JP2018168027A - ガラス基板製造装置、及びガラス基板の製造方法 - Google Patents

ガラス基板製造装置、及びガラス基板の製造方法 Download PDF

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佑紀 服部
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【課題】熔融ガラス内への異物の溶け出しを抑制しつつ、清澄管内の熔融ガラスを均一に撹拌する。【解決手段】ガラス基板製造装置は、1300℃以上の温度に加熱された熔融ガラスを流しながら清澄を行い、電流が供給されることで加熱される清澄管と、前記熔融ガラスの流れを部分的に妨げるように前記清澄管内に配置され、前記熔融ガラスを撹拌して前記清澄を促進する、白金族金属からなる板部材と、を備える。前記板部材は、前記熔融ガラスの流れ方向と交差するように延在する一対の主表面と、前記主表面の間を延びる側面と、を有している前記熔融ガラスと接触する前記側面の部分は、前記主表面から遠ざかるように湾曲した凸曲面で構成される。【選択図】図5

Description

本発明は、ガラス基板製造装置、及びガラス基板の製造方法に関する。
ガラス基板は、一般的に、ガラス原料から熔融ガラスを生成させた後、熔融ガラスをガラス基板へと成形する工程を経て製造される。上記の工程中には、熔融ガラスが内包する微小な気泡を除去する工程(以下、清澄ともいう)が含まれる。清澄は、清澄管の本体を加熱しながら、この清澄管本体に清澄剤を配合させた熔融ガラスを通過させ、清澄剤の酸化還元反応により熔融ガラス中の泡が取り除かれることで行われる。より具体的には、粗熔解した熔融ガラスの温度をさらに上げて清澄剤を機能させ泡を浮上脱泡させた後、温度を下げることにより、脱泡しきれずに残った比較的小さな泡は熔融ガラスに吸収させるようにしている。すなわち、清澄は、泡を浮上脱泡させる処理(以下、脱泡処理または脱泡工程ともいう)および小泡を熔融ガラスへ吸収させる処理(以下、吸収処理または吸収工程ともいう)を含む。
成形前の高温の熔融ガラスに接する部材の内壁は、その部材に接する熔融ガラスの温度、要求されるガラス基板の品質等に応じ、適切な材料により構成する必要がある。たとえば、上述の清澄管本体を構成する材料は、通常、白金族金属の単体又は合金が用いられていることが知られている(特許文献1)。白金族金属は、融点が高く、熔融ガラスに対する耐食性にも優れている。
特開2010−111533号公報
清澄工程においては、白金族金属の単体又は合金からなる清澄管に通電することによって清澄管が加熱されることで清澄管を通過する熔融ガラスが加熱される(通電加熱)。このとき、清澄管の中心付近を通過する熔融ガラスの温度は、清澄管の内壁の近傍の熔融ガラスの温度よりも低くなる。また、清澄管を通過する熔融ガラスの速度は、壁面抵抗があるために、管路の中心付近のほうが清澄管の内壁の近傍よりも速くなる。このため、清澄管の中心付近を通過する熔融ガラスが充分に加熱されないまま清澄管を通過してしまい、清澄が不充分となってしまうおそれがある。
一方、清澄管の中心付近の熔融ガラスの温度を上げるために、清澄管の加熱量を増やすと、清澄管を構成する白金族金属の単体又は合金の酸化による揮発が促進される。揮発した金族酸化物が清澄管の局所的に温度が低下した位置で還元されると、還元された白金族金属が清澄管の内壁面に付着する。内壁面に付着した白金族金属は脱泡工程中の熔融ガラス中に落下して混入し、ガラス基板に異物として混入するおそれがある。
清澄管内の熔融ガラスの温度を均一にするために、熔融ガラスを撹拌する撹拌手段を清澄管内に設けることも考えられる。しかし、撹拌手段を用いて熔融ガラスを撹拌すると、熔融ガラスと接触する撹拌手段の部分が熔融ガラスに溶け出す場合がある。このような溶け出しが発生すると、後の工程において、溶け出した材料が熔融ガラス中に析出し、異物としてガラス基板内に残るおそれがある。
本発明は、熔融ガラス内への異物の溶け出しを抑制しつつ、清澄管内の熔融ガラスを均一に撹拌することができるガラス基板製造装置およびガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、下記(1)〜(5)を提供する。
(1)ガラス基板製造装置であって、
1300℃以上の温度に加熱された熔融ガラスを流しながら清澄を行い、電流が供給されることで加熱される清澄管と、
前記熔融ガラスの流れを部分的に妨げるように前記清澄管内に配置され、前記熔融ガラスを撹拌して前記清澄を促進する、白金族金属からなる板部材と、を備え、
