JP6645327B2 - 昇華型インクジェット捺染用転写紙とその製造方法 - Google Patents
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(i)コンピューターを用いて製作された画像を、昇華性転写インク(以下、単に「インク」と記載することがある。)を用いたインクジェットプリンタによって、転写紙上に印刷する。
(ii)印刷後の転写紙と布生地とを重ね合せ、ヒートプレスによってインクを気化させて、転写紙上に印刷されていた画像を布生地上に熱転写させる。画像を転写した後の転写紙は廃棄する。
以下、本実施形態の転写紙を構成する各材料について詳細に説明する。
(基紙)
本実施形態の転写紙に用いる基紙としては、片艶紙、上質紙等が好ましく使用される。本実施形態では、透気度の高い基紙を用いてインク受容層を転写紙表面に適度に保持され易くする観点から、紙の抄造と塗工液の塗工を一体で行うオンマシン方式で得られる基紙を用いることがより好ましい。
(a)基紙上に形成されたインク受容層中のインクが加熱されて気化したときに、転写紙を通り抜けることが抑制される。その結果、熱転写装置がインクによって汚染されるのを防止することができる。
(b)基紙内へのインク受容層の浸透が抑制されるため、インクジェット印刷する際にインクが転写紙表層に保持されやすくなり、転写紙上の印画濃度が増大する。
(c)インクの裏抜けが抑制されて、布生地に転写されるインク量が増大することから、布生地上のインクの転写濃度が高いものとなる。
インク受容層は、顔料とバインダーを含有している。顔料はインクをインク受容層内に保持しておくために用いられる。また、バインダーは顔料を保持しつつ、基紙上に塗膜を形成するために用いられる。インク受容層は、インクジェットによって印刷されたインクを一旦保持し、その後、加熱によってインクを昇華させて、布生地に転写させることができるものである。
本実施形態において、インクの転写対象となる布生地は、特に限定されない。転写されるインクの種類に応じて、種々の布生地を用いることができる。布生地の素材としては、例えば、綿、麻等の植物繊維、毛、絹等の動物繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の合成繊維等が挙げられる。また、布生地を構成する繊維は、短繊維であっても長繊維であってもよい。
(基紙の製造方法)
基紙は、常法により各種抄紙機により抄紙され、湿紙を形成した後、乾燥させることにより得ることができる。その後、表面サイズプレス処理マシンカレンダー等による平滑化処理等、常法による処理工程を経て製造される。
インク受容層用塗工液は、前記のバインダーおよび顔料に、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤等の各種助剤を適宜添加して調製される。塗工液の溶剤としては、通常、水が使用される。
インク受容層は、例えば、基紙の片面にインク受容層用塗工液を塗工した後、塗工液を乾燥させることによって、形成することができる。インク受容層の塗工量は、特に限定されないが、特定の基材を用いることから比較的少ない塗工量で効果を発揮させることができる。乾燥後の塗工量(固形分質量)で好ましくは1〜4g/m2程度であり、より好ましくは1〜3g/m2程度であり、更に好ましくは1.5〜2.5g/m2程度である。
(基紙Aの作成)
カナダ標準パルプ濾水度が250mlのLBKP100%からなるパルプスラリーに、填料としてタルクを支持体灰分が5%となるように添加した。その後、パルプ固形分に対して硫酸アルミニウム1.0%、カチオン澱粉0.5%、内添サイズ剤0.5%を順次添加し、紙料を調製した。得られた紙料を長網抄紙機で抄紙して、透気度30秒、坪量50g/m2の基紙Aを得た。
顔料として、(a1)合成非晶質シリカ5部、バインダーとして、(b1)カルボキシメチルセルロース95部を使用し、水を加えて、固形分濃度が13%である塗工液Aを調製した。
前記基紙Aの片方の表面上に、乾燥時の固形分質量が2g/m2となるように前記塗工液Aを塗工装置としてゲートロールコーターを用いてオンマシン塗工し、乾燥して、昇華型インクジェット捺染用転写紙Aを得た。インク受容層表面の二乗平均平方根粗さは4.0μm未満であった。
(基紙Bの作成)
カナダ標準パルプ濾水度が200mlのLBKP100%からなるパルプスラリーに、填料としてタルクを支持体灰分が5%となるように添加した。その後、パルプ固形分に対して硫酸アルミニウム1.0%、カチオン澱粉0.5%、内添サイズ剤0.5%を順次添加し、紙料を調製した。得られた紙料を長網抄紙機で抄紙して、透気度50秒、坪量50g/m2の基紙Bを得た。
実施例2は、基紙Aを基紙Bに変更した以外は実施例1と同様にして、昇華型インクジェット捺染用転写紙Bを得た。
(基紙Cの作成)
