本発明の目的は、上記の問題が解決できる、即ち高温下でも安定的に着色を抑制できる着色抑制方法及びその方法を用いた高温使用時の着色の抑制された塩化ビニル系樹脂組成物を提供することである。
問題を解決するための手段
本発明者らは、上述の通り、これまでにも分子中にエポキシ基を有する可塑剤に着目し、様々な検討を行ってきた。しかし、上記の様なより厳しい着色性に対する要求に対しては、未だ十分とは言えなかった。そこで、更なる着色抑制方法に関して、鋭意検討した結果、特定のエポキシ化合物と特定の亜鉛化合物を含有してなることを基本とし、更にそれぞれの含有量、特に亜鉛化合物の含有量を特定の範囲にすることにより、高温使用時の着色が抑制できることを確認し、その方法により高温使用時の着色の抑制された塩化ビニル系樹脂成形体の原料として好適な塩化ビニル系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下に示す特定のエポキシ化合物と特定の亜鉛化合物を含有してなり、更に該亜鉛化合物の含有量を特定の範囲にすることによる塩化ビニル系樹脂成形体の高温使用時の着色抑制方法及び該方法により高温使用時の着色の抑制された塩化ビニル系樹脂組成物を提供するものである。
[項1] (A)塩化ビニル系樹脂、(B)分子量300〜1200の範囲であり、且つオキシラン酸素濃度が2〜13%の範囲である、分子内に少なくとも1つのエステル基を有するエポキシ化合物、(C)亜鉛化合物を含んでなる塩化ビニル系樹脂組成物であって、
成分(C)が、分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の亜鉛塩、金属亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛及び塩化亜鉛からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物であり、且つ、成分(C)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、0.01以上、0.2重量部未満の範囲であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。
[項2] 更に、(D)分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のカルシウム塩、バリウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物を含んでなる、[項1]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項3] 成分(C)が、分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の亜鉛塩である、[項1]又は[項2]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項4] 成分(C)が、分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数16〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の亜鉛塩である、[項3]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項5] 成分(C)が、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸及びベヘン酸のうちの少なくとも1種を含む脂肪酸の亜鉛塩である、[項4]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項6] 成分(C)が、ステアリン酸の亜鉛塩である、[項5]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項7] 成分(C)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、0.05〜0.15重量部の範囲である、[項1]〜[項6]の何れかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項8] 成分(C)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、0.07〜0.1重量部の範囲である、[項7]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項9] 成分(B)が、下記一般式(1)で示されるエポキシ化合物及び/又は一般式(2)で示されるエポキシ化合物である、[項1]〜[項8]の何れかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[式中、R1及びR2は、同一又は異なって、それぞれ飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基を表し、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数8〜18の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである。]
[式中、R3及びR5は、同一又は異なって、それぞれ炭素数8〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。またR4及びR6は、同一又は異なって、それぞれ炭素数6〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。]
[項10] 一般式(1)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数8〜11の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである、[項9]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項11] 一般式(1)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である、[項10]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項12] 一般式(1)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が70重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと30重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が70%である、[項11]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項13] 一般式(1)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が75〜98重量%の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと2〜25重量%の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が75〜98%以上である、[項12]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項14] 一般式(1)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、炭素数9、10、11の各飽和脂肪族アルコールの比率が10〜25/35〜55/30〜45の範囲であり、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が55%以上である、[項10]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項15] 