前記板部材は、前記熔融ガラスの流れ方向と交差するように延在する一対の主表面と、前記主表面の間を延びる側面と、を有し、
前記熔融ガラスと接触する前記側面の部分は、前記主表面から遠ざかるように湾曲した凸曲面で構成される、ことを特徴とするガラス基板製造装置。
(2)前記主表面から最も遠ざかった前記側面上の位置は、前記主表面間の中心位置に対して、前記主表面のうちの一方の側にある、前記(1)に記載のガラス基板製造装置。
(3)前記清澄管には、前記熔融ガラスの液面の上方に気相空間が形成されるように前記熔融ガラスが供給され、
前記気相空間と接する前記側面の部分は、前記凸曲面を有していない、前記(1)または(2)に記載のガラス基板製造装置。
(4)前記清澄槽は、前記板部材を含む板部材群を備え、
前記板部材群は、前記熔融ガラスの流れ方向に互いに間隔をあけて、前記熔融ガラスの流れを部分的に妨げるように配置され、前記熔融ガラスを撹拌して前記清澄を促進する、白金族金属からなる複数の他の板部材をさらに含み、
前記板部材群に含まれる板部材のうち、前記凸曲面で構成された前記側面を有する板部材が、前記熔融ガラスが最高温度を示す前記流れ方向の位置に最も接近して配置されている、前記(1)から(3)のいずれか1つに記載のガラス基板製造装置。
(5)ガラス基板の製造方法であって、
ガラス原料を溶かして熔融ガラスを作る熔解工程と、
清澄管内で、1300℃以上の温度に加熱された熔融ガラスを流しながら清澄を行う清澄工程と、を備え、
前記清澄工程では、前記清澄管に電流を供給して前記清澄管を加熱し、
前記熔融ガラスの流れを部分的に妨げるように前記清澄管内に配置された板部材であって、前記熔融ガラスの流れ方向と交差するように延在する一対の主表面と、前記主表面の間を延びる側面と、を有する白金族金属からなる板部材を用いて、前記熔融ガラスを撹拌して前記清澄を促進し、
前記熔融ガラスと接触する前記側面の部分は、前記主表面から遠ざかるように湾曲した凸曲面で構成されている、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
上述の態様のガラス板の製造方法およびガラス板の製造装置によれば、熔融ガラス内への異物の溶け出しを抑制しつつ、清澄管内の熔融ガラスを均一に撹拌することができる。
本実施形態の製造方法のフローを示す図である。 ガラス基板製造装置の概略図である。 図2に示す清澄管の概略図である。 清澄管の長手方向における鉛直断面図である。 板部材の端部の板厚方向における鉛直断面図である。 図4の清澄管の変形例の長手方向における鉛直断面図である。 (a)は、図6の板部材の端部の板厚方向における鉛直断面図であり、(b)は、(a)の板部材の変形例の端部の板厚方向における鉛直断面図である。
以下、本発明のガラス基板の製造方法およびガラス基板製造装置について説明する。
(ガラス基板の製造方法の全体概要)
図1は、本実施形態のガラス基板の製造方法の工程の一例を示す図である。ガラス基板の製造方法は、熔解工程(ST1)、清澄工程(ST2)、均質化工程(ST3)、供給工程(ST4)、成形工程(ST5)、徐冷工程(ST6)、および、切断工程(ST7)を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有してもよい。製造されたガラス基板は、必要に応じて梱包工程で積層され、納入先の業者に搬送される。
熔解工程(ST1)では、ガラス原料を加熱することにより熔融ガラスを作る。
清澄工程(ST2)では、熔融ガラスが昇温されることにより、熔融ガラス中に含まれる酸素、CO2あるいはSO2を含んだ泡が発生する。この泡が熔融ガラス中に含まれる清澄剤(酸化スズ等)の還元反応により生じた酸素を吸収して成長し、熔融ガラスの液面に浮上して放出される。その後、清澄工程では、熔融ガラスの温度を低下させることにより、清澄剤の還元反応により得られた還元物質が酸化反応をする。これにより、熔融ガラスに残存する泡中の酸素等のガス成分が熔融ガラス中に再吸収されて、泡が消滅する。清澄剤による酸化反応及び還元反応は、熔融ガラスの温度を制御することにより行われる。
なお、清澄工程は、熔融ガラスに存在する泡を減圧雰囲気で成長させて脱泡させる減圧脱泡方式を用いることもできる。減圧脱泡方式は、清澄剤を用いない点で有効である。しかし、減圧脱泡方式は装置が複雑化及び大型化する。このため、清澄剤を用い、熔融ガラス温度を上昇させる清澄方法を採用することが好ましい。
均質化工程(ST3)では、スターラを用いて熔融ガラスを撹拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。これにより、脈理等の原因であるガラスの組成ムラを低減することができる。均質化工程は、後述する撹拌槽において行われる。
