JP2016083875A - 積層シートおよびその製造方法 - Google Patents

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Koretaka Serizawa
是高 芹沢
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Abstract

【課題】光沢および外観に優れる強化繊維複合材料を有する積層シートの提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂および強化繊維を含む強化繊維複合樹脂材料からなり、表面の算術平均粗さSRaが0.80μm以下であり、かつ表面の十点平均粗さSRzが15.0μm以下である面(A面)を有する強化繊維複合樹脂シートのA面に熱可塑性樹脂を含む樹脂材料からなる樹脂フィルムを積層している積層シート。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂および強化繊維を含む強化繊維複合樹脂材料からなる強化繊維複合樹脂シートに樹脂フィルムを積層してなる積層シートおよびその製造方法に関する。
不連続の強化繊維と熱可塑性樹脂からなる強化繊維複合樹脂は、軽量性や力学特性に優れるとともに、複雑形状の成形品を製造できることから、各種産業用途に幅広く利用されている。中でも強化繊維複合樹脂シートは、強化繊維基材に熱可塑性樹脂を含浸せしめたシート状物であって取り扱い性に優れ、成形安定性に優れるとともに流動性に富むため、圧縮成形などを施すことが可能である成形材料として繊維強化樹脂成形体の製造に好ましく利用できる。しかしながら、強化繊維複合樹脂シートは製造工程において、樹脂の溶融・硬化過程を伴うことで表面平滑性が悪くなり、外観を損ねることが課題の一つであった。
特許文献1では、所定の長さ分布を有する単繊維状の強化繊維が、所定の面内角度分布を持って熱可塑性樹脂中に配置されることにより、長い強化繊維の間隙に、短い強化繊維が効率的に充填され、成形体の面外方向に配向する繊維量が効果的に抑制される結果、成形体表面の平滑性に優れるとともに、強化繊維による強化効率が高まり、疲労特性に優れた繊維強化樹脂成形シートが得られるとされている。しかしながら、繊維強化樹脂成形シート単体での表面平滑性には優れるが、圧縮成形などを施すことにより得られる繊維強化樹脂成形体の表面に、意匠などの機能を施すには、塗装などの更なる工程の追加が必要であり、作業労力の増大やそれに伴うコスト高が問題である。
一方、樹脂成形体の表面に意匠などの機能を施した樹脂フィルムを被覆することで、樹脂成形体の表面に意匠などの機能を付与した積層体も、各種産業用途に幅広く利用されており、繊維強化樹脂成形体の表面を樹脂フィルムで被覆した積層体について、研究開発が行われてきた。
例えば、繊維強化樹脂成形体にフィルムが載置された積層体は、良く知られる繊維強化樹脂成形体の製造に好ましい、圧縮成形などを施すことが可能である成形材料の一つである。特許文献2には、CFRPが織目の凹凸パターンなどの本来有する良好な意匠性を活かしつつ、優れた加飾を施すことのできる炭素繊維強化プラスチック用加飾シート、ならびに加飾複合材料およびその製造方法が開示されている。特許文献3には、炭素繊維複合材料からなる樹脂シート上に、熱可塑性フィルムを積層させてなる樹脂成形品およびその製造方法が開示されている。しかしながら、これらの技術により得られる積層体は、表面平滑性が不十分であり、表面の光沢および外観がなお不十分である課題があった。
特開2014−19780号公報 特開2013−202921号公報 特開2013−221114号公報
本発明は、表面の光沢および外観に優れる積層シートおよびその製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の積層シートは以下の構成を有する。
(1)熱可塑性樹脂および強化繊維を含む強化繊維複合樹脂材料からなり、表面の算術平均粗さSRaが0.80μm以下であり、かつ表面の十点平均粗さSRzが15.0μm以下である面(A面)を有する強化繊維複合樹脂シートのA面に熱可塑性樹脂を含む樹脂材料からなる樹脂フィルムが積層している積層シート。
上記積層シートの好ましい実施形態として以下の構成がある。
(2)前記積層シートの樹脂フィルム面の表面の算術平均粗さSRaが0.05μm以下であり、かつ表面の十点平均粗さRzが3.0μm以下である前記積層シート。
(3)前記強化繊維複合樹脂シート中に強化繊維を2〜60質量%の割合で含む前記いずれかの積層シート。
(4)前記強化繊維複合樹脂シートに含まれる強化繊維の数平均繊維長が0.1〜10mmである前記いずれかの積層シート。
(5)前記強化繊維が炭素繊維である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層シート。
(6)前記樹脂フィルムの厚みが10〜1,000μmの範囲である前記いずれかに記載の積層シート。
(7)前記樹脂フィルムが、層厚み5nmから500nmの範囲にある樹脂Aからなる層(A層)と層厚み5nmから500nmの範囲にある樹脂Bからなる層(B層)を交互にそれぞれ50層以上積層した構造を有し、波長400〜800nmの領域における平均反射率が10%以上の積層フィルムである前記いずれかの積層シート。
そして上記積層シートの好ましい製造方法として以下の構成がある。
(8)熱可塑性樹脂および強化繊維を含む強化繊維複合樹脂材料からなり、表面の算術平均粗さSRaが0.80μm以下であり、かつ表面の十点平均粗さSRzが15.0μm以下である面(A面)を有する強化繊維複合樹脂シートのA面に熱可塑性樹脂を含む樹脂材料からなる樹脂フィルムを積層する積層シートの製造方法。
そして上記積層シートの利用方法として以下の構成がある。
(9)上記いずれかの積層シートを成形した成形品。
本発明の積層シートは光沢および外観に優れる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明における強化繊維複合樹脂シートに用いる樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましく、具体的にはポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン)、ポリアミド(例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、芳香族ナイロン)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート)、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルフォキサイド、ポリテトラフルオロエチレン、アクロニトリルブタジエンスチレン共重合体、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエーテル・エーテル・ケトン、ポリオキシメチレンなどを用いることができる。また、上記熱可塑性樹脂の誘導体や、上記熱可塑性樹脂の共重合体、さらにそれらの混合物でもよい。
