JP2018167515A - 表面被覆フィルム - Google Patents
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Abstract
Description
例えば炭素繊維強化樹脂成形品は、炭素繊維に対して熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂といったマトリックス樹脂を含浸させ、必要に応じて硬化させることで製造される。このようにして製造される炭素繊維強化樹脂成形品は、炭素繊維によって強化されているため、物性が著しく向上し、軽量でありながら強靭な部材となる。
しかしながら、塗装は繊維の織目や編目などの凹凸パターンや色を隠蔽するに、下塗りをした上でさらに繰返して何度も塗装を行う必要があり、また前述の凹凸パターンに気泡が混入し易いという問題があり、極めて生産性に劣るという問題がある。
そのため、本発明の課題は、成形温度が極めて高温で短時間である一体成形においても、得られる繊維強化樹脂成形品の表面を平滑にしつつ、強固に密着することができる表面を被覆するフィルムやシートを提供するとともに、それを用いた繊維強化樹脂成形品およびその製造方法を提供することにある。
[1] 繊維含浸樹脂と一体成形するための表面被覆フィルムであって、該表面被覆フィルムは、少なくとも基材フィルムと易接着層Aとからなり、該易接着層Aはエポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種類の官能基を含有し、かつその厚さが10〜200nmの範囲であり、該基材フィルムは50〜500μmの厚みである表面被覆フィルム。
[2] 150℃で30分間処理したときの長手方向および幅方向の熱収縮率が、下記式(1)を満足する前記[1]に記載の表面被覆フィルム。
Δχ=|χMD−χTD|≦3.0 ・・・(1)
(上記式中のχMDは長手方向の熱収縮率(%)を示し、χTDは幅方向の熱収縮率(%)を示し、ΔχはχMDとχTDの差(%)の絶対値を示す。)
[3] 基材フィルムが、ポリエステルフィルムである前記[1]または[2]のいずれかに記載の表面被覆フィルム。
[4] 基材フィルムが二軸配向フィルムである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の表面被覆フィルム。
[5] 可視光に対する全光線透過率が80%以上である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の表面被覆フィルム。
[6] 基材フィルムの易接層Aを形成していない表面に、エポキシ基もしくはシラノール基を有する易接着層Bを有する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の表面被覆フィルム。
[7] 前記[1]〜[6]のいずれかに記載の表面被覆フィルムと、該表面被覆フィルムの易接着層Aを形成していない側の表面に、表面保護層および加飾層からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能層を有する表面被覆構成体。
[8] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載の表面被覆フィルムもしくは表面被覆構成体と、繊維含浸樹脂が易接着層Aと接するように一体成形する表面被覆繊維強化樹脂成形品の製造方法。
[9] 繊維含浸樹脂の150℃での硬化時間が10分以下である前記[8]記載の表面被覆繊維強化樹脂成形品の製造方法。
[10] 繊維含浸樹脂を構成する繊維が、炭素繊維である前記[8]または[9]いずれかに記載の表面被覆繊維強化樹脂成形品の製造方法。
[11] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載の表面被覆フィルムもしくは表面被覆構成体と、繊維含浸樹脂とが、基材フィルム、易接着層A、繊維含浸樹脂の順で、一体成形されている表面被覆繊維強化樹脂成形品。
さらに本発明によれば、表面被覆フィルムに、耐傷つき性を付与するハードコート層、汚れ付着を抑制する防汚層、光沢を高める透明層、自由な意匠性を発現するための加飾層といった機能層を持たせた表面被覆積層体も提供される。
