[実施例1]
<構成>
以下図面に沿って、本発明の実施例について説明する。なお各図面に共通する要素には同一の符号を付す。
図1は本発明の実施例1における給送装置を備えた画像形成装置の一例であるレーザービームプリンタ90(以下、プリンタ90という)の概略を示す断面図である。
図1においてプリンタ90は像担持体である感光体ドラム1をカートリッジ7内に備えている。帯電ローラ8は感光体ドラム1の表面を帯電させる。スキャナユニット2は画像情報に基づいて感光体ドラム1上にレーザを照射し、感光体ドラム1に静電潜像を形成する。現像ローラ9は感光体ドラム1に形成された静電潜像をトナーで可視化する。このようにして感光体ドラム1に形成されたトナー像は、転写ローラ5によって記録材であるシートSに転写される。これらのプロセス部材は、シートSに画像を形成するための画像形成部として機能する。
給送装置はカセット100とローラユニット19で構成されている。カセット100には複数枚のシートSが積載される積載部であるシート積載板22が設けられている。待機状態において、シートSはシート積載板22によって繰り出し位置まで持ち上げられており、最上位に位置するシートS1とピックアップローラ15(以下、ピックローラ15という)が接触している。プリント信号が入力されると、ピックローラ15がシート積載板22に積載されたシートSの中からシートS1を給紙する。フィードローラ16はピックローラ15によって給紙されたシートS1をさらに下流側へ給紙する。分離ローラ17はトルクリミッタ18を介してプリンタ90のシャーシー等に固定されている。分離ローラ17の動作について詳しくは後述する。
フィードローラ16によって給紙されたシートS1は、引き抜きローラ対20、21及びレジストレーションローラ対3、4(搬送部)によって搬送される。搬送センサ23及びレジストレーションセンサ24(検知部)は、搬送されたシートS1を検知する。レジストレーションローラ対3、4によって搬送されたシートS1には、上述した転写ローラ5によってトナー像が転写される。その後、定着ユニット10は熱と圧力により、シートS1に転写されたトナー像をシートS1に定着する。トナー像が定着されたシートS1は排紙ローラ対11、12によって排紙トレイ13へ排紙される。
図2は本実施例におけるプリンタ90の制御ブロック図である。プリンタ90の動作を制御するエンジン制御部200は、その内部にCPU、ROM、RAM等を有し、ROMに予め記憶されたプログラムに基づいて処理を実行する。エンジン制御部200には駆動部であるモータ201が接続されている。モータ201は電磁クラッチ202を介してピックローラ15、フィードローラ16を駆動し、回転させる。ピックローラ15とフィードローラ16には不図示のワンウェイクラッチが内蔵されており、電磁クラッチ202がOFFになると、シートSを給紙する方向にのみ回転できる状態となる。また、モータ201は引き抜きローラ対20、21を駆動し、回転させる。また、エンジン制御部200には搬送センサ23の検知結果が通知される構成となっている。
<動作>
図3を用いて、本実施例の給送動作について詳細に説明する。図3は、給送時における制御のタイミングチャート、給送中のシートS1の後端位置と各ローラの位置関係を模式的に示した図である。ここでシートS1の後端とは、シートS1の給送方向における上流側の端を示す。
プリント信号が入力されると、エンジン制御部200はモータ201によって、引き抜きローラ対20、21を回転させる。ほぼ同時に、エンジン制御部200は電磁クラッチ202をONにし、ピックローラ15とフィードローラ16を回転させる(図3においてシートS1の後端が位置dにあるタイミング)。
ピックローラ15により繰り出されたシートS1は、フィードローラ16と分離ローラ17によって形成される分離ニップ部17aを通過し、引き抜きローラ対20、21に到達する。シートS1の先端が引き抜きローラ対20、21に到達すると、エンジン制御部200は電磁クラッチ202をOFFにする。この時、シートS1の後端はピックローラ15を通過していない(図3においてシートS1の後端が位置eにあるタイミング)。
