JP2018177650A - 医薬品溶液製剤の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】医用現場において、凍結乾燥製剤より、煩雑な溶解工程が不要で希釈してすぐ投与できる等で利便性が高い溶液形態のRTU(Ready−to−use)製剤が求められている。【解決手段】酸素含有率が低減して封止された医薬品溶液製剤の製造方法であって、(a)有効成分を含む薬液を調製する工程1、(b)前記薬液を封止可能な容器に注入する工程2、(c)前記薬液を20℃以下にする工程3、(d)前記薬液を当該薬液の溶媒の蒸気圧より高く、且つ大気圧より低い気圧に減圧する工程4、(e)酸素を実質的に含まない不活性ガスで気圧を回復させる工程5、(f)前記薬液を、薬液の凝固点以上の温度で前記不活性ガス雰囲気において静置する工程6、(g)酸素を実質的に含まない不活性ガス雰囲気の下、薬液入り容器を封止する工程7、による、医薬品溶液製剤の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、酸化による類縁物質の生成が懸念される医薬品有効成分を用いた溶液製剤の製造方法に関する。具体的には、酸素による酸化によって類縁物質が生成しやすい物性の有効成分を用いた溶液製剤を製造するための、溶液中の効率的な酸素除去方法であって、当該酸素除去方法を用いた溶液製剤の製造方法に関する。
医薬品用注射製剤は、一般的に凍結乾燥製剤と溶液製剤に大別される。凍結乾燥製剤は保存安定性に優れるものの、用時に溶解操作が必要であり完全に溶解させるため十分な混和操作が必要となる。このため医療現場では、煩雑な溶解操作が不要で、希釈してすぐ投与できる溶液形態のいわゆるRTU(Ready−to−use)製剤が求められている。
しかしながら溶液形態の製剤の場合、多くの有効成分は水溶液中で加水分解反応や酸化反応に伴う類縁物質の生成反応が進行する。特に、製剤中の酸素の存在に起因する酸化反応による有効成分の分解が問題となることが多い。そこで溶液製剤化のためには、酸素による酸化反応を抑制するために、溶液中の溶存酸素を除去するとともにバイアル等の製剤容器中の空隙の酸素を極力除去することが求められる。
例えば、抗腫瘍剤として知られているペメトレキセド二ナトリウムは、水溶液中において、速やかに酸素による酸化反応を受けてしまい、類縁物質が生成してしまうことが知られている。このためペメトレキセド二ナトリウムは、凍結乾燥製剤として医療機関に提供されており、溶液製剤は提供されていない。しかしながら、前述のように医療機関における投与時の作業簡便化の要求があるため、溶液中で酸化されやすいペメトレキセド二ナトリウム製剤についても、溶液形態のRTU製剤の研究・開発が進められている。
ペメトレキセド二ナトリウム溶液製剤について、種々の抗酸化剤を用いた製剤処方の報告がなされているが、多くの報告例において当該製剤中の酸素含量を低減する処置を施している。例えば、特許文献1には、酸素分圧が0.2%以下のペメトレキセド二ナトリウム溶液製剤を開示しており、減圧脱気、蒸留脱気、窒素バブリング、膜脱気や触媒樹脂脱気方法が用いられることを記載している。また、特許文献2及び3では、窒素雰囲気下で、ペメトレキセド水溶液を室温で2時間攪拌した後、0.2μmフィルターで濾過することにより、酸素濃度が0.1〜2.0体積%以下の溶液製剤を調製している。これらの方法は、窒素雰囲気下での蒸留、攪拌や濾過等の様々な操作工程を要するものでありスケールアップに対応した工業的製造方法に適用することは困難である。
特許文献4によると、薬液をバイアルに分注し、その後、窒素パージすることでバイアル内の空隙(ヘッドスペース)の酸素量を3〜5体積%に調整したペメトレキセド二ナトリウム溶液製剤を調製している。また、特許文献5では、凍結乾燥器を用いて密閉されたチャンバー内で溶液を凍結させて減圧後、窒素で復圧し、打栓する方法が開示されており、溶液の溶存酸素濃度は0.5ppm程度まで除去されたとの記載がされている。
酸化に対して不安定な有効成分を用いた溶液製剤を調製するためには、封止された単位製剤中において、溶液中の溶存酸素並びに空隙中の酸素含量を低減することが有効である。脱気方法としては種々知られているものの、特に注射用製剤として用いられる溶液製剤は、無菌性を確保することも重要な要件である。したがって、無菌的な操作ができ、且つ溶液中の溶存酸素の低減と空隙中の酸素濃度を0.5(v/v)%以下の1〜100mL程度のバイアルを大量生産できる、工業的に対応可能な医薬品溶液製剤の製造方法が求められている。
国際公開WO2012/121523号 国際公開WO2015/145911号 国際公開WO2015/050230号 特表第2016−518404号公報 特表第2017−506213号公報
本発明が解決しようとする課題は、医薬品溶液製剤の製造に当たり、工業的な生産規模において特別な製造設備を用いることなく、溶液製剤中の酸素量を高度に除去する方法を提供することにある。すなわち、当該酸素除去方法を用いた溶液製剤の製造方法を提供することである。
本発明は医薬品溶液製剤の製造方法において、当該製剤中の酸素を高度に除去できる以下の(a)〜(g)に係る工程1〜7を含有する製造方法を開示する。
[1] 酸素含有率が低減して封止された医薬品溶液製剤の製造方法であって、
(a)有効成分を含む薬液を調製する工程1、
