JP2018188491A - 易裂性延伸フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】易裂性、ヒートシール性、透明性及びガスバリア性などの包装用フィルムに適した特性を有するフィルムの提供。
【解決手段】ポリエステル樹脂(A)及びポリアミド樹脂(B)を含む樹脂組成物からなる易裂性延伸フィルムであって、(A)が、脂環式炭化水素構造を有するジオールに由来する構成単位をジオール構成単位の全量に対して0.5〜50モル%有するポリエステル樹脂であり、(B)が、メタキシリレンジアミンに由来する構成単位を70モル%以上含むジアミン構成単位と、C4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を70モル%以上含むジカルボン酸構成単位とを有する、ポリアミド樹脂であり、(A)及び(B)の配合量が、(A)65〜97質量部に対し、(B)3〜35質量部である、易裂性延伸フィルム。好ましくは、脂環式炭化水素構造を有するジオール単位がC3〜6のシクロアルカン構造である、フィルム。
【選択図】図1

Description

本発明は、易裂性延伸フィルムに関する。
PET−G(コポリエステル)などの脂環式炭化水素構造を有するジオール単位を有するポリエステル樹脂は、ヒートシール性、透明性などの優れた特性を有することが知られており、医薬品、化粧品および食品などの包装用基材として広く用いられている。しかし、PET−Gを用いた易裂性フィルムはこれまで知られていなかった。
一方、易裂性フィルムとしては、PETなどの結晶性のポリエステル樹脂に、ナイロン6およびMXD6などのポリアミド樹脂を配合してなる樹脂組成物からなる延伸フィルムが知られている(特許文献1〜4)。
特開平8−183092号公報 特開平8−208950号公報 特開平8−183091号公報 特開2001−2800号公報
このような状況の下、PET−Gが有する特性を損なうことなく、易裂性を付与した延伸フィルムの提供が望まれている。
PET−Gは非晶性のポリエステル樹脂である。非晶性のポリエステル樹脂は、結晶性樹脂のような延伸配向による各種物性の向上を期待できず、また、延伸時の応力が低く、寸法精度の優れた延伸フィルムを効率的に製造することが難しいため、非晶性のポリエステル樹脂を用いた延伸フィルムは一般的ではなかった。他の樹脂をブレンドすることにより非晶性ポリエステル樹脂に易裂性を発現させるためには、延伸が必要であることから、これまで非晶性ポリエステル樹脂に易裂性を付与することは困難であると考えられていた。このような状況の下、本発明者らは、鋭意検討した結果、PET−Gに結晶性のポリアミド樹脂を特定の量比で配合し延伸することで、PET−Gに易裂性を付与できることを見出した。また、PET−Gはガスバリア性が低いという欠点があったが、特定のポリアミド樹脂を特定の量比で配合することで、PET−Gが本来有する特性を損なうことなく、易裂性に加えてガスバリア性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に示す易裂性延伸フィルムを提供するものである。
[1]ポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)を含む樹脂組成物からなる易裂性延伸フィルムであって、
ポリエステル樹脂(A)が、脂環式炭化水素構造を有するジオールに由来する構成単位を、ポリエステル樹脂(A)を構成するジオール構成単位の全量に対して0.5〜50モル%有するポリエステル樹脂であり、
ポリアミド樹脂(B)が、メタキシリレンジアミンに由来する構成単位を70モル%以上含むジアミン構成単位と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を70モル%以上含むジカルボン酸構成単位とを有する、ポリアミド樹脂であり、
ポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)の配合量が、ポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)の合計量を100質量部としたとき、ポリエステル樹脂(A)65〜97質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)3〜35質量部である、易裂性延伸フィルム。
[2]前記脂環式炭化水素構造が、炭素数3〜10のシクロアルカン構造である、[1]に記載の易裂性延伸フィルム。
[3]前記脂環式炭化水素構造を有するジオール構成単位が、下記一般式(1)で表される化合物に由来するものである、[1]または[2]に記載の易裂性延伸フィルム。

[式中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の脂肪族基を示す。Rは、炭素数1〜10の1価の脂肪族基、炭素数3〜12の1価の脂環基および炭素数6〜18の1価の芳香族基からなる群から選ばれる1価の有機基を示す。aは0または1であり、aが0のとき、水酸基OHはシクロヘキサン環に直接結合する。bは、0〜4の整数である。]
[4]前記α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が、アジピン酸、セバシン酸、またはその混合物である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の易裂性延伸フィルム。
[5]前記樹脂組成物が、単軸押出機を用いて混練されたものであり、易裂性延伸フィルムの前駆体である未延伸フィルムの縦方向(MD)の切断面におけるポリアミド樹脂(B)の分散粒子の長径が0.3〜2.0μmであり、短径が0.1〜1.0μmである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の易裂性延伸フィルム。
[6]ポリアミド樹脂(B)の相対粘度が2.0〜2.5である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の易裂性延伸フィルム。
[7]23℃、60%RHでの酸素透過係数が2〜6ml・mm/(m・day・atm)である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の易裂性延伸フィルム。
[8]医薬品、化粧品または食品の包装用フィルムである、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の易裂性延伸フィルム。
[9][1]〜[7]のいずれか一項に記載の易裂性延伸フィルムを、多層易裂性延伸フィルムの少なくとも一層として有する、多層易裂性延伸フィルム。
