JP2018167325A - 被矯正板のローラ矯正方法およびローラ矯正設備 - Google Patents

被矯正板のローラ矯正方法およびローラ矯正設備 Download PDF

Info

Publication number
JP2018167325A
JP2018167325A JP2018052349A JP2018052349A JP2018167325A JP 2018167325 A JP2018167325 A JP 2018167325A JP 2018052349 A JP2018052349 A JP 2018052349A JP 2018052349 A JP2018052349 A JP 2018052349A JP 2018167325 A JP2018167325 A JP 2018167325A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
plate
roller
corrected
width direction
roll
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018052349A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6954196B2 (ja
Inventor
比護 剛志
Tsuyoshi Higo
剛志 比護
五十嵐 一嗣
Kazutsugu Igarashi
一嗣 五十嵐
健吾 橋本
Kengo Hashimoto
健吾 橋本
篤史 清水
Atsushi Shimizu
篤史 清水
いつか 笹原
Itsuka Sasahara
いつか 笹原
泰輔 岩城
Yasusuke Iwaki
泰輔 岩城
大介 渡辺
Daisuke Watanabe
大介 渡辺
潤 根上
Jun Negami
潤 根上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp filed Critical Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp
Publication of JP2018167325A publication Critical patent/JP2018167325A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6954196B2 publication Critical patent/JP6954196B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Straightening Metal Sheet-Like Bodies (AREA)

Abstract

【課題】被矯正板のローラ矯正において、被矯正板に付与する最大加工度の設定やロールベンディング量の設定に関する具体的指標に基づき、安定的にかつ効率的に平坦度矯正効果が得られる被矯正板のローラ矯正方法を提供する。【解決手段】複数本のロールが上下に千鳥状に配置され、ロール押込量の板幅方向分布を調整する機構を有するローラレベラにおいて、当該複数本のロール間に被矯正板を通して繰り返し曲げを与えることによって被矯正板を平坦化する被矯正板のローラ矯正方法であって、ローラ矯正中のロールベンディング量を、矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量と、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量と、の合算として設定することを特徴とする、被矯正板のローラ矯正方法が提供される。【選択図】図3

Description

本発明は、複数本のロールを上下に千鳥状に配置し、そのロール間に被矯正板を通して繰り返し曲げを与えることによって、被矯正板を平坦化するローラレベラにおける被矯正板のローラ矯正方法およびローラ矯正設備に関するものである。
圧延や冷却過程などで発生した被矯正板の平坦度不良を矯正するために、複数本のロールを上下に千鳥状に配置したローラレベラが用いられる。ローラレベラによる矯正作用は、被矯正板の板厚よりも狭い上下ロール間隙に該被矯正板を通板させることで被矯正板に繰り返し曲げを与えることによって、被矯正板を平坦化するものである。以下では、あるロールの頂点と、該ロールの前後ロールの頂点を結ぶ直線との距離を被矯正板の板厚から差し引いたものを該ロールにおけるロール押し込み量と呼ぶ。
通常、ロール押し込み量は入側から出側に向けて漸減するように設定される。しかしながら、最入側ロール近傍では、被矯正板に対する拘束力が小さいので、被矯正板に付与される曲率の大きさは入側から数本目(通常は、3本目あるいは4本目と言われている)で最大となり、出側に向けて漸減する。このとき、以下では、被矯正板に付与される曲率の最大値を該被矯正板の降伏曲率で除した値を最大加工度と呼ぶ。
一般には、被矯正板の寸法、材料定数、平坦度やローラレベラの剛性などを考慮して、被矯正板を平坦化するために必要な最大加工度が得られるように、各ロールのロール押し込み量を設定して、ローラ矯正を実施している。