(b)前記薬液を封止可能な容器に注入する工程2、
(c)前記薬液を20℃以下にする工程3、
(d)前記薬液を当該薬液の溶媒の蒸気圧より高く、且つ大気圧より低い気圧に減圧する工程4、
(e)酸素を実質的に含まない不活性ガスで気圧を回復させる工程5、
(f)前記薬液を、薬液の凝固点以上の温度で前記不活性ガス雰囲気において静置する工程6、
(g)酸素を実質的に含まない不活性ガス雰囲気の下、薬液入り容器を封止する工程7、
による、医薬品溶液製剤の製造方法。
本発明は、薬液を冷却した上で不活性ガス雰囲気を調製する工程、並びに薬液を液体状態で不活性ガス雰囲気に晒す工程を組み合せた操作工程を特徴とする。本発明の製造方法は、薬液を注入した単位製剤容器を用い、冷却〜減圧〜不活性ガスによるパージ〜打栓、の工程操作を行うことにより、単位製剤中における酸素含有量を制御することができる。これらの工程操作は、通常の医薬製剤製造用の凍結乾燥機といった医薬製剤調製のために通常設置されている密閉チャンバー装置を用いることで操作可能であり、特別な機器を用いることなく、酸素含有量を低減した溶液製剤を調製することができる。
[2] (d)工程4において、薬液の蒸気圧に対して、1.01倍以上で5.0倍以下の気圧に減圧する、前記[1]に記載の医薬品溶液製剤の製造方法。
[3] (f)工程6において、前記不活性ガス雰囲気に5時間以上晒す、前記[1]又は[2]に記載の医薬品溶液製剤の製造方法。
本発明の製造方法は、(f)前記薬液を、薬液の凝固点以上の温度で前記不活性ガス雰囲気において静置することを特徴の1つとする。薬液凝固点以上の温度で不活性ガス雰囲気中に長時間静置することで、単位製剤中の酸素含有量を低減した溶液製剤を調製することができる。
[4] 前記薬液が前記容器の容量の50(v/v)%以上が充填されており、容器の空隙中の酸素濃度が0.5(v/v)%以下である、前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の医薬品溶液製剤の製造方法。
[5] 有効成分がペメトレキセド二ナトリウムであり、水を主たる溶剤成分とした水溶液製剤である、前記[1]〜[4]の何れか一項に記載の医薬品溶液製剤の製造方法。
本発明の製造方法は、酸素による酸化反応を受けやすい医薬品有効成分の溶液製剤に適用することができる。望ましい具体例として、当該有効成分としてペメトレキセド二ナトリウムを用いた水溶液製剤の製造方法を挙げることができる。
本発明の医薬品溶液製剤の製造方法は、工業的な規模において特別な設備を用いることなく、単位製剤中の酸素含量を高度に低減した溶液製剤を製造することができる。当該製造方法を溶液製剤の製造工程に導入することで、溶液状態で酸素と反応することにより不純物が増加しやすい有効成分でも、効能及び安全性を長期に亘って保持することができる溶液製剤の提供が可能となる。
本発明は、工業的な規模において、溶液製剤中の酸素を高度に除去することができる工程を用いた医薬品溶液製剤の製造方法である。その詳細について説明する。
本発明の手法は、溶液が充填された容器を密閉できる空間に設置し、空間内を薬液の任意の温度における蒸気圧を基準にその蒸気圧より高い程度まで減圧し、その後、不活性ガスを注入し、封栓することで溶液製剤中に存在する溶存酸素及び空隙中の酸素を高度に除去する手法である。
本発明の製造方法は、薬液を注入した単位製剤容器を用い、(A)冷却、(B)減圧、(C)不活性ガスパージによる復圧、(D)打栓、の操作工程により単位製剤中における酸素含有量を制御する方法である。本発明で使用する、(A)温度制御、(B)減圧制御、(C)不活性ガスによる復圧制御、(D)封栓が可能な装置の詳細について説明する。
(A)温度制御
本発明における温度制御は、有効成分を含む薬液の温度を変化させることにより、薬液の蒸気圧を制御するために行う。容器に充填された溶液について、蒸気圧の制御が可能であれば、温度制御の幅は制限されない。例として容器に充填された溶液が水溶液であれば、温度制御の幅は、−100℃〜100℃が好ましい。また、温度制御する装置として、容器に直接接触している棚の温度を制御することで、溶液の温度を制御することが可能な装置が好ましい。
(B)減圧制御
本発明における減圧制御は、装置内の気圧を当該薬液の制御温度における蒸気圧の1.01倍以上で5.0倍以下の気圧まで減圧するために行う。容器に充填された薬液の制御温度における蒸気圧の1.01倍以上で5.0倍以下の気圧まで減圧することが可能であれば、減圧制御の能力は制限されない。例として、容器に充填された薬液が水溶液であれば、減圧の能力は20Pa程度まで減圧できることが好ましい。減圧制御する装置として、油回転真空ポンプ、ドライポンプ等の真空ポンプを使用することが好ましい。また、任意の減圧度に維持制御できる機能を有していることが必要である。なお、当該装置は、減圧度を維持できる程度の密閉チャンバーを備えた装置であることが好ましい。
(C)不活性ガスによる復圧制御
本発明における不活性ガスによる復圧制御は、減圧された装置内の気圧を不活性ガスで上げるために行う。不活性ガスとは、酸素を実質的に含まないガスであって、有効成分、製剤用添加剤、溶剤等の製剤構成成分、並びにバイアル、ゴム栓等の製剤用材料と反応しないガスである。環境中に拡散しても問題なく、容器内の溶液成分と反応しなければ不活性ガスはどんな気体でも良いが、アルゴン、窒素を使用することが好ましい。不活性ガスは、気体用の滅菌フィルター等により滅菌されたものが好ましい。装置内の容器の転倒や半打栓されたゴム栓が脱落する等の影響がなければ、不活性ガスの装置内への流入速度に制限はない。