供給工程(ST4)では、撹拌された熔融ガラスが成形装置に供給される。
成形工程(ST5)及び徐冷工程(ST6)は、成形装置で行われる。
成形工程(ST5)では、熔融ガラスをシートガラスに成形し、シートガラスの流れを作る。成形には、オーバーフローダウンドロー法が用いられる。
徐冷工程(ST6)では、成形されて流れるシートガラスが所望の厚さになり、内部歪が生じないように、さらに、反りが生じないように冷却される。
切断工程(ST7)では、徐冷後のシートガラスを所定の長さに切断することで、板状のガラス基板を得る。切断されたガラス基板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス基板が作られる。
図2は、本実施形態における熔解工程(ST1)〜切断工程(ST8)を行うガラス基板製造装置の概略図である。ガラス基板製造装置は、図2に示すように、主に熔解装置100と、成形装置200と、切断装置300と、を有する。熔解装置100は、熔解槽101と、清澄管120と、撹拌槽103と、移送管104、105と、ガラス供給管106と、を有する。
図2に示す熔解槽101には、図示されないバーナー等の加熱手段が設けられている。熔解槽には清澄剤が添加されたガラス原料が投入され、熔解工程(ST1)が行われる。熔解槽101で熔融した熔融ガラスは、高温(例えば1300℃以上)に維持された状態で、移送管104を介して清澄管120に供給される。高温に維持された熔融ガラスを清澄管120に供給することで、熔融ガラスの粘度を低く保ち、清澄管120内を流れる熔融ガラスの流動性を高めることができる。
清澄管120では、熔融ガラスMGの温度を調整して、清澄剤の酸化還元反応を利用して熔融ガラスの清澄工程(ST2)が行われる。具体的には、清澄管120内の熔融ガラスが昇温されることにより、熔融ガラス中に含まれる酸素、CO2あるいはSO2を含んだ泡が、清澄剤の還元反応により生じた酸素を吸収して成長し、熔融ガラスの液面に浮上して気相空間に放出される。その後、熔融ガラスの温度を低下させることにより、清澄剤の還元反応により得られた還元物質が酸化反応をする。これにより、熔融ガラスに残存する泡中の酸素等のガス成分が熔融ガラス中に再吸収されて、泡が消滅する。清澄後の熔融ガラスは、移送管105を介して撹拌槽103に供給される。
撹拌槽103では、撹拌子103aによって熔融ガラスが撹拌されて均質化工程(ST3)が行われる。撹拌槽103で均質化された熔融ガラスは、ガラス供給管106を介して成形装置200に供給される(供給工程ST4)。
成形装置200では、オーバーフローダウンドロー法により、熔融ガラスからシートガラスSGが成形され(成形工程ST5)、徐冷される(徐冷工程ST6)。
切断装置300では、シートガラスSGから切り出された板状のガラス基板が形成される(切断工程ST7)。
(清澄管の構成)
次に、図3、図4を参照して、清澄管120の構成について説明する。図3は、本実施形態の清澄管120の構成を示す概略斜視図であり、図4は清澄管120の長手方向における鉛直断面図である。
図3、図4に示すように、清澄管120の長さ方向の両端の外周面には、電極121a、121bが設けられており、清澄管120の気相空間120a(図4参照)と接する壁には、排気管127が設けられている。
清澄管120の本体、電極121a、121bおよび排気管127は、白金族金属から構成されている。なお、本明細書において、「白金族金属」は、白金族元素からなる金属を意味し、単一の白金族元素からなる金属のみならず白金族元素の合金を含む用語として使用する。ここで、白金族元素とは、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)の6元素を指す。白金族金属は高価ではあるが、融点が高く、熔融ガラスに対する耐食性にも優れている。
なお、本実施形態では、清澄管120が白金族金属から構成されている場合を具体例として説明するが、清澄管120の一部が、耐火物や他の金属などから構成されていてもよい。
電極121a、121bは、電源装置122に接続されている。電極121a、121bの間に電圧が印加されることにより、電極121a、121bの間の清澄管120に電流が流れて、清澄管120が通電加熱される。この通電加熱により、清澄管120の本体の最高温度が例えば、1600℃〜1750℃、より好ましくは1630℃〜1750℃となるように加熱され、移送管104から供給された熔融ガラスの最高温度は、脱泡に適した温度、例えば、1600℃〜1720℃、より好ましくは1620℃〜1720℃に加熱される。