特許文献1には、ローラ矯正において最大加工度を3以上とすればよいことが示されている。しかしながら、「3以上」という最大加工度の下限値指標はあるものの、個々の被矯正板に対し、具体的にどれだけの最大加工度を与えればよいかは十分にはわかっていない。
しかも、一般に、被矯正板のローラ矯正に用いられるロールの胴長は、そのロール径に比べて長いので、矯正反力に伴うロールたわみにより、ロール押し込み量がロール胴長方向(板幅方向)に分布する。このような、ローラ矯正中のロールたわみは、該被矯正板を切断した際の形状不良を招くことも示されている。それゆえ、例えば、特許文献2には、ローラ矯正時のロール押し込み量の板幅方向偏差を最小化することを特徴とする方法が開示されている。以下、本明細書ではローラ矯正時のロール押し込み量の板幅方向偏差を最小化するためのロールベンディングを「矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング」という。
一方、被矯正板のローラ矯正において、あえてローラ矯正時のロール押し込み量を板幅方向に分布させて矯正することにより、被矯正板の平坦度が向上しうることが示されている。例えば、非特許文献1には、胴長方向に径差を設けたロールを組み込んだローラ矯正の実験結果が得られており、ローラ矯正時のロール押し込み量を板幅方向に分布させることでローラ矯正による平坦度改善効果が向上することが示されている。以下、本明細書ではローラ矯正時のロール押し込み量を板幅方向に分布させるためのロールベンディングを「被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング」という。
即ち、中伸びの場合は板幅中央部よりも板幅端部のロール押し込み量が大きくなるように、端伸びの場合には板幅中央部よりも板幅端部のロール押し込み量が小さくなるようにしてローラ矯正すると良い。この点に関し、例えば非特許文献2には、被矯正板に中伸びが生じている場合には板幅中央部の押込み量が小さくなるようにロールを撓ませて矯正を行い、被矯正板に耳伸び(耳波)が生じている場合には板幅端部の押込み量が小さくなるようにロールを撓ませて矯正を行う技術が開示されている。
なお、ローラ矯正時のロール押し込み量の板幅方向分布を調整する機構としては、上ロール群、および/または、下ロール群のロール胴長方向(板幅方向)の複数箇所に設けられたウェッジ機構や、油圧シリンダ機構、分割バックアップロールの偏芯等の機構が挙げられる。以下では,このようなロール押し込み量の板幅方向分布をロールベンディング量と呼ぶこととする。
以上のことから、被矯正板のローラ矯正において、個々の被矯正板に対し、被矯正板に付与する最大加工度の設定や、ロールベンディング量の設定について、容易に実操業に供することのできる先行技術は未だ存在しない。
特開昭53−87962号公報 特開2000−326012号公報
「三菱重工技報」第21巻第6号(1984年)第86頁〜第91頁 MetallurgicalPlant and Technology international 1999年 vol.22 No.6 p.70〜75
上記したように、従来、被矯正板のローラ矯正において、被矯正板に付与する最大加工度の設定やロールベンディング量の設定に関し、実操業に供することが可能な具体的指標は見当たらず、当該指標に基づくローラ矯正方法が希求されていた。
上記事情に鑑み、本発明は、被矯正板のローラ矯正において、被矯正板に付与する最大加工度の設定やロールベンディング量の設定に関する具体的指標に基づき、安定的にかつ効率的に平坦度矯正効果が得られる被矯正板のローラ矯正方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明者らは、被矯正板のローラ矯正において、被矯正板の平坦度矯正効果とローラ矯正条件との関係について、数多くの検討を行った。これより、以下の知見を得た。
まず、ローラ矯正中のロールベンディング量を、矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量と、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量とに分けて設定してローラ矯正を行うことが好ましいことが判明した。さらに、ローラ矯正における被矯正板の平坦度矯正は、伸びひずみ差の板厚方向分布(表裏面差)に起因する平坦度不良と、伸びひずみ差の板幅方向分布に起因する平坦度不良とに分けて考えることが好ましいことが判明した。
このように分けて考えた場合、伸びひずみ差の板厚方向分布に起因する平坦度不良(例えば、反り)は、ある程度(3程度)の最大加工度を与えることで無害化できるだけでなく、最大加工度に応じて特に出側ロールの押し込み量を適切に設定することにより、平坦化できることを見出した。しかしながら、伸びひずみ差の板幅方向分布に起因する平坦度不良(例えば、中伸びや端伸び)はローラ矯正中に与えた最大加工度に応じて矯正効果が異なり、しかも多パス矯正を実施してもその矯正効果は多パス矯正中の最大加工度で決定されることも見出した。それゆえ、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布に応じて求められたローラ矯正中に被矯正板に付与すべき最大加工度が達成可能な場合は、伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値として、該最大加工度を上回る最大加工度が得られる矯正条件にてローラ矯正を実施すればよいことを見出した。一方で、前記最大加工度が達成不可能な場合には,被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定することが有効なことも見出した。これは、伸びひずみが相対的に短い領域のロール押し込み量が大きくなるようにローラ矯正中のロールをたわませることにより、ロール押し込み量の大きい部分ほど被矯正板の長手方向の軌跡長が長くなることで該領域に伸びひずみが与えられる結果、伸びひずみ差の板幅方向分布が小さくなることに起因している。