(D)封栓
本発明における封栓は、装置内で不活性ガスによって復圧された薬液入り容器を装置内で栓をするために行う。装置内及び容器内に酸素が流入することが無ければ、封栓の方法はどんな方法でも良い。好ましくは、溶液が充填されゴム栓で半打栓された容器が、前記の(A)冷却、(B)減圧、(C)不活性ガスパージによる復圧、工程を経て、容器の上にある天面が下がることによりゴム栓が容器に押し込まれ封栓される方法である。半打栓とは、容器に栓が完全に封栓されておらず、容器の口と栓の間に隙間があり、気体の出入りが可能な状態にあることを示す。
本発明の酸素除去方法は、無菌製剤である注射用溶液製剤の工程で使用するものであるため、本発明の手法で使用する装置を、滅菌処理できることが好ましい。装置の滅菌方法として、高圧飽和蒸気を用いた滅菌方法が好ましい。
本発明で使用する、(A)温度制御、(B)減圧制御、(C)不活性ガスによる復圧制御、(D)封栓、の操作は、通常の注射用医薬製剤の製造工程操作で行うものであり、特別な設備を要するものでは無い。例えば、凍結乾燥製剤の製造に用いる打栓機能付きの凍結乾燥装置は前記(A)〜(D)の全ての操作を無菌的な環境下で行うことが可能な装置であり、本発明の製造方法に適用するために好ましい装置である。
次に上記で説明した装置を使用した酸素除去方法を用いた医薬溶液製剤の製造方法について説明する。本発明における溶液製剤の製造方法は、薬液が充填された容器を密閉空間に設置し、薬液を20℃以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下の任意の温度にまで冷却した上で、該任意の温度における蒸気圧を基準として減圧し、その後、不活性ガスを注入して静置し、これを封栓することで容器内の酸素を高度に除去して当該溶液製剤を製造する方法である。
本発明は、第1工程として、(a)有効成分を含む薬液を調製する工程1、を要件とする。前記有効成分としては、非経口で投与されるものであれば特に限定されないが、好ましくは、酸素に起因する酸化反応により分解する有効成分である。例をあげると、アスコルビン酸、エルゴメトリン、ファモチジン、クロルプロマジン、プロクロルペラジン、ペルフェナジン、ベルテポルフィン、プロメタジン、レボメプロマジン、カルバゾクロムスルホン酸、アミカシン、プロカイン、ビダラビン、アルベカシン、エドロホニウム、イセパマイシン、ドパミン、アドレナリン、リドカイン、ゲンタマイシン、エノシタビン、スルピリン、アザセトロン、デキサメタゾン、ドブタミン、トブラマイシン、フェニレフリン、ミトキサントロン、アプリンジン、エダラボン、エドロホニウム、カナマイシン、ジベカシン、ダナパロイド、ピリドキサール、ベタメタゾン、メサラジン、メトクロプラミド、リボスタマイシン、レボドパ、ペメトレキセド等があげられるが、特に好ましくは、ペメトレキセドであり、ペメトレキセド二ナトリウムを有効成分とする溶液製剤に用いることが好適な態様として挙げられる。
本発明で使用される、溶液製剤は、溶媒を用いて調製された溶液製剤である。該溶媒としては、非経口投与用溶媒として許容されるものであれば特に限定されずに用いることができる。例えば、水、エタノール、ポリソルベート80、マクロゴール類、グリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられ、これらの単独使用、若しくは2種以上の混合溶媒であっても良い。溶媒としては、非経口投与可能な品質であることが好ましい。特に好ましい溶媒としては、水を主成分とする含水溶媒である。溶媒として水のみを用いる態様であっても良い。
本発明で使用される、溶液製剤は医薬品として認容される添加剤を含んでいても良い。特に非経口投与が可能なものであれば、特に限定されず用いることが出来る。添加剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、pH調節剤、等張化剤、キレート剤、安定化剤を含んでいても良い。
抗酸化剤とは、有効成分の酸化による分解を抑制するために用いられる添加剤である。例えば、アスコルビン酸、システイン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、アルファチオグリセリン、クエン酸、チオグリコール酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、メチオニン、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエンなどがあげられる。
緩衝剤とは、pHを一定に保つために使用される添加剤である。例えば、クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩などが用いられる。
pH調節剤とは、設定したpHの範囲内にするために、使用される添加剤である。例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、酢酸やその塩、リン酸やその塩、クエン酸やその塩、酒石酸やその塩などが用いられる。