また、本発明によれば、驚くべきことに接着層を薄くした結果、耐久性を高度に具備させることもできる。
なお、本発明の表面被覆フィルムは、少なくとも基材フィルムと易接着層Aとからなり、本発明の表面被覆積層体は、本発明の表面被覆フィルムに機能層(必要に応じてさらに易接着層B)を設けたものであり、本発明の表面被覆繊維強化樹脂成形品は、本発明の表面被覆フィルムもしくは本発明の表面被覆積層体と、繊維含浸樹脂とを一体成形したものであり、以下、本発明における基材フィルム、易接着層A、機能層、易接着層B、繊維含浸樹脂の好ましい態様について、説明する。
本発明における基材フィルムは、その厚みが50〜500μmの範囲である。厚みの上限が超えると、一体成形における加工性が損なわれ、他方下限を下回ると表面を被覆したときの平坦性が損なわれる。好ましい基材フィルムの厚みの下限は75μm、さらに100μm、特に125μmである。他方好ましい基材フィルムの厚みの上限は300μm、さらに250μm、特に188μmである。
本発明における易接着層Aは、少なくともエポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種類の官能基を含有する。これらの官能基を有しない場合、一体成型後の密着性が低下する。これらの中でも、繊維含浸樹脂との密着性の観点からエポキシ基もしくはオキサゾリン基を含有することが好ましく、特にエポキシ基を含有することが好ましい。
また、本発明における易接着層Aは、その厚さが10〜200nmの範囲であり、好ましい厚さの下限は、密着性の観点から15nm、さらに20nm、特に40nmである。他方好ましい厚さの上限は、塗工の厚み斑低減および耐久密着性の観点から、180nm、さらに150nm、特に120nmである。
本発明の表面被覆フィルムに用いる基材フィルムを得る製造方法を概説する。本発明における基材フィルムは、前述の通り、二軸延伸されていることが好ましい。これは、二軸延伸されることにより、耐薬品や耐久性の向上が見込め、膜としての強度を付与できることにある。
そこで、本発明における基材フィルムおよび表面被覆の製造方法の一例として、二軸延伸ポリエステルフィルムを例にとって説明する。まず原料となるポリエステル樹脂は、例えばポリエチレンテレフタレートであれば購入することもでき、それ自体公知の手法で重縮合して得ることが出来る。
かかる延伸方法における延伸倍率としては、樹脂の種類により異なるが、それぞれの方向に、好ましくは、2.5〜4.0倍、さらに好ましくは2.8〜3.5倍、特に好ましくは3.0〜3.4倍が好ましく例示でき、面積倍率として6〜20倍が製膜安定性の観点で好ましく、ポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、面積倍率として8〜20倍が特に好ましく用いられる。また、延伸速度はそれぞれの延伸方向において1,000〜200,000%/分であることが望ましい。また延伸温度は、ガラス転移点〜(ガラス転移点+120℃)、さらにガラス転移温度+10℃〜ガラス転移温度+60℃の温度が好ましく採用でき、例えばポリエチレンテレフタレートの場合、75〜130℃、特に長手方向の延伸温度を80〜120℃、幅方向の延伸温度を90〜110℃とすることが好ましい。なお、延伸は各方向に対して複数回おこなっても良い。延伸方法自体は、それ自体公知の例えばロール延伸やテンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送する延伸方法など、いずれも採用することができる。
また、熱処理時間は特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、好ましくは1〜60秒間、より好ましくは1〜30秒間行うことが好ましい。さらに、熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。
本発明の表面被覆フィルムは、前述の方法によって得られるが、以下その好ましい態様について説明する。
