[0014] 本発明の一態様によれば、リソグラフィ装置を用いて、基板上に、第1のフィーチャを含む第1のターゲット及び第2のフィーチャを含む第2のターゲットを形成することであって、ターゲットの形成は、リソグラフィ装置に設置されたパターニングデバイスを介して放射ビームを投影することによって、パターニングデバイスの1つ以上に対応する第1のフィーチャ及び第2のフィーチャを基板に適用することと、リソグラフィ装置の構成を制御して収差を誘発し、誘発した収差成分の第1の値を用いて第1のフィーチャを基板に適用すると共に誘発した収差成分の第2の異なる値を用いて第2のフィーチャを基板に適用するようにすることと、を含む、ことと、第1のターゲット及び第2のターゲットの特性を測定することと、これらの測定を用いて、誘発した収差成分の値の変化に対するターゲットの特性の感度を決定することと、を含む方法が提供される。
[0015] リソグラフィ装置の構成を制御して、異なるターゲット(例えばメトロロジーオーバーレイターゲット)に対して収差成分の異なる値を誘発することにより、収差成分の異なる値についてターゲットの測定した特性(例えばオーバーレイ)を比較することができ、その特性の差を、収差成分に対するターゲットの特性の感度を決定する際に使用できる。測定される感度はターゲットに特有のものである。
[0016] リソグラフィ装置は、放射ビームの所望の特徴と生成中に発生する放射ビームの実際の特徴との差として現れる固有収差(intrinsic aberration)を示し得る。例えば、レンズのような装置の光学要素は生成プロセス中に不均一な加熱が加わることがあり、これによって、光学要素のある部分では他の部分に比べて光路長が変化する可能性がある。そのような収差は、基板に投影される像の歪みを引き起こす恐れがある。そのような収差はリソグラフィ装置に固有のものと言うことができる。
[0017] 誘発される収差は、固有収差に加えて意図的に追加される収差とすることができる。収差の誘発は、収差成分の大きさを、その収差成分の固有の大きさ又は残余の大きさよりも増大させることを含み得る。収差成分を意図的に追加することによって、収差成分の異なる値を制御のもとで導入し、収差成分の効果を決定することができる。
[0018] 第1及び第2のターゲットは同じタイプのターゲットであり得る。ターゲットの特性(例えばオーバーレイ)の感度の決定は、そのタイプのターゲットの特性の感度を決定することを含み得る。各ターゲットは、例えば、デバイス又は回路コンポーネントを含むか、表すか、又はその一部を形成し得る。各ターゲットはメトロロジーターゲットを含み得る。例えば、ターゲットはマイクロ回折ベースのオーバーレイ(μDBO:micro−diffraction based overlay)ターゲットとすることができ、感度の決定はμDBOターゲットのオーバーレイ感度を決定することを含み得る。
[0019] 感度の決定において、第3、第4、第5、及び/又はそれ以上のターゲットを使用し、第3、第4、第5、及び/又はそれ以上のターゲットのフィーチャを、誘発した収差成分の別の異なる値を用いて適用することも可能である。これに加えて及び/又はこの代わりに、誘発した収差成分の各値について、複数のターゲットを形成し、これら複数のターゲットの測定を感度の決定に用いてもよい。
[0020] 第1のターゲットは第1のメトロロジーターゲットを含み得る。第2のターゲットは第2のメトロロジーターゲットを含み得る。1つ以上のパターニングデバイスフィーチャは1つ以上の生成メトロロジーマーカを含み得る。
[0021] パターニングデバイスは、リソグラフィ装置によってリソグラフィパターニングデバイスを介して放射ビームを投影することで基板上に所望のリソグラフィフィーチャを形成するためのパターニングフィーチャを更に含み得る。各所望のリソグラフィフィーチャは、例えば、デバイス又は回路コンポーネントを含むか、表すか、又はその一部を形成し得る。
[0022] 第1のターゲットは第1の所望のリソグラフィフィーチャを含み、第2のターゲットは第2の所望のリソグラフィフィーチャを含み得る。
[0023] パターニングデバイスは生成レチクルを含むことができ、このレチクル上に、生成メトロロジーマーカ及びパターニングフィーチャが、生成製造プロセスにおいてウェーハ上に所望のレイアウトのメトロロジーターゲット及び所望のリソグラフィフィーチャを形成するように配置されている。
[0024] 照明条件、露光条件、及び処理条件のうち少なくとも1つは、生成製造プロセスで用いられるものと同一である。基板はウェーハとすればよい。ウェーハは製造ラインを介して処理され得る。
[0025] 生成レチクルの生成メトロロジーマーカを用いて、生成時に使用されるものと同じタイプのメトロロジーターゲットを形成することにより、この方法がこのタイプのメトロロジーターゲットについて決定する感度は、例えば生成メトロロジーツール上で生成時に測定されるこのタイプのメトロロジーターゲットの実際の感度を表すことができる。決定される感度は、例えば現像及び/又は処理がメトロロジーターゲットのフィーチャに及ぼす効果等、生成時に特性の感度に寄与する条件を考慮に入れることができる。
[0026] パターニングデバイスは、特定のウェーハの生成時に用いられるカスタマの生成レチクルとすることができる。パターニングデバイスは、カスタマのレイアウトの生成メトロロジーマーカ及びパターニングフィーチャを有し得る。基板上でのフィーチャの露光、処理、又は測定の照明条件、処理条件、及び/又は他の条件は、カスタマによる生成時に使用されるものと同一とすることができる。
[0027] 基板にフィーチャを適用することは、第1のリソグラフィ層にフィーチャを適用することを含み得る。フィーチャが適用される基板は、すでに処理済みの多数の層を含む基板であり得る。第1のリソグラフィ層は、多層構造の任意の層とすることができる。
[0028] 基板に各フィーチャを適用することは、リソグラフィ装置によりパターニングデバイスを介して放射を投影して1つ以上のパターニングデバイスフィーチャのうち1つの画像を基板に投影することによる基板の物理的変更によって、基板上にフィーチャを形成することを含み得る。基板の物理的変更は、例えば基板の構造的又は化学的な特性の変更のような、基板の少なくとも1つの特性の変更を含み得る。ターゲットの少なくとも1つの特性の決定は、少なくとも1つの所望のリソグラフィフィーチャを基板上に形成するリソグラフィプロセスの露光ステップの後及び/又はエッチングステップの後に実行することができる。
[0029] 第1のフィーチャ及び第2のフィーチャは、同じパターニングデバイスフィーチャに、又は同じタイプの異なるパターニングデバイスフィーチャに対応し得る。第1のフィーチャ及び第2のフィーチャは、同じ生成メトロロジーマーカに、又は同じタイプの異なる生成メトロロジーマーカに対応し得る。第1のフィーチャ及び第2のフィーチャは、同じパターニングフィーチャに、又は同じタイプの異なるパターニングフィーチャに対応し得る。
[0030] この方法は、基板上に別のターゲットを形成することであって、別のターゲットのフィーチャは別の異なる誘発した収差成分の第1及び第2の値を用いて適用される、ことと、別のターゲットの特性を測定することと、別のターゲットの測定を用いて、別の誘発した収差成分の変化に対する別のターゲットの特性の感度を決定することと、を更に含み得る。
[0031] 第1、第2、及び別のターゲットは、同じ生成メトロロジーマーカもしくは同じタイプの生成メトロロジーマーカに、又は同じパターニングフィーチャもしくは同じタイプのパターニングフィーチャに対応した、同じタイプのターゲットとすることができ、このため、誘発した収差及び別の誘発した収差の変化に対して決定される感度は、この同じタイプのターゲットの感度である。
[0032] 第1及び第2のターゲットは第1のターゲット部分上に形成され、別のターゲットは第2のターゲット部分上に形成され得る。
[0033] 2つ以上の収差成分に対するターゲットのタイプの特性(例えばオーバーレイ)の感度を決定できる。異なる収差成分に対する特性の感度を同一の基板上で決定できる。異なる収差成分を同一のウェーハの異なるフィールドに適用できる。同一の基板上で多数の収差に対する特性の感度を決定することにより、1枚の基板当たり単一の感度を決定することに比べ、必要な個別のターゲットの数を減らす、及び/又は必要な基板の数を減らす、及び/又は感度の決定に必要な合計時間を短縮することができる。
[0034] 誘発した収差の値は、収差成分の大きさを含み得る。誘発した収差の値は定量化可能であり得る。
[0035] 収差成分の誘発は、選択されたゼルニケ係数の1つ又は複数の非ゼロの値を誘発することを含み得る。収差成分の誘発は、選択されたゼルニケ係数の値を、そのゼルニケ係数の固有値よりも増大させることを含み得る。ゼルニケ係数は、収差を記述するため用いられるゼルニケ多項式の係数であり、収差成分の誘発は、少なくとも1つのゼルニケ係数の値を変化させること、例えばゼルニケ係数の誘発した値をゼロから正の値に変化させることを含み得る。収差成分の誘発は、選択されたゼルニケ係数の大きさを増大させることを含み得る。
[0036] 誘発した収差成分は、選択されたゼルニケ係数によって表される成分であり得る。別の誘発した収差成分は、別の異なる選択されたゼルニケ係数によって表される成分であり得る。
[0037] 選択されたゼルニケ係数の1つ又は複数の値は、リソグラフィ装置の投影システムにおいて誘発され得る。
[0038] 選択されたゼルニケ係数は単一のゼルニケ係数であり得る。ゼルニケ係数は単独で誘発され得るので、実質的に、選択されたゼルニケ係数と同時に他のゼルニケ係数は誘発されない。
[0039] 収差の誘発は、選択されたゼルニケ係数の1つ又は複数の非ゼロの値を誘発することを含み、別の収差の誘発は、別の異なるゼルニケ係数の1つ又は複数の非ゼロの値を誘発することを含み得る。選択されたゼルニケ係数及び別の異なるゼルニケ係数は、独立して誘発され得る。選択されたゼルニケ係数及び別の異なるゼルニケ係数は、異なるターゲット部分のために誘発され得る。
[0040] 状況によっては、選択されたゼルニケ係数の誘発により、他の寄生ゼルニケ係数の誘発が起こり得る。特定のゼルニケ係数の大きさを増大すると、他のゼルニケ係数の大きさも増大することがある。感度の決定は、他の寄生ゼルニケ係数の効果を決定すること及びこれを実質的に除去することを含み得る。
[0041] 複数のターゲット部分において、これらターゲット部分の各々で異なる収差成分を誘発できる。単一の基板から、複数の異なる収差成分に対するターゲットの感度を決定できる。
[0042] この方法は、基板の複数のターゲット部分のそれぞれで複数の異なる収差成分を誘発することを含み得る。各収差成分は異なるゼルニケ係数で表される。異なる収差成分は、時間的に連続して及び/又は異なるターゲット部分で誘発され得る。収差成分が誘発される順序は、異なる収差成分の誘発間の少なくとも1つの遷移時間を最短に抑えるように選択すればよい。ゼルニケ係数を誘発する順序は、異なるゼルニケ係数の誘発間の少なくとも1つの遷移時間を最短に抑えるように選択すればよい。第1のゼルニケ係数から第2のゼルニケ係数への遷移は、第1のゼルニケ係数を実質的にゼロに設定することを含み得る。
[0043] 第1のターゲット及び第2のターゲットは、基板の同一のターゲット部分内に形成され得る。複数のターゲットを基板の任意の1つのターゲット部分内に形成できる。ターゲット部分はフィールドとすることができる。基板は、連続的にパターン付与される複数のフィールドを含み得る。
[0044] リソグラフィ装置の構成を制御して収差を誘発することは、ターゲット部分内の位置に応じた収差成分の値の変動を誘発するようにリソグラフィ装置の構成を制御することを含み得る。この場合、第1のターゲット及び第2のターゲットはターゲット部分内に形成されている。
[0045] 収差成分の値の変動は、例えばフィールドのようなターゲット部分内の位置に応じた収差成分の大きさの変化を含み得る。単一のターゲット部分内の位置に応じた収差成分の値の変動を誘発することによって、このターゲット部分内の異なるターゲットを、収差成分の異なる値を用いて適用できる。収差成分の異なる値を用いて単一のターゲット部分内の異なるターゲットを適用することで、感度の決定に必要なターゲットの数を減らす、及び/又は感度の決定に必要なターゲット部分の数を減らす、及び/又は感度の決定に必要な時間を短縮することができる。
[0046] 収差成分の大きさの変動の誘発は、ターゲット部分内の位置に応じた選択されたゼルニケ係数の大きさの変化を誘発することを含み得る。位置に応じたゼルニケ係数の大きさの変化を、ゼルニケ傾斜(Zernike tilt)と呼ぶことができる。選択されたゼルニケ傾斜を所与のターゲット部分で誘発することができ、そのターゲット部分では実質的に他のゼルニケ係数は誘発されない。
[0047] ターゲットの特性の感度を決定するには、異なるターゲット間の特性の測定の差を、それら異なるターゲットに対して誘発した収差の差と比較すればよい。例えば、測定されたオーバーレイの差を、誘発した収差成分の値の差で除算することによって、感度が得られる。
[0048] 第1のターゲットのものである第1のフィーチャは第1のリソグラフィ層に適用され得る。第2のターゲットのものである第2のフィーチャは同じ第1のリソグラフィ層に適用され得る。第1のターゲットは、第2のリソグラフィ層に適用される別のフィーチャを更に含み得る。第2のターゲットは、同じ第2のリソグラフィ層に適用される別のフィーチャを更に含み得る。
[0049] 別のフィーチャは、実質的に、誘発した収差なしで第2のリソグラフィ層に適用され得る。
[0050] この方法は、別のフィーチャを第2のリソグラフィ層に適用する前に第1のリソグラフィ層をエッチング及び/又は現像することを含み得る。この方法は、フィーチャを第1のリソグラフィ層に適用する前に第2のリソグラフィ層をエッチング及び/又は現像することを含み得る。
[0051] 感度は、プロセス後感度又はレジスト内(in−resist)感度を含み得る。
[0052] ターゲットの特性はオーバーレイ特性を含み得る。
[0053] 各ターゲットのオーバーレイ特性は、第1及び第2のリソグラフィ層に適用されたターゲットのフィーチャのオーバーレイを含み得る。