等張化剤とは、血清の浸透圧に近づけるために使用される添加剤である。例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、グリセリン、果糖、キシリトール、ソルビトール、トレハロース、ニコチンアミド、ブドウ糖、精製白糖、マンニトール、マクロゴールなどがあげられる。
キレート剤とは、金属イオンと錯体を形成することで、金属イオンの存在による分解を間接的に抑制する添加剤である。例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、クエン酸やその塩、酒石酸やその塩、グルコン酸やその塩などがあげられる。
安定化剤は、有効成分の分解抑制、粒子の安定化等種々の目的に応じて使用される。例えば、アセチルトリプトファン、アラニン、アルギニンやその塩、アルブミン、安息香酸やその塩、イノシトール、エタノール、ヒスチジンやその塩、果糖、カルジアミドナトリウム、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、キシリトール、グリシン、グルタミン酸やその塩、クレアチニン、リン酸二水素ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン五酢酸、シスチン、ジブチルヒドロキシトルエン、臭化カルシウム、精製ゼラチン、精製大豆レシチン、ゼラチン、ソルビタン酸脂肪酸エステル、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、ソルビトール、炭酸水素ナトリウム、チオシアン酸カリウム、デキストラン、糖酸カルシウム、トリエタノールアミン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホシレート、ニコチン酸アミド、乳酸、乳糖、尿素、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、氷酢酸、ブチルヒドロキシアニソール、プロピレングリコール、ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、ベンゼトニウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリソルベート20、ポリソルベート80、マクロゴール類、マルトース、ピロリン酸ナトリウム、マレイン酸、リン酸やその塩、メグルミン、メタスルホ安息香酸ナトリウム、モノエタノールアミン、リジン塩酸塩、硫酸マグネシウムなどがあげられる。
本発明に係る溶液製剤は、酸化を受けやすい有効成分を用いた溶液製剤であることから、抗酸化剤を含有することが好ましい。
本発明の医薬溶液製剤としては、有効成分がペメトレキセド二ナトリウムであり、水を主たる溶剤成分とした水溶液製剤であることが好ましい態様として挙げることができる。更には、有効成分がペメトレキセド二ナトリウムであり、水を溶剤成分とした水溶液製剤を好ましい態様として挙げることができる。
ペメトレキセド二ナトリウムの水溶液製剤の場合、任意に、抗酸化剤、pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤を含んでいても良い。
抗酸化剤としては、アスコルビン酸、システイン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、アルファチオグリセリン、クエン酸、チオグリコール酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、メチオニン、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエンなどがあげられる。
pH調整剤としては、塩酸、水酸化ナトリウム、酢酸やその塩、リン酸やその塩、クエン酸やその塩、酒石酸やその塩など用いても良い。
緩衝剤としては、クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩など用いても良い。
等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、グリセリン、果糖、キシリトール、ソルビトール、トレハロース、ニコチンアミド、ブドウ糖、精製白糖、マンニトール、マクロゴールなど用いても良い。
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、クエン酸やその塩、酒石酸やその塩、グルコン酸やその塩など用いても良い。
ペメトレキセド二ナトリウムの水溶液製剤の場合、抗酸化剤及びpH調整剤を含有した製剤であることが好ましい。
次に(b)前記薬液を封止可能な容器に注入する工程2、を要件とする。
薬液を充填するための封止可能な容器とは、滅菌処理が可能なバイアル等の容器であって、気密性のゴム栓で封止可能な密封充填性の製剤容器である。
使用される容器としては、ゴム栓等で密封可能であれば、バイアル状、シリンジ状等の形状は特に限定されないが、バイアル状の形状が好ましい。容器の材質としては、例えばソーダライムガラス製、ホウケイ酸ガラス製、環状ポリオレフィンポリマー製、環状ポリオレフィンコポリマー製があげられる。また当該容器は、安定性の向上や溶出抑制等の目的に応じて表面処理された容器を用いることができる。