ただし、伸びひずみ差の板幅方向分布に起因する平坦度不良を矯正するためには、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定することで、あえてロールをたわませてローラ矯正することが有効であるものの、ローラ矯正中のロールたわみは、被矯正板に残留応力を付与することになり、被矯正板を切断した際の形状不良を招く。
そのため、このような場合には、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するために必要なロールベンディング量をゼロに近付けた(ロールたわみを抑制した)矯正パスを追加することが好ましい。
一方で、あえてロールをたわませてローラ矯正された被矯正板に対し、矯正パスを追加した場合、追加矯正パス後の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布は,該追加矯正パス前よりも拡大(悪化)することがわかった。そのため、たとえばその後の加工において切断を伴わない場合のように、被矯正板自体の平坦度が重視される場合は、矯正パスを追加しないことが好ましい。
さらに、被矯正板のローラ矯正においては、伸びひずみ差の板幅方向分布に起因する平坦度不良の解消を優先し、その後、伸びひずみ差の板厚方向分布に起因する平坦度不良を解消すれば良いことが判明した。具体的には、まず、矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量のみを設定し、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値とした場合に、ローラ矯正後の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を目標範囲とするために必要な最大加工度をローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布に応じて設定する。なお、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と、ローラ矯正後の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布との比が、ローラ矯正中に被矯正板に付与される最大加工度を引数とする関数を用いて、ローラ矯正中に被矯正板に付与すべき最大加工度を求めてもよい。
また、一般には、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布をゼロに近付けることを目標とすれば良いが、その目標範囲(例えば許容範囲であるゼロに近い所定の値)は被矯正板の寸法、用途などにより変化するものであり、例えば、要求される製品の平坦度基準から求めても良い。目標範囲と平坦度との関係は、実験で求めても良く、有限要素法のような数値解析で求めても良い。
このようにして求められた最大加工度が実現可能であった場合には、矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量のみを考え、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近付けた(例えば、ゼロに近い所定の値とした)上で、該最大加工度を上回る最大加工度が得られる矯正条件にてローラ矯正を実施すれば良い。なお、矯正反力を実測し、あるいは、被矯正板の寸法、材料特性、矯正条件等から推定し、一方、ローラ矯正機の剛性をその構造やロール径、ロール胴長等から同定することにより、矯正反力に伴うロールたわみ量を推定することにより、これを補償するために必要なロールベンディング量を設定することができる。あるいは、矯正反力に伴うロールたわみ量を実測することも可能である。
このとき、たとえばロールベンディング量を全上ロールに一律にしか設定できないなど、各ロールベンディング量をそれぞれ任意の値に設定できないローラレベラも少なくない。このような場合、最後の塑性曲げを付与するロールにおける矯正中のロールたわみを抑制すれば、条切断に伴う反り変形を抑制できることを見出した。また、最大の曲げを付与するロールにおける矯正中のロールたわみを抑制すれば、条切断に伴う横曲がり変形を抑制できることも見出した。