[0054] 第1のターゲットでは、ターゲットの特性は、第1のリソグラフィ層に適用された第1のフィーチャ及び第2のリソグラフィ層に適用された別のフィーチャのオーバーレイを含み得る。第2のターゲットでは、ターゲットの特性は、第1のリソグラフィ層に適用された第2のフィーチャ及び第2のリソグラフィ層に適用された別のフィーチャのオーバーレイを含み得る。
[0055] 各ターゲットは、オーバーレイメトロロジーターゲット、回折ベースのオーバーレイターゲット、ボックス内ボックス(box−in−box)ターゲットのうち少なくとも1つを含み得る。1つ以上のパターニングデバイスフィーチャは、フィールド内オーバーレイマーカ、回折ベースのメトロロジーマーカのうち少なくとも一方を含み得る。
[0056] 1つ以上のパターニングデバイスフィーチャは、少なくとも1つの生成メトロロジーマーカを含み得る。生成メトロロジーマーカは少なくとも1つの格子を含み得る。生成メトロロジーマーカは複数の格子を含み得る。複数の格子のうち少なくとも1つは第1の方向に延出し、少なくとも1つの他のものは第2の異なる方向に延出している。生成メトロロジーマーカの格子のうち少なくとも1つと生成メトロロジーマーカの格子のうち少なくとも1つの他のものとの間には位相オフセットが存在し得る。生成メトロロジーマーカは、格子でないフィーチャを含み得る。
[0057] 生成時に使用されるものと同一の生成メトロロジーマーカ及びメトロロジーターゲットを用いることで、生成時に発生するオーバーレイを表すオーバーレイ測定が得られる。
[0058] リソグラフィ装置の構成の制御は、リソグラフィ装置のレンズ機構の1つ以上の要素を移動もしくは変形させること、又はリソグラフィ装置の1つ以上の部分を加熱することを含み得る。
[0059] リソグラフィ装置の構成の制御は、放射ビームを横切る方向に配置された光学要素のアレイを用いて放射ビームの光路長を局所的に変化させることを含み得る。各光学要素は、個別にアドレス可能な加熱デバイスを含む。
[0060] リソグラフィ装置は、正常な生成プロセスにおける使用時に固有収差を補償するため用いられる1つ以上のコンポーネントを含み得る。そのようなシステムは、例えば放射ビームの一部の光路長を放射ビームの他の部分に対して変化させることによって、収差を誘発するため用いることも可能である。
[0061] リソグラフィ装置の構成は、異なるターゲット部分では異なることがある。基板の各ターゲット部分でのリソグラフィ装置の構成は、例えばユーザによる選択のように、選択することができる。収差はカスタマの露光レシピに追加することができる。
[0062] この方法は、少なくとも1つの参照ターゲットを形成することを更に含み得る。少なくとも1つの参照ターゲットは、実質的に、誘発した収差なしで形成される。
[0063] 参照ターゲットは、光学装置に意図的に変更を加えることなく形成され得る。参照ターゲットは、例えば照明条件及び露光条件のような条件を実質的に生成時に使用されるような条件として形成できる。従って、参照ターゲットの形成中に存在する収差は固有収差のみを含み、意図的に発生させた収差は含まない可能性がある。
[0064] 本方法は、少なくとも1つの参照ターゲットの特性を測定することと、少なくとも1つの参照ターゲットの特性の測定を用いて、誘発した収差が存在しない場合の収差を決定することと、決定した収差を、第1及び第2のターゲットの特性の感度の決定において用いることと、を更に含み得る。
[0065] 各参照ターゲットの少なくとも一部は、第1及び第2のターゲットの形成前に形成され得る。
[0066] 誘発した収差なしで参照ターゲットを形成することによって、投影システムにおける既存の固有収差の効果を測定から除去することが可能となり得る。既存の収差は、正常な生成条件のもとで正常な生成時に発生する収差であり得る。既存の収差は、リソグラフィ装置、及び/又は、例えば露光条件もしくは照明条件のような基板が露光及び/又は処理される条件に固有のものであり得る。既存の収差が一度除去されたら、残りの特性変化は、意図的に発生させた追加の収差成分である誘発した収差成分に起因し得る。誘発した収差が存在しない場合にも発生する既存の収差の効果を除去することによって、誘発した収差成分に対する特性の感度の測定を補正できる。
[0067] 第1及び第2のターゲットは第1のタイプのメトロロジーターゲットとすることができる。この方法は、第2のタイプのメトロロジーターゲットのメトロロジーターゲットを形成することを更に含み得る。第2のタイプのメトロロジーターゲットのフィーチャは、誘発した収差成分の異なる値を用いて適用される。この方法は、第2のタイプのメトロロジーターゲットの特性を測定することと、特性の測定を用いて、誘発した収差成分の変化に対する第2のタイプのメトロロジーターゲットの特性の感度を決定することと、を更に含み得る。この方法は、第1のタイプのメトロロジーターゲットの感度を第2のタイプのメトロロジーターゲットの感度と比較することを更に含み得る。
[0068] この方法は、比較に基づいて第1のタイプのメトロロジーターゲット又は第2のタイプのメトロロジーターゲットを選択又は変更することを更に含み得る。
[0069] 単一の基板上で異なるタイプのメトロロジーターゲットの感度を比較することができる。メトロロジーターゲットを選択する際、例えばどのメトロロジーターゲットが生成時に用いるのに最も適切な感度を有するか選択する際に、決定された感度を使用できる。異なるメトロロジーターゲットの感度は、例えば現像及び/又は処理の効果、又は生成時に使用される特定の照明条件もしくは露光条件の効果を含む、生成条件において示される感度を表し得る。状況によっては、例えばあるタイプのメトロロジーターゲットの感度が生成時に用いるのに適切でないと判定された場合、そのタイプのメトロロジーターゲットの設計を変更することができる。
[0070] この方法は、決定した感度に基づいてターゲットの特性を測定する方法を変更することを更に含み得る。例えばターゲットがメトロロジーターゲットである場合、メトロロジーターゲットを測定する方法を変更して、決定される感度が、所望のリソグラフィフィーチャの決定した感度と同様になるようにすればよい。例えば、メトロロジーツールの設定を変更することができる。メトロロジーツールにより用いられる放射の周波数を変更できる。
[0071] 第1及び第2のターゲットはメトロロジーターゲットであり得る。この方法は、誘発した収差成分の値の変化に対する所望のリソグラフィフィーチャの特性の感度を決定することを更に含み得る。この方法は、メトロロジーターゲットの特性の決定した感度を所望のリソグラフィフィーチャの特性の決定した感度と比較し、これによって、メトロロジーターゲットの感度が所望のリソグラフィフィーチャをどの程度表すか決定することを更に含み得る。
[0072] 本発明の一態様によれば、基板を提供することと、照明システムを用いて放射のビームを提供することと、パターニングデバイスを用いて放射ビームの断面にパターンを付与することと、パターン付与された放射ビームを基板のターゲット部分に投影することと、を含む方法が提供される。放射ビームを基板のターゲット部分に投影することは、基板上に、第1のフィーチャを含む第1のターゲット及び第2のフィーチャを含む第2のターゲットを形成することを含み、ターゲットの形成は、パターニングデバイスを介して放射ビームを投影することによって、パターニングデバイスの1つ以上のパターニングデバイスフィーチャに対応する第1のフィーチャ及び第2のフィーチャを基板に適用することと、リソグラフィ装置の構成を制御して収差を誘発し、誘発した収差成分の第1の値を用いて第1のフィーチャを基板に適用すると共に誘発した収差成分の第2の異なる値を用いて第2のフィーチャを基板に適用するようにすることと、を含む。この方法は、第1のターゲット及び第2のターゲットの特性を測定することと、これらの測定を用いて、誘発した収差成分の値の変化に対するターゲットの特性の感度を決定することと、を更に含む。
[0073] 本発明の一態様によれば、放射のビームを提供するための照明システムと、放射ビームの断面にパターンを付与するように機能する生成パターニングデバイスを支持するための支持構造と、パターン付与された放射ビームを基板のターゲット部分に投影するための投影システムと、処理リソースと、を備えるリソグラフィ装置が提供される。このリソグラフィ装置は、基板上に、第1のフィーチャを含む第1のターゲット及び第2のフィーチャを含む第2のターゲットを形成するように構成され、ターゲットの形成は、パターニングデバイスを介して放射ビームを投影することによって、パターニングデバイスの1つ以上のパターニングデバイスフィーチャに対応する第1のフィーチャ及び第2のフィーチャを基板に適用することと、リソグラフィ装置の構成を制御して収差を誘発し、誘発した収差成分の第1の値を用いて第1のフィーチャを基板に適用すると共に誘発した収差成分の第2の異なる値を用いて第2のフィーチャを基板に適用するようにすることと、を含み、処理リソースは、第1のターゲット及び第2のターゲットの特性の測定を用いて、誘発した収差成分の値の変化に対するターゲットの特性の感度を決定するように構成されている。パターニングデバイスは生成パターニングデバイスを含み得る。
[0074] リソグラフィ装置の構成を制御することは、投影システムの構成を制御することを含み得る。
[0075] 本発明の別の態様によれば、リソグラフィ装置を用いて基板上にターゲット又はデバイスを形成することと、少なくとも1つの測定を実行して、ターゲット又はデバイスの形成中に存在する収差の値を決定することと、収差に対するターゲット又はデバイスの特性の感度を取得することと、少なくとも1つの測定及び感度に応じてターゲット又はデバイスの特性の値を予測することと、を含む方法が提供される。
[0076] ターゲット又はデバイスの形成中に存在する収差の測定値を用いることによって、より高精度の特性の予測が得られる。測定値は個々の露光での測定値とすることができる。
[0077] 特性は、パターンシフト及びオーバーレイのうち少なくとも一方を含み得る。感度の取得は、少なくとも1つのターゲット又はデバイスの以前の測定に基づき得る。
[0078] 収差の値は、個々の露光での収差の値を含み得る。
[0079] 感度の取得は、リソグラフィ装置を用いて、基板上に、第1のフィーチャを含む第1のターゲット及び第2のフィーチャを含む第2のターゲットを形成することであって、ターゲットの形成は、リソグラフィ装置に設置されたパターニングデバイスを介して放射ビームを投影することによって、パターニングデバイスの1つ以上に対応する第1のフィーチャ及び第2のフィーチャを基板に適用することと、リソグラフィ装置の構成を制御して収差を誘発し、誘発した収差成分の第1の値を用いて第1のフィーチャを基板に適用すると共に誘発した収差成分の第2の異なる値を用いて第2のフィーチャを基板に適用するようにすることと、を含む、ことと、第1のターゲット及び第2のターゲットの特性を測定することと、これらの測定を用いて、誘発した収差成分の値の変化に対するターゲットの特性の感度を決定することと、を含み得る。
[0080] ターゲット又はデバイスの感度の取得は、シミュレーション、任意選択的に撮像シミュレーションを実行することを含み得る。
[0081] ターゲット又はデバイスの形成は、ターゲットを形成すること及びデバイスを形成することを含み得る。少なくとも1つの測定は、ターゲットの形成中に存在する収差の値及びデバイスの形成中に存在する別の収差の別の値を決定するためのものであり得る。感度の取得は、収差に対するターゲットの特性の感度を取得すること及び収差に対するデバイスの特性の感度を取得することを含み得る。予測は、ターゲットの特性及びデバイスの特性を予測することを含み得る。
[0082] 別の収差は収差と同一であり得る。別の収差の別の値は収差の値と同一であり得る。
[0083] ターゲットの特性はオーバーレイを含み得る。デバイスの特性はオーバーレイを含み得る。
[0084] この方法は、ターゲットの予測したオーバーレイ及びデバイスの予測したオーバーレイに応じてターゲット及びデバイスのオフセットを予測することを更に含み得る。個々の露光で測定したレンズ収差に基づいてオフセットを予測することにより、より高精度のオフセットが得られる。
[0085] オフセットの予測は、例えばAPCオフセット等、ターゲットの形成中及び/又はデバイスの形成中に適用される適用オフセットに依存し得る。
[0086] この方法は、予測したオフセットを用いてリソグラフィ装置のオフセットを適用又は調整することを更に含み得る。この方法は、予測したオフセットを用いて、以降の露光におけるオフセットを適用又は調整することを更に含み得る。この方法は、予測したオフセットを用いることを含み、又は後続のウェーハのオフセットを適用もしくは調整し得る。
[0087] ターゲット又はデバイスの特性はオーバーレイを含み得る。ターゲット又はデバイスのオーバーレイの予測は、エッチング効果、トリム効果、カット効果、回転のうち少なくとも1つに依存し得る。
[0088] ターゲット又はデバイスは、多層ターゲット又はデバイスであり得る。特性は、ターゲット又はデバイスの層のうち1つの特性であり得る。
[0089] 独立して与えられ得る本発明の別の態様によれば、リソグラフィ装置であって、放射のビームを提供するための照明システムと、放射ビームの断面にパターンを付与するように機能する生成パターニングデバイスを支持するための支持構造と、パターン付与された放射ビームを基板のターゲット部分に投影するための投影システムと、リソグラフィ装置の動作を制御するように構成された処理リソースと、を備えるリソグラフィ装置が提供される。処理リソースは、基板上にターゲット又はデバイスのうち少なくとも一方を形成し、少なくとも1つの測定を実行して、ターゲット又はデバイスの形成中に存在する収差の値を決定し、収差に対するターゲット又はデバイスの特性の感度を取得し、少なくとも1つの測定及び感度に応じてターゲット又はデバイスの特性の値を予測するように構成されている。
