JP2018204512A - エンジンの燃焼室構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】火花点火式のエンジンにおいて、燃料の霧化を促進させ、点火プラグによる着火性を向上させる。【解決手段】エンジンの燃焼室構造は、気筒2及びピストン5を含むエンジンの燃焼室を区画する燃焼室壁面を有する燃焼室構成部材と、燃焼室6内に着火部17Aが配置された点火プラグ17とを備える。燃焼室6において吸気ポート9が配置される側を吸気側、排気ポート10が配置される側を排気側とするとき、着火部17Aは、気筒軸方向視において燃焼室6の中心よりも吸気側に配置される。冠面50には、気筒軸方向視においてC字形状をなす大キャビティ52が凹設される。大キャビティ52は、少なくともその一部が燃焼室6の中心よりも排気側に位置し、C字形状の両端部に挟まれる領域の上方に着火部17Aが位置するように形成されている。【選択図】図4

Description

本発明は、火花点火式のエンジンの燃焼室構造に関する。
自動車などの車両用のガソリンエンジンでは、点火プラグを用いて燃焼室内の混合気に着火させる火花点火方式が広く採用されている(例えば特許文献1)。この種のエンジンの開発には、常にエミッションの向上という潜在的な課題がある。例えば、前記エンジンから排出される炭化水素(HC)は光化学スモッグ等の原因の一つとなるため抑制することが強く求められる。
前記エンジンから排出される炭化水素の多くは燃焼工程で燃え切らなかった燃料、いわゆる未燃燃料である。この未燃燃料の発生を抑制するには、燃焼室内に噴射した燃料を充分に霧化させたうえで点火プラグの着火を行うことが肝要となる。しかし、外気温度が低いときや、始動直後のエンジン温度が低いとき等には、燃焼室温度が比較的低く、燃料を霧化することが難しくなり、点火プラグの着火性が低下する傾向がある。
特開2016−121630号公報
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであって、火花点火式のエンジンにおいて、燃料の霧化を促進させ、点火プラグによる着火性を向上させることが可能なエンジンの燃焼室構造を提供することを目的とする。
本発明の一局面に係るエンジンの燃焼室構造は、火花点火式のエンジンの燃焼室構造であって、気筒及びピストンを含むエンジンの燃焼室を区画する燃焼室壁面を有する燃焼室構成部材と、前記燃焼室内に着火部が配置された点火プラグとを備え、前記燃焼室壁面の一部は、前記ピストンの冠面と当該冠面に対向する燃焼室天井面とで形成され、前記燃焼室天井面には、吸気ポートと排気ポートとが配置され、前記燃焼室において前記吸気ポートが配置される側を吸気側、前記排気ポートが配置される側を排気側とするとき、前記着火部は、気筒軸方向視において前記燃焼室の中心よりも吸気側に配置され、前記冠面には、気筒軸方向視においてC字形状をなすキャビティが凹設され、前記キャビティは、少なくともその一部が前記燃焼室の中心よりも前記排気側に位置し、前記C字形状の両端部に挟まれる領域の上方に前記着火部が位置するように形成されているものである。
一般に、燃焼室においては、吸気側よりも排気側の方が高温となる。そのため、上記の燃焼室構造によれば、比較的高温の排気側で充分に霧化された混合気が、ピストンの冠面に形成されたキャビティのC字形状に沿って点火プラグの着火部に運ばれる。特に、排気側に対して相対的に温度の低い吸気側に点火プラグの着火部が配置されていることで、その温度差により着火部へ向かう混合気の流れが促進される。つまり、点火プラグの着火部及びその周辺に良質の混合気を効率良く集めることができ、これにより、点火プラグによる着火性を高めることが可能となる。
上記の燃焼室構造においては、前記キャビティの前記C字形状の両端部のうち、少なくとも一方側の端部は、前記着火部に向かうスロープ状に形成されているのが好適である。
この燃焼室構造によれば、キャビティの端部に段差が形成されて混合気の流れが妨げられることを回避できる。そのため、排気側で霧化された混合気を、キャビティのC字形状に沿ってより円滑に着火部に運ぶことが可能となる。
上記の燃焼室構造においては、前記燃焼室天井面に、前記燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射弁が配置され、前記キャビティを第2キャビティとしたときに、前記冠面のうち、前記第2キャビティの前記C字形状の両端部に挟まれる領域に、当該第2キャビティよりも容積が小さい第1キャビティが形成され、前記燃料噴射弁は、前記ピストンが上死点位置又はその近傍にあるときに、前記第1キャビティの方向及び前記第2キャビティの方向の双方へ燃料を噴射可能であるのが好適である。
この燃焼室構造によれば、ピストンが上死点位置又はその近傍にあるときに燃焼室内に直接燃料が供給され、その直後に点火プラグによる着火が行われる場合でも、高速燃焼を有利に実現させることができる。すなわち、第1キャビティの方向に噴射された比較的少量の燃料により着火が行われることで火種が形成され、この火種に対して、第2キャビティに沿って運ばれる良質の混合気が与えられる。これにより、第1キャビティで発生した火炎(火種)が第2キャビティ内へ火炎伝播することによって、急速に第2キャビティ内の混合気が燃焼する。従って、燃焼室全体に火炎を高速で拡大させ、燃焼室空間の全体を利用した均質燃焼を実現させることができる。
なお、上記の燃焼室構造において、前記燃料噴射弁は、気筒軸方向視において、前記第2キャビティに取り囲まれる領域の中心又はその近傍位置に配置されているのが好適である。
