JP2018204152A - 転写用紙 - Google Patents
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Description
昇華転写プリントシステムに用いられ、水性インクの吸収性に優れて滲みなどのない鮮明な記録画像を得ることができ、昇華転写の際の転写対象物へのインク転写効率にも優れた昇華転写用シートとして、シート状基材と、前記シート状基材の片面又は両面に設けられるインク受理層とを包含し、インク受理層には顔料とバインダーとカチオン性樹脂とが含まれており、顔料としては沈降法シリカが使用され、かつ前記バインダーとしては、デンプン、デンプン誘導体、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールの何れか1種又はそれら2種以上の混合物が使用されることを特徴とする転写紙が公知である(例えば、特許文献3参照)。
転写用紙は、被印刷物に形成された図柄の画質が劣化しないよう鮮鋭な画像を有する転写紙になるために昇華型捺染インクに対する受容性を向上する必要がある。さらに、転写用紙は、鮮鋭な画像を有する転写紙から、被印刷物に形成される図柄の画質を劣化させない必要がある。
一方、転写紙は、昇華型捺染インクに対する転写用紙の受容性が向上すると、被印刷物に図柄を形成する転写時において昇華型捺染インクの転写が不十分となる場合がある。その結果、被印刷物では発色性の低下が起こる。
特許文献3に記載されたインク転写効率とは、転写紙に残存する昇華型捺染インクの量から判定される値である。被印刷物へのインク転写効率は、転写を終えた後に転写紙に残存する昇華型捺染インクの量が少ないほど高い。より多くの昇華型捺染インクが被印刷物へ転写されることによって、被印刷物へ転写された画像の発色は良くなる。すなわち、特許文献3のインク転写効率は、本発明の発色性に近く、本発明の転写性と異なる。
(1)被印刷物において画像の劣化が抑制されること(耐画像劣化性)
(2)被印刷物において発色の低下が抑制されること(発色性)
(3)転写紙において裏抜けが抑制されること(耐裏抜け性)
(4)転写紙から被印刷物への転写に関する効率が優れること(転写性)
本発明において、「転写用紙」とは、転写する図柄が印刷される前の白紙状態にある用紙をいう。「転写紙」とは、転写用紙に対して転写する図柄が印刷された状態にある用紙をいう。
また本発明において、「塗工層を有する」とは、転写用紙の断面を電子顕微鏡によって観察した際に、原紙と区別できる明確な層を有する用紙を指す。例えば、樹脂成分やポリマー成分を塗工し、塗工された前記成分が少量であって原紙に吸収され、結果として、転写用紙の断面を電子顕微鏡によって観察した際に原紙と区別できる明確な層を有しない場合、「塗工層を有する」に該当しない。
最外塗工層は、顔料およびバインダーを少なくとも含有する。塗工層が2層以上の場合において、原紙と最外塗工層との間に存在する塗工層は、顔料およびバインダーを含有する塗工層または顔料を含有しない塗工層のいずれであってよく、また、顔料またはバインダーの種類など、特に限定しない。
製造コストの点から、塗工層は1層が好ましい。また塗工層は、原紙の片面上または両面上に有してよい。転写用紙は、本発明に係る最外塗工層が原紙の片面上に有する場合、原紙の裏面に従来公知のバックコート層を有してよい。
原紙における焼成カオリンの含有量は、原紙中のパルプ100質量部に対して10質量部以上20質量部以下が好ましい。焼成カオリンの含有量が上記範囲であることによって、耐画像劣化性または転写性が、より良好になる。
酸性紙とは、「紙、板紙及びパルプ−水抽出液pHの試験方法−第1部:冷水抽出」(JIS P 8133−1:2013)に基づく方法に従って測定される冷水抽出液のpHが6未満である原紙をいう。pHの下限は、紙の劣化の観点から、4.5以上が好ましい。この理由は、酸性紙である原紙と、原紙中の焼成カオリンと、最外塗工層との相乗効果によって転写性がより良好になるからである。
塗工層を設ける方法は特に限定されない。例えば、製紙分野で従来公知の塗工装置および乾燥装置を用いて塗工および乾燥する方法を挙げることができる。塗工装置の例としては、サイズプレス、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、エアナイフコーター、コンマコーター、グラビアコーター、バーコーター、Eバーコーター、カーテンコーター等を挙げることができる。乾燥装置の例としては、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を挙げることができる。
非晶質シリカは、製造法によって湿式法シリカと気相法シリカとに大別することができる。さらに湿式法シリカは、製造方法によって沈降法シリカとゲル法シリカとに分類できる。沈降法シリカは、珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過・水洗・乾燥・粉砕・分級の工程を経て製造される。沈降法シリカは、例えば、東ソー・シリカ社からニップシール、OSC社からファインシール、トクシールとして市販されている。ゲル法シリカは、珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造される。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。ゲル法シリカは、例えば、東ソー・シリカ社からニップゲル、グレースジャパン社からサイロイド、サイロジェットとして市販されている。気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって製造される。具体的には、四塩化ケイ素を水素および酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られている。四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類を単独または四塩化ケイ素と併用して使用することができる。気相法シリカは、日本アエロジル社からアエロジル、トクヤマ社からレオロシールとして市販されている。
