JP2018171343A - パター用ゴルフシャフト - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1は、ボールへの順回転(転がり方向への回転、トップスピン)を付与するために、シャフトのしなり方に着目した技術に関するものである。通常、パターで打ち出されたボールは、地面から僅かに浮いた状態、且つ、逆回転(転がりと逆方向の回転、バックスピン)で打ち出される。その後、ボールが地面に着地した地点からは、芝との摩擦によって徐々に逆回転を減らしながら芝の上を滑るように進み、やがて回転のない局面を向かえ、順回転の局面に入ることで転がりが生じる。そして、上記のようにボールの回転の局面が変化する過程において、ランダムな芝の影響によって方向性が失われていく。特許文献1に記載された従来の技術によれば、ボールに対して最初から順回転を不要するため、(あるいは逆回転の量が少ないため)、ボールの方向性、即ちライン精度に優れたパター用ゴルフシャフトを提供できるとされている。
特許文献2に記載の技術によれば、繊維強化樹脂層として、弾性率の高いピッチ系の炭素繊維を使用することで、プレイヤーの手に伝わる感触が従来とは異なるパター用ゴルフシャフトを提供できるとされている。
即ち、本発明は、以下の態様を包含する。
120≦W≦160 ・・・・・(1)
70≦F≦120 ・・・・・(2)
[2] 前記パター用ゴルフシャフトの長手軸方向におけるバランスポイントが、前記細径端部から55%以内の位置である、上記[1]に記載のパター用ゴルフシャフト。
[3] 前記繊維強化樹脂層として、前記パター用ゴルフシャフトの長手軸方向に対する強化繊維の配向方向が−10°〜+10°とされた繊維強化樹脂からなる剛性調整層を備え、且つ、該剛性調整層の全質量のうちの2/3以上が、強化繊維の引張弾性率が150GPa以下の繊維強化樹脂からなる、上記[1]又は[2]に記載のパター用ゴルフシャフト。
[4] さらに、前記繊維強化樹脂層として、前記剛性調整層よりも内層側に、前記パター用ゴルフシャフトの長手軸方向に対する強化繊維の配向方向が±15°〜±75°とされた繊維強化樹脂からなるバイアス層を備え、且つ、前記パター用ゴルフシャフトの全質量に対する前記バイアス層の質量比率が50%以上である、上記[1]〜[3]の何れか一項に記載のパター用ゴルフシャフト。
[5] さらに、前記繊維強化樹脂層として、前記剛性調整層よりも内層側に、前記パター用ゴルフシャフトの長手軸方向に対する強化繊維の配向方向が±15°〜±90°とされた繊維強化樹脂からなり、且つ、前記長手軸方向において前記太径端部近傍及び前記細径端部近傍を含まない位置に配置される質量・外径調整層を備え、前記細径端部における内径が3.0mm以上であるとともに外径が10.0mm以下であり、且つ、前記太径端部における内径が10.0mm以上であるとともに外径が16.0mm以下である中空状として形成されてなる、上記[3]又は[4]に記載のパター用ゴルフシャフト。
本発明に係るパター用ゴルフシャフトは、複数の繊維強化樹脂層からなり、全長Lを915mmとしたときの前記パター用ゴルフシャフトの換算質量をW(g)とし、パター用ゴルフシャフトの細径端部側から760mmの位置Aを下側から支持し、さらに、位置Aから太径端部側に150mmの位置Bを上側から支持し、細径端部側から10mmの位置に3.0kgfの荷重を加えて細径端部側の変位量を測定する、片持ち曲げ試験による変位量を剛性F(mm)とした場合に、下記式(1)及び式(2)を満たすものである。
120≦W≦160 ・・・・・(1)
70≦F≦120 ・・・・・(2)
本発明において、複数の繊維強化樹脂層(図1中の符号2参照)の各々に使用される繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、又はスチール繊維等が挙げられる。特に、ポリアクリロニトリル系の炭素繊維は、機械的特性に優れた繊維強化プラスチック層を構成できることから、最も好適である。なお、繊維強化樹脂層に用いられる強化繊維としては、単一種類のものを使用してもよいし、あるいは、2種類以上のものを併用してもよい。