成分(B)が、上記一般式(2)で示されるエポキシ化合物である、[項9]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項16] 一般式(2)におけるアルキレン基の炭素数が8であり、かつ、アルキル基の炭素数が8である、[項9]又は[項15]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項17] 成分(D)が、分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数16〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のカルシウム塩、バリウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物である、[項2]〜[項16]の何れかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項18] 成分(D)が、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸及びベヘン酸のうちの少なくとも1種を含む脂肪酸のカルシウム塩、バリウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物である、[項17]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項19] 成分(D)が、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸及びベヘン酸のうちの少なくとも1種を含む脂肪酸のカルシウム塩又はバリウム塩である、[項18]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項20] 成分(D)が、ステアリン酸のカルシウム塩又はバリウム塩である、[項19]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項21] 成分(B)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、1〜150重量部である、[項1]〜[項20]の何れかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項22] 成分(B)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、1〜20重量部である、[項21]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項23] 成分(B)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、20〜150重量部である、[項21]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項24] 成分(B)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、50〜100重量部である、[項23]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項25] 160〜166℃で4分間溶融混練後、162〜168℃×10分間プレス成形して得られた厚さ約1mmの成形直後のプレスシートのYI値が、25以下である、[項1]〜[項24]の何れかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項26] [項25]のプレスシートを100℃で100時間加熱した後の成形直後のシートとの色差(ΔE*ab)が10以下であり、200時間加熱した後の成形直後のシートとの色差(ΔE*ab)が15以下である、[項1]〜[項25]の何れかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項27] [項1]〜[項26]の何れかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物を原料とする塩化ビニル系樹脂成形体。
[項28] (A)塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、(B)分子量300〜1200の範囲であり、且つオキシラン酸素濃度が2〜13%の範囲である、分子内に少なくとも1つのエステル基を有するエポキシ化合物1〜150重量部及び(C)亜鉛化合物0.01〜0.2重量部を配合することを特徴とする、塩化ビニル系樹脂成形体の高温使用時の着色抑制方法。
[項29] 成分(C)が、分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の亜鉛塩、金属亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛及び塩化亜鉛からなる群より選ばれた1種もしく2種以上の化合物である、[項28]に記載の着色抑制方法。
[項30] 更に、(D)分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のカルシウム塩、バリウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物を配合することを特徴とする、[項28]又は[項29]に記載の着色抑制方法。
[項31] 成分(C)が、分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の亜鉛塩である、[項29]又は[項30]に記載の着色抑制方法。
[項32] 成分(C)が、分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数16〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の亜鉛塩である、[項31]に記載の着色抑制方法。
[項33] 成分(C)が、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸及びベヘン酸のうちの少なくとも1種を含む脂肪酸の亜鉛塩である、[項32]に記載の着色抑制方法。
[項34] 成分(C)が、ステアリン酸の亜鉛塩である、[項33]に記載の着色抑制方法。
[項35] 成分(C)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、0.05〜0.15重量部の範囲である、[項28]〜[項34]の何れかに記載の着色抑制方法。
[項36] 成分(C)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、0.07〜0.1重量部の範囲である、[項35]に記載の着色抑制方法。
[項37] 成分(B)が、下記一般式(1)で示されるエポキシ化合物及び/又は一般式(2)で示されるエポキシ化合物である、[項28]〜[項36]の何れかに記載の着色抑制方法。
[式中、R1及びR2は、同一又は異なって、それぞれ飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基を表し、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数8〜18の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである。]