この容器を用いて、本発明の方法で脱酸素処理を行い、気密性のゴム栓で封止することにより、高度に脱酸素された注射用溶液製剤を調製することができる。ゴム栓の材質としては、ブチルゴム製のもの、さらにフッ素樹脂によりラミネートされたブチルゴム製のゴム栓を使用するのが好ましい。
これらの封止可能な容器は、容器及びゴム栓共に適当な方法により滅菌処理を施した包材であることが好ましい。
前記封止可能な容器に、前記(a)にて調製した薬液を注入する。注入量としては、容器容量に応じて適宜設定すれば良い。容器容量に対して、薬液が満たされていない空隙容積ができるだけ少ない方が好ましい。
好ましくは、前記薬液が前記容器の容量の50(v/v)%以上が充填される様に注入される。より好ましくは、前記薬液が前記容器の容量の60(v/v)%以上であり、65(v/v)%以上が充填される態様が殊更好ましい。
次に(c)前記薬液を20℃以下にする工程3、を要件とする。
溶液を充填した容器を装置に設置したのち、温度制御を行う。温度制御は、溶液の蒸気圧を制御するために行う。一般的に、温度が低いほど溶液の蒸気圧は低くなる。このため、薬液温度を20℃以下にすることにより溶液の蒸気圧は低くなり、溶液が沸騰する気圧の閾値が下がるため、次の減圧工程時に装置内をより高度に減圧することができ、装置内の酸素をより多く除去することが可能となる。
例えば、水の場合、装置内の温度制御を20℃とした場合、20℃における水の蒸気圧は2,330Pa程度であるため、装置内の減圧は2,400Pa程度まで減圧することが可能である。したがって次工程で、装置内を不活性ガスで大気圧(1気圧≒101,300Pa)まで復圧したときに、装置内の酸素の濃度は、減圧する前の装置内の酸素濃度が21(v/v)%とすると21(v/v)%×2,400Pa/101,300Pa=約0.50(v/v)%となる。装置内の温度制御を10℃とした場合、10℃における蒸気圧は、1,230Pa程度となり、装置内の減圧は、1,300Pa程度まで減圧することが可能である。その時、次工程で装置内を不活性ガスで大気圧まで復圧したときに、装置内の酸素の濃度は、21(v/v)%×1,300Pa/101,300Pa=約0.27(v/v)%まで除去される。
また、装置内の温度制御を0℃とした場合、0℃における水の蒸気圧は610Pa程度となり、装置内の減圧は700Pa程度まで減圧することが可能となる。その時、次工程で装置内を不活性ガスで大気圧(1気圧≒101,300Pa)まで復圧したときに、装置内の酸素の濃度は、21(v/v)%×700Pa/101,300Pa=約0.15(v/v)%まで除去される。さらに装置内の温度制御を−40℃とした場合、−40℃における水の蒸気圧は20Pa程度となり、装置内の減圧は50Pa程度まで減圧することが可能となる。その時の次工程で装置内を不活性ガスで大気圧(1気圧≒101,300Pa)まで復圧したときに装置内の酸素の濃度は、21(v/v)%×50Pa/101,300Pa=約0.01(v/v)%となる。従って、減圧する前の温度制御は、低温にすることで次工程で装置内の酸素をより高度に除去することが可能となる。減圧する前の温度制御は、次工程の減圧とそれに続く工程の不活性ガスによる復圧で酸素濃度が0.5(v/v)%以下となる20℃以下が好ましく、より好ましくは10℃以下、さらに好ましくは0℃以下である。
前記薬液は、後述する(f)工程6において溶液状態で静置することから、薬液の凝固点以上で20℃以下の温度に設定しても良い。該薬液が水溶液である場合、0℃以上20℃以下である事が挙げられる。好ましくは0℃以上10℃以下である。
次に(d)前記薬液を当該薬液の溶媒の蒸気圧より高く、且つ大気圧より低い気圧に減圧する工程4、を要件とする。
装置内の(c)温度制御後に減圧制御を行うが、減圧した際に装置内の気圧を溶液の蒸気圧より低くした場合、溶液が沸騰し溶液中の水が揮発するため好ましくない。溶液を沸騰させない条件であって、より高度に酸素を除去するためには、溶液のその時の温度における蒸気圧を少し上回る程度まで減圧することが好ましい。すなわち、薬液の当該温度における溶媒の蒸気圧に対して1.01倍まで減圧することが好ましい。水の場合、20℃における蒸気圧は約2,330Paなので、2,350Pa程度まで減圧することになる。ここで、10℃における水の蒸気圧は1,230Paであり、1,240Paまで減圧することになる。0℃における蒸気圧は約610Paなので、620Paまで減圧することになる。−40℃における蒸気圧は約20Paなので21Paまで減圧することになる。
また、減圧時における気圧の上限値は、薬液の当該温度における溶媒の蒸気圧に対して5.0倍以下とすることが好ましい。減圧時に薬液の溶媒である水の当該温度における蒸気圧の3倍以下の気圧に減圧することで、最終的に酸素が高度に除去することができる。したがって、(d)前記薬液を当該薬液の溶媒の蒸気圧より高く、且つ大気圧より低い気圧に減圧する工程4における減圧の範囲は、薬液の蒸気圧に対して1.01倍以上で5.0倍以下の範囲とすることが好ましい。さらにより高度に酸素を除去したい場合には、減圧時における気圧の上限値は、薬液の当該温度における溶媒の蒸気圧の3.0倍以下とすることが好ましい。
次に、(e)酸素を実質的に含まない不活性ガスで気圧を回復させる工程5、を要件とする。