本発明に係るパター用ゴルフシャフトにおいては、最内層として設けられる繊維強化樹脂層として、パター用ゴルフシャフトの長手軸方向に対する強化繊維の配向方向が±15°〜±75°とされた繊維強化樹脂からなるバイアス層21が設けられていることが好ましい。即ち、バイアス層21は、パター用ゴルフシャフトの長手軸方向に対する配向角度が+15°〜+75°で配向した強化繊維と、−15°〜−75°で配向した強化繊維とを含有する。通常、バイアス層21における正の配向角度及び負の配向角度の絶対値は同一である。バイアス層21における強化繊維の配向角度が小さすぎると、パター用ゴルフシャフトの曲げ剛性は高められるものの、ねじり剛性が小さくなり過ぎてしまう。一方、バイアス層21における強化繊維の配向角度が大きすぎると、シャフトの潰し剛性は高められるものの、ねじり剛性が小さくなり過ぎてしまう。
本発明に係るパター用ゴルフシャフトは、図1の模式図中に示すように、繊維強化樹脂層2として、パター用ゴルフシャフトの長手軸方向に対する強化繊維の配向方向が−10°〜+10°とされた繊維強化樹脂からなる剛性調整層24を備えることが好ましい。図1中に例示した剛性調整層24は、パター用ゴルフシャフトの最外層として配置されている。また、剛性調整層24は、パター用ゴルフシャフトの長手軸方向で、概ね全体にわたるように設けられることが好ましい。
また、剛性調整層24の弾性率は、100GPa以下がより好ましく、50GPa以下がさらに好ましい。
本発明に係るパター用ゴルフシャフトは、繊維強化樹脂層2として、さらに、剛性調整層24よりも内層側に、パター用ゴルフシャフトの長手軸方向に対する強化繊維の配向方向が±15°〜±90°とされた繊維強化樹脂からなり、且つ、長手軸方向において太径端部12近傍及び細径端部11近傍を含まない位置に配置される質量・外径調整層22を備えることが好ましい。図1の模式図に示す例では、質量・外径調整層22は、マンドレル1の長手軸方向に沿った方向において中間部にのみ配置されている。
また、グリップ部分となる太径端部は、通常、15.0〜16.0mmである。これは、プレイヤーによる握りやすさを確保する観点から決定されたものである。
本発明に係るパター用ゴルフシャフトにおいては、上記のバイアス層、質量・外径調整層、剛性調整層等に加えて、さらに、その他の機能を有する繊維強化樹脂層を積層した構成としてもよい。このような、その他の繊維強化樹脂層としても、上述したような繊維強化樹脂を何ら制限無く用いることができる。
上記のような複数の繊維強化樹脂層には、各条件を満たすものであれば、如何なる樹脂であっても使用することができ、例えば、後述の実施例に示すようなカーボンプリプレグ(三菱レイヨン株式会社製)を使用することができる。
上述したように、本発明に係るパター用ゴルフシャフトは、全長Lを915mmとしたときの換算質量W(g)が、次式{120≦W≦150}(式(1))を満たすものである。
上述したように、本発明に係るパター用ゴルフシャフトは、剛性F(mm)が、次式{70≦F≦120}(式(2))を満たすものである。
本発明に係るパター用ゴルフシャフトにおいては、長手軸方向におけるバランスポイントが、細径端部11から55%以内の位置であることが好ましい。バランスポイントが細径端部11から55%以内の位置であれば、パター用ゴルフシャフトとしての優れた安定性が得られる。バランスポイントが上記の範囲外である場合、即ち、バランスポイントが太径端部12寄りの位置であると、上述したように、パターのスイング感としては軽いものとなり、安定しない。
また、本発明に係るパター用ゴルフシャフトのバランスポイントは、上述したような、パター用ゴルフシャフトの長手軸方向における質量・外径調整層22の位置や大きさを調整することで最適化できる。
以上説明したように、本発明に係るパター用ゴルフシャフトによれば、全長Lに基づく換算質量W、及び剛性Fの範囲を最適化することにより、右利きのプレイヤーから見て、打球方向を右側に打ち出し易くなる。これにより、左側に打球を外しやすい癖を有するプレイヤーがパッティングを行った場合に、打球方向が概略で真っ直ぐな方向に矯正される。従って、特に、左側に打球を外しやすいプレイヤーにとって好適なものである。
以上、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述したが、本実施形態で説明する各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
