JP2022131434A - 転写用紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐フェザリング性を有し、被印刷物に対して上手く密着できる特性を有し、転写能が良好であり、耐熱性を有し、及び耐カブリ性を有する、捺染インクを用いる転写捺染法に使用する転写用紙を提供する。【解決手段】課題は、原紙と、前記原紙の少なくとも片面に対して1層又は2層以上の塗工層とを有し、原紙を基準として最外に位置する最外塗工層が、無機顔料をバインダーよりも多く含有する塗工層であり、前記無機顔料として焼成カオリン、前記バインダーとしてカルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコール、並びにカチオン性樹脂を少なくとも含有し、前記ポリビニルアルコールの少なくとも一種が部分ケン化のポリビニルアルコールである、転写捺染法に使用する転写用紙によって達成される。【選択図】なし
Description
本発明は、繊維材料等の被印刷物へ図柄を形成する昇華型捺染インク等の捺染インクを用いる転写捺染法において、図柄を転写するために使用する転写用紙に関する。
転写捺染法に使用する転写用紙では、例えば、基材上に昇華型捺染インク受容層を有し、前記昇華型捺染インク受容層が水溶性樹脂と微細粒子を含有し、前記水溶性樹脂としてポリビニルアルコールを前記微細粒子100重量部に対し1~200重量部及びカルボキシメチルセルロースを前記微細粒子100重量部に対し100~400重量部の割合で含有し、前記微細粒子として合成非晶質シリカを含有することを特徴とする昇華型インクジェット捺染転写紙が公知である(例えば、特許文献1参照)。
上記昇華型インクジェット捺染転写紙は、昇華型捺染インクを用いたインクジェット印刷において、優れたインク吸収・乾燥性を有しており作業性が良好であるとともに、転写紙表面での画像再現性、加熱転写時の耐熱性、転写後の被転写物表面での画像再現性や転写効率の点でも良好な特性を有する。ここで、特許文献1の転写効率は、転写画像の解像性、転写画像濃度レベル、及び転写画像の均一性に関する。
上記昇華型インクジェット捺染転写紙は、昇華型捺染インクを用いたインクジェット印刷において、優れたインク吸収・乾燥性を有しており作業性が良好であるとともに、転写紙表面での画像再現性、加熱転写時の耐熱性、転写後の被転写物表面での画像再現性や転写効率の点でも良好な特性を有する。ここで、特許文献1の転写効率は、転写画像の解像性、転写画像濃度レベル、及び転写画像の均一性に関する。
特許文献1のような、転写時に被印刷物と密着する塗工層が非晶質シリカ、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールを含有する転写用紙は、インク吸収・乾燥性を有し、及び転写紙表面での画像再現性が良好である。これは、多孔質な無機顔料である非晶質シリカに起因する。一方で、塗工層が非晶質シリカを含有する転写用紙は、被印刷物に対して上手く密着できる特性が悪化又は転写能が悪化する場合がある。ここで、転写能は、転写紙から被印刷物へ色材の転写のし易さに関する。転写能が良いとは、転写時のエネルギー量が一定であれば短時間で転写が進行する、又は転写時の時間が一定であれば少ないエネルギー量で転写が進行する意味である。これは、解像度等を判断する特許文献1の上記転写効率とは異なる。また、多孔質な無機顔料を含有しない塗工層では、印刷トラブルの一種であるフェザリングが発生し易い。フェザリングの発生を抑えるために多孔質な無機顔料の代わりにインク定着剤を多用すると、転写能が悪化する。
密着できる特性が悪化すると、転写過程において紙の浮き又は位置ズレが発生して被印刷物に形成される図柄の画質は低下する。転写能が悪化すると、転写過程において捺染インク中の色材を転写するには相対的に大きいエネルギーが必要になる。また、転写能が悪化すると、同じ温度条件で転写する場合では相対的に長い時間を要する。
密着できる特性が悪化すると、転写過程において紙の浮き又は位置ズレが発生して被印刷物に形成される図柄の画質は低下する。転写能が悪化すると、転写過程において捺染インク中の色材を転写するには相対的に大きいエネルギーが必要になる。また、転写能が悪化すると、同じ温度条件で転写する場合では相対的に長い時間を要する。
また、例えば、転写時に被印刷物と密着する塗工層がカルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールから成る樹脂層である転写用紙は、転写過程において前記塗工層が熱収縮する場合がある。転写紙と被印刷物とが密着した状態であって被印刷物に対して転写紙の塗工層が熱収縮すると、被印刷物に形成された本来の図柄の輪郭に沿って別の極薄い輪郭線が発生する。よって、転写用紙には、熱収縮を抑える品質が必要である。
また、転写時は、転写紙と被印刷物とを密着させる。転写は、転写紙と被印刷物との密着状態に対して加熱又は加熱加圧によって行われる。転写時では、捺染インク中の色材が転写紙から被印刷物へ移動する。転写時では、色材が、転写紙と被印刷物との接面において垂直方向に移動する。しかしながら、一部の色材が、前記垂直方向ではなく、斜め方向に移動する場合がある。斜め方向に移動した色材は、本来存在しない箇所に斑点を生じる。この現象は、斑点カブリと称し、転写捺染法の特有の課題である。よって、転写用紙には、転写時の斑点カブリを抑える耐斑点カブリ性が必要である。
上記を鑑みて本発明の目的は下記の項目を有する転写用紙を提供することである。
(1)転写用紙がフェザリングの発生を抑える耐フェザリング性を有すること。
(2)転写紙において被印刷物に対して上手く密着できる特性を有すること。
(3)転写紙において転写能が良好であること。
(4)転写時において転写紙の塗工層の熱収縮を抑える耐熱性を有すること。
(5)転写時において斑点カブリを抑える耐斑点カブリ性を有すること。
(1)転写用紙がフェザリングの発生を抑える耐フェザリング性を有すること。
(2)転写紙において被印刷物に対して上手く密着できる特性を有すること。
(3)転写紙において転写能が良好であること。
(4)転写時において転写紙の塗工層の熱収縮を抑える耐熱性を有すること。
(5)転写時において斑点カブリを抑える耐斑点カブリ性を有すること。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、本発明の目的は、以下により達成される。
[1]原紙と、前記原紙の少なくとも片面に対して1層又は2層以上の塗工層とを有し、原紙を基準として最外に位置する最外塗工層が、無機顔料をバインダーよりも多く含有する塗工層であり、無機顔料として焼成カオリン、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコール、並びにカチオン性樹脂を少なくとも含有し、前記ポリビニルアルコールの少なくとも一種が部分ケン化のポリビニルアルコールである、転写捺染法に使用する転写用紙。
[2]最外塗工層において、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールの合計含有量が、最外塗工層中の焼成カオリン100質量部に対して8質量部以上22質量部以下である上記[1]に記載の転写用紙。