この燃焼室構造によれば、第1キャビティの方向及び第2キャビティの方向の双方に同等のタイミングで素早く燃料を噴射させることできる。そのため、点火プラグによる着火後の燃焼室全体への火炎の高速拡大に寄与するものとなる。
上記の燃焼室構造において、前記点火プラグは、前記ピストンが上死点位置を過ぎた後に着火するものであり、前記冠面は、前記点火プラグの前記着火部よりも気筒軸方向視において反排気側となる領域に、前記燃焼室天井面に対応する形状を有しかつ前記ピストンの下降に伴い前記燃焼室内に逆スキッシュ流を形成する逆スキッシュ流生成部を有するのが好適である。
この燃焼室構造によれば、逆スキッシュ流によって吸気側に引き寄せられる、混合気フローが形成される。この混合気フローは、C字形状のキャビティ(第2キャビティ)に沿って点火プラグの着火部に向かう。そのため、着火部及びその周辺に良質の混合気を効果的に集めることができ、点火プラグによる着火性をより一層高めることが可能となる。
本発明によれば、火花点火式のエンジンにおいて、燃料の霧化を促進させ、点火プラグによる着火性を向上させることが可能なエンジンの燃焼室構造を提供することができる。
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンの燃焼室構造が適用されるエンジンを示す概略断面図である。 図2は、図1に示されたシリンダヘッド要部の断面図である。 図3は、図1に示されたエンジンのピストンの斜視図である。 図4は、前記ピストンに対する点火プラグ及びインジェクタの配置を示す斜視図である。 図5は、前記ピストンの冠面の平面図である。 図6は、図5のVI−VI線断面図である。 図7は、図5のVII−VII線断面図である。 図8は、図5のVIII−VIII線断面の展開図である。 図9は、燃焼室天井面の平面図である。 図10は、燃料噴射期間及び点火タイミングとクランク角との関係を示すタイムチャートである。 図11(A)及び図11(B)は、燃焼室における混合気の燃焼状況を説明するための平面図である。 図12は、燃焼室における混合気のフローを説明するための斜視図である。 図13(A)及び図13(B)は、燃焼室における混合気の燃焼状況を説明するための平面図である。 図14(A)及び図14(B)は、変形例に係る燃焼室構造の模式的な斜視図である。
[エンジンの全体構成]
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る火花点火式のエンジンの燃焼室構造を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るエンジンの燃焼室構造が適用されるエンジンを示す概略断面図、図2は、図1に示されたシリンダヘッドの要部の断面図である。図1及び図2、これら以降の図において、XYZの方向表示を付している。Z方向は気筒軸方向、Y方向はクランク軸の延伸方向、X方向はZ方向及びY方向の双方と直交する方向である。
本実施形態に係るエンジンは、シリンダ及びピストンを含み、自動車等の車両の走行駆動用の動力源として前記車両に搭載される多気筒エンジンである。エンジンは、エンジン本体1と、これに組付けられた図外の吸排気マニホールド及び各種ポンプ等の補機とを含む。エンジン本体1に供給される燃料は、ガソリンを主成分とするものである。
本実施形態のエンジン本体1は、点火プラグにて燃焼室内の混合気に強制点火する通常のSI(Spark Ignition)燃焼と、SI燃焼において燃料噴射のタイミングを圧縮上死点(TDC)付近とするリタードSI燃焼と、SI燃焼とCI(Compression Ignition)燃焼とを組み合わせたSICI燃焼と、を実行することが可能とされている。SI燃焼では、吸気行程の中期に燃料が噴射され、圧縮行程のTDC付近で混合気に強制点火されるが、リタードSI燃焼では、圧縮行程のTDC前後で燃料が噴射され、その後の膨張行程初期に混合気に強制点火される。SICI燃焼では、燃焼室の混合気に強制点火して火炎伝播により燃焼させると共に、燃焼室内の未燃混合気を自己着火により燃焼させる。なお、SICI燃焼において、自己着火を発生させず、火炎伝播により燃焼を完了させる場合もある。これらの燃焼態様は、運転領域に応じて選択される。例えば、SI燃焼は、エンジンの高回転・高負荷領域で、リタードSI燃焼は低回転・高負荷領域で、SICI燃焼は回転数に依らず低負荷領域で、各々選択される。
エンジン本体1は、シリンダブロック3、シリンダヘッド4及びピストン5(これらは、本発明における「燃焼室構成部材」の一例である)を備える。シリンダブロック3は、図1の紙面に垂直な方向に並ぶ複数の気筒2(図中ではそのうちの1つのみを示す)を有している。シリンダヘッド4は、シリンダブロック3の上面に取り付けられ、気筒2の上部開口を塞いでいる。ピストン5は、各気筒2に往復摺動可能に収容されており、コネクティングロッド8を介してクランク軸7と連結されている。ピストン5の往復運動に応じて、クランク軸7はその中心軸回りに回転する。ピストン5の構造については、図3〜図8に基づき後記で詳述する。
