JP2018178610A - 水和硬化マット及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そして、後日、本格的なコンクリート護岸工事等を行う予算を申請、事業決定し、恒久護岸補強工事等を行うのが一般的である。
従来の一般的なフレコンバッグの他に、例えば、(特許文献1)には、土嚢の流失を防止し、決壊箇所の激流を抑えることができ、大きな決壊箇所でも対応することができる大型土嚢として、網糸径1mm〜10mmの合成繊維糸で編成した網地を用い一重または二重以上で形成した伸度15%〜80%の外袋の開口周縁近傍の網目に吊りロープを挿通し、端部を連結して無端状となし該無端状ロープを網目の所定箇所で引き出して複数の吊りループを形成し、吊りループ近傍に口絞りロープを配設した外袋と、該外袋の内部に配置した布帛で形成した内容積が0.3立方米〜9立方米の内袋と、内袋に充填した土砂とからなる、大型土嚢が開示されている。
また、(特許文献2)には、盛土等に適用可能な大型の土嚢袋として、有底円筒状の袋体の底面中央部及び側面下方を所望面積透水性を有する素材で、そして他の部分は非透水性の素材で形成し、袋体側面外周に環状補強帯を所望間隔で所望数縫着し、U字形に曲げた2本の吊り帯の中央部分を吊り下げ部とし両側部分をそれぞれ等間隔で環状補強帯と直交するようにし、吊り帯は環状補強帯と交叉する部分で環状補強帯と縫着するとともに、底面中央部の透水性素材部とその周囲の非透水性素材部の境界に底面補強帯を縫着し吊り帯の各先端をこの底面補強帯に縫着したことを特徴とする土嚢袋が開示されている。
しかし、従来のフレコンバッグは、ポリエチレンやポリエステル、ポリプロピレン等の樹脂系繊維シートで構成されており、あくまで仮復旧工事のために、繊維シート袋に土砂を充填しただけのものであり、そのままでは長期間の使用には耐えられない。
よって、本格復旧工事への早期の着手が必要であるが、近年、予算が乏しいために、仮復旧状態のまま長期間放置されることが増えており、フレコンバッグの袋素材の経年劣化による風化破損が発生し易く、長寿命性、形態安定性に欠けるという問題点があった。
また、袋素材が柔らかく、弱いために、増水時の流木等の衝突で簡単に破損し易く、安全性、耐久性に欠けるという問題点もあった。
これらの問題点を解決するものとして、例えば(特許文献3)及び(特許文献4)には、第1の表面部と、第1の表面部から空間で分離した第2の表面部と、第1の表面部と第2の表面部との間を延在し、間隙を介した配置で第1の表面部及び第2の表面部を維持する自耐性のある連結繊維と、第1の表面部と第2の表面部との間の空間に配置した粉末材料とを具え、粉末材料が液体の添加又は放射線への曝露で硬質又は半硬質の固体に固化できる含浸布が開示されている。
(1)(特許文献1)の大型土嚢は、大型で激しい水流でも流され難く、また内袋の目が細かく、充填された土砂が袋体の外に流出し難いため、緊急時の補強修復には対応できる。しかし、従来のフレコンバッグと同様に、ポリエチレンやポリエステル、ポリプロピレン等の樹脂系繊維等で形成されているため、破損や劣化が発生し易く、長期間、構造物として形状を維持することは困難であり、耐久性に欠けるという課題を有していた。
(2)(特許文献2)の土嚢袋は、袋の円筒部に環状補強帯を縫着し、底部に底面補強帯を縫着することにより、袋全体としての強度を高め、吊り帯を環状補強帯と底面補強帯に接続して、土嚢の吊り上げ時に袋が内部の用土の重みに負けて破損することを防止しているが、布やロープ等で形成されているため、流木や金属等が衝突した場合には破損する可能性があり、耐久性に欠けると共に、紫外線や大気中のガスによる経年劣化を防ぐことができず、耐候性に欠けるという課題を有していた。
(3)(特許文献3)、(特許文献4)では、第1の表面部と、第2の表面部が、連結繊維によって間隙を介して配置された布地に対し、粉末材料を第1の表面部に配置して、布地を振動し、及び/又は粉末材料を布地にブラッシングすることによって、粉末材料で布地内部の空間を充填するため、粉末材料の充填に手間がかかり量産性に欠けるという課題を有していた。
(4)第1の表面部と、第2の表面部が、間隙を維持するように連結繊維で連結されているだけなので、粉末材料を所定の位置に固定することができず、粉末材料が空間内を移動して偏りが発生し易く、均一性、取扱い性に欠けるという課題を有していた。
(5)外部から粉末材料の充填状態を確認することができず、粉末材料の充填量を管理することが難しく、粉末材料の充填作業性、品質の安定性に欠けるという課題を有していた。