[10]医薬品、化粧品または食品の包装用フィルムである、[9]に記載の多層易裂性延伸フィルム。
本発明によれば、PET−Gなどの脂環式炭化水素構造を有するジオール構成単位を含むポリエステル樹脂を主成分として用いた易裂性延伸フィルムを提供することができる。本発明の好ましい態様によれば、本発明の易裂性延伸フィルムは、ヒートシール性、透明性、ガスバリア性などの優れた特性を有している。本発明の易裂性延伸フィルムは、医薬品、化粧品および食品などの包装用基材として特に適している。
実施例および比較例で得られたフィルムサンプルの易裂性の評価方法を説明するための説明図である。
以下、本発明の易裂性延伸フィルムについて具体的に説明する。
本発明の易裂性延伸フィルムは、ポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)を含む樹脂組成物からなる易裂性延伸フィルムであって、
ポリエステル樹脂(A)が、脂環式炭化水素構造を有するジオールに由来する構成単位を、ポリエステル樹脂(A)を構成するジオール構成単位の全量に対して0.5〜50モル%有するポリエステル樹脂であり、
ポリアミド樹脂(B)が、メタキシリレンジアミンに由来する構成単位を70モル%以上含むジアミン構成単位と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を70モル%以上含むジカルボン酸構成単位とを有する、ポリアミド樹脂であり、
ポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)の配合量が、ポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)の合計量を100質量部としたとき、ポリエステル樹脂(A)65〜97質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)3〜35質量部であることを特徴としている。
本発明の易裂性延伸フィルムは、上記のとおり、ポリエステル樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)とを所定の割合で含む樹脂組成物からなるものであり、ポリエステル樹脂(A)が本来有するヒートシール性、透明性などの特性を著しく損なうことなく、ガスバリア性、さらには易裂性を付与するものである。上記樹脂組成物におけるポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)の分散状態は特に制限されるものではないが、易裂性の観点から、ポリエステル樹脂(A)中にポリアミド樹脂(B)が分散した海島構造をとることが好ましい。
以下、本発明の易裂性延伸フィルムを構成する各成分について具体的に説明する。
1.ポリエステル樹脂(A)
ポリエステル樹脂(A)は、脂環式炭化水素構造を有するジオールに由来する構成単位を、ポリエステル樹脂(A)を構成するジオール構成単位の全量に対して0.5〜50モル%有するポリエステル樹脂である。
脂環式炭化水素構造としては、単環式または多環式(縮合環式、架橋環式、スピロ環式)のいずれであってもよい。また、環上に置換基を有していてもよい。
単環式脂環式炭化水素構造としては、シクロアルカン構造およびシクロアルケン構造が挙げられ、中でも炭素数3〜10のシクロアルカン構造が好ましく、炭素数4〜8のシクロアルカン構造がより好ましく、炭素数4〜6のシクロアルカン構造がさらに好ましい。
多環式脂環式炭化水素構造の具体例としては、ビシクロ[4.4.0]デカン(別名:デカヒドロナフタレン)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(別名:ノルボルネン)、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン(別名:アダマンタン)、トリシクロ(5.2.1.02.6)デカン(別名:テトラヒドロジシクロペンタジエン)、スピロ[5.5]ウンデカン(別名:スピロビシクロヘキサン)等が挙げられる。
脂環式炭化水素構造としては、単環式であることが好ましい。中でも、シクロヘキサン構造が特に好ましい。
脂環式炭化水素構造を有するジオールの具体例としては、1,2−シクロプロパンジオール、1,2−シクロブタンジオール、1,3−シクロブタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、3−メチル−1,2−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、デカヒドロ−1,5−ナフタレンジオール、デカヒドロ−2,6−ナフタレンジオール、1,3−アダマンタンジオール、1,2−シクロプロパンジメタノール、1,2−シクロブタンジメタノール、1,3−シクロブタンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジメタノール、1,2−シクロペンタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール、3−メチル−1,2−シクロペンタンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカヒドロ−1,5−ナフタレンジメタノール、デカヒドロ−2,6−ナフタレンジメタノール、5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、およびトリシクロ(5.2.1.02.6)デカン−4,8−ジメタノールが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、光学活性を有する場合は、光学異性体であってもよい。
上記ジオールの中でも、単環式脂環式炭化水素構造を有する化合物である1,2−シクロプロパンジオール、1,2−シクロブタンジオール、1,3−シクロブタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、3−メチル−1,2−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロプロパンジメタノール、1,2−シクロブタンジメタノール、1,3−シクロブタンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジメタノール、1,2−シクロペンタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール、3−メチル−1,2−シクロペンタンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、および1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
