JP2018168018A - 半導体型カーボンナノチューブの分離方法および半導体素子の製造方法 - Google Patents

半導体型カーボンナノチューブの分離方法および半導体素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属型と半導体型が混在したカーボンナノチューブから半導体型のものを分離する方法において、分離能を向上させること。【解決手段】第1物質、第2物質、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、およびコール酸ナトリウム(SC)を溶媒に混合して、混合溶液を作製する。次に、混合溶液に、金属型と半導体型が混在したカーボンナノチューブを加えて混合、攪拌し、分散液を作製する。次に、分散液を静置し、第1のポリマーを主として含む第1層と、第2のポリマーを主として含む第2層の2層に分離する。分散液が2層に分離するのに伴って、所定の長さ、所定のカイラリティの半導体型カーボンナノチューブは第1層へと移動し、他の半導体型カーボンナノチューブや金属型カーボンナノチューブは第2層へと移動する。【選択図】図1

Description

本開示は、金属型と半導体型が混在したカーボンナノチューブから、半導体型カーボンナノチューブを分離する方法に関する。また、半導体型カーボンナノチューブを用いた半導体素子の製造方法に関する。
カーボンナノチューブ(CNT)は、炭素原子の結合によるハニカム構造のグラフェンシートを円筒状に丸めた構造の物質であり、1層の円筒構造のものは単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層の円筒構造のものは多層カーボンナノチューブ(MWCNT)と呼ばれている。カーボンナノチューブはその高い導電性や、柔軟性・待機安定性の高さなど優れた材料特性を有しており、フレキシブルデバイスへの応用が記載されている。以下、本明細書において、特に断りのない限り、カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブを示すものとする。
カーボンナノチューブは、グラフェンシートを丸める方向(カイラリティ)によって、金属型と半導体型のいずれかの構造に分けられる。半導体型のカーボンナノチューブは、トランジスタなど各種半導体素子の材料として期待されている。半導体型のカーボンナノチューブを用いれば、塗布や印刷などの工程によって容易にトランジスタなど半導体素子を作製することができ、大面積化や低コスト化を図ることができる。また、低温プロセスが実現可能であるため、プラスチックフィルム上にも素子作製可能であり、フレキシブルデバイスの実現が可能となる。
カーボンナノチューブの製造方法には、レーザーアブレーション法、CVD法、アーク放電法などの方法が知られている。これら従来の製造方法では、金属型と半導体型が混在した状態のカーボンナノチューブが得られる。そのため、半導体材料として用いるためには半導体型のものを分離する必要がある。
半導体型カーボンナノチューブを分離する方法として、各種の方法が提案されている。たとえば、ゲルを充填したカラムを用いたカラムクロマトグラフィ法などが知られている。また、特許文献1、非特許文献1には、水性2相分離系を利用した分離方法が記載されている。
特許文献1には、次のようにして半導体型のカーボンナノチューブを分離することが記載されている。まず、デキストラン(DX)、ボリエチレングリコール(PEG)、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む溶液にカーボンナノチューブ分散液を混合して攪拌する。その分散液を遠心分離することでPEGの上層とDXの下層に分離し、上層にカーボンナノチューブが存在する状態とする。次に、分散液をコール酸ナトリウム(SC)で滴定する。これにより、所定の構造の半導体型カーボンナノチューブのみを上層に残し、他の構造の半導体型カーボンナノチューブおよび金属型カーボンナノチューブは下層に移動させる。以上により上層に半導体型カーボンナノチューブを分離させることができる。
また、非特許文献1には、DX、PEG、SDS、SC、およびSCに分散させたカーボンナノチューブを水に混合し、遠心分離によりPEGの上層とDXの下層に分離し、上層に半導体型カーボンナノチューブを分離することが記載されている。また、この分離は各成分の混合の順序には依存しないことが記載されている。
米国特許出願公開第2014/0174991号明細書