本発明における強化繊維複合樹脂シートに用いられる強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などを用いることができる。これらの繊維は2種以上混合して用いても構わない。より軽量で、より耐久性の高い成形品を得るためには、炭素繊維を使用することが好ましい。
本発明に用いられる強化繊維複合樹脂シートは、強化繊維が強化繊維複合樹脂シート中に2〜60質量%の割合で含まれていることが好ましい。強化繊維を2質量%以上含むことにより、得られる成形品の力学特性を向上させることができる。一方、強化繊維を60質量%以下含むことにより、成形加工の際の流動性の低下を抑制し、強化繊維へマトリックス樹脂成分を十分に含浸させることができ、結果的に力学特性を向上させることができる。また、強化繊維複合樹脂シートや積層シートの平滑性を向上させ、積層シートの外観をより向上させることができる。
本発明に用いられる強化繊維複合樹脂シートに含まれる強化繊維の数平均繊維長は0.1mm〜10mmであることが好ましい。より好ましくは0.1mm〜3mmである。強化繊維の数平均繊維長を0.1mm以上とすることにより、強化繊維による補強効果を向上させることができる。一方、強化繊維の数平均繊維長を10mm以下とすることにより、強化繊維複合樹脂シートのスプリングバックを抑制して平滑性をより向上させることができるとともに、内部のクラックや空洞の発生を抑制することができる。
強化繊維複合樹脂シートに含まれる強化繊維の繊維長の測定方法としては、例えば、強化繊維複合樹脂シートの表面を顕微鏡観察し、強化繊維の繊維長を計測する方法(1.表面観察法)や、強化繊維複合樹脂シートのマトリックス樹脂のみを溶解する溶剤を用いて溶解させ、残った強化繊維を濾別して顕微鏡観察により測定する方法(2.溶解法)や、強化繊維が酸化減量しない温度範囲においてマトリックス樹脂のみを焼き飛ばし、強化繊維を分別して顕微鏡観察により測定する方法(3.焼き飛ばし法)などがある。焼き飛ばし法は、マトリックス樹脂を溶解する溶剤がない場合にも適用できる。本発明における強化繊維の数平均繊維長とは、焼き飛ばし法により測定した値を指す。強化繊維が酸化減量しない温度範囲においてマトリックス樹脂のみを焼き飛ばした後、強化繊維を分別して光学顕微鏡により観察し、強化繊維を無作為に400本選び出し、その長さを1μm単位まで測定し、その数平均値を求めることにより、数平均繊維長を算出することができる。
本発明における強化繊維複合樹脂シートの表面の少なくとも一つの面(A面)の算術平均粗さSRaは0.80μm以下である。SRaはより好ましくは0.60μm以下であり、さらに好ましくはが0.40μm以下である。また同時に、本発明に用いられる強化繊維複合樹脂シートの表面の少なくとも一つの面(A面)の十点平均粗さSRzは15.0μm以下である。SRzはより好ましくは12.5μm以下であり、さらに好ましくは10.0μm以下である。SRaおよびSRzが大きすぎると、表面の平滑性が損なわれ、良好な外観の積層シートが得られにくい。
強化繊維複合樹脂シートのSRaおよびSRzは、シート幅方向から中央部にて5cm四方のサンプルを切り出し、株式会社小坂研究所製微細形状測定機(サーフコーダ ET4000A)を用いて測定することができる。
本発明に用いられる強化繊維複合樹脂シートの好ましい製造方法を例示すると、大きくは2つの工程からなる。第1工程は強化繊維と熱可塑性樹脂を押出機などの溶融混練装置を用いて溶融混練し、強化繊維複合樹脂材料からなるチップを得る工程である。第2工程は得られたチップを押出機などの溶融混練装置を用いて溶融し、スリットを有するダイスを通して吐出し、鏡面ロールなどを用いて表面を平滑にする工程である。
強化繊維複合樹脂シートを製造するにあたって、以下の(A)〜(C)のいずれかに記載される方法で製造されたチップを用いることが好ましい。
(A)熱可塑性樹脂を含浸させた100本〜10万本の強化繊維の束を、熱硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる収束剤を用いて収束させたのち、低粘度の熱可塑性樹脂により被覆し、これを3〜10mmの長さにカットしチップ化する。このように軸中心方向に強化繊維の束を収束した形に配置されたチップは、例えば特開2002−187127号公報や特開2006−175787号公報に記載した方法により製造することもできる。
(B)2軸押出機を用いて、熱可塑性樹脂とカットした強化繊維をホッパーから投入し、溶融混練した後2〜4mm径の丸穴を複数有するダイスを通して吐出し、水冷または空冷後に、これを3〜10mmの長さにカットしチップ化する。このチップはチップ中でランダムに強化繊維が配向している。
(C)2軸押出機を用いて、熱可塑性樹脂をホッパーから投入したのち、熱可塑性樹脂が十分に溶融した状態で、スクリュー中間付近でボビン巻きされていた強化繊維フィラメントを投入して混合した後、2〜4mm径の丸穴を複数有するダイスを通して吐出し、水冷または空冷後に、これを3〜10mmの長さにカットしチップ化する。このチップはチップ中でランダムに強化繊維が配向している。
(A)〜(C)いずれかの方法で製造されたチップを、一軸または二軸の押出機のホッパーから投入し、熱可塑性樹脂の融点より10℃ないし40℃高い温度で溶融しながら、強化繊維の束を解繊する。そしてその組成物を短辺0.5mm〜5mmの長方形に開口したダイスを通して吐出する。この際、押出機先端部での樹脂圧力は5〜50MPaであることが好ましい。この範囲にあることで、得られる強化繊維複合樹脂シートの表面の算術平均粗さおよび表面の十点平均粗さを前述の所望の範囲に容易に調整することができ、また生産性に優れる。
なお、チップをホッパーに投入する際には、成分の異なる熱可塑性樹脂や、同じ成分でも粘度の異なる熱可塑性樹脂を投入して、溶融時の粘度調整や強化繊維の含有割合を調整することもできる。