ピストン5の上方には燃焼室6が形成されている。シリンダヘッド4には、燃焼室6と連通する吸気ポート9及び排気ポート10が形成されている。シリンダヘッド4の底面4aは燃焼室天井面6Uであり、この燃焼室天井面6Uは、上向きに僅かに凸のペントルーフ型の形状を有している。燃焼室天井面6Uには、吸気ポート9の下流端である吸気側開口部41と、排気ポート10の上流端である排気側開口部42とが形成されている。シリンダヘッド4には、吸気側開口部41を開閉する吸気バルブ11と、排気側開口部42を開閉する排気バルブ12とが組み付けられている。燃焼室天井面6Uの平面図である図9を参照して、本実施形態のエンジン本体1は、ダブルオーバーヘッドカムシャフト式(DOHC)エンジンであり、吸気側開口部41と排気側開口部42とは、各気筒2につき2つずつ設けられると共に、吸気バルブ11および排気バルブ12も2つずつ設けられている。
図2に示されるように、吸気バルブ11及び排気バルブ12は、いわゆるポペットバルブである。吸気バルブ11は、吸気側開口部41を開閉する傘状の弁体11aと、この弁体11aから垂直に延びるステム11bとを含む。同様に、排気バルブ12は、排気側開口部42を開閉する傘状の弁体12aと、この弁体12aから垂直に延びるステム12bとを含む。吸気バルブ11の弁体11aは、燃焼室6に臨むバルブ面11cを有する。排気バルブ12の弁体12aは、燃焼室6に臨むバルブ面12cを有する。
吸気バルブ11及び排気バルブ12も、上記の「燃焼室構成部材」に相当する。本実施形態において、燃焼室6を区画する燃焼室壁面は、気筒2の内壁面、ピストン5の上面(+Z側の面)である冠面50、シリンダヘッド4の底面4a、吸気バルブ11のバルブ面11c及び排気バルブ12のバルブ面12cからなる。
シリンダヘッド4には、吸気バルブ11、排気バルブ12を各々駆動する吸気側動弁機構13、排気側動弁機構14が配設されている。これら動弁機構13、14によりクランク軸7の回転に連動して、吸気バルブ11および排気バルブ12が駆動される。これら吸気バルブ11および排気バルブ12の駆動により、吸気バルブ11の弁体11aが吸気側開口部41を開閉し、排気バルブ12の弁体12aが排気側開口部42を開閉する。
吸気側動弁機構13には、吸気側可変バルブタイミング機構(吸気側VVT)15が組み込まれており、同様に、排気側動弁機構14には、排気側可変バルブタイミング機構(排気側VVT)16が組み込まれている。
シリンダヘッド4には、燃焼室6内の混合気に点火エネルギーを供給する点火プラグ17が、各気筒2につき1つずつ取り付けられている。点火プラグ17は、その先端に着火部17Aを備え、この着火部17Aが燃焼室6内に臨む姿勢でシリンダヘッド4に取り付けられている。点火プラグ17は、図外の点火回路からの給電に応じてその先端から火花を放電して、燃焼室6内の混合気に点火する。点火プラグ17の配置、着火部17Aの構造などについては、後記で詳述する。
シリンダヘッド4(燃焼室天井面6U)には、先端部から燃焼室6内にガソリンを主成分とする燃料を噴射するインジェクタ18(燃料噴射弁)が、各気筒2につき1つずつ取り付けられている。インジェクタ18には燃料供給管19が接続されている。インジェクタ18は、燃料供給管19を通して供給された燃料を燃焼室6に噴射する。燃料供給管19の上流側には、クランク軸7と連動連結されたプランジャー式のポンプ等からなる高圧燃料ポンプ(図示せず)が接続されている。この高圧燃料ポンプと燃料供給管19との間には、全気筒2に共通の蓄圧用のコモンレール(図示せず)が設けられている。このコモンレール内で蓄圧された燃料が各気筒2のインジェクタ18に供給されることにより、各インジェクタ18からは、高い圧力の燃料が燃焼室6内に噴射される。
[ピストンの詳細構造]
図3〜図8を参照して、ピストン5の構造、とりわけ冠面50の構造について詳細に説明する。図3は、ピストン5の斜視図、図4は、ピストン5に対する点火プラグ17及びインジェクタ18の配置関係を示す斜視図、図5は、冠面50の平面図である。また、図6、図7は、それぞれ図5のVI−VI線、VII−VII線断面図、図8は、図5のVIII−VIII線断面の展開図である。
ピストン5は、ピストンヘッド5Aと、ピストンヘッド5Aの下方(−Z側)に連設されたスカート部5Sとを含む。ピストンヘッド5Aは円柱体からなり、上記の通り燃焼室6の壁面の一部(底面)を形成する冠面50を上面に備えると共に、気筒2の内壁面と摺接する側周面とを備える。前記側周面には、ピストンリングが嵌め込まれるリング溝が複数備えられている。スカート部5Sは、ピストンヘッド5Aの+X側及び−X側に配置され、ピストン5の往復運動の際の首振り揺動を抑制する。ピストンヘッド5Aの下方には、Y方向に延びるピン孔を区画するピストンボス5Bが設けられている。ピストンボス5Bの前記ピン孔には、ピストンピン81が挿通される(図6)。ピストンピン81は、コネクティングロッド8の小端部8Sと、ピストン5とを連結するピンである。
冠面50は、燃焼室天井面6UとZ方向に対向する面である。冠面50は、その径方向(X方向及びY方向)の概ね中央部分に配置されたキャビティ5Cを含む。キャビティ5Cは、冠面50が下方(−Z側)に凹没された部分であり、例えば上述のリタードSI燃焼を行うモードにおいて、インジェクタ18から燃料の噴射を受ける部分である。冠面50においてキャビティ5Cの外周には、吸気側平面部55、排気側平面部56及び一対の側方上面57が配置されている。吸気側平面部55は、キャビティ5Cの−X側に隣接する平面、排気側平面部56は、キャビティ5Cの+X側に隣接する平面、一対の側方上面57はキャビティ5Cの+Y側及び−Y側に各々隣接する、概ね平坦な面である。