[3]上記カチオン性樹脂が、変性ポリアミン及び変性ポリアミドから成る群から選ばれる一種又は二種以上である上記[1]又は[2]に記載の転写用紙。
本発明により、耐フェザリング性を有し、被印刷物に対して上手く密着できる特性を有し、転写能が良好であり、耐熱性を有し、及び耐斑点カブリを有する、捺染インクを用いる転写捺染法に使用する転写用紙を提供することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において、「転写用紙」とは、転写する図柄が印刷される前の白紙状態にある用紙を指す。「転写紙」とは、転写用紙に対して転写する図柄が印刷された状態にある用紙を指す。
本発明において、「転写用紙」とは、転写する図柄が印刷される前の白紙状態にある用紙を指す。「転写紙」とは、転写用紙に対して転写する図柄が印刷された状態にある用紙を指す。
転写用紙は、原紙と、前記原紙の少なくとも片面に対して1層又は2層以上の塗工層とを有する。
原紙は、LBKP(Leaf Bleached Kraft Pulp)、NBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)等の化学パルプ、GP(Groundwood Pulp)、PGW(Pressure GroundWood pulp)、RMP(Refiner Mechanical Pulp)、TMP(ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ChemiThermoMechanical Pulp)、CMP(ChemiMechanical Pulp)、CGP(ChemiGroundwood Pulp)等の機械パルプ、及びDIP(DeInked Pulp)等の古紙パルプから選ばれる一種又は二種以上のパルプを分散したスラリーに、炭酸カルシウム、タルク、クレー及び各種カオリン等から選ばれる填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり剤、カチオン化剤、紙力剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤並びに耐水化剤等の各種添加剤を必要に応じて配合した紙料を抄造して得られる抄造紙から成る。さらに原紙には、前記抄造紙にカレンダー処理、澱粉及びスチレンアクリル系樹脂等で表面サイズ処理若しくは表面処理等を施した上質紙が含まれる。さらに原紙には、表面サイズ処理又は表面処理を施した後にカレンダー処理した上質紙が含まれる。
原紙は、LBKP(Leaf Bleached Kraft Pulp)、NBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)等の化学パルプ、GP(Groundwood Pulp)、PGW(Pressure GroundWood pulp)、RMP(Refiner Mechanical Pulp)、TMP(ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ChemiThermoMechanical Pulp)、CMP(ChemiMechanical Pulp)、CGP(ChemiGroundwood Pulp)等の機械パルプ、及びDIP(DeInked Pulp)等の古紙パルプから選ばれる一種又は二種以上のパルプを分散したスラリーに、炭酸カルシウム、タルク、クレー及び各種カオリン等から選ばれる填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり剤、カチオン化剤、紙力剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤並びに耐水化剤等の各種添加剤を必要に応じて配合した紙料を抄造して得られる抄造紙から成る。さらに原紙には、前記抄造紙にカレンダー処理、澱粉及びスチレンアクリル系樹脂等で表面サイズ処理若しくは表面処理等を施した上質紙が含まれる。さらに原紙には、表面サイズ処理又は表面処理を施した後にカレンダー処理した上質紙が含まれる。
抄造は、紙料を酸性、中性又はアルカリ性に調整して、従来公知の抄紙機を用いて行われる。抄紙機の例としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機、ヤンキー抄紙機等を挙げることができる。
カレンダー処理は、従来公知のカレンダー処理装置を用いて行われる。カレンダー処理装置の例としては、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー等を挙げることができる。
カレンダー処理は、従来公知のカレンダー処理装置を用いて行われる。カレンダー処理装置の例としては、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー等を挙げることができる。
いくつかの実施態様において、上記パルプは、原紙のパルプに対してLBKP及びNBKPの合計が70質量%以上であって、濾水度380ml以上460ml以下の範囲であるLBKPが60質量%以上90質量%以下、並びに濾水度440ml以上520ml以下の範囲であるNBKPが10質量%以上40質量%以下である。これらの理由は、被印刷物に対して上手く密着できる特性及び転写能が良化するからである。被印刷物に対して上手く密着できる特性には紙の伸びが関係する。NBKPは、強度を得ることができるけれども繊維長が長いために繊維間結合が多くて伸び難い。LBKPは、NBKPに比べて繊維長が短く伸び易いけれども保水能があって転写能に悪影響する。前記濾水度は、例えば小さい値であると、紙の保水能及び比表面積が増加する。その結果、捺染インクに対する親和性が高くなって転写能に悪影響する。上記の濾水度の範囲であるLBKP及びNBKPの特定量範囲の組み合わせであれば、転写用紙は、被印刷物に対する密着に関する適度な伸び易さを得ることができかつ転写能に悪影響しない。ここで、濾水度は、ISO5267-2:2001「Pulps-Determination of drainability-Part 2 ”Canadian Standard” freeness method」に準じて求められるCSF濾水度である。
上記塗工層において、原紙を基準として最外に位置する塗工層を最外塗工層という。塗工層が1層の場合は該塗工層が最外塗工層になる。最外塗工層は、最外塗工層を形成する成分において無機顔料がバインダーよりも多く含有する塗工層である。この理由は、捺染インクで図柄を印刷する際に転写用紙の吸収速度及び乾燥性が良いからである。最外塗工層は、無機顔料として焼成カオリンを、並びにバインダーとしてカルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールを少なくとも含有する。塗工層が2層以上の場合、原紙と最外塗工層との間に存在する塗工層は、無機顔料の有無並びに種類及び数量、バインダーの種類及び数量、並びにその他従来公知の添加剤の有無及び数量を特に限定しない。いくつかの実施態様において、最外塗工層を含め塗工層は1層である。この理由は、転写用紙の製造コストが有利になるからである。また、最外塗工層を含む塗工層は、原紙の片面又は両面に有してよい。転写用紙は、本発明に係る最外塗工層が原紙の片面に有する場合、例えば紙のカールを防止する目的又は捺染インクの裏抜けを抑制する目的で、本発明に係る最外塗工層を有しない原紙の反対面にバックコート層を有してよい。