脂環式炭化水素構造を有するジオールとしては、下記一般式(1)で表される化合物が特に好ましい。
上記一般式(1)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の脂肪族基を示す。Rは、炭素数1〜10の1価の脂肪族基、炭素数3〜12の1価の脂環基、および炭素数6〜18の1価の芳香族基からなる群から選ばれる1価の有機基を示す。aは0または1であり、aが0のとき、水酸基はシクロヘキサン環に直接結合する。bは、0〜4の整数であり、本発明の易裂性延伸フィルムの透明性の観点から0が好ましい。
で示される2価の脂肪族基としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基およびアルケニレン基などが挙げられる。2価の脂肪族基の炭素数としては、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4である。例えば、メチレン基、エチレン基(−CHCH−)、プロピリデン基(CHCHCH=)、プロピレン基(−CH(CH)CH−)、トリメチレン基(−CHCHCH−)、イソプロピリデン基((CHC=)、テトラメチレン基(−CHCHCHCH−)、ブチリデン基(CHCHCHCH=)、イソブチリデン基((CHCHCH=)、sec−ブチリデン基(CHCHC(CH)=)、およびイソブチレン基(−C(CH−CH−)などが挙げられる。これらの中でも、易裂性延伸フィルムの透明性の観点からRはメチレン基が好ましい。
が1価の脂肪族基である場合、1価の脂肪族基としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基およびアルケニル基などが挙げられる。1価の脂肪族基の炭素数としては、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4である。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、およびtert−ブチル基などが挙げられる。
が1価の脂環基である場合、1価の脂環基としては、例えば、シクロアルキル基などが挙げられる。1価の脂環基の炭素数としては、好ましくは3〜12、より好ましくは6〜9である。
が1価の芳香族基である場合、1価の芳香族基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、およびナフチル基などのアリール基が挙げられる。1価の芳香族基の炭素数としては、好ましくは6〜18、より好ましくは6〜12である。
これらの中でも、易裂性延伸フィルムの透明性の観点から、Rはアルキル基であることが好ましい。また、同様の観点から、bが0であること、即ちシクロヘキサン環がRにより置換されていないことがより好ましい。
上記の脂肪族基、脂環基および芳香族基は、さらに置換基により置換されていてもよい。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子など)、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基およびアミノ基などが挙げられる。
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、および1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。中でも、1,3−シクロヘキサンジメタノールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
なお、本発明において、脂環式炭化水素構造を有するジオールに由来する構成単位は、1種でも、2種以上を組み合わせてもよい。
ポリエステル樹脂(A)において、脂環式炭化水素構造を有するジオールに由来する構成単位の含有量は、成形加工性の観点から、ポリエステル樹脂(A)を構成するジオール構成単位の全量に対して、0.5〜50モル%であり、好ましくは3〜40モル%、より好ましくは6〜35モル%である。
ポリエステル樹脂(A)に含まれうる、脂環式炭化水素構造を有するジオールに由来する構成単位以外のジオール構成単位としては、脂肪族グリコールに由来する構成単位および芳香族ジオールに由来する構成単位が挙げられ、脂肪族グリコールに由来する構成単位を含むことが好ましい。脂環式炭化水素構造を有するジオールに由来する構成単位以外のジオール構成単位は、1種でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステル樹脂(A)中に脂肪族グリコールに由来する構成単位を含む場合、脂肪族グリコールに由来する構成単位の含有量は、ポリエステル樹脂(A)の使用前の乾燥の容易さや成型加工性の観点から、ポリエステル樹脂(A)を構成するジオール構成単位の全量に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、より好ましくは65モル%以上である。また、脂肪族グリコールに由来する構成単位の含有量の上限は、ジオール単位の全量に対して好ましくは99.5モル%以下である。
ポリエステル樹脂(A)に含まれうる脂肪族グリコールに由来する構成単位の炭素数としては、2〜24が好ましく、2〜6がさらに好ましい。脂肪族グリコール単位を構成しうる具体的な化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、および1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられるが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコールが好ましく、エチレングリコールおよびジエチレングリコールがより好ましい。
ポリエステル樹脂(A)に含まれうる芳香族ジオールに由来する構成単位の炭素数としては、6〜24が好ましく、6〜20がより好ましい。芳香族ジオールの具体例としては、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノ−ル、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、およびこれらのグリコールにエチレンオキシドが付加されたグリコールなどが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述のモノアルコール類に由来する構成単位や多価アルコール類に由来する構成単位等を有していてもよい。