不活性ガスは、酸素を実質的に含まないガスであって、有効成分、製剤用添加剤、溶剤等の製剤構成成分、並びにバイアル、ゴム栓等の製剤用材料と反応しないガスである。環境中に拡散しても問題なく、容器内の溶液成分と反応しなければ不活性ガスはどんな気体でも良いが、アルゴン、窒素を使用することが好ましい。不活性ガスは、気体用の滅菌フィルター等により滅菌されたものが好ましい。装置内の容器の転倒や半打栓されたゴム栓が脱落する等の影響がなければ、不活性ガスの装置内への流入速度に制限はない。
装置内の減圧後に、不活性ガスによる復圧が行われる。復圧する際の気圧は、大気圧程度が好ましい。
不活性ガスによる復圧後の装置内の酸素濃度は、高度に除去されているが、溶液内の溶存酸素が除去されていない可能性がある。溶存酸素が除去されずに封栓された場合、溶液内の溶存酸素の一定量が容器の空隙内に気体として移行するため、空隙内の酸素濃度は上昇する。このため、次に、(f)前記薬液を、薬液の凝固点以上の温度で前記不活性ガス雰囲気において静置する工程6、を要件とする。
溶液中の溶存酸素を除去するために、不活性ガスで装置内を復圧した後、一定時間容器を静置することを必須とする。酸素分圧が低く、不活性ガスの分圧が高い装置内に容器を一定時間静置することで、溶液中の酸素が、時間をかけて装置の空間に気体となって移行する。溶液の溶存酸素量は、酸素分圧に比例するため、装置内の酸素がより高度に除去されていれば、溶液の溶存酸素量は大きく減少する。当該溶液製剤の酸素含有率の低減には、この工程6が最も寄与すると考えられる。また、溶液が凍結している場合は装置内を融解する温度にすることが必要であり、工程6は薬液の凝固点以上の温度で静置することを要する。
薬液を不活性ガス雰囲気において静置する時間は、充填された薬液の量及び装置内の温度により変動する。薬液の量が少ない場合は、薬液の溶存酸素が気体となって装置の空間に移行するのに要する時間は、薬液の量が多い場合と比較して短くなる。また、装置内の温度が高い場合は、薬液の温度が高くなり酸素の薬液への溶解度は下がるため、溶存酸素が気体となって装置の空間に移行するのに要する時間は短くなる。但し、薬液の温度が高すぎる場合は、有効成分の熱による分解、薬液中の水の蒸発による濃度変化等が起こる可能性がある。したがって、薬液を不活性ガス雰囲気において静置する温度は、薬液溶液が水溶液の場合は0℃〜40℃が好ましく、より好ましくは0℃〜25℃である。
静置する時間は、5時間以上、より好ましくは10時間以上であれば、薬液の溶存酸素が装置の空間に移行するのに十分な時間といえる。
温度制御、減圧制御、復圧制御、温度制御、静置の一連の工程は、容器を装置内から取り出さず、密閉状態が保たれていれば、繰り返して行うことが可能である。繰り返すことで、酸素濃度がより減少することが期待される。
最後に、(g)酸素を実質的に含まない不活性ガス雰囲気の下、薬液入り容器を封止する工程7、を要件とする。
前述したように脱酸素操作として、温度制御した上で減圧制御し、その後、不活性ガスによる復圧を行い一定時間静置した溶液製剤は、後に、密閉性を確保するために封栓を行う。この工程7操作は装置内及び容器内に酸素が流入することが無ければ、封栓の方法はどんな方法でも良い。好ましくは、溶液が充填されゴム栓で半打栓された容器が、本発明の酸素除去方法を経て、装置内で不活性ガスで復圧された後に、容器の上にある天面が下がることによりゴム栓が容器に押し込まれ封栓される方法である。半打栓とは、容器に栓が完全に封栓されておらず、容器の口と栓の間に隙間があり、気体の出入りが可能な状態にあることを示す。このような密閉空間における封栓操作は、通常の注射用医薬製剤の製造に用いる打栓機能付きの凍結乾燥装置により達成可能である。
医薬溶液製剤は無菌製剤であることが要求されるため、本発明で使用する製造装置は滅菌処理できることが好ましい。装置の滅菌方法として、高圧飽和蒸気を用いた滅菌方法が好ましい。
なお、本発明の操作工程である(A)温度制御、(B)減圧制御、(C)不活性ガスによる復圧制御、(D)封栓、の操作は、通常の注射用医薬製剤の製造工程操作で行うものであり、特別な設備を要するものでは無い。例えば、凍結乾燥製剤の製造に用いる打栓機能付きの凍結乾燥装置は前記(A)〜(D)の全ての操作を無菌的な環境下で行うことが可能な装置であり、本発明の製造方法に適用するために好ましい装置である。
本発明の製造方法による医薬品溶液製剤は、容器の空隙の体積当たりの酸素濃度が0.5(v/v)%以下に制御して製造することができる。より好ましくは、0.3(v/v)%以下である。
容器空隙部の気体中の酸素は、酸素センサーを用いた酸素濃度測定器により測定することができる。例えば、ニードル式酸素センサーを接続した酸素濃度計(MicroxTX3、製造元:PreSens社)を用い、当該製剤のゴム栓にニードル式酸素センサーを刺し容器中の気体と接触させることで、本発明に係る密封状態の容器中の気体の酸素を測定することができる。
本発明の製法により調製される医薬製剤は、単位製剤中の酸素含量を高度に低減することができ、酸素の存在による類縁物質生成を抑制することができる。例えば、ペメトレキセド二ナトリウムを有効成分とする水溶液製剤の場合、60℃で2週間保存後の有効成分に係る類縁物質の生成量は0.5(w/w)%以下である。