最外塗工層を含む塗工層は、上記原紙又は塗工層に対して、従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いて塗工層塗工液を塗工及び乾燥する方法によって得ることができる。従来公知の塗工装置の例としては、サイズプレス、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、エアナイフコーター、グラビアコーター、バーコーター、Eバーコーター、カーテンコーター等を挙げることができる。従来公知の乾燥装置の例としては、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等の各種乾燥装置を挙げることができる。
塗工層塗工液を塗工及び乾燥後に、塗工層には、カレンダー処理を施すことができる。
塗工層塗工液を塗工及び乾燥後に、塗工層には、カレンダー処理を施すことができる。
いくつかの実施態様において、最外塗工層を含む塗工層の総塗工量は、乾燥固形分で原紙の片面あたり4g/m2以上10g/m2以下である。この理由は、被印刷物に対して上手く密着できる特性が良化するからである。
焼成カオリンは、カオリナイト等のカオリン鉱物で主に構成される、例えば、カオリナイト又はパイロフィライト等を焼成処理したものである。焼成カオリンは、公知の種々製造方法によって得ることができる。焼成カオリンには、例えば、カオリナイトを約650℃~700℃の温度で焼成することにより生成したデヒドロオキシル化、すなわち部分焼成カオリンと、カオリナイトを約1000℃~1050℃で焼成される完全焼成カオリンとがある。焼成カオリンには、粒子の形状が焼成前と変わらない六角板状を維持したもの、及び構造水を失って部分的に又は全体的に非晶質化したものがある。焼成カオリンは、例えば、KaMinLLC社、BASF社、白石工業社、GeorgiaKaolin社、Thiele社、兵庫クレー社及び竹原化学工業社等から市販される。いくつかの実施態様において、焼成カオリンの吸油量が70ml/100g以上である。焼成カオリンの吸油量は上限を特に限定しないものの、いくつかの実施態様において、焼成カオリンの吸油量は150ml/100g以下である。少なくとも一つの実施態様において、焼成カオリンの吸油量は、70ml/100g以上130ml/100g以下である。これらの理由は、耐フェザリング性、耐熱性及び/又は耐斑点カブリ性が良化するからである。
吸油量は、ISO787-5:1980「General methods of test for pigments and extenders - Part 5:Determination of oil absorption value」に準拠して求められる値である。例えば操作手順は次の通りである。まず、焼成カオリンの試料を70℃~80℃に保たれた乾燥機に10時間放置した後に、デシケータ中で室温まで自然に冷却する。次に、ガラス板上に焼成カオリンの試料を約1g秤取し、正確な質量を記録する。続いて、精製アマニ油をビューレットから少量ずつ焼成カオリンの試料の中央に滴下しながらヘラを用いて全体が均一になるように練りまぜる。滴下と練りまぜを繰り返し、全体が均一なかたまりとなり、ヘラでらせん状に巻き起こすことができるようになった時点を終点とする。吸油量は下記式によって求められる。
吸油量(ml/100g)=
[精製アマニ油の滴下量(ml)/焼成カオリンの試料質量(g)]×100
吸油量(ml/100g)=
[精製アマニ油の滴下量(ml)/焼成カオリンの試料質量(g)]×100
最外塗工層は、本発明の効果を阻害しない範囲で焼成カオリン以外の無機顔料を含有することができる。いくつかの実施態様において、原紙の片面における最外塗工層は、最外塗工層における焼成カオリン以外の無機顔料の含有量が、最外塗工層中の焼成カオリンを含む無機顔料100質量部に対して10質量部以下である。無機顔料は、塗工紙分野で従来公知のものである。無機顔料は、例えば、焼成カオリンを除く各種カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、サチンホワイト、リトポン、酸化チタン、酸化亜鉛、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、活性白土及び珪藻土等を挙げることができる。
カルボキシメチルセルロースは、セルロースエーテルの一種であり、従来公知のものであって特に限定されない。カルボキシメチルセルロースにはアルカリ金属塩が含まれる。カルボキシメチルセルロースは、例えば、パルプを原料としてモノクロル酢酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを反応させて得ることができる(直接法)。また、直接法以外にアルセル法及び溶媒法によって得ることができる。カルボキシメチルセルロースは、使用するパルプの性状及び製造方法により様々な分子量又は重合度のものが製造可能である。一般的に、カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースアルカリ金属塩として工業的に生産及び販売される。市販のカルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はカルボキシメチルセルロースカリウムである場合が多い。慣用的には、ナトリウム又はカリウムの記載は省略する。少なくとも一つの実施態様において、カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースナトリウムである。この理由は、カルボキシメチルセルロースナトリウムが商業的に入手し易いからである。カルボキシメチルセルロースは、例えば、シグマアルドリッチ社、ダイセルミライズ社、第一工業製薬社、CPKelco社、日本製紙社、三晶社及びAshland社等から市販される。
いくつかの実施態様において、カルボキシメチルセルロースは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により得られるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量が770,000以下である。また、いくつかの実施態様において、カルボキシメチルセルロースは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により得られるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量が27,000以上である。また、少なくとも一つの実施形態において、カルボキシメチルセルロースは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により得られるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量が27,000以上770,000以下である。この理由は、転写能が良化するからである。
いくつかの実施態様において、カルボキシメチルセルロースのエーテル化度は0.6以上1.27以下である。この理由は、被印刷物に対して上手く密着できる特性が良化するからである。エーテル化度は、セルロースを構成するグルコース環上にある3つの水酸基のうちカルボキシメチル基で置換された水酸基の数(平均値)を指す。