また、本発明の水和硬化マットの製造方法は上記課題を解決するもので、簡単な工程で内部に水和硬化剤を目視しながら圧密に充填することができ、水和硬化剤の充填量の偏りやばらつきの発生を防ぐことができ、水和硬化剤の充填作業性に優れ、水和硬化剤が空間内で移動し難く、硬化時に内部に隙間(空洞)が発生することを防止でき、量産性、品質の均一性、安定性に優れた水和硬化マットの製造方法の提供を目的とする。
本発明の請求項1に記載の水和硬化マットは、少なくともいずれか一方が透水性を有する下層シート及び上層シートと、前記下層シートと前記上層シートとの間に挟持され空間部を形成する空間保持部材と、前記空間部に充填された水和硬化剤と、前記上層シートと前記下層シートの周囲の積層部が封着された封着部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用、効果を有する。
(1)少なくともいずれか一方が透水性を有する下層シート及び上層シートと、下層シートと上層シートとの間に挟持され空間部を形成する空間保持部材と、空間部に充填された水和硬化剤を備えているので、透水性を有する下層シート又は上層シートから水分を供給するだけで、速やかに水和硬化剤が水和反応によって硬化し、緊急補修性に優れる。また、硬化状態の形態が変化せず、形態安定性に優れると共に、剛性を維持することができ、耐久性、長寿命性に優れる。
(2)未使用状態(水和硬化剤が水和反応する前)は、不透水製のシート等で密封包装することにより、柔軟性を有し、折り畳んで保管や搬送ができ、保管時の省スペース性、取扱い性、搬送性に優れる。
(3)設置現場の地形の凹凸等の形状に適応させて水和硬化マットの形状を整えて設置した状態で、水和硬化剤に吸水させることにより、所望の立体形状を維持することができ、固定構造物として堤防等の盛土材を補強安定化させることができ、河川堤防等の応急修理や盛土等の仮復旧工事等に好適に用いることができる。
(4)複数の水和硬化マット同士を縫製したり溶着したりして上下左右に連結することにより、様々な形状に成型することができ、特に大型の袋状に成型したものは、大雨等による斜面の崩壊や堤防の決壊、道路冠水等が発生した災害現場等において含水した土砂等を内部に充填材として充填すれば、土砂に含まれる水分によって水和硬化剤を硬化させることができ、別途、水分を供給することなく、大型土嚢として使用することができ、緊急時の施工性に優れる。
下層シート及び上層シートの少なくともいずれか一方に、突起部を装設した場合は、更に水和硬化マットの強度を高めることができる。突起部の形状や配置等は適宜、選択することができ、平板状の基材等の表面に円形状や多角形状の突起を独立させて形成したものや、半円形状、三角形状、矩形状、台形状等の断面を有する突条を形成したものを用いることができる。必要に応じて、突起部の上面に貫通孔を設けることにより、水和硬化マットの透水性を確保することができる。
空間保持部材として合成樹脂製の繊維で編んだネットを用いる場合、角目や菱目等の網目の交点に形成されるこぶ(結節点)を利用して、空間内での水和硬化剤の移動を低減し、隙間の発生を効果的に防止することができ、充填性に優れる。
空間保持部材は、恒久的な波形(凹凸条部)を形成できればよく、凹凸条部の形状、大きさ、配置等は用途や設置場所等に応じて適宜、選択することができる。凹凸条部の形成は、対面に凹凸意を備えた歯車や平板からなる金型に合成樹脂製や金網製のネット材やパンチングメタル等の材料を挟持することにより形成できる。更に合成樹脂製の場合は、成型温度近くまで加熱した金型に合成樹脂製のネットを装入して成型した後、冷却して塑性変形させて作成する。金属製の金網等のように保形性を有する空間保持部材を用いる場合は、空間保持部材を上下に歯車を備えた成形機にとうして繰返し折り曲げることにより、凹条部と凸条部が交互に配置された凹凸条部を容易に形成することができる。
空間保持部材は、下層シートと上層シートとの間に水和硬化剤が充填される空間部を形成できるものであればよい。
空間保持部材の厚さは、2mm〜50mm、好ましくは4mm〜20mmが好適に用いられる。4mmより薄くなるにつれ、硬化強度が低下するという傾向があり、20mmよりも厚くなるにつれ単位面積当たりの重量が重くなり人力で運搬し設置等の作業性が悪くなるという傾向がみられ、2mmより薄くなるか、50mmよりも厚くなるとこれらの傾向が著しいので好ましくない。
更に、水和硬化マット全体に速やかに吸水させる必要がある場合は、セメント等の硬化剤にセルロース繊維等の吸水繊維を短く切断した材料や連続発砲体の切片を混入しても良い。