Constantine Y Khripin, et al, J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 6822-6825
しかし、カラムクロマトグラフィ法では、大量の半導体型カーボンナノチューブを得ることはできず、量産性やコストの面で工業上の応用が困難である。
また、特許文献1、非特許文献1の方法は、カーボンナノチューブの長さを揃えるための前処理が必要であり、多段階の工程を経る必要があった。また、分離能も低いという問題があった。また、特許文献1の方法は滴定する工程を含むため、スケールアップが困難であり、大量生産や低コスト化には不向きな方法であった。
そこで本開示は、金属型と半導体型が混合したカーボンナノチューブから半導体型カーボンナノチューブを分離する分離方法において、分離能を向上させることを目的とする。また、単段階で分離できる方法を提供する。また、分離した半導体型カーボンナノチューブを用いた半導体素子の製造方法を提供する。
本開示は、2相分離する第1物質および第2物質と、ドデシル硫酸ナトリウムと、コール酸ナトリウムと、を溶媒に混合して混合溶液を作製し、その後、混合溶液に、金属型と半導体型が混在したカーボンナノチューブを加えて混合して分散液を作製し、分散液を第1物質を主として含む第1層と、第2物質を主として含む第2層の2層に分離し、それに伴って、半導体型カーボンナノチューブを第1層に移動させ、金属型カーボンナノチューブを第2層に移動させることにより、半導体型カーボンナノチューブを分離する、を有することを特徴とする半導体型カーボンナノチューブの分離方法である。
本開示によれば、金属型と半導体型が混在したカーボンナノチューブから、半導体型カーボンナノチューブを高純度で分離することができる。
第1の実施形態の分離工程を示したフローチャート。 上層の吸収スペクトルを示したグラフ。 2層に分離した分散液を撮影した写真。 上層の分散液を抽出して3日間静置した後の分散液を撮影した写真。 半導体型カーボンナノチューブを原子間力顕微鏡により観察した写真。 薄膜トランジスタの構成について示した図。 熱処理を行った場合の薄膜トランジスタのゲート電圧−ドレイン電流の特性を示したグラフ。 熱処理を行わない場合の薄膜トランジスタのゲート電圧−ドレイン電流の特性を示したグラフ。 半導体層12についてX線光電子分光スペクトル測定を行った結果を示すグラフ。 PEGが結晶化して析出する様子を示した写真。 上層の吸収スペクトルを示したグラフ。 1ヶ月後の分散液を撮影した写真。
(第1の実施形態)
第1の実施形態は、金属型と半導体型とが混在したカーボンナノチューブから、半導体型カーボンナノチューブを分離する方法である。以下、その工程を、図1のフローチャートを参照にして順に説明する。
(ステップS1)
まず、第1物質、第2物質、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、およびコール酸ナトリウム(SC)を溶媒に混合して、混合溶液を作製する(図1のステップS1)。これらの混合の順序は任意でよい。
第1物質および第2物質は、2相分離法で従来用いられている任意の材料を用いることができ、溶媒に可溶であって、第1物質を主として含む層と、第2物質を主として含む層の2層に分離する材料であれば任意の材料、組み合わせでよい。第1物質と第2物質の双方をポリマーとしてもよいし、一方を低分子物質としてもよいし、双方を低分子物質としてもよい。ポリマーは、モノマーの重合体であり、高分子だけでなくオリゴマーも含む。また、共重合体も含む。
たとえば、ポリマーとして、ポリエーテル、多糖類、それらの誘導体の塩などを用いることができる。
第1物質と第2物質の双方をポリマーとする場合の組み合わせとしては、非電解性ポリマーと非電解性ポリマー、電解性ポリマーと非電解性ポリマー、電解性ポリマーと電解性ポリマーの組み合わせがある。
具体的な非電解性ポリマーと非電解性ポリマーの組み合わせとしては、たとえば以下のものが挙げられる。
ポリプロピレングリコールと、メトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピル化デキストラン、またはデキストランの組み合わせ。
ポリエチレングリコールと、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デキストラン、またはフィコールの組み合わせ。
ポリビニルアルコールと、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル化デキストラン、またはデキストランの組み合わせ。