まず、本発明の表面被覆フィルムは、150℃の伸度が製膜方向、幅方向ともに100%以上であることが好ましい。これは繊維強化樹脂の形状に追従させるためであり、伸度の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましい。一方で、表面被覆フィルムは、成形などによって伸長されるとともに、引張応力も増加する。引張応力は、成形時の成形力に対する抵抗力となるため、低い方が好ましいが、低すぎると、基材形状の凸部などが過多に延伸されてしまい、厚み斑などの不具合を生じやすい。そのような観点から、150℃における引張応力は3〜50MPaであることが好ましく、さらに、5〜30MPaが好ましい。引張応力は、伸長と共に単調に増加する傾向であることが好ましい。この場合の伸長と共に単調に増加するとは、伸度を横軸、応力を縦軸とした場合に、破断するまでの段階で、引張応力の増加が0もしくは負、すなわち傾きがゼロ以下になる領域が、破断するまでの伸度において30%以下、さらに20%以下であることを意味する。
Δχ=|χMD−χTD|≦3.0 ・・・(1)
Δχが3以上となると、製膜方向、幅方向に熱収縮による差が大きく、例えば、プレス成形などで基材フィルムが被熱した場合、成形で伸ばされるのに打ち勝ってシワが生じうるなどの不具合を生じやすい。基材フィルムの熱収縮差が小さいことで、成形後の外観を良好に保つことができる。
本発明の表面被覆フィルムは、易接着層Aの反対側に易接着層Bが形成されていることが、後述の表面被覆積層体とする上で好ましい。易接着層Bとしては易接着層Aと同様なものを好ましく例示できるが、特にエポキシ基もしくはシラノール基を有することが好ましい。
本発明の表面被覆積層体は、前述の通り、本発明の表面被覆フィルムに(必要に応じてさらに易接着層Bを介して)機能層を設けたものであり、以下説明する。
本発明の表面被覆積層体は、機能層として表面保護層もしくは加飾層を有することが好ましい。該機能層は表面被覆フィルムの易接着層Aの反対側に形成されていることが好ましく、さらに該表面被覆フィルムの易接層Aの反対面に易接着層Bを介して形成されていることが好ましい。
加飾層としては、バインダー樹脂、顔料、染料、さらに必要に応じて体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合してもよい。着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが用いられる。これらが混合されるバインダー樹脂も、成形性を有することが好ましい。
本発明における繊維含浸樹脂に用いる樹脂は熱硬化性樹脂もしくは熱可塑性樹脂を用いることができるが、熱硬化性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂の場合、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン)、ポリアミド(例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、芳香族ナイロン)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート)、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルフォキサイド、ポリテトラフルオロエチレン、アクロニトリルブタジエンスチレン共重合体、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエーテル・エーテル・ケトン、ポリオキシメチレンなどを用いることができる。また、上記熱可塑性樹脂の誘導体や、上記熱可塑性樹脂の共重合体、さらにそれらの混合物でもよい。熱硬化性樹脂の場合、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂を予備重合した樹脂等が挙げられる。本発明においては、これらの樹脂の混合物を使用することもできる。繊維強化複合材料を用途とする場合には、耐熱性、弾性率、耐薬品性に優れたエポキシ樹脂が好ましい。
多軸織物の目付は1枚当り200〜1000g/m2が好ましく、200〜800g/m2がより好ましい。
本発明に用いられる繊維含浸樹脂に含まれる繊維強化シートがマットや抄紙した紙の場合、繊維の数平均繊維長は0.1mm〜100mmであることが好ましい。より好ましくは0.5mm〜50mmである。強化繊維の数平均繊維長を0.1mm以上とすることにより、強化繊維による補強効果を向上させることができる。一方、強化繊維の数平均繊維長を100mm以下とすることにより、強化繊維複合樹脂シートのスプリングバックを抑制して平滑性をより向上させることができるとともに、内部のクラックや空洞の発生を抑制することができる。