少なくとも一つの実施態様において、カルボキシメチルセルロースは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により得られるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量が27,000以上770,000以下であり、エーテル化度が0.6以上1.27以下である。
いくつかの実施態様において、カルボキシメチルセルロースのエーテル化度は0.6以上1.27以下である。この理由は、被印刷物に対して上手く密着できる特性が良化するからである。エーテル化度は、セルロースを構成するグルコース環上にある3つの水酸基のうちカルボキシメチル基で置換された水酸基の数(平均値)を指す。
少なくとも一つの実施態様において、カルボキシメチルセルロースは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により得られるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量が27,000以上770,000以下であり、エーテル化度が0.6以上1.27以下である。
本明細書において、ポリビニルアルコールとは、未変性のポリビニルアルコール及び各種変性のポリビニルアルコールを含む総称を指す。ポリビニルアルコールの例としては、各種ケン化度及び各種平均重合度のポリビニルアルコール、並びにシリル基、カルボキシル基、アミノ基又はアセトアセチル基等の種々官能基を導入した変性ポリビニルアルコール、並びにエチレン等他の単量体をランダム的、グラフト的又はブロック的に導入した変性ポリビニルアルコール等を挙げることができる。ポリビニルアルコールは、三菱ケミカル社、クラレ社、日本酢ビ・ポバール社、及びデンカ社等から市販される。
最外塗工層のポリビニルアルコールは、少なくとも一種が部分ケン化のポリビニルアルコールである。ここで、部分ケン化のポリビニルアルコールとは、ケン化度が65mol%以上90mol%以下の範囲にあるポリビニルアルコールを指す。いくつかの実施態様において、最外塗工層が含有するポリビニルアルコールは、少なくとも一種が部分ケン化のポリビニルアルコールであって、前記部分ケン化のポリビニルアルコールのケン化度が80mol%以上90mol%以下の範囲である。この理由は、カルボキシメチルセルロースとの相溶性に優れる及び耐フェザリング性が良化するからである。
最外塗工層のポリビニルアルコールは、少なくとも一種が部分ケン化のポリビニルアルコールである。ここで、部分ケン化のポリビニルアルコールとは、ケン化度が65mol%以上90mol%以下の範囲にあるポリビニルアルコールを指す。いくつかの実施態様において、最外塗工層が含有するポリビニルアルコールは、少なくとも一種が部分ケン化のポリビニルアルコールであって、前記部分ケン化のポリビニルアルコールのケン化度が80mol%以上90mol%以下の範囲である。この理由は、カルボキシメチルセルロースとの相溶性に優れる及び耐フェザリング性が良化するからである。
いくつかの実施態様において、カルボキシメチルセルロースとポリビニルアルコールとの原紙の片面における最外塗工層中の含有質量比は、最外塗工層中のカルボキシメチルセルロース100質量部に対してポリビニルアルコールが90質量部以上150質量部以下である。少なくとも一つの実施態様において、カルボキシメチルセルロースとポリビニルアルコールとの原紙の片面における最外塗工層中の含有質量比は、最外塗工層中のカルボキシメチルセルロース100質量部に対してポリビニルアルコールが90質量部以上150質量部以下であって、なおかつ前記ポリビニルアルコールの少なくとも一種がケン化度80mol%以上90mol%以下の範囲である。これらの理由は、耐フェザリング性、被印刷物に対して上手く密着できる特性及び耐熱性が良化するからである。
最外塗工層は、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコール以外に従来公知のバインダーを含有することができる。従来公知のバインダーは、例えば、澱粉、加工澱粉及び変性澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロースを除くヒドロキシエチルセルロース等のセルロース類、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、プルラン、アラビアゴム、カラヤゴム及びアルブミン等の天然由来の樹脂又はその誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸系樹脂、アクリル酸系樹脂、メタクリル酸系樹脂、アクリレート系樹脂、メタクリレート系樹脂、アクリレートブタジエン共重合体、スチレンブタジエン共重合体及びエチレン酢酸ビニル共重合体等の共重合系樹脂並びにこれらの各種共重合系樹脂のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性樹脂、メラミン樹脂及び尿素樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリビニルブチラール、並びにアルキッド系樹脂等を挙げることができる。
いくつかの実施態様において、原紙の片面における最外塗工層は、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールの合計含有量が、最外塗工層中のバインダーに対して90質量%以上である。少なくとも一つの実施態様において、原紙の片面における最外塗工層は、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールの合計含有量が、最外塗工層中のバインダーに対して100質量%である。これらの理由は、被印刷物に対して上手く密着できる特性、転写能及び耐熱性が良化するからである。
いくつかの実施態様において、原紙の片面における最外塗工層は、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールの合計含有量が、最外塗工層中の焼成カオリン100質量部に対して8質量部以上22質量部以下である。この理由は、被印刷物に対して上手く密着できる特性、耐熱性及び/又は耐斑点カブリが良化するからである。
少なくとも一つの実施態様において、原紙の片面における最外塗工層は、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールの合計含有量が最外塗工層中のバインダーに対して90質量%以上かつ最外塗工層中の焼成カオリン100質量部に対して8質量部以上22質量部以下である。
いくつかの実施態様において、原紙の片面における最外塗工層は、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールの合計含有量が、最外塗工層中の焼成カオリン100質量部に対して8質量部以上22質量部以下である。この理由は、被印刷物に対して上手く密着できる特性、耐熱性及び/又は耐斑点カブリが良化するからである。
少なくとも一つの実施態様において、原紙の片面における最外塗工層は、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールの合計含有量が最外塗工層中のバインダーに対して90質量%以上かつ最外塗工層中の焼成カオリン100質量部に対して8質量部以上22質量部以下である。