ポリビニルピロリドンと、メチルセルロース、またはデキストランの組み合わせ。
メチルセルロースとヒドロキシプロピル化デキストラン、またはデキストランの組み合わせ。
ヒドロキシエチルセルロースと、デキストランの組み合わせ。
ヒドロキシプロピル化デキストランと、デキストランの組み合わせ。
フィコールと、デキストランの組み合わせ。
具体的な電解性ポリマーと非電解性ポリマーの組み合わせとしては、たとえば以下の組み合わせが挙げられる。
デキストラン硫酸ナトリウムと、ポリプロピレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピル化デキストラン、またはデキストランの組み合わせに塩化ナトリウムを添加したもの。
カルボキシメチルデキストランナトリウムと、メトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはヒドロキシプロピル化デキストランの組み合わせに塩化ナトリウムを添加したもの。
カルボキシメチルセルロースナトリウムと、ポリプロピレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはヒドロキシプロピル化デキストランの組み合わせに塩化ナトリウムを添加したもの。
DEAE−デキストラン塩酸塩と、ポリプロピレングリコールの組み合わせに塩化ナトリウムを添加したもの、DEAE−デキストラン塩酸塩と、ポリエチレングリコールの組み合わせに硫酸リチウムを添加したもの、DEAE−デキストラン塩酸塩と、メチルセルロースまたはポリビニルアルコールの組み合わせ。
具体的な電解性ポリマーと電解性ポリマーの組み合わせとしては、たとえば以下の組み合わせが挙げられる。
デキストラン硫酸ナトリウムと、カルボキシメチルセルロースナトリウム、またはカルボキシメチルデキストランナトリウムの組み合わせ。
カルボキシメチルデキストランナトリウムと、カルボキシメチルセルロースナトリウムの組み合わせ。
デキストラン硫酸ナトリウムと、DEAE−デキストラン塩酸塩の組み合わせに塩化ナトリウムを添加したもの。
第1ポリマーと低分子物質の組み合わせを用いることもできる。この場合、具体的な組み合わせとしてはたとえば以下のものが挙げられる。
ポリプロピレングリコールと、リン酸カリウム、グルコース、またはグリセロールの組み合わせ。
メトキシポリエチレングリコールとリン酸カリウムの組み合わせ。
ポリエチレングリコールとリン酸カリウムの組み合わせ。
ポリビニルピロリドンと、リン酸カリウム、またはブチルグリコールの組み合わせ。
ポリビニルアルコールとブチルグリコールの組み合わせ。
デキストランと、ブチルグリコール、またはプロパノールの組み合わせ。
デキストラン硫酸ナトリウムと塩化ナトリウムの組み合わせ。
これらの組み合わせのうち、特にPEGとDXを用いるのがよい。半導体型カーボンナノチューブの分離能が高く、取り扱いや入手も容易なためである。
なお、3種類以上のポリマーを用いてもよく、その場合、少なくとも2層に分離する系であれば、同様に第1の実施形態の方法を適用することができる。以下、説明の便宜のため、2層のうち、半導体型カーボンナノチューブを抽出する層に主として含まれる方を第1物質、他方を第2物質とする。
溶媒には水を用いるのが一般的であるが、重水、アルコールなどカーボンナノチューブを分散させることが可能な任意の材料を用いてよい。
混合溶液において、第1物質、第2物質の濃度は、混合溶液が2層に分離可能な範囲であればよい。2層に分離可能な濃度は、状態図を用いた既知の方法により決定することができ、総組成がbinodial曲線よりも上側の領域であれば2層に分離する。そして総組成が決まれば分離後の各層の濃度も決まる。たとえば、第1物質としてPEG、第2物質としてDXを用いる場合、PEGの濃度は、3〜15wt%、DXの濃度は、3〜30wt%とすることができる。
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とコール酸ナトリウム(SC)の濃度は、分離したい半導体型カーボンナノチューブのカイラリティや長さなどに応じて制御する。たとえば、SDSとSCの濃度比によってそれを制御することができる。
混合溶液の温度は、室温付近であればよく、5〜55℃とすることができる。この温度範囲であれば、半導体型カーボンナノチューブを効率的に分離させることができる。より望ましい温度は20〜35℃であり、さらに望ましくは25〜30℃である。
(ステップS2)