また、通電加熱によって熔融ガラスの温度を制御することで、熔融ガラスの粘度を調節し、これにより清澄管120を通過する熔融ガラスの流速を調節することができる。
また、電極121a、121bには、図示しない温度計測装置(熱電対等)が設けられていてもよい。温度計測装置は電極121a、121bの温度を計測し、計測した結果を、制御装置123に出力する。
制御装置123は電源装置122が清澄管120に通電させる電流量を制御し、これにより清澄管120を通過する熔融ガラスの温度および流速を制御する。制御装置123は、CPU、メモリ等を含むコンピュータである。
清澄管120の気相空間と接する壁には、排気管127が設けられている。排気管127は気相空間120aの上部に設けられている。排気管127は、清澄管120における熔融ガラスの流れ方向の上流側端部と下流側端部の間の位置に設けられていることが好ましい。排気管127は、清澄管120の本体外壁面から外側に向かって煙突状に突出する形状であってもよい。排気管127は、気相空間120a(図4参照)と、清澄管120の外部空間とを連通している。排気管127から気相空間120a内の気体を排出することで、清澄管120内の熔融ガラスから放出される酸素を排出することができる。これにより、白金族金属が酸化されて揮発することを抑制し、揮発した白金族金属が還元されることによる白金族金属の析出量を低減することができる。
本実施形態では、図4に示すように、清澄管120が略水平方向に延在するように配置されている。清澄管120の内部には、複数の板部材124、125、126からなる板部材群が設けられている。板部材群は、複数の第1板部材124からなる第1板部材群、複数の第2板部材125からなる第2板部材群、複数の第3板部材126からなる第3板部材群を含む。第1板部材124、第2板部材125、第3板部材126は、清澄管120の本体と同様に、白金族金属から構成されている。
複数の第1板部材124は、清澄管120の内壁の最下部および最上部と間隔を空けた第1の高さに設けられている。複数の第1板部材124は、清澄管120の長さ方向に間隔を空けて配置される。第1板部材124は、清澄管120の中心付近を清澄管120の長さ方向に流れる熔融ガラスの流れを妨げ、第1板部材124よりも上側と第1板部材124よりも下側に分岐させる。
複数の第2板部材125は、第1板部材124の高さ(第1の高さ)よりも高くかつ清澄管120の内壁の最上部と間隔を空けた第2の高さに設けられている。複数の第2板部材125は、清澄管120の長さ方向に、複数の第1板部材124と間隔を空けて交互に配置される。第2板部材125は、清澄管120内の熔融ガラスの界面付近を清澄管120の長さ方向に流れる熔融ガラスの流れを妨げ、熔融ガラスの流れを第2板部材125よりも下側(清澄管の中心付近)に向かわせる。
複数の第3板部材126は、第1板部材124の高さ(第1の高さ)よりも低い第3の高さに、清澄管120の内壁の最下部と間隔を空けずに設けられている。複数の第3板部材126は、清澄管120の長さ方向に、複数の第1板部材124と間隔を空けて交互に配置される。第3板部材126は、清澄管120内の熔融ガラスの最下部を清澄管120の長さ方向に流れる熔融ガラスの流れを妨げ、熔融ガラスの流れを第3板部材126よりも上側(清澄管の中心付近)に向かわせる。
このように、第1板部材124、第2板部材125、第3板部材126が設けられることで、清澄管120内の熔融ガラスが清澄管120の長さ方向に流れるのみでなく、熔融ガラスが上下方向にも移動するように流れが変更されるため、清澄管120内で熔融ガラスが均一に撹拌され、熔融ガラスの温度を均一にすることができる。
なお、図4に示すように、第2板部材125と第3板部材126とは、清澄管120の長さ方向の同じ位置にあってもよい。すなわち、第2板部材125の下方に第3板部材126を設けてもよい。
ここで、第1板部材124の位置において、第1板部材124の上側を流れる熔融ガラスの流量を前記第1板部材の上側の流路断面積で除した流速とが、第1板部材124の下側を流れる熔融ガラスの流量を第1板部材124の下側の流路断面積で除した流速とが等しくなるように、清澄管120を流れる熔融ガラスの流量および流速を制御することが好ましい。第1板部材124の上側を流れる熔融ガラスの流速と第1板部材124の下側を流れる熔融ガラスの流速とを等しくすることで、清澄管120内で熔融ガラスを均一に撹拌することができる。