無機顔料は、耐熱性に寄与するものの、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールを吸着するために、最外塗工層の柔軟性を低下する。その結果、転写用紙は被印刷物に上手く密着できる特性が悪化する。また例えば、捺染インク中の色材を無機顔料は吸着し易い。その結果、転写紙は転写能が悪化する。しかしながら、無機顔料が焼成カオリンであると、焼成カオリンは、転写紙の被印刷物に上手く密着できる特性及び転写能を阻害しない。結果、転写紙は、被印刷物に上手く密着できる特性を有し及び転写能が良好になる。この理由は不明である。本発明者らは、焼成カオリンの極性変化と非晶質化とに起因すると考える。さらに、本発明者らは、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール及び焼成カオリンを含有する最外塗工層であると、転写用紙が耐斑点カブリ性を有することを見出した。この理由は不明である。本発明者らは、焼成カオリン、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールと、焼成カオリンとの相乗効果による内部構造が規則性に優れた層を形成するからと考える。
最外塗工層は、必要に応じて塗工紙分野で従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤の例としては、分散剤、定着剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤及び防バイ剤等を挙げることができる。
また、最外塗工層は、転写捺染法で従来公知の各種助剤を含有することができる。助剤は、塗工層塗工液の各種物性を最適化する、又は昇華型捺染インク等の捺染インクが含む色材の染着性を向上させるため等の目的で使用する材料である。助剤は、例えば、各種界面活性剤、保湿剤、湿潤剤、pH調整剤、アルカリ剤、濃染化剤、脱気剤及び還元防止剤等を挙げることができる。
また、最外塗工層は、転写捺染法で従来公知の各種助剤を含有することができる。助剤は、塗工層塗工液の各種物性を最適化する、又は昇華型捺染インク等の捺染インクが含む色材の染着性を向上させるため等の目的で使用する材料である。助剤は、例えば、各種界面活性剤、保湿剤、湿潤剤、pH調整剤、アルカリ剤、濃染化剤、脱気剤及び還元防止剤等を挙げることができる。
最外塗工層はカチオン性樹脂を含有する。カチオン性樹脂は、従来公知のカチオン性樹脂であって、プロトンが配位し易く、水に溶解したとき解離してカチオン性を呈する1級~3級アミン又は4級アンモニウム塩を含有する樹脂である。また、カチオン性樹脂は、カチオン化度が0meq/g超3meq/g以下の低カチオン性樹脂又はカチオン化度が3meq/g超の高カチオン性樹脂である。ここで、カチオン化度は、コロイド滴定法によって測定される値である。
従来公知のカチオン性樹脂は、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアミン及び変性ポリアミン、ポリビニルピリジン、ポリアミドアミン、ポリビニルアミン、ポリアミド及び変性ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリアリルアミン、ポリジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリジアルキルアミノエチルアクリレート、ポリジアルキルアミノエチルメタクリルアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミド等との共重合物、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、ジシアンジアミドホルマリン重縮合物、ジシアンジアミドジエチレントリアミン重縮合物、メラミン樹脂、並びに尿素系樹脂を挙げることができる。いくつかの実施態様において、最外塗工層は、上記カチオン性樹脂からなる群から選ばれる一種又は二種以上を含有する。
従来公知のカチオン性樹脂は、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアミン及び変性ポリアミン、ポリビニルピリジン、ポリアミドアミン、ポリビニルアミン、ポリアミド及び変性ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリアリルアミン、ポリジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリジアルキルアミノエチルアクリレート、ポリジアルキルアミノエチルメタクリルアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミド等との共重合物、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、ジシアンジアミドホルマリン重縮合物、ジシアンジアミドジエチレントリアミン重縮合物、メラミン樹脂、並びに尿素系樹脂を挙げることができる。いくつかの実施態様において、最外塗工層は、上記カチオン性樹脂からなる群から選ばれる一種又は二種以上を含有する。
いくつかの実施態様において、原紙の片面における最外塗工層は、最外塗工層中のカチオン性樹脂の含有量が、最外塗工層中の焼成カオリン100質量部に対して0.5質量部以上2.0質量部以下である。この理由は、耐フェザリング性、転写能及び/又は耐斑点カブリ性が良化するからである。
いくつかの実施態様において、カチオン性樹脂は、変性ポリアミン又は変性ポリアミドから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。この理由は、耐フェザリング性、転写能及び耐斑点カブリ性が良化するからである。
変性ポリアミンは、従来公知の化合物であって例えば、カルボキシル変性、ヒドロキシル変性、アミド変性、イミノ変性等を挙げることができ、さらに、アミン類とエポキシ化合物類との反応物、アミン類と有機ハロゲン化化合物類との反応物、アミン類とイソシアネート化合物類との反応物、アミン類と尿素類との反応物、アミン類とα,β-不飽和ニトリル化合物との反応物等を挙げることができる。さらに、前記アミン類とエポキシ化合物類との反応物は、ジメチルアミンエピクロルヒドリン重縮合物等の脂肪族モノアミンとエピハロヒドリン化合物との重縮合物及びジエチレントリアミンエピクロルヒドリン重縮合物等の脂肪族ポリアミンとエピハロヒドリン化合物との重縮合物等を挙げることができる。変性ポリアミンは、例えば、田岡化学工業社、星光PMC社及び四日市合成社等から市販される。