ダイスから吐出されて解繊された強化繊維を含有する強化繊維複合樹脂材料は、一定温度に調節された一組以上のロール間に挟まれて、またはステンレス製のベルト間に挟まれて加熱圧縮されることにより強化繊維複合樹脂シートとなる。この際、ロールまたはステンレス製のベルトの表面の最大高さは、1.5μm以下であることが好ましい。ロールまたはステンレス製のベルトの表面粗度を上記範囲とすることによって、強化繊維複合樹脂シートの表面の算術平均粗さおよび表面の十点平均粗さを前述の所望の範囲に容易に調整することが達成できる。
本発明における強化繊維複合樹脂シートの厚みは0.05mm〜10mmであることが好ましい。強化繊維複合樹脂シートの厚みを0.05mm以上とすることにより、強度および剛性を向上させることができる。強化繊維複合樹脂シートの厚みは0.1mm以上がより好ましい。一方、強化繊維複合樹脂シートの厚みを10mm以下とすることにより、ハンドリング性を向上させることができる。強化繊維複合樹脂シートの厚みは2mm以下がより好ましい。
本発明における強化繊維複合樹脂シートは、強化繊維複合樹脂シート同士を2シート以上積層してもよく、接しているシート同士の強化繊維の配向方向が縦横に交差していることが好ましい。積層された強化繊維複合樹脂シートの強化繊維の配向方向が十字に交差することにより、積層された強化繊維複合樹脂シートにおいて縦横の強化繊維の配向方向が同等となるため、積層シート全体の強度を向上させることができる。
本発明における樹脂フィルムに用いる樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましい。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリアセタールなどのポリオレフィン、ノルボルネン類の開環メタセシス重合体、付加重合体、他のオレフィン類との付加共重合体などのシクロオレフィン、ポリ乳酸・ポリブチルサクシネートなどの生分解性ポリマー、ナイロン6,11,12,66などのポリアミド、アラミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグリコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合コポリマーなどを用いることができる。この中でも強度、透明性および汎用性の観点からポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステルが好ましい。特に好ましくはポリエステルである。これらはホモポリマーでも共重合ポリマー、さらには他の熱可塑性樹脂の混合物であってもよい。また、各熱可塑性樹脂中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。
ポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体の重合により得られるポリエステルが好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4‘−ジフェニルジカルボン酸などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えばアジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でも高い屈折率を発現するテレフタル酸と2,6ナフタレンジカルボン酸を用いることが好ましい。これらの酸成分は1種のみを用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらにはヒドロキシ安息香酸のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2―プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2―ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみで用いてもよく、2種以上併用してもよい。
上記ポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレートおよびその重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体などがより好ましい。
樹脂フィルムの厚みは10μm以上1,000μm以下であることが好ましい。この範囲にあることで、積層シートの表面の平滑性に優れる。また、適度なコシを有することでハンドリング性が良くなる。
樹脂フィルムは、層厚み5nmから500nmの範囲にある樹脂Aからなる層(A層)と層厚み5nmから500nmの範囲にある樹脂Bからなる層(B層)とが交互にそれぞれ50層以上積層された構造を有するものが好ましい。以下、かような構造の樹脂フィルムを交互積層フィルムという。交互積層フィルムは波長400〜800nmの領域における光の平均反射率が10%以上であることが好ましい。このような積層フィルムを用いたとき、金属調の外観を得ることができる。
交互積層フィルムは異なる2種の樹脂の界面で生じる光の反射現象を利用して反射率を高めている。また、A層とB層以外の第3の層、樹脂DからなるD層を使用して以下の積層状態をとってもいい。
DA(BA)n、DA(BA)nD、A(BA)nDA(BA)m
(ここで、A、B、DはそれぞれA層、B層、D層を意味し、かっこは積層状態の繰り返しを意味する。m,nは自然数である。例えばA(BA)nにおいてn=3の場合、厚み方向にABABABAの順で積層されていることを表す。)
この場合D層が最外層もしくは中間層に存在することができる。
また、交互積層フィルムは層厚みが5nmから500nmの範囲にある樹脂Aからなる層(A層)と層厚みが5nmから500nmの範囲にある樹脂Bからなる層(B層)とが交互にそれぞれ50層以上積層されていることが好ましい。より好ましくはそれぞれ200層以上であり、さらに好ましくはそれぞれ800層以上である。A層とB層をそれぞれ50層以上積層した構造とする平均反射率を10%以上とすることが容易とある。A層とB層がそれぞれ200層以上であると、反射帯域を広幅化することが可能となるため、金属調の外観を得ることが可能となり好ましい。A層とB層がそれぞれ800層以上であると波長400〜800nmの領域における平均反射率が50%以上とし易くなるため、一層金属調の外観を有する積層フィルムを得ることができる。平均反射率を調整することで鏡として使用することもできる。積層数の上限値としては特に限定するものではないが、装置の大型化や層数が多くなりすぎることによる積層精度の低下に伴うる反射率の低下を考慮すると、A層、B層それぞれ1500層以下であることが好ましい。なお、ここでいう平均反射率とは波長1nmの間隔で測定された反射率を波長区間[400,800](nm)にわたって足し合わせ、その値を測定数で割った値のことである。