引き抜きローラ対20、21はシートS1を分離ニップ部17aから引き抜くように、シートS1を下流へ搬送する。この時、電磁クラッチ202はOFFになっているため、ピックローラ15とフィードローラ16にはモータ201からの駆動力が伝達されていない。しかし、ワンウェイクラッチによって2つのローラはシートS1の搬送に伴って従動する。そして、シートS1の後端がピックローラ15を通過して所定の時間が経過したタイミングで、エンジン制御部200は電磁クラッチ202を再びONにする(図3においてシートS1の後端が位置fにあるタイミング)。
電磁クラッチ202が再びONとなり、ピックローラ15とフィードローラ16は回転する。この時、シートS1はピックローラ15を既に通過しているから、シートS1の次に給紙されるシートS2がピックローラ15と接触し、給紙される。そして、シートS2がピックローラ15によって所定の距離Bだけ搬送されたタイミングで、エンジン制御部200は電磁クラッチ202を再びOFFにする。この時、シートS1もフィードローラ16及び引き抜きローラ対20、21によって所定の距離C(=B)だけ搬送されている(図3におけるシートS1の後端が位置gにあるタイミング)。なお、駆動列の関係上、シートS2の先行給紙時にフィードローラ16にも駆動が伝わりシートS1を距離Cだけ搬送するように構成されているが、フィードローラ16へは駆動を伝えなくても問題ない。
シートS2の先行給紙動作が終わった後、フィードローラ16はシートS1の後端が分離ニップ部17aを抜けるまでシートS1に連れ回され、その後停止する(図3におけるシートS1の後端が位置hにあるタイミング)。一方、ピックローラ15と接触しているシートS2は所定の距離Bだけしか搬送されていないので、引き抜きローラ対20、21には到達していない。従って、電磁クラッチ202がOFFの状態においてシートS2は停止している。つまり、ピックローラ15はシートS2に連れ回されることなく、停止している。
シートS1の後端が分離ニップ部17aを通過し、さらに引き抜きローラ対20、21を通過したタイミングで、エンジン制御部200はモータ201を停止させる(図3におけるシートS1の後端が位置iにあるタイミング)。以上より、シートS1の給送動作が終了する。
シートS2の先行給紙動作を開始するタイミング(図3、f)や先行給紙動作を終了するタイミング(図3、g)は、搬送センサ23にシートS1が到達したタイミングに基づいて、エンジン制御部200が算出している。エンジン制御部200は、シートS1の長さ、およびシートS1の搬送速度を考慮し、これらのタイミングを算出する。また、電磁クラッチ202をONにしてから、ピックローラ15が回転するまで不図示の駆動列のガタによる遅れが生じるので、エンジン制御部200はこれも考慮してタイミングを算出している。
なお、先行給紙動作を開始又は終了するタイミングは、搬送センサ23ではなく、レジストレーションセンサ24にシートS1が到達したタイミングに基づいて算出されてもよい。もしくは、カセット100に積載されているシートS1をピックローラ15とフィードローラ16によって給紙を開始したタイミングに基づいて算出されてもよい。
また、複数枚のシートSを連続して給紙する場合には、モータ201を連続回転にしておき、電磁クラッチ202のONとOFFを繰り返し切り替えていけばよい。
以上の給送動作をまとめたフローチャートを図4に示す。図4のフローチャートに基づく制御は、エンジン制御部200がROM等に記憶されているプログラムに基づき実行する。
まず、エンジン制御部200はプリント指示を受けて、カセット100からシートSを給紙するタイミングとなったかどうかを判断する(S400)。シートSを給紙するタイミングとなったと判断した場合、エンジン制御部200はシートS1の給紙動作を開始する(S401)。具体的には上述した通り、モータ201を駆動させ、電磁クラッチ202をONにする。これにより、ピックローラ15、フィードローラ16、引き抜きローラ対20、21を回転させる。
次に、エンジン制御部200は搬送センサ23によってシートS1を検知したかどうかを判断する(S402)。搬送センサ23によってシートS1を検知したと判断した場合、エンジン制御部200は電磁クラッチ202をOFFにする(S403)。これにより、シートS1は引き抜きローラ対20、21によって搬送され、ピックローラ15及びフィードローラ16はシートS1の搬送に伴って従動する。