キャビティ5Cは、小キャビティ51(本発明の「第1キャビティ」に相当する)、大キャビティ52(本発明の「第2キャビティ」に相当する)及び山型の形状を有する凸部53を含む。小キャビティ51は、図4に示すように、点火プラグ17の着火部17Aに対応する位置、つまり着火部17Aの直下の位置を含む領域に凹設されている。大キャビティ52は、小キャビティ51に隣接する位置に凹設され、気筒軸方向の上面視(図5)において、小キャビティ51よりも大きい投影面積を有している。本実施形態では、大キャビティ52の気筒軸方向の投影面積が、小キャビティ51よりも8倍程度大きい態様を例示している。凸部53は、冠面50のXY方向の中央付近に配置されている。凸部53は、インジェクタ18のノズルヘッド18Nの直下の位置に凸設されている。
後記で詳述するが、小キャビティ51は、着火部17A周辺の比較的狭い領域に混合気の乱流を集約し、着火部17Aによる強制点火によって火種となる燃焼領域を作る役目を果たす。従って、小キャビティ51の気筒軸方向の投影面積は、着火部17Aの周囲を取り囲む程度の小面積で足りる。また、小キャビティ51のキャビティ形状は、特に限定されものではないが、例えば着火部17Aの鉛直下方を中心とするパラボラ形状は、好ましい形状の一つである。
一方、大キャビティ52は、同様に混合気の乱流を集約する役目を果たすが、小キャビティ51で発生した火炎を火種として、燃焼室6の全体に速やかにその火炎を拡張させることが企図されたキャビティである。このため、大キャビティ52の投影面積はなるべく大きいことが望ましく、小キャビティ51の投影面積に対して5〜15倍程度の投影面積を具備していることが望ましい。また、火炎を燃焼室6の全体に均等に拡張させるためには、図5に例示しているように、上面視において冠面50と大略的に同心円となる外形形状を備えていることが望ましい。
小キャビティ51は、当該小キャビティ51を区画する外周縁である第1周縁511を含む。大キャビティ52は、当該大キャビティ52を区画する外周縁である第2周縁521を含む。第1周縁511は、上面視で略扇型の形状であり、凸部53、吸気側平面部55及び大キャビティ52との境界線となる。第2周縁521は、上面視で略C字型の形状を有している。つまり、大キャビティ52は、冠面50の気筒軸方向視において略C字形状を有している。第2周縁521は、凸部53、吸気側平面部55、排気側平面部56、側方上面57及び小キャビティ51との境界線となる。
第1周縁511の一部は、第2周縁521の一部を兼ねる共通周縁部である。具体的には、第1周縁511における、凸部53及び吸気側平面部55と各々境界をなす円弧状部分を除いた部分は、第2周縁521の一部と共通である。この第2周縁521の一部は、前記C字形状の開放部分に相当する。前記共通周縁部は、図3、図7に示されているように、上方へ突出した稜線54である。すなわち、本実施形態では、稜線54だけを間に介して小キャビティ51と大キャビティ52とが隣り合っている。
図5を参照して、大キャビティ52は、略円形の凸部53を取り囲むC字形状を有している。小キャビティ51は、このような大キャビティ52のC字形状の開放部分、すなわちC字形状の両端部に挟まれる位置に形成されている。これにより、稜線54で区切られてはいるが、小、大キャビティ51、52によって、凸部53と略同心の環状凹部が冠面50に形成されている。
凸部53はインジェクタ18(ノズルヘッド18N)の直下に位置しているので、小キャビティ51及び大キャビティ52はノズルヘッド18Nを取り囲む形状を有しているとも言える。つまり、ノズルヘッド18Nは、気筒軸方向視において、大キャビティ52に取り囲まれる領域の中心又はその近傍位置に配置されている。ノズルヘッド18Nは、放射状に燃料を噴射可能なマルチホールタイプのヘッドであり、ノズルヘッド18Nからピストン5のTDC又はその近傍付近で燃料が噴射される場合には、当該燃料は小、大キャビティ51、52(上記の環状凹部)に向かうことになる。つまり、ノズルヘッド18Nは、小、大キャビティ51、52の双方へ燃料噴射が可能である。
吸気側平面部55は、小キャビティ51の−X側に隣接する平面であり、平面視で概ね扇型の形状を有している。排気側平面部56は、大キャビティ52の+X側に隣接する平面であり、吸気側平面部55よりも小さいが、同様に平面視で概ね扇型の形状を有している。吸気側平面部55及び排気側平面部56は同じ高さ位置にある平面であり、冠面50において最も高い位置にある。一対の側方上面57は、大キャビティ52の+Y側及び−Y側に各々隣接し、大キャビティ52の外側において吸気側平面部55と排気側平面部56とを繋ぐ面である。側方上面57は、吸気側及び排気側平面部55、56よりもやや高さ位置が低い部分であり、燃焼室天井面6Uの緩いペントルーフ形状に応じた緩い凸形状を有している。側方上面57は、吸気、排気バルブ11、12と冠面50との干渉を回避するバルブリセスでもある。
図6を参照して、キャビティ5Cの深さに関し、小キャビティ51の底面512は、大キャビティ52の底面522よりも気筒軸方向(Z方向)において高い位置に形成されている。つまり、小キャビティ51は大キャビティ52よりも気筒軸方向において高い位置に形成されているとも言える。底面512、522は、それぞれ小、大キャビティ51、52において、吸気側及び排気側平面部55、56に対する窪み深さが最も深い部分である。凸部53は、底面512、522よりも高い位置にあるが、吸気側及び排気側平面部55、56に対しては窪んだ位置にある。
小キャビティの底面512のZ方向における高さ位置をh1、大キャビティ52の底面522のZ方向における高さ位置をh2とするとき、h1はh2よりも高い位置(+Z側)にあり、両者間には所定の高低差dが与えられている。これによりキャビティ5Cの小、大キャビティ51、52からなる環状凹部は、その底面が−X側が+X側よりも高くなるように傾斜する傾向を有している。
