JP2018172251A - プレス成形処理用型、ガラスブランクの製造方法、および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法 - Google Patents

プレス成形処理用型、ガラスブランクの製造方法、および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】表面性状が良好なガラスブランクを精度良く成形できるプレス成形用型を提供する。【解決手段】プレス成形処理用型は、溶融ガラスが載置され、溶融ガラスを第1の型との間に挟み込んでガラスブランクを成形する第2の型を構成する。プレス成形処理用型は、350〜1000℃の温度範囲において熱膨張係数が1.0〜6.0×10-6/℃である。【選択図】図1

Description

本発明は、プレス成形処理用型、ガラスブランクの製造方法、および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法に関する。
今日、パーソナルコンピュータ、DVD(Digital Versatile Disc)記録装置等には、データ記録のためにハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)が内蔵されている。ハードディスク装置では、基板に磁性層が設けられた磁気ディスクが用いられ、磁気ディスクの面上を僅かに浮上させた磁気ヘッドで磁性層に磁気記録情報が記録され、あるいは読み取られる。この磁気ディスクの基板として、金属基板(アルミニウム基板)等に比べて塑性変形し難い性質を持つガラス基板が好適に用いられる。
磁気ディスク用ガラス基板は、ガラスブランクに対して研削、研磨等の機械加工をすることにより作製される。ガラスブランクを作製する方式の1つとして、溶融ガラスの塊を一対のプレス成形型によりプレス成形する方法が知られている。
また、複数の下型をターンテーブル上に環状に配列し、1つの下型の上部に溶融ガラスの供給部を配置し、その下型に隣接する他の下型の上部に上型を配置し、溶融ガラス塊を順次下型の上に載置し、ターンテーブルを回転させて、溶融ガラス塊を受けた下型を上型の下方に移動させてプレス成形し、その後、ターンテーブルを回転させながら成形されたガラスブランクを下型の上で冷却する方法もある(例えば、特許文献1参照)。
このように製造されたガラスブランクに対して、円孔形成処理、研削処理、研磨処理等の加工処理を行うことで、磁気ディスク用ガラス基板が製造される。得られた磁気ディスク用ガラス基板に対して、主表面に磁性膜を成膜することで、磁気ディスクが得られる。
国際公開第2013/001723号
特許文献1の方法では、プレス成形を繰り返し行ううちに、ガラスブランクの表面性状が悪化する場合があることがわかった。磁気ディスク用ガラス基板の主表面には、高い表面性状が求められるため、表面性状の悪化したガラスブランクでは、研削処理や研磨処理での取り代が多くなり、生産性が低下するという問題がある。
本発明は、表面性状が良好なガラスブランクを精度良く成形できるプレス成形用型を提供することを目的とする。また、本発明は、そのようなプレス成形用型を用いたガラスブランクの製造方法及び磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、プレス成形処理を繰り返し行ううちに、溶融ガラスが接触する型の表面にひび割れが発生し、これに起因して、ガラスブランクの表面性状が悪化することを突き止めた。そして、特定の材料からなる型を用いてプレス成形処理を行うことで、型のひび割れを抑制でき、表面性状が良好なガラスブランクを精度良く成形できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の一態様は、溶融ガラスが載置され、前記溶融ガラスを第1の型との間に挟み込んでガラスブランクを成形する第2の型を構成するプレス成形処理用型であって、
前記プレス成形処理用型は、350〜1000℃の温度範囲において熱膨張係数が1.0〜6.0×10-6/℃である、ことを特徴とする。
前記プレス成形処理用型は、350〜1000℃の温度範囲における熱伝導率が10〜80W/m・Kであることが好ましい。
前記溶融ガラスが載置される前記プレス成形処理用型の表面は、平坦度が10μm以下であり、算術平均粗さRaが0.5〜5μmであることが好ましい。
前記プレス成形処理用型の破壊靭性値は、4MPa・m1/2以上であることが好ましい。
前記プレス成形処理用型の電気抵抗率は、1.0×10Ω・cm以上であることが好ましい。
前記プレス成形処理用型は、β型の結晶構造を持つ窒化ケイ素を前記プレス成形処理用型全体の80質量%以上含むことが好ましい。
前記プレス成形処理用型を構成する材料は、金属窒化物を主成分として含み、
前記第1の型と向かい合う前記プレス成形処理用型の面の少なくとも中央部の領域には、前記金属窒化物が酸化処理された酸化膜が配置されていることが好ましい。
本発明の別の一態様は、ガラスブランクの製造方法であって、
溶融ガラスを、第1の型と、前記溶融ガラスが載置された第2の型との間に挟み込んでガラスブランクを成形するプレス成形処理を備え、
前記第2の型は、350〜1000℃の温度範囲において熱膨張係数が1.0〜6×10-6/℃である、ことを特徴とする。
本発明の別の一態様は、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