次に、エンジン制御部200は、少なくともシートS1の後端がピックローラ15を通過したタイミング、つまり搬送センサ23がシートS1を検知してから所定時間T1が経過したタイミングとなったかどうかを判断する(S404)。所定時間T1が経過したタイミングとなったと判断した場合、エンジン制御部200はシートS2の先行給紙動作を開始させるため、電磁クラッチ202をONにする(S405)。
次に、エンジン制御部200は、シートS2を所定の距離Bだけ搬送させたタイミング、つまり搬送センサ23がシートS1を検知してから所定時間T2が経過したタイミングとなったかどうかを判断する(S406)。所定時間T2が経過したタイミングとなったと判断した場合、エンジン制御部200はシートS2の先行給紙動作を終了させるため、電磁クラッチ202をOFFにする(S407)。シートS1の搬送が完了した後、エンジン制御部200はモータ201を停止させる(S408)。
一方、S402において、搬送センサ23によってシートS1を検知していないと判断した場合、エンジン制御部200はシートS1の給紙動作を開始してから、閾値時間Tthが経過したタイミングとなったかどうかを判断する(S409)。ここで閾値時間Tthは少なくとも所定時間T1よりも長い時間である。閾値時間Tthが経過したタイミングとなったと判断した場合、エンジン制御部200はプリンタ90に設けられた不図示のオペレーションパネルにジャムが発生したメッセージを表示する(S410)。以上で、本フローチャートの制御を終了する。
次に、図5を用いて上記の給送制御によるシートSの動きを説明する。図5(a)は給紙中のシートS1がピックローラ15を抜けたタイミングで、後続のシートS2がシートセット位置jから進んでいない状態を示している。つまり、連れ出しが発生していない状態を示している。この場合、シートS2の先行給紙動作によって、図5(b)のように後続のシートS2は所定の距離Bだけ搬送されることになる。そして、図5(c)のように給紙中のシートS1は分離ニップ部17aを抜ける。この時、後続のシートS2の先端(給送方向における下流側の端)は分離ニップ部17aの上流に位置しているため、給紙中のシートS1が分離ニップ部17aを抜ける際、大きい突発音は発生しない。
図5(d)は給紙中のシートS1がピックローラ15を抜けたタイミングで、後続のシートS2が分離ニップ部17aまで進んでいる状態である。つまり、シートS1との摩擦の影響によって、シートS2とピックローラ15が接触していないにも関わらず、シートS2が連れ出してしまった状態を示している。この場合、シートS2の先行給紙動作によって、図5(e)のように後続のシートS2は所定の距離だけ搬送されることになる。そして、図5(f)のように給紙中のシートS1は分離ニップ部17aを抜ける。この時、後続のシートS2の先端は分離ニップ部17aの下流に位置しているため、給紙中のシートS1が分離ニップ部17aを抜ける際、大きい突発音は発生しない。
ここで、分離ローラ17の動作について説明する。まず、分離ニップ部17aにシートSが存在しない場合、回転しているフィードローラ16との摩擦によって分離ローラ17が受ける力はトルクリミッタ18の回転負荷に勝る設定となっている。そのため、分離ローラ17はシートSを給紙する方向へ回転する。分離ニップ部17aに1枚のシートS1が搬送されてきた場合、1枚のシートS1との摩擦によって分離ローラ17が受ける力はトルクリミッタ18の回転負荷に勝る設定となっている。そのため、分離ローラ17はシートS1を給紙する方向へ回転する(図5(a))。分離ニップ部17aに1枚のシートS1が搬送され、シートS1との摩擦の影響によってシートS2が連れ出された場合、トルクリミッタ18の回転負荷は2枚のシートS1、S2との摩擦によって分離ローラ17が受ける力に勝る設定となっている。そのため、分離ローラ17は回転を停止する(図5(d))。