また、水和硬化剤として、ベントナイト等の粘土鉱物を用いても良い。粘度鉱物を用いた場合、土中での止水剤として水和硬化マットを用いることができる。例えば、溜池の止水層や、産業廃棄物の最終処分場の底部止水層、簡易排水池の止水層の需要に応じることができる。
〜25mmが好ましい。その理由は空間保持部材の厚さで説明したのとほぼ同様なので説明を省略する。
横幅は、300mm〜1500mm、好ましくは、400mm〜1000mmの物が用いられる。縦幅は、300mm〜3500mm、好ましくは、400mm〜3200mmの物が用いられる。既存のシートや生産ラインを使用でき生産性に優れる。
この構成により、請求項1の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)上層シート及び/又は下層シートの外表面に形成された水溶解性防湿バリヤ層を有することにより、水密性の包装から取り出して、保管中や運搬中に吸湿して水和反応が進み、内部の水和硬化剤が硬化することを防ぐことができると共に、施工時は水中への浸漬や散水等で容易に水溶解性防湿バリヤ層を溶かし、水和硬化剤に給水して直ちに硬化させることができ、保管性、品質安定性、施工性、取扱い性に優れる。
この構成により、請求項1又は2の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)上層シート及び/又は下層シートの外表面に配設された補強部材を有することにより、上層シート及び/又は下層シートの外表面の剛性を高めることができ、破損が発生し難く、耐久性、堅牢性に優れる。
板状や網状に形成された補強部材は水和硬化マットと共にボルトとナットで要所を螺子止めすることにより固定できる。
この構成により、請求項1又は2の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)上層シートの外表面に配設され上面に開口部を有する枠体を備えることにより、上層シートを補強するだけでなく、枠体に砕石、ガラス、スラグ等を収容することができるので、舗装材等として使用することができ、美感性、耐候性、排水性に優れると共に、滑り難く、歩行性を向上させることができる。
また、枠体の形状や配置は適宜、選択することができるが、格子状やハニカム状等に形成若しくは配置されたものが形状の安定性に優れ、好適に用いられる。
枠体を溝状に形成したものや、格子状やハニカム状等に形成若しくは配置された枠体の仕切部に透水孔を設けたものは流水溝としても使用することができる。
この構成により、請求項1又は2の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)上層シートの外表面に形成された化粧材層を有することにより、表面を装飾して美感性、耐候性を向上させることができ、機能性に優れる。
(2)表層に化粧材層を備えたことで、水和硬化マット本体の耐久性を飛躍的に向上させることができる。
この構成により、請求項5の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)化粧材層が、蓄光性又は発光性、蛍光性を有するので、舗装材や壁材等に使用することにより、夜間に道標等となり安全性に優れる。
(2)水和硬化マットを法面に使用した場合、景観を向上できる。
この構成により、請求項6又は7の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)化粧材層及び/又は下層シートの外表面に形成された水溶解性防湿バリヤ層を有することにより、未使用時(使用前)の保管中や運搬中に空気中の水分等を遮断して、内部の水和硬化剤が水分によって硬化することを防ぐことができる。
この構成により、請求項1乃至7の内いずれか1項の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)連結部材を有することにより、水和硬化マットを設置場所に強固に固定することができ、汎用性、設置自在性、固定安定性に優れる。
(2)上層又は下層シートの外周部に配設された連結部材を有することにより、複数の水和硬化マット同士を短時間で連結して一体化することができ、堤防、擁壁、護岸構造物等の構築、補強が容易で応急修理や仮復旧工事等の施工性、省力性に優れる。
この構成により、請求項9に記載の水和硬化マットの製造方法は、以下のような作用を有する。
(1)下層シートと空間保持部材や多孔シートで形成された空間に水和硬化剤が充填されると共に、空間保持部材が仕切りとなって充填される水和硬化剤の移動を低減化することができ、水和硬化剤の充填量の偏りやばらつきの発生を効果的に防ぐことができる。