[0090] ある態様における特徴は、適宜、任意の他の態様における特徴として提供することができる。例えば、方法の特徴を装置の特徴として提供することができ、その逆も同様である。ある態様における任意の1つ又は複数の特徴を、任意の他の態様における任意の適切な1つ又は複数の特徴と組み合わせて提供することができる。
[0092] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが、当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板プロセスツールに適用することができる。更に基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
[0093] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)及び極端紫外光(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。
[0094] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを付与するために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに付与されるパターンは、基板のターゲット部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに付与されるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
[0095] パターニングデバイスは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、更には様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例は、小型ミラーのマトリクス構成を使用し、ミラーの各々は、入射する放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾けることができる。このようにして、反射ビームがパターニングされる。
[0096] 支持構造はパターニングデバイスを保持する。支持構造は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。支持構造は、機械式クランプ、真空、又は他のクランプ技術、例えば真空条件下での静電クランプを使用することができる。支持構造は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムなどに対して確実に所望の位置にくるようにできる。本明細書において「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
[0097] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、適宜、例えば露光放射の使用、或いは浸漬液の使用又は真空の使用などの他の要因に対する、屈折光学システム、反射光学システム、及び反射屈折システムを含む、様々なタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これは更に一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
[0098] また、照明システムは、放射ビームを誘導し、整形し、又は制御する屈折、反射、及び反射屈折光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントを含んでよく、そのようなコンポーネントも以下においては集合的に又は単独で「レンズ」とも呼ばれることがある。
[0099] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)又はそれ以上の基板テーブル(及び/又は2つ以上の支持構造)を有するタイプでよい。このような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルを並行して使用するか、1つ以上の他のテーブルを露光に使用している間に1つ以上のテーブルで予備工程を実行することができる。
[00100] リソグラフィ装置は、投影システムの最終要素と基板との間の空間を充填するように、基板が比較的高い屈折率を有する液体、例えば水などに液浸されるタイプであってもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を増加させるために当技術分野で周知である。
[00101] 図1は、本発明の特定の実施形態に従ったリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、
−放射(例えばUV放射又はEUV放射)のビームPBを調節するための照明システム(イルミネータ)ILと、
−パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するための、アイテムPLに関してパターニングデバイスを正確に位置決めするために第1の位置決めデバイスPMに接続された支持構造(例えば支持構造)MTと、
−基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するための、アイテムPLに関して基板を正確に位置決めするための第2の位置決めデバイスPWに接続された、基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、
−パターニングデバイスMAによって放射ビームPBに付与されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つ以上のダイを含む)上に結像するように構成された、投影システム(例えば屈折投影レンズ)PLとを備える。
[00102] 本明細書で示すように、本装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。或いは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する)。
[00103] イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDの助けにより、放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の事例では、例えば放射源が水銀ランプの場合は、放射源がリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
[00104] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整する調整手段AMを備えていてもよい。通常、イルミネータの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ−outer及びσ−innerと呼ばれる)を調整することができる。また、イルミネータILは、一般に、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の様々なコンポーネントを備えていてもよい。イルミネータを用いて放射ビームPBを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
[00105] 放射ビームPBは、支持構造MT上に保持されたパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射する。パターニングデバイスMAを横断した放射ビームPBは、レンズPLを通過し、レンズPLは、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2の位置決めデバイスPW及び位置センサIF(例えば干渉計デバイス)の助けにより、基板テーブルWTは、例えば様々なターゲット部分CをビームPBの経路に位置決めするように正確に移動できる。同様に、第1の位置決めデバイスPM及び別の位置センサ(図1には明示されていない)を用いて、例えばマスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中にビームPBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めできる。一般に、オブジェクトテーブルMA及びWTの移動は、位置決めデバイスPM及びPWの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)の助けにより実現される。しかしながら、ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、支持構造MTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。パターニングデバイスMA及び基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。
[00106] 図示の装置は、以下の好ましいモードで使用することができる。
1.ステップモードでは、支持構造MT及び基板テーブルWTは基本的に静止状態に維持される一方、ビームPBに付与されたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静止露光)。次に、基板テーブルWTは、異なるターゲット部分Cを露光できるように、X方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で結像されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
2.スキャンモードでは、支持構造MT及び基板テーブルWTは、同期してスキャンされる一方、ビームPBに付与されたパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち、単一動的露光)。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPLの拡大(縮小)倍率及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向の)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分(スキャン方向における)高さが決まる。
3.別のモードでは、支持構造MTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動又はスキャンさせながら、ビームPBに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、パルス状放射源を使用して、基板テーブルWTが移動させるごとに、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、上述のタイプのプログラマブルミラーアレイのようなプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に利用できる。
[00107] 上述した使用モードの組み合わせ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
[00108] パターンフィーチャが意図した通りに基板に適用されていることを保証するため、それらのパターンの適用に用いられるリソグラフィ装置内の又はリソグラフィ装置の収差を少なくとも部分的に補正することが望ましい場合がある。パターンフィーチャ(又はパターンフィーチャの特性)が収差に対して又は収差の変化に対してどのように反応するかは、収差感度として定義できる。
[00109] リソグラフィ装置の構成を制御することによってリソグラフィ装置内の又はリソグラフィ装置の収差を補正することは既知である。リソグラフィ装置の構成の制御は、リソグラフィ装置のレンズ機構の1つ以上の要素を移動させること、又はレンズ機構の1つ以上の部分を加熱することを含み得る。この制御は、リソグラフィ装置のレンズ装置の1つ以上の要素を変形させることを含み得る。1つ以上の要素を移動させることは、そのような要素の位置又は向きを変えることを含み得る。リソグラフィ装置の構成の制御は、この代わりに又はこれに加えて、パターニングデバイス又はパターニングデバイスの一部を移動させること、放射ビームの波長を調整すること、又は光路で用いられる液体の光学特性を変化させることを含み得る。
[00110] 正常な生成プロセスの条件(例えば、加熱の効果、又は理論に従って実施されない光学表面)から生じる収差を、既存の収差又は固有収差と呼ぶことがある。
[00111] 固有収差の他に収差を意図的に誘発し、この意図的に誘発した収差がリソグラフィ特性に与える効果を測定することによって、リソグラフィ特性の収差感度を決定することが知られている。収差を意図的に誘発するには、例えばレンズ装置の要素を移動させるか又は加熱する等、固有収差を補正する文脈において既知である方法の任意のものを用いてリソグラフィ装置を制御すればよい。
[00112] 以下の考察において、収差を誘発すること又は誘発された収差に言及する場合、これは、固有収差の他に少なくとも1つの収差成分を生じるようにリソグラフィ装置を制御することを表し得る。収差を誘発することは、放射ビームを変化させること、例えば放射ビームの一部の光路長を変化させることによって、正常な生成プロセスで生じる放射ビームとは異なる放射ビームにすることを含み得る。
[00113] 収差は、複数の収差成分の組み合わせとして表現することができる。これらの収差成分は、完全な基底関数集合の線形結合として表現できる。特に便利な集合は、単位円上で定義される直交多項式集合を形成するゼルニケ多項式である。リソグラフィ装置の収差は、ゼルニケ係数の集合として測定し表現することができる。
[00114] できる限り1つのみの非ゼロのゼルニケ係数によって記述できる収差成分を誘発することができる。そのゼルニケ係数の変化に対する感度は、例えば、ゼルニケ係数の異なる大きさを用いて異なるウェーハ又は1つのウェーハの異なる部分を露光することによって決定できる。ゼルニケ多項式は直交多項式であるので、ある範囲の収差成分に対するリソグラフィ特性の感度は、複数のゼルニケ係数(必要に応じて結合され得る)の各々に対する感度を求めることによって確定できる。