一方、分離ニップ部17aに1枚のシートS1が搬送され、さらにシートS2がピックローラ15によって搬送された場合、2枚のシートS1、S2との摩擦によって分離ローラ17が受ける力はトルクリミッタ18の回転負荷に勝る設定となっている。そのため、分離ローラ17はシートS1を給紙する方向へ回転する(図5(e))。分離ニップ部17aに2枚のシートS1、S2が搬送され、シートS2との摩擦の影響によってシートS3が連れ出された場合、トルクリミッタ18の回転負荷は3枚のシートS1乃至S3との摩擦によって分離ローラ17が受ける力に勝る設定となっている。そのため、分離ローラ17は回転を停止する。
図5(d)と図5(e)に注目すると、同じ2枚のシートS1、S2が分離ニップ部17aに搬送された場合であっても、図5(d)のようにシートS2が連れ出された時は、分離ローラ17が停止してシートS2を分離ニップ部17aの下流に搬送させない。そして、図5(e)のようにシートS2が先行給紙された時は、分離ローラ17が回転してシートS2を分離ニップ部17aの下流に搬送させる。
なお、本実施例において、連れ出しとは、先行シートとの摩擦の影響によって後続シートが移動した状態を示す。つまり、後続シートとピックローラ15が接触していないにも関わらず、後続シートが移動した状態である。これに対して、先行給紙とは、先行シートの給紙動作を行っている際に、ピックローラ15によって後続シートを予め所定の距離移動させることを示す。つまり、先行給紙では後続シートとピックローラ15が接触している。
図6は後続シートS2の先端位置の分布を示した図である。図6(a)は先行給紙動作なしの場合のシートS2の先端位置の分布を示している。シートS2の先端位置の分布は、カセット100のセット位置jと分離ニップ部17aの位置mの2箇所にピークがあり、頻度が高くなっている。そして、その間の範囲kにシートS2の先端が位置する頻度は低くなっている。これは、連れ出ししにくい種類のシートSはシートS1との摩擦の影響によって移動することがほとんどなく、連れ出ししやすい種類のシートSはシートS1との摩擦の影響によって移動し、分離ニップ部17aによってシートS1と分離され停止するためである。
図14(b)で説明したように、給紙しているシートS1の後端が分離ニップ部17aを抜ける際、後続のシートS2の先端が分離ニップ部17aの位置mにあると、後続のシートS2の厚みによる段差で給紙中のシートS1の後端が跳ねて突発音が発生する。先行給紙動作なしの場合、後続のシートS2の先端が分離ニップ部17aの位置mに存在する頻度が高くなるため、給紙しているシートS1の後端が分離ニップ部17aを抜ける際に突発音が発生する頻度も高くなる。
図6(b)は先行給紙動作ありの場合のシートS2の先端位置の分布を示している。シートS2の先端位置の分布は、先行給紙動作なしの場合の図6(a)に対して全体的に給送方向の下流側へ所定の距離Bだけ進んだ位置にずれている。本実施例において、先行給紙動作によって移動させる所定の距離Bは、カセット100にセットされたシートSの先端位置jから分離ニップ部17aの位置mまでの距離Aよりも短く設定されている。そのため、シートS2の先端位置のピークは、分離ニップ部17aの上流の位置nと分離ニップ部17aの下流の位置pにずれている。そして、シートS2の先端が分離ニップ部17aの位置mに存在する頻度は低くなっているため(範囲o)、給紙しているシートS1の後端が分離ニップ部17aを抜ける際に突発音が発生する頻度が低くなる。つまり、突発音を低減することができる。
以上より、本実施例によれば、記録材の後端が分離ニップ部を抜ける際の突発音を低減する画像形成装置及び給送装置を提供することが可能となる。
[実施例2]
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2においては、実施例1と相違する点を中心に説明し、実施例1と同様のものについては説明を省略する。実施例2の構成は実施例1と同じである。
図7を用いて、本実施例の給送動作について詳細に説明する。図7は、給送時における制御のタイミングチャート、給送中のシートS1の後端位置と各ローラの位置関係を模式的に示した図である。
プリント信号が入力されると、エンジン制御部200はモータ201によって、引き抜きローラ対20、21を回転させる。ほぼ同時に、エンジン制御部200は電磁クラッチ202をONにし、ピックローラ15とフィードローラ16を回転させる(図7においてシートS1の後端が位置dにあるタイミング)。