焼き飛ばし法は、マトリックス樹脂を溶解する溶剤がない場合にも適用できる。本発明における繊維の数平均繊維長とは、焼き飛ばし法により測定した値を指す。強化繊維が酸化減量しない温度範囲においてマトリックス樹脂のみを焼き飛ばした後、強化繊維を分別して光学顕微鏡により観察し、強化繊維を無作為に400本選び出し、その長さを1μm単位まで測定し、その数平均値を求めることにより、数平均繊維長を算出することができる。
本発明の繊維含浸樹脂の樹脂含有率(RC)は、繊維含浸樹脂の全質量を基準として、20〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましく、25〜45質量%であることが特に好ましい。含有率が20質量%未満である場合は、得られる繊維強化複合材料に空隙などが発生し、機械特性等を低下させる場合がある。含有率が60質量%を超える場合は、強化繊維による補強効果が不十分となり、機械特性等を低下させる場合がある。
先ず、繊維含浸樹脂を100mm×100mmに切り出して試験片を作製し、その質量を測定する。次いで、この繊維含浸樹脂の試験片を硫酸中に浸漬して必要により煮沸する。これにより、含浸樹脂内に含浸している樹脂を分解して硫酸中に溶出させる。その後、残った繊維をろ別して水で洗浄後、乾燥させて繊維の質量を測定する。硫酸による分解操作の前後の質量変化から樹脂の含有率を算出する。
本発明に用いる繊維含浸樹脂と、上述の表面被覆フィルムを一体成形する際には、加熱加圧成形により一体成形を行うことが好ましい。加熱加圧成形を行うことで、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を使用する場合には、一体成形と同時にマトリクス樹脂を加熱硬化することができ、マトリクス樹脂として熱可塑性樹脂を使用する場合には、マトリクス樹脂を軟化させつつ一体成形することができるため、生産効率に優れる。
加熱加圧成形法における成形温度(又は硬化時間)は、選択したマトリクス樹脂により適宜選択してよく、例えば、エポキシ樹脂組成物の場合、含まれる硬化剤の種類などによるが、通常80〜180℃の温度が好ましい。かかる成形温度が低すぎると、十分な速硬化性が得られない場合があり、逆に高すぎると、熱歪みによる反りが発生しやすくなったりする。
基材フィルムを構成する樹脂の固有粘度は、o−クロロフェノール、35℃で測定し、o−クロロフェノールでは均一に溶解するのが困難な場合は、p−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いて35℃で測定して求めた。なお粒子を含む場合には遠心分離装置を用いて溶液から粒子を取り除き、粒子を差し引いた組成物重量を基準として固有粘度を求めた。
得られた表面被覆フィルムおよび表面被覆積層体の厚みは、打点式電子マイクロメータで測定した。
JIS K7361に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用して表面被覆フィルムの全光線透過率(単位:%)を測定し、300〜800nmでの平均光線透過率を読み取った。
表面被覆フィルムの製膜方向、および幅方向にそれぞれ試料幅10mm、長さ15cmのサイズの試験片を作成し、チャック間100mmにして、炉の温度150℃に保温し、インストロンタイプの万能引張試験装置にて100mm/minの引張速度で引張試験を行い、得られる荷重−伸び曲線で破断した点での伸度を測定した。
表面被覆フィルムの製膜方向および幅方向にそれぞれ長さ300mm、幅300mmに切り出し、無荷重下で、155℃で30分間熱処理した。そして、熱処理後室温になるまで冷却し、熱処理前の寸法から、熱処理後の寸法を差し引き、熱処理前の寸法で割ったものを熱収縮率とした。
表面被覆フィルムを小試験片でサンプリングし、エポキシ樹脂にて包埋して、硬化させた後、ミクロトームを用いて超薄切片を作成し、その断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した。得られた画像とスケールから、易接層厚みを算出した。