(2)合成樹脂製の空間保持部材の場合、空間保持部材の下部を下層シートに接合する下層シート接合工程を設け、空間保持部材の下面を下層シートで固定、支持して、空間保持部材の変形を防止することができ、均一に水和硬化剤を充填することができる。
(3)金属製や不飽和ポリエステルや熱硬化性樹脂製の空間保持部材の場合、剛性が強いので、下層シートの窪みに装着するだけでもよい。
(4)上層シート接合工程の前に、水和硬化剤を充填する硬化剤充填工程を有することにより、空間保持部材の上面側が開放された状態で硬化剤充填工程において目視で確認しながら容易に水和硬化剤を圧密に充填することができ、水和硬化剤の充填量の偏りやばらつきの発生を防止できる。
(5)枠形成工程は、少なくとも水和硬化マットの大きさを有する平面さえあれば枠を形成でき場所を選ばないので、生産を容易に行うことができる。
下層シートセット工程では、下層シートに水和硬化剤を充填した後も周囲が枠からはみ出し枠体の上に積層部(封着代)が残るように枠体に下層シートをセットされる。
空間保持部材装着工程では、空間保持部材の上下面の一方または両方に接着剤部を設けたり塗布したりしてもよい。また、空間保持部材は予め透水性や不透水性のシートに固着したものを用いても良い。空間保持部材が固定されているので装着工程を簡単に行うことができ,また、硬質材の空間保持部材の角部で下層シートや上層シートを破損するのを防止できる。
被覆工程で、上層シートを被覆する前に下層シートの周面の水和硬化剤を除去する必要があるが、予め下層シートの周囲にホットメルトシートを積層しておくか、接着剤層を形成しその上に剥離紙を積層しておくと作業性を向上させることができる。
封着工程では、熱溶着や超音波溶着、ミシン縫い等が好適に用いられるが、これらの方法で封着できない場合は、封着面に接着剤を塗布する等して接着層を形成したり、周囲にホットメルトシートを挟んだりして接合することができる。
空間保持部材と下層シート及び空間保持部材と上層シートをそれぞれ接合する場合は、上層シートにホットメルトシートを積層し空間保持部材と下層シートの周囲と接合しても良い。接合方法は空間保持部材と下層シート及び上層シート、空間保持部材の材質等に応じて、適宜、選択することができる。
この構成により、請求項9に記載の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)下層シート接合工程が、空間保持部材と下層シートとの間にホットメルトシート又はホットメルト接着剤を挟んで加熱する下層側加熱工程を備えることにより、空間保持部材と下層シートが熱溶着や超音波用着等で接合できない異種材料であっても確実に接合することができ、空間保持部材の材質の選択の幅を拡げることができ、設計の自在性や接合の確実性に優れる。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1項の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)下層シート接合工程に記載した作用、効果がえられる。
(実施の形態1)
図1(a)は実施の形態1の水和硬化マットを示す模式斜視図であり、(b)はその正面図であり、図2は実施の形態1の水和硬化マットを示す要部断面模式側面図る。
図1及び図2中、1は実施の形態1の水和硬化マット、2は合成樹脂製の不織布、織布、多孔性シート等で形成され透水性を有する水和硬化マット1の下層シート、3は合成樹脂製の不織布、織布、多孔性シート等で形成され透水性を有する水和硬化マット1の上層シート、4は下層シート2と上層シート3の周囲の積層部、5は熱溶着や、帆とメルトシート、超音波接着、ミシン縫い等で封着された封着部である。
図2中、5はポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂製で太さが0.2mm〜0.5mmの繊維を編んで作成された網体を2mm〜50mmの歯を有する加熱された対向する歯車間に挟持して凹凸に形成した後冷却して波形に成型された下層シート2と上層シート3の間に挟まれた水和硬化マット1の空間保持部材、5aは空間保持部材を繰返し折り曲げて形成された空間保持部材5の凸部(凸条部)、5bは空間保持部材を繰返し折り曲げて凸部(凸条部)5aと交互に形成された空間保持部材5の凹部(凹条)、5cは空間保持部材5を構成する空間保持部材の網目の交点に形成された結節点、6は空間保持部材5の凸部(凸条部)4aと凹部(凹条)4bによって形成された空間部に充填され水和反応によって硬化する無機系の水中硬化セメント材等の水和硬化剤である。