また、交互積層フィルムでは、光の反射率を維持するという観点から樹脂Aからなる層(A層)と樹脂Bからなる層(B層)の各層厚みが5nmから500nmの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは30nmから300nm以下である。この場合、反射帯域内の反射率がより高い反射率となるため好ましい。
なお、反射帯域は各層の層厚みを下記式1が成立するようにして最大の反射が起こるように設計される。また、反射率についてはA層とB層の屈折率差と、A層とB層の層数にて制御することができる。
2×(na・da+nb・db)=λ 式1
na:A層の面内平均屈折率
nb:B層の面内平均屈折率
da:A層の層厚み(nm)
db:B層の層厚み(nm)
λ:主反射波長(1次反射波長) 。
交互積層フィルムに用いる樹脂Aまたは樹脂Bは熱可塑性樹脂が好ましく、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステルがより好ましく、ポリエチレンがさらに好ましい。
交互積層フィルムにおける樹脂Aと樹脂Bの好ましい樹脂の組み合わせは、SP値(ヒルデブラント氏により導入された正則溶液論により定義された溶解性パラメータ)の差の絶対値が1.0以下となる樹脂を用いることが好ましい。この場合、層間剥離が生じにくくなる。より好ましくは樹脂Aと樹脂Bが同一の繰り返し単位を主に含んでなることが好ましい。ここでいう繰り返し単位とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことであり、主に含んでなるとは最も多い繰り返し単位のことを指す。例えば、一方の樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合は、エチレンテレフタレート単位であり、この場合の他の樹脂としてはエチレンテレフタレート単位とシクロヘキサンー1,4−ジメチレンテレフタレート単位からなる重合体(共重合体)が例として上げられる。また、別の例としては、一方の樹脂がポリエチレンの場合はエチレン単位である。同一の繰り返し単位を主に含んでなる樹脂を組み合わせて用いると、フローマークなどの積層不良や層間剥離などの問題が生じにくくなる。
また、本発明でいうA層とB層については面内平均屈折率差が0.03以上であることが好ましい。屈折率差を0.03以上とすることにより、反射率を向上させることができる。より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上である。屈折率差を上記範囲にするためには、B層の樹脂が非晶性であるとよい。これを達成するためにはフィルムをテンターで熱処理し、B層の配向緩和を行うことが好ましく、面内平均屈折率の差を広げることができる。
次に、本発明に好ましく用いられる樹脂Aおよび樹脂Bにポリエステルを用いた交互積層フィルムの製造方法を以下に説明する。まずは、一般的な二軸延伸ポリエステルフィルムの具体的な製造方法について記載する。まず、本発明に用いる二軸配向フィルムに用いられるポリエステルA(樹脂Aに相当)およびポリエステルB(樹脂Aに相当)については、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートを購入したり、公知の方法で重縮合して得ることができるが、たとえば、ポリエチレンテレフタレートの場合、以下のように重合することができる。
テレフタル酸ジメチル、およびエチレングリコールの混合物に、酢酸マグネシウムと三酸化アンチモンとを添加して、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行う。次いで、該エステル交換反応生成物に、リン酸85%水溶液を添加した後、重縮合反応釜に移行する。重合釜内で加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1hPaの減圧下、290℃で重縮合反応を行い、所望の極限粘度のポリエチレンテレフタレートを得ることができる。粒子を添加する場合は、エチレングリコールに粒子を分散させたスラリーを所定の粒子濃度となるように重合反応釜に添加して、重合を行うことが好ましい。
また、ポリブチレンテレフタレートの製造は、たとえば以下のように行うことができる。テレフタル酸、および1,4−ブタンジオールの混合物を窒素雰囲気下で140℃まで昇温して均一溶液とした後、オルトチタン酸テトラ−n−ブチルと、モノヒドロキシブチルスズオキサイドとを添加しエステル化反応を行う。次いで、オルトチタン酸テトラ−n−ブチルを添加して、減圧下で重縮合反応を行い、所望の極限粘度のポリブチレンテレフタレートを得ることができる。
以上のようにして得られたポリエステルを用いて交互積層フィルムを製造する際の好ましい方法について、具体的に記述する。まず、使用するポリエステルを混合する場合は所定の割合となるように計量し混合する。次いで、窒素雰囲気、真空雰囲気などで、たとえば150℃5時間の乾燥を行い、ポリエステル中の水分率を好ましくは50ppm以下とする。その後、押出機に供給し溶融押出する。なお、ベント式二軸押出機を用いて溶融押出を行う場合は樹脂の乾燥工程を省略してもよい。次いで、フィルタやギアポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、たとえば、ワイヤー状電極もしくはテープ状電極を使用して静電印加する方法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステルのガラス転移点〜(ガラス転移点−20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。
次いで、かかる未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行う。
かかる延伸方法における延伸倍率としては、それぞれの方向に、好ましくは、2.5〜3.5倍、さらに好ましくは2.8〜3.5倍、特に好ましくは3〜3.4倍が採用される。また、延伸速度は1,000〜200,000%/分であることが望ましい。また延伸温度は、ガラス転移点〜(ガラス転移点+50℃)の温度が採用されるが、さらに好ましくは90〜130℃、特に好ましくは長手方向の延伸温度を100〜120℃、幅方向の延伸温度を90〜110℃とすることが好ましい。また、延伸は各方向に対して複数回行ってもよい。