次に、混合溶液に、金属型と半導体型が混在したカーボンナノチューブを加えて混合し、攪拌する(図1のステップS2)。カーボンナノチューブは疎水性であるが、界面活性剤であるSDSやSCのミセルに取り込まれることで、混合溶液に溶解する。カーボンナノチューブを加えるタイミングは、混合溶液が第1物質を主として含む第1層と、第2物質を主として含む第2層の2層に分離する前であればよい。このようにしてカーボンナノチューブが分散された分散液を作製する。
カーボンナノチューブは、任意の方法によって作製されたものでよく、たとえばアーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD法などによって作製されたものを用いる。
分散液中のカーボンナノチューブの濃度は特に問わず、分散液に十分にカーボンナノチューブが分散する範囲であればよい。
(ステップS3)
次に、分散液を静置し、第1物質を主として含む第1層と、第2物質を主として含む第2層の2層に分離する。なお、分散液が第1層と第2層に分離するまでの時間を短縮するために、遠心分離機を用いて遠心分離してもよい。
ここで、カーボンナノチューブは、そのカイラリティや長さによって疎水性が異なっている。そのため、半導体型カーボンナノチューブと金属型カーボンナノチューブとでは、SDSやSCとの相互作用の仕方に違いが生じる。その結果、カーボンナノチューブを取り込んだミセルは、その取り込んだカーボンナノチューブのカイラリティや長さに応じて親水性に違いが生じる。この親水性の違いにより、分散液が2層に分離するのに伴って、半導体型カーボンナノチューブはその長さやカイラリティに応じて第1層側か第2層側のどちらかに移動する。また、金属型カーボンナノチューブは第2層側に移動する。
第1層側に移動する半導体型カーボンナノチューブの純度、長さやカイラリティは、SDSとSCの濃度比によって制御することが可能である。SC濃度が高いほど分離能は高くなるが、第1層に含まれる半導体型カーボンナノチューブの濃度は低くなり、SC濃度が低いほど分解能は低くなるが、第1層に含まれる半導体型カーボンナノチューブの濃度は高くなる傾向にある。
以上のようにして分離した分散液の第1層を抽出することで、金属型と半導体型が混在するカーボンナノチューブから、特定の長さ、カイラリティの半導体型カーボンナノチューブを高い純度で分離することができる。この第1の実施形態の分離方法は、半導体型カーボンナノチューブの分離能が高く、たとえば、第1層に含まれるカーボンナノチューブ中、半導体型の割合を95wt%以上とすることができる。
また、第1の実施形態の分離方法は、第1物質、第2物質、SDS、カーボンナノチューブを含む分散液にSCを加えることで分離する従来の方法に比べて分離能が高い。その理由は次のように推察される。
従来方法では、第1物質、第2物質およびSDSを含む溶液にカーボンナノチューブを混合し、その後にSCを加えている。そのため、カーボンナノチューブは当初SDSと相互作用しており、その後にSDSの一部ないし全部がSCに置き換わって相互作用している状態であると考えられる。
これに対し、第1の実施形態では、SDSおよびSCがすでに存在している混合溶液に、カーボンナノチューブを混合している。そのため、カーボンナノチューブに対してSDSとSCが同時に相互作用する。
このように、従来方法と第1の実施形態では、カーボンナノチューブとSDSおよびSCの相互作用の順序が異なっており、それによりカーボンナノチューブとSDSおよびSCとの相互作用の状態も異なっていると考えられる。この状態の違いにより、第1の実施形態は従来方法よりも分離能が向上していると考えられる。
なお、分離した半導体型カーボンナノチューブを含む分散液に、さらにSCを加えるとよい。分散液中の半導体型カーボンナノチューブが時間の経過により凝集してしまうのを抑制し、分散液中に均一に半導体型カーボンナノチューブを分散させることができるためである。このとき、1wt%濃度のSC水溶液を分離液と同体積量以上加えるとよい。より望ましくは3倍体積量以上である。また、SC以外の分散剤を加えてもよい。
以上、第1の実施形態によれば、単段階、かつ高い分離能で、金属型と半導体型が混在したカーボンナノチューブから半導体型カーボンナノチューブを容易に分離することができる。また、スケールアップも容易であり、工業的に優れた分離方法である。
抽出した第1物質と半導体型カーボンナノチューブを含む分散液に、再度第2物質を加えて2層に分離させることで、半導体型カーボンナノチューブの長さやカイラリティをより揃えるようにすることもできる。