[式中、R3及びR5は、同一又は異なって、それぞれ炭素数8〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。また、R4及びR6は、同一又は異なって、それぞれ炭素数6〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。]
[項38] 一般式(1)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数8〜11の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである、[項37]に記載の着色抑制方法。
[項39] 一般式(1)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である、[項38]に記載の着色抑制方法。
[項40] 一般式(1)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が70重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと30重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が70%である、[項39]に記載の着色抑制方法。
[項41] 一般式(1)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が75〜98重量%の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと2〜25重量%の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が75〜98%以上である、[項40]に記載の着色抑制方法。
[項42] 一般式(1)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、炭素数9、10、11の各飽和脂肪族アルコールの比率が10〜25/35〜55/30〜45の範囲であり、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が55%以上である、[項38]に記載の着色抑制方法。
[項43] 成分(B)が、上記一般式(2)で示されるエポキシ化合物である、[項37]に記載の着色抑制方法。
[項44] 一般式(2)におけるアルキレン基の炭素数が8であり、かつ、アルキル基の炭素数が8である、[項37]又は[項43]に記載の着色抑制方法。
[項45] 成分(D)が、分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数16〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のカルシウム塩、バリウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物である、[項30]〜[項44]の何れかに記載の着色抑制方法。
[項46] 成分(D)が、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸及びベヘン酸のうちの少なくとも1種を含む脂肪酸のカルシウム塩、バリウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物である、[項45]に記載の着色抑制方法。
[項47] 成分(D)が、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸及びベヘン酸のうちの少なくとも1種を含む脂肪酸のカルシウム塩又はバリウム塩である、[項46]に記載の着色抑制方法。
[項48] 成分(D)が、ステアリン酸のカルシウム塩又はバリウム塩である、[項47]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項49] 成分(B)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、1〜150重量部である、[項28]〜[項48]の何れかに記載の着色抑制方法。
[項50] 成分(B)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、1〜20重量部である、[項49]に記載の着色抑制方法。
[項51] 成分(B)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、20〜150重量部である、[項49]に記載の着色抑制方法。
[項52] 成分(B)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、50〜100重量部である、[項51]に記載の着色抑制方法。
本発明の着色抑制方法を用いることにより、成形加工時や使用時、特に高温使用時の着色が抑制され、成形直後の初期着色及び長期間使用後の着色を同時に改善することが可能となる。その結果、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、着色の非常に少ない塩化ビニル系樹脂成形体の原料として有用であり、得られた塩化ビニル系樹脂成形体は、ラップ等の透明フィルムやシート、内容物の確認が必要な様々な包装容器などとして好適に使用することができる。
<塩化ビニル系樹脂組成物>
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、(A)塩化ビニル系樹脂、(B)分子量300〜1200の範囲であり、且つオキシラン酸素濃度が2〜13%の範囲である、分子内に少なくとも1つのエステル基を有するエポキシ化合物、(C)亜鉛化合物を含んでなり、その成分(C)が、分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の亜鉛塩、金属亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛及び塩化亜鉛からなる群より選ばれた1種もしく2種以上の化合物であり、且つ、成分(C)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、0.01以上、0.2重量部未満の範囲であることを最大の特徴としている。
また、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、160〜166℃で4分間溶融混練後、162〜168℃×10分間プレス成形して得られた厚さ約1mmの成形直後のプレスシートのYI値が、25以下であり、さらにそのプレスシートを100℃で100時間加熱した後の成形直後のシートとの色差(ΔE*ab)が10以下であり、200時間加熱した後の成形直後のシートとの色差(ΔE*ab)が15以下であることを特徴としている。
上記YI値とは、イエローインデックスのことであり、汎用の分光測色計で測定された L*、a*、b*から容易に算出することができる。本発明では、成形直後、即ち、ゼロ時間目のL*0、a*0、b*0から成形直後の色相(YI値を)求めた。YIの値は、一般的に小さいほど着色は少ないことを示している。
ΔE*abとは、経時的な色の変化を示す目安であり、本発明では加熱前と所定時間加熱後の色差を以下の方法により求めた。所定時間加熱後のシートの色相(L*、a*、b*)を汎用の分光光度計で測定し、過熱前、即ち上記成形直後のシートのL*0、a*0、b*0との色差(ΔE*ab)を下式を用いて計算した。
ΔE*ab ={(L*−L*0)2+(a*−a*0)2+(b*−b*0)2}1/2
成分(A):塩化ビニル系樹脂