ポリエステル樹脂(A)は、脂環式炭化水素構造を有するジカルボン酸に由来する構成単位、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位、および直鎖状または分岐状の脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を含むことができ、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位を含むことが好ましい。
ポリエステル樹脂(A)中に芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位を含む場合、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位の含有量は、ポリエステル樹脂(A)を構成するジカルボン酸単位の全量に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上である。また、芳香族ジカルボン酸単位の含有量の上限は、ジカルボン酸単位の全量に対して好ましくは100モル%以下である。
ポリエステル樹脂(A)に含まれうる芳香族ジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、ベンゼン、ナフタレン、ジフェニル、オキシジフェニル、スルホニルジフェニル、またはメチレンジフェニル等の芳香族核を有するジカルボン酸およびこれらの誘導体が使用できる。芳香族ジカルボン酸誘導体としては、例えば芳香族ジカルボン酸と炭素数1〜3のアルコールとから形成されるエステルが挙げられる。
その中でも、テレフタル酸、イソフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸など、およびそれらの炭素数1〜3の短鎖アルキルエステルが好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、およびそれらのメチルエステルおよびエチルエステルがより好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸およびそれらのメチルエステルがさらに好ましく、テレフタル酸が最も好ましい。
ポリエステル樹脂(A)中に直鎖状または分岐状の脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を含む場合、直鎖状または分岐状の脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、およびドデカンジカルボン酸などが挙げられる。
ポリエステル樹脂(A)中に脂環式炭化水素構造を有するジカルボン酸に由来する構成単位を含む場合、脂環式炭化水素構造を有するジカルボン酸成分としては、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
上記一般式(2)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の脂肪族基を示し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基またはイソプロピル基を示す。Rは、炭素数1〜10の1価の脂肪族基、炭素数3〜12の1価の脂環基、および炭素数6〜18の1価の芳香族基からなる群から選ばれる1価の有機基を示す。cは0または1であり、cが0のとき、−COOR基はシクロヘキサン環に直接結合する。dは、0〜4の整数であり、易裂性延伸フィルムの透明性の観点から0が好ましい。
上記の2価の脂肪族基、2価の脂環基、2価の芳香族基の具体例としては、一般式(1)中のRとして例示したものが挙げられ、上記の1価の脂肪族基、1価の脂環基、1価の芳香族基としては、一般式(1)中のRとして例示したものが挙げられる。
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸およびこれらのエステル体が挙げられ、中でも、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸およびこれらのエステル体が好ましい。
ポリエステル樹脂(A)を構成するジカルボン酸構成単位は、1種でも、2種以上を組み合わせてもよい。
なお、ポリエステル樹脂(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、モノカルボン酸に由来する構成単位、3価以上の多価カルボン酸に由来する構成単位、カルボン酸無水物に由来する構成単位などを有していてもよい。
ポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸成分およびジオール単位を構成するジオール成分などを重縮合して得られるものであり、その製造には、公知の方法である直接エステル化法やエステル交換法を適用することができる。
ポリエステル樹脂(A)の製造時に使用する重縮合触媒としては、公知の三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物、酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物等が例示できる。また必要に応じて分子量を高めるために従来公知の方法によって固相重合してもよい。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)として好ましいものを具体的に例示すると、エチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート共重合体、エチレン−1,3−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート共重合体、エチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−イソフタレート共重合体、エチレン−1,3−シクロヘキサンジメチレン−イソフタレート共重合体、エチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート−テレフタレート共重合体、エチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート−4,4’−ビフェニルジカルボキシレート共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性、透明性および入手容易性などの観点から、エチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート共重合体が好ましい。
本発明に用いるポリエステル樹脂(A)は、使用する前にポリマー中の水分率を好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下に乾燥させることが好ましい。