[パター用ゴルフシャフトの作製]
実施例1においては、まず、下記表1に示したような、繊維強化樹脂からなるプリプレグ(カーボンプリプレグ:三菱レイヨン株式会社製)を準備した。
また、マンドレルとして、先端の外径が3.3mm、先端から長手軸方向で150mmの位置まではテーパ無し、150mmの位置から後端までは9/1000のテーパで漸次拡径し、後端の外径が10.36mmとされたものを準備した。
上記条件及び手順により、下記表2に示すような仕様とされた実施例1のパター用ゴルフシャフトを得た。
得られた実施例1のパター用ゴルフシャフトは、先端となる細径端部の外径が9.1mm、後端となる太径端部の外径が15.5mmであった。
次に、本実施例において実施した、パター用ゴルフシャフトのサンプルを用いた評価試験について説明する。
本実施例においては、後述の各実施例及び比較例も含めて、パター用ゴルフシャフトの全長Lを915mmに統一して作製しているため、換算質量Wについては、各サンプルの質量を単純測定したうえで、結果を下記表2中に示した。
図2に示すように、パター用ゴルフシャフトの細径端部11から760mmの位置Aを下側から支持し、さらに、位置Aから太径端部12側に150mmの位置Bを上側から支持した状態で、細径端部11から10mmの位置Cに3.0kgfの荷重を加えたときの、細径端部11における変位量を測定し、これを剛性Fとして下記表2中に示した。
以下に、本実施例において実施した、パター用ゴルフシャフトのサンプルを用いたパッティングの評価について説明する。
本評価試験においては、まず、細径端部にパターヘッドが取り付けられたパター用ゴルフシャフトのサンプルを用いて、被検者10名(右利き)による試打実験(各5球)を行った。この実験は室内で行い、7m先のカップをめがけて打つという条件とし、結果を「左右ズレ(mm)」として下記表1中に示した。
まず、得られたパター用ゴルフシャフトを輪ゴムに通し、長手軸方向の一点を支持した状態において、パター用ゴルフシャフトが水平状態を保つことが可能な支持点を割り出し、この位置と細径端部11との間の距離を測定し、全長との比率で示したものをバランスポイントとし、結果を下記表2に示した。
また、下記表2に、本実施例で作製したパター用ゴルフシャフトの各サンプルの仕様及び評価結果の一覧を示す。なお、下記表2において、全長L、換算質量W、剛性F及びバランスポイントははn=1、左右ズレはn=10の平均値である。
実施例2においては、実施例1の剛性調整層24に用いるプリプレグを、表1中に示した以下のものに変更した点を除き、実施例1と同様にパター用ゴルフシャフトを作製して、同様に評価した。
・プリプレグZ:7ply
・プリプレグC:2ply
実施例3においては、実施例1の剛性調整層24に用いるプリプレグを、表1中に示した以下のものに変更した点を除き、実施例1と同様にパター用ゴルフシャフトを作製して、同様に評価した。
・プリプレグZ:8ply
・プリプレグC:1ply
実施例4においては、実施例1の剛性調整層24に用いるプリプレグを、表1中に示した以下のものに変更した点を除き、実施例1と同様にパター用ゴルフシャフトを作製して、同様に評価した。
・プリプレグZ:9ply
・プリプレグC:0ply(実施例1では使用したが実施例4では不使用)
実施例5においては、実施例4のバイアス層21及び剛性調整層24に用いるプリプレグを、表1中に示した以下のものに変更した点を除き、実施例4と同様にパター用ゴルフシャフトを作製して、同様に評価した。
・バイアス層21;プリプレグC:10ply
・剛性調整層24;プリプレグZ:7ply
実施例6においては、実施例5の剛性調整層24に用いるプリプレグを、表1中に示した以下のものに変更した点を除き、実施例5と同様にパター用ゴルフシャフトを作製して、同様に評価した。
・剛性調整層24;プリプレグZ:(7plyのうちの4plyを配向角度±45°のものに変更)
実施例7においては、実施例4の重量・外径調整層22に用いるプリプレグを、表1中に示した以下のものに変更した点を除き、実施例4と同様にパター用ゴルフシャフトを作製して、同様に評価した。
・プリプレグC:4ply