さらに二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行う。熱処理はオーブン中、加熱したロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。この熱処理は120℃以上ポリエステルの融点以下の温度で行われるが、200〜240℃の熱処理温度とすることが好ましい。フィルムの透明性、寸法安定性の点からは210〜235℃であればより好ましい。また、熱処理時間は特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、好ましくは1〜60秒間、より好ましくは1〜30秒間行うことが好ましい。さらに、熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。さらに、横延伸工程の前で、インク印刷層や接着剤、蒸着層との接着力を向上させるため、少なくとも片面にコロナ処理を行ったり、コーティング層を設けることもできる。このときの塗工液はロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、バーコーター、ダイコーター、ディップコーター等の公知の塗工手段を用いて、前記透明基材に塗布する。
同時二軸延伸の場合について次に説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
次に、キャストフィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6〜50倍が好ましく、積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、面積倍率として8〜30倍が特に好ましく用いられる。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率を同一とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度からガラス転移温度+120℃までの範囲が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うことが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行っても良い。熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理する。
次に、多層積層押出法によるポリエステルフィルムの製造方法について詳細に説明する。2種類のポリエステルAおよびポリエステルBをペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギアポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルタ等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。
これらの2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出されたポリエステルAおよびポリエステルBは、次に多層積層装置に送り込まれる。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィールドブロックを用いることができる。また、これらを任意に組み合わせても良い。そのフィードブロックの構造は、多数の微細スリットを有する櫛形のスリット板に部材を少なくとも1個有しており、2つの押出機から押し出された樹脂Aと樹脂Bが、各マニホールドを経由して、スリット板に導入される。ここでは導入板を介して、樹脂Aと樹脂Bが選択的に交互にスリットに流入するため、最終的にはA/B/A/B/A・・・といった多層膜を形成することができる。また、スリット板をさらに重ね合わせることにより、層数を増やすことも可能である。また、各層の厚みを精度良く制御するためには、加工精度0.1mm以下の放電加工、ワイヤー放電加工にて、各層の流量を調整する微細スリットを設けたフィードブロックが好ましい。また、この際、樹脂温度の不均一性を低減するため、熱媒循環方式による加熱が好ましい。また、フィードブロック内の壁面抵抗を抑制するため、壁面の粗さを0.4S以下にするか、室温下における水との接触角が30°以上であると良い。
このようにして多層積層された溶融体を、上述のポリエステルフィルムの製造方法と同
様に行い、積層フィルムを得ることができる。
交互積層フィルムの場合、厚みは、30μm以上、300μm以下であることが好ましい。この範囲にあることで、平均反射率10%以上の達成は容易であり、また、意匠性にも優れる。また、この厚みによりフィルムが適度なコシを有し、ハンドリング性が良くなる。
本発明に用いられる樹脂フィルムの表面の算術平均粗さSRaは0.05μm以下であることが好ましい。より好ましくはSRaが0.03μm以下である。また同時に、本発明の樹脂フィルムの表面の十点平均粗さSRzは3.00μm以下であることが好ましい。より好ましくはSRzが2.00μm以下である。SRaおよびSRzを前記範囲にすることにより、積層シート表面の光沢性および外観をより向上させることができる。
積層フィルムのSRaおよびSRzは、フィルム幅方向から中央部にて5cm四方のサンプルを切り出し、株式会社小坂研究所製微細形状測定機(サーフコーダ ET4000A)を用いて測定することができる。
なお、本発明に用いられる樹脂フィルムの表面には蒸着などによる金属層、ハードコート層、着色層、易滑層、帯電防止層、耐摩耗性層、反射防止層、紫外線吸収層、印刷層、透明導電層、ガスバリア層、ホログラム層、剥離層、粘着層、エンボス層、接着層などの機能性層を形成してもよい。
本発明における強化繊維複合樹脂シートと樹脂フィルムとを積層する方法としては、各種方法を取り得る。積層方法としては、例えば、ドライラミネート法、押出ラミネート法および共押し出し法などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