非晶質シリカは、沈降法シリカが好ましい。
また、最外塗工層中の非晶質シリカの含有比率は、最外塗工層中の顔料100質量部に対して80質量部以上が好ましい。
また、最外塗工層は、転写捺染法で従来公知の各種助剤を含有することができる。助剤は、最外塗工層塗工液の各種物性を最適化する、あるいは転写される昇華型捺染インクの染着性を向上させるため等に加えられるものである。助剤は、例えば、各種界面活性剤、保湿剤、湿潤剤、pH調整剤、アルカリ剤、濃染化剤、脱気剤および還元防止剤等を挙げることができる。
カチオン性樹脂は、従来公知のカチオン性ポリマーまたはカチオン性オリゴマーであればよく、特に限定されない。好ましいカチオン性樹脂は、プロトンが配位しやすく、水に溶解したとき解離してカチオン性を呈する1級〜3級アミンまたは4級アンモニウム塩を含有するポリマーまたはオリゴマーである。カチオン性樹脂の例としては、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリアミンスルホン、ポリジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリジアルキルアミノエチルアクリレート、ポリジアルキルアミノエチルメタクリルアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ポリエポキシアミン、ポリアミドアミン、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物、ジシアンジアミドポリアルキル−ポリアルキレンポリアミン重縮合物、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の化合物およびこれらの塩酸塩、さらにジアリルアミン−アクリルアミド共重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミド等との共重合物、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン−アンモニア−エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルアミン−エピクロルヒドリン重縮合物のようなアルキルアミンとエピハロヒドリン化合物との重縮合物等を挙げることができる。カチオン性樹脂は、これらからなる群から選ばれる1種以上である。
カチオン性樹脂は、アルキルアミンとエピハロヒドリン化合物との重縮合物、ジアリルアミン−アクリルアミド共重合体、およびポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
カチオン性樹脂を含有する理由は、耐画像劣化性が、より良好になるからである。
転写用紙に図柄を印刷する各種印刷方法は、従来公知の印刷方法であって、特に限定されない。印刷方法は、例えば、グラビア印刷方式、インクジェット印刷方式、電子写真印刷方式およびスクリーン印刷方式などを挙げることができる。中でも、画質の高精細化および装置の小型化の点でインクジェット印刷方式が好ましい。
昇華型捺染インクを用いる転写捺染法において、被印刷物は、合成繊維材料が好ましい。天然繊維材料では前処理が必要な場合が多い。
濾水度450mlCSFのLBKP90質量部および濾水度440mlCSFのNBKP10質量部からなる木材パルプ100質量部に、焼成カオリン(BASF社、アンシレックス)12質量部、酸化澱粉(日本食品加工社、MS3800)4質量部、ロジンサイズ剤0.3質量部、ポリアクリルアミド樹脂0.6質量部、硫酸バンド0.5質量部を添加して、得られる原紙のpHが4.5以上6未満になるように紙料のpHを調節した。紙料の調成後、長網抄紙機を用いて坪量100g/m2になるように抄造し、原紙1を得た。
前記原紙1において、焼成カオリンに代えて重質炭酸カルシウム(白石カルシウム社、HYDROCARB90)を用いる以外は同様に行い、原紙2を得た。
前記原紙1において、焼成カオリンに代えてタルク(日本タルク社、SG−200N15)を用いる以外は同様に行い、原紙3を得た。
前記原紙1において、焼成カオリンに代えてカオリン(白石カルシウム社、カオファイン90)を用いる以外は同様に行い、原紙4を得た。
前記原紙1において、焼成カオリンに代えて非晶質シリカ(水澤化学工業社、ミズカシルP527)を用いる以外は同様に行い、原紙5を得た。
前記原紙1において、焼成カオリンの配合量を12質量部から5質量部に変更する以外は同様に行い、原紙6を得た。
前記原紙1において、焼成カオリンの配合量を12質量部から10質量部に変更する以外は同様に行い、原紙7を得た。
前記原紙1において、焼成カオリンの配合量を12質量部から20質量部に変更する以外は同様に行い、原紙8を得た。