上記(6)で得られた超薄切片を表面からSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、50個の粒子の粒子径を測定して、平均化した粒径を平均粒径として求めた。
上記(6)で得られた超薄切片に対して、H−NMRを用いて上記官能基の存在を確認した。
表面被覆フィルムと繊維含浸樹脂を板状に一体成形を行い、得られた繊維強化樹脂に対して、基材まで届くようにして碁盤目状に傷を入れて、ニチバン31Bテープにより100マスの剥離試験を行った。得られた結果を顕微鏡観察し、剥離点の数に応じて、下記で◎、○、△、×の評価を行った。
◎:剥がれや塗膜割れが全く見られず、良好である
○:剥がれや塗膜割れが1/100以下しか見られず、良好である
△:碁盤目で2/100〜10/100の剥離点もしくは塗膜割れが観察される
×:碁盤目で11/100以上の剥離点もしくは塗膜割れが観察される
表面被覆フィルムと繊維含浸樹脂を板状に一体成形を行い、得られた繊維強化樹脂に対して、繊維強化樹脂側に切り込みを入れて、樹脂側から折り曲げ、折り曲げ線を慎重に削り加工し、繊維強化樹脂と基材界面の剥離端を作成した後、テンシロンにて剥離端を把持し、剥離角が90°になるようにセットし、荷重5kgの条件で引張試験を行った。
繊維強化樹脂の層間剥離(基材の材料破壊)が見られた場合は良好であり、繊維強化樹脂と基材界面での界面剥離が観察された場合不良と判断した。
表面被覆フィルムと繊維含浸樹脂を板状に一体成形を行い、得られた繊維強化樹脂に対して、小試験片に切り出した後、40℃に加温された水中に10日間浸漬し、そののちに、上述(9)の手法で碁盤目試験を行い、結果を得た。判定は下記基準で行った。
◎:剥がれや塗膜割れが全く見られず、良好である
○:剥がれや塗膜割れが1/100以下しか見られず、良好である
△:碁盤目で2/100〜10/100の剥離点もしくは塗膜割れが観察される
×:碁盤目で11/100以上の剥離点もしくは塗膜割れが観察される
実施例に記載の所定の方法で付与された顔料層およびハードコート層の外観を目視で確認し、機能層のハジキ欠点の有無を確認した。
易接着層AまたはBの塗布層を構成する組成として次に示す成分を用いた。組成の種類および割合は表1に記載した。塗料の配合比は、バインダー樹脂水系塗料、架橋剤水系塗料、フィラー水分散塗料を主として、界面活性剤を加えて固形分中の合計が100%となる比率で、塗液の固形分濃度が3%となるように撹拌分散させ、水溶系塗液を得た。
各水溶系塗液は、ボンプにより供給し、塗料が循環するように構築した経路に塗液フィルターを通過させて異物を除去した後に、塗液パンに溜め、リバース式のロールコーティングによってフィルムに塗工することで、塗膜を形成させた。
<アクリル系>
アクリル樹脂としては、以下の共重合成分で構成されるアクリル樹脂を用いた。
メチルメタクリレート40モル%/エチルアクリレート45モル%/アクリロニトリル10モル%/N−メチロールアクリルアミド5モル%。
<ポリエステル系>
ポリエステル樹脂としては、以下の共重合成分で構成されるポリエステル樹脂1、ポリエステル樹脂2をブレンドして用いた。具体的には、カルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分として、エチレングリコール60モル%を含むポリエステル樹脂1と、カルボン酸成分として、ナフタレンジカルボン酸65モル%とイソフタル酸35モル%、グリコール成分としてエチレングリコールを60モル%含むポリエステル樹脂2を、バインダー樹脂比率で1:1になるようにブレンドしたバインダー樹脂を用いた。
<シロキサン系>
基材フィルムとの接着を確保するため、ケイ素はグリシジル基を有する官能基で変性処理を行ったグリシドキシプロピルトリメトキシシランからなるシランカップリング剤を用いた。
<共重合ポリエステル−アクリル系>
共重合ポリエステル−アクリル樹脂としては、ポリエステル樹脂3と上述のアクリル系で記載したアクリル樹脂を2:1でブレンドしてバインダー樹脂とした。ポリエステル樹脂3は、カルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分として、エチレングリコールとジエチレングリコールを90:10のモル比で含有する。
<ウレタン系>