[00115] 本発明の実施形態では、単一ウェーハの異なるフィールドで異なる収差成分を誘発し、各収差成分に対する感度を決定することにより、単一ウェーハ上で多数の感度を測定する。いくつかの実施形態では、各収差成分を特定のゼルニケ係数によって表現することができ、ゼルニケ係数の大きさがターゲット部分内の位置に応じて変化するように収差成分を適用する。そのような特定のゼルニケ係数の大きさの変化を、ゼルニケ傾斜と呼ぶことができる。
[00116] 本発明の実施形態では、生成時(例えばカスタマのウェーハの製造時)に用いられるメトロロジーターゲットと一致するメトロロジーターゲット、並びに生成時に用いられる条件と一致する露光、照明、及び処理条件のような条件について、特性(例えばオーバーレイ)が測定される。収差に対するメトロロジーターゲット特性の測定された感度は、生成時に生じ得る感度を表すと考えることができる。
[00117] メトロロジーターゲットは、例えばμDBOターゲットとすることができる。各μDBOターゲットは、第1のリソグラフィ層に適用された格子フィーチャと、第2のリソグラフィ層に適用された別の格子フィーチャと、を含む。第1の層が処理された(例えばエッチングされた)後に、第2の層が適用される。
[00118] 他の実施形態では、メトロロジーターゲットでないターゲット、例えば各々がデバイス又は回路コンポーネントの一部を含むターゲットについて、特性が測定される。
[00119] 図2は、本発明の一実施形態の方法の概要を表すフローチャートである。図2では2つのターゲットが参照されるが、実際には任意の数のターゲットを使用できる。図2の実施形態では、ターゲットはμDBOメトロロジーターゲットである。他の実施形態では、他の任意の適切なタイプのターゲットを使用することができる。
[00120] 段階100では、第1のメトロロジーターゲットの一部である第1の格子フィーチャを第1の層に適用する。収差成分の第1の値、例えば所与のゼルニケ係数(例えばZ7)の第1の大きさを用いて第1の格子フィーチャが適用されるように、リソグラフィ装置の構成を制御する。段階102では、第2のメトロロジーターゲットの一部である第2の格子フィーチャを第1の層に適用する。収差成分の第2の値(例えばZ7の第2の大きさ)を用いて第2の格子フィーチャが適用されるように、リソグラフィ装置の構成を制御する。第1及び第2のフィーチャは、基板の1つのフィールド上の異なる位置に適用される。リソグラフィ装置の構成を制御してフィールド内でゼルニケ傾斜を誘発して、第1のメトロロジーターゲットの位置におけるゼルニケ係数の大きさが第2のメトロロジーターゲットの位置におけるゼルニケ係数の大きさとは異なるようにする。第1の層は、段階104及び106を実行する前に現像されエッチングされる。
[00121] 段階104では、第1の格子フィーチャの上の第2の層に、第1のメトロロジーターゲットの別の格子フィーチャを適用する。段階106では、第2の格子フィーチャの上の第2の層に、第2のメトロロジーターゲットの別の格子フィーチャを適用する。図2の実施形態では、段階104及び106では収差成分を誘発しない。
[00122] 段階104及び106の後、第2の層のレジストを現像する。
[00123] これによって得られた第1及び第2のメトロロジーターゲットは、第1の層に格子フィーチャを適用する際に用いた収差成分の大きさが異なっている。
[00124] 段階108では、第1のメトロロジーターゲットのオーバーレイを測定する。段階110では、第2のメトロロジーターゲットのオーバーレイを測定する。メトロロジーターゲットの一方の格子フィーチャは誘発収差を用いて適用し、そのメトロロジーターゲットの他方の格子フィーチャは誘発収差を用いずに適用することにより、メトロロジーターゲットのこれら2つの格子フィーチャに不整合が生じ、従ってオーバーレイが測定されることが予想できる。また、収差成分が大きくなると、測定されるオーバーレイが大きくなることも予想できる。
[00125] 段階112では、第1のメトロロジーターゲットの測定オーバーレイを、第2のメトロロジーターゲットの測定オーバーレイと比較する。第1及び第2の格子フィーチャに適用された収差成分の大きさの差は既知である。2つのメトロロジーターゲット間のオーバーレイの差をこの大きさの差と比較することで、収差成分の大きさの変化に対するオーバーレイの感度を決定できる。
[00126] 実際には、本発明のほとんどの実施形態は、各収差成分について3つ以上のターゲット、及び収差成分の3つ以上の値を使用する。例えば、収差成分の3、4、5、又はそれ以上の値を誘発することができる。収差成分の異なる値を1つのフィールド内で誘発してもよく、又は、代替的な実施形態では、収差成分の異なる値を異なるフィールドで誘発してもよい。例えば、あるフィールドを全体的に第1の大きさのZ7を用いて露光し、別のフィールドを全体的に第2の大きさのZ7を用いて露光することができる。
[00127] 収差成分のいくつかの異なる値を用いて、オーバーレイ対収差成分のグラフを作成できる。いくつかの実施形態では、オーバーレイと収差成分との間の線形関係が想定される。
[00128] いくつかの実施形態では、収差成分の各値で、いくつかのターゲットを露光する。いくつかのターゲットのオーバーレイ測定は、平均化するか、又は他のやり方で結合することができる。
[00129] 図2のプロセスは、複数の異なる収差成分(例えば異なるゼルニケ係数)の各々で実行することができる。異なる収差成分を異なるフィールドに対して使用できる。例えば、あるフィールドの露光において第1のゼルニケ係数の値の変動を使用し、別のフィールドの露光において第2の異なるゼルニケ係数の値の変動を使用することができる。
[00130] 図2の実施形態では、第1の層にフィーチャを適用している間は収差を誘発し、第2の層にフィーチャを適用している間は収差を誘発しない。他の実施形態では、第1の層では収差を誘発せず、第2の層では収差を誘発する。更に別の実施形態では、双方の層に対して収差を誘発することができる。第1の層にターゲットの第1のフィーチャを適用している間は、第2の層にターゲットの別のフィーチャを適用している間とは異なる値の収差成分を誘発することができる。
[00131] 第1及び第2のメトロロジーターゲットの1つ又は複数のフィールド以外の基板の特定のフィールドを、第1又は第2の層のいずれにおいても収差なしで露光することができる。そのようなフィールドを参照フィールドと呼ぶことができる。そのようなフィールドを用いて、既存のレンズフィンガプリント(感度の決定のために誘発されたのではない既存の収差)を補正できる。そのような補正プロセスについては、図3の実施形態を参照して以下で説明する。
[00132] 図2の実施形態は、2つのターゲットの観点で記述される簡単な例である。図3は、1つのウェーハ上で多数の異なる収差成分に対する感度を決定する際に多くのターゲットが用いられる別の実施形態の方法の概要を示すフローチャートである。
[00133] 図3の実施形態では、例えば図1のリソグラフィ装置のようなリソグラフィ装置を用いて、パターニングデバイスMAを介して基板Wのターゲット部分C上に放射ビームPBを投影することにより、基板上にメトロロジーターゲット及び所望のリソグラフィフィーチャを形成する。図3の実施形態において、パターニングデバイスは、例えば集積回路の生成時のような生成時にカスタマによって用いられるレチクルである。レチクルは生成メトロロジーマーカ及びパターニングフィーチャを含み、これらが生成時に用いられて、基板上に通常のレイアウトのメトロロジーターゲット及び所望のリソグラフィフィーチャを形成する。カスタマの通常の(高密度の)レイアウトのフィーチャが用いられる。
[00134] 各ターゲット部分C(フィールドと称することもある)上に、複数のメトロロジーターゲットが形成される。本実施形態では、各フィールドに13のメトロロジーターゲットが形成される。メトロロジーターゲットは、全て同じタイプのメトロロジーターゲット、すなわちμDBOターゲットである。各μDBOターゲットは、第1の層に適用される格子フィーチャと、第2の層に適用される別の格子フィーチャと、含む。各格子フィーチャは、相互に異なる方向に延出する格子を含む多数の格子を含み得る。各格子フィーチャのサイズは、例えば約10μm×10μmであり得る。他の実施形態では、例えばボックス内ボックスターゲットのような異なるタイプのメトロロジーターゲットを使用してもよい。
[00135] 基板、露光条件、処理条件、及びその他の条件は、例えば集積回路の生成時のような生成時にカスタマによって用いられるものと同一である。従って、図3の方法で得られる異なる収差成分に対する測定感度は、生成時に測定されるカスタマのメトロロジーターゲットの感度を表し得る。
[00136] 段階200から段階206は、第1の層(集積回路の任意の層であり得る)の露光及び処理に関連する。第1の層は、複数のフィールドの各々を順番に露光することによって露光される。層を露光するプロセスは、カスタマ露光レシピによって制御される。必要な収差を含むサブレシピ(subrecipe)をカスタマ露光レシピに添付することによって、収差傾斜がカスタマ露光レシピに追加される。多数の画像を規定することによって、多数の収差成分を導入することができる。図3の実施形態では、以下で記載するように、異なるフィールドには異なる収差成分を適用する。
[00137] 図3の実施形態では、各フィールドにおいてスリットをスキャン方向にスキャンすることにより、露光を実行する。
[00138] 段階200では、第1の層のフィールドのいくつかを、収差を誘発することなく露光する。(それにもかかわらず、意図的に誘発されたのではない既存の収差が存在し得る。そのような既存の収差は以下で記載するように補正することができる。)
[00139] 段階202では、リソグラフィ装置の構成を制御して、例えばZ26のような第1のゼルニケ係数のフィールド内変動を誘発する。他のゼルニケ係数は誘発しない。
[00140] 第1のゼルニケ係数の誘発したフィールド内変動を用いて、フィールドセットをそれぞれ露光する。各フィールドについて、そのフィールド内の異なる格子フィーチャは、異なる大きさの第1のゼルニケ係数を用いて適用される。これは、異なる格子フィーチャがそのフィールド内の異なる位置で適用され、第1のゼルニケ係数の大きさがフィールド内の位置と共に変動するからである。(他の実施形態では、メトロロジーターゲットのフィーチャは格子フィーチャでない場合がある。)
[00141] 本実施形態において、収差の大きさは、スリットのスキャン方向において一定であるが、フィールドの横断方向で(すなわち、スリットの長さ寸法に沿って)変動する。
[00142] 次いで、リソグラフィ装置の構成を制御して、第1のゼルニケ係数(例えばZ26)の誘発した変動を除去し、別の異なるゼルニケ係数(例えばZ20)のフィールド内変動を誘発する。新しいゼルニケ係数の誘発したフィールド内変動を用いて、フィールドセットをそれぞれ露光する。
[00143] 引き続きリソグラフィ装置の構成を制御して、更に別の個々のゼルニケ係数のフィールド内変動を誘発する。各ゼルニケ係数でフィールドセットを露光し、これを、対象の全ゼルニケ係数でフィールドを露光するまで続ける。図3の実施形態では、9の異なるゼルニケ係数を使用し、これらのゼルニケ係数の各々について、そのゼルニケ係数のフィールド内変動を用いて第1の層の3つのフィールドを露光する。異なる実施形態では、各ゼルニケ係数について任意の数のフィールドを使用することができる。1フィールド当たり任意の数のメトロロジーターゲットを使用できる。必要なだけの数のメトロロジーターゲットで感度を測定することができる。
[00144] 段階204では、リソグラフィ装置の構成を制御して、誘発した収差を除去し、第1の層のフィールドの最終セットを、誘発収差なしで露光する。
[00145] 段階206では、カスタマの標準的な処理を用いて第1の層を現像しエッチングする。第1の層の現像及びエッチングは、生成ウェーハにおける対応する層の現像及びエッチングと同一である。
[00146] 段階208及び210は、本実施形態では第1の層に隣接している第2の層に関連する。他の実施形態では、第1の層と第2の層との間に追加の層が存在し得る。第1の層と第2の層との間にスタックが存在する場合がある。
[00147] この実施形態では、様々なゼルニケ係数のフィールド内変動を第2の層に適用するが、これは、段階200においてゼルニケ係数の変動を適用した第1の層のフィールドとは異なるフィールドに適用される。従って、第1の層又は第2の層のどちらでも収差が誘発されないフィールドがいくつか存在し、第1の層では収差が誘発されるが第2の層では誘発されないフィールドがいくつか存在し、第2の層では収差が誘発されるが第1の層では誘発されないフィールドがいくつか存在する。本実施形態では、第1の層及び第2の層の双方で収差が誘発されるフィールドは存在しないが、他の実施形態ではそのようなフィールドが存在し得る。
[00148] いくつかの実施形態では、一方の層のみ(第1又は第2)からの感度が必要である。収差は一方の層のみで誘発され、他方の層は誘発収差なしで露光される。
[00149] 段階208では、第2の層のフィールドのいくつかを、誘発した収差なしで露光する。段階208で露光するフィールドは、段階200において収差なしで露光した第1の層のフィールドのいくつかを含むが、それら全ては含まない。(段階200において収差なしで露光した第1の層のフィールドのいくつかは、段階210で第2の層に誘発される収差を有する。)
[00150] 段階200及び段階208の双方において収差なしで露光したフィールドを参照フィールドと呼ぶことができる。参照フィールドに形成されるターゲットを参照ターゲットと呼ぶことができる。各層について、参照フィールドは、収差を誘発する前に露光される。従って、参照フィールドを用いて、誘発した収差でないシステム内の収差を決定することができる。これについては後述する。