前記ガラスブランクの製造方法により製造されたガラスブランクの主表面を少なくとも研磨することにより、前記主表面を算術平均粗さRaが0.2nm以下の鏡面とする研磨処理を有する、ことを特徴とする。
本発明によれば、プレス成形処理に伴う型のひび割れを抑制でき、表面性状が良好なガラスブランク及び磁気ディスク用ガラス基板を精度良く成形することができる。
プレス成形処理装置を示す斜視図である。 図1のプレス成形処理装置のプレス機下部及び下型を模式的に示す図である。 実施例7及び比較例3で用いた下型の熱膨張係数と温度との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、ガラスブランクの製造方法、及びプレス成形処理用型について詳細に説明する。なお、本発明は、公称2.5〜3.5インチサイズ(直径65〜95mm)、板厚0.1〜1.5mm、好ましくは板厚0.3〜0.9mmの磁気ディスク用ガラス基板の製造に好適である。
(磁気ディスク用ガラス基板)
まず、磁気ディスク用ガラス基板について説明する。磁気ディスク用ガラス基板は、円板形状である。なお、磁気ディスク用ガラス基板は、外周と同心の円形の中心孔がくり抜かれたリング状であってもよい。磁気ディスク用ガラス基板の両面の円環状領域に磁性層(記録領域)が形成されることで、磁気ディスクが形成される。
(磁気ディスク用ガラスブランク)
磁気ディスク用ガラスブランク(以降、単にガラスブランクという)は、プレス成形処理により作製されるガラス板であり、後述する研削処理が行われる前のものである。ガラスブランクの形状は略円形である。ここで、「略円形」には、真円形状および楕円形状が含まれ、その外周形状は単一の曲率半径の円弧のみからなるものであってもよいし、異なる曲率半径の円弧からなるものであってもよい。また、ガラスブランクは後述する円孔形成処理により形成される円孔を有していてもよい。
ガラスブランクの材料として、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどを用いることができる。特に、化学強化を施すことができ、また主表面の平面度及び基板の強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を作製することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好適に用いることができる。
(ガラス基板の製造方法)
次に、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を説明する。先ず、一対の主表面を有する板状の磁気ディスク用ガラス基板の素材となる溶融ガラス塊をプレス成形することによりガラスブランクを作製する(プレス成形処理)。次に、作製されたガラスブランクの中心部分に円孔を形成しリング形状(円環状)とする(円孔形成処理)。これらの処理のうち、少なくともプレス成形処理を行ってガラスブランクを作製する方法を、特に、ガラスブランクの製造方法という。ガラスブランクの製造方法は、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法に包含される。
次に、ガラスブランクに対して端面研削による形状加工を行う(形状加工処理)。これにより、リング形状(円環状)のガラス基板が生成される。次に、固定砥粒による主表面研削を行い(研削処理)、平坦となったガラス基板に対して端面研磨を行う(端面研磨処理)。次に、ガラス基板の主表面に第1研磨を行う(第1研磨処理)。次に、必要に応じてガラス基板に対して化学強化を行う(化学強化処理)。次に、化学強化されたガラス基板に対して第2研磨を行う(第2研磨処理)。以上の処理を経て、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。以下、各処理について、詳細に説明する。
(a)プレス成形処理
溶融ガラス流を切断器により切断し、切断された溶融ガラス塊を一対の型のプレス面の間に挟みこみ、プレスしてガラスブランクを成形する。本実施形態においては、後述するように、下型の上面に溶融ガラス流の先端部を落下させた後、その上流側の位置で溶融ガラス流を切断して溶融ガラスの塊とし、この溶融ガラス塊を上から上型によって下方に加圧することで、ガラスブランクを成形する。
所定時間プレスを行った後、型を開いてガラスブランクが取り出される。
(b)円孔形成処理
ガラスブランクに対して、コアリング、スクライビング等により円形状の孔(円孔)を形成することで、円孔があいたディスク状のガラスブランクを得る。
コアリングは、一方の端が開口した筒状のコアドリルによってガラスブランクを一方の主表面から切削することで、円孔の円周部を削り取り中心部(コア)のガラスをくり抜き、貫通孔を形成する方法である。なお、円孔の円周部(内側円)を削り取るとともに、ガラスブランクの外側輪郭線となる円形の切断線(外側円)をコアドリルによって削り取ってもよい。その後、ガラスブランクの外側円よりも外側の部分および内側円よりも内側の部分が除去されることで、ディスク状のガラスブランクが得られる。