積層に接着剤を用いる場合、その接着剤としては、熱硬化タイプでも熱可塑タイプでも構わないが、熱硬化タイプの方が好ましい。例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体、クロロプレン、ポリブタジェン等のゴム系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリブタジエン、またはこれらの樹脂のカルボキシル変性物、エポキシ系樹脂、セルロース系誘導体、エチレン酢酸ビニル系共重合体、ポリエチレンオキサイド、アクリル系樹脂、リグニン誘導体等、ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
接着剤層の厚みは1〜30μmが好ましい。接着剤層の厚みを1μm以上とすることにより、接着力を向上させ、積層シートの剥離を抑制することができる。一方、接着剤層の厚みを30μm以下とすることにより、乾燥や異物の押し痕残りを抑制し、外観や意匠性をより向上させることができる。接着剤層の厚みは15μm以下がより好ましい。
本発明の積層シートの樹脂フィルム面の表面の算術平均粗さSRaは0.05μm以下であることが好ましい。より好ましくはSRaが0.03μm以下である。また同時に、本発明の積層シートの樹脂フィルム面の表面の十点平均粗さSRzは3.0μm以下であることが好ましい。より好ましくはSRzが2.0μm以下である。SRaを0.05μm以下、かつSRzを3.0μm以下とすることにより、表面の平滑性をより向上させ、積層シートの外観をより向上させることができる。
積層シートのSRaおよびSRzは、シート幅方向から中央部にて5cm四方のサンプルを切り出し、株式会社小坂研究所製微細形状測定機(サーフコーダ ET4000A)を用いて測定することができる。
本発明の積層シートは、軽量、高剛性かつ賦形性を備え、表面の平滑性に優れていることから、真空成形、真空加圧成形、プレス成形、パンチング成形を容易に施すことができ、得られた成形体は軽量、高剛性かつ優れた外観を有する。
まず本実施例の物性値の測定法、評価法を記載する。
(物性値の評価法)
(1)固有粘度(IV)
オルトクロロフェノール100mlにポリエステル組成物を溶解させ(溶液濃度C=1.2g/dl)、その溶液の25℃での粘度を、オストワルド粘度計を用いて測定する。また、同様に溶媒の粘度を測定する。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式により、[η](dl/g)を算出し、得られた値でもって固有粘度(IV)とする。
ηsp/C=[η]+K[η]・C
(ここで、ηsp=(溶液粘度(dl/g)/溶媒粘度(dl/g))―1、Kはハギン
ス定数(0.343とする)である。)。
(2)強化繊維複合樹脂シートに含まれる強化繊維の繊維長
400℃以上800℃以下でマトリックス樹脂のみを焼き飛ばし、強化繊維を分別して光学顕微鏡観察により測定する方法(焼き飛ばし法)を用いて測定した。測定は強化繊維を無作為に400本選び出し、その長さを1μm単位まで光学顕微鏡にて測定し、数平均繊維長を算出した。
(3)表面の算術平均粗さSRa、表面の十点平均粗さSRz
繊維強化複合樹脂シート、樹脂フィルムおよび積層シートのそれぞれについて、シート幅方向から中央部にて5cm四方のサンプルを切り出した。次いで株式会社小坂研究所製微細形状測定機(サーフコーダ ET4000A)を用いて測定した。
測定は下記の条件とした。
検出器:PU−ET(0×08)
X測定長さ:1.0mm
X送り速さ:0.1mm/s
X戻り速さ:0.1mm/s
Y送りピッチ:5μm
Z測定倍率:20000
極性:ノーマル
Y軸:デフォルト
Yライン数:81
Xピッチ下限:1.0μm
低域カットオフ:0.25mm
高域カットオフ:R+W
位相特性:2CR ノーマル型
総サンプル点数上限:90601
レベリング:無し
測定力:100N。
(4)積層厚み、積層数
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVでフィルムの断面を10000〜40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、RuOやOsOなどの染色技術を使用した。
積層構造の具体的な求め方を、説明する。上記装置から得た約4万倍のTEM写真画像を、CanonScanD123Uを用いて画像サイズ720dpiで取り込んだ。画像をビットマップファイル(BMP)もしくは、圧縮画像ファイル(JPEG)形式でパーソナルコンピュータに保存し、次いで画像処理ソフトImage−Pro Plus ver.4(販売元 プラネトロン(株))を用いて、このファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向位置と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域の平均明るさとの関係を、数値データとして読み取った。表計算ソフト(Excel2000)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ6(間引き6)でデータ採取後に、3点移動平均の数値処理を施した。さらに、この得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBA(ビジュアル・ベーシック・フォア・アプリケーションズ)プログラムにより、その微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合うこれらの間隔を1層の層厚みとして層厚みを算出した。この操作を写真毎に行い、全ての層の層厚みを算出した。
(5)平均反射率
積層フィルムのフィルム幅方向の中央部にて5cm四方のサンプルを切り出した。次いで株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計(U4100 Spectrophotomater)を用いて入射角度φ=10度における相対反射率を測定した。付属の積分球はφ60mm、内壁は硫酸バリウムであり、標準板は酸化アルミニウムである。サンプルはフィルム横手(TD)方向がサンプル台に対して垂直となるようにし、積分球に積層フィルムの表面のどちらか一方が接触するよう設置した。
測定は下記の条件とした。
光 源: タングステンランプ
検出速度: 600nm/min
サンプリング間隔:1.00nm
スリット: 2.00nm
PbS感度:2 。
また、サンプル裏面からの反射による干渉をなくすため、日東電工株式会社製の脱鉛タイプビニールテープNo.21 黒 (厚み0.2mm、幅50mm、長さ20m)を積層フィルムサンプルの裏面に気泡が入らないようローラー等を用い貼り合わせた。