ウレタン系樹脂としては、楠本化成株式会社製の商品名:NeoRezR986の水溶性ウレタン樹脂を用いた。
<エポキシ系>
エポキシ系の架橋剤として、2官能性のナガセ化成工業株式会社製の商品名「デナコールEX−313」と、4官能性の三菱ガス化学株式会社製の商品名「TETRAD−X」を混合して用いた。フィルムに塗工した塗膜の造膜性および成形後の密着性をもとに、塗膜硬化速度を速くする場合は2官能性の架橋剤比率を多くし、硬化速度を遅くする場合は4官能性の架橋剤比率を少なくすることが好ましい。
<オキサゾリン系>
オキサゾリン系の架橋剤として、株式会社日本触媒製の商品名「エポクロスWS−700」を用いた。
<シラノール系><イソシアネート系>
シラノールおよびイソシアネートの架橋に関しては、上述のバインダー樹脂に含有される反応点を利用した架橋形態を有する。
(フィラー)
日産化学工業株式会社製の商品名「スノーテックスXS」、同商品名「ST−OL」、株式会社日本触媒製の商品名「エポスターMX200W」、日本触媒株式会社製の商品名「Me−6u」を用いた。
(エポキシ樹脂からなる炭素繊維強化プリプレグ)
東邦テナックス株式会社製の織物プリプレグ「テナックス」(登録商標)W−3101/Q−195を用いた。
繊維目付:197g/m2、樹脂含有率:40質量%、150℃の硬化時間5分。
カンタムコンポジット社製の織物プリプレグ「AMC」(登録商標)8575を用いた。
繊維目付:700g/m2、樹脂含有率:45質量%、150℃の硬化時間5分。
テレフタル酸:イソフタル酸の成分モル比が90:10となるようなカルボン酸成分と、エチレングリコールを重合してポリエステルAを得た。また、カルボン酸としてテレフタル酸、グリコール成分としてブチレングリコールを使用して、重合し、ポリエステルBを得た。またポリエステルAを樹脂として、平均粒径1.6μのサイロイド粒子を含有するポリエステルCを得た。ポリエステルA、B、Cを160℃で4時間乾燥し、水分を除去した後、ホッパーに供給し、重量比で50/45/5となるように供給し、チップ混合した後に、280℃に設定した押出機から、ダイを用いて、シート状に溶融押出し、20℃のキャスティングドラムですぐに冷却することで、キャストフィルムを得た後、続く縦延伸工程で、70℃で3.0倍延伸した後、一軸フィルムに各種組成からなるコーティングを表1に示す通り片面もしくは両面にロールコーターによって塗布し、その後ステンター工程に導いて、塗膜を乾燥させて膜とすると同時に、基材フィルムの横延伸を95℃で3.2倍となるように延伸を行い、結晶化ゾーンにおいて210℃で処理しながら、1%トーインすることで熱収縮を抑制して、厚み50μmの二軸延伸フィルムを製膜し、ロール状に巻き取りを行った。
得られた二軸延伸フィルムを、エポキシ樹脂からなる炭素繊維強化プリプレグを5枚積層した積層体をプレス成形する際に、積層体の表面挿入し、成形温度150℃でプレス成形にて一体成形を行い、硬化時間5分として炭素繊維強化樹脂の一体成形品を得た。なお、易接着層Aが炭素繊維強化プリプレグと直接接するように二軸延伸フィルムは挿入した。
得られた物性を表1にまとめた。
表1に示す塗工液に変更して、実施例1と同様に表面被覆フィルムの基材を作成し、プレス成形により炭素繊維強化樹脂の一体成形品を得た。
表1に示す厚み100μm二軸延伸フィルムに変更したほかは、実施例1と同様に表面被覆フィルムの基材を作成し、プレス成形により炭素繊維強化樹脂の一体成形品を得た。なお、二軸延伸フィルムの製膜条件はトーインを0.2%に変更した。
炭素繊維強化プリプレグを表1に示すビニルエステル樹脂からなる炭素繊維強化プリプレグを2枚積層した積層体に変更して、実施例1と同様にプレス成形にて一体成形を行い、硬化時間5分として、炭素繊維強化樹脂の一体成形品を得た。
表1に示す易接着層Aの厚みに変更して、基材を作成し、プレス成形により炭素繊維強化樹脂の一体成形品を得た。
表1に示す易接着層Aの厚みに変更して、基材を作成したところ、易接着層厚みが薄すぎて、均一な塗工が出来ず、良質な基材が得られなかった。
表1に示すように易接着層Aを除去するように塗工を行わず基材を作成し、プレス成形により炭素繊維強化樹脂の一体成形品を得た。
続いて、上述の例示を用いて、機能層として顔料層、もしくはハードコート層を付与した好ましい例示について示す。繊維強化樹脂としての評価は表1に示す通りである。