ピックローラ15により繰り出されたシートS1は、フィードローラ16と分離ローラ17によって形成される分離ニップ部17aを通過し、引き抜きローラ対20、21に到達する。本実施例においては、シートS1の先端が引き抜きローラ対20、21に到達しても、エンジン制御部200が電磁クラッチ202をOFFに切り替えない(途中で停止させない)。そして、継続してピックローラ15とフィードローラ16を回転させる。シートS1の後端がピックローラ15を通過し、シートS2とピックローラ15が接触すると、シートS2はピックローラ15によって先行給紙される。
そして、シートS2がピックローラ15によって所定の距離Bだけ搬送されたタイミングで、エンジン制御部200は電磁クラッチ202をOFFにする。この時、シートS1もフィードローラ16及び引き抜きローラ対20、21によって所定の距離C(=B)だけ搬送されている(図7におけるシートS1の後端が位置gにあるタイミング)。なお、駆動列の関係上、シートS2の先行給紙時にフィードローラ16にも駆動が伝わりシートS1を距離Cだけ搬送するように構成されているが、フィードローラ16へは駆動を伝えなくても問題ない。その後の制御は実施例1と同じであるため説明を省略する。
この場合、給紙中のシートS1の後端がピックローラ15を抜けるタイミングが、シートS1の搬送速度やシートS1の長さの影響を受けて若干ばらつく。それに伴い、先行給紙動作によってシートS2が移動する距離Bも若干ばらつくため、ばらついてもシートS2が分離ニップ部17aに位置しないようにピックローラ15の駆動をOFFにするタイミングを設定している(図7、g)。
以上の給送動作をまとめたフローチャートを図8に示す。図8のフローチャートに基づく制御は、エンジン制御部200がROM等に記憶されているプログラムに基づき実行する。
まず、エンジン制御部200はプリント指示を受けて、カセット100からシートSを給紙するタイミングとなったかどうかを判断する(S800)。シートSを給紙するタイミングとなったと判断した場合、エンジン制御部200はシートS1の給紙動作を開始する(S801)。具体的には上述した通り、モータ201を駆動させ、電磁クラッチ202をONにする。これにより、ピックローラ15、フィードローラ16、引き抜きローラ対20、21を回転させる。
次に、エンジン制御部200は搬送センサ23によってシートS1を検知したかどうかを判断する(S802)。搬送センサ23によってシートS1を検知したと判断した場合、エンジン制御部200は搬送センサ23がシートS1を検知してから所定時間T3が経過したタイミングとなったかどうかを判断する(S803)。所定時間T3は実施例1における所定時間T1よりも長い時間であり、所定時間T3が経過したタイミングとは、シートS1の後端がピックローラ15を通過し、さらにシートS2を所定の距離Bだけ搬送させたタイミングである。所定時間T3が経過したタイミングとなったと判断した場合、エンジン制御部200はシートS2の先行給紙動作を終了させるため、電磁クラッチ202をOFFにする(S804)。シートS1の搬送が完了した後、エンジン制御部200はモータ201を停止させる(S805)。
一方、S802において、搬送センサ23によってシートS1を検知していないと判断した場合、エンジン制御部200はシートS1の給紙動作を開始してから、閾値時間Tthが経過したタイミングとなったかどうかを判断する(S806)。ここで閾値時間Tthは少なくとも所定時間T3よりも長い時間である。閾値時間Tthが経過したタイミングとなったと判断した場合、エンジン制御部200はプリンタ90に設けられた不図示のオペレーションパネルにジャムが発生したメッセージを表示する(S807)。以上で、本フローチャートの制御を終了する。
以上より、本実施例によれば、記録材の後端が分離ニップ部を抜ける際の突発音を低減する画像形成装置及び給送装置を提供することが可能となる。
また、本実施例では、ピックローラ15を継続して回転させることによって、電磁クラッチ202をOFFにすることによるバックテンションの影響を抑えることができるという効果がある。これはつまり、引き抜きローラ対20、21によるシートS1の搬送速度を安定させることにつながる。ピックローラ15がシートS1と接触している間は、電磁クラッチ202がOFFにならないので、ピックローラ15は従動状態に移行しない。ゆえに、ピックローラ15の影響でバックテンションが発生し、シートS1の搬送速度が変化してしまうことを防ぐことができる。