変性ポリアミドは、従来公知の化合物であって例えば、N-置換アミド基を有するポリアミドである。前記N-置換アミド基を成すN-置換基の例としては、N-アルコキシアルキル基、N-アルキル基等を挙げることができる。N-置換基は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。いくつかの実施態様において、N-アルコキシアルキル基は、アルコキシ基の炭素数が1~4及びアルキル基の炭素数が1~4である。いくつかの実施態様において、N-アルキル基は、アルキル基の炭素数が1~4である。これらの理由は、耐フェザリング性が良化するからである。N-アルコキシアルキル基の例としては、N-メトキシメチル基、N-エトキシメチル基及びN-ブトキシメチル基等を挙げることができる。N-アルキル基の例としては、N-メチル基、N-エチル基、N-プロピル基及びN-ブチル基等を挙げることができる。いくつかの実施態様において、変性ポリアミドにおけるN-置換アミド基の含有量は、アミド基の全体量に対して20mol%以上50mol%以下である。変性ポリアミドは、例えば、田岡化学工業社、星光PMC社及び三井化学社等から市販される。
転写紙は、転写用紙の最外塗工層を有する面側に、昇華型捺染インク等の捺染インクを備える従来公知の各種印刷方式を用いて図柄を印刷することによって得ることができる。転写用紙に図柄を印刷する各種印刷方式は特に限定されない。印刷方式は、例えば、グラビア印刷方式、インクジェット印刷方式、電子写真印刷方式及びスクリーン印刷方式等を挙げることができる。少なくとも一つの実施態様において、転写用紙に図柄を印刷する印刷方式はインクジェット印刷方式である。少なくとも一つの実施態様において、転写捺染法の捺染インクは昇華型捺染インクである。
転写捺染法は、転写用紙に図柄を印刷して転写紙を得る工程と、転写紙の図柄を印刷した面と被印刷物とを対向して密着させる工程と、転写紙を被印刷物から剥離する工程とを有する方法である。密着させる工程には、必要に応じて、加熱又は加熱加圧が含まれる。密着させる工程における加熱及び加圧のそれぞれの条件は、転写捺染法で従来公知の条件である。密着させる工程は、例えば、プレス機、加熱ロール又は加熱ドラム等により転写紙を被印刷物に密着させ加熱又は加熱加圧する方法を挙げることができる。
被印刷物は、繊維材料であって、特に限定されない。繊維材料は、天然繊維材料及び合成繊維材料のいずれでも構わない。天然繊維材料は、例えば、綿、麻、リヨセル、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維材料、絹、羊毛、獣毛等の蛋白質系繊維材料等を挙げることができる。合成繊維材料は、例えば、ポリアミド繊維(ナイロン)、ビニロン、ポリエスエル、ポリアクリル等を挙げることができる。少なくとも一つの実施態様において、昇華型捺染インクを用いる場合、繊維材料はポリエステルである。また、必要に応じて、染着促進に効果のある薬剤等で被印刷物を前処理してよい。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。ここで「質量部」及び「質量%」は、乾燥固形分量あるいは実質成分量の各々「質量部」及び「質量%」を表す。塗工層の付与量は乾燥固形分量を表す。
(原紙)
CSF濾水度420mlのLBKP700質量部及びCSF濾水度480mlのNBKP300質量部を水に分散したパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム40質量部、カチオン化澱粉10質量部、硫酸アルミニウム9質量部、アルキルケテンダイマー型サイズ剤1質量部を添加して、長網抄紙機で抄造して抄造紙を得た。得た抄造紙をマシンカレンダー処理をしてカレンダー処理抄造紙を得た。この様にして得た紙の密度は、0.76g/cm3であった。カレンダー処理抄造紙の両面に対してサイズプレスを用いて、酸化澱粉を片面あたりの塗工量が1g/m2になるように塗工して原紙を作製した。
CSF濾水度420mlのLBKP700質量部及びCSF濾水度480mlのNBKP300質量部を水に分散したパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム40質量部、カチオン化澱粉10質量部、硫酸アルミニウム9質量部、アルキルケテンダイマー型サイズ剤1質量部を添加して、長網抄紙機で抄造して抄造紙を得た。得た抄造紙をマシンカレンダー処理をしてカレンダー処理抄造紙を得た。この様にして得た紙の密度は、0.76g/cm3であった。カレンダー処理抄造紙の両面に対してサイズプレスを用いて、酸化澱粉を片面あたりの塗工量が1g/m2になるように塗工して原紙を作製した。
(最外塗工層の塗工層塗工液)
塗工層塗工液は、下記の内容により調製した。
無機顔料 種類は表1に記載/100質量部
分散剤(ポリアクリル酸塩系) 0.8質量部
バインダー 種類及び質量部は表1に記載
カチオン性樹脂 種類は表1に記載/1質量部
上記の内容で配合し、水で混合・分散して、濃度30質量%に調整した。
ただし、比較例6では無機顔料を、比較例7ではカチオン性樹脂を配合しなかった。また、比較例6では塗工層塗工液を濃度15質量%とした。
塗工層塗工液は、下記の内容により調製した。
無機顔料 種類は表1に記載/100質量部
分散剤(ポリアクリル酸塩系) 0.8質量部
バインダー 種類及び質量部は表1に記載
カチオン性樹脂 種類は表1に記載/1質量部
上記の内容で配合し、水で混合・分散して、濃度30質量%に調整した。
ただし、比較例6では無機顔料を、比較例7ではカチオン性樹脂を配合しなかった。また、比較例6では塗工層塗工液を濃度15質量%とした。
最外塗工層の塗工層塗工液に用いた材料は以下である。
無機顔料1:吸油量54ml/100gの焼成カオリン
無機顔料2:吸油量60ml/100gの焼成カオリン
無機顔料3:吸油量70ml/100gの焼成カオリン
無機顔料4:吸油量80ml/100gの焼成カオリン
無機顔料5:吸油量90ml/100gの焼成カオリン
無機顔料6:吸油量130ml/100gの焼成カオリン
無機顔料7:吸油量90ml/100gの炭酸カルシウム
セルロース1:カルボキシメチルセルロース
(重量平均分子量260,000、エーテル化度0.7)
セルロース2:ヒドロキシメチルセルロース
PVA1:ケン化度69.5~72.5mol%のポリビニルアルコール
PVA2:ケン化度86.5~89mol%のポリビニルアルコール
PVA3:ケン化度98~99mol%のポリビニルアルコール
カチオン性樹脂1:変性ポリアミン
カチオン性樹脂2:変性ポリアミド
カチオン性樹脂3:ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド
無機顔料1:吸油量54ml/100gの焼成カオリン
無機顔料2:吸油量60ml/100gの焼成カオリン
無機顔料3:吸油量70ml/100gの焼成カオリン
無機顔料4:吸油量80ml/100gの焼成カオリン
無機顔料5:吸油量90ml/100gの焼成カオリン
無機顔料6:吸油量130ml/100gの焼成カオリン
無機顔料7:吸油量90ml/100gの炭酸カルシウム
セルロース1:カルボキシメチルセルロース
(重量平均分子量260,000、エーテル化度0.7)
セルロース2:ヒドロキシメチルセルロース
PVA1:ケン化度69.5~72.5mol%のポリビニルアルコール
PVA2:ケン化度86.5~89mol%のポリビニルアルコール
PVA3:ケン化度98~99mol%のポリビニルアルコール
カチオン性樹脂1:変性ポリアミン
カチオン性樹脂2:変性ポリアミド
カチオン性樹脂3:ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド
(転写用紙)
転写用紙を以下の手順にて作製した。