図5は、第1板部材124の上端部の板厚方向における鉛直断面図である。なお、図5において、括弧書き内の符号は、第1板部材124の要素と対応する、第2板部材125、第3板部材126の要素を表す。
第1板部材124は、図5に示すように、一対の主表面124a、124bと、主表面124a、124bの間を延びる側面124cと、を有している。主表面124a、124bは、熔融ガラスの流れ方向と交差するように延在する面である。図5に示す例において、主表面124a、124bは、熔融ガラスの流れ方向と直交するように延在し、側面124cは、主表面124a、124bに滑らかに接続されている。側面124cは、第1板部材124の上端部及び下端部のそれぞれに形成されており、いずれも、主表面124a、124bから遠ざかるように湾曲した凸曲面で構成されている。主表面124a、124bから遠ざかるとは、主表面124a、124bが延在する面方向に沿って主表面124a、124bから離れることをいう。第1板部材124の上端部の側面124cは、上方に向かって凸な凸曲面からなり、下端部の側面124cは、下方に向かって凸な凸曲面からなる。
熔融ガラスの流れは、第1板部材124の上流側では、上述したように、第1板部材124の上側と下側とに分岐するとともに、第1板部材124の下流側では、分岐した2つの流れが合流する。このため、第1板部材124の上端部及び下端部の付近には、第1板部材124を回り込むような熔融ガラスの流れが形成される。ここで、第1板部材の側面が主表面と直交するように延びている場合、主表面と側面との境界をなす部分は、熔融ガラスの流れの一部を遮るように張り出しているため、熔融ガラスがぶつかって、侵食されやすい。熔融ガラスに侵食されて、熔融ガラス中に第1板部材124から溶け出した白金族金属は、後の工程で熔融ガラス内で析出し、異物としてガラス基板中に残るおそれがある。特に、流動性を高めるために、1300℃以上の高温に加熱された熔融ガラスと接触する場合は、白金族金属はより一層溶け出しやすい。本実施形態では、第1板部材124の側面124cは、凸曲面で構成されていて、第1板部材124の上端部及び下端部の付近での熔融ガラスの流れを妨げ難い形状であるため、第1板部材124は、熔融ガラスに侵食され難く、第1板部材124から熔融ガラス中に白金族金属が溶け出すことを抑制できる。
第2板部材125、及び第3板部材126も、第1板部材124と同様に、一対の主表面を有しており、第2板部材125の上端部、及び、第3板部材126の上端部及び下端部の側面は、凸曲面で構成されている。このため、第2板部材125の上端部、及び、第3板部材126の上端部及び下端部も、熔融ガラス中への白金族金属の溶け出しが抑制される。
第1板部材124、第2板部材125、第3板部材126の側面の凸曲面は、1つの曲率中心によって定まる円弧形状であってもよく、複数の曲率中心によって定まる複数の円弧を組み合わせた形状であってもよい。また、凸曲面の、主表面からの凸領域の高さ(凸高さ)を低くすることで、言い換えると、中心位置Zと凸曲面の接線との交点における中心位置Zと当該接線とのなす角度を30度〜80度、より好ましくは50度〜80度、にすることで、第1板部材124、第2板部材125、第3板部材126の各側面124c、125c、126cの侵食を抑制することもできる。
第1板部材124、第2板部材125、第3板部材126の側面の凸曲面は、例えば、各板部材124、125、126を板厚方向に見たときのそれぞれの輪郭形状に切り出した板状の部材において、側面を、溶接あるいは研磨することによって形成することができる。溶接によって形成された凸曲面は、溶加剤(溶接棒)または上記板状の部材が溶けて固まることで形成された面である。溶接は、例えば、TIG溶接等のアーク溶接によって行うことができる。研磨は、例えば、研磨砥粒を保持した不織布からなる研磨パッドやヤスリを用いて行うことができる。
本実施形態において、板部材124、125、126の側面のうち、気相空間と接する部分は、凸曲面で構成されていないことが好ましい。例えば、熔融ガラスの液面が第2板部材125の上端部よりも低い位置で清澄工程(ST2)が行われる場合、第2板部材125の上端部の側面は、凸曲面で構成されていないことが好ましく、主表面と直交するように延びていてもよい。このような態様では、第2板部材125の上端部の側面は、熔融ガラスと接触することが少ないため、凸曲面で構成されていなくても、熔融ガラスへの白金族金属の溶け出しのおそれがない。また、溶接により凸曲面を形成した場合、凸曲面をなす板部材の部分が脆くなり、板部材の強度が低下する場合がある。このため、白金族金属が溶け出すおそれのない第2板部材125の上端部には、溶接によって凸曲面を形成しないことが好ましい。