本発明の塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの単独重合体及び塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの共重合体であり、その製造方法は、従来公知の重合方法で行われる。例えば、汎用塩化ビニル樹脂の場合は、油溶性重合触媒の存在下に懸濁重合する方法などが挙げられる。また、塩化ビニルペースト樹脂では水性媒体中で水溶性重合触媒の存在下に乳化重合する方法などが挙げられる。これらの塩化ビニル系樹脂の重合度は、通常300から5000であり、好ましくは400〜3500、さらに好ましくは700〜3000である。この重合度が低すぎると耐熱性等が低下し、高すぎると成形加工性が低下する傾向がある。
共重合体の場合、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン等の炭素数2〜30のα−オレフィン類、アクリル酸及びそのエステル類、メタクリル酸及びそのエステル類、マレイン酸及びそのエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル等のビニル化合物、ジアリルフタレート等の多官能性モノマー及びこれらの混合物と塩化ビニルモノマーとの共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン、ブチルゴム、架橋アクリルゴム、ポリウレタン、ブタジエンースチレンーメチルメタクリレート共重合体(MBS)、ブタジエンーアクリロニトリルー(α−メチル)スチレン共重合体(ABS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート及びこれらの混合物へ塩化ビニルモノマーをグラフトしたグラフト共重合体等が例示される。
成分(B):エポキシ化合物
本発明のエポキシ化合物とは、分子量300〜1200の範囲であり、更にそのオキシラン酸素濃度が2〜13%の範囲の、分子内に少なくとも1つのエステル基を有するエポキシ化合物であり、以下では「本エポキシ化合物1」という。ここで、オキシラン酸素とは、基準油脂分析試験法 2.3.7.1-2013「オキシラン酸素定量方法(その1)」に準拠して測定した値である。
上記エポキシ化合物(以下、「本エポキシ化合物1」という。)は、塩化ビニル系樹脂との相溶性の観点より、分子内に少なくとも1つのエステル基を有し、また、耐揮発性等の観点より、分子量が300〜1200の範囲、好ましくは400〜1000の範囲であり、更に、着色抑制効果の観点より、オキシラン酸素濃度が2〜13%の範囲、好ましくは2.5〜12%の範囲であるエポキシ化合物が推奨される。更に、耐熱性や耐寒性等の観点より、前記エポキシ化合物が、好ましくは下記一般式(1)で示されるエポキシ化合物(以下、「本エポキシ化合物2」という。)、又は下記一般式(2)で示されるエポキシ化合物(以下、「本エポキシ化合物3」という。)であることが、特に好ましくは本エポキシ化合物2であることが推奨され、上記本エポキシ化合物1〜3は、1種又は2種以上併用して使用することもできる。
[式中、R1及びR2は、同一又は異なって、それぞれ飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であり、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数8〜11の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである。]
[式中、R3及びR5は、同一又は異なって、それぞれ炭素数8〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し、かつ、R4及びR6は、同一又は異なって、炭素数6〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。]
また、本エポキシ化合物1としては、上記本エポキシ化合物2及び本エポキシ化合物3以外にも天然の不飽和脂肪酸グリセライドのエポキシ化物なども好適に使用することができる。具体的には、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化菜種油、エポキシ化トール油、エポキシ化綿実油、エポキシ化パーム油、エポキシ化ヤシ油、エポキシ化ひまし油、エポキシ化ひまわり油、エポキシ化トウモロコシ油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化きり油、エポキシ化キャノーラ油、エポキシ化オリーブ油、エポキシ化ごま油、エポキシ化米ぬか油、エポキシ化べにばな油、エポキシ化牛脂、エポキシ化魚油等が挙げられ、中でも、好ましい具体例としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油などが挙げられる。
本エポキシ化合物1において、分子内に1つもエステル基を有しない場合は、塩化ビニル系樹脂との相溶性が著しく低下し、樹脂中での分散不良を起こし、着色抑制効果が低下するだけでなく、ブリード等による表面汚れの原因ともなり易く、好ましくない。分子量が300未満の場合、揮発性が大きくなり、その結果耐熱老化性等の低下の一因となり、一方分子量が1200を超えると樹脂との塩化ビニル系樹脂との相溶性が低下し、その樹脂中での分散不良やブリードによる成形品表面の汚れの原因となり易く、いずれも好ましくない。また、オキシラン酸素濃度が2%未満の場合、着色抑制効果が十分ではなく、本発明の効果を十分に発揮することが困難となり、オキシラン酸素濃度が13%を超えると塩化ビニル系樹脂との相溶性が低下し、その樹脂中での分散不良やブリードによる成形品表面の汚れの原因となり易く、いずれも好ましくない。
本エポキシ化合物1は、本発明の目的とする上記性能を満たすものであれば、特にその製造方法により限定されるものではないが、例えば、所定の酸成分とアルコール成分とを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、無触媒又は触媒の存在下でエステル化し、得られたエステル化合物(中間原料)を、所定の条件でエポキシ化することにより容易に得られる。ここで、前記の所定の酸成分及びアルコール成分、両方成分ともに、またはいずれか一方の成分に、分子内に芳香族性を示さない炭素二重結合を1つ以上有する成分を含み、それらの成分を用いてエステル化することで、分子内に芳香族性を示さない炭素二重結合を1つ以上有するエステル化合物(中間原料)を得ることができる。また、例えば分子内に芳香族性を示さない炭素二重結合を1つ以上有するエステル化合物として、天然の不飽和脂肪酸グリセライドからなる油脂などが例示され、そのまま中間原料として使用することもできる。
天然の不飽和脂肪酸のグリセライドからなる油脂としては、具体的には、例えば、大豆油、亜麻仁油、菜種油、トール油、綿実油、パーム油、ヤシ油、ひまし油、ひまわり油、化トウモロコシ油、サフラワー油、きり油、キャノーラ油、オリーブ油、ごま油、米ぬか油、べにばな油、牛脂、魚油等が挙げられ、中でも、大豆油、亜麻仁油などが好適に使用することができる。