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)の固有粘度(フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=60/40質量比の混合溶媒中、25℃で測定した値)は、好ましくは0.3〜2.0dl/g、より好ましくは0.4〜1.8dl/gである。
固有粘度が上記の範囲であれば、ポリエステル樹脂の分子量が十分に高く、且つ溶融時の粘度も高くなりすぎないため、成形加工性が良好な樹脂組成物となり得る。また、当該樹脂組成物を用いた成形体の機械的特性も良好となる。
2.ポリアミド樹脂(B)
ポリアミド樹脂(B)は、メタキシリレンジアミンに由来する構成単位を70モル%以上含むジアミン構成単位と、α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を70モル%以上含むジカルボン酸構成単位とを有する、ポリアミド樹脂である。
ポリアミド樹脂(B)を構成するジアミン構成単位としては、優れたガスバリア性を付与することに加え、成形性の観点から、メタキシリレンジアミン由来の構成単位をジアミン単位中に70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上含む。
ポリアミド樹脂(B)は、メタキシリレンジアミンに由来する構成単位以外のジアミン構成単位を含んでいてもよい。例えば、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;1,3−または1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−または1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカンなどの脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレンなどの芳香環を有するジアミン類などの化合物に由来するジアミン構成単位が挙げられる。これらは1種で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアミド樹脂(B)を構成するジカルボン酸構成単位としては、適度な結晶性を付与することに加え、柔軟性を付与する観点から、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位をジカルボン酸単位中に70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上含む。
炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸等が挙げられる。これらは1種で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、優れたガスバリア性に加え、入手容易性の観点から、アジピン酸、セバシン酸、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。
ポリアミド樹脂(B)は、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位以外のジカルボン酸構成単位を含んでいてもよい。
炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位以外のジカルボン酸構成単位としては、シュウ酸、マロン酸等の炭素数3以下の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に特に好適に用いられるポリアミド樹脂(B)としては、ポリメタキシリレンアジパミド、イソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンドデカナミド等が挙げられる。これらの中でも、ポリアミド樹脂(B)としては、ポリメタキシリレンアジパミドが好ましい。
ポリアミド樹脂(B)は、ジアミン成分とジカルボン酸成分とを重縮合させることで製造することができる。例えば、ジアミン成分とジカルボン酸成分とからなる塩を水の存在下に加圧状態で昇温し、加えた水および縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法によりポリアミドを製造することができる。また、ジアミン成分を溶融状態のジカルボン酸成分に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によってもポリアミド樹脂(B)を製造することができる。この場合、反応系を均一な液状態で保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミドおよびポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
重縮合条件等を調整することで重合度を制御することができる。重縮合時に分子量調整剤として少量のモノアミンやモノカルボン酸を加えてもよい。また、重縮合反応を抑制して所望の重合度とするために、ポリアミド樹脂(B)を構成するジアミン成分とジカルボン酸成分との比率(モル比)を1からずらして調整してもよい。さらに、ポリアミド樹脂(B)の重縮合時には、アミド化反応を促進する効果や、重縮合時の着色を防止する効果を得るために、リン原子含有化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等の公知の添加剤を添加してもよい。
ポリアミド樹脂(B)の相対粘度は、透明性の観点から、2.5以下が好ましく、より好ましくは1.9〜2.5、さらに好ましくは2.0〜2.4である。ここで、ポリアミド樹脂(B)の相対粘度は、ポリアミド樹脂(B)0.2gを96%硫酸20mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t0)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t