(変形例)
図6は、図4に示す清澄管120の変形例の長手方向における鉛直断面図である。
本変形例では、図4に示す清澄管120と異なって、第2板部材125及び第3板部材126は、清澄管120の長手方向に対して傾斜して設けられる。
具体的に、複数の第2板部材125の傾斜角度A1は、例えば、20度から70度、より好ましくは30度から60度の範囲である。
また、複数の第3板部材126の傾斜角度B1は、例えば、20度から70度、より好ましくは30度から60度の範囲である。
本変形例において、第1板部材124、第2板部材125、第3板部材126の上端部および下端部のそれぞれにおいて、側面は凸曲面で構成されている。この場合において、主表面から最も遠ざかった側面125c上の位置Pは、図7(a)及び図7(b)に示すように、主表面125a、125b間の中心位置Zに対して、主表面125aの側にあってもよく、主表面125bの側にあってもよい。例えば、第2板部材125の下端部、及び第3板部材126の上端部において、主表面から最も遠ざかった側面上の位置Pは、側面にぶつかった熔融ガラスが上方と下方に均等に分岐するよう、図7(a)に示す例のように、熔融ガラスの流れ方向の下流側を向く主表面の側にあってもよい。あるいは、側面にぶつかり上方と下方に分岐した熔融ガラスのせん断速度差が大きくなるよう、図7(b)に示す例のように、熔融ガラスの流れ方向の上流側を向く主表面の側にあってもよい。せん断速度とは、流体速度の導関数であり、熔融ガラスのせん断速度を計算することによってその流動特性がわかる。せん断速度が大きいほど、隣接する熔融ガラス間の流速差が大きく、攪拌効果が高く、熔融ガラスを均質化できる。中心位置Zに対して、熔融ガラスの流れ方向の上流側を向く主表面の側に位置Pがある場合、上流から下流に向かって流れる熔融ガラスが、位置Pを過ぎた後、位置Pの下流側から主表面125b、126bの側(板部材の裏側)に回りこむ。すると、キャビテーションが発生し、板部材124、125、126が振動する。これにより、板部材124、125、126が侵食され、破損するおそれがある。このため、位置Pを、中心位置Zに対して熔融ガラスの流れ方向の下流側を向く主表面の側に位置させることにより、熔融ガラスが位置Pの下流側から主表面125b、126cの側に回り込んでキャビテーションが発生することを抑制でき、板部材124、125、126の振動を抑制でき、破損を防止できる。また、中心位置Zに対して、熔融ガラスの流れ方向の下流側を向く主表面の側に位置Pがある場合、上流から下流に向かって流れる熔融ガラスが、板部材124、125、126に当たり流れが変わる。せん断速度(せん断応力)が小さいほうが、板部材124、125、126の侵食及び破損を抑制できるため、位置Pを、中心位置Zに対して熔融ガラスの流れ方向の下流側を向く主表面の側に位置させることもできる。
本実施形態によれば、板部材が設けられることで、清澄管120内の熔融ガラスが清澄管120の長さ方向に流れるのみでなく、熔融ガラスが上下方向にも移動するように流れが変更されるため、清澄管120内で熔融ガラスが均一に撹拌され、熔融ガラスの温度を均一にすることができる。一方、本実施形態によれば、板部材124、125、126の側面のうち、熔融ガラスと接触する部分は、凸曲面で構成されているため、熔融ガラスの流れを妨げ難い。このため、板部材124、125、126は、熔融ガラスに侵食され難く、熔融ガラス中に白金族金属が溶け出すことが抑制される。このように、本実施形態によれば、熔融ガラス内への異物の溶け出しを抑制しつつ、清澄管内の熔融ガラスを均一に撹拌することができる。
なお、清澄管120において、板部材群に含まれる板部材のうち、一部の板部材だけが凸曲面で構成された側面を有していてもよい。この場合、凸曲面で構成された側面を有する板部材は、少なくとも、熔融ガラスが最高温度を示す流れ方向の位置に最も接近した位置に配置されていることが好ましい。熔融ガラスの温度は、清澄剤を機能させて脱泡処理及び吸収するために、流れ方向に分布が形成される場合がある。板部材から熔融ガラスへの白金族金属の溶け出しは、熔融ガラスの温度が高いほど起きやすいため、熔融ガラスの温度が温度分布を有している場合は、少なくとも、熔融ガラスが最高温度を示す流れ方向の位置に最も接近した位置に配置されていることが好ましい。
(ガラス基板)
本実施形態において製造されるガラス基板の大きさは、特に制限されないが、例えば縦寸法及び横寸法のそれぞれが、500mm〜3500mm、1500mm〜3500mm、1800〜3500mm、2000mm〜3500mmであり、2000mm〜3500mmであることが好ましい。