[00151] 段階210では、リソグラフィ装置の構成を制御して、9のゼルニケ係数の各々で順番にフィールド内変動を誘発し、これら9のゼルニケ係数の各々で3つのフィールドを露光する。段階210において収差がある状態で露光するフィールドは、第1の層で収差を誘発しなかったフィールドである。段階210において収差を誘発する第2の層のフィールドは、段階202において収差を誘発した第1の層のフィールドとは異なる。
[00152] 段階212では、誘発収差なしで最終フィールドを露光する。段階212で露光する最終フィールドは、段階206において露光した第1の層の最終フィールドと同一である。最終フィールドに形成されるターゲットを、別の参照ターゲットと呼ぶことができる。全ての収差を誘発し、システムが誘発収差なしの状態に戻った後に、各最終フィールドの各層が露光される。最終フィールドの測定を用いて、収差の誘発中にシステムの固有収差が変化したか否かを調べることができる。これについては後述する。
[00153] 段階214では、第2の層のレジストを現像する。
[00154] 図4は、図3の実施形態における基板(ウェーハ50)のターゲット部分(フィールド52)に適用された収差成分を表す概略図である。ウェーハ50のフィールド52は、図4においてボックスとして表されている。各ボックスの下部は第1の(下)層を表し、各ボックスの上部は第2の(上)層を表す。
[00155] ボックスの上部又は下部のダッシュは、その上層又は下層で収差が誘発される前に、その層が収差なしで露光されたことを示す(すなわち、図3の段階200又は208)。所与のボックス内に2本のダッシュが存在する場合、そのフィールドは参照フィールドである。
[00156] ボックスの上部又は下部のZ数(例えばZ2、Z10、Z27)は、ボックス内のZ数に対応する収差成分を用いて上層又は下層を露光したことを示す(例えば、ボックスの上部のZ26は、Z26係数のフィールド内変動を上層で誘発したことを示す)。
[00157] ボックスの上部及び下部のREは、そのフィールドが、別の参照フィールドとも呼ばれる最終フィールドであることを示す。最終フィールドの各層は、その層で収差が誘発され、システムが誘発収差なしの状態に戻った後に、露光される(すなわち、図3の段階206及び212)。
[00158] 図3の段階216では、例えば回折ベースのオーバーレイ(μDBO)メトロロジーツールのような標準的なオーバーレイメトロロジーツールにウェーハをロードする。このメトロロジーツールを用いて、各フィールドにおける各メトロロジーターゲットのオーバーレイを測定する。各メトロロジーターゲットは、第1の層における格子フィーチャ及び第2の層における別の格子フィーチャを含む(第1の層は処理済みであり、第2の層はフォトレジストである)。これらの格子フィーチャ間のオーバーレイを、干渉計法を用いて測定する。オーバーレイ測定は記憶される。
[00159] 他の実施形態では、異なるタイプのメトロロジーターゲットを使用することができる。異なるメトロロジーツール及び/又は測定方法を用いてメトロロジーターゲットを測定してもよい。
[00160] 図5は、図4のウェーハにオーバーレイ測定結果を重ねて概略的に示す。誘発した収差は図4のものと同一である。図5では、収差のみ(例えばZ26)を示し、どの層に収差が適用されているかは示していない。しかしながら、図4の対応するフィールドを参照することによって層を見出すことができる。
[00161] 各フィールドは13のメトロロジーターゲットを有する。各メトロロジーターゲットの位置に2つの矢印を重ねて示し、そのターゲットについて2つのウェーハ(誘発した収差は同一である)で得られたオーバーレイ測定結果を表している。各矢印の長さ及び方向は、測定されたオーバーレイの大きさ及び方向を表す。
[00162] 測定されたオーバーレイは、いくつかのメトロロジーターゲットでは他のものよりも著しく大きいことがわかる。ゼルニケ係数の変動が適用されたフィールドでは、オーバーレイは一般に、フィールドの中心部のメトロロジーターゲットよりもフィールドのエッジ部のメトロロジーターゲットの方が大きい。これは、適用されたゼルニケ係数の大きさが、フィールドの中心部よりもフィールドのエッジ部の方が大きいからである。
[00163] いくつかのゼルニケ係数では、他のものよりもオーバーレイが大きくなる。図示する例では、平均して、Z8の変動を用いて露光したフィールドよりも、Z20の変動を用いて露光したフィールドの方が、大きいオーバーレイが測定されている。
[00164] 図6は、所与のゼルニケ係数のオーバーレイの結果を表す図である。この特定の例では、ゼルニケ係数はZ7である。13のメトロロジーターゲットについて測定されたオーバーレイの結果が、ここでも矢印で表されている。図6では、3つの異なるフィールドからの結果が重ねて示されている。これら3つのフィールドの各々は、フィールド全体に対してゼルニケ係数の同一の変動を用いて露光され、フィールド内の対応する位置にメトロロジーターゲットを有する。図5の場合と同様、2つのウェーハからの結果を重ねて示す。従って、フィールド内の13のメトロロジーターゲット位置の各々について、6の矢印が示されている。
[00165] 図6において、ゼルニケ係数の変動の方向は図の左側から右側である。フィールドの中央部では、ゼルニケ係数の値はほぼゼロである可能性があり、小さいオーバーレイが測定される。ゼルニケ係数の大きさはフィールドの辺に向けて増大し、2つの辺は逆の符号のゼルニケ係数を有する。一般に、ゼルニケ係数が大きくなると、測定されるオーバーレイは大きくなる。
[00166] 図7は、図6に表されている6つのフィールド(2つのウェーハの各々で3つずつのフィールド)内の各メトロロジーターゲットについて、測定されたオーバーレイ(垂直軸、単位はnm)対位置(水平軸、単位はmm)のグラフである。位置は、スリットの長さ寸法に沿ったメトロロジーターゲットの位置であり、ゼロはスリットの中心である。位置は、ゼルニケの変動と同じ方向で測定されている。オーバーレイは、スリットフィンガプリントとしてプロットされ、直線に適合されている。適合ラインは、オーバーレイ傾斜(位置によるオーバーレイの変化)を表している。
[00167] 段階218では、メトロロジーターゲットの測定オーバーレイ(例えば、図4、図5、及び図6に表されたオーバーレイ)を用いて、誘発した収差成分の各々の変化に対するメトロロジーターゲットのオーバーレイの感度を決定する。
[00168] 最初に、参照フィールドの測定オーバーレイを用いて、参照レンズフィンガプリントを決定する。参照レンズフィンガプリントは、既存の固有収差によって生じたフィールド内のオーバーレイのプロファイルを表す。固有収差は、正常な生成において発生する収差であり得る。参照レンズフィンガプリントは、参照フィールドからのオーバーレイを平均化することによって得られる。参照レンズフィンガプリントは、13のメトロロジーターゲット位置の各々の固有オーバーレイ値を含む。
[00169] 背景雑音を除去するには、参照レンズフィンガプリントを測定するために、補正(誘発した収差)なしのフィールドを用いる。フィンガプリントを用いてレンズの既存の収差を除去して、誘発した傾斜のみがオーバーレイフィンガプリントに残るようにする。
[00170] 一度、参照レンズフィンガプリントが得られたら、参照レンズフィンガプリントの固有オーバーレイ値を、他のフィールド(参照フィールドでない)の測定オーバーレイから減算して、固有収差を補正する。他の実施形態では、固有収差を補償するための任意の適切な方法を用いることができる。
[00171] 感度を決定するため、パターンシフトと収差との間の関係は線形である(すなわち、感度は一定である)と仮定する。他の実施形態では、パターンシフトと収差との間に非線形の関係を仮定し、それに応じて以下の計算を調整する。
[00172] 一般に、この関係が線形である場合、パターンシフトによって誘発されるオーバーレイは以下のように算出され得る。
オーバーレイ=Σ[si (layer2)−si (layer1)]*Zi(全ての奇ゼルニケ多項式を合計)
ここで、Ziは数iのゼルニケであり、si (layer1)は第1の層のZiに対する感度であり、si (layer2)は第2の層のZiに対する感度である。合計は、存在する全ての奇(odd)ゼルニケ多項式を対象とする。
[00173] 本実施形態の方法では、所与のフィールドについて、単一のゼルニケ係数の変動が1層のみで誘発されるので、平均参照フィールドオーバーレイを減算して参照レンズフィンガプリントを除去した後、オーバーレイの方程式は以下に変換される。
オーバーレイ=si*Zi=si*誘発した傾斜
[00174] 所与の収差成分(例えば所与のゼルニケ係数)について、感度は、オーバーレイデータに対する直線適合を実行することによって計算される。
si=オーバーレイ傾斜/誘発した傾斜
ここで、誘発した傾斜は、フィールド内でのゼルニケ係数の誘発した変動である。誘発した傾斜は、リソグラフィ装置を制御することによって適用したゼルニケ係数変動から既知である。各メトロロジーターゲットにおけるオーバーレイはメトロロジーツールによって測定されており、メトロロジーターゲットの位置は既知である。従って、オーバーレイ傾斜(フィールド内の位置に応じたオーバーレイの変動)を計算することができる。この実施形態では、適用されるゼルニケ係数が単一フィールド内で変動するので、オーバーレイデータはフィールド内オーバーレイデータとして記述できる。
[00175] 再び図7に移ると、図7のグラフ上のポイントは、関連フィールド内のメトロロジーターゲットの異なる位置におけるオーバーレイの個々の測定結果であり、ポイントに適合させたラインは、オーバーレイ傾斜(位置に応じたオーバーレイの変化)を表している。位置に応じた収差の変化は既知であるので、オーバーレイ傾斜を誘発したゼルニケ傾斜で除算することによって感度を計算することができる。
[00176] 誘発した収差成分の各々について感度の決定を繰り返す。図3の実施形態では、各収差成分に対する感度を決定する際に、6つのフィールド(2つのウェーハの各々で3つずつのフィールド)からの結果を用いる。第1の層の収差に対する感度及び第2の層の収差に対する感度を別個に決定することができる。例えば、第1の層のZ20変動に対する感度は、第2の層のZ20変動に対する感度とは異なる可能性がある。
[00177] 最終フィールド(図4及び図5のRE)からのオーバーレイの結果を用いて、ウェーハの露光中に固有収差が変化したか否かを確定することができる。最終フィールド(最後に露光されたもの)からのオーバーレイ結果を参照レンズフィンガプリントと比較して、オーバーレイに変化があったか否かを判定できる。リソグラフィ装置の構成は、ある誘発した収差成分から別のものへ変化するのに数秒かかることがあるので、ゼロ又はほぼゼロのオフセットの最終補正を実行して、例えば露光中のレンズ加熱又は急激なドリフト等、光学コラム安定性について調べる。
[00178] 本発明の方法を用いたウェーハの露光時間は、このウェーハの生成時の通常の露光時間よりも長くなり得る。これは、リソグラフィ装置の構成を調整して、異なるフィールドに対して異なるゼルニケ多項式を提供しなければならないからである。この調整によって露光時間が増大し、生成時には1分かからない露光が本発明の方法を用いると数分かかる可能性がある。従って、状況によっては、本発明の方法を用いて露光を実行する場合の方が、生成時にウェーハを露光する場合よりもレンズ加熱が顕著になり得る。最終フィールドからのオーバーレイ結果を用いて、そのような余分な加熱によって追加の収差が生じたか否かを判定することができる。
[00179] 参照フィールドと最終フィールドとの間のオーバーレイのオフセットが小さい場合、レンズ加熱挙動の良好なモデルが利用できるので、このオフセットは補正され得る。参照フィールドと最終フィールドとの間でオーバーレイの大きいオフセットが測定された場合、テストを繰り返すことが好ましい場合がある。
[00180] 図3の方法を用いることによって、生産時(on−product)収差感度が測定される。測定される感度は、生成時に用いられるタイプのメトロロジーターゲットの感度であり、特定のカスタマ条件の効果を含む。測定される感度は、シミュレーションできない可能性のあるウェーハ処理による効果を含み得る。単一のウェーハ上で多数の感度を測定できる。この単一のウェーハは製造ラインを介して処理され得る。カスタマの通常の(高密度の)レイアウトを使用できる。単一フィールド内の傾斜と傾斜との関係すなわちゼルニケとオーバーレイとの関係によって、感度測定を得るために必要なターゲット数を最小限に抑えることができる。図3の方法は、製造プロセスに一致するカスタマレチクル及び露光条件を使用する。メトロロジー時間は、例えば既存のメトロロジーターゲット及びメトロロジーツールを用いることによって最短に抑えることができる。
[00181] この測定された感度によって、(事後にオフセットを測定するのとは対照的に)フィードフォワードでAPCに用いるオフセットを予測することを目的としたメトロロジーターゲットとデバイスフィーチャとのオフセットのシミュレーションが可能となり得る。
[00182] メトロロジーターゲットとデバイスフィーチャとの間のオーバーレイ感度に不一致がある場合、APCにオフセットを加えてそのような不一致を補償することができる。感度の不一致が大きい場合、メトロロジーツールによって(メトロロジーターゲットを測定することによって)測定されるオーバーレイは、デバイスフィーチャの実際のオーバーレイに一致しない。その場合、測定されたオーバーレイを使用すると、オーバーレイを補正するのではなく、デバイスフィーチャにオーバーレイ誤差を招く恐れがある。既知の方法では、カスタマは、メトロロジー−デバイス間のオフセットを計算するため、エッチング後に(時として破壊的方法を用いて)オーバーレイを測定しなければならない場合がある。しかしながら、図3の方法を使用することで、そのようなオフセットを感度及びスキャナからのデータを用いて予測することが可能となり得る。オフセットが予測できる場合、エッチング後の測定を取得することなくAPCを補正することが可能となり得る。
[00183] 上述したように図3の方法を用いることで、収差感度の決定はいっそう簡単かつ実用的となり得る。図3の方法は、メトロロジーターゲット精度最適化のような研究開発の目的に用いることができる。図3の方法は、レンズ収差によるオーバーレイ性能低下の根本的原因の解析のために使用できる。