[燃焼室構造の詳細]
続いて、冠面50を含む燃焼室6の各部の構造について説明する。図9は、燃焼室天井面6Uの平面図である。燃焼室天井面6Uは、シリンダヘッド4の底面4aと、吸気ポート9の2つの吸気側開口部41を開閉する2つの吸気バルブ11のバルブ面11cと、排気ポート10の2つの排気側開口部42を開閉する2つの排気バルブ12のバルブ面12cとによって構成されている。2つの吸気側開口部41(吸気ポート9)は、−X側においてY方向に2つが並ぶように配置されている。排気側開口部42(排気ポート10)は、+X側においてY方向に2つが並ぶように配置されている。以下、燃焼室6において、吸気ポート9が配置される側を吸気側、排気ポート10が配置される側を排気側という。
燃焼室天井面6Uの吸気側には吸気側天面43が、排気側には排気側天面44が備えられている。吸気側天面43は、2つの吸気側開口部41の間の−X側領域において延びる平坦な面である。排気側天面44は、2つの排気側開口部42の間の+X側領域において延びる平坦な面である。吸気側天面43は、冠面50の吸気側平面部55と対向する面、排気側天面44は、排気側平面部56と対向する面である。バルブ面11c、12cは、概ね半分が側方上面57と対向し、残りの半分が大キャビティ52と対向する。
2つの吸気側開口部41の中間にはプラグ凹部45が凹設されている。プラグ凹部45は、点火プラグ17の着火部17Aを燃焼室6内に露出させるための円柱型の凹部である。インジェクタ18のノズルヘッド18Nは、燃焼室天井面6Uにおいて、X方向及びY方向の略中心位置に配置されている。つまり、ノズルヘッド18Nは、気筒軸方向視において燃焼室6の中心部に配置されているとも言える。着火部17Aは、このノズルヘッド18Nよりも吸気側寄りに配置されている。
小、大キャビティ51、52の燃焼室6内の配置に関し、大略的には、小キャビティ51は吸気側、大キャビティ52は排気側に配置されている。図5を参照して、ノズルヘッド18Nと対向する位置にある凸部53よりも−X側が吸気側、+X側が排気側となる。着火部17Aと対向する小キャビティ51は、全体が吸気側に位置している。一方、大キャビティ52は、大部分(少なくとも一部)が排気側に位置している。
大キャビティ52は、凸部53よりも+X側の排気側領域52Aと、凸部53の+Y側及び−Y側に位置する側方領域52Bと、小キャビティ51の+Y側及び−Y側に隣接する隣接領域52Cとを含む。排気側領域52Aは、投影面積及び容積が最も大きい領域であって、排気側(燃料噴射弁よりも排気側寄り)に位置している。側方領域52Bは、吸気側と排気側とのボーダー上に位置している。一方、隣接領域52Cは吸気側に位置している。隣接領域52C及び側方領域52Bは、排気側領域52Aに比べて投影面積が小さい領域であり、排気側領域52Aと小キャビティ51とを繋ぐ領域である。
図7及び図8に示すように、大キャビティ52の底面522の高さ位置は、排気側領域52Aから隣接領域52Cにかけて略同じ高さ位置である。大キャビティ52の底面522は、前記第2周縁521の近傍で曲面でスロープ状に立ち上がっている。上記の通り、小キャビティ51の上方には着火部17Aが配置されている。よって、大キャビティ52の隣接領域52C、つまり大キャビティ52のC字形状の両端部は、その底面522が着火部17Aに向かうスロープ状に形成されていると言える。なお、排気側領域52Aが最も深く、側方領域52Bから隣接領域52Cに向けて徐々に浅くなるように、底面522の高さ位置を設定しても良い。
次に、図2を主に参照して、点火プラグ17の着火部17Aの構造を説明する。着火部17Aは、中心電極171と、L字型に折曲された角棒からなる接地電極172とを含む。接地電極172は、放電空間となるギャップGを隔てて中心電極171と対向する対向部173と、対向部173に連なる基部174とを含む。基部174は、点火プラグ17の軸心方向に延びている。対向部173は、基部174と直交する方向に延びている。
点火プラグ17は、接地電極172の先端、すなわち対向部173の反基部側の末端が、気筒軸方向視において燃焼室6の径方向外側を向くように燃焼室天井面6U(プラグ凹部45)に配置されている。つまり、中心電極171と対向部173との間に形成されているギャップGとノズルヘッド18Nとの間に、基部174(接地電極172)が介在するように、点火プラグ17がシリンダヘッド4に対して組み付けられている。
既述の通り、ノズルヘッド18Nはマルチホールタイプのヘッドであり、環状に配置された複数の噴射孔181を備える。複数の噴射孔181は、小キャビティ51を指向した噴射孔181を含む。上記の通りの着火部17Aの組み付けにより、当該噴射孔181から噴き出される噴射燃料18E(図2参照)は、接地電極172にブロックされて放電空間であるギャップGに直接入り込むことができない。つまり、噴射燃料18Eが、充分に霧化しない状態でギャップGに入り込まないように工夫されている。
[燃料噴射および点火タイミング]
図10は、燃料噴射期間及び点火タイミングとクランク角との関係を示すタイムチャートである。本実施形態のエンジン本体1は、図10に示す、少なくともモードI及びモードIIの燃料噴射期間及び点火タイミングで、運転を成立させる。