スクライビングは、超硬合金製あるいはダイヤモンド粒子からなるカッター(スクライバ)によりガラスブランクの一方の主表面に円形の切断線を設け、その後ガラスブランクを加熱することにより円形の切断線をガラスブランクの厚さ方向に伸展させ、円形の切断線の内部を押圧して分離する方法である。なお、円孔の輪郭線となる円形の切断線と同時に、ガラスブランクの外側輪郭線となる円形の切断線を同時に形成してもよい。この場合、ガラスブランクの外側輪郭線となる円形の切断線(外側円)と、円孔の輪郭線となる円形の切断線(内側円)とを同心円となるように形成する。その後、ガラスブランクを部分的に加熱することにより、ガラスブランクの熱膨張の差異によって、ガラスブランクの外側円よりも外側の部分および内側円よりも内側の部分が除去され、ディスク状のガラスブランクが得られる。
(c)形状加工処理
形状加工処理では、ガラスブランクの外周端部に対する面取り加工を行う。ガラスブランクに円孔を形成した場合は、円孔の内周端部に対する面取り加工も行う。
(d)研削処理
研削処理では、遊星歯車機構を備えた両面研削装置を用いて、ガラスブランクの主表面に対して研削加工を行う。具体的には、ガラスブランクの外周側端面を、両面研削装置の保持部材に設けられた保持孔内に保持しながらガラスブランクの両主表面の研削を行う。両面研削装置は、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、上定盤および下定盤の間にガラス基板が狭持される。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させ、ガラスブランクと各定盤とを相対的に移動させることにより、ガラスブランクの両主表面を研削することができ、これにより、板厚を調整し、さらに平坦度を向上させることができる。
(e)端面研磨処理
端面研磨処理では、ガラスブランクの外周側端面に対して、ブラシ研磨により鏡面仕上げを行う。ガラスブランクに円孔を形成した場合は、円孔の内周側端面に対しても、鏡面仕上げを行う。このとき、酸化セリウム等の微粒子を遊離砥粒として含む砥粒スラリが用いられる。
(f)第1研磨処理
第1研磨処理は、例えば固定砥粒による研削を行った場合に主表面に残留したキズや歪みの除去、あるいは、微小な表面凹凸(マイクロウェービネス、粗さ)の調整を目的とする。具体的には、ガラスブランクの研削処理により得られたガラス基板の外周側端面を、両面研磨装置の研磨用キャリアに設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板の両側の主表面の研磨が行われる。
第1研磨処理では、固定砥粒による研削処理に用いる両面研削装置と同様の構成を備えた両面研磨装置を用いて、研磨スラリを与えながらガラス基板が研磨される。第1研磨処理では、固定砥粒による研削と異なり、固定砥粒の代わりに遊離砥粒を含む研磨スラリが用いられる。
両面研磨装置は、両面研削装置と同様に、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、上定盤および下定盤の間にガラス基板が狭持される。下定盤の上面及び上定盤の底面には、全体として円環形状の平板の研磨パッド(例えば、樹脂ポリッシャ)が取り付けられている。上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させることで、ガラス基板と各定盤とを相対的に移動させることにより、ガラス基板の両主表面が研磨される。
なお、第1研磨処理後のガラス基板を化学強化液中に浸漬することで、ガラス基板を化学強化してもよい(化学強化処理)。化学強化液として、例えば硝酸カリウムと硫酸ナトリウムの混合熔融液等を用いることができる。
(g)第2研磨(最終研磨)処理
第2研磨処理は、主表面の鏡面研磨を目的とする。第2研磨においても、第1研磨に用いる両面研磨装置と同様の構成を有する両面研磨装置が用いられる。具体的には、ガラス基板の外周側端面を、両面研磨装置の研磨用キャリアに設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板の両側の主表面の研磨が行われる。第2研磨処理が第1研磨処理と異なる点は、遊離砥粒の種類及び粒子サイズが異なることと、樹脂ポリッシャの硬度が異なることである。具体的には、粒径5〜100nm程度のコロイダルシリカを遊離砥粒として含む研磨液が両面研磨装置の研磨パッドとガラス基板の主表面との間に供給され、ガラス基板の主表面が研磨される。研磨されたガラス基板を中性洗剤、純水、イソプロピルアルコール等を用いて洗浄することで、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。
ここで、プレス成形処理に用いるプレス成形処理装置について説明する。図1はガラスブランクのプレス成形処理に用いるプレス成形処理装置の斜視図である。
図1に示すように、プレス成形処理装置は、ターンテーブル11と、複数のプレス機下部12と、複数の下型(第2の型)20と、上型(第1の型)30と、プレス機上部13と、回転軸14と、流出ノズル15と、を備える。
ターンテーブル11は円板状であり、ターンテーブル11の上部には、複数のプレス機下部12が周方向に等間隔に配列された状態で固定されている。複数のプレス機下部12の上部には、それぞれ下型20が固定されている。下型20に関しては、後で詳細に説明する。
ターンテーブル11の中心には回転軸14が設けられている。ターンテーブル11は複数のプレス機下部12、複数の下型20、下型20の上面(プレス面21)に落下し、載置された溶融ガラス、および成形されたガラスブランクとともに、回転軸14を中心に回転する。
プレス機下部12の上部には、下型20が設けられている。また、プレス機下部12の内部には、下型20の温度を制御する図示しないヒータが埋め込まれている。