原紙の片面に対して、最外塗工層の塗工層塗工液をエアナイフコーターにて塗工及び熱風乾燥機にて乾燥した。乾燥後に、カレンダー処理を施して転写用紙を得た。塗工量は7g/m2とした。
転写用紙を以下の手順にて作製した。
原紙の片面に対して、最外塗工層の塗工層塗工液をエアナイフコーターにて塗工及び熱風乾燥機にて乾燥した。乾燥後に、カレンダー処理を施して転写用紙を得た。塗工量は7g/m2とした。
(転写紙)
得られた転写用紙に、昇華型捺染インクを使用したインクジェットプリンター(JV2-130II、ミマキエンジニアリング社製)を用いて、昇華型捺染インク(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の各インク単色、並びにイエローとシアンとの混色であるグリーン、イエローとマゼンタとの混色であるレッド、シアンとマゼンタとの混色であるブルー及びイエローとシアンとマゼンタとの混色であるブラックから成る評価用図柄を印刷し、転写紙を得た。
得られた転写用紙に、昇華型捺染インクを使用したインクジェットプリンター(JV2-130II、ミマキエンジニアリング社製)を用いて、昇華型捺染インク(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の各インク単色、並びにイエローとシアンとの混色であるグリーン、イエローとマゼンタとの混色であるレッド、シアンとマゼンタとの混色であるブルー及びイエローとシアンとマゼンタとの混色であるブラックから成る評価用図柄を印刷し、転写紙を得た。
(耐フェザリング性)
得られた転写紙について、印刷された図柄を肉眼及びルーペ(3.5倍)で観察し、耐フェザリング性を下記の基準で評価した。本発明において、転写用紙は、評価がA又はBであれば耐フェザリング性を有するものとする。
A:ルーペによる観察で図柄の境界線が鮮明である。
B:ルーペによる観察で図柄の境界線が概ね鮮明である。
C:肉眼による観察で図柄の境界線が概ね鮮明である。
D:肉眼による観察で図柄の境界線に髭状の滲みが認められる。
得られた転写紙について、印刷された図柄を肉眼及びルーペ(3.5倍)で観察し、耐フェザリング性を下記の基準で評価した。本発明において、転写用紙は、評価がA又はBであれば耐フェザリング性を有するものとする。
A:ルーペによる観察で図柄の境界線が鮮明である。
B:ルーペによる観察で図柄の境界線が概ね鮮明である。
C:肉眼による観察で図柄の境界線が概ね鮮明である。
D:肉眼による観察で図柄の境界線に髭状の滲みが認められる。
(転写捺染)
被印刷物として、白色ポリエステル布を用いた。転写紙の塗工層を有する側の面と白色ポリエステル布とを対向させて密着した。白色ポリエステル布が密着した状態の転写紙を、熱転写用プレス機(米国INSTA社、ヒートプレス機モデル204)を用いて、温度190℃、30~60秒間加熱した。
被印刷物として、白色ポリエステル布を用いた。転写紙の塗工層を有する側の面と白色ポリエステル布とを対向させて密着した。白色ポリエステル布が密着した状態の転写紙を、熱転写用プレス機(米国INSTA社、ヒートプレス機モデル204)を用いて、温度190℃、30~60秒間加熱した。
(被印刷物に対して上手く密着できる特性(密着性))
実施例では、被印刷物に対して上手く密着できる特性を「密着性」と記す。密着性は、転写捺染の時間を45秒として図柄が形成された被印刷物に対して、転写紙の浮き又は位置ズレによって発生する図柄の鮮鋭さの低下及び歪みの観点から目視で観察し、密着性を下記の基準で評価した。本発明において、転写用紙は、評価がA、B又はCであれば密着性を有するものとする。
A:鮮鋭さの低下及び歪みが無く、極めて良好。
B:鮮鋭さの低下及び/又は歪みが極僅かであって、良好。
C:鮮鋭さの低下及び/又は歪みが僅かであって、概ね良好。
D:前記Cより劣り、鮮鋭さの低下及び/又は歪みが認められる。
実施例では、被印刷物に対して上手く密着できる特性を「密着性」と記す。密着性は、転写捺染の時間を45秒として図柄が形成された被印刷物に対して、転写紙の浮き又は位置ズレによって発生する図柄の鮮鋭さの低下及び歪みの観点から目視で観察し、密着性を下記の基準で評価した。本発明において、転写用紙は、評価がA、B又はCであれば密着性を有するものとする。
A:鮮鋭さの低下及び歪みが無く、極めて良好。
B:鮮鋭さの低下及び/又は歪みが極僅かであって、良好。
C:鮮鋭さの低下及び/又は歪みが僅かであって、概ね良好。
D:前記Cより劣り、鮮鋭さの低下及び/又は歪みが認められる。
(転写能)
転写捺染時の加熱時間を変化させて、図柄を形成した白色ポリエステルにおける図柄の色濃度を目視で観察し、下記の基準で評価した。加熱時間は、30秒間、45秒間及び60秒間とした。本発明において、転写用紙は、評価がA、B又はCであれば転写能が良好であるものとする。
A:30秒、45秒及び60秒で色濃度に変化が無い。
B:30秒と45秒との間では色濃度の変化が極僅かに認められる。
45秒と60秒との間では色濃度の変化が認められない。
C:30秒と45秒との間では色濃度の変化が僅かに認められる。
45秒と60秒との間では色濃度の変化が認められない。
D:45秒と60秒との間で色濃度の変化が僅かに認められる。
E:45秒と60秒との間で色濃度の変化が認められる。
転写捺染時の加熱時間を変化させて、図柄を形成した白色ポリエステルにおける図柄の色濃度を目視で観察し、下記の基準で評価した。加熱時間は、30秒間、45秒間及び60秒間とした。本発明において、転写用紙は、評価がA、B又はCであれば転写能が良好であるものとする。
A:30秒、45秒及び60秒で色濃度に変化が無い。
B:30秒と45秒との間では色濃度の変化が極僅かに認められる。
45秒と60秒との間では色濃度の変化が認められない。
C:30秒と45秒との間では色濃度の変化が僅かに認められる。
45秒と60秒との間では色濃度の変化が認められない。
D:45秒と60秒との間で色濃度の変化が僅かに認められる。
E:45秒と60秒との間で色濃度の変化が認められる。
(耐熱性)
図柄が形成された被印刷物に対して、転写紙の塗工層が熱収縮したことによって発生する図柄本来の輪郭に沿って現われる線を目視で観察し、耐熱性を下記の基準で評価した。本発明において、転写用紙は、評価がA、B又はCであれば耐熱性を有するものとする。
A:図柄の輪郭に沿った線が無く、極めて良好。
B:図柄の輪郭に沿った極薄い線が極僅かに視認される程度で、良好。
C:図柄の輪郭に沿った極薄い線が僅かに視認される程度で、概ね良好。
D:前記Cより劣り、図柄の輪郭に沿って極薄い線が視認される。
図柄が形成された被印刷物に対して、転写紙の塗工層が熱収縮したことによって発生する図柄本来の輪郭に沿って現われる線を目視で観察し、耐熱性を下記の基準で評価した。本発明において、転写用紙は、評価がA、B又はCであれば耐熱性を有するものとする。
A:図柄の輪郭に沿った線が無く、極めて良好。
B:図柄の輪郭に沿った極薄い線が極僅かに視認される程度で、良好。
C:図柄の輪郭に沿った極薄い線が僅かに視認される程度で、概ね良好。
D:前記Cより劣り、図柄の輪郭に沿って極薄い線が視認される。
(耐斑点カブリ性)
転写後に転写紙を剥離した被印刷物において、被印刷物の図柄を形成した領域について斑点の有無を肉眼及びルーペ(3.5倍)で観察した。観察結果から、耐斑点カブリ性を下記の基準で評価した。本発明において、転写用紙は、評価がA、B又はCであれば耐斑点カブリ性を有するものとする。