モードIは、上掲のリタードSI燃焼の実行の際に採用されるもので、燃料噴射期間PF1は圧縮行程のTDC前後、点火タイミングは膨張行程初期である。すなわち、TDCよりも前の圧縮行程終盤のクランク角−CA11のタイミングT11からインジェクタ18による燃料噴射が開始され、TDC後の膨張行程開始期のクランク角+CA12のタイミングT12まで燃料噴射が実行される。このタイミングT11〜T12が燃料噴射期間PF1である。その後、膨張行程初期の所定のクランク角+CA13のタイミングT13において、点火プラグ17によって混合気に点火される。一例を挙げると、−CA11は圧縮TDC前10°、+CA12は圧縮TDC後2°、+CA13は圧縮TDC後9°である。
モードIIは、上掲のSI燃焼及びSICI燃焼の際に採用されるもので、燃料噴射期間PF2は吸気行程の中期、点火タイミングは圧縮TDC付近である。すなわち、排気TDCからピストン5が半分程度下降するクランク角CA2を挟んだタイミングT21〜T22が、燃料噴射期間PF2とされる。点火タイミングは、圧縮TDCに至るタイミングT23である。一例を挙げると、CA2は排気TDC後70°である。なお、圧縮TDC前のクランク角CA3で、CA2に加えて追加的に燃料噴射を行わせても良い。
[燃焼動作]
次に、燃焼室6における混合気の燃焼動作について説明する。ここでは、本発明との関連性が高い燃焼動作、具体的には、図12のモードI(リタードSI燃焼)が採用された場合の燃焼動作について説明する。
図11(A)は、図10のタイミングT12の直後の状態を示している。つまり、圧縮TDCの後、膨張行程においてピストン5が下降を開始している共に、圧縮TDCを跨いだ燃料噴射期間PF1が終了した状態である。このとき、冠面50の吸気側平面部55上に、逆スキッシュ流RSが発生する。逆スキッシュ流RSは、冠面50の径方向中心から径方向外側に向かうフローである。
吸気側平面部55は冠面50において最も高い位置にある平面であって、燃焼室天井面6Uの吸気側天面43(図2)と対向している。吸気側天面43は、吸気側平面部55と略平行な面であり、吸気側平面部55はピストン5がTDCにあるとき、冠面50において燃焼室天井面6Uに最も接近する領域となる。すなわち、吸気側平面部55は、燃焼室天井面6U(吸気側天面43)に対応する形状を有する。このため、ピストン5の下降によって吸気側平面部55と吸気側天面43との間が拡開することにより、両者間の空間には負圧が発生する。前記負圧によって燃焼室6内の流体が引き寄せられ、逆スキッシュ流RSを形成する。この意味で、吸気側平面部55は、逆スキッシュ流生成部ということができる。
なお、排気側平面部56も排気側天面44に同様に接近するが、吸気側平面部55は排気側平面部56に比べて投影面積が充分大きい。従って、前記逆スキッシュ流RSは、排気側平面部56の存在によって妨げられない。因みに、排気側平面部56が存在することにより、TDC付近において燃焼室天井面6Uと冠面50との間隔が狭くなり、TDC付近での燃料噴射された場合に、当該燃料が気筒2の内壁面(シリンダライナ)に直接付着することが防止される。
燃料は、インジェクタ18のノズルヘッド18Nによって、小キャビティ51及び大キャビティ52に噴射される。ここで、大キャビティ52の大部分(排気側領域52A)は、排気側に配置されている。排気側は、燃焼後の高温ガスを排出する排気ポート10を有するので、吸気側よりも高温化している。従って、大キャビティ52に向けて噴射された燃料は、排気側の熱によって比較的早く霧化し易くなり、短時間で充分に吸気と混合された混合気を得ることができる。
そして、この大キャビティ52の混合気は、逆スキッシュ流RSによって吸気側に引き寄せられ、混合気フローF1が形成される。混合気フローF1は、大キャビティ52のC字形状に沿って吸気側へ流れ、当該C字形状の開放部分に位置する小キャビティ51に向かうフローである。
なお、このような混合気フローの形成には、吸気側と排気側との混合気の温度差も貢献している。上述の通り、小キャビティ51は比較的低温の吸気側に、大キャビティ52は比較的高温の排気側寄りに、各々形成されている。燃焼室6の燃焼室壁面は、排気側の壁面の方が吸気側よりも高温となることから、燃焼室6内の混合気の温度も排気側がより高温となる。従って、大キャビティ52(排気側領域52A)に存在する混合気FA(図12参照)も高温となり、当該混合気FAは燃料の霧化が良好に進んだものとなる。
圧縮行程においてピストン5が上昇しTDCに近づくにつれ、燃焼室6内の吸気側空間と排気側空間との間における混合気の温度差によって、図12に示すような混合気フローF2が発生する。すなわち、排気側の混合気FAの方が吸気側よりも高温であることから、当該温度差に基づき、混合気FAが大キャビティ52の有するC字形状に沿って流れる混合気フローF2が形成される。この混合気フローF2によって、高温で良好に燃料が霧化された混合気FAが、小キャビティ51に供給されることになる。
上述の通り、大キャビティ52の隣接領域52C(C字形状の両端部)は、その底面522が着火部17Aに向かうスロープ状に形成されている。そのため、混合気フローF1、F2により、着火性に優れる混合気FAが、小キャビティ51を含む着火部17Aの周囲に運ばれることとなる。
図11(B)は、図10のタイミングT13の直前の状態を示している。つまり、混合気に強制点火される直前の状態であり、特に小キャビティ51の状態に着目している。点火直前の燃焼室6内においては、タンブル流などの筒内主流がほとんど存在せず(スワール流が僅かに残る)、乱流が支配的となる。この燃焼室6内のうちの一部の乱流FR1が、図13(B)に示されているように、小キャビティ51に集約される。つまり、点火プラグ17の着火部17Aの周囲に乱流FR1が集約される。