本発明の易裂性延伸フィルムを構成する樹脂組成物において、ポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)の配合量は、ポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)の合計量を100質量部としたとき、ポリエステル樹脂(A)65〜97質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)3〜35質量部であり、ポリエステル樹脂(A)67〜95質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)5〜33質量部であることが好ましく、ポリエステル樹脂(A)68〜90質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)10〜32質量部であることがより好ましく、ポリエステル樹脂(A)70〜85質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)15〜30質量部であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)を上記の割合で用いることで、ポリエステル樹脂(A)が本来有するヒートシール性、透明性などの特性を損なうことなく、ポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)を含む樹脂組成物からなる延伸フィルムに易裂性およびガスバリア性を付与することができる。
本発明の易裂性延伸フィルムを構成する樹脂組成物は、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、ポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)の他、酸化チタン等の着色顔料;酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、安定剤等の添加剤;炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤;消臭剤などが配合されていても良い。
本発明の易裂性延伸フィルムは、ポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)を含む樹脂組成物を予めドライブレンドした後、単軸押出機または二軸押出機などの押出機を用いて混練し、フィルム状またはシート状に製膜した後、一軸延伸または二軸延伸等により延伸加工することによって得ることができる。
本発明の易裂性延伸フィルムを構成する樹脂組成物においては、易裂性の観点から、ポリエステル樹脂(A)中にポリアミド樹脂(B)が分散した海島構造をとることが好ましいが、透明性および易裂性をより高いレベルで両立させるためには、上記の海島構造においてポリアミド樹脂(B)の径を適切な範囲に制御することが重要である。
ポリエステル樹脂(A)中に分散するポリアミド樹脂(B)の径を適切な範囲に制御するためには、相対粘度が2.5以下のポリアミド樹脂(B)を用い、さらに単軸押出機を用いてポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)を含む樹脂組成物を混練することが好ましい。
本発明の易裂性延伸フィルムの前駆体である未延伸フィルムの流れ方向である縦方向(MD:機械方向)の切断面におけるポリアミド樹脂(B)の分散粒子については、長径が0.3〜2.0μmであり、短径が0.1〜1.0μmであることが好ましい。長径と短径は実施例に記載した測定方法により求められる。
易裂性延伸フィルムの延伸倍率によるが、ポリアミド樹脂(B)の分散粒子が上記の大きさで分散することで透明性と易裂性(直線カット性)の両立が、より好ましい状態で実現できる。
樹脂組成物を混練した後、フラットダイ(Tダイ)または環状ダイから押出すことにより未延伸フィルムを作製することができる。押出温度は、240〜290℃が好ましく、より好ましくは245〜280℃であり、さらに好ましく250〜270℃である。
次に、得られた未延伸フィルムを、フィルムの流れ方向である縦方向(MD:機械方向)と、それに対して直角な横方向(TD:垂直方向)の少なくとも一方向に延伸して本発明の延伸フィルムを製造することができる。延伸条件については特に制限はなく、一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、直線カット性の観点から一軸延伸が好ましい。
二軸延伸の場合は、逐次延伸でも同時延伸でもよい。二軸延伸の方法は特に制限されなく、テンタ一式逐次二軸延伸、テンタ一式同時二軸延伸およびチューブラー式同時二軸延伸などの従来から知られている延伸方法を採用することができる。
延伸倍率は用途に応じて選択できるが、通常、1.1〜4.5倍程度である。本発明においては、横方向(TD)に1.1〜4倍の延伸倍率で延伸することが好ましく、より好ましくは横方向(TD)に1.3〜3.5倍、さらに好ましくは1.5〜3の延伸倍率で延伸する。または、縦方向(MD)に1.1〜4倍の延伸倍率で延伸することが好ましく、より好ましくは縦方向(MD)に1.3〜3.5倍、さらに好ましくは1.5〜3倍の延伸倍率で延伸する。延伸温度は、通常、90〜120℃程度である。
延伸後は、フィルムの寸法保持性や機械物性の観点から、熱固定処理等の二次処理を施してもよい。
本発明の易裂性延伸フィルムは、単層フィルムでもよく、本発明の易裂性延伸フィルムの少なくとも一層と、脂肪族ポリアミド、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂層、金属蒸着層、接着剤層、ヒートシール性樹脂層、紙層、印刷層などの他の層とを組み合わせた多層易裂性延伸フィルムとしてもよい。
多層易裂性延伸フィルムは、例えば、各層を同時押出などにより未延伸多層フィルムを製造し、その後、一軸延伸または二軸延伸等により延伸加工することによって得ることができる。
本発明の易裂性延伸フィルムの厚みは、用途によって適宜決定すればよい。本発明の易裂性延伸フィルムを単層フィルムとして用いる場合、フィルムの厚みは、通常、5〜300μmの範囲が好ましく、より好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは20〜100μmである。
本発明の易裂性延伸フィルムを、多層易裂性延伸フィルムを構成する少なくとも一層として用いる場合、本発明の易裂性延伸フィルムの一層の厚みは、単層で用いる場合と同様の範囲で効果は発現するが、積層する材質の機械物性やガスバリア性、および多層易裂性延伸フィルムの経済的合理性と用途によって適宜決定すればよい。
本発明の易裂性延伸フィルムは、ポリエステル樹脂(A)が本来有するヒートシール性および透明性などの特性に加えて、ガスバリア性および易裂性を有していることから、包装材料または容器として好ましく用いられる。本発明の易裂性延伸フィルムは、例えば、医薬品、化粧品および食品などのガスバリア性が要求される物品の包装に適している。本発明の易裂性延伸フィルムを他の層と組み合わせて多層易裂性延伸フィルムとして用いる場合も同様である。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例等における各種評価および測定は下記の方法により行った。