本エポキシ化合物2の好ましい態様としては、上記一般式(1)における残基を規定している飽和脂肪族アルコールが、炭素数8〜18、好ましくは8〜11の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールであり、その残基を規定している飽和脂肪族アルコール全量に対して直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率(重量比)が55%以上である態様が挙げられる。更に好ましい態様としては、前記残基を規定している飽和脂肪族アルコールが、耐熱性、耐寒性、柔軟性等の性能のバランスの観点が要求される用途では(i)炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該残基を規定している飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該残基を規定している飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である態様などが推奨され、特に耐揮発性等の耐熱性の要求される用途では(ii)主として炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールの混合物であり、炭素数9、10、11の各アルコールの占める比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45となる範囲であり、かつ該残基を規定している飽和脂肪族アルコールの直鎖率が55%以上である態様などが推奨される。
本エポキシ化合物2は、本発明の目的の性能を満たすものであれば、特にその製造方法により限定されるものではないが、例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその無水物と特定の構造の飽和脂肪族アルコールをエステル化反応し、得られた4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(中間原料)を所定の条件でエポキシ化することにより、容易に得られる。また、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその無水物をエポキシ化後、得られた4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸又はその無水物と特定の構造の飽和脂肪族アルコールをエステル化する方法で得ることもできる。更に、上記飽和脂肪族アルコールの種類によっては、予め炭素数1〜6程度の低級アルコールとエステル化後、上記飽和脂肪族アルコールを加えて、エステル交換反応により得る方法もある。簡便性等、実用性の観点から、エステル化後にエポキシ化する方法が最も好ましい。
本エポキシ化合物3の好ましい態様としては、上記一般式(3)中のR3及びR5で示されるアルキレン基が、同一又は異なって、それぞれ炭素数8〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、かつ、R4及びR6で示されるアルキル基が、同一又は異なって、それぞれ炭素数6〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である態様が挙げられる。更に好ましい態様としては、R3及びR5で示されるアルキレン基が、炭素数8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、かつ、R4及びR6で示されるアルキル基が、炭素数8のアルキル基である態様などが挙げられる。
本エポキシ化合物3は、本発明の目的の性能を満たすものであれば、特にその製造方法により限定されるものではないが、例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその無水物と特定の構造の不飽和脂肪族アルコールをエステル化反応し、得られた4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(中間原料)を所定の条件でエポキシ化することにより、容易に得られる。また、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸またはその無水物をエポキシ化後、得られた4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸又はその無水物と特定の構造のエポキシ化飽和脂肪族アルコールをエステル化する方法で得ることもできる。更に、上記不飽和脂肪族アルコールの種類によっては、予め炭素数1〜6程度の低級アルコールとエステル化後、上記不飽和脂肪族アルコールを加えて、エステル交換反応により得る方法もある。簡便性等、実用性の観点から、エステル化後にエポキシ化する方法が最も好ましい
成分(B)の含有量の範囲は、その用途や目的により、適宜選択されるものであり、本発明の効果を奏する限り、特に限定されるものではなく、また、成分(C)の種類や含有量により適宜調整することができるが、好ましくは、1重量部以上であることが着色抑制効果等の観点より推奨される。より具体的には、例えば、半硬質用途や他の可塑剤との併用した軟質用途などの場合は、1〜20重量部程度の含有量が、着色抑制効果及び硬度等の観点より推奨され、また、他の可塑剤を含まないか、その量が少ない場合は、20〜150重量部、好ましくは50〜100重量部程度の含有量が、着色抑制効果及び、柔軟性や耐熱性、耐寒性等の成形品の熱的・機械的物性の観点より推奨される。
成分(C):亜鉛化合物
本発明の亜鉛化合物とは、分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の亜鉛塩、金属亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛及び塩化亜鉛からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物である。これらの亜鉛化合物は、それぞれ単独で又は2種以上適宜組み合わせて用いても構わない。また、上記以外の亜鉛化合物、例えば、オルソリン酸、ロジン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、サリチル酸、ナフテン酸の亜鉛などを用いることもできる。
上記亜鉛化合物の中でも、分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の亜鉛塩が好ましく、分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の亜鉛塩がより好ましく、分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数16〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の亜鉛塩が更に好ましく、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸及びベヘン酸のうちの少なくとも1種を含む脂肪酸の亜鉛塩が最も好ましい。
上記の好ましい分子内に少なくとも一つの水酸基を有していても良い炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の具体例としては、例えば、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、フプタデシル酸、ステアリン酸、1 2 − ヒドロキシステアリン酸、9 , 1 0 − ジヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、エルカ酸の亜鉛塩が挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸、1 2 − ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸の亜鉛塩が好ましく、特に、ステアリン酸の亜鉛塩が最も好ましい亜鉛化合物として挙げられる。