本発明の医薬品溶液製剤の製造方法は、工業的な規模において特別な設備を用いることなく、単位製剤中の酸素含量を高度に低減した溶液製剤を製造することができる。当該製造方法を溶液製剤の製造工程に導入することで、溶液状態で酸素と反応することにより不純物が増加しやすい有効成分でも、効能及び安全性を長期に亘って保持することができる溶液製剤の提供が可能となる。
以下に、本発明を実施例により更に説明する。ただし、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
容量5mLのガラス製バイアルに4mLの水を充填し、ゴム栓で半打栓を行い、密閉された装置の棚に設置した。棚の温度を0℃に設定し、バイアル中の水温が0℃に到達した後、真空ポンプにより減圧し、密閉された装置内の気圧を1,000Paとした。その後、真空ポンプを停止し、窒素ガスを密閉された装置内に流入させ、復圧した。その後、棚の温度を0℃に設定したまま、15時間静置した。15時間後、棚を下降させて打栓した。打栓後、棚の温度を20℃程度に上昇させ、打栓したバイアルを取り出した。打栓したバイアルをアルミキャップにて巻締めした。
[実施例2]
容量30mLのガラス製バイアルに20mLの水を充填したことと、窒素による復圧後に0℃で38時間静置したことを除いては、実施例1と同様である。
[実施例3]
容量5mLのガラス製バイアルに4mLの水を充填し、ゴム栓で半打栓を行い、密閉された装置の棚に設置した。棚の温度を−40℃に設定し、バイアル中の水温が−30℃以下に到達した後、真空ポンプにより減圧し、密閉された装置内の気圧を50Paとした。その後、真空ポンプを停止し、窒素ガスを密閉された装置内に流入させ、復圧した。その後、棚の温度を20℃に設定し、10時間程度静置した。10時間後、棚を下降させて打栓し、取出した。打栓したバイアルをアルミキャップにて巻締めした。
[実施例4]
容量30mLのガラス製バイアルに20mLの水を充填したことを除いては、実施例3と同様である。
[実施例5]
容量50mLのガラス製バイアルに30mLの水を充填したことを除いては、実施例3と同様である。
[比較例1]
約1000mLの水を2L容量のガラス製容器に入れ、撹拌しながら窒素ガスを液中に30分間吹き込み、水中及びガラス容器中の酸素を除去した。その水を容量5mLのバイアルに4mL充填した。充填後のバイアル内に窒素ガスを吹き込み、打栓した。打栓したバイアルをアルミキャップにて巻締めした。
[比較例2]
容量30mLのバイアルに水を20mL充填したことを除いては、比較例1と同様である。
[比較例3]
容量5mLのガラス製バイアルに4mLの水を充填し、ゴム栓で半打栓を行い、密閉された装置の棚に設置した。棚の温度を−45℃に設定し、バイアル中の水温が−40℃以下に到達した後、真空ポンプにより減圧し、密閉された装置内の気圧を10Paとした。その後、真空ポンプを停止し、窒素ガスを密閉された装置内に流入させ、復圧した後、凍結状態で棚を下降させて打栓した。その後、棚の温度を20℃に設定し、バイアル内の水が凍結状態から溶液状態に移行した後、取出した。取出したバイアルをアルミキャップにて巻締めした。
[試験例1]バイアル空隙部の気体中の酸素の測定
ニードル式酸素センサーを接続した酸素濃度計(MicroxTX3、製造元:PreSens社)を使用した。これはニードルの先端に酸素に感度を持つ蛍光染料(酸素センサー)がコートされたファイバーがあり、実施例及び比較例のバイアルのゴム栓にニードル式酸素センサーを刺し入れ、バイアル中の密閉状態の空隙部の気体中の酸素濃度を測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 2018177650
比較例のバイアル空隙部の酸素濃度は、0.5(v/v)%〜1.0(v/v)%程度であったが、実施例1〜5のバイアル中の空隙部の酸素濃度は0.09(v/v)%〜0.22(v/v)%であった。本発明による酸素除去方法で酸素除去することにより、バイアル中の酸素が高度に除去されることが認められた。これは、不活性ガスで復圧した後に、打栓せずバイアル内の内容物を溶液の状態にして、不活性ガスの分圧が高く、酸素分圧が低い庫内にバイアルを数時間静置することで、溶液内の溶存酸素が気体となってバイアル外に移行したためと考えられる。
ペメトレキセド二ナトリウムを有効成分として水に溶解させたRTU型の溶液製剤を調製して、溶液製剤の空隙中の酸素濃度及び保存安定性を評価した。
[実施例6]
ペメトレキセド二ナトリウム塩2.5水和物1,510mg(ペメトレキセドに換算して1,250mg)を適量の注射用水に溶かし、適量の塩酸溶液および適量の水酸化ナトリウム溶液でpH7.5に調整し、注射用水を加えて全量を50mLとした。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を4mL充填し、ゴム栓で半打栓した。このバイアルを凍結乾燥機に設置した。棚の温度を0℃に設定し、バイアル中の内容物が0℃に到達した後、真空ポンプにより減圧し、密閉された装置内の気圧を1,000Paとした。その後、真空ポンプを停止し、窒素ガスを密閉された装置内に流入させ、復圧した。その後、棚の温度を0℃に設定したまま、15時間静置した。15時間後、棚を下降させて打栓した。打栓後、棚の温度を20℃程度に上昇させ、打栓したバイアルを取り出した。打栓したバイアルをアルミキャップにて巻締めした。