顔料層として、メチルエチルケトンおよび酢酸エチルを溶媒とし、東レファインケミカル株式会社製のアクリルウレタン系樹脂「商品名:コータックス」をバインダー樹脂として、アルミ粒子を10重量%含有させて塗料を調合した。この塗料を上述の実施例1を用いて得られた一体成形品の易接着層Bの表面に、スプレーガンにより顔料層を微滴化してスプレーコーティングを実施した。ハジキは見受けられず、良好であった。
顔料層として、メチルエチルケトンおよび酢酸エチルを溶媒とし、東レファインケミカル株式会社製のアクリルウレタン系樹脂「商品名:コータックス」をバインダー樹脂として、アルミ粒子を10重量%含有させて塗料を調合した。この塗料を実施例1の二軸延伸フィルムの易接着層Bの表面に、コンマコーターを用いて乾燥後の膜厚20μmになるように塗工し、90℃で乾燥して、顔料層が積層された表面被覆フィルムを得た。この表面被覆フィルムを用いたほかは実施例1と同様にして、繊維含浸樹脂と一体成形を行い、得られた一体成形品の外観を評価した。ハジキは見受けられず、良好であった。
実施例3の二軸延伸フィルムの易接着層Bの表面に、ハードコート塗剤として、日本ペイントオートモーティブコーティングス社製のEJS−08を、コンマ―コーターを用いて厚み35μmになるように塗工し、ハードコート層が積層された表面被覆フィルムを得た。この表面被覆フィルムを用いたほかは実施例1と同様にして、繊維含浸樹脂と一体成形を行い、得られた一体成形品の外観を評価した。ハジキは見受けられず、良好であった。
Claims (11)
- 繊維含浸樹脂と一体成形するための表面被覆フィルムであって、該表面被覆フィルムは、少なくとも基材フィルムと易接着層Aとからなり、該易接着層Aはエポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種類の官能基を含有し、かつその厚さが10〜200nmの範囲であり、該基材フィルムは50〜500μmの厚みである表面被覆フィルム。
- 150℃で30分間処理したときの長手方向および幅方向の熱収縮率が、下記式(1)を満足する請求項1に記載の表面被覆フィルム。
Δχ=|χMD−χTD|≦3.0 ・・・(1)
(上記式中のχMDは長手方向の熱収縮率(%)を示し、χTDは幅方向の熱収縮率(%)を示し、ΔχはχMDとχTDの差(%)の絶対値を示す。) - 基材フィルムが、ポリエステルフィルムである請求項1または2のいずれかに記載の表面被覆フィルム。
- 基材フィルムが二軸配向フィルムである請求項1〜3のいずれかに記載の表面被覆フィルム。
- 可視光に対する全光線透過率が80%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の表面被覆フィルム。
- 基材フィルムの易接層Aを形成していない表面に、エポキシ基もしくはシラノール基を有する易接着層Bを有する請求項1〜5のいずれかに記載の表面被覆フィルム。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の表面被覆フィルムと、該表面被覆フィルムの易接着層Aを形成していない側の表面に、表面保護層および加飾層からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能層を有する表面被覆構成体。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の表面被覆フィルムもしくは表面被覆構成体と、繊維含浸樹脂が易接着層Aと接するように一体成形することを特徴とする表面被覆繊維強化樹脂成形品の製造方法。
- 繊維含浸樹脂の150℃での硬化時間が10分以下である請求項8記載の表面被覆繊維強化樹脂成形品の製造方法。
- 繊維含浸樹脂を構成する繊維が、炭素繊維である請求項8または9のいずれかに記載の表面被覆繊維強化樹脂成形品の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の表面被覆フィルムもしくは表面被覆構成体と、繊維含浸樹脂とが、基材フィルム、易接着層A、繊維含浸樹脂の順で、一体成形されている表面被覆繊維強化樹脂成形品。
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