空間保持部材5が空間保持部材で形成され複数の結節点5Cを有するので、空間部に充填される水和硬化剤6の移動を低減し、隙間の発生を効果的に防止することができる。
以上のように構成された水和硬化マット1は下層シート2側及び/又は上層シート3側から淡水や海水等の水をかけることにより、内部の水和硬化剤6を硬化させて構造体として様々な用途に用いることができる。尚、空間保持部材5が空間保持部材で形成されていることにより、下層シート2及び上層シート3の少なくともいずれか一方が透水性を有していれば、内部に充填された水和硬化剤6に水を供給して硬化させることができるので、下層シート2又は上層シート3のいずれか一方をポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂製の不透水性のシートで形成してもよい。
(1)少なくともいずれか一方が透水性を有する下層シート及び上層シートと、下層シートと上層シートとの間に挟持され空間部を形成する空間保持部材と、空間部に充填された水和硬化剤を備えているので、透水性を有する下層シート又は上層シートから水分を供給するだけで、水和硬化剤が水和反応によって硬化し、形態安定性に優れると共に、長期の耐候性及び剛性を維持することができ、耐久性、長寿命性に優れる。
(2)未使用状態(水和硬化剤が水和反応する前)は、水中硬化マット材が吸湿するのを防止するため柔軟性を有する不透水製のシートやフイルムで包装されているので、柔軟性有し、折り畳んで保管することや設置現場に搬入することができ、保管時の省スペース性、取扱い性、搬送性に優れる。
(3)設置現場の凹凸等に適応させて形状を整えて設置した状態で、水和硬化剤に吸水させることにより、所望の立体形状を維持することができ、固定構造物として堤防等の盛土材を補強安定化させることができ、河川堤防等の応急修理や盛土等の仮復旧工事等に好適に用いることができる。
(4)複数の水和硬化マット同士を縫製や溶着、接着したりして連結することにより、様々な形状に成型することができ、特に側部同士を連結して枠部と底部となる部分を作成し、枠部の下部と底部の側部を接合してフレコンバック状に形成したものは、大雨等による斜面の崩壊や堤防の決壊、道路冠水等が発生した災害現場等において含水した土砂等を内部に充填材として充填すれば、土砂に含まれる水分によって水和硬化剤を硬化させることができ、別途、水分を供給することなく、大型土嚢として使用することができ、緊急施工性、信頼性に優れる。
(5)空間保持部材が、補強材となり、空間部に水和硬化剤を保持することができ、高強度で形態安定性に優れる。
図3は実施の形態2の水和硬化マットを示す要部断面模式側面図である。尚、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図3において、実施の形態2の水和硬化マット1Aが実施の形態1と異なるのは、上層シート3の外表面に形成された化粧材層を備えている点である。
化粧材層7は上層シート3の外表面に各種塗料等で着色したり、ガラスビーズ、粒状天然石、磁器や陶器等の欠片、溶融スラグ、ポリエチレン等の合成樹脂や廃プラスチック等の切欠き片、ステンレスやアルミ等の金属片等の固形物を貼付けたりして形成することができる。これらは組合せて使用することができ、上層シート3の外表面に光沢をもたせることや、様々な色彩や模様等で装飾を施すことが可能で、設置場所の景観を損ねることがなく、特に、蓄光性又は発光性を有する塗料を用いれば、夜間の通行の安全性を高めることができる。尚、固形物は、材質に応じて、接着や溶着等の方法で上層シート3の外表面に固定することができる。また、固形物の形状や配置は適宜、選択することができる。
(1)上層シートの外表面に形成された化粧材層を有することにより、表面を装飾して美感性、耐候性を向上させることができ、機能性に優れる。
(2)化粧材層が、蓄光性又は発光性、蛍光性を有する材料を用いた場合は、舗装材や壁材等に使用することにより、夜間の道標等となり、安全性を向上させることができる。
図4は実施の形態3の水和硬化マットを示す要部断面模式側面図である。尚、実施の形態1又は2と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図4において、実施の形態3の水和硬化マット1Bが実施の形態2と異なるのは、化粧材層7の外表面に水溶解性防湿バリヤ層8が形成されている点と、下層シート2の外表面に帯状や短冊状のシートや紐体等で形成された連結部材9が配設されている点である。
尚、図4中、9aは連結部材9に穿設された固定孔である。