A:ルーペによる観察で斑点が認められず、良好なレベル。
B:ルーペによる観察で斑点が極僅かに認められるものの、
肉眼による観察で斑点汚れが認められず、概ね良好なレベル。
C:ルーペによる観察で斑点が僅かに認められるものの、
肉眼による観察で不具合になる程の斑点が認められず、許容レベル。
D:肉眼による観察で不具合になる斑点が認められ、実用不可レベル。
転写後に転写紙を剥離した被印刷物において、被印刷物の図柄を形成した領域について斑点の有無を肉眼及びルーペ(3.5倍)で観察した。観察結果から、耐斑点カブリ性を下記の基準で評価した。本発明において、転写用紙は、評価がA、B又はCであれば耐斑点カブリ性を有するものとする。
A:ルーペによる観察で斑点が認められず、良好なレベル。
B:ルーペによる観察で斑点が極僅かに認められるものの、
肉眼による観察で斑点汚れが認められず、概ね良好なレベル。
C:ルーペによる観察で斑点が僅かに認められるものの、
肉眼による観察で不具合になる程の斑点が認められず、許容レベル。
D:肉眼による観察で不具合になる斑点が認められ、実用不可レベル。
各評価結果を表1に記載する。
表1の評価結果から、本発明に該当する実施例1~15は、耐フェザリング性を有し、密着性を有し、転写能が良好であり、耐熱性を有し、及び耐斑点カブリ性を有する転写用紙であると分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1~7は、本発明に係る効果の少なくとも一つを満足できない転写用紙であると分かる。
主に、実施例2~6の間の対比から、最外塗工層において、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールの合計含有量が最外塗工層中の焼成カオリン100質量部に対して8質量部以上22質量部以下である転写用紙は、密着性、耐熱性及び/又は耐斑点カブリ性が良化すると分かる。
主に、実施例2、9及び10の間の対比から、カチオン性樹脂が変性ポリアミン又は変性ポリアミドである転写用紙は、耐フェザリング性、転写能及び耐斑点カブリ性が良化すると分かる。
主に、実施例2~6の間の対比から、最外塗工層において、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールの合計含有量が最外塗工層中の焼成カオリン100質量部に対して8質量部以上22質量部以下である転写用紙は、密着性、耐熱性及び/又は耐斑点カブリ性が良化すると分かる。
主に、実施例2、9及び10の間の対比から、カチオン性樹脂が変性ポリアミン又は変性ポリアミドである転写用紙は、耐フェザリング性、転写能及び耐斑点カブリ性が良化すると分かる。
前述した本発明の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
<1>
原紙と、前記原紙の少なくとも片面に対して1層又は2層以上の塗工層とを有し、原紙を基準として最外に位置する最外塗工層が、無機顔料として焼成カオリン、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコール、並びにカチオン性樹脂を少なくとも含有し、前記ポリビニルアルコールの少なくとも一種が部分ケン化のポリビニルアルコールである、転写捺染法に使用する転写用紙。
原紙と、前記原紙の少なくとも片面に対して1層又は2層以上の塗工層とを有し、原紙を基準として最外に位置する最外塗工層が、無機顔料として焼成カオリン、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコール、並びにカチオン性樹脂を少なくとも含有し、前記ポリビニルアルコールの少なくとも一種が部分ケン化のポリビニルアルコールである、転写捺染法に使用する転写用紙。
<2>
最外塗工層において、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールの合計含有量が、最外塗工層中の焼成カオリン100質量部に対して8質量部以上22質量部以下である上記<1>に記載の転写用紙。
最外塗工層において、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールの合計含有量が、最外塗工層中の焼成カオリン100質量部に対して8質量部以上22質量部以下である上記<1>に記載の転写用紙。
<3>
上記カチオン性樹脂が、変性ポリアミン及び変性ポリアミドから成る群から選ばれる一種又は二種以上である上記<1>又は上記<2>に記載の転写用紙。
上記カチオン性樹脂が、変性ポリアミン及び変性ポリアミドから成る群から選ばれる一種又は二種以上である上記<1>又は上記<2>に記載の転写用紙。
<4>
上記焼成カオリンの吸油量が、70ml/100g以上130ml/100g以下である上記<1>~<3>のいずれかに記載の転写用紙。
上記焼成カオリンの吸油量が、70ml/100g以上130ml/100g以下である上記<1>~<3>のいずれかに記載の転写用紙。
<5>
カルボキシメチルセルロースとポリビニルアルコールとの最外塗工層中の含有質量比が最外塗工層中のカルボキシメチルセルロース100質量部に対してポリビニルアルコールが90質量部以上150質量部以下である上記<1>~<4>のいずれかに記載の転写用紙。
カルボキシメチルセルロースとポリビニルアルコールとの最外塗工層中の含有質量比が最外塗工層中のカルボキシメチルセルロース100質量部に対してポリビニルアルコールが90質量部以上150質量部以下である上記<1>~<4>のいずれかに記載の転写用紙。
Claims (3)
- 原紙と、前記原紙の少なくとも片面に対して1層又は2層以上の塗工層とを有し、原紙を基準として最外に位置する最外塗工層が、無機顔料をバインダーよりも多く含有する塗工層であり、前記無機顔料として焼成カオリン、前記バインダーとしてカルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコール、並びにカチオン性樹脂を少なくとも含有し、前記ポリビニルアルコールが部分ケン化のポリビニルアルコールである、転写捺染法に使用する転写用紙。
- 最外塗工層において、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールの合計含有量が、最外塗工層中の焼成カオリン100質量部に対して8質量部以上22質量部以下である請求項1に記載の転写用紙。
- 前記カチオン性樹脂が、変性ポリアミン及び変性ポリアミドから成る群から選ばれる一種又は二種以上である請求項1又は2に記載の転写用紙。
Priority Applications (1)
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JP2021030383A JP2022131434A (ja) | 2021-02-26 | 2021-02-26 | 転写用紙 |
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JP2021030383A JP2022131434A (ja) | 2021-02-26 | 2021-02-26 | 転写用紙 |
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