しかしながら、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布が過大な場合には、過大な最大加工度が必要とされる。また、一般に、被矯正板の板厚が薄いほど、また、被矯正板の強度が高いほど、大きな最大加工度を得るために必要なロール押し込み量は大きくなるが、設備制約などの点で、必ずしも上記最大加工度を得るために必要なロール押し込み量が実現できるとは限らない。このような場合には、矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量に加えて、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定して、あえてロールをたわませてローラ矯正することで、目標とするローラ矯正後の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布が達成でき、すなわち、ローラ矯正における平坦度矯正効果が安定的に得られることが判明した。ただし、このとき、ローラ矯正中のロールたわみは、該被矯正板を切断した際の形状不良を招くので、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値とする矯正パスを追加することが好ましいことも見出した。
一方で、あえてロールをたわませてローラ矯正された被矯正板に対し、矯正パスを追加した場合、追加矯正パス後の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布は,該追加矯正パス前よりも拡大(悪化)するので、被矯正板自体の平坦度が重視される場合は、矯正パスを追加しないことが好ましいことも見出した。
上述したように、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布に応じて、ロールベンディング形状を制御することで、ローラ矯正後の被矯正板の平坦度を良好にできることが判明した。このとき、伸びひずみが相対的に短い領域のロール押込量が大きくなるようにローラ矯正中のロールをたわませることにより、該領域の被矯正板の長手方向の軌跡長が長くなることで、該領域に伸びひずみが与えられる結果、ローラ矯正後の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布が小さくなることを見出した。ここで、被矯正板の長手方向の軌跡長とは、被矯正板に固定した一点がローラ矯正中に通過した空間位置を順次結んで得られる長手方向軌跡に沿う長さを指す。被矯正板の長手方向の軌跡長の評価区間は任意に選択することができるが、例えば、(i−1)番目ロール1(i−1)と(i+1)番目ロール1(i+1)との間における被矯正板9の幅方向位置zにおける軌跡長l(z)は、図8に示すように図示される。なお、図8(b)は被矯正板9の矯正の様子を側方から見た説明図である。
中伸びの場合は板幅中央部よりも板幅端部のロール押込量が大きくなるように、端伸びの場合には板幅中央部よりも板幅端部のロール押込量が小さくなるようにしてローラ矯正すると良い。また、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布とローラ矯正後の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布との偏差は、ローラレベラにおける被矯正板の長手方向軌跡長差率の板幅方向分布と相似であることが判明した。ここで、被矯正板の長手方向軌跡長差率は、板幅方向の任意の位置における被矯正板の通板軌跡長とその平均値との偏差を該平均値で除した値として定義される。つまり、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を相殺するようなローラレベラにおける長手方向軌跡長差率の板幅方向分布を該被矯正板に付与することが被矯正板の平坦化につながることを見出した。
具体的には、まず、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を測定する。なお、伸びひずみ差の板幅方向分布は、波高さおよび波ピッチの板幅方向分布が測定できれば算出でき、その測定方法は問わない。例えば、定盤の上に板を載せて、手作業で波の高さ、ピッチを直尺で測定して、伸びひずみ差の板幅方向分布を算出しても良い。この結果には、少なからず測定誤差が含まれることもあり、この伸びひずみ差の板幅方向分布を、板幅方向座標を引数とする近似関数で表現することが好ましい。このとき、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を相殺するような長手方向軌跡長差率の板幅方向分布を付与すれば良いことを鑑みると、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布の近似曲線はロールベンディング形状として表現できる関数形が好ましい。また、特に、ローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布が板幅中心に関して対称でない被矯正板を平坦化するためには、被矯正板の板幅中心位置と、ローラレベラの幅方向中心位置とを適切にずらすことが好ましい。加えて、ローラレベラにおける長手方向軌跡長を各ロール直上および直下を結ぶ直線で評価すれば良い、即ち、上記図8における軌跡長l(z)を、図8(b)内に実線で示されるように、各ロール直上および直下を結ぶ直線で評価すれば良いことも見出した。さらに、被矯正板の平坦度矯正効果は、最大加工度を付与するロール(付与する曲げの大きさが最大となる箇所)において該被矯正板に作用する張力分布の大小に左右されることを明らかにし、これより、ローラレベラにおける長手方向軌跡長を、最大加工度を付与するロールの前後ロール間で評価すれば良いことを見出した。