この集約は、小キャビティ51という凹部自体が乱流FR1を閉じ込める作用を有すること、上記の混合気フローF1、F2によって、大キャビティ52内の乱流が小キャビティ51へ導かれること、等によって達成される。また、大キャビティ52とは別個に独立して小キャビティ51が設けられていることも、前記集約に貢献している。すなわち、小キャビティ51が存在せず、単に一つの大きなキャビティが冠面50の径方向中央付近に凹設されているだけでは、乱流を当該キャビティに閉じ込めることはできるとしても、着火部17Aの周囲に乱流を集約することはできない。
図13(A)は、図10のタイミングT13の状態を示している。つまり、混合気への強制点火が行われた状態であり、図中に着火部17Aによる着火点IPを示している。この強制点火によって、小キャビティ51内において火炎が高速で拡がる。つまり、小キャビティ51に集約された混合気の乱流FR1が一気に燃焼し、燃焼領域B1を作る。これは、高温の排気側に配置された大キャビティ52で吸気と燃料が混合された混合気が、小キャビティ51に集約されることによって、小キャビティ51内の混合気(乱流FR1)の着火性が良好となっていることによる。なお、図11(B)では記載を省いたが、図13(A)に示す通り、大キャビティ52にも混合気の乱流FR2が閉じ込められている。但し、着火性は小キャビティ51内の乱流FR1に劣るので、この時点では燃焼していない。
図13(B)は、図10のタイミングT13の直後の状態を示している。つまり、燃焼が投影面積の大きい大キャビティ52、ひいては燃焼室6全体に拡がりつつある状態を示している。着火部17Aの周囲に形成された燃焼領域B1は、燃焼室6内の残りの混合気を燃焼させるための火種となる。すなわち、小キャビティ51で発生した火炎が、大キャビティ52に集約された混合気(乱流FR2)へ火炎伝播して、大キャビティ52内に燃焼領域B2を作り、これを拡張させてゆく。また、吸気側平面部55上では、ピストン5の下降に伴う負圧力の作用も相俟って火炎伝播し、燃焼領域B3を作る。
さらに、燃焼領域B1の発生、或いは燃焼領域B1〜B3の発生による、燃焼室6内の高温高圧化によって、大キャビティ52及びその他の残部領域において自己着火B4による燃焼も発生する。これら火炎伝播及び自己着火によって、大キャビティ52内の混合気及びその他の残部領域において燃焼が急速に拡がる。従って、燃焼室6全体に火炎を高速で拡大させ、燃焼室6の空間全体を利用した均質燃焼を実現させることができる。なお、自己着火B4による燃焼が発生せず、火炎伝播のみで燃焼が完遂される場合もある。
[作用効果]
以上説明した本実施形態に係る火花点火式のエンジンの燃焼室構造によれば、次のような作用効果を奏する。
本実施形態のエンジン本体1において、点火プラグ17の着火部17Aは、気筒軸方向視において燃焼室6の中心よりも吸気側に配置されており、ピストン5の冠面50には、気筒軸方向視においてC字形状をなす大キャビティ52が凹設されている。この大キャビティ52は、少なくともその一部が燃焼室6の中心よりも排気側に位置し、C字形状の両端部(隣接領域52C)に挟まれる領域の上方に着火部17Aが位置するように形成されている。
そのため、比較的高温の排気側で充分に霧化された混合気FAが、ピストン5の冠面50に形成された大キャビティ52のC字形状に沿って点火プラグ17の着火部17Aに運ばれ易い。特に、排気側に対して相対的に温度の低い吸気側に着火部17Aが配置されていることで、その温度差により着火部へ向かう混合気FAの流れ(混合気フローF2)が促進される(図12)。従って、点火プラグ17の着火部17A及びその周辺に充分に霧化された良質の混合気を効率良く集めることができ、これにより、点火プラグ17による着火性を高めることができる。
しかも、大キャビティ52の両端部は、着火部17Aに向って上昇するスロープ状に形成されているので、大キャビティ52の端部に段差が形成されて混合気の流れ(混合気フローF2)が妨げられることが回避される。そのため、排気側で生成された良質の混合気FAを、大キャビティ52のC字形状に沿ってより円滑に着火部17Aに運ぶことができる。
また、ピストン5の冠面50のうち、大キャビティ52のC字形状の両端部に挟まれる領域には、大キャビティ52よりも容積が小さい小キャビティ51が形成されており、インジェクタ18(ノズルヘッド18N)は、ピストン5が上死点位置又はその近傍にあるときに、小キャビティ51の方向及び大キャビティ52の方向の双方へ燃料を噴射可能である。そのため、高速燃焼を有利に実現させることができる。すなわち、小キャビティ51の方向に噴射された比較的少量の燃料により着火が行われることで火種が形成され、この火種に対して、大キャビティ52に沿って運ばれる良質の混合気が与えられる。これにより、上述の通り、小キャビティ51で発生した火炎(火種)が大キャビティ52内へ火炎伝播することによって、急速に大キャビティ52内の混合気が燃焼する。従って、燃焼室全体に火炎を高速で拡大させ、燃焼室空間の全体を利用した均質燃焼を実現させることができる。
また、当実施形態では、インジェクタ18は、気筒軸方向視において大キャビティ52に取り囲まれる領域の中心又はその近傍位置に配置されているので、小キャビティ51の方向及び大キャビティ52の双方に同等のタイミングで素早く燃料を噴射させることできる。そのため、点火プラグ17による着火後の燃焼室全体への火炎の高速拡大に寄与するものとなる。