次いで、波長400〜800nmの平均反射率を算出した。平均反射率の算出方法は、波長1nm毎の相対反射率のデータを用いて、シンプソン法の公式に基づき、反射曲線と波長範囲で囲まれた面積を計算し、波長範囲の幅である400で除することにより求めた。
(6)光沢度
JIS−Z−8741(1997年版)に規定された方法に従って、スガ試験機製デジタル変角光沢度計UGV−5Dを用い、60°鏡面光沢度を測定した。測定数はn=5で行い、最大値と最小値を除いた平均値を採用した。
(7)外観
積層シートの樹脂フィルム面に500mmの距離で正対し、視力1.0〜1.5の観察者が積層シートの樹脂フィルム面を観察し、以下の基準で判断した。
◎:表面に凹凸形状を認識できない。
○:表面に凹凸形状をわずかに認識できる。
△:表面に凹凸形状を認識できる。
×:表面に著しい凹凸形状が認識できる。
(樹脂)
積層フィルムの樹脂Aとして以下のものを準備した。
(樹脂A)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール60質量部の混合物に、テレフタル酸ジメチル量に対して酢酸マグネシウム0.09重量部、三酸化アンチモン0.03質量部を添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行った。次いで、該エステル交換反応生成物にテレフタル酸ジメチル量に対してリン酸85%水溶液0.020質量部を添加した後、重縮合反応層に移行した。さらに、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行いIV=0.63のポリエチレンテレフタレート(表1では「PET」と表示)を得た。
一方、樹脂Bとしては以下のものを準備した。
(樹脂B)
IVが0.55でありスピログリコール成分21mol%、シクロヘキサンジカルボン酸成分29mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート、IVが0.89のポリブチレンテレフタレート、IVが1.19のポリブチレンテレフタレートおよび樹脂Aを7:1:1:1の重量比率で混合したポリエステル組成物を使用した。(表1では「SPG−PET]と表示)。
(実施例1)
(強化繊維複合樹脂シート)
ナイロン6を70重量%、炭素繊維(表1では「CF」と表示)を30重量%含有するチップを1軸の押出機に投入し、250℃で溶融させて混練した後、ギアポンプで計量しながらダイス(開口サイズ:2mm×200mm)に供給した。この際、押出機先端部での樹脂圧力が18MPaとなるよう、押出機の回転数を制御した。吐出された繊維強化樹脂シートを150℃のヒーターで加熱されたロール間幅0.5mmの2つの加温されたニップロール(表面の最大高さ:0.5μm)で冷却固化し、幅210mm、厚み0.5mmの強化繊維複合樹脂シートを得た。得られた強化繊維複合樹脂シートのA面の算術平均粗さSRaは0.21μmであり、かつ表面の十点平均粗さSRzは11.06μmであった。また、強化繊維複合樹脂シート中の炭素繊維の数平均繊維長は0.5mmであった。
(樹脂フィルム)
樹脂Aを180℃、3時間で真空乾燥した後、一方、樹脂Bを100℃、5時間窒素下の乾燥後、それぞれ2台の二軸押出機に投入し、280℃で溶融させて混練した。なお、ホッパー下部は窒素パージを行った。次いで、FSS(Fiber Sintered Stereo)タイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比が1樹脂A/樹脂B=1.5/1になるよう計量しながらスリット数269個のスリット板1とスリット数267個のスリット板2とスリット数269個のスリット板3によって樹脂Aおよび樹脂Bを交互に積層し、フィードブロックにて合流させて801層に積層された積層体とした。合流した樹脂Aおよび樹脂Bはフィードブロック内にて各層の厚みが表面側から反対表面側に向かうにつれて徐々に厚くなるように変化させ(このときのA層とB層の層厚みの傾きは0.46)、樹脂Aが401層、樹脂Bが400層からなる厚み方向に交互に積層された構造とした。また、隣接するA層とB層の層厚みはほぼ同じになるようにスリット形状を設計した。この設計において、フィルム厚み100μmでA層とB層の積層比を1.5とすると、400nm〜800nmの波長範囲に反射帯域が生じるものとなる。このようにして得られた計801層からなる積層体を、マルチマニホールドダイに供給、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.0倍延伸し、その後一旦冷却した。次に、この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.3倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で240℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度にて幅方向に3%の弛緩処理を施し、その後、室温まで徐冷後、巻き取った。得られた樹脂フィルムの厚みは100μmであり、A層の平均厚みは143.3nm、B層の平均厚みは106.3nmであった。また、得られた樹脂フィルムの平均反射率は71.9%であった。さらに、得られた樹脂フィルムの表面の算術平均粗さSRaは0.003μmであり、かつ表面の十点平均粗さSRzは0.14μmであり、表面の光沢度は769%であった。
(積層シート)
樹脂フィルムに、東洋モートン製AD−76P1と東洋モートン製CAT−15Lをそれぞれ100質量部と15質量部混合した得た接着剤(固形分濃度50質量%)を乾燥後厚みで7g/mとなるよう塗布し、乾燥温度70℃から90℃で速度20m/minで乾燥後、強化繊維複合樹脂シートをA面が樹脂フィルムとの貼り合わせ面となるよう、ニップ圧力0.4MPa、温度40℃でラミネートニップロールにより貼り合わせを行った。その後、40℃で7日間の熱処理を施して積層シートを得た。得られた積層シートの樹脂フィルム面の算術平均粗さSRaは0.02μmであり、かつ表面の十点平均粗さSRzは1.06μmであった。また、得られた積層シートの光沢度は473%であり、外観は◎であった。
(実施例2)