[実施例3]
次に、本発明の実施例3について説明する。実施例3においては、実施例1と相違する点を中心に説明し、実施例1と同様のものについては説明を省略する。実施例3の構成は実施例1と同じである。
図9を用いて、本実施例の給送動作について詳細に説明する。図9は、給送時における制御のタイミングチャート、給送中のシートS1の後端位置と各ローラの位置関係を模式的に示した図である。
本実施例において実施例1と異なる点は、シートS2を先行給紙させる距離である。本実施例では、シートS2を先行給紙させる所定の距離Bを距離Aよりも長く設定している。ここで、距離Aとは実施例1で説明した通り、カセット100のシートセット位置から分離ニップ部17aまでの距離である。
図10は後続シートS2の先端位置の分布を示した図である。本実施例では実施例1に比べて先行給紙動作によってシートS2を搬送させる距離を長くしたので、シートS2が摩擦の影響によって連れ出していない状態であっても、シートS2の先端が分離ニップ部17aよりも下流に位置している。そのため、給紙しているシートS1が分離ニップ部17aを抜ける際に大きい突発音が発生することはない。
また、先行給紙動作によって後続のシートS2の先端が引き抜きローラ対20、21に到達すると、後続のシートS2は給紙中のシートS1と重なった状態で搬送されてしまう。これを防止するために、先行給紙動作によって搬送される所定の距離Bは分離ニップ部17aから引き抜きローラ対20、21までの距離Dよりも短く設定されている。つまり、距離A<距離B<距離Dの関係性を満足させる必要がある。
また、本実施例におけるフローチャートは基本的に図4と同じであり、シートS2の先行給紙動作を終了させるタイミング、すなわちS406における所定時間T2の長さのみが異なる。本実施例では実施例1よりも先行給紙動作によってシートS2を搬送させる距離を長くする必要があるので、所定時間T2も実施例1よりも長く設定する必要がある。
以上より、本実施例によれば、記録材の後端が分離ニップ部を抜ける際の突発音を低減する画像形成装置及び給送装置を提供することが可能となる。
また、本実施例では、シートS2の先端を常に分離ニップ部17aの下流に位置させるため、実施例1よりも確実にシートS1の後端が分離ニップ部17aを抜ける際の突発音を低減させることができる。
図1に記載されたプリンタ90は、分離ニップ部17aよりも上流側の搬送路の曲率に比べて、分離ニップ部17aよりも下流側の搬送路の曲率の方が大きい。そのため、シートS1の後端が分離ニップ部17aを抜ける際に、シートS1のコシの影響によって後端が跳ねる現象が起きる場合がある。この時、シートS1の後端がフィードローラ16や分離ローラ17、さらには周囲の搬送ガイド等に衝突することによって異音が発生する。
本実施例によれば、シートS2の先端を常に分離ニップ部17aの下流に位置させるため、シートS1の後端が分離ニップ部17aを抜ける際、シートS2によってシートS1の後端を支えることができる。つまり、シートS1の後端跳ねによる音を低減することができるという効果がある。
[実施例4]
次に、本発明の実施例4について説明する。実施例4においては、実施例1と相違する点を中心に説明し、実施例1と同様のものについては説明を省略する。実施例4の構成は実施例1と同じである。
図11を用いて、本実施例の給送動作について詳細に説明する。図11は、給送時における制御のタイミングチャート、給送中のシートS1の後端位置と各ローラの位置関係を模式的に示した図である。
本実施例では、まず実施例2に記載したように、シートS1の後端がピックローラ15を通過する前に電磁クラッチ202をOFFにすることなく、継続してピックローラ15及びフィードローラ16を回転させる。そして、シートS1の後端がピックローラ15を通過した後は、シートS2の先行給紙動作を実行する。