成分(C)の含有量は、着色抑制効果等の観点より、0.01重量部以上、0.2重量部未満の範囲、好ましくは0.05〜0.15重量部の範囲、更に好ましくは0.07〜0.1重量部の範囲であることが推奨される。具体的には、0.01重量部未満の場合、着色抑制効果が不十分であり、更に成分(B)であるエポキシ化合物の着色抑制効果も十分に発揮されなくなり、成形加工直後の成形品の着色性、すなわち初期着色性が悪化し、成形品を高温で長時間使用した時の成形品の着色性、すなわち長期着色性も悪化するため、好ましくない。さらに、成分(C)の含有量は、0.01重量部未満の場合、成分(C)の有する外部滑剤としての効果も不十分となり、加工の際に加工機からの樹脂の離形が困難となり、加工性が低下する懸念も生じる。また、0.2重量部以上の場合にも長期着色性が悪化する傾向が確認されたため好ましくない。この傾向は、成形加工時や高温使用時に成分(C)が成分(B)であるエポキシ化合物の分解を促進し、それに伴って塩化ビニル系樹脂の分解が促進され、長期着色性が悪化するものと考えられ、成分(B)を配合しない系では認められない傾向である。この傾向は、成分(B)を含まない通常の処方とは全く異なった傾向であり、成分(C)の含有量が本発明の範囲を超えた場合に、成分(B)であるエポキシ化合物の分解物の揮散により臭気が発生しやすくなり、作業環境等の観点からも好ましくないことが、確認されている。
成分(D)
本発明の成分(D)は、主として成形加工性の改善の目的で配合される。一般的に、用途や成形方法によるが、成形加工性が悪い時にその熱履歴が成形品の外観、機械的強度等に影響する場合があり、従って、必要に応じて、成分(B)、成分(C)に加えて成分(D)を配合することが好ましい。
上記の様な目的で配合される成分(D)の代表的な例として、分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のカルシウム塩、バリウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物、好ましくは、分子内に少なくとも1つの水酸基を有していても良い炭素数16〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のカルシウム塩、バリウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物が挙げられる。
上記化合物の具体例としては、例えば、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、フプタデシル酸、ステアリン酸、1 2 − ヒドロキシステアリン酸、9 , 1 0 − ジヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、エルカ酸のカルシウム塩、バリウム塩及びマグネシウム塩が挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸、1 2 − ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸のカルシウム塩又はバリウム塩が好ましく、特に、ステアリン酸のカルシウム塩又はバリウム塩が特に好ましい化合物として挙げられる。
成分(D)の含有量は、0.01〜0.2重量部の範囲、好ましくは0.05〜0.15重量部の範囲であることが推奨される。具体的には、0.01重量部未満の場合、成分(D)の有する成形加工性の改善効果が十分に発揮されないため好ましくない。また、0.2重量部を超えると、成分(D)と成分(B)の相互作用により、成分(D)に起因する暖色系の発色が更に増長され、初期着色性が著しく悪化するため好ましくない。
その他の成分
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、上記成分(A)、(B)、(C)及び(D)以外に、必要に応じて上記成分(B)以外の可塑剤、上記成分(C)及び(D)以外の安定化剤、安定化助剤、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン等の光安定剤、難燃剤、着色剤、加工助剤、充填剤、滑剤或いは帯電防止剤等の添加剤を適宜配合することができる。また、上記その他の添加剤は、1種で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記成分(B)以外の可塑剤としては、本技術分野で従来から使用されている公知の可塑剤が使用でき、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル類、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、テレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOTP)、イソフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOIP)等のフタル酸エステル類、4−シクロヘキセン−1, 2−ジカルボン酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOTH)等のテトラヒドロフタル酸エステル類、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)等の脂肪族二塩基酸エステル類、本発明の範囲外のトリメリット酸エステル類、ピロメリット酸テトラ−2−エチルヘキシル(TOPM)等のピロメリット酸エステル類、リン酸トリ−2−エチルヘキシル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル類、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのアルキルエステル類、アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとのポリエステル化によって合成された分子量800〜4000のポリエステル類、本発明の範囲外のエポキシ化エステル類、DINCH等の脂環式二塩基酸エステル類、ジカプリン酸−1,4−ブタンジオール等の脂肪酸グリコールエステル類、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、アセチルクエン酸トリヘキシル(ATHC)、アセチルクエン酸トリエチルヘキシル(ATEHC)、ブチリルクエン酸トリヘキシル(BTHC)等のクエン酸エステル類、イソソルビドジエステル類、パラフィンワックスやn−パラフィンを塩素化した塩素化パラフィン類、塩素化ステアリン酸エステル等の塩素化脂肪酸エステル類、オレイン酸ブチル等の高級脂肪酸エステル類等が例示される。上記併用できる他の可塑剤を配合する場合、その配合量は、本発明に係る可塑剤の効果を損なわない範囲で適宜選択され、通常、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜100重量部程度が推奨される。
上記成分(C)及び(D)以外の安定化剤、安定化助剤としては、塩基性炭酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛等の鉛塩類、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート等の有機錫化合物、有機亜リン酸化合物等のキレーター化合物、トリフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリデシルフォスファイト等のホスファイト系化合物、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等のベータジケトン化合物、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等のポリオール化合物、過塩素酸バリウム塩、過塩素酸ナトリウム塩等の過塩素酸塩化合物、ハイドロタルサイト化合物、ゼオライトなどが例示される。安定化助剤を配合する場合、その配合量は、本発明に係る安定化剤の効果を損なわない範囲で適宜選択され、通常、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部程度が推奨される。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート]メタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのフェノール系化合物、アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾールなどの硫黄系化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン酸系化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛などの有機金属系化合物などが例示される。また酸化防止剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する酸化防止剤の配合量は0.2〜20重量部程度が推奨される。