[実施例7]
ペメトレキセド二ナトリウム塩2.5水和物4,531mg(ペメトレキセドに換算して3,750mg)を適量の注射用水に溶かし、適量の塩酸溶液および適量の水酸化ナトリウム溶液でpH7.2に調整し、注射用水を加えて全量を150mLとした。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を4mL充填し、ゴム栓で半打栓した。このバイアルを密閉された装置内に設置した。棚の温度を−40℃に設定し、バイアル中の内容物が−30℃以下に到達した後、真空ポンプにより減圧し、密閉された装置内の気圧を50Paとした。その後、真空ポンプを停止し、窒素ガスを密閉された装置内に流入させ、復圧した。その後、棚の温度を20℃に設定し、10時間程度静置した。10時間後、棚を下降させて打栓し、取出した。打栓したバイアルをアルミキャップにて巻締めした。
[比較例4]
ペメトレキセド二ナトリウム塩2.5水和物57.39g(ペメトレキセドに換算して47.5g)を適量の注射用水1,866gに溶かした(全量1900mL)。適量の塩酸溶液および適量の水酸化ナトリウム溶液でpH7.2に調整した。この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行った。この溶液を撹拌しながら窒素ガスを液中に30分間吹き込み、水中及びガラス容器中の酸素を除去した。溶液を容量5mLのバイアルに4mL充填した。充填後のバイアル内に窒素ガスを吹き込み、打栓した。打栓したバイアルをアルミキャップにて巻締めした。
[試験例2]バイアル空隙部の気体中の酸素の測定
実施例6、実施例7、比較例4の製剤について、前述の方法と同様の方法で、バイアル中の密閉状態の空隙部の気体中の酸素濃度を測定した。測定結果を表2に示す。
Figure 2018177650
実施例6、7においてバイアル内の空隙酸素濃度は0.3(v/v)%以下であり、酸素が高度に除去されたことが分かる。
実施例6及び7、並びに比較例4の製剤について、60℃で2週間保存後における製剤の性状、pH、及び類縁物質(個々の最大(%)、総量(%))を評価した。
[試験例3]ペメトレキセド類縁物質の分析条件
実施例及び比較例のペメトレキセド分解由来の類縁物質を、以下の液体クロマトグラフィー(HPLC)条件にて分析した。
カラム:ジーエルサイエンス社製Inertsil ODS―3(内径4.6mm、長さ25cm)
カラム温度:40℃
移動相A:リン酸塩緩衝液(pH 6.8)/アセトニトリル混液(47:3)
移動相B:アセトニトリル
送液量:1.0mL/min。
波長:225nm
移動相の送液:表3に示す条件で送液した。
Figure 2018177650
実施例6及び7、並びに比較例4の製剤について60℃で2週間保存後における製剤の性状、pH、類縁物質(個々の最大(%)、総量(%))の評価結果を表4に示す。評価基準は、pHは6.6〜7.8、類縁物質の個々の最大は0.2(w/w)%以下、類縁物質の総量は1(w/w)%以下とした。
Figure 2018177650
比較例4は、濃い黄色に着色した。また、類縁物質の個々の最大値は0.2(w/w)%を超えていた。これに対し、実施例6及び7は、60℃保存2週間後で若干の着色が認められたものの、類縁物質は基準値以下であった。これらの保存安定性の結果は、試験例2で示された製剤中の空隙酸素濃度と相関しており、製剤中の酸素濃度を極力低減することにより、溶液製剤の安定性が担保されることが明らかとなった。
本発明の酸素除去方法を用いた溶液製剤の製造を行うことで、溶液製剤内の酸素を高度に除去することが可能となり、医薬有効成分が酸素に対して不安定な場合でも、保管安定性が担保された溶液製剤を安定的に製造できると考えられる。

Claims (5)

  1. 酸素含有率が低減して封止された医薬品溶液製剤の製造方法であって、
    (a)有効成分を含む薬液を調製する工程1、
    (b)前記薬液を封止可能な容器に注入する工程2、
    (c)前記薬液を20℃以下にする工程3、
    (d)前記薬液を当該薬液の溶媒の蒸気圧より高く、且つ大気圧より低い気圧に減圧する工程4、
    (e)酸素を実質的に含まない不活性ガスで気圧を回復させる工程5、
    (f)前記薬液を、薬液の凝固点以上の温度で前記不活性ガス雰囲気において静置する工程6、
    (g)酸素を実質的に含まない不活性ガス雰囲気の下、薬液入り容器を封止する工程7、
    による、医薬品溶液製剤の製造方法。
  2. (d)工程4において、薬液の蒸気圧に対して、1.01倍以上で5.0倍以下の気圧に減圧する、請求項1に記載の医薬品溶液製剤の製造方法。
  3. (f)工程6において、前記不活性ガス雰囲気に5時間以上晒す、請求項1又は2に記載の医薬品溶液製剤の製造方法。
  4. 前記薬液が前記容器の容量の50(v/v)%以上が充填されており、容器の空隙中の酸素濃度が0.5(v/v)%以下である、請求項1〜3の何れか一項に記載の医薬品溶液製剤の製造方法。
  5. 有効成分がペメトレキセド二ナトリウムであり、水を主たる溶剤成分とした水溶液製剤である、請求項1〜4の何れか一項に記載の医薬品溶液製剤の製造方法。

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