[00184] 多数の層における多数のターゲットの多数の感度を、生成条件下で単一のウェーハを用いて測定することができる。カスタマレシピにサブレシピを添付することによって、カスタマ(生成)レシピを最小限の変更で用いることが可能となり得る。状況によっては、オーバーレイメトロロジーに要する時間を大幅に削減することができる。
[00185] 図3の方法を用いて、レジスト内感度と、下層の処理を含む全フロー(full flow)感度とを決定して、メトロロジーツールにより測定されるターゲットに収差誘発パターンシフトが及ぼす実際の効果を把握できる。下層におけるフィーチャの感度は処理によって変化し得るので、下層を処理した後にオーバーレイを測定する方法を用いると、下層のフィーチャの特性の感度、及び全体的なメトロロジーツールの特性の感度の、より高精度の測定を得ることができる。
[00186] いくつかの実施形態では、1層のみ(上層又は下層)で感度を測定する。
[00187] オーバーレイターゲットでは、レジスト処理の層及びウェーハ処理の層の双方を測定することができる。オーバーレイターゲットの下層は処理済みであり(例えばエッチング済みであり)、上層はレジストである。また、典型的な(representative)感度を測定するため、これら2つの層の間に完全スタック(full stack)も存在し得る。
[00188] 図8は、第1の(下)層及び第2の(上)層の処理を要約する概略図である。図8の実施形態では、下層及び上層はスタックによって分離されている。段階300では、図3の段階200及び204を参照して記載したように下層を露光する。いくつかのフィールドは収差なしで露光し、いくつかは異なる収差で露光する。段階302では、下層を現像する。段階304では、下層を処理する(例えばエッチングする)。下層306は、測定される段階では、すでにウェーハ処理が施されている。
[00189] 下層と上層との間の完全スタック310も適宜露光され処理されている。
[00190] 段階312では、図3の段階208から段階212を参照して記載したように上層を露光する。段階314では、レジストを現像する。測定される上層316は、レジスト処理のみがすでに施されている。
[00191] オーバーレイターゲットでは、下層は処理済みであり、上層はレジストである。これら2層の間の完全スタックの存在によって、生成時に生じるものを表す感度を測定することが可能となり得る。
[00192] 図3の方法は、投影レンズによって生成される画像に収差がどのように影響を及ぼすかを測定するのではなく、生成時にメトロロジーターゲットを測定することで得られるオーバーレイ測定に収差がどのように影響を及ぼすかを測定できる。
[00193] また、CD−SEM(クリティカルディメンション走査型電子顕微鏡)を用いてエッチング後にデバイスオーバーレイを測定する際に同じ方法を適用することによって、デバイス−フィーチャ感度を決定することも可能である。
[00194] 図3の実施形態では、全ての必要な収差を含むサブレシピをカスタマ露光レシピに添付することによって、ウェーハのフィールドのいくつかでゼルニケ係数の変動を誘発する。多数の画像を規定することにより、多数の収差を導入することができる。いくつかの実施形態において、ユーザは、どのゼルニケ傾斜をどのフィールドに用いるかを選択し、必要なゼルニケ傾斜をカスタマ露光レシピに追加することができる。いくつかの実施形態では、ユーザ要求に応答して自動的にゼルニケ傾斜をカスタマ露光レシピに追加できる。例えば、ユーザは処理リソースに入力を与えることで特定のゼルニケ傾斜を要求し、処理リソースはゼルニケ傾斜を適用するフィールドを選択し、これに応じてカスタマ露光レシピを変更することができる。
[00195] 1つの集積回路は多数の層を含み得る。図3の方法を用いて、それらの層におけるカスタマのメトロロジーターゲットを使用して任意の2つの層のオーバーレイを決定できる。2つの層は隣接している必要はない。図3の方法を、異なる層における異なるメトロロジーターゲットで繰り返すことができる。
[00196] 図3に関する上記の検討では、各ゼルニケ係数は独立して導入される。特定のゼルニケ係数の非ゼロの値は、他のゼルニケ係数が誘発されていない間に誘発される。しかしながら実際には、いくつかのゼルニケ係数は、他のものが寄生効果を有する間に独立して導入され得る(望ましくないゼルニケ係数の非ゼロの値も導入される)。場合によっては、寄生効果の導入は最小限であり、無視することができる。しかしながら、寄生のゼルニケ係数が大きすぎる場合、例えばZ8及びZ11の場合、全ての関与するゼルニケが測定され、感度はNの方程式の線形N変数系(linear N−variable system)を解くことによって取得され得る。クロストークの問題は、レンズモデルを使用して前もって識別することができ、自動化することができる。
[00197] 図3の実施形態では、単一のタイプのメトロロジーターゲットが用いられる。これは、生成時にカスタマによって用いられるタイプのメトロロジーターゲットである。
[00198] 代替的な実施形態では、メトロロジーターゲットは、カスタマによって通常用いられるターゲットでないメトロロジーターゲットを含み得る。これは例えば、特に収差感度測定用に選択されたメトロロジーターゲットである。メトロロジーターゲットの研究開発の目的のため、異なるタイプのメトロロジーターゲットを測定することができる。
[00199] いくつかの実施形態では、図3の方法を用いて、異なるタイプのメトロロジーターゲットの感度を測定する。一実施形態では、いくつかの異なるメトロロジーマーカを含むレチクルを用いて基板を露光することにより、いくつかの異なるタイプのメトロロジーマーカを基板上に形成する。例えば、いくつかの異なるタイプのメトロロジーターゲットが各フィールド内の多数の異なるポイントで相互に近くに配置されるレチクルを使用できる。各ゼルニケ係数に対する各メトロロジーターゲットタイプの感度を、図3の方法を用いて決定する。一例として、全てが1つのウェーハ上にあるいくつかのメトロロジーターゲットタイプの各々について、いくつかの異なる収差成分に対する感度を決定する。
[00200] 異なるメトロロジーターゲットの測定された感度を、シミュレーション又は測定されたデバイス感度と比較することができる。いくつかの実施形態では、シミュレーションされたデバイス感度と最も良く合致する感度を有するメトロロジーターゲットを、将来の使用のために選択できる。測定された感度を用いて、精度の向上(デバイスとの合致の向上)のためメトロロジーターゲットを最適化することができる。例えば、図3の方法を用いてメトロロジーターゲット感度を測定し、同一のウェーハでCD−SEMを用いてデバイス−フィーチャ感度を測定することができる。これらの感度を比較し、デバイス感度に最も良く合致する感度を有するメトロロジーターゲットを選択すればよい。
[00201] いくつかの実施形態では、感度の結果を用いてメトロロジーツールのメトロロジーレシピを最適化することができる。例えば、感度の結果を用いて、どの波長を用いるかを決定できる(例えば、デバイスフィーチャの感度に対して感度を最小限に抑えるため又は感度を合致させるため)。
[00202] 図3の実施形態では、誘発した収差はそれぞれ、ゼルニケ傾斜(所与のフィールドにおける特定のゼルニケ多項式の大きさの変化)として適用される。他の実施形態では、所与のゼルニケ多項式の単一の大きさを1つのフィールド全体を通して適用し、同一のゼルニケ多項式の異なる大きさを異なるフィールド全体を通して適用することができる。1つのフィールドの露光中にスリット全体を通してゼルニケ係数の固定値を適用できる。そのような方法は、(1フィールド内の)ゼルニケ傾斜でなく、(フィールド間の)ゼルニケオフセットと呼ぶことができる。感度を計算するため用いられるオーバーレイデータは、同一のゼルニケ係数の異なる大きさを有する異なるフィールドから取得できる。ゼルニケオフセットを用いる方法では、ゼルニケ傾斜を用いる方法に比べ、1ゼルニケ成分当たり多くのフィールドを露光する必要があり得る。これは、異なるゼルニケ多項式の各々について、多数のオフセット(従って、各々がゼルニケ係数の異なる値を有する多数のフィールド)を測定する必要があり得るからである。
[00203] 図3の実施形態において、収差は、瞳面の近くの投影レンズ内に配置された収差マニピュレータを用いて誘発され、ゼルニケ数64までの収差補正を与えることができる。収差は、収差マニピュレータの部分を選択的に加熱してそれらの部分における光路長を変えることによって誘発される。他の実施形態では、例えばレンズ機構の要素を移動又は変形させることによって、リソグラフィ装置の任意の適切な構成を制御することができる。
[00204] 異なるゼルニケ多項式を誘発する順序を最適化することで、リソグラフィ装置の構成が(例えば図3の段階202又は210で)各ゼルニケ多項式から次のものへ変化するために要する時間を最短に抑えることができる。一実施形態では、リソグラフィ装置の構成は、レンズマニピュレータの構成を変えることによって変化させる。ゼルニケの順序を最適化することで、マニピュレータプレートが各補正の間を移動するために要する時間を最短に抑えることができる。この順序付けは、最小遷移時間、最大遷移時間、全ての遷移の合計遷移時間、又は遷移時間の他の任意の特性に基づいて選択すればよい。
[00205] 半導体処理において、デバイスフィーチャのオーバーレイの制御は、ウェーハ処理後にデバイスフィーチャのオーバーレイを直接測定するのではなく、リソグラフィ露光後にメトロロジーターゲットのオーバーレイを測定することによって行われ得る。状況によっては、オーバーレイターゲットとデバイスターゲットとの間の感度の不一致のため、ターゲットオーバーレイはデバイスオーバーレイと一致しない場合がある。
[00206] メトロロジーターゲットのオーバーレイとデバイスフィーチャのオーバーレイとの間の不一致を補償するため、プロセス制御ループにオフセットを導入することができる。オフセットを用いてメトロロジーターゲットのオーバーレイとデバイスフィーチャのオーバーレイとの間の不一致を補償すると、デバイスオーバーレイの最適化及び/又は歩留まりの向上が可能となり得る。
[00207] オフセットを決定するため、フォトリソグラフィ(例えばエッチング)の後にウェーハを処理し、デバイスオーバーレイを測定することができる。デバイスオーバーレイの測定は、例えばデカプセル化(decapsulated)CD−SEMのような破壊的技法を用いることを含み得る。ターゲットオーバーレイは、例えば上述のような標準的なオーバーレイメトロロジーツールを用いた任意の適切な方法を用いて測定できる。
[00208] メトロロジーターゲットのオーバーレイとデバイスフィーチャのオーバーレイとの間のオフセットは、経時的に安定しない場合がある。従って、いくつかの既知のシステムでは、CD−SEMによる測定を定期的に実行する。CD−SEMによる測定の頻度は高い場合がある。
[00209] CD−SEMによる測定の高い頻度は、著しいウェーハ損失、高い労働コスト、及び/又はプロセス制御方法の複雑さの増大を招くことがある。ウェーハの処理及び測定に必要な時間のため、フィードバックループに遅延が生じ得る。例えば、ウェーハを測定するのに要する時間中に、この測定されるウェーハから得られる測定を考慮しないで別のウェーハが生成されている可能性がある。フィードバックループの遅延は更にプロセス制御の有効性を低減させ得る。
[00210] 図9は、計算によるオフセット予測のプロセスの概要を表すフローチャートである。図9の方法では、デバイスのオーバーレイとターゲットのオーバーレイとの間のオフセットは、測定される(例えばCD−SEMを用いて破壊的に測定される)のではなく、予測される。デバイスは、任意の適切なデバイス、デバイスフィーチャ、及び/又は回路コンポーネントを含み得る。ターゲットは、例えばμDBOターゲットのような任意の適切なメトロロジーターゲットを含み得る。他の実施形態では、ターゲットは、アライメントマーク又は他の任意の適切なターゲットを含み得る。
[00211] 図9は単一のデバイスと単一のメトロロジーターゲットとの間のオフセットの予測を表すが、実際には、複数のデバイスとターゲットの対の各々について図9のプロセスが使用され得る。
[00212] 本実施形態では、図9のプロセスの各段階はプロセッサによって実行される。プロセッサは、リソグラフィ装置の一部及び/又は制御システムの一部であり得る。他の実施形態では、任意の適切な1つ又は複数の計算コンポーネント又は1つ又は複数の装置が図9のプロセスを実行してもよい。
[00213] 概要を述べると、図9の段階400において、プロセッサはデバイスのオーバーレイを予測する。段階420において、プロセッサはターゲットのオーバーレイを予測する。段階440において、プロセッサは、段階400で予測したデバイスのオーバーレイ及び段階420で予測したターゲットのオーバーレイを用いて、デバイスのオーバーレイとターゲットのオーバーレイとの間のオフセットを予測する。予測したオフセットを用いて、例えばAPCモデルにおいてオフセットを適用又は調整するため、リソグラフィ装置のオフセットを適用又は調整することができる。
[00214] 次に、段落400のデバイスのオーバーレイの予測について詳しく述べる。図9の実施形態では、デバイスは、2つのリソグラフィ層すなわちL1及びL2上のフィーチャを含む。
[00215] 段階400は段階402から418を含む。段階402において、プロセッサは、層L1上のデバイスの第1のフィーチャのパターンシフトを決定する。パターンシフトは、レンズ収差データ及び収差感度に基づいて決定することができる。本実施形態では、パターンシフトは以下の方程式を用いて決定される。
[00216] パターンシフト=Σsi*Zi ここで、siはゼルニケZiに対する収差感度である。プロセッサは、デバイスの第1のフィーチャの収差感度の値を取得する。例えば、プロセッサは、複数のゼルニケZiの各々に対するデバイスの第1のフィーチャの感度を取得することができる。本実施形態では、プロセッサは、撮像シミュレーションから第1のフィーチャの収差感度の値を取得する。他の実施形態では、収差感度の値は、任意の適切なシミュレーション又は測定された感度値とすればよい。