また、第2層のカーボンナノチューブを取り出して、SDSやSCの濃度を変更して第1の実施形態の分離方法を再度用いることで、DX側に残存する他の長さ、カイラリティの半導体型カーボンナノチューブを抽出してもよい。
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、半導体型カーボンナノチューブを含む半導体層を有した半導体素子の製造方法である。
第1の実施形態によって分離された半導体型カーボンナノチューブは、第1物質を主として含む分散液中に分散された状態である。基板にこの分散液を直接塗布、印刷などし、その後、塗布した分散液を溶媒により洗浄してSDSとSCを除去することで、容易に基板上に半導体層を形成することができる。ここで、溶媒での洗浄により基板から半導体型カーボンナノチューブが剥がれて流出しないように、基板表面にはアミノ基などを修飾しておき、そのアミノ基と半導体型カーボンナノチューブを結合させておくとよい。洗浄に用いる溶媒は、たとえば水やアルコールなどの有機溶媒などを用いることができる。
以上のように、第1の実施形態の半導体型カーボンナノチューブの分離方法を用いれば、容易に半導体素子の製造プロセスに移行することができる。
このようにして半導体層を作製すると、半導体層中には半導体型カーボンナノチューブだけでなく第1物質も残存する。半導体層中に第1物質が残存していると、半導体型カーボンナノチューブがp型化してしまい、所望の特性を得られない場合がある。
たとえば、第1物質が残存する半導体型カーボンナノチューブを用いて薄膜トランジスタを作製すると、半導体型カーボンナノチューブのp型化のためにノーマリオン型となり、ノーマリオフ型を実現することができない。ここで、ノーマリオン型は、ゲート電圧を印加しない状態でドレイン−ソース間に電流が流れる(オンになる)特性であり、ノーマリオフ型は、ゲート電圧を印加しない状態ではドレイン−ソース間に電流が流れない(オフになる)特性である。ノーマリオン型では、オフにするためにゲート電圧を印加する必要があり、省電力の観点で問題がある。
そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態によって分離された半導体型カーボンナノチューブを含む分散液から、第1物質を除去する。第1物質を除去することで半導体型カーボンナノチューブのp型化を抑制することができる。
第1物質の除去は、たとえば次のようにして行うことができる。1つは、熱処理によって第1物質を分解して除去する方法である。もう1つは、溶媒を用いて第1物質を結晶化させ析出させることにより除去する方法である。もちろんこれらの方法を組み合わせて用いてもよい。それぞれの方法について、以下に詳しく説明する。
熱処理による第1物質の除去方法について説明する。まず、第1の実施形態によって分離された半導体型カーボンナノチューブを含む分散液を、塗布、印刷などの方法によって基板上にパターニングする。次に、不活性ガス雰囲気下で、不活性ガスを流しながら、基板を加熱して熱処理を行う。加熱は第1物質が熱分解する温度で行う。不活性ガスを流しながら行うことで、半導体型カーボンナノチューブが酸化してしまうことを防止している。この熱処理によって第1物質が熱分解することで、基板上には主として半導体型カーボンナノチューブからなる半導体層が残存する。
不活性ガスは、窒素や、ネオン、アルゴン、キセノンなどの希ガスを用いることができる。特に、取り扱いの容易さやコスト面から窒素が望ましい。
不活性ガスの流量は、1〜1000sscmとすることが望ましい。この範囲とすれば、熱処理によるカーボンナノチューブの酸化をより抑制することができる。より望ましくは5〜50sscm、さらに望ましくは9〜11sscmである。
熱処理温度は、第1物質の熱分解温度以上の温度であれば任意であるが、半導体型カーボンナノチューブや基板への影響を考慮してなるべく低い温度が望ましく、熱分解温度+100℃以下で行うことが望ましい。
熱処理時間は、第1物質が十分に熱分解する範囲であればよく、たとえば1時間以上が望ましい。
熱処理の圧力は、なるべく低くすることが好ましく、減圧下で行うことが好ましい。より効率的に第1物質を熱分解することができる。より望ましくは300Pa以下、さらに望ましくは120Pa以下である。
続いて、溶媒を用いた第1物質の除去方法について説明する。まず、第1の実施形態によって分離された半導体型カーボンナノチューブを含む分散液に、第1物質を可溶であって、第1物質を結晶化して析出させることが可能な有機溶媒を混合する。これにより、分散液中に第1物質の結晶を析出させる。その後、分散液を静置して、あるいは遠心分離して、有機溶媒の層と、半導体型カーボンナノチューブを含む水の層に分離させ、有機溶媒の層と水の層の間に第1物質の結晶の層を形成させる。そして、半導体型カーボンナノチューブを含む水の層を抽出することで、第1物質が除去された半導体型カーボンナノチューブが得られる。