[1]易裂性(直線カット性)
実施例および比較例で得られた一軸延伸フィルムを、延伸方向(MDまたはTD)を縦方向として、横30mm×縦200mmの短冊にカットし、横の中心に切り込み20mm(ノッチ部分)を入れた(図1(a)参照)。その後、ノッチ部分(グリップ)をつかんで引き裂き(図1(b)参照)、横の中心からの距離をズレ量として測定した。ズレ量が5mm以下の場合を「A」、ズレ量が5mmを超え10mm以下の場合を「B」、ズレ量が10mmを超える、あるいは力を加える方向へのカット性が発現しない場合を「C」とした。
[2]ガスバリア性(酸素透過係数
実施例および比較例で得られた未延伸フィルムについて、ASTM D3985に準じて酸素透過係数を測定した。具体的には、酸素透過係数測定装置(モコン社製、商品名「OX−TRAN 2/21」)を用いて、実施例および比較例で得られたフィルムサンプル(厚み50μm)の23℃、60%RH(相対湿度)での環境下における、酸素透過係数(単位:ml・mm/m・day・atm)を測定した。
[3]未延伸フィルム中のポリアミド樹脂の分散粒子径
実施例および比較例で作製した未延伸フィルム中のポリアミド樹脂(B)の分散粒子の長径平均値L(μm)と短径平均値W(μm)は次のように測定した。
実施例および比較例で作製した未延伸フィルムを切り出し、フィルムの厚み方向、且つMDが断面となるようにエポキシ樹脂に包埋した。
次にウルトラミクロトーム(Boeckeler Instruments製、商品名「CR−X Power Tome XL」)を用いて、包埋した試料から、厚み0.1μmの観察用超薄片を切り出した。作製した超薄切片を塩化ルテニウムで染色した後、銅メッシュ上で電子顕微鏡観察した。染色されたポリアミド樹脂とポリエステル樹脂との濃淡により、分散状態を観察した。
そして、未延伸フィルムの縦5μm、横5μm(面積25μm)中に存在するポリアミド樹脂の個々の分散粒子について、一番長い部分の両端に2本の平行な接線を引き、その接線間の距離を長径Lとした。次に前記2本の接線と平行な各粒子を横切る線を引き、粒子と重なる部分のうち一番長い線分の長さを測定し、その長さを短径Wとした。このようにして、ポリアミド樹脂の分散粒子の長径L及び短径Wの測定を、50個のポリアミド樹脂の分散粒子に対して行った。
<観察条件>
電子顕微鏡:走査電子顕微鏡、日立ハイテクノロジーズ(株)製、商品名:「S4800」
加速電圧:30kV
電流:10mA
測定倍率:25000倍
測定モード:TEM
[4]外観(ヘイズおよび全光線透過率)
実施例および比較例で得られた未延伸フィルムについて、JIS K7105に準じて、5cm×5cmに切り出し、色彩・濁度同時測定器(日本電色工業株式会社製「COH−400」)を用いてヘイズおよび全光線透過率を測定した。
[5]ヒートシール性
実施例および比較例で得られた未延伸フィルムについて、ヒートシール性の評価を行なった。同一の組成のフィルムを10mm×60mmに2枚切り出し、2枚のフィルムを同一方向に重ね合わせた状態で片方の端部(10mm×10mm)をヒートシールした。ヒートシール条件は、加熱温度を120℃、または150℃とし、加熱時間を1秒、シール圧力を0.2MPaで行なった。ヒートシール性の評価は、ストログラフ((株)東洋精機製作所製)を用いて、シール幅10mmでのヒートシール強度を測定することにより行なった。シール強度が5N/10mm以上の場合を「A」、シール強度が0N/10mmよりも大きく5N/10mmよりも小さい場合を「B」、シール強度が0N/10mm(全く接着しない)の場合を「C」とした。
ポリエステル樹脂(A−1)
ポリエステル樹脂(A−1)として、イーストマンケミカル社製「Eastar Copolyester GN001」(非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂;ジカルボン酸成分:テレフタル酸100モル%、ジオール成分:エチレングリコール65.3モル%、ジエチレングリコール2.5モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール32.2モル%;ガラス転移温度Tg=73℃;固有粘度[η]=0.82dl/g)を用いた。
ポリアミド樹脂(B−1)(製造例1)
攪拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下槽および窒素ガス導入管を備えたジャケット付きの50L反応缶に、アジピン酸15kg、次亜リン酸ナトリウム一水和物15gを仕込み、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下にて180℃に昇温し、アジピン酸を均一に溶融させた後、系内を撹拌しつつ、これにメタキシリレンジアミン13.9kgを、170分を要して滴下した。この間、内温は連続的に245℃まで上昇させた。なお重縮合により生成する水は、分縮器および冷却器を通して系外に除いた。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温をさらに260℃まで昇温し、1時間反応を継続した後、ポリマーを反応缶下部のノズルからストランドとして取り出し、水冷後ペレット化してポリマーを得た。
次に、上記の操作にて得たポリマーを加熱ジャケット、窒素ガス導入管、真空ラインを備えた50L回転式タンブラーに入れ、回転させつつ系内を減圧にした後、純度99容量%以上の窒素で常圧にする操作を3回行った。その後、窒素流通下にて系内を140℃まで昇温させた。次に系内を減圧にし、さらに190℃まで連続的に昇温し、190℃で30分保持した後、窒素を導入して系内を常圧に戻した後、冷却してポリアミド樹脂(B−1)を得た。得られたポリアミド樹脂(B−1)の相対粘度は2.7であり、融点は237℃であり、ガラス転移点は85℃であった。
ポリアミド樹脂(B−2)(製造例2)
攪拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下槽および窒素ガス導入管を備えたジャケット付きの50L反応缶に、アジピン酸15kg、次亜リン酸ナトリウム一水和物15gを仕込み、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下にて180℃に昇温し、アジピン酸を均一に溶融させた後、系内を撹拌しつつ、これにメタキシリレンジアミン13.8kgを、170分を要して滴下した。この間、内温は連続的に245℃まで上昇させた。なお重縮合により生成する水は、分縮器および冷却器を通して系外に除いた。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温をさらに260℃まで昇温し、1時間反応を継続した後、ポリマーを反応缶下部のノズルからストランドとして取り出し、水冷後ペレット化してポリマーを得た。