水溶解性防湿バリヤ層8としては水溶解性のポリビニルアルコール等が好適に用いられる。本実施の形態では、化粧材層7の外表面のみに水溶解性防湿バリヤ層8を形成したが、下層シート2が透水性を有する場合は、下層シート2の外表面にも形成することができる。また、化粧材層7を備えていない場合は、上層シート3の外表面に水溶解性防湿バリヤ層8を形成すればよい。
連結部材9は溶着や縫着等により下層シート2に取付けることができる。連結部材9の固定孔9aにアンカーやボルト等を挿通し、設置場所の地山や岩石、コンクリート等の表面に強固に固定することができる。これにより、硬化前の水和硬化マット1Bを設置場所の形状に沿うように固定して設置面に確実に接触させることができ、硬化後に強固な連結堤防や擁壁等の構造物が得られる。
尚、連結部材9は下層シート2の外周部に取付けることもできる。その場合、アンカーやボルト等で固定する以外に、連結部材9を設置場所に配設された支柱等に結着したり、防水シート等に溶着したりして固定することもできる。また、複数の水和硬化マット同士を短時間で連結して一体化することができ、堤防、擁壁、護岸構造物等の構築、補強が容易で応急修理や仮復旧工事等の施工性、省力性に優れる。
(1)化粧材層及び/又は下層シートの外表面に形成された水溶解性防湿バリヤ層を有することにより、未使用時(使用前)の保管中や運搬中に空気中の水分等を遮断して、内部の水和硬化剤が吸湿して硬化することを防ぐことができると共に、使用時は水中への浸漬や散水等で容易に水溶解性防湿バリヤ層を溶かし、水和硬化剤に給水して直ちに硬化させることができ、保管性、品質安定性、施工性、取扱い性に優れる。
(2)下層シートの外表面に配設された連結部材を有することにより、水和硬化マットを設置場所に強固に固定することができ、汎用性、設置自在性、固定安定性に優れる。
図5は実施の形態4の水和硬化マットを示す要部断面模式側面図であり、図6は実施の形態4の水和硬化マットを示す模式断面斜視図である。尚、実施の形態1又は2と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図5において、実施の形態4の水和硬化マット1Cが実施の形態2と異なるのは、化粧材層7の外表面に補強部材10が配設されている点である。
補強部材10は化粧材層7全体を覆う必要はなく、化粧材層7の少なくとも一部を補強できるものであればよい。補強部材10の材質は適宜、選択することができ、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属、ポリエチレン、ポリアミド等の合成樹脂、ブチルゴム等の合成ゴム等を使用することができる。また、補強部材10の形状、数、配置等も目的等に応じて適宜、選択することができ、板状、鋲状、突起状、短冊状、網状、格子状、ハニカム状、多線状等に形成若しくは配置したもの等を用いることができる。特に、金属製の補強部材を備えた水和硬化マット1Cを土嚢等に使用した場合、流木等の衝突に耐えることができ、長期間の対候性に優れる。また、合成ゴムで形成された補強部材は滑り止めとなり、機能性に優れる。
本実施の形態では、化粧材層7の外表面のみに補強部材10を配設したが、補強部材10は下層シート2の外表面にも配設することができる。また、化粧材層7を備えていない場合は、上層シート3の外表面に補強部材10を配設することができる。
(1)化粧材層及び/又は下層シートの外表面に配設された補強部材を有することにより、化粧材層及び/又は下層シートの外表面の剛性を高めることができ、破損が発生し難く、耐久性、堅牢性に優れる。
図7は実施の形態5の水和硬化マットの使用状態を示す要部断面模式側面図であり、図8は実施の形態5の水和硬化マットの使用状態を示す模式断面斜視図であり、図9は実施の形態5の水和硬化マットの使用前の状態を示す模式断面斜視図である。尚、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図7乃至図9において、実施の形態5の水和硬化マット1Dが実施の形態1と異なるのは、下層シート3の外表面に上面に開口部11aを有する枠体11が配設されている点である。
尚、図7乃至図9中、11bは枠体11の内部を格子状に仕切る仕切部である。また、図7及び図8中、20は枠体11の内部に収容された砕石、ガラス、スラグ等の収容物である。
また、枠体11の形状や配置は適宜、選択することができるが、格子状やハニカム状等に形成若しくは配置されたものは形状の安定性に優れる。枠体11を折り畳み自在に形成した場合、使用前の状態は図9に示すように扁平状となるため、保管時や搬送時に嵩張らず、取扱い性、省スペース性に優れる。
