピレンを有効利用できるという点からも好ましい。
なお、本発明において、上記混合ガスに含まれるプロパンは反応せず、目的物である2−クロロプロパンの沸点(35℃)はプロパンの沸点と異なるため、蒸溜等による分離処理が容易である。したがって、これまで工場から排出され、燃料として使用されていた混合ガス中のプロピレンを、有機合成原料として有用な2−クロロプロパンに転化、分離して活用することができる。
ところで、通常、市販されているプロピレンを含有するガスは、実質的に水分が含まれず、水分含有量は、10ppm未満である。他方、上記のPOの合成やIPAの合成の際に排出される混合ガスは、合成する際にプロピレンと水とを反応させるため、飽和蒸気量の水分を含有しており、具体的には、10000ppm〜20000ppm程度の水分を含有している。該原料ガスの含水率が、2−クロロプロパンの合成反応において、プロピレンの転化率、および2−クロロプロパンの選択率に大きく影響すること、さらに驚くべきことに、ある一定量の水分を含有することにより、2−クロロプロパンの選択率の低下を抑制できることを見出した。
即ち、本願発明は、反応容器に原料ガスを供給する際の、原料ガスの含水率が400ppm〜1500ppmであることを最大の特徴とする。上記含水率は、650ppm〜1000ppmであることがより好ましい。
原料ガスの含水率が上記範囲よりも高い場合、時間の経過とともに触媒活性が低下してしまい、プロピレンの転化率が低下していく。一方、原料ガスの含水率が上記範囲よりも低い場合、2−クロロプロパンの選択率が低くなる傾向にある。
原料ガスの含水率が前記範囲を超える原料ガスの場合、原料ガスの含水率が前記範囲になるよう、原料ガス中の水分を除去する。原料ガスから水分を除去できればどのような方法で行ってもよい。
例えば、原料ガスを水分吸着剤に接触させることで、原料ガスに含まれる水分を水分吸着剤に吸着させ、含水率を低下させてから2−クロロプロパンの合成に利用する。水分吸着剤として、塩化カルシウムやゼオライト、シリカゲル等、水を吸着可能な公知の吸着剤を用いることができる。また、原料ガスを圧縮し、水蒸気を凝縮させ、液化した水を分離することにより、原料ガスの含水率を調整してもよい。また、含水率が低い原料ガスと混合して前記範囲に調整してもよい。
一方、含水率が前記範囲を下回る原料ガスの場合、原料ガスの含水率が前記範囲になるよう、原料ガスに水を添加して用いる。水の添加は、例えば、原料ガスに水蒸気を噴射する手法等、どのような手法で行ってもよい。
反応容器内において、触媒の作用により、原料ガスに含まれるプロピレンの二重結合が解裂し、ここに塩化水素の塩素、水素が付加して2−クロロプロパンが生成する。そして、反応容器から排出される生成ガスを捕集して、クロマトグラフィー等の公知の分離手段で2−クロロプロパンを分離する。また、未反応のプロピレン、塩化水素は再度反応容器に循環させればよい。
なお、原料ガスと塩化水素は事前に混合して混合ガスとしておき、これを反応容器に供給することが好ましい。原料ガスと塩化水素の混合比は、原料ガスに含まれるプロピレンと塩化水素の混合比(モル比)が当量となるよう混合すればよく、1:0.8〜1:1.2などでもよい。
本実施の形態に係る2−クロロプロパンの合成方法に用いる触媒としては、プロピレンと塩化水素との気相における2−クロロプロパンの合成を促進させ得る触媒であればよく特に限定されない。具体的には、アルミナを主成分とするアルミナ系触媒、シリカゲルを主成分とするシリカゲル系触媒等が挙げられる。中でも、アルミナ系触媒であることが、高温域における目的物の分解反応を抑制し、2−クロロプロパンの選択率を向上することから好ましい。
なお、上記反応系においては、2−クロロプロパンに加え、副生物として1−クロロプロパンが生成してしまう。2−クロロプロパンと1−クロロプロパンの沸点はそれぞれ35℃程度、46℃であり、10℃程度の差しかないため、分離するには高額な設備投資等が必要であり、容易ではない。このため、純度の高い2−クロロプロパンを得るためには、2−クロロプロパンの合成段階で1−クロロプロパンの生成をできる限り抑えることが望ましい。このため、用いる触媒として、2−クロロプロパンの選択率を高めることが可能な触媒であることが好ましい。
2−クロロプロパンの選択率を高め得るアルミナ系触媒として、アルカリ金属酸化物を0.5〜4.0重量%含有するアルミナが挙げられる。アルカリ金属酸化物の含有量は、好ましくは1.5〜4.0重量%、より好ましくは2.5〜4.0重量%である。アルカリ金属酸化物として、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウムなどが挙げられる。
上記の触媒は、アルミナにアルカリ金属酸化物を混在させることができれば、どのような製造方法で製造されてもよく、例えば、以下のようにして製造され得る。まず、酸化アルミニウム粉末に任意の量のアルカリ金属酸化物、及び、水を加え、均一になるよう混練し、ペースト状の混練物を得る。この混練物を球状、多角形状、ペレット状、錠剤状、ビード状等、任意の形状に成形し、乾燥、焼成を行うことで、アルミナにアルカリ金属酸化物が混在する触媒が得られる。
焼成温度は400〜1000℃、好ましくは400〜800℃、より好ましくは500〜750℃である。1000℃を超える高温で混練物を焼成すると、得られる触媒の比表面積、細孔容積の低下を招き、触媒機能が低下するためである。また、焼成時間は、焼成前の混練物の重量から少なくとも90重量%以上減少する時間であればよく、たとえば、上述した温度範囲で0.5〜4時間である。
また、シリカゲル系触媒は、表面にシラノール基(Si−OH)を有しており、シラノール基がプロピレンと塩化水素を原料とする2−クロロプロパンの合成において、触媒作用を果たすものと考えられる。