カナダ標準パルプ濾水度が150mlのLBKP100%からなるパルプスラリーに、填料としてタルクを支持体灰分が5%となるように添加した。その後、パルプ固形分に対して硫酸アルミニウム1.0%、カチオン澱粉0.5%、内添サイズ剤0.5%を順次添加し、紙料を調製した。得られた紙料を長網抄紙機で抄紙して、透気度80秒、坪量50g/m2の基紙Cを得た。
実施例3は、基紙Aを基紙Cに変更した以外は実施例1と同様にして、昇華型インクジェット捺染用転写紙Cを得た。
(基紙Dの作成)
カナダ標準パルプ濾水度が300mlのLBKP100%からなるパルプスラリーに、填料としてタルクを支持体灰分が5%となるように添加した。その後、パルプ固形分に対して硫酸アルミニウム1.0%、カチオン澱粉0.5%、内添サイズ剤0.5%を順次添加し、紙料を調製した。得られた紙料を長網抄紙機で抄紙して、湿紙でのプレスを強化することで、透気度80秒、坪量50g/m2の基紙Dを得た。
実施例4は、基紙Aを基紙Dに変更した以外は実施例1と同様にして、昇華型インクジェット捺染用転写紙Dを得た。
(基紙Eの作成)
カナダ標準パルプ濾水度が100mlのLBKP100%からなるパルプスラリーに、填料としてタルクを支持体灰分が5%となるように添加した。その後、パルプ固形分に対して硫酸アルミニウム1.0%、カチオン澱粉0.5%、内添サイズ剤0.5%を順次添加し、紙料を調製した。得られた紙料を長網抄紙機で抄紙して、透気度100秒、坪量50g/m2の基紙Eを得た。
実施例5は、基紙Aを基紙Eに変更した以外は実施例1と同様にして、昇華型インクジェット捺染用転写紙Eを得た。
(基紙Fの作成)
カナダ標準パルプ濾水度200mlのLBKPとカナダ標準パルプ濾水度200mlのNBKPを質量80:20の割合で混合し、パルプスラリーに対して硫酸アルミニウム0.5%、カチオン澱粉0.4%、内添サイズ剤0.5%を順次添加し、紙料を調製した。得られた紙料を長網抄紙機で抄紙して、湿紙でのプレスを強化することで透気度150秒、坪量50g/m2の基紙Fを得た。
実施例6は、基紙Aを基紙Fに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例6の昇華型インクジェット捺染用転写紙Fを得た。
顔料として、(a1)合成非晶質シリカ5部の代わりに、(a2)合成非晶質シリカ(粒径大)5部を用いる以外は実施例2と同様にして、インク受容層表面の二乗平均平方根粗さが4.0μm以上である参考例7のインクジェット捺染用転写紙Gを得た。
顔料として、(a1)合成非晶質シリカ30部、バインダーとして(b1)カルボキシメチルセルロース70部を用いる以外は実施例2と同様にして、参考例8の昇華型インクジェット捺染用転写紙Hを得た。
顔料として、(a1)合成非晶質シリカ50部、バインダーとして(b1)カルボキシメチルセルロース50部用いる以外は実施例2と同様にして、参考例9の昇華型インクジェット捺染用転写紙Iを得た。
(基紙Jの作成)
カナダ標準パルプ濾水度400mlのLBKP100%からなるパルプスラリーに、填料として質量比10:90の割合で炭酸カルシウムとタルクを支持体灰分が10%となるように添加した。その後、パルプ固形分に対して硫酸アルミニウム1.2%、カチオン澱粉0.6%、内添サイズ剤0.07%を順次添加し、紙料を調製した。得られた紙料を長網抄紙機で抄紙して、透気度15秒、坪量50g/m2の基紙Jを得た。
比較例1は、基紙Aを基紙Jに変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1の昇華型インクジェット捺染用転写紙Jを得た。
(基紙Kの作成)
カナダ標準パルプ濾水度350mlのLBKP100%からなるパルプスラリーに、填料として質量比10:90の割合で炭酸カルシウムとタルクを支持体灰分が10%となるように添加した。その後、パルプ固形分に対して硫酸アルミニウム1.2%、カチオン澱粉0.6%、内添サイズ剤0.07%を順次添加し、紙料を調製した。得られた紙料を長網抄紙機で抄紙して、透気度25秒、坪量50g/m2の基紙Kを得た。
比較例2は、基紙Aを基紙Kに変更した以外は実施例1と同様にして、比較例2の昇華型インクジェット捺染用転写紙Kを得た。
比較例3は、バインダーとして(b1)カルボキシメチルセルロース100部用い、顔料を用いない以外は実施例2と同様にして、比較例3の昇華型インクジェット捺染用転写紙Lを得た。
(評価用画像の印刷)
実施例および比較例で作製した昇華型インクジェット捺染用転写紙のインク受容層に、インクジェットプリンタ((株)エプソン製 EP302)を用いて、昇華型インク((株)クローズアップ製 IC50シリーズ、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、イエロー、ブラック)によるブラック100%ベタ印画画像(10.1mm×14.3mm)を印刷した。また、図1にあるように、にじみ評価用画像として、レッド100%ベタ印画画面内(29.6mm×35.5mm)にイエロー100%印画線(幅1.5pt(0.53mm))を描写した画像を印刷した。なお、インクジェットプリンタでの印刷時の設定は、用紙種類を「普通紙」、印刷品質を「きれい」とした。