複数の下型20のいずれか1つの上方には、流出ノズル15が設けられている。流出ノズル15は、流出ノズル15の下方に配置された下型20の上面に、溶融ガラス16を流出させる。上面に落下した溶融ガラス16は、流出ノズル15の流出口の近傍の位置で図示しないブレードによって切断され、溶融ガラス塊17として下型20の上面に載置される。ブレードによって切断された溶融ガラスの切断痕は、後の工程である円孔形成処理により除去されるように、プレス成形処理によってガラスブランクの中央に配置されることが好ましい。
また、複数の下型20のうち、上方に流出ノズル15が配置されたものよりもターンテーブル11の回転方向の下流側に配置された下型20の上方には、プレス機上部13が設けられている。プレス機上部13の下部には、上型30が設けられている。また、プレス機上部13の内部には、上型30の温度を制御する図示しないヒータが埋め込まれている。
溶融ガラス塊17が載置された下型20を支持するプレス機下部12がターンテーブル11によってプレス機上部13の下方に移送される毎に、プレス機上部13はサーボモータの制御により上型30を所定の距離だけ下降することで溶融ガラス塊17を上型30と下型20との間に所定の間隔をあけて挟み込み、溶融ガラス塊17を所定の板厚に引き伸ばし、その後上昇することを繰り返す。
上型30は下型20の上面に載置された溶融ガラス塊17を下方に加圧するものである。上型30は下型20よりも熱伝導性が高い材料(例えばタングステン合金)からなる。このため、下型20の上面に載置された溶融ガラス塊17は上型30と接触するまでは高温の状態が維持され、溶融ガラス塊17の上方から上型30が溶融ガラス塊17を押圧することで、上型30に接触した溶融ガラス塊17が急速に冷却され、ガラスブランク18に成形される。
成形されたガラスブランク18は、下型20の上面に載置された状態で冷却されながら、ターンテーブル11によって搬送される。冷却されたガラスブランク18は、図示しない吸着手段によって下型20の上面から取り外され、以後の形状加工等の処理を行う装置へ搬送される。
(プレス成形処理用型)
次に、本実施形態の下型20について詳細に説明する。
下型20は、350〜1000℃の温度範囲において熱膨張係数が1.0〜6.0×10-6/℃である焼結材料から構成されている。このような材料から下型20が構成されていることで、下記説明するように、成形されたガラスブランクの表面性状が良好なものとなる。
下型のプレス面は、高温の溶融ガラスが接触したときに、プレス面と反対側の表面(下面)との間、あるいはプレス面の中央部と外周部との間で温度差が生じ、熱膨張量の差が生じやすい。このため、プレス成形処理に伴って、高温の溶融ガラスが高圧で接触し、熱膨張及び熱収縮が繰り返され、その結果、プレス面にひび割れが発生しやすい。ひび割れが生じたプレス面には、凹凸が生じているため、プレス面の表面性状がガラスブランクの表面に転写され、下型と接触するガラスブランクの主表面(下側主表面)の表面性状を悪化させやすい。特に、下型は、プレス面の面方向にも熱膨張および熱収縮を繰り返すため、ひび割れが下型の面方向に沿って移動することで、ガラスブランクの表面性状を悪化させやすい。
また、プレス面に生じたひび割れは、プレス成形処理が続けて行われることでさらに進展してより大きな割れとなり、下型の破損に至る場合がある。特に、磁気ディスク用ガラス基板の素板となるガラスブランクの成形に用いられる型は、光学レンズ等の成形用型と比べ、溶融ガラス塊の熱容量が大きいことから、ひび割れ、破損が生じやすい。このため、ガラスブランクを成形する精度が短期間のうちに落ちてしまう。また、寿命の短い下型は、交換頻度が高いため、生産コストを増大させる。
本実施形態の下型20は、熱膨張係数が上記範囲を満たす材料から構成されていることで、プレス成形処理に伴うひび割れが生じ難い。このため、表面性状が良好なガラスブランクを精度良く成形することができる。特に、ひび割れは、プレス成形処理時に高温になるプレス面21の中心部において発生しやすいため、中心部では外周部よりも凹凸が生じやすく、これに起因して、成形されたガラスブランクの下側主表面の性状が不均一になりやすい。しかし、下型20のひび割れが抑制されていることで、プレス面の表面性状が中心部と外周部とで不均一になり難く、成形されたガラスブランクの下側主表面の性状が均一に維持されやすい。
本明細書において、熱膨張係数は、JIS R1618:2002に準拠して熱機械分析により測定された線膨張率である。350〜1000℃の温度範囲は、下型20の温度範囲であり、下型20内に温度分布が生じている場合は、下型20の最高温度を示す部分の温度範囲をいう。上記温度範囲は、プレス成形処理における下型20の温度として予め設定された温度(成形温度)の範囲(例えば350〜700℃)を含んでおり、高温の溶融ガラスが接触することによって、成形温度を一時的に超える場合の下型20の温度も含む。
熱膨張係数が温度依存性を有する材料は、上記温度範囲では、例えば常温での熱膨張係数から大きく変化する場合がある。本発明者は、熱膨張係数が上記温度範囲において1.0〜6.0×10-6/℃である材料を下型20に用いた場合に、ひび割れの発生が少なく、ガラスブランクの表面性状の悪化を抑制できることを見出した。熱膨張係数が6.0×10-6/℃を超えると、プレス成形処理時の下型20の熱膨張量が大きく、ひび割れの発生を抑制できない。熱膨張係数が1.0×10-6/℃未満であると、プレス機下部1に対する熱膨張量が小さすぎて、下型20の下面においてひび割れが発生するおそれがある。