第1物質がPEGの場合、有機溶媒としてハロゲン系溶媒を用いることができ、たとえばジクロロメタンを用いることができる。ジクロロメタンの量は、半導体型カーボンナノチューブを含む分離液1mLに対し10μL以上加えるのがよい。この範囲であれば、容易にPEGを析出させることができ、効率的にPEGを除去することができる。より望ましくは100μL以上、さらに望ましくは500μL以上である。
第2の実施形態は、任意の半導体素子に対して適用可能である。たとえば、トランジスタ、ダイオード、受光素子、発光素子、などの各種半導体素子である。
以上、第2の実施形態の半導体素子の製造方法によれば、半導体型カーボンナノチューブのp型化を抑制することができ、所望の特性が得られるように制御することが容易となる。特に、薄膜トランジスタの半導体層の材料として用いれば、ノーマリオフ型の素子を実現することができ、省電力化を図ることができる。
以下、本開示の具体的な実施例について、図を参照に説明するが、本開示は実施例に限定されるものではない。
まず、アーク放電法によって得られたカーボンナノチューブを2.5mg量り取り、バス式超音波を用いて1%コール酸ナトリウム(SC)水溶液に4時間分散処理し、カーボンナノチューブ分散液とした。
次に、デキストラン(DX)水溶液200μL、ポリエチレングリコール(PEG)水溶液80μL、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液40μL、コール酸ナトリウム(SC)水溶液90μLを混合して混合溶液を作製した。DXの濃度は20wt%、PEGの濃度は50wt%、SDSの濃度は2wt%とし、SCの濃度は、3.24wt%、3.35wt%、3.46wt%、3.57wt%、の4段階の混合溶液をそれぞれ作製した。
次に、カーボンナノチューブ分散液90μLを混合溶液に加えて、攪拌した後、15分静置した。その後、遠心処理(4000g、5分)を行った。これにより、PEGを主として含む上層と、デキストランを主として含む下層の2層に分散液を分離させた。
次に、分散液のうちPEGを主として含む上層を取り出して、その分散液の吸収スペクトルを測定した。図2は、その吸収スペクトルを示したグラフである。図2のように、分離前の金属型と半導体型が混在した状態では、金属型カーボンナノチューブによる600〜800nm帯の吸収と、半導体型カーボンナノチューブによる820〜1040nm帯の吸収が見られる。これに対し、分離後の上層の分散液は、加えたSCがいずれの濃度の場合でも、分離前に比べて金属型カーボンナノチューブによる600〜800nm帯の吸収が低減しており、また半導体型カーボンナノチューブによる820〜1040nm帯の吸収も消失してはいない。よって、上層に半導体型カーボンナノチューブを分離できていることがわかった。
また、SCの濃度によって上層の半導体型カーボンナノチューブの濃度や分離能が調整可能であることがわかった。図3は、2層に分離した分散液を撮影した写真である。図2、3のように、SC濃度が増加するとカーボンナノチューブの濃度が低下する一方、カーボンナノチューブ中の半導体型カーボンナノチューブの割合が向上し、分離能が向上する傾向があり、SC濃度が低下すると、カーボンナノチューブの濃度が増加し、半導体型カーボンナノチューブの分離能は低下する傾向が見られた。ここではSCの濃度は、3.35wt%が最適であることがわかった。
以上のように、PEGを主として含む上層に半導体型カーボンナノチューブを分離することができ、分離能も従来の方法に比べて高いことがわかった。
分離した半導体型カーボンナノチューブを用いて、以下のようにして薄膜トランジスタを作製した。
まず、実施例1の方法によって得られた2層の分散液のうち、半導体型カーボンナノチューブを含む上層の分散液を抽出し、1wt%濃度のSC水溶液を分散液と同体積量加え、半導体型カーボンナノチューブが凝集しないように分散させた。
図4は、3日間静置したときの分散液を示した写真である。また、図4(a)は、SCを追加しなかった場合の分散液を示した写真であり、図4(b)はSCを追加した場合を示している。図4から、SCを追加しないと半導体型カーボンナノチューブが凝集してしまい、分散液中に沈殿してしまうことがわかった。また、図4から、SCを追加することで半導体型カーボンナノチューブの凝集を抑制でき、分散液中に半導体型カーボンナノチューブを均一に分散させることができることがわかった。