[00217] プロセッサはレンズ収差データを取得する。レンズ収差データは、基板の層L1上でデバイスの第1のフィーチャが形成されている間にリソグラフィ装置に存在するレンズ収差を表すレンズ収差の値を含む。
[00218] レンズ収差の値は測定値とすることができる。測定値は、第1のフィーチャが形成される露光中に収差を測定することによって取得できる。収差の測定は、リソグラフィ装置の投影システムの波面収差を測定することを含み得る。
[00219] 本実施形態において、レンズ収差データは、層L1の露光後にエクスポートされるドライバレンズモデルからの残余(residual)を含む。ドライバレンズモデル残余は、L1の露光の完了直後にエクスポートされ、例えばサーバに記憶することができる。ドライバレンズモデル残余は、図9のプロセスが実行されるまで記憶され得る。ドライバレンズモデル残余は、算出したオフセットが必要となるまで記憶され得る。
[00220] レンズ収差データは、センサからの入力及びフィードフォワードシミュレーションに基づくものであり得る。レンズ収差データは、ロット補正、プロセス補正、及び/又はレンズ加熱を表す寄与分を含み得る。レンズ収差データは、第1のフィーチャが形成される個別の露光に特有のものである。状況によっては、各層に対して数回の露光が行われ得る。
[00221] レンズ収差データは、レンズマニピュレータからの補正を含む場合も含まない場合もある。レンズ収差は、例えば加熱のために時間と共に変化し得る。いくつかの実施形態では、予測されたレンズ収差を用いるか、又は予測もしくは測定の組み合わせを用いることができる。いくつかの実施形態では、ゼルニケのいくつかを測定し、ゼルニケの他のものをシミュレーションする。例えば、低次ゼルニケを測定し、高次ゼルニケをシミュレーションすればよい。
[00222] プロセッサは、パターンシフト=Σsi*Ziを用いてデバイスの第1のフィーチャのパターンシフトを決定する。ここで、感度siは撮像シミュレーションから取得され、収差成分Ziは、基板に第1のフィーチャが適用される露光のドライバレンズモデル残余から取得される。
[00223] 段階404において、プロセッサは、層L2上のデバイスの第2のフィーチャのパターンシフトを決定する。段階404のプロセスは段階402のものと同様であるが、第2のフィーチャの感度と、第2のフィーチャが形成される層L2の露光のレンズ収差データと、を使用する。
[00224] 本実施形態では、第2のフィーチャの感度siは撮像シミュレーションから取得される。他の実施形態では、任意の適切なシミュレーション又は測定された感度を用いることができる。レンズ収差データZiは、層L2上に第2のフィーチャが形成される露光のドライバレンズモデル残余を含む。他の実施形態では、層L2の露光中の収差を表す任意の適切なレンズ収差データを用いる。パターンシフト=Σsi*Ziを用いて、デバイスの第2のフィーチャのパターンシフトを計算する。
[00225] 図9のプロセスの段階406において、プロセッサは、(段階402からの)第1のフィーチャのパターンシフト及び(段階404からの)第2のフィーチャのパターンシフトの減算を行って、デバイスのオーバーレイの初期値を得る。オーバーレイの初期値は、第1のフィーチャのパターンシフトと第2のフィーチャのパターンシフトとの差を含む。
[00226] デバイスオーバーレイの高精度の予測を得るため、パターンシフト以外のファクタを考慮することができる。状況によっては、オフセットは、部分的にはスキャナ(レンズ)に関連し、部分的には処理に起因し得る。例えばオフセットは、部分的には感度の差に関連し、部分的にはエッチング等の処理ステップに関連し得る。状況によっては、エッチング又は他の処理は、デバイスフィーチャのオーバーレイに対して、メトロロジーターゲットのフィーチャのオーバーレイに対するものとは異なる効果を有し得る。
[00227] パターンシフトからオーバーレイを得るため、例えば、関与する層間の正しい相互作用、感度の精度、及び、パターンシフトの計算に用いられる収差が実際の露光条件を表すか否か、について考慮することができる。感度の精度は、感度のシミュレーションの改善によって及び/又は測定された感度の使用によって対応できる。上述のように、典型的な収差は、特定のフィーチャが形成される露光に特有の実際に測定した収差値を用いることで取得され得る。
[00228] 最終デバイスフィーチャの形成に関与する層間の正確な相互作用は、3つ以上の(例えば層L1及びL2より多い)層に関わる可能性がある。いくつかの実施形態では、例えばもっと小さいデバイスフィーチャサイズを用いる実施形態では、トリムマスク又はカットマスクが使用される。
[00229] 層間の正しい相互作用を決定する際に考慮されるファクタは、例えば、以下に列挙するファクタA〜Dを含み得る。
A. 例えばDRAMアクティブ層のように、回転させたフィーチャによる任意の幾何学的効果。DRAMアクティブ層は、ビットライン及びワードラインに対して回転させて印刷されることがある。回転角によって、各層でのレンズ収差による歪みが顕著に組み合わされ得る。Y歪みはX位置に影響を及ぼす可能性があり、その逆もまた同様である。DRAMにおいて、又は回転が用いられる他の状況において、フィーチャ自体は直交していない場合がある。これに対して、ゼルニケは通常、直交して測定される。状況によっては、メトロロジーターゲットが回転を含むことは困難であり得る。メトロロジーターゲットはx及びyで測定され得る。
B. トリム又はカットの効果。トリムマスク又はカットマスクが用いられる場合、トリムマスク又はカットマスクの効果がパターンシフトを変化させる可能性がある。
C. カスタマフローに適用された任意のAPCモデルを考慮することができる。収差の効果は、デバイス内にオーバーレイ誤差を導入し得る。状況によっては、ターゲットとデバイスとの間のオーバーレイの差を補償するため、APCにオフセットがすでに適用されている可能性がある。そのような既存のオフセットを、パターンシフトに基づいてオーバーレイを決定する場合に考慮できる。例えばパターンシフトを計算する場合、プロセッサは、APCモデルにより加えられたオフセットの効果を含めることができる。
D. エッチングの効果。エッチングの効果もパターンシフトを変化させる可能性がある。
[00230] 段階408において、プロセッサは、上記のポイントA〜Dのうち1つ以上の効果を決定する。本実施形態において、段階408は段階410、412、及び414を含む。段階410において、プロセッサは、デバイスの少なくとも1つの層Lnのパターンシフトを決定する。プロセッサは、デバイスの少なくとも2つの層のパターンシフトを決定し得る。段階412において、プロセッサは、ターゲットの少なくとも1つの層Lnのパターンシフトを決定する。プロセッサは、ターゲットの少なくとも2つの層のパターンシフトを決定し得る。例えばデバイス及びターゲットの各々について、プロセッサは、L1及び追加のカットマスク層のパターンシフトを決定し得る。段階414において、プロセッサは、エッチング及び幾何学的形状の効果を決定する際に、段階410の1つ又は複数のデバイスパターンシフト及び段階412の1つ又は複数のターゲットパターンシフトを用いる。
[00231] いくつかの実施形態では、段階414でエッチングモデルを用いる。他の実施形態では、撮像処理方法を用いてエッチングプロセスを模倣することができる。
[00232] エッチングの効果は、細いフィーチャの迅速なエッチング及び/又はコーナもしくはエッジの丸め(rounding)を含み得る。エッチング効果を含めると、パターンシフトが変化する可能性がある。例えば、フィーチャをL1に適用した場合のパターンシフトは、カットマスクを適用した場合及び/又はエッチングを実行した場合に変化し得る。フィーチャに対するエッチングの効果は、他のフィーチャとの近接に依存し得る。他のフィーチャとの近接はパターンシフトを生じ得る。フィーチャに対するエッチングの効果は、そのフィーチャの環境に基づいてモデル化できる。
[00233] いくつかの実施形態において、測定技法は、エッチングによって変化するフィーチャの測定を含む。例えば、フィーチャのコーナに基づいて測定を実行できる。エッチングでは、例えばコーナの丸めによってコーナの位置が変化し得る。エッチング効果は、より高精度に測定を予測するために含めることができる。
[00234] 段階416において、プロセッサは、段階408から得られたエッチング及び幾何学的形状の効果を含めることにより、段階406で得られた初期オーバーレイ値を調整する。他の実施形態では、任意の適切な効果を段階408で決定し、段階406の初期オーバーレイ値と組み合わせればよい。層間の相互作用に応じてオーバーレイを調整する別の例(20nm 6F2DRAMビットライン−アクティブの場合)が、Proc. SPIE 9426、Optical Microlithography XXVIII、942608(2015年3月18日)に記載されている。いくつかの実施形態では、エッチング及び/又は幾何学的形状の効果を決定するため、各フィーチャの相対的な幾何学的形状、測定方法、及び形状を詳細に検討する。
[00235] 段階418において、プロセッサはデバイスの予測オーバーレイを生成する。予測オーバーレイは、もしもCD−SEMを用いてデバイスを測定していたら測定されるはずのオーバーレイの予測を含み得る。予測オーバーレイを、予測デキャップオーバーレイ(predicted decap overlay)と呼ぶことができる。
[00236] いくつかの実施形態では、初期オーバーレイ値は計算しない。感度及び収差データ、又はパターンシフト値(及び、任意選択的に上記のA〜Dのいずれかのような任意の適切な効果)を用いて、直接オーバーレイの最終値を計算できる。別の実施形態では、段階402〜418のうち任意のものを省略する及び/又は追加の段階を加えることも可能である。
[00237] メトロロジーターゲットのオーバーレイの予測である図9の段階420に移る。本実施形態において、メトロロジーターゲットは、デバイスのフィーチャが形成されているのと同じ層である2つの層すなわちL1及びL2上のフィーチャを含む。
[00238] 段階420は段階422〜428を含む。段階422において、プロセッサは、第1の層L1上のターゲットの第1のフィーチャの収差感度の値を取得する。例えばプロセッサは、複数のゼルニケZiの各々に対する第1のフィーチャの感度を取得することができる。収差感度の値は、1つ以上の以前のウェーハの測定から取得した感度の値であり得る。
[00239] 図9の実施形態において、ターゲットの収差感度の値は、図3を参照して上述した方法を用いて決定された値である。図3の方法において、感度は、複数の誘発したゼルニケの各々の異なる値を用いて露光したウェーハの測定によって取得される。他の実施形態では、段階422で取得される感度値は、任意の適切なシミュレーション又は測定された感度値であり得る。
[00240] 状況によっては、撮像シミュレーションは、メトロロジーターゲットのオーバーレイを所望の精度で予測するには充分な精度でない場合がある。状況によっては、特にメトロロジーターゲットの場合は、オーバーレイの実験的な検証又は較正を実行することが望ましいことがある。本実施形態では、メトロロジーターゲットには測定された感度を使用し、デバイスにはシミュレーションされた感度を用いる。
[00241] いくつかの実施形態では、撮像シミュレーションを用いてメトロロジーターゲットの感度を取得する。いくつかの実施形態では、撮像シミュレーションと測定された収差感度の組み合わせを用いてメトロロジーターゲットの感度を取得する。
[00242] プロセッサはレンズ収差データを取得する。本実施形態において、ターゲットの第1のフィーチャのパターンシフトを決定するために段階422で用いられるレンズ収差データは、デバイスの第1のフィーチャのパターンシフトを決定するため段階402で用いたレンズ収差データと同一である。レンズ収差データは、ターゲットの第1のフィーチャ及びデバイスの第1のフィーチャの形成中にリソグラフィ装置に存在する収差を表す。他の実施形態では、異なるレンズ収差データを用いてもよい。
[00243] プロセッサは、パターンシフト=Σsi*Ziを用いて層L1上のターゲットのフィーチャのパターンシフトを決定する。ここで、感度は図3のプロセスから測定された感度であり、レンズ収差データは段階402を参照して上述したようなドライバレンズモデル残余を含む。
[00244] 段階424において、プロセッサは、段階422で説明したものと同様の方法を用いて、層L2上のターゲットの第2のフィーチャの感度値及びレンズ収差データを取得する。第2のフィーチャの感度値は、図3の方法を用いて実行した測定から取得される。レンズ収差データは、デバイスの第2のフィーチャについて段階404で用いたものと同一のレンズ収差データを含む。
[00245] 段階426において、プロセッサは、段階422で決定したターゲットの第1のフィーチャのパターンシフト及びターゲットの段階424で決定したターゲットの第2のフィーチャのパターンシフトの減算を行うことによって、ターゲットのオーバーレイの値を取得する。
[00246] 段階428において、プロセッサはターゲットの予測オーバーレイを生成する。予測オーバーレイは、ADI(Absolute Distance Interferometry:絶対距離干渉法)メトロロジーツールによってターゲットで測定されることが予測されるオーバーレイであり得る。ターゲットの予測オーバーレイを予測ADIオーバーレイと呼ぶことができる。
[00247] 本実施形態では、段階426のオーバーレイ値を調整するため他の層からの効果を用いることはない(デバイスの段階408に類似の、ターゲットに適用される段階は存在しない)。他の実施形態では、段階426のオーバーレイを調整して他の層の効果を含めることも可能である。段階426のオーバーレイの調整は、パターンシフト以外のファクタに応じて、例えば上記のファクタA〜Dのうち任意のものに応じて行えばよい。