ガラス基板の厚さは、例えば、0.1〜1.1mmであり、より好ましくは0.75mm以下の極めて薄い矩形形状の板であり、例えば、0.55mm以下、さらには0.45mm以下の厚さがより好ましい。ガラス基板の厚さの下限値は、0.15mmが好ましく、0.25mmがより好ましい。
<ガラス組成>
このようなガラス基板として、以下のガラス組成のガラス基板が例示される。つまり、以下のガラス組成のガラス基板が製造されるように、熔融ガラスの原料が調合される。
SiO2 55〜80モル%、
Al23 8〜20モル%、
23 0〜12モル%、
RO 0〜17モル%(ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量)。
SiO2は60〜75モル%、さらには、63〜72モル%であることが、熱収縮率を小さくするという観点から好ましい。
ROのうち、MgOが0〜10モル%、CaOが0〜15モル%、SrOが0〜10%、BaOが0〜10%であることが好ましい。
また、SiO2、Al23、B23、及びROを少なくとも含み、モル比((2×SiO2)+Al23)/((2×B23)+RO)は4.5以上であるガラスであってもよい。また、MgO、CaO、SrO、及びBaOの少なくともいずれか含み、モル比(BaO+SrO)/ROは0.1以上であることが好ましい。
また、モル%表示のB23の含有率の2倍とモル%表示のROの含有率の合計は、30モル%以下、好ましくは10〜30モル%であることが好ましい。
また、上記ガラス組成のガラス基板におけるアルカリ金属酸化物の含有率は、0モル%以上0.4モル%以下であってもよい。
また、ガラス中で価数変動する金属の酸化物(酸化スズ、酸化鉄)を合計で0.05〜1.5モル%含み、As、Sb及びPbOを実質的に含まないということは必須ではなく任意である。
また、本実施形態によって製造されるガラス基板には、無アルカリのボロアルミノシリケートガラスあるいはアルカリ微量含有ガラスが用いられることが好ましい。
本実施形態によって製造されるガラス基板は、例えば以下の組成を含む無アルカリガラスからなることが好ましい。
本実施形態によって製造されるガラス基板のガラス組成として、例えば、次が挙げられる(質量%表示)。
SiO:50〜70%(好ましくは、57〜64%)、Al:5〜25%(好ましくは、12〜18%)、B:0〜15%(好ましくは、6〜13%)を含み、さらに、次に示す組成を任意に含んでもよい。任意で含む成分として、MgO:0〜10%(好ましくは、0.5〜4%)、CaO:0〜20%(好ましくは、3〜7%)、SrO:0〜20%(好ましくは、0.5〜8%、より好ましくは3〜7%)、BaO:0〜10%(好ましくは、0〜3%、より好ましくは0〜1%)、ZrO:0〜10%(好ましくは、0〜4%,より好ましくは0〜1%)が挙げられる。さらに、R’O:0.10%を超え2.0%以下(ただし、R’はLi、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種である)を含むことがより好ましい。
或いは、SiO:50〜70%(好ましくは、55〜65%)、B:0〜10%(好ましくは、0〜5%、1.3〜5%)、Al:10〜25%(好ましくは、16〜22%)、MgO:0〜10%(好ましくは、0.5〜4%)、CaO:0〜20%(好ましくは、2〜10%、2〜6%)、SrO:0〜20%(好ましくは、0〜4%、0.4〜3%)、BaO:0〜15%(好ましくは、4〜11%)、RO:5〜20%(好ましくは、8〜20%、14〜19%),を含有することが好ましい(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種である)。さらに、R’Oが0.10%を超え2.0%以下(ただし、R’はLi、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種である)を含むことがより好ましい。
<ヤング率>
本実施形態によって製造されるガラス基板のヤング率として、例えば、72GPa以上が好ましく、75GPa以上がより好ましく、77GPa以上がより更に好ましい。
<歪点>
本実施形態によって製造されるガラス基板の歪率として、例えば、650℃以上が好ましく、680℃以上がより好ましく、700℃以上、720℃以上が更により好ましい。
<熱収縮率>
本実施形態によって製造されるガラス基板の熱収縮率は、例えば、50ppm以下であり、好ましくは40ppm以下、より好ましくは30ppm以下、更により好ましくは20ppm以下である。熱収縮率を低減する前のガラス基板の熱収縮率の範囲としては、10ppm〜40ppmが好ましい。