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレートなどのサリシレート系化合物、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチルベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物の他、シアノアクリレート系化合物などが例示される。紫外線吸収剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する紫外線吸収剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル及び1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールと高級脂肪酸のエステル混合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重縮合物、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N' −ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、N,N' ,N'' ,N''' −テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が例示される。光安定剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する光安定剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機系化合物、クレジルジフェニルホスフェート、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリスジクロロプロピルフォスフェート等のリン系化合物、塩素化パラフィン等のハロゲン系化合物等が例示される。難燃剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する難燃剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
着色剤としては、カーボンブラック、硫化鉛、ホワイトカーボン、チタン白、リトポン、べにがら、硫化アンチモン、クロム黄、クロム緑、コバルト青、モリブデン橙などが例示される。着色剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する着色剤の配合量は1〜100重量部程度が推奨される。
加工助剤としては、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ブチルステアエレート、アクリル系高分子などが例示される。加工助剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する加工助剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、珪藻土、フェライト、などの金属酸化物、ガラス、炭素、金属などの繊維及び粉末、ガラス球、グラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムなどが例示される。充填剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する充填剤の配合量は1〜100重量部程度が推奨される。
滑剤としては、シリコーン、流動パラフィン、バラフィンワックス、ステアリン酸金属塩やラウリン酸金属塩などの脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド類、脂肪酸ワックス、高級脂肪酸ワックス等が例示される。滑剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する滑剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
帯電防止剤としては、アルキルスルホネート型、アルキルエーテルカルボン酸型又はジアルキルスルホサクシネート型のアニオン性帯電防止剤、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ジエタノールアミン誘導体などのノニオン性帯電防止剤、アルキルアミドアミン型、アルキルジメチルベンジル型などの第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム型の有機酸塩又は塩酸塩などのカチオン性帯電防止剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型などの両性帯電防止剤などが例示される。帯電防止剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する帯電防止剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂に上記各成分及び必要に応じてその他の添加剤を加えて、例えばモルタルミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンブレンダー等の攪拌機により攪拌混合を行い、塩化ビニル系樹脂組成物の混合粉とすることができる。
また、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂に上記各成分及び必要に応じてその他の添加剤を加えて、例えばコニカル二軸押出機、パラレル二軸押出機、単軸押出機、コニーダー型混練機、ロール混練機等の混練機により溶融成形することによりペレット状の塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。
また、塩化ビニル系ペースト樹脂に上記各成分及び必要に応じてその他の添加剤を加えて、例えばポニーミキサー、バタフライミキサー、プラネタリミキサー、リボンブレンダー、ニーダー、ディゾルバー、二軸ミキサー、ヘンシェルミキサー、三本ロールミル等の混合機により均一に混合し、必要に応じて減圧下で脱泡処理し、ペースト状の塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。
<着色抑制方法>
本発明の塩化ビニル系樹脂成形体の高温使用時の着色抑制方法は、上記[項28]〜[項52]を要旨とする発明であり、それらの項の構成要件の説明としては、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物の上述の説明と基本的には同義である。
<塩化ビニル系樹脂成形体>