図5は、SCを追加した場合の半導体型カーボンナノチューブ分散液を用いて作製した薄膜を原子間力顕微鏡により観察した写真である。図5のように、半導体型カーボンナノチューブは均一に分散していることがわかった。
次に、表面に熱酸化膜11が形成されたSi基板10表面に分散液を塗布した。ここで、熱酸化膜11表面にはあらかじめアミノ基を修飾しておき、そのアミノ基を介して、熱酸化膜11表面と分散液中のカーボンナノチューブとを結合させた。次に、熱酸化膜11表面を水とイソプロピルアルコールで洗浄し、分散液に含まれる界面活性剤(SDSとSC)を除去した。
次に、Si基板10を熱処理し、分散液中のPEGを除去した。熱処理は、温度300℃、圧力120Pa、窒素雰囲気で1時間行い、窒素を10sscmで流しながら行った。このようにして熱酸化膜11上に半導体型カーボンナノチューブを含む半導体層12を形成した。そして、半導体層12上にAuからなるソース電極13、ドレイン電極14を所定距離隔てて形成し、Si基板10の裏面にAuからなるゲート電極15を形成した。以上により図6に示す薄膜トランジスタを作製した。
作製した薄膜トランジスタについて、電流電圧特性を評価した。図7は、ソース−ドレイン間電圧を−5Vとしたときの、ドレイン電流(A)とゲート−ソース間電圧(V)の関係を示したグラフである。
図7のように、ゲート−ソース間電圧が0V以下ではドレイン電流が次第に上昇し、0V以上ではドレイン電極がほとんど流れずオフとなる特性であり、ノーマリオフ型であることがわかった。また、オンオフ比は10以上と非常に高い値が得られた。
一方、熱処理を省いた以外は同様にして作製した薄膜トランジスタについて、電流電圧特性を評価した結果が図8である。オンオフ比については、図7と同様に10以上と非常に高い値が得られた。一方、ゲート−ソース間電圧が5V以上でドレイン電極がほとんど流れずにオフとなる特性であり、0Vではドレイン電流が流れる特性であった。つまり、ノーマリオン型であることがわかった。
図9は、半導体層12についてX線光電子分光スペクトル測定を行った結果を示すグラフである。熱処理を行わない場合には、カーボンナノチューブに由来するC−C結合のピーク(284〜285eV付近のピーク)だけでなく、PEGに由来するC−O結合のピーク(286〜287.5eV付近のピーク)が見られるのに対し、熱処理を行った場合には、C−O結合によるピークが減少し、カーボンナノチューブに由来するC−C結合のピークが見られた。
この結果、半導体層12にPEGが残存すると半導体型カーボンナノチューブがp型化し、薄膜トランジスタがノーマリオン型となることがわかった。また、熱処理によって半導体層12のPEGを除去することができ、半導体型カーボンナノチューブのp型化を抑制してノーマリオフ型にできることがわかった。
実施例3では、実施例1の方法によって得られた半導体型カーボンナノチューブを含む分散液に、1wt%濃度のSC水溶液を分散液と同体積量以上加え、半導体型カーボンナノチューブが凝集しないように分散させた。その後、ジクロロメタン(CHCl)を分散液に混合した。すると、分散液は懸濁した。この分散液を5秒間遠心分離すると、下層にジクロロメタンの層、上層に半導体型カーボンナノチューブを含む水の層の2層に分離し、その上層と下層の中間に結晶化したPEGが析出した(図10参照)。この上層を抽出することにより、PEGが除去された半導体型カーボンナノチューブを含む分散液を得ることができた。
実施例1により、SCの濃度を3.35wt%とすることで効率的に半導体カーボンナノチューブを分離できることを見出したので、この分離条件を使って、半導体型カーボンナノチューブの大量分離を行った。
まず、デキストラン(DX)水溶液12mL、ポリエチレングリコール(PEG)水溶液4.8mL、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液2.3mL、コール酸ナトリウム(SC)水溶液5.5mLを混合して混合溶液を作製した。DXの濃度は20wt%、PEGの濃度は50wt%、SDSの濃度は2wt%、SCの濃度は3.35wt%として混合溶液を作製した。
次に、カーボンナノチューブ分散液6.0mLを混合溶液に加えて、攪拌した後、15分静置した。同様の操作をさらに5本行い、合計6本の分散液を作製した。
その後6本同時に遠心処理(4000g、5分)を行った。これにより、PEGを主として含む上層と、デキストランを主として含む下層の2層に分散液を分離させた。