また、ピストン5の冠面50のうち、点火プラグ17の着火部17Aよりも気筒軸方向視において反排気側となる領域には、燃焼室天井面6U(吸気側天面43)に対応する形状を有しかつピストン5の下降に伴い燃焼室6に逆スキッシュ流を形成することが可能な吸気側平面部55が設けられている。そのため、混合気が逆スキッシュ流によって吸気側に引きが寄せられる、混合気フローF1が良好に形成される(図12)。この混合気フローF1は、大キャビティ52のC字形状に沿って点火プラグ17の着火部17Aに向かうため、温度差により形成される前記混合気フローF2と相俟って、着火部17A及びその周辺に良質の混合気を効果的に集めることができる。従って、点火プラグ17による着火性をより一層高めることができる。
[変形実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、次のような変形実施形態を取り得る。
(1)上記実施形態では、インジェクタ18はマルチホールタイプのノズルヘッド18Nを有するものであり、気筒軸方向視において燃焼室6の中心部にノズルヘッド18Nが位置するように燃焼室天井面6Uに配置されている。しかし、インジェクタ18は、ピストン5が上死点位置又はその近傍にあるときに、小キャビティ51の方向及び大キャビティ52の方向の双方へ燃料を噴射可能であれば、ノズルヘッド18Nのタイプや配置は上記実施形態には限られない。例えば、図14(A)に示すように、大キャビティ52のうち、最も排気側に位置する第2周縁521又はその近傍位置の上方にノズルヘッド18Nが位置し、排気側から吸気側に向かって燃料が噴射されるよにインジェクタ18が配置されていてもよい。また、図14(B)に示すように、吸気側平面部55の上方にノズルヘッド18Nが位置し、吸気側から排気側に向かって燃料が噴射されるよにインジェクタ18が配置されていてもよい。
(2)上記実施形態では、インジェクタ18のノズルヘッド18Nが燃焼室6内に配置され、直噴方式で燃料が燃焼室6に供給される例を示した。これに代えて、吸気ポート9にインジェクタ18を配置するポート噴射方式を採用しても良い。
1 エンジン本体
2 気筒(燃焼室壁面)
3 シリンダブロック(燃焼室構成部材)
4 シリンダヘッド(燃焼室構成部材)
5 ピストン(燃焼室構成部材)
5C キャビティ
50 冠面(燃焼室壁面)
51 小キャビティ(第1キャビティ)
52 大キャビティ(第2キャビティ)
6 燃焼室
6U 燃焼室天井面(燃焼室壁面)
9 吸気ポート
10 排気ポート
17 点火プラグ
17A 着火部
18 インジェクタ(燃料噴射弁)
181 噴射孔

Claims (5)

  1. 火花点火式のエンジンの燃焼室構造であって、
    気筒及びピストンを含むエンジンの燃焼室を区画する燃焼室壁面を有する燃焼室構成部材と、
    前記燃焼室内に着火部が配置された点火プラグと、を備え、
    前記燃焼室壁面の一部は、前記ピストンの冠面と当該冠面に対向する燃焼室天井面とで形成され、
    前記燃焼室天井面には、吸気ポートと排気ポートとが配置され、前記燃焼室において前記吸気ポートが配置される側を吸気側、前記排気ポートが配置される側を排気側とするとき、
    前記着火部は、気筒軸方向視において前記燃焼室の中心よりも吸気側に配置され、
    前記冠面には、気筒軸方向視においてC字形状をなすキャビティが凹設され、
    前記キャビティは、少なくともその一部が前記燃焼室の中心よりも前記排気側に位置し、前記C字形状の両端部に挟まれる領域の上方に前記着火部が位置するように形成されている、ことを特徴とするエンジンの燃焼室構造。
  2. 請求項1に記載の火花点火式のエンジンの燃焼室構造であって、
    前記キャビティの前記C字形状の両端部のうち、少なくとも一方側の端部は、前記着火部に向かうスロープ状に形成されている、ことを特徴とするエンジンの燃焼室構造。
  3. 請求項1又は2に記載の火花点火式のエンジンの燃焼室構造であって、
    前記燃焼室天井面に、前記燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射弁が配置され、
    前記キャビティを第2キャビティとしたときに、
    前記冠面のうち、前記第2キャビティの前記C字形状の両端部に挟まれる領域に、当該第2キャビティよりも容積が小さい第1キャビティが形成され、
    前記燃料噴射弁は、前記ピストンが上死点位置又はその近傍にあるときに、前記第1キャビティの方向及び前記第2キャビティの方向の双方へ燃料を噴射可能である、ことを特徴とするエンジンの燃焼室構造。
  4. 請求項3に記載の火花点火式のエンジンの燃焼室構造であって、
    前記燃料噴射弁は、気筒軸方向視において、前記第2キャビティに取り囲まれる領域の中心又はその近傍位置に配置されている、ことを特徴とするエンジンの燃焼室構造。
  5. 請求項1乃至4の何れかに記載の火花点火式のエンジンの燃焼室構造であって、
    前記点火プラグは、前記ピストンが上死点位置を過ぎた後に着火するものであり、
    前記冠面は、前記点火プラグの前記着火部よりも気筒軸方向視において反排気側となる領域に、前記燃焼室天井面に対応する形状を有しかつ前記ピストンの下降に伴い前記燃焼室内に逆スキッシュ流を形成する逆スキッシュ流生成部を有する、ことを特徴とするエンジンの燃焼室構造。
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