通常、最大加工度を付与するロールは入側から3本目、あるいは、4本目のロールと言われている。このことから、入側から2本目のロールから4本目のロールまで、あるいは、入側から3本目のロールから5本目のロールまでの区間で長手方向軌跡長を評価することが好ましいことを見出した。さらに、上記したような工程を効率的に実施するために、ローラレベラに、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を測定できる平坦度計と、ローラレベラの幅方向センタ位置に対する被矯正板の板幅センタ位置を調整できるオフセンタ装置と、の少なくとも一方を具備するローラ矯正設備が好ましいことを見出した。
本発明は上記の知見を基になされたものであって、その要旨は以下のとおりである。
(1)複数本のロールが上下に千鳥状に配置され、ロール押込量の板幅方向分布を調整する機構を有するローラレベラにおいて、当該複数本のロール間に被矯正板を通して繰り返し曲げを与えることによって被矯正板を平坦化する被矯正板のローラ矯正方法であって、ローラ矯正中のロールベンディング量を、矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量と、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量と、の合算として設定することを特徴とする、被矯正板のローラ矯正方法。
(2)前記(1)に記載の被矯正板のローラ矯正方法において、前記矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量は、前記ローラレベラにおいて被矯正板に対し最後の塑性曲げを付与するロールに作用する矯正荷重に基づいて設定されても良い。
(3)前記(1)に記載の被矯正板のローラ矯正方法において、前記矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量は、前記ローラレベラにおいて被矯正板に対し最大の曲げを付与するロールに作用する矯正荷重に基づいて設定されても良い。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の被矯正板のローラ矯正方法において、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布に応じてローラ矯正中に被矯正板に付与すべき最大加工度を求め、ローラ矯正中に被矯正板に付与すべき最大加工度が達成可能な場合には、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値とした上で該最大加工度を上回る最大加工度が得られる矯正条件にてローラ矯正を実施し、ローラ矯正中に被矯正板に付与すべき最大加工度が達成不可能な場合には、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定してローラ矯正を実施しても良い。
(5)前記(4)に記載の被矯正板のローラ矯正方法において、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量がゼロに近い所定の値であるときの、ローラ矯正前の板幅中央における伸びひずみ差と板幅端部における伸びひずみ差との偏差と、ローラ矯正後の板幅中央における伸びひずみ差と板幅端部における伸びひずみ差との偏差との比が、ローラ矯正中に被矯正板に付与される最大加工度を引数とする関数で表現される場合に、当該関数に係る関係式を用いて、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布に応じてローラ矯正中に被矯正板に付与すべき最大加工度を求めても良い。
(6)前記(1)に記載の被矯正板のローラ矯正方法において、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルと、被矯正板の前記ローラレベラにおける長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルと、が相似かつ符号が逆となるようなロール押込量の板幅方向分布に近付けるように、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を設定しても良い。
(7)前記(1)に記載の被矯正板のローラ矯正方法において、被矯正板の板幅センタ位置とローラレベラの幅方向センタ位置とをずらすことで、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルと、該被矯正板の該ローラレベラにおける長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルと、が相似かつ符号が逆となるようなロール押込量の板幅方向分布に近付けるように、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を設定しても良い。
(8)前記(6)又は(7)に記載の被矯正板のローラ矯正方法において、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルを、板幅方向座標を引数とする近似関数で表現しても良い。