上記の本発明の着色抑制方法を用いて得られた本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物(配合粉状やペレット状)を、真空成型、圧縮成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形、粉体成形等の従来公知の方法を用いて溶融成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。
一方、上記ペースト状の軟質塩化ビニル系樹脂組成物は、スプレッド成形、ディッピング成形、グラビア成形、スラッシュ成形、スクリーン加工等の従来公知の方法を用いて成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。
成形体の形状としては、特に限定されないが、例えば、ロッド状、シート状、フィルム状、板状、円筒状、円形、楕円形等あるいは玩具、装飾品等特殊な形状のもの、例えば星形、多角形形状が例示される。
かくして得られた本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を原料とする塩化ビニル系樹脂成形体は、着色の非常に少ない成形体として有用であり、その着色が製品品質を大きく阻害する用途、例えば、ラップ等の透明フィルムやシート、内容物の確認が必要な様々な包装容器、着色により外観を損なう車両用等の内装材、更には着色が医療事故等に繋がりかねない医療材料など、様々な用途において非常に有用である。また、上記以外の用途においても、高温下で安定的に使用できる材料として幅広く使用することができる。
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や比較例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。
[評価試料の作製]
(1)塩化ビニルシートの作製
塩化ビニル樹脂(成分(A)、ストレート、重合度1050、商品名「Zest1000Z」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に、所定量の成分(C)及び/又は成分(D)を配合して、モルタルミキサーで攪拌混合する。続いて、成分(B)又は成分(B)と成分(B)以外の可塑剤との混合物を50重量部加えた後、均一になるまでハンドリング混合し、塩化ビニル樹脂組成物を作製した。
次に、得られた塩化ビニル樹脂組成物を用いて、5×12インチの二本ロールにて160〜166℃で4分間溶融混練し、ロールシートを作製した。続いて162〜168℃×10分間プレス成形を行い、厚さ約1mmのプレスシートを作製した。
[着色性評価]
(2)初期着色性:上記(1)の方法で得られたプレスシートの成形直後の色相(着色度合)を分光測色計(CM−5、KONIKAMINOLTA製)で測定し、得られた L*0、a*0、b*0からイエローインデックス(YI ASTM D1925)を算出した。一般的に、 YI の値が0に近いほど着色が少ないことを示し、本発明では、YIの値が25以下であれば初期着色が少なく、初期着色性に優れていると判定した。
(3)長期着色性:上記(1)の方法で得られたプレスシートを3cm×3cmの大きさにカットしたものをオーブンに入れ、100℃で100時間、200時間加熱した。所定時間加熱後のシートの色相を(2)と同様に分光測色計で測定し、得られた L*、a*、b* と(2)で得られた L*0、a*0、b*0 から、下式を用いて、色差(ΔE*ab)を計算した。ΔE*abの数値が小さいほど、加熱による経時的な着色が少ないことを示し、ΔE*abの数値が小さいほど、本発明における高温使用時等における長期着色性に優れると言える。
ΔE*ab ={(L*−L*0)2+(a*−a*0)2+(b*−b*0)2}1/2
表中の略号の説明
E−PS : サンソサイザー E−PS(新日本理化(株)製、4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ2−エチルヘキシル、分子量411、オキシラン酸素濃度3.6)
E−PL9 : サンソサイザー E−PL9(新日本理化(株)製、4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジノニル(分岐及び直鎖)、分子量439、オキシラン酸素濃度3.4)
E−P911 : サンソサイザー E−P911(新日本理化(株)製、4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジアルキル(C9−11)、分子量472、オキシラン酸素濃度3.1)
E−PO : サンソサイザー E−PO(新日本理化(株)製、4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−9,10−エポキシステアリル、分子量719、オキシラン酸素濃度5.6)
Zn−St : ステアリン酸亜鉛(試薬、ナカライテスク(株)
Ca−St : ステアリン酸カルシウム(試薬、ナカライテスク(株))
Ba−St : ステアリン酸バリウム(試薬、ナカライテスク(株))
ZnCl2 : 塩化亜鉛(試薬、和光純薬工業(株))
[実施例1〜9]
塩化ビニル樹脂(成分(A))100重量部に、表1に記載の種類の成分(B)、成分(C)、成分(D)を本発明の範囲内の含有量になる様に配合して、上記[評価試料の作製]に記載の方法にて、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、その組成物を用いて塩化ビニルシート(本発明の塩化ビニル系樹脂成形体)を作製した。
次に、得られた塩化ビニルシートを用いて、上記[着色性評価]に記載の方法にて、初期着色性(成形直後のYI)と長期着色性(加熱後のΔE*ab)を評価し、その結果を表1に示した。
[実施例10]
成分(B)であるE−PS50重量部の代わりに、成分(B)としてE−PS5重量部と汎用の可塑剤であるフタル酸ジ2−エチルヘキシル(DOP、新日本理化(株)製)45重量部との混合物を用いた以外は、実施例3と同様に実施して、塩化ビニルシートを作製し、得られた塩化ビニルシートの初期着色性と長期着色性を評価し、その結果を表1に記載した。
[比較例1〜2]
成分(C)及び成分(D)の含有量を本発明の範囲外に変えた以外は、実施例3と同様に実施して、塩化ビニルシートを作製し、得られた塩化ビニルシートの初期着色性と長期着色性を評価し、その結果を表2に記載した。
[比較例3]
成分(C)を抜いた以外は、実施例3と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製した。続いて、その組成物を用いて塩化ビニルシートの作製を試みたが、均一なプレスシートの作製が困難であり、更にロールによる溶融混練途中で著しい黄着色が確認されたため、着色評価の実施は不可能であった。
[比較例4]
成分(B)の代わりに、汎用の可塑剤のみを配合した以外は、実施例3と同様に実施して、塩化ビニルシートを作製し、得られた塩化ビニルシートの初期着色性と長期着色性を評価し、その結果を表2に記載した。
[比較例5〜6]
成分(B)の代わりに、汎用の可塑剤DOP50重量部のみを配合し、更に成分(C)及び成分(D)の含有量を本発明の範囲外に変えた以外は、実施例3と同様に実施して、塩化ビニルシートを作製し、得られた塩化ビニルシートの初期着色性と長期着色性を評価し、その結果を表2に記載した。
表2(比較例)の結果より、本発明の成分(B)又は成分(C)が含まれない系では加熱後の着色(長期着色性)が著しく(比較例3〜6)、また、成分(C)の含有量が本発明の範囲外の系でも加熱後の着色(長期着色性)が顕著に認められた(比較例1〜2)。一方、本発明の範囲内の実施例の結果(表1)では、何れの場合にも成形直後の着色(初期着色性)が実用上問題のない範囲であり、かつ加熱後の着色が非常に少なく、長期着色性が非常に良好であることがわかる。