下型20の材料の熱膨張係数は、好ましくは、800〜1000℃の温度範囲において3.0〜5.5×10-6/℃である。下型20の熱膨張係数がこのような範囲内にあることによって、下型20のひび割れの発生を抑制する効果が高くなり、ガラスブランクの表面性状の悪化が抑制されやすくなる。さらに好ましくは、下型20の材料の熱膨張係数は、800〜810℃、970〜980℃、1030〜1040℃の各範囲における熱膨張係数の値の平均値が3.0×10-6/℃以上、4.0×10-6/℃以下の範囲内である。下型20の材料の熱膨張係数が、800〜1000℃の温度範囲において3.0〜5.5×10-6/℃である場合、及び、上記平均値が3.0×10-6/℃以上、4.0×10-6/℃以下の範囲内である場合は、プレス成形処理を連続して繰り返し行なったときに、1週間以上、好ましくは10日以上、ひび割れ及び脱粒による凹みの発生を抑制でき、耐久性が高い。
下型20の材料は、さらに、350〜1000℃の温度範囲内における熱伝導率が10〜80W/m・Kであることが好ましい。また、下型20の材料は、250〜1000℃の温度範囲内における熱伝導率が10〜80W/m・Kであることがさらに好ましい。本明細書において、熱伝導率は、JIS R1611:2010に準拠して計算される値をいう。熱伝導率は、一般に、高温であるほど低くなる。本発明者は、熱伝導率が上記温度範囲において、10〜80W/m・Kである材料を下型20に用いた場合に、高温の溶融ガラスが下型20の一部に連続的に供給されても、下型20に伝達された熱が維持されることなく、効率良く熱を逃がして冷却されるため、下型20の溶融ガラスが供給される位置において焼結助剤の溶融が生じず、その結果、下型20の脱粒を好適に防止できること見出した。下型20は、高温状態で溶融ガラスが載置されるため、融点の低い焼結助剤(バインダ)が用いられていると、下型20の一部が溶融ガラスに付着して下型20から離脱する脱粒が発生しやすい。しかし、下型20の材料の熱伝導率が上記範囲内にあると、下型20の脱粒が抑制されることで、脱粒に起因して下型20のプレス面21に経時的に凹凸が発生することが抑制され、成形されるガラスブランクの表面性状及び平坦度が好適に維持される。熱伝導率が10W/m・K未満であると、溶融ガラスから受けた熱が下型20から放熱され難く、焼結助剤が溶融し、下型20の脱粒が生じ易くなる。熱伝導率が80W/m・Kを超えると、成形時に溶融ガラスが短時間に冷却されることとなり、平坦度等において精度良くガラスブランクを成形することが困難となり、一方で、下型20の温度を高くして成形性を向上させようとすると、溶融ガラスが下型20に対して融着を起こし、結果として所望の精度でガラスブランクを成形することができないこととなる。そのため、下型20の材料の熱伝導率は、好ましくは、350〜1000℃の温度範囲において10〜80W/m・Kである。
下型20の材料の破壊靭性値は、4MPa・m1/2以上であることが好ましい。本明細書において、破壊靭性値は、JIS R1617:2010に準拠して測定される値である。破壊靭性値が上記範囲にあることで、プレス成形処理時に、高温、高圧下における下型20のひび割れが防止されるとともに、下型20に溶融ガラスが融着して、下型20のプレス面21をなす部分が剥がれることが抑制され、下型20のプレス面21に凹みが生じることが抑えられる。これにより、平坦度の高い(例えば板厚偏差15μm以下)ガラスブランクを長期にわたって成形することが可能であり、特に下型20の交換頻度を低減することができる。破壊靭性値が4MPa・m1/2未満であると、下型20に溶融ガラスが融着したときに、高温、高圧下における下型20のひび割れを抑制できない場合があり、また、下型20のプレス面21をなす部分が剥がれやすく、プレス成形処理が繰り返されることで、プレス面21が経時的に凹む場合がある場合がある。プレス面21のこのようなひび割れや凹みは、下型20の平坦度を悪化させ、それにともなって、ガラスブランクの下側主表面の平坦度を悪化させる。下型20の破壊靭性値の上限値は、特に制限されないが、例えば、20MPa・m1/2である。
下型20の材料の電気抵抗率は、1.0×10Ω・cm以上であることが好ましい。プレス成形処理装置の流出ノズル15は、溶融ガラスの温度を保つために、電流が供給され発熱することで、溶融ガラスを通電加熱している場合がある。しかし、下型20の電気抵抗率が1.0×10Ω・cm未満である場合、溶融ガラスを介して流出ノズル15と下型20が導通することで、溶融ガラスが加熱され、気泡が生じる場合がある。このような気泡が生じると、ガラスブランク中に残存して、形状加工処理から第2研磨処理が行われる過程で、ガラスブランクの表面に凹部が形成される、あるいは、気泡を囲むガラスの一部が離脱して、ガラスブランクの表面に付着し、汚染させる場合がある。下型20の材料の電気抵抗率が上記範囲にあることで、プレス面21に落下した溶融ガラスを介して流出ノズル15と下型20が導通することを抑制できる。電気抵抗率が上記範囲にある材料に、金属は含まれない。電気抵抗率の上限値は、特に制限されない。