本実施例において実施例2と異なる点は、シートS2を先行給紙させる距離である。本実施例では、シートS2を先行給紙させる所定の距離Bを距離Aよりも長く設定している。ここで、距離Aとは実施例1で説明した通り、カセット100のシートセット位置から分離ニップ部17aまでの距離である。
つまり、本実施例は実施例2と実施例3を組み合わせたものに対応する。本実施例においても、実施例1に比べて先行給紙動作によってシートS2を搬送させる距離を長くしたので、シートS2が摩擦の影響によって連れ出していない状態であっても、シートS2の先端が分離ニップ部17aよりも下流に位置している。そのため、給紙しているシートS1が分離ニップ部17aを抜ける際に大きい突発音が発生することはない。
また、実施例3と同様に、先行給紙動作によって後続のシートS2の先端が引き抜きローラ対20、21に到達すると、後続のシートS2は給紙中のシートS1と重なった状態で搬送されてしまう。これを防止するために、先行給紙動作によって搬送される所定の距離Bは分離ニップ部17aから引き抜きローラ対20、21までの距離Dよりも短く設定されている。つまり、距離A<距離B<距離Dの関係性を満足させる必要がある。
また、本実施例におけるフローチャートは基本的に図8と同じであり、シートS2の先行給紙動作を終了させるタイミング、すなわちS803における所定時間T3の長さのみが異なる。本実施例では実施例2よりも先行給紙動作によってシートS2を搬送させる距離を長くする必要があるので、所定時間T3も実施例2よりも長く設定する必要がある。
以上より、本実施例によれば、記録材の後端が分離ニップ部を抜ける際の突発音を低減する画像形成装置及び給送装置を提供することが可能となる。
また、本実施例では、シートS2の先端を常に分離ニップ部17aの下流に位置させるため、実施例1よりも確実にシートS1の後端が分離ニップ部17aを抜ける際の突発音を低減させることができる。
さらに、本実施例では、ピックローラ15とフィードローラ16を継続して回転させることによって、電磁クラッチ202をOFFにすることによるバックテンションの影響を抑えることができるという効果がある。これはつまり、引き抜きローラ対20、21によるシートS1の搬送速度を安定させることにつながる。ピックローラ15とフィードローラ16がシートS1と接触している間は、電磁クラッチ202がOFFにならないので、ピックローラ15とフィードローラ16は従動状態に移行しない。ゆえに、ピックローラ15とフィードローラ16の影響でバックテンションが発生し、シートS1の搬送速度が変化してしまうことを防ぐことができる。
本実施例においても実施例3と同様に、シートS2の先端を常に分離ニップ部17aの下流に位置させるため、シートS1の後端が分離ニップ部17aを抜ける際、シートS2によってシートS1の後端を支えることができる。つまり、シートS1の後端跳ねによる音を低減することができるという効果がある。
上記の実施例3及び4においては、少なくともシートS2の先端を分離ニップ部17aよりも2mm以上給送方向において下流側に位置させるようにするとよい。ここで、分離ニップ部17aが所定の幅をもつ場合、その幅の給送方向における下流側の端よりも2mm以上下流側に位置させるという意味である。
また、上記の実施例1及び2においては、先行給紙動作によって分離ニップ部17aにシートSが挟まれる場合があり、実施例3及び4においては必ず分離ニップ部17aにシートSが挟まれる。この状態で長時間放置すると、ニップ圧によってシートSに跡がつき、シートSに形成される画像に影響が出るおそれがある。従って、プリントジョブの最後のシートSを給紙する場合には、後続シートの先行給紙動作を実施しないようにしてもよい。つまり、最後のシートSを給紙する場合には、最後のシートSの後端がピックローラ15を通過する前に電磁クラッチ202をOFFにするように制御する。
また、上記の実施例1乃至4においては、給紙するシートSの種類によらず、先行給紙動作を実施していた。しかし、給紙するシートSの厚みや坪量に応じて、先行給紙動作の実施の有無を切り替えてもよい。その理由について詳細に説明する。