次に、上記操作にて得たポリマーを100℃で48時間真空乾燥することにより乾燥及び結晶化したペレットを得た。得られたポリアミド樹脂(B−2)の相対粘度は2.1であり、融点は237℃であり、ガラス転移点は85℃であった。
ポリエステル樹脂(R−1)
ポリエステル樹脂(R−1)として、日本ユニペット(株)製「UNIPET BK−2180」(結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂;ジカルボン酸単位を100モル%としてイソフタル酸単位を1.5モル%含有する;ガラス転移温度Tg=73℃;固有粘度「η」=0.83dl/g)を用いた。
実施例1〜4
ポリエステル樹脂(A−1)および製造例1で得られたポリアミド樹脂(B−1)または製造例2で得られたポリアミド樹脂(B−2)を表1に記載の組成比でドライブレンドし、Tダイ付き単軸押出機(プラスチック工学研究所製、PTM−25、スクリュー径:25mmφ、L/D=24)を用い、Tダイ法によりシリンダー温度240〜270℃、Tダイ温度270℃、スクリュー回転数70rpm、冷却ロール温度70℃の条件下で製膜し、未延伸フィルム(幅150mm、厚み約50μm)を製造した。
得られた未延伸フィルムを、105℃で1分間予備加熱した後、線延伸速度3000mm/分、横方向(TD)の延伸倍率2.0倍の条件で、横方向に延伸し、厚み約25μmの一軸延伸フィルムを得た。また、上記とは別の未延伸フィルムを、105℃で1分間予備加熱した後、線延伸速度3000mm/分、縦方向(MD)の延伸倍率2.0倍の条件で、縦方向に延伸し、厚み約25μmの一軸延伸フィルムを得た。
得られた未延伸フィルムについて、外観、ガスバリア性およびヒートシール性を評価した。また、得られた一軸延伸フィルムについて、易裂性を評価した。
比較例1
ポリアミド樹脂(B−1)またはポリアミド樹脂(B−2)を用いなかったことを除いて、実施例と同様にして未延伸フィルムおよび一軸延伸フィルムを作製し、物性を評価した。
比較例2
ポリエステル樹脂(A−1)の代わりに、ポリエステル樹脂(R−1)を用い、ポリアミド樹脂(B−1)またはポリアミド樹脂(B−2)を用いなかったことを除いて、実施例と同様にして未延伸フィルムおよび一軸延伸フィルムを作製し、物性を評価した。
比較例3
ポリエステル樹脂(A−1)の代わりに、ポリエステル樹脂(R−1)を用いたことを除いて、実施例と同様にして未延伸フィルムおよび一軸延伸フィルムを作製し、物性を評価した。
結果を表1に示す。
本発明の易裂性延伸フィルムは、易裂性、ガスバリア性、ヒートシール性および透明性などに優れているため、医薬品、化粧品および食品などの包装材料または容器として好適に用いられる。

Claims (10)

  1. ポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)を含む樹脂組成物からなる易裂性延伸フィルムであって、
    ポリエステル樹脂(A)が、脂環式炭化水素構造を有するジオールに由来する構成単位を、ポリエステル樹脂(A)を構成するジオール構成単位の全量に対して0.5〜50モル%有するポリエステル樹脂であり、
    ポリアミド樹脂(B)が、メタキシリレンジアミンに由来する構成単位を70モル%以上含むジアミン構成単位と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を70モル%以上含むジカルボン酸構成単位とを有する、ポリアミド樹脂であり、
    ポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)の配合量が、ポリエステル樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)の合計量を100質量部としたとき、ポリエステル樹脂(A)65〜97質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)3〜35質量部である、易裂性延伸フィルム。
  2. 前記脂環式炭化水素構造が、炭素数3〜10のシクロアルカン構造である、請求項1に記載の易裂性延伸フィルム。
  3. 前記脂環式炭化水素構造を有するジオール構成単位が、下記一般式(1)で表される化合物に由来するものである、請求項1または2に記載の易裂性延伸フィルム。

    [式中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の脂肪族基を示す。Rは、炭素数1〜10の1価の脂肪族基、炭素数3〜12の1価の脂環基および炭素数6〜18の1価の芳香族基からなる群から選ばれる1価の有機基を示す。aは0または1であり、aが0のとき、水酸基OHはシクロヘキサン環に直接結合する。bは、0〜4の整数である。]
  4. 前記α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が、アジピン酸、セバシン酸、またはその混合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の易裂性延伸フィルム。
  5. 前記樹脂組成物が、単軸押出機を用いて混練されたものであり、易裂性延伸フィルムの前駆体である未延伸フィルムの縦方向(MD)の切断面におけるポリアミド樹脂(B)の分散粒子の長径が0.3〜2.0μmであり、短径が0.1〜1.0μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の易裂性延伸フィルム。
  6. ポリアミド樹脂(B)の相対粘度が2.0〜2.5である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の易裂性延伸フィルム。
  7. 23℃、60%RHでの酸素透過係数が2〜6ml・mm/(m・day・atm)である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の易裂性延伸フィルム。
  8. 医薬品、化粧品または食品の包装用フィルムである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の易裂性延伸フィルム。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の易裂性延伸フィルムを、多層易裂性延伸フィルムの少なくとも一層として有する、多層易裂性延伸フィルム。
  10. 医薬品、化粧品または食品の包装用フィルムである、請求項9に記載の多層易裂性延伸フィルム。
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