[00248] 段階430において、プロセッサは、段階400で取得したデバイスの予測デキャップオーバーレイ及び段階420で取得したターゲットの予測ADIオーバーレイの減算を行って、ターゲット及びデバイスの予測オフセットを取得する。他の実施形態では、予測オフセットは、感度、レンズ収差、又はパターンシフトから直接得ることができる。段階440において、プロセッサは予測オフセットを出力する。
[00249] いくつかの実施形態において、予測オフセットは、図9の段階のいくつか又は全てを含むことなく、感度及び収差データから決定される。いくつかの実施形態では、図9のプロセスに追加の段階が加えられる。
[00250] 予測オフセットを用いて、スキャナ設定を操作できる。予測オフセットを用いて、例えばAPCにおけるオフセット値を変えることにより、オフセットを適用又は調整できる。
[00251] いくつかの実施形態では、ある露光からの予測オフセットを用いて、別の露光で適用されるオフセットを調整する。いくつかの実施形態では、あるウェーハからの予測オフセットを用いて、別のウェーハを露光する場合に適用されるオフセットを調整する。図9の方法は、ウェーハレベル制御のためにリソグラフィ装置内で適用することができる。いくつかの実施形態では、あるロットのウェーハからの予測オフセットを用いて、別のロットを露光する場合に適用されるオフセットを調整する。
[00252] 別の実施形態では、パターンシフト、オーバーレイ、又はオフセットのうち任意のものを予測できる。予測したパターンシフト、オーバーレイ、又はオフセットを用いて、任意のその後の層、領域、又はウェーハにおける任意の適切なパラメータを調整できる。
[00253] いくつかの実施形態では、予測したパターンシフト、オーバーレイ、又はオフセットを、大きい変化が予測される場合システムに通知するための監視ツールとして使用する。
[00254] メトロロジーデバイスとデバイスフィーチャとの間のオフセット、例えば収差に対して異なる感度を有するメトロロジーターゲット及びデバイスフィーチャによるオフセットを、図9の方法を用いて予測できる。図9の方法では、レンズ収差データ及び収差感度に基づいてデバイスフィーチャ及びメトロロジーターゲットのパターンシフトを決定し、これを用いてオーバーレイ及びオフセットを計算する。
[00255] 図9の方法において、パターンシフトの計算で用いられる収差は実際の露光条件を表す。ドライバレンズモデル残余は、露光の完了直後にエクスポートされ、算出したオフセットが必要となる時まで記憶される。オーバーレイに影響を及ぼす全ての層のデータは、後に検索するため記憶される。
[00256] デバイスフィーチャの予測オーバーレイをメトロロジーターゲットの予測オーバーレイと組み合わせて用いて、デバイスフィーチャとメトロロジーターゲットとの間のオフセットを予測する。オフセットを予測する(例えば、測定されたオフセットのみに頼るのではなくオフセットを予測する)ことによって、測定頻度を低下させることができる。例えば、CD−SEMによる測定頻度を低下させ得る。状況によっては、時折の抜き取り検査及び/又は検証目的の測定まで測定頻度を低下させることができる。状況によっては、オフセットを測定する(例えばCD−SEMを用いて破壊的にオフセットを測定する)ことなく、予測オフセットの変化を補償できる。
[00257] 状況によっては、予測オフセットの使用によってメトロロジーターゲットの数を減らすことができる。例えば、測定(例えばCD−SEM測定)のみを用いてオフセットを決定する場合は、露光スリット内で測定位置を極めて近接して配置する必要があり得る。予測オフセットを用いる場合は、実際のメトロロジーターゲット及び/又は測定位置の密度よりも高い密度の位置でオフセットを予測できる。場合によっては、メトロロジーターゲットのために用いる基板上の空間の割合を低下させることができる。
[00258] いくつかの実施形態では、メトロロジーターゲットオーバーレイでなく予測デバイスオーバーレイに基づくAPC補正が用いられる。いくつかの実施形態では、オフセットを考慮しない。オフセットは高精度であると見なされ得る。計算はゼロオフセットで実行され得る。
[00259] 例えば、いくつかの実施形態では以下が成り立つ。
APC補正=APCモデル(予測メトロロジーターゲットオーバーレイ)+オフセット
オフセットが高精度であると見なされる場合、APC補正を決定するための方法は、以下のように簡略化することができる。
APC補正=APCモデル(予測メトロロジーターゲットオーバーレイ)
[00260] 図10は、6F2DRAMにおけるビットライン−アクティブの計算によるオフセット予測の具体例を示すフローチャートである。図10は、アクティブ層に関連する段階(図10の左側)、アクティブ−カット層に関連する段階(図10の中央)、及びビットライン層に関連する段階(図10の右側)に分割されている。異なる層に関連する段階は破線で分割されている。破線の間にある図10の中央部は、図9の段階408に相当すると考えることができる。
[00261] 図10の段階500において、プロセッサは、アクティブ層上のデバイスのフィーチャのパターンシフトを決定する。このパターンシフトは、フィーチャが形成される露光のレンズ収差データ及び撮像シミュレーションから得られた感度を用いて決定される。
[00262] 図10の段階502において、プロセッサは、デバイスのアクティブ−カット層のパターンシフトを決定する。このパターンシフトは、カットマスクにより形成されるカットのパターンシフトを表す。このパターンシフトは、カットマスクが適用される露光のレンズ収差データ及び撮像シミュレーションから得られた感度を用いて決定される。
[00263] 段階504において、プロセッサは、例えば減算によって、デバイスのアクティブカット層のパターンシフトとアクティブ層のパターンシフトを組み合わせて、カットマスクとアクティブ層との間のオーバーレイを決定する。
[00264] 段階510において、プロセッサは、アクティブ層上のターゲットのフィーチャのパターンシフトを決定する。本実施形態において、段階510は段階500と同じレンズ収差データを使用し、感度は、メトロロジーターゲットについて測定された収差データから得られる。段階512において、プロセッサは、メトロロジーターゲットのアクティブ−カット層のパターンシフトを決定する。段階512は、段階502と同じレンズ収差データを使用し、感度は、メトロロジーターゲットについて測定された収差データから得られる。
[00265] 段階514において、プロセッサは、ターゲットのアクティブ−カット層のパターンシフト及びターゲットのアクティブ層のパターンシフトの減算を行って、カットマスクとアクティブ層との間のオーバーレイを決定する。
[00266] 段階516において、プロセッサは、段階514の結果をHVM(high volume manufacturing:大量生産)レイアウトに変換する。いくつかの実施形態では、段階510及び512のパターンシフトは、HVMレイアウトにおけるターゲットの密度よりも高い密度の位置で決定される。いくつかの実施形態では、パターンシフトは、多数のポイントで取得されたレンズ収差データを用いて決定される。HVMレイアウトへの結果の変換は、例えば補間によって行われ得る。HVMレイアウトへのレイアウト変換は、生成時に測定される位置でのみオーバーレイがモデル化されるように行えばよい。HVMレイアウトでオーバーレイを決定することによって、得られるAPCモデルは、製造プロセスで発生するものにできる限り近くなり得る。
[00267] 段階518において、プロセッサは、段階516からの計算されたオーバーレイデータに基づいてモデルを発生する。モデルの発生は生成プロセスを模倣するためのものであり、測定されたオーバーレイに基づく補正を適用できる。段階520において、プロセッサは、段階504の結果(この実施形態ではカットマスクとアクティブ層との間のオーバーレイである)及び段階518の結果の減算を行う。段階520の出力は、デバイスフィーチャ上のオーバーレイからメトロロジーターゲットオーバーレイに基づくAPCモデルを引いたものを含み得る。
[00268] 段階522において、段階520の結果をエッチングモデルに入力する。プロセッサは、APC補正後の残余オーバーレイであり得る段階520から出力されたオーバーレイに、エッチングモデルを適用する。エッチングモデルは、段階520に従ってオーバーレイが重ねられているフィーチャに対するエッチングの効果をシミュレーションする。
[00269] 段階530において、プロセッサは、段階522のエッチングモデルの出力を、(段階500で決定された)アクティブ層のパターンシフトに追加する。
[00270] 段階532において、プロセッサは、ビットライン層上のデバイスのフィーチャのパターンシフトを決定する。プロセッサは、ビットライン層のレンズ収差データ及び撮像シミュレーションから得られた感度に基づいてパターンシフトを決定する。段階534において、プロセッサは、段階530の出力及び段階532のパターンシフトの減算を行う。段階536において、プロセッサは、デバイスの予測デキャップオーバーレイを出力する。予測デキャップオーバーレイはビットライン−アクティブ間のオーバーレイである。
[00271] 段階540において、プロセッサは、ビットライン層上のターゲットのフィーチャのパターンシフトを決定する。段階542において、プロセッサは、段階510で決定したターゲットのアクティブ層のパターンシフト及び段階540で決定したターゲットのビットライン層のパターンシフトの減算を行う。段階544において、プロセッサはターゲットの予測ADIオーバーレイを出力する。
[00272] 段階550において、プロセッサは、デバイスの予測デキャップオーバーレイ及びフィーチャの予測ADIオーバーレイの減算を行ってオフセットを予測する。段階552において、プロセッサは予測オフセットを出力する。
[00273] 予測オフセットを用いて、例えば以降のウェーハ等の以降の露光で用いられるオフセットを適用又は調整できる。予測オフセットを用いて、APCにおけるオフセットを適用又は調整できる。
[00274] 図11に、一実施形態の全体的なデータフローが示されている。システムは、リソグラフィ装置600、サーバ610、及びプロセッサ620を含む。
[00275] 段階605において、リソグラフィ装置600からサーバ610にデータをエクスポートする。リソグラフィ装置からエクスポートされるデータは、収差データ、ロットIDデータ、及び層IDデータを含む。本実施形態では、各ウェーハについて、デバイス又はターゲットのオーバーレイに影響を及ぼす各層(2以上の層)の露光後に、ドライバレンズモデルからの残余をエクスポートする。
[00276] エクスポートした残余はサーバ610上のデータベースに記憶される。いくつかの実施形態では、サーバ610は製造工場に配置されている。サーバ610は、段階605でエクスポートしたデータを記憶するデータストレージ612を含む。
[00277] 段階615では、オフセットを計算するため、サーバ610からプロセッサ620にデータをエクスポートする。段階615でエクスポートされるデータは、多数の層(例えば少なくとも2つの層)の収差データ、製品タイプ、及びメトロロジーレイアウトを含む。メトロロジーレイアウトは、メトロロジーターゲットの位置を示すことができる。データは、ウェーハID、又はウェーハを照合する他の何らかの方式を含み得る。ウェーハIDは、異なるステップでウェーハを照合するために使用できる。例えば、ウェーハがあるポイントで廃棄された場合、システムは、各ステップにおいてどのウェーハにどの収差データが属しているかを知る必要があり得る。いくつかの実施形態では、段階615でエクスポートされるデータは、幾何学的情報及び/又は層相互作用情報を含む。
[00278] プロセッサ620は、図9のプロセスを実行するように構成されたオフセット予測エンジン622を含む。オフセット予測エンジンは、収差データ、製品タイプ、及びメトロロジーレイアウトに基づいてオフセットを計算する。段階625において、プロセッサからオフセットフィールドデータを出力する。オフセットフィールドデータを用いて、以降のオフセットの値を適用又は調整することができる。
[00279] 図9〜図11のいずれかの方法を用いて、収差によってデバイスフィーチャで生じるオーバーレイを、デバイス幾何学的形状、エッチング効果、及び/又は関与する全ての層間の相互作用の正確な記述に基づいて、いくつかの状況で予測することができる。デバイスフィーチャ収差感度は、撮像シミュレーションを用いて決定できる。
[00280] 収差によってメトロロジーターゲットで生じるオーバーレイは、例えば撮像シミュレーション及び測定された収差感度の組み合わせから決定される収差感度のような高精度の収差感度に基づいて、予測することができる。
[00281] オフセット計算値は、データベースに記憶された実際の露光収差データに基づいて計算できる。実際の露光収差データは、センサからの入力及びフィードフォワード計算に基づいてドライバレンズモデルを用いて計算でき、ロット補正、プロセス補正、及びレンズ加熱のような寄与分を含み得る。
[00282] 図9〜図11のいずれかの方法を、直接プロセス制御の用途に使用できる。図9〜図11のいずれかの方法を、スキャナの連続的な監視及び歩留まり低下の防止のために使用できる。図9〜図11のいずれかの方法を、保守後のスキャナの再適格性確認のために使用できる。スキャナの再適格性確認は、デバイス−メトロロジー間オフセットを測定するためにウェーハを処理する必要がない場合、より迅速になり得る。
[00283] 図9〜図11の方法についてメトロロジーターゲットを参照して記載したが、任意の適切なターゲットを使用できる。例えば、図9〜図11のいずれかの方法を用いて、アライメントマークに対する収差の効果を補正することができる。状況によっては、アライメントマークのオフセットを決定する場合、メトロロジーターゲットのオフセットを決定する場合とは異なるプロセス効果が考慮され得る。
[00284] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明は、説明した以外の方法で実施することができることが理解されよう。この説明は、本発明を限定するものではない。