用いるシリカゲルとして、5重量%水溶液としたスラリーにおいて、25℃におけるpHが7以下であること好ましく、より好ましくはpHが6以下であり、更に好ましくはpHが5以下である。また、上記pHは4以上であるとよい。なお、上記pHは、JIS K1150に準拠した測定方法で測定される値である。
また、シリカゲルの形状は、球状、多角形状、ペレット状、錠剤状、ビード状などのどのような形状でもよく、球状の場合、粒子径は1.7〜4.0mmであることが好ましい。
また、そのほかシリカゲルの物性は、以下の範囲であることが好ましい。
・SiO成分:99.5%以上
・細孔容積:0.40〜0.75mL/g
・細孔径:2.4〜6.7nm
・比表面積:450〜650m/g
なお、触媒の反応容器への充填密度は、反応容器内の空間を十分に満たせればよく、例えば、0.5〜0.73g/mLとすればよい。また、混合ガスを供給する空間速度(混合ガス供給量(m/h)/触媒体積(m))についても任意でよく、例えば、50〜500(1/h)とすればよい。また、反応圧力については、1〜3気圧程度とすればよい。また、反応温度については特に限定されないが、アルミナ系触媒、シリカゲル系触媒いずれを用いる場合も好ましくは25〜160℃であり、より好ましくは100〜160℃である。
(実施例1)
内径22.4mm、長さ20cmの反応管(SUS304製)にアルミナ系触媒を充填した。反応管を電気炉内に配置した。アルミナ系触媒として、ペレット状アルミナ9.5g(γアルミナ、比表面積269m/g、充填密度0.57g/mL)を用いた。そして、反応管を電気炉内に配置し、電気炉内を100℃に維持して実験を行った。
プロピレンと塩化水素の混合ガス(モル比1:1)を窒素で希釈し、プロピレンを5Nml/hr、塩化水素を5Nml/hr、窒素を10Nml/hrで反応管に供給した。空間速度(原料供給量/触媒体積)は、80h−1である。
そして、反応管内に水蒸気を添加し、系内の含水率をそれぞれ650ppm、1000ppm、10000ppm、25000ppmに調整、維持した。
生成ガスを苛性ソーダ溶液に通過させた後、テドラーバッグで捕集した。捕集した生成ガスの組成をガスクロマトグラフィー(FID:Flame Ionization Detector)にて分析し、プロピレンの転化率を求めた。
なお、上記の生成ガスの捕集、組成の分析、及び、プロピレンの転化率の算出は、水蒸気の添加時点を開始時間(0時間)とし、1時間おきに行った。その結果を表1〜表4及び図1に示す。
Figure 2019001737
Figure 2019001737
Figure 2019001737
Figure 2019001737
含水率が650ppm、1000ppmの場合、プロピレン転化率は時間が経過しても、ほとんど変化は見られないことから、触媒活性の低下が抑制されている。一方、含水率が10000ppm及び25000ppmの場合、プロピレン転化率が時間経過とともに低下しており、含水率が1000ppmを超えていると、含水率が高いほど触媒活性が低下していることがわかる。
(実施例2)
実施例1と同様の手法にて、系内の含水率を650ppm、0ppmに調整、維持し、2−クロロプロパンの合成を行った。
触媒として、アルミナ系触媒を用いた。アルミナ系触媒は実施例1と同様のものを用いた。
反応温度は100℃、160℃とし、それぞれの反応温度にて、系内の含水率を650ppm、0ppmに調整、維持し、6時間経過後の生成ガスを苛性ソーダ溶液に通過させた後、テドラーバッグで捕集した。捕集した生成ガスの組成をガスクロマトグラフィー(FID:Flame Ionization Detector)にて分析し、プロピレンの転化率及び2−クロロプロパンの選択率を求めた。その結果を表5に示す。
Figure 2019001737
プロピレン転化率については、含水率650ppm、0ppmとでさほど差は見られなかった。一方、2−クロロプロパンの選択率においては、650ppmの方が0ppmよりも高く、特に、反応温度160℃でその差が顕著である。
この結果から、原料ガスが水分を全く含有していないよりも、多少水分を含有している方が、2−クロロプロパンの選択率が高い傾向にあることがわかる。

Claims (7)

  1. プロピレンを含有する原料ガスと塩化水素とを気相にて触媒存在下で反応させて2−クロロプロパンを合成する2−クロロプロパンの合成方法であって、
    前記原料ガスの含水率が400ppm〜1500ppmである、
    ことを特徴とする2−クロロプロパンの合成方法。
  2. 前記触媒としてアルミナ系触媒を用いる、
    ことを特徴とする請求項1に記載の2−クロロプロパンの合成方法。
  3. 前記原料ガスとしてプロピレンとプロパンとの混合ガスを用いる、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の2−クロロプロパンの合成方法。
  4. 直接水和法におけるイソプロピルアルコールの合成、又は、酸化プロピレンの合成の際に排出される水分を含有する前記混合ガスを用いる、
    ことを特徴とする請求項3に記載の2−クロロプロパンの合成方法。
  5. 前記原料ガスを水分吸着剤に接触させて前記原料ガスの含水率を調整する、
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の2−クロロプロパンの合成方法。
  6. 前記原料ガスを圧縮して水分を液化して前記原料ガスの含水率を調整する、
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の2−クロロプロパンの合成方法。
  7. 前記2−クロロプロパンの合成における反応温度が100〜160℃である、
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の2−クロロプロパンの合成方法。
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