下型20の材料としては、上記熱膨張係数を満たす材料であって、例えば、金属窒化物、金属酸化物、金属炭化物、金属ホウ化物、これらの2種以上をブレンドしたもの、あるいは、これらと他の物質とをブレンドしたものが挙げられる。中でも、耐久性の高い下型20が得られる点で、金属窒化物を含むものが好ましく用いられる。上記金属化合物を構成する金属には、半金属と呼ばれるホウ素、ケイ素等の元素が含まれる。上記他の物質には、下型20が粉体の焼結体である場合の焼結助剤(バインダ)や、焼結によってガラス状態となる物質(ガラス質)が含まれる。下型20の材料は、熱膨張係数のほか、熱伝導率、破壊靭性値、電気抵抗率のうちの1つ以上がそれぞれ上記範囲を満たしていることが好ましい。尚、焼結助剤は融点が低い場合には、溶融ガラスが下型20に接触した際に脱粒を生じる原因となるため、焼結助剤としては、融点が1000℃以上のものを、下型20全体の30質量%以下、好ましくは15質量%以下用いることが好ましい。
下型20の材料の具体例としては、窒化ケイ素(Si34)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、アルミナ(Al23)、ジルコニア(ZrO2)、サイアロン(Si34・Al23)、あるいは、これらと他の物質とをブレンドしたものが挙げられる。中でも、窒化ケイ素(Si34)、窒化アルミニウム(AlN)、サイアロン(Si34・Al23)、あるいは、これらと他の物質をブレンドしたものが好ましく用いられる。バインダの具体例として、イットリウム、エルビウム等の金属の酸化物または窒化物、あるいは、イットリウム、アルミニウム、鉄、チタン、ジルコニウム等のうちの2種以上の金属の合金が挙げられる。ガラス質の具体例として、アルミナ、イットリア等が挙げられる。
下型20の材料の主成分となる金属窒化物、金属酸化物、金属炭化物、金属ホウ化物の含有量、これらの2種以上をブレンドしたものの含有量は、下型20全体の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。また、下型20の材料は、ガラス質を含むことが好ましく、この場合、高温における強度維持の観点から、下型20全体の3〜20質量%含まれていることが好ましい。
下型20は、上記材料の粉体を焼結して作製することができるが、例えば冷間等方圧プレスによって成形した後に脱脂、焼結して作製されたものであってもよい。焼結は、常圧焼成でも良いが、ガス圧焼成や、焼結後に熱間等方圧加圧法(HIP)を行うことにより押し固めることが好ましい。
下型20の材料は、β型の結晶構造を持つ窒化ケイ素を、好ましくは80質量%以上、より好ましくは100質量%含む。このような材料で下型20が構成されることにより、下型20の破壊靭性、耐酸化性、強度が向上する。下型20の材料は、上記範囲において、β型の結晶構造以外の結晶構造を持つ窒化ケイ素として、α型の結晶構造を持つ窒化ケイ素を含んでいてもよい。なお、熱膨張係数は、一般に、下型に用いられる材料の種類、結晶構造、及び、その焼成の仕方によって変化する。例えば、下型の材料が、α型の結晶構造を持つ窒化ケイ素を多く含んでいると(下型全体の例えば10質量%以上)、熱膨張係数の値が大きくなる傾向がある。この点で、下型20の材料は、α型の結晶構造を含まない、β型の結晶構造の窒化ケイ素からなることが好ましい。
下型20のプレス面21を構成する元素中の酸素濃度は、(15atomic%)以上であることが好ましい。具体的に、下型20のプレス面21の少なくとも中央部には、金属窒化物が酸化処理された酸化膜が配置されていることが好ましい。プレス面21の中央部とは、プレス面21の中心から輪郭線までの距離のうち、中心から30%〜中心から45%までの距離の領域をいう。下型20の輪郭線が真円でない場合、下型20の中心は、下型20の輪郭線に外接する最小の外接円の中心である。なお、外周部は、中心部を除くプレス面21の領域をいう。下型20のプレス面21の中央部に、酸化膜が配置され、酸素濃度が高くなっていることで、溶融ガラスが下型20に融着し難くなる。この理由は、下型20の酸化処理によりプレス面21に酸化皮膜が形成されるため、溶融ガラスが酸化皮膜と融着しても、ガラスブランクを下型20から取り外すときに酸化皮膜が下型20から剥離し、酸化皮膜と融着したガラスがプレス面21に残存しないためであると考えられる。一方、プレス成形後の下型20は、溶融ガラスにより加熱されることで新たに酸化皮膜が形成されるため、プレス面21における金属酸化物の領域の割合が一定に維持される。このように、ガラスの下型20への融着を抑制することで、下型20の寿命が伸び、生産コストを低減することができる。このような酸化膜は、プレス成形処理に用いる前に、あらかじめ、下型20に対し、プレス面21を構成する金属窒化物の一部を酸化して金属酸化物にする酸化処理を行っておくことで形成される。酸化処理は、例えば、金属窒化物を下型20の形状に成形した後、酸素を含む雰囲気中で1000〜1200℃で10〜12時間加熱することにより、表面の金属窒化物の酸化処理を行うことができる。
下型20の上面は、平坦度が10μm以下であり、算術平均粗さRaが0.5〜5μmであることが好ましい。このような上面を備える下型20を用いてプレス成形処理を行うことにより、表面性状が良好なガラスブランクを成形することができる。このため、研削処理又は研磨処理での取り代が少なく、生産性が向上する。また、下型20は、耐久性が高く、長寿命である場合は、プレス成形の精度を長期にわたって維持することができる。平坦度は、平坦度測定機を用いて測定することができる。また、本明細書でいう算術平均粗さRaは、JIS B0601:2001に準拠して、スタイラス(触針)を用いた触針式粗さ計(接触式粗さ測定機)により測定したものである。平坦度及び算術平均粗さRaが上記範囲にある下型20の上面は、研削およびブラスト処理により得ることができる。なお、下型20の上面の平坦度は、5μm以下であることが好ましい。下型20の上面の算術表面粗さRaは、2μm以下であることがより好ましい。なお、上記の酸化処理および必要に応じて粗面化処理、除去処理を行った後も、下型20の上面の算術表面粗さRaは、5μm以下となっていることが好ましく、2μm以下となっていることがより好ましい。