尚、枠体11を溝状に形成したものや、格子状やハニカム状等に形成若しくは配置された枠体11の仕切部11bに透水孔を設けたものは流水溝としても使用することができる。
(1)上層シートの外表面に配設され上面に開口部を有する枠体を備えることにより、上層シートを補強、整形することができ、枠体に砕石、ガラス、スラグ等を収容することができるので、舗装材として使用することができ、美感性、耐候性、排水性に優れると共に、滑り難く、歩行性を向上させることができる。
図10は実施の形態6の水和硬化マットを示す要部断面模式端面図であり、図11は実施の形態6の水和硬化マットの変形例を示す要部断面模式端側面図である。尚、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図10において、実施の形態6の水和硬化マット1Eが実施の形態1と異なるのは、空間保持部材5の凸部(凸条部)4a及び凹部(凹条)4bの断面形状が三角形状に形成されている点であり、図11において、実施の形態6の変形例の水和硬化マット1Fが実施の形態1と異なるのは、空間保持部材5の凸部(凸条部)4a及び凹部(凹条)4bの断面形状が四角形状に形成されている点である。
空間保持部材5として金属製の線材で形成された金網等を用いる場合、容易に折り曲げて凸部(凸条部)4a及び凹部(凹条)4bを形成することができ、水和硬化マット1E,1Fの保形性、形態安定性に優れる。また、必要に応じて、水和硬化マット1E,1Fを折り曲げたり、湾曲させたりして、所望の形状に成型することができ、汎用性にも優れる。
図12は実施の形態7の水和硬化マットにおける空間保持部材を示す模式断面斜視図である。尚、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図12において、実施の形態7の水和硬化マット1Gが実施の形態1と異なるのは、空間保持部材5Aが基板12の表面に形成された複数の円筒状の凸部12aと、隣接する凸部12aの間を連結する連結部12bを備えている点である。
これにより、凸部12aの内部や凸部12aの周囲の空間部に水和硬化剤6を充填することができる。
(1)空間保持部材の表面又は裏面の少なくともいずれか一方に形成された複数の凸部及び/又は凹部を有することにより、下層シートと上層シートの間に凸部や凹部で空間を保持することができ、凸部の内部や凸部の周囲に形成される空間部に水和硬化剤を充填して保持することができ、形態安定性に優れる。
次に、水和硬化マットの製造方法の一例を図面を用いて説明する。尚、本実施の形態で本発明の水和硬化マットの製造方法が限定されるものではない。
である。
まず、ステップ1の枠形成工程において、厚みや、幅、長さを設計値に合わせて準備された角材や鋼管等からなる枠材を方形や矩形に配置固定し枠を形成する。
ステップ2において、最終製品の大きさに合わせて裁断され準備された下層シート2を枠全体に覆設する。この際、空間保持部材の高さ分だけ下層シートの周面が枠の外側に垂れるように覆設する。
ステップ3において、枠上に載置された下層シートの上に小さな網目や孔部を有する合成樹脂製や金属製の網体を波形や台形状の波形に成型して製造された空間保持部材を載置し枠内に押し込む。必要に応じて空間保持部材の下面に接着材等の接着手段を施し、下層シートと固定をしても良い。
ステップ4において、下層シートと空間保持部材で形成された空間部に空間保持部材の上端面を残して、セメント若しくはセメントと細骨材の混合物、吸湿性樹脂と細骨材等の混合物からなる水和硬化剤を万遍なく充填する。
ステップ5において、枠上にある下層シートの端面の周面の水和硬化剤を除去して積層面を作成した後、上層シートを水和硬化剤が充填された下層シートの全面を被覆する。その際必要に応じて、上層シートの下面に全体若しくは積層部部分にホットメルトシートや接着剤層を装設しても良い。
ステップ6において、上層シートと下層シートの積層部部分の接着剤やホットメルトシートを接合したり超音波溶着、若しくはミシン縫いで封着し封着部を作成し、水和硬化マットを作成する。
作成した水和硬化マットは、吸湿を防ぐために気密性の包装材で水密に包装し収納する。
(1)空間保持部材が凹凸条部を備えているので、凹凸条部の高さを利用して水和硬化剤が充填される空間を確保し、効率的に水和硬化剤を充填することができると共に、凹凸条部の外周部が仕切りとなって充填される水和硬化剤の移動を低減し、偏在を防止することができ、水和硬化剤の充填量の偏りやばらつきの発生を防ぐことができる。