次に、分散液のうちPEGを主として含む上層を6本分取り出して、その分散液の吸収スペクトルを測定した。図11は、その吸収スペクトルを示したグラフである。図11のように、分離前の金属型と半導体型が混在した状態では、金属型カーボンナノチューブによる600〜800nm帯の吸収と、半導体型カーボンナノチューブによる820〜1040nm帯の吸収が見られる。これに対し、分離後の上層の分散液は、金属型カーボンナノチューブによる600〜800nm帯の吸収が消失しており、また半導体型カーボンナノチューブによる820〜1040nm帯の吸収も消失してはいない。よって、上層に半導体型カーボンナノチューブを分離できていることがわかった。
以上のように、PEGを主として含む上層に半導体型カーボンナノチューブを分離することができ、分離能も従来の方法に比べて高いことがわかった。また、容易にスケールアップ可能であることがわかった。
図12は、上記のようにして取り出した6本分の半導体型カーボンナノチューブの分散液に、3倍体積量の1wt%濃度のSC水溶液を加えた分散液の1ヶ月後の写真である。図12のように大量の半導体型カーボンナノチューブを分離でき、分散液中に半導体型カーボンナノチューブを均一に分散させることができることがわかった。
本開示のカーボンナノチューブの分離方法によれば、高純度の半導体型カーボンナノチューブを得ることができ、各種半導体素子の材料として利用することができる。
10:Si基板
11:熱酸化膜
12:半導体層
13:ソース電極
14:ドレイン電極
15:ゲート電極

Claims (9)

  1. 2相分離する第1物質および第2物質と、ドデシル硫酸ナトリウムと、コール酸ナトリウムと、を溶媒に混合して混合溶液を作製し、
    その後、前記混合溶液に、金属型と半導体型が混在したカーボンナノチューブを加えて混合して分散液を作製し、
    前記分散液を、前記第1物質を主として含む第1層と、前記第2物質を主として含む第2層の2層に分離し、それに伴って、半導体型カーボンナノチューブを前記第1層に移動させ、金属型カーボンナノチューブを前記第2層に移動させることにより、半導体型カーボンナノチューブを分離する、
    を有することを特徴とする半導体型カーボンナノチューブの分離方法。
  2. 前記第1物質は、ポリエチレングリコールであり、前記第2物質は、デキストランである、ことを特徴とする請求項1に記載の半導体型カーボンナノチューブの分離方法。
  3. 前記ドデシル硫酸ナトリウムと前記コール酸ナトリウムの濃度比により、分離する前記半導体型カーボンナノチューブの純度、長さ、またはカイラリティを制御する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体型カーボンナノチューブの分離方法。
  4. 前記第1層を抽出することで、前記半導体型カーボンナノチューブを含む分散液を抽出し、その抽出した分散液に、さらに分散剤を加える、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの分離方法。
  5. カーボンナノチューブを含む半導体層を有した半導体素子の製造方法において、
    請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの分離方法によって得られた前記第1層を抽出し、その抽出した前記半導体型カーボンナノチューブを含む分散液から、前記第1物質を除去し、その除去された半導体型カーボンナノチューブを用いて前記半導体層を形成する、
    ことを特徴とする半導体素子の製造方法。
  6. 前記第1物質の除去は、熱処理によって前記第1物質を熱分解させることにより行う、ことを特徴とする請求項5に記載の半導体素子の製造方法。
  7. 前記熱処理は、不活性ガス雰囲気下において、前記不活性ガスを流しながら行う、ことを特徴とする請求項6に記載の半導体素子の製造方法。
  8. 前記第1物質の除去は、前記第1層を抽出して得られた前記半導体型カーボンナノチューブを含む分散液に、前記第1物質を可溶な有機溶媒を混合し、前記第1物質を結晶化させて析出させることで前記第1物質を除去する、ことを特徴とする請求項5に記載の半導体素子の製造方法。
  9. 前記第1物質は、ポリエチレングリコールであり、前記有機溶媒は、ハロゲン系有機溶媒である、ことを特徴とする請求項8に記載の半導体素子の製造方法。
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