下型20の厚みは、20〜40mmであることが好ましい。下型20は、プレス機下部12の上部に固定されているため、下型20が溶融ガラスから受けた熱は、下型20の厚み方向に移動しやすい反面、下型20の上面と下面との間で温度差が生じやすく、熱膨張量の差が大きくなりやすい。しかし、下型20の厚みが、20mm以上あることで、強度が確保され、ひび割れの発生を抑制する効果が向上している。さらに、下型20の厚みを大きく取ることで下型20の熱容量が増している。下型20のより好ましい厚みは、25〜30mmである。
下型20の形状は、円板形状であることが好ましい。下型20の直径は、ガラスブランクの目標サイズに応じて定められ、成形されるガラスブランクの半径サイズに対して110〜130%の半径を有する円板形状であることが好ましい。この場合、下型20の厚みに対する直径の比は、下型20のひび割れを抑制する観点から、2〜10倍、好ましくは4〜8倍であることが好ましい。ガラスブランクのプレス成形処理では、光学ガラス等のプレス成形処理と比べ、プレス面21の径が大きい下型20が用いられ、このような下型20は、プレス面21の中心部と外周部との間の熱膨張量の差が大きく、ひび割れが発生しやすい。また、ひび割れによって生じたプレス面21の凹凸が下型20の面方向に沿って移動することで、ガラスブランクの表面性状を悪化させやすい。しかし、下型20の厚みに対する直径の比が上記範囲にあることで、プレス面21のひび割れを抑制する効果が向上することが見出された。
本実施形態の下型20によれば、熱膨張係数が上記範囲を満たす材料から構成されていることで、プレス成形処理に伴うひび割れが抑制されているので、表面性状が良好なガラスブランクを精度良く成形することができる。下型20が、さらに、熱伝導率が上記範囲を満たす材料から構成されている場合は、脱粒に起因した、下型20のプレス面に経時的に凹凸が発生することが抑制されることで、成形されるガラスブランクの表面性状および平坦度が好適に維持される。
(実施例、比較例)
表1及び2に示す実施例及び比較例の下型を用いて、上記実施形態のプレス成形処理を行い、下型のプレス面の性状を調べた。
プレス成形処理では、溶融状態のアルミノシリケートガラスを、成形型の温度をガラス転移点以下に調整して成形を行い、この成形を連続して繰り返し、下型の状態を適宜確認した。ガラスブランクとして、直径75mm、板厚9mmのサイズのものを作製した。下型の形態は、厚み25mm、プレス面の径90mmとした。また、プレス面の平坦度は10μm、算術表面粗さRaは1μmであった。上型にはタングステン合金製のものを用いた。
表1及び2に示す下型の熱膨張係数、熱伝導率、破壊靭性値、電気抵抗率は、上記実施形態で説明した要領で測定した。尚、熱膨張係数は、350〜1000℃を含む温度範囲を10℃刻みで測定した熱膨張係数の値のうちの最大値とした。ここで、図3に、実施例及び比較例を代表して、実施例7及び比較例3で用いた下型の熱膨張係数と温度との関係を表すグラフを示す。図3に示すグラフは、各測定値のプロットを回帰させて得られる回帰式を近似式として表した曲線である。なお、図3の横軸には、上記10℃刻みの測定範囲のうちの一部の範囲が示されている。熱伝導率は、表1及び2において、350℃及び1000℃における値を端点とする範囲で表した。
表1及び2において、「型材料の組成」は、主成分となる化合物を示す。なお、実施例1〜9及び比較例1〜3の型材料は、いずれも、主成分の金属化合物と、下型全体の3〜10質量%の焼結助剤と、を用いて焼成したものである。また、比較例3の型材料は、焼結後の結晶構造が、α型窒化ケイ素とβ型窒化ケイ素とからなり、α型窒化ケイ素が15質量%の割合で含有されていた。
プレス成形処理装置の連続運転により10日間成形を繰り返し、5日経過した状態で下型のプレス面のひび割れ、凹み、平坦度、及び算術表面粗さRaを、下記の要領で測定した。尚、5日経過前に明らかなひび割れ又は凹みが下型に生じた場合にはその時点で成形を終了し、各項目についての評価を行った。
ひび割れは、目視及びレーザ顕微鏡を用いて、下型のプレス面において視認可能なサイズのひび割れの有無を確認した。ひび割れが検出された場合を「不良」とし、ひび割れが検出されなかった場合を「良好」とした。
凹みは、レーザ変位計を用いて、プレス面の凹凸を測定し、基準高さからの最大凹み深さが10μm以上である凹みとなる脱粒が生じている場合を「不良」とし、基準高さからの最大凹み深さが5μm以上、10μm未満である場合を「可」とし、特に、5μm未満である場合を「良好」とした。基準高さは、下型の外周側の縁のプレス面における厚み方向の位置とした。
平坦度及び算術表面粗さRaは、上記実施形態で説明した要領で測定した。その結果、平坦度が15μmを超える場合を「不良」、10μm以下である場合を「可」、特に、4μm以下である場合を「良好」とした。また、算術表面粗さRaをプレス面の半径方向に沿って、等間隔に5箇所で測定し、その平均値からの偏差を計算し、最大偏差が1μmを超える場合を「不良」、1μm以下である場合を「可」、特に、0.3μm以下である場合を「良好」とした。