(2)空間保持部材の下面に下層シートを接合した場合は、軟質の材料(合成樹脂等)で形成された空間保持部材の下面を下層シートで支持して、空間保持部材の変形を防止することができ、後工程の硬化剤充填工程で充填される水和硬化剤を均一に充填することができ、水和硬化剤の充填作業性に優れる。
(3)空間保持部材の上面側が開放された状態で硬化剤充填工程において目視で確認しながら容易に水和硬化剤を充填することができ、水和硬化剤を均一かつ水和硬化マットの品質の均一性に優れる。
(4)空間保持部材と下層シートとの間にホットメルトシートを挟んで加熱する下層側加熱工程を備えた場合は、空間保持部材と下層シートが熱溶着や超音波用着等で接合できない異種材料であっても確実に接合することができ、空間保持部材の材質の選択の幅を拡げることができ、設計自在性、接合の確実性に優れる。
(5)上層シートと下層シートの積層部が水密に封着されているので、積層面から裂けたり隙間ができて吸湿を防止するとともに、いびつな硬化による変形等を防ぐことができる。
本発明水和硬化マットの製造方法は、内部に水和硬化剤を圧密に充填することができ、水和硬化剤が空間内で移動を防ぎ、高品質の水和硬化マットを低減化で量産性に優れる。
2 下層シート
3 上層シート
4 積層部
4a 封着部
5,5A 空間保持部材
5a 凸部(凸条部)
5b 凹部(凹条)
5c 結節点
6 水和硬化剤
7 化粧材層
8 水溶解性防湿バリヤ層
9 連結部材
9a 固定孔
10 補強部材
11 枠体
11a 開口部
11b 仕切部
12 基板
12a 凸部
12b 連結部
Claims (11)
- 少なくともいずれか一方が透水性を有する下層シート及び上層シートと、前記下層シートと前記上層シートとの間に挟持され空間部を形成する空間保持部材と、前記空間部に充填された水和硬化剤と、前記上層シートと前記下層シートの周囲の積層部が封着された封着部と、を備えていることを特徴とする水和硬化マット。
- 前記上層シート及び/又は下層シートの外表面に積層された水溶解性防湿バリヤ層を備えていることを特徴とする請求項1に記載の水和硬化マット。
- 前記上層シート及び/又は前記下層シートの外表面に配設された補強部材を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水和硬化マット。
- 前記上層シートの外表面に配設され上面に開口部を有する枠体を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水和硬化マット。
- 前記上層シートの外表面に形成された化粧材層を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水和硬化マット。
- 前記化粧材層が、蓄光性又は発光性若しくは蛍光性を発する材料が混和されたり又は該材料で塗布層等や印刷層で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の水和硬化マット。
- 前記化粧材層及び/又は前記下層シートの外表面に形成された水溶解性防湿バリヤ層を備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載の水和硬化マット。
- 前記下層シートの外表面及び/又は外周部に配設された連結部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至7の内いずれか1項に記載の水和硬化マット。
- 枠を形成する枠形成工程と、前記枠に下層シートをセットし周囲を残して押し込む下層シートセット工程と、前記下層シートが押し込まれてできたくぼみ内に空間保持部材や多孔シートで形成された空間保持部材を装着する空間保持部材装着工程と、前記下層シートと前記空間保持部材の空間部に水和硬化剤を充填する硬化剤充填工程と、硬化剤が充填された前記下層シート上に上層シートを被覆する被覆工程と、前記下層シートと上層シートの周囲の積層面を封着する封着工程と、を備えたことを特徴とする水和硬化マットの製造方法。
- 前記空間保持部材を前記下層シートに接合する下層シート接合工程を有する場合、前記空間保持部材と前記下層シートとの間にホットメルトシート又はホットメルト接着剤を挟んで加熱する下層側加熱工程を備えたことを特徴とする請求項9に記載の水和硬化マットの製造方法。
- 前記上層シート接合工程が、前記空間保持部材と前記上層シートとの間にホットメルトシート又はホットメルト接着剤を挟んで加熱する上層側加熱工程を備えたことを特徴とする請求項9又は10に記載の水和硬化マットの製造方法。
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