給紙するシートSが薄紙である場合、先行給紙動作によってシートSが撓んでしまうことがある。これは、薄紙Sはシート自体の剛性が低く、分離ニップ部17aの抵抗に負けてしまうからである。また、薄紙Sは給紙しているシートS1の後端が分離ニップ部17aを抜ける際の段差が小さいので、突発音の大きさも小さい。ゆえに、エンジン制御部200は、給紙するシートSの種類が薄紙Sであると判断した場合、先行給紙動作を実施しないように制御し、シートSの種類が厚紙Sであると判断した場合、先行給紙動作を実施するように制御してもよい。ここで、先行給紙動作を実施するかしないかのシートSの厚みの閾値は装置毎に異なるので、実験により最適値を導けばよい。
エンジン制御部200は、プリンタ90に設けられたオペレーションパネル(不図示)からユーザによって入力されたシートSの厚みに関する情報に基づいて、上記の判断を行ってもよい。また、プリンタ90の搬送路中に図12に記載した超音波センサ80を配置し、シートSを介して減衰した超音波を受信することでシートSの坪量を検知するようにしてもよい。超音波センサ80は、超音波を送信する送信部801と超音波を受信する受信部802を有している。この場合、シートSの坪量から間接的に求められるシートSの厚みの情報に基づいて、エンジン制御部200は上記の判断を行ってもよい。
また、上記の実施例1乃至4においては、複数枚のシートSを1枚のシートSに分離するために分離ローラ17を用いたが、これに限定されない。シートSを給送する方向とは反対の方向に回転して、複数枚のシートSを1枚のシートSに分離するリタードローラを用いてもよい。
また、上記の実施例1乃至4においては、エンジン制御部200が一つの電磁クラッチ202を介して、ピックローラ15とフィードローラ16を制御する構成について説明した。しかし、これに限定されない。エンジン制御部200がピックローラ15とフィードローラ16をそれぞれ独立して制御できるような構成であってもよい。例えば、モータ201とピックローラ15の間に電磁クラッチが設けられ、さらにモータ201とフィードローラ16の間に別の電磁クラッチが設けられているような構成であってもよい。
この構成をとった場合、例えばモータ201とピックローラ15の間の電磁クラッチをON、モータ201とフィードローラ16の間の電磁クラッチをONにして、シートS1の給紙動作を開始する。そして、ピックローラ15によってシートS2の先行給紙動作が完了した後、モータ201とピックローラ15の間の電磁クラッチのみをOFFにする。そして、モータ201とフィードローラ16の間の電磁クラッチはONにしたまま、フィードローラ16によってシートS1の給紙動作を継続することも可能である。すなわち、この場合、引き抜きローラ対20、21によって分離ニップ部17aからシートS1を引き抜く必要はなく、フィードローラ16によってシートS1を下流側へ給送すればよい。
また、上記の実施例1乃至4においては、プリンタ90に固定して設けられた給送装置を用いて説明を行った。しかし、これに限定されない。図13に記載されたプリンタ90に対して着脱可能な給紙オプション装置340に適用してもよい。
給紙オプション装置340の構成は図1で説明した給送装置とほぼ同様である。給紙オプション装置340はカセット300とローラユニット319で構成されている。カセット300には複数枚のシートSが積載される積載部であるシート積載板322が設けられている。待機状態において、シートSはシート積載板322によって繰り出し位置まで持ち上げられており、最上位に位置するシートS1とピックアップローラ315が接触している。プリント信号が入力されると、ピックローラ315がシート積載板322に積載されたシートSの中からシートS1を給紙する。フィードローラ316はピックローラ315によって給紙されたシートS1をさらに下流側へ給紙する。分離ローラ317はトルクリミッタ318を介して給紙オプション装置340のシャーシー等に固定されている。
フィードローラ316によって給紙されたシートS1は、引き抜きローラ対320、321によってプリンタ90へ搬送される。搬送センサ323は、搬送されたシートS1を検知する。また、給紙オプション装置340には制御部330が設けられており、図2に記載したブロック図と同様の構成となっている。また、給紙オプション装置340には制御部を搭載せず、プリンタ側のエンジン制御部200によって給紙オプション装置340に設けられた各ローラの制御を行う構成であってもよい。