本実施形態で製造されるガラス基板は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板、カーブドパネルディスプレイ用ガラス基板を含むディスプレイ用ガラス基板として好適であり、例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板あるいは、有機ELディスプレイ用のガラス基板として好適である。さらに、本実施形態で製造されるガラス基板は、高精細ディスプレイに用いられる、IGZO(インジウム、ガリウム、亜鉛、酸素)等の酸化物半導体を使用した酸化物半導体ディスプレイ用ガラス基板、及びLTPS(低温度ポリシリコン)半導体を使用したLTPSディスプレイ用ガラス基板に好適である。
また、本実施形態で製造されるガラス基板は、カバーガラス、磁気ディスク用ガラス、太陽電池用ガラス基板などにも適用することが可能である。
以上、本発明のガラス基板製造装置およびガラス基板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
100 熔解装置
101 熔解槽
102 清澄管
103 撹拌槽
103a 撹拌子
104、105 移送管
106 ガラス供給管
120 清澄管
120a 気相空間
121a、121b 電極
122 電源装置
123 制御装置
124 第1板部材
124a、124b 第1板部材の主表面
124c 第1板部材の側面
125 第2板部材
125a、125b 第2板部材の主表面
125c 第2板部材の側面
126 第3板部材
126a、126b 第3板部材の主表面
126c 第3板部材の側面
127 排気管
200 成形装置
300 切断装置
MG 熔融ガラス
SG シートガラス

Claims (5)

  1. ガラス基板製造装置であって、
    1300℃以上の温度に加熱された熔融ガラスを流しながら清澄を行い、電流が供給されることで加熱される清澄管と、
    前記熔融ガラスの流れを部分的に妨げるように前記清澄管内に配置され、前記熔融ガラスを撹拌して前記清澄を促進する、白金族金属からなる板部材と、を備え、
    前記板部材は、前記熔融ガラスの流れ方向と交差するように延在する一対の主表面と、前記主表面の間を延びる側面と、を有し、
    前記熔融ガラスと接触する前記側面の部分は、前記主表面から遠ざかるように湾曲した凸曲面で構成される、ことを特徴とするガラス基板製造装置。
  2. 前記主表面から最も遠ざかった前記側面上の位置は、前記主表面間の中心位置に対して、前記主表面のうちの一方の側にある、請求項1に記載のガラス基板製造装置。
  3. 前記清澄管には、前記熔融ガラスの液面の上方に気相空間が形成されるように前記熔融ガラスが供給され、
    前記気相空間と接する前記側面の部分は、前記凸曲面を有していない、請求項1または2に記載のガラス基板製造装置。
  4. 前記清澄槽は、前記板部材を含む板部材群を備え、
    前記板部材群は、前記熔融ガラスの流れ方向に互いに間隔をあけて、前記熔融ガラスの流れを部分的に妨げるように配置され、前記熔融ガラスを撹拌して前記清澄を促進する、白金族金属からなる複数の他の板部材をさらに含み、
    前記板部材群に含まれる板部材のうち、前記凸曲面で構成された前記側面を有する板部材が、前記熔融ガラスが最高温度を示す前記流れ方向の位置に最も接近して配置されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のガラス基板製造装置。
  5. ガラス基板の製造方法であって、
    ガラス原料を溶かして熔融ガラスを作る熔解工程と、
    清澄管内で、1300℃以上の温度に加熱された熔融ガラスを流しながら清澄を行う清澄工程と、を備え、
    前記清澄工程では、前記清澄管に電流を供給して前記清澄管を加熱し、
    前記熔融ガラスの流れを部分的に妨げるように前記清澄管内に配置された板部材であって、前記熔融ガラスの流れ方向と交差するように延在する一対の主表面と、前記主表面の間を延びる側面と、を有する白金族金属からなる板部材を用いて、前記熔融ガラスを撹拌して前記清澄を促進し、
    前記熔融ガラスと接触する前記側面の部分は、前記主表面から遠ざかるように湾曲した凸曲面で構成されている、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
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