実施例1において、押出機先端部での樹脂圧力を12MPaに、ニップロールの表面の最大高さを0.9μmに変更した以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合樹脂シートを得た。得られた繊維強化複合樹脂シート中の炭素繊維の数平均繊維長は0.9mmであった。この繊維強化複合樹脂シートを用いて、繊維強化複合樹脂シートの厚みを1.0mmに変更した以外は実施例1と同様の条件にて積層シートを得た。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、押出機先端部での樹脂圧力を16MPaに、ニップロールの表面の最大高さを1.5μmに変更した以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合樹脂シートを得た。得られた繊維強化複合樹脂シート中の炭素繊維の数平均繊維長は0.5mmであった。この繊維強化複合樹脂シートを用いて、繊維強化複合樹脂シートの厚みを2.0mmに変更した以外は実施例1と同様の条件にて積層シートを得た。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1において、樹脂シートを厚み500μmのエンボス加工を施したポリ塩化ビニル(PVC)製シートに変更した以外は実施例1と同様の条件にて積層シートを得た。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1において、ナイロン6の含有量を30重量%に、炭素繊維の含有量を70重量%に、押出機先端部での樹脂圧力を42MPaに変更した以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合樹脂シートを得た。得られた繊維強化複合樹脂シート中の炭素繊維の数平均繊維長は0.5mmであった。この繊維強化複合樹脂シートを用いて、実施例1と同様の条件にて積層シートを得た。結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1において、押出機先端部での樹脂圧力を39MPaに変更した以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合樹脂シートを得た。得られた繊維強化複合樹脂シート中の炭素繊維の数平均繊維長は12mmであった。この繊維強化複合樹脂シートを用いて、実施例1と同様の条件にて積層シートを得た。結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例1において、繊維強化複合樹脂シートの熱可塑性樹脂をポリプロピレンに、繊維強化複合樹脂シートを得る際の樹脂の溶融温度を200℃に、繊維強化複合樹脂シートを得る際のニップロールの温度を100℃に、ナイロン6の含有量を90重量%、炭素繊維の含有量を10重量%に変更した以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合樹脂シートを得た。得られた繊維強化複合樹脂シート中の炭素繊維の数平均繊維長は7mmであった。この繊維強化複合樹脂シートを用いて、樹脂フィルムを厚み25μmのポリエチレンテレフタレート製二軸延伸フィルムに変更した以外は実施例1と同様の条件にて積層シートを得た。結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例1において、繊維強化複合樹脂シートの樹脂をポリフェニレンサルファイドに、繊維強化複合樹脂シートを得る際の樹脂の溶融温度を320℃に変更した以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合樹脂シートを得た。得られた繊維強化複合樹脂シート中の炭素繊維の数平均繊維長は1.5mmであった。この繊維強化複合樹脂シートを用いて、樹脂フィルムを厚み5μmのポリエチレンテレフタレート製二軸延伸フィルムに変更した以外は実施例1と同様の条件にて積層シートを得た。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、押出機先端部での樹脂圧力を20MPaに、ニップロールの表面の最大高さを2.5μmに変更した以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合樹脂シートを得た。得られた繊維強化複合樹脂シート中の炭素繊維の数平均繊維長は0.5mmであった。この繊維強化複合樹脂シートを用いて、実施例1と同様の条件にて積層シートを得た。結果を表1に示す。
Figure 2016083875
本発明の積層シートを使用した成形品は自動車の内外装部品をはじめとして各種家電機器、建築部材などの製品(部品)などに特に好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 熱可塑性樹脂および強化繊維を含む強化繊維複合樹脂材料からなり、表面の算術平均粗さSRaが0.80μm以下であり、かつ表面の十点平均粗さSRzが15.0μm以下である面(A面)を有する強化繊維複合樹脂シートのA面に熱可塑性樹脂を含む樹脂材料からなる樹脂フィルムが積層している積層シート。
  2. 前記積層シートの樹脂フィルム面の表面の算術平均粗さSRaが0.05μm以下であり、かつ表面の十点平均粗さRzが3.0μm以下である請求項1に記載の積層シート。
  3. 前記強化繊維複合樹脂シート中に強化繊維を2〜60質量%の割合で含む請求項1または2のいずれかに記載の積層シート。
  4. 前記強化繊維複合樹脂シートに含まれる強化繊維の数平均繊維長が0.1〜10mmである請求項1〜3のいずれかに記載の積層シート。
  5. 前記強化繊維が炭素繊維である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層シート。
  6. 前記樹脂フィルムの厚みが10〜1,000μmの範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の積層シート。
  7. 前記樹脂フィルムが、層厚み5nmから500nmの範囲にある樹脂Aからなる層(A層)と層厚み5nmから500nmの範囲にある樹脂Bからなる層(B層)を交互にそれぞれ50層以上積層した構造を有し、波長400〜800nmの領域における平均反射率が10%以上の積層フィルムである請求項1〜6のいずれかに記載の積層シート。
  8. 熱可塑性樹脂および強化繊維を含む強化繊維複合樹脂材料からなり、表面の算術平均粗さSRaが0.80μm以下であり、かつ表面の十点平均粗さSRzが15.00μm以下である面(A面)を有する強化繊維複合樹脂シートのA面に熱可塑性樹脂を含む樹脂材料からなる樹脂フィルムを積層する、請求項1〜7いずれかの積層シートの製造方法。
  9. 請求項1〜7いずれかの積層シートを成形した成形品。
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