前記原紙1において、焼成カオリンの配合量を12質量部から30質量部に変更する以外は同様に行い、原紙9を得た。
前記原紙1において、得られる原紙のpHが6.5以上8以下になるように紙料のpHを調節した以外は同様に行い、原紙10を得た。
前記原紙1において、得られる原紙のpHが10以上11以下になるように紙料のpHを調節した以外は同様に行い、原紙11を得た。
前記原紙1において、焼成カオリン12質量部を、焼成カオリン(BASF社、アンシレックス)10質量部および重質炭酸カルシウム(白石カルシウム社、HYDROCARB90)2質量部に変更する以外は同様に行い、原紙12を得た。
前記原紙1において、焼成カオリン12質量部を、焼成カオリン(BASF社、アンシレックス)7.5質量部および重質炭酸カルシウム(白石カルシウム社、HYDROCARB90)4.5質量部に変更する以外は同様に行い、原紙13を得た。
水中に、非晶質シリカ(OSC社、ファインシールX−37B)100質量部、シラノール変性ポリビニルアルコール(クラレ社、R−1130)20質量部、エチレン−酢酸ビニルエマルジョン(クラレ社、パンフレックスOM6000)10質量部、カチオン性樹脂(田岡化学工業、スミレッツレジン1001)20質量部を配合し、塗工液濃度を13質量%に調整した。
塗工層塗工液は、最外塗工層と原紙との間に設ける塗工層に関する塗工液である。
水中に、軽質炭酸カルシウム(白石カルシウム社、Brilliant−15)100質量部、スチレン−ブタジエン共重合体(JSR社、JSR−2605G)20質量部を配合し、塗工液濃度を13質量%に調整した。
最外塗工層塗工液を、原紙の片面上に塗工量9g/m2となるようにエアナイフコーターを用いて塗工および熱風乾燥機を用いて乾燥した。その後、スーパーカレンダー処理を施して転写用紙を得た。
塗工層塗工液を、原紙の片面上に塗工量5g/m2となるようにブレードコーターを用いて塗工および熱風乾燥機を用いて乾燥した。続いて、塗工層上に、最外塗工層塗工液を塗工量9g/m2となるようにエアナイフコーターを用いて塗工および熱風乾燥機を用いて乾燥した。その後、スーパーカレンダー処理を施して転写用紙を得た。
得られた転写用紙に、昇華型捺染インクを使用したインクジェットプリンター(JV2−130II、ミマキエンジニアリング社製)を用いて、昇華型捺染インク(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)による評価用図柄を印刷し、転写紙(ロール紙)を得た。
上記のように得られた転写紙において、転写紙の裏面からの画像視認の程度から、耐裏抜け性を下記の基準により官能評価した。本発明において、転写用紙は、評価が3または4であれば耐裏抜け性が良好であるものとする。
4:裏抜けがほとんど認められず、良好である。
3:裏抜けがわずかに認められるが、概ね良好である。
2:裏抜けが認められるが、実用的に問題にならない。
1:裏抜けが認められ、実用上問題になる。
被印刷物として巻き物のポリエステル布を用いた。得られたロール紙状の転写紙とポリエステル布とを密着させ、加熱および加圧機(200℃、0.5MPa、2.0m/min、ローラー型、ローラーとの接触時間45秒)を用いて、染料をポリエステル布へ転写した。その後転写紙をポリエステル布から剥離して、図柄が形成されたポリエステル布を得た。
図柄が形成されたポリエステル布に対して、図柄の鮮鋭性の点から、耐画像劣化性を下記の基準により画質を官能評価した。本発明において、転写用紙は、評価が3または4であれば耐画像劣化性が良好であるものとする。
4:良好なレベル。
3:画質の劣化がほとんど認められず、概ね良好なレベル。
2:画質の劣化が認められるが、実用上問題のないレベル。
1:実用上不可になる画像の劣化が認められるレベル。
被印刷物において、昇華型捺染インク3色(シアン、マゼンタ、イエロー)のベタ画像部を光学濃度計(X−rite530、サカタインクスエンジニアリング社製)を用いて色濃度を測定し、3色の色濃度値を合計した。発色性を下記の基準により判断した。本発明において、転写用紙は、評価が3または4であれば発色性が良好であるものとする。
4:合計の値が4.8以上
3:合計の値が4.5以上4.8未満
2:合計の値が4.2以上4.5未満
1:合計の値が4.2未満
密着時の加熱時間を変化させて図柄が形成された被印刷物において、45秒間、60秒間および75秒間における発色性の変化を下記の基準により官能評価した。本発明において、転写用紙は、評価が3または4であれば転写性が良好であるものとする。
4:変化が無い。
3:概ね変化が無い。
2:45秒間と60秒間との間で変化が認められるが、
60秒間と75秒間との間では概ね変化が無い。
1:45秒間と60秒間との間および60秒間と75秒間との間で、
変化が認められる。
主に、実施例1と実施例6および実施例7との対比から原紙は酸性紙が好ましい、ことが分かる。
Claims (2)
- 原紙と、前記原紙の少なくとも片面上に1層以上の塗工層とを有し、原紙を基準として最外に位置する最外塗工層が顔料およびバインダーを少なくとも含有し、前記原紙に含まれる填料の少なくとも1種が焼成カオリンであり、昇華型捺染インクを用いる転写捺染法に使用される転写用紙。
- 前記原紙が、酸性紙である請求項1に記載の転写用紙。
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