比較例1〜11においては、換算質量W及び剛性Fが表2中に示した値となるように、剛性調整層又はバイアス層に用いるプリプレグを、表1中に記載の各プリプレグの中から適宜選択して調整した点を除き、実施例1と同様にパター用ゴルフシャフトを作製して、同様に評価した。
表2に示すように、全長Lを915mmとしたときの換算質量W(g)、剛性F(mm)の何れもが本発明で規定する範囲とされた実施例1〜7のパター用ゴルフシャフトは、左右ズレが+2〜+13mmの範囲であり、比較例1に対して、右側の方向に2〜13mmの範囲でずれる結果となった。
比較例1は、上述したように、被験者によるパッティングの評価の基準として設定した例であり、剛性Fが本発明で規定する下限未満の例である。
比較例2は、換算質量Wが本発明で規定する下限未満の例であるが、この比較例2は、左右ズレが+2mmであった。このように、比較例2においては、被験者10名の平均値では、左右ズレが+2mmと右側にずれる結果となったものの、バラつきが非常に大きく、この平均値は信頼できるものではなかった。
比較例4は、剛性Fが本発明で規定する上限を超えている例であるが、この比較例4は、左右ズレが+27mmと右側に大きくずれる結果となった。
比較例6〜11は、剛性Fが本発明で規定する下限未満の例であるが、これら比較例6〜11は、左右ズレが−1〜−15と左側にずれる結果となり、何れも、打球が左側に外れやすい癖を有するプレイヤーにとって有効とは言い難いものであった。これは、剛性Fの値が小さいことから、パター用ゴルフシャフトが硬過ぎるものとなり、しなりが全く得られず、被験者にとって良好なフィーリングが得られにくかったためと考えられる。
2…繊維強化樹脂層、
21…バイアス層、
22…質量・外径調整層、
24…剛性調整層、
10…パター用ゴルフシャフト、
11…細径端部、
12…太径端部。
Claims (5)
- 複数の繊維強化樹脂層からなるパター用ゴルフシャフトであって、
全長Lを915mmとしたときの前記パター用ゴルフシャフトの換算質量をW(g)とし、
前記パター用ゴルフシャフトの細径端部側から760mmの位置Aを下側から支持し、
さらに、前記位置Aから太径端部側に150mmの位置Bを上側から支持し、
細径端部側から10mmの位置に3.0kgfの荷重を加えて前記細径端部側の変位量を測定する、片持ち曲げ試験による変位量を剛性F(mm)とした場合に、
下記式(1)及び式(2)を満たすパター用ゴルフシャフト。
120≦W≦160 ・・・・・(1)
70≦F≦120 ・・・・・(2) - 前記パター用ゴルフシャフトの長手軸方向におけるバランスポイントが、前記細径端部から55%以内の位置である、請求項1に記載のパター用ゴルフシャフト。
- 前記繊維強化樹脂層として、前記パター用ゴルフシャフトの長手軸方向に対する強化繊維の配向方向が−10°〜+10°とされた繊維強化樹脂からなる剛性調整層を備え、且つ、該剛性調整層の全質量のうちの2/3以上が、強化繊維の引張弾性率が150GPa以下の繊維強化樹脂からなる、請求項1又は請求項2に記載のパター用ゴルフシャフト。
- さらに、前記繊維強化樹脂層として、前記剛性調整層よりも内層側に、前記パター用ゴルフシャフトの長手軸方向に対する強化繊維の配向方向が±15°〜±75°とされた繊維強化樹脂からなるバイアス層を備え、且つ、前記パター用ゴルフシャフトの全質量に対する前記バイアス層の質量比率が50%以上である、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のパター用ゴルフシャフト。
- さらに、前記繊維強化樹脂層として、前記剛性調整層よりも内層側に、前記パター用ゴルフシャフトの長手軸方向に対する強化繊維の配向方向が±15°〜±90°とされた繊維強化樹脂からなり、且つ、前記長手軸方向において前記太径端部近傍及び前記細径端部近傍を含まない位置に配置される質量・外径調整層を備え、
前記細径端部における内径が3.0mm以上であるとともに外径が10.0mm以下であり、且つ、前記太径端部における内径が10.0mm以上であるとともに外径が16.0mm以下である中空状として形成されてなる、請求項3又は請求項4に記載のパター用ゴルフシャフト。
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