尚、プレス成形処理装置の連続運転により10日間成形を繰り返した後、ひび割れ、凹み、平坦度、及び算術表面粗さRaを再度測定し、上記評価基準で「不良」に該当する特性がなかった場合を、耐久性が良いと評価し(表中、「〇」で表す)、1つ以上「不良」に該当する特性があった場合を、耐久性が良くないと評価した(表中、「×」で表す)。
結果を、表1及び表2に示す。
Figure 2018172251
Figure 2018172251
実施例1〜9と比較例1〜3の比較から、下型が、350〜1000℃の温度範囲内において熱膨張係数が1.0〜6.0×10-6/℃である材料で構成されていることによって、プレス面のひび割れ及び脱粒による凹みを抑制できていることがわかる。また、プレス面の平坦度及び表面粗さRaの悪化を抑制でき、プレス面の中心部と外周部とで均一に維持できることがわかる。なお、成形されたガラスブランクに関して、下型20と同様に測定した平坦度及び表面粗さRaも、下側主表面において均一に維持されていた。
また、実施例3、4、6〜9から、下型が、さらに、高温条件下(350〜1000℃)における熱伝導率が10〜80W/m・Kの範囲内となる材料で構成されていることによって、耐久性が高く、量産工程等における長期間の連続成形において、脱粒による凹み、プレス面のひび割れに起因した破損が抑制される効果が高いことがわかる。なお、実施例4の凹みが、実施例1と比べ良好であった理由の1つとして、実施例4の材料の破壊靭性値の高さが大きく寄与したことが考えられる。
実施例3、4、6〜9と実施例1、2の比較から、下型の材料が窒化ケイ素を含む材料であり、350〜1000℃の温度範囲内における熱伝導率が10〜80W/m・Kであり、破壊靭性値が4MPa・m1/2以上であることで、耐久性が良くなることがわかる。
また、実施例3、4、6〜9と実施例5との比較から、下型の350〜1000℃の温度範囲内における熱伝導率が10〜80W/m・Kであり、熱膨張係数が800〜1000℃の温度範囲において3.0〜5.5×10-6/℃であることで、耐久性が良くなることがわかる。
以上、本発明のプレス成形処理用型、ガラスブランクの製造方法、および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
例えば、本発明のプレス成形処理用型は、磁気ディスク用ガラス基板にされるガラスブランク以外のガラスブランクを成形するためのプレス成形処理にも使用できる。
11 ターンテーブル
12 プレス機下部
13 プレス機上部
14 回転軸
15 流出ノズル
16 溶融ガラス
17 溶融ガラス塊
18 ガラスブランク
20 下型
21 プレス面
30 上型

Claims (9)

  1. 溶融ガラスが載置され、前記溶融ガラスを第1の型との間に挟み込んでガラスブランクを成形する第2の型を構成するプレス成形処理用型であって、
    前記プレス成形処理用型は、350〜1000℃の温度範囲において熱膨張係数が1.0〜6.0×10-6/℃である、ことを特徴とするプレス成形処理用型。
  2. 前記プレス成形処理用型は、350〜1000℃の温度範囲において熱伝導率が10〜80W/m・Kである、請求項1に記載のプレス成形処理用型。
  3. 前記溶融ガラスが載置される前記プレス成形処理用型の表面は、平坦度が10μm以下であり、算術平均粗さRaが0.5〜5μmである、請求項1又は2に記載のプレス成形処理用型。
  4. 前記プレス成形処理用型の破壊靭性値は、4MPa・m1/2以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載のプレス成形処理用型。
  5. 前記プレス成形処理用型の電気抵抗率は、1.0×10Ω・cm以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載のプレス成形処理用型。
  6. 前記プレス成形処理用型は、β型の結晶構造を持つ窒化ケイ素を前記プレス成形処理用型全体の80質量%以上含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のプレス成形処理用型。
  7. 前記プレス成形処理用型を構成する材料は、金属窒化物を主成分として含み、
    前記第1の型と向かい合う前記プレス成形処理用型の面の少なくとも中央部の領域には、前記金属窒化物が酸化処理された酸化膜が配置されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のプレス成形処理用型。
  8. 磁気ディスク用ガラス基板を製造するためのガラスブランクの製造方法であって、
    溶融ガラスを、第1の型と、前記溶融ガラスが載置された第2の型との間に挟み込んでガラスブランクを成形するプレス成形処理を備え、
    前記第2の型は、350〜1000℃の温度範囲において熱膨張係数が1.0〜6×10-6/℃である、ことを特徴とするガラスブランクの製造方法。
  9. 請求項8に記載のガラスブランクの製造方法により製造されたガラスブランクの主表面を少なくとも研磨することにより、前記主表面を算術平均粗さRaが0.2nm以下の鏡面とする研磨処理を有する、ことを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
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