図2は、昇華型インクジェット捺染用転写紙の熱転写試験の状況を示す模式的断面図である。被転写物には、ポリエステルと綿を質量比65:35の割合で含む布生地2を使用した。昇華型インクジェット捺染用転写紙1の被印画面(印刷されたインク受容層)を下側にして、前記布生地2に重ね合わせた。昇華性染料の裏抜け評価用として、昇華型インクジェット捺染用転写紙1の裏面側に1枚の濾紙3、また下敷き用として前記布生地側に2枚の濾紙3を重ねた。熱転写用プレス機((株)東洋精機製作所製 ミニテストプレスMP-2F)を用いて、2枚のプレス板4の間に上記の積層物を置いた。プレスの上側をヒーター5によって250℃まで加熱した状態で、5MPaの条件下で積層物を30秒間熱プレスし、昇華性染料を布生地2に転写させた。
インク受容層の表面粗さを小型表面粗さ測定器((株)ミツトヨ製 サーフテストSJ-301)を用い、JIS B0601:2013に準拠して、二乗平均平方根粗さ(μm)として測定した。
昇華型インクジェット捺染用転写紙のインク受容層を黒画用紙に重ね合わせ、染色堅牢度摩擦試験機((株)東洋精機製作所製)を用いて200g質量下で擦り合わせた後、インク受容層の表面を目視で確認し、下記基準にて評価した。インク受容層の擦れ落ちが良好な◎と○の評価のものが、実用的に使用し得るレベルである。
◎:インク受容層の擦れ落ちが全くない。
○:僅かにインク受容層の擦れ落ちがあるが、実用上全く問題がない。
△:インク受容層の擦れ落ちが認められ、熱転写時に布生地を汚す恐れがある。
×:インク受容層の擦れ落ちが多く認められ、熱転写時に布生地を激しく汚す恐れがある。
昇華性染料の裏抜け評価として、熱転写試験時に転写紙上に重ねた濾紙に染着した昇華性染料の濃度を目視で確認し、下記基準にて評価した。裏抜け防止性が良好な◎と○の評価のものが、実用的に使用し得るレベルである。
◎:昇華性染料の裏抜けが全くない。
○:僅かに昇華性染料の裏抜けがあるが、実用上全く問題がない。
△:昇華性染料の裏抜けが認められ、熱源装置が少し汚れる。
×:昇華性染料の裏抜けが多く認められ、熱源装置を激しく汚す。
昇華型インクジェット捺染用転写紙に印画したにじみ評価用画像(図1)、および布生地への転写画像について、イエロー100%印画線のにじみを目視で確認し、下記基準にて評価した。印画線のにじみに優れた◎と○の評価のものが、実用的に使用し得るレベルである。
◎:印画線のにじみが全く見られない。
○:僅かに印画線のにじみが存在するが、実用上全く問題がない。
△:印画線のにじみが認められ、画像再現性にやや難がある。
×:印画線のにじみが多く認められ、画像再現性に難がある。
昇華型インクジェット捺染用転写紙に印画したブラック100%ベタ印画の光学濃度を分光濃度計((株)エックスライト製 spectrodensitometer 500)で測定し、印画濃度とした。同様に、昇華性染料を布生地に転写した後のブラック100%ベタ印画の光学濃度を測定し、転写濃度とした。数値が高い方が印画濃度、転写濃度共に良好である。
2 布生地
3 濾紙
4 熱プレス板
5 ヒーター
Claims (5)
- 木材パルプを主成分とする基紙と、
顔料とバインダーを含有するインク受容層とを有し、
前記基紙の全パルプ100質量%のうちLBKPを60〜100質量%含有し、
前記基紙の王研式透気度が30〜400秒であり、
前記インク受容層は全固形分中に前記顔料を5〜20質量%含有し、
前記インク受容層表面の二乗平均平方根粗さが4.0μm未満である
ことを特徴とする昇華型インクジェット捺染用転写紙。 - 前記木材パルプのカナダ標準パルプ濾水度が200ml以下であることを特徴とする請求項1に記載の昇華型インクジェット捺染用転写紙。
- 前記顔料が、合成非晶質シリカおよび軽質炭酸カルシウムの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の昇華型インクジェット捺染用転写紙。
- 前記バインダーが、カルボキシメチルセルロースおよび澱粉の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の昇華型インクジェット捺染用転写紙。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の昇華型インクジェット捺染用転写紙の製造方法であって、
前記基紙上にゲートロールコーターでオンマシン塗工して、前記インク受容層を形成することを特徴とする昇華型インクジェット捺染用転写紙の製造方法。
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