(9)前記(6)又は(7)に記載の被矯正板のローラ矯正方法において、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルの近似関数を、板幅中心をゼロとする板幅方向座標の偶関数で表現しても良い。
(10)前記(6)又は(7)に記載の被矯正板のローラ矯正方法において、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルの近似関数を、板幅中心をゼロとする板幅方向座標の偶関数と板幅中心をゼロとする板幅方向座標の一次関数との和で表現しても良い。
(11)前記(6)〜(10)のいずれかに記載の被矯正板のローラ矯正方法において、被矯正板のローラレベラにおける長手方向軌跡長を、板幅方向位置において、各ロール直上および直下を結ぶ直線で評価しても良い。
(12)前記(6)〜(11)のいずれかに記載の被矯正板のローラ矯正方法において、被矯正板のローラレベラにおける長手方向軌跡長を、最大加工度を付与するロールの1本入側のロールから、最大加工度を付与するロールの1本出側のロールまでの区間で評価しても良い。
(13)前記(6)〜(12)のいずれかに記載の被矯正板のローラ矯正方法において、被矯正板のローラレベラにおける長手方向軌跡長を、ローラレベラの最入側から2本目のロールから、ローラレベラの最入側から4本目のロールまでの区間で評価しても良い。
(14)前記(6)〜(12)のいずれかに記載の被矯正板のローラ矯正方法において、被矯正板のローラレベラにおける長手方向軌跡長を、ローラレベラの最入側から3本目のロールから、ローラレベラの最入側から5本目のロールまでの区間で評価しても良い。
(15)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の被矯正板のローラ矯正方法において、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定してローラ矯正を実施した場合、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値とする矯正パスを追加しても良い。
(16)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の被矯正板のローラ矯正方法において、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定してローラ矯正を実施した場合、矯正パスを追加しなくても良い。
(17)複数本のロールが上下に千鳥状に配置され、ロール押込量の板幅方向分布を調整する機構を有するローラレベラにおいて、当該複数本のロール間に被矯正板を通して繰り返し曲げを与えることによって被矯正板を平坦化するローラ矯正設備であって、ローラ矯正中のロールベンディング量を、矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量と、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量と、の合算として設定する制御を行う制御部と、を具備するローラ矯正設備。
(18)前記(17)に記載のローラ矯正設備において、ローラレベラの幅方向センタ位置に対する被矯正板の板幅センタ位置を調整できるオフセンタ装置を更に具備しても良い。
(19)前記(17)又は(18)に記載のローラ矯正設備において、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルを測定できる平坦度計を更に具備しても良い。
(20)前記(19)に記載のローラ矯正設備において、前記平坦度計は、前記ローラレベラの入側に設置されても良い。
本発明によれば、ロールベンディング量を、矯正反力に伴うロールたわみの補償項と、伸びひずみ差の板幅方向分布の付与を目的とする項とに分けて設定できるので、従来に比して、より統一的な指針のもと、ロールベンディング量を設定できる。加えて、伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディングを実施すべきか、および/または、被矯正板に付与すべき最大加工度がどの程度か、を具体的に設定できるので、より安定的に目標範囲内の平坦度を実現できる被矯正板のローラ矯正を実現できる。さらに、目標平坦度を達成するために必要な最大加工度をより定量的に把握できるので、より効率的に目標平坦度を達成できる被矯正板のローラ矯正を実現できる。また、該被矯正板を切断した際の形状不良をも抑制できるので、より安定的な製品品質を確保できる被矯正板のローラ矯正を実現できる。
また、本発明によれば、ロールベンディング量を、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルと該被矯正板の該ローラレベラにおける長手方向軌跡長差率の板幅方向プロフィルとが相似かつ符号が逆になるように設定できるので、従来に比して、より統一的な指針のもと、ローラ矯正条件を設定できる。また、被矯正板のローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルと該被矯正板のローラレベラにおける長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルとの相似度がより高まるので、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルの自由度に比べて、ローラ矯正機のロールベンディング形状の自由度が乏しい場合にも、被矯正板をより平坦化できる。さらに、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差に測定誤差などが含まれる場合にも安定的に被矯正板を平坦化できる。その上、ローラ矯正機のロールベンディング形状の自由度に合わせてローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルが定量化されるので、より実態に即した被矯正板の平坦化を実現できる。加えて、非対称な伸びひずみ差の板幅方向分布を持つ被矯正板に対しても、効果的な平坦化を実現できる。また、被矯正板のローラレベラにおける長手方向軌跡長を簡便に評価できるので、該被矯正板を平坦化するためのローラ矯正条件をより簡便に設定できる。更には、被矯正板に付与するロールベンディング量およびオフセンタ量の設定に関する具体的指標に基づき、安定的にかつ効率的に平坦度矯正効果が得られるローラ矯正設備が実現される。
以上のように、本発明によれば、被矯正板のローラ矯正において、従来に比して、より安定的かつ効率的に目標平坦度を達成でき、また、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値とする矯正パスを追加した場合は該被矯正板の切断後の形状不良をも抑制できる。一方で、伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディングを実施した場合であっても、矯正パスを追加しないことで、被矯正板の平坦度をより向上させることができる。これにより、個々の被矯正板に対し、最低限の最大加工度および/またはパス数にてローラ矯正を実施できるので、矯正コスト(時間、労力、エネルギ)を最小限に抑制することが可能となり、生産性が向上するという効果も得られる。
本発明の実施の形態にかかる被矯正板のローラ矯正方法に用いたローラレベラの側面と、矯正設備ラインを表す説明図である。 ローラレベラの正面概略図である。 本発明の実施の形態にかかる被矯正板のローラ矯正方法におけるローラ矯正条件設定のフローを示す説明図である。 実施例1における測定結果を示す図である。 伸びひずみ差矯正効果と最大加工度との関係を示すグラフである。 本発明の実施例5にかかる被矯正板のローラ矯正方法に用いたローラレベラの概念正面図である。 本発明の実施例8にかかる被矯正板のローラ矯正方法に用いたローラレベラの側面と、矯正設備ラインを表す説明図である。 本発明の明細書における軌跡長の定義を説明する説明図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
以下、本発明の実施の形態にかかる被矯正板のローラ矯正方法について説明する。図1は本実施の形態にかかる被矯正板のローラ矯正方法において用いられるローラレベラ20の側面と、矯正設備ラインLを示す説明図である。また、図2はローラレベラ20の正面概略図である。ローラレベラ20は、合計9本のワークロール(以下、単にロールとも記載する)1からなるローラレベラであり、上ロール群3(4本のワークロール1からなる)と下ロール群2(5本のワークロール1からなる)とがそれぞれ等間隔に、千鳥状に配置されている。即ち、上ロールと下ロールは水平方向(図1中左右方向)に伸びる矯正設備ラインLに対して、互いに上下対象に配置され、ローラレベラ20の上面から見た際に、上ロールと下ロールの回転軸が互いに同一の位置にこないようにずれた状態となる位置に配置されている。
5本の下ロール(ワークロール1)からなる下ロール群2は、ハウジング6の内部下面に下ロール群フレーム2aに組み込まれる構成で配置され、その位置が不動である固定ロール群である。一方、4本の上ロール(ワークロール1)からなる上ロール群3は、ハウジング6内の内部上面に上ロール群フレーム3aに組み込まれる構成となっている。また、上ロール群フレーム3aはハウジング6の上面に取り付けられた入側押し込み機構4、出側押し込み機構5に接続するウェッジ調整機構10に設置されており、ハウジング6の内面上部とウェッジ調整機構10との間にある入側押し込み装置4と出側押し込み装置5とを用いて、上ロールフレーム3aを介して、下ロール群フレーム2aに組み込まれた下ロール群2に対して傾動押し込みを行うことが可能となっている。
また、図1および図2に示す通り、ローラレベラ20においては、上ロール群3の上部にはウェッジ調整機構10が組み込まれている。このウェッジ調整機構10は、図2に示すように、板幅方向3箇所に設けられており、板幅中央部のウェッジ調整量を板幅端部のウェッジ調整機構の調整量とは異なる値に設定することにより、全上ロール(上ロール群3)一律のロールベンディングを施すこと、つまり、ロール胴長方向のロール押し込み量分布の調整が可能となっている。例えば、図2に示すように、ウェッジ調整機構10において、板幅方向中央部のものを機構10aとし、板幅方向端部のものを機構10cとした場合に、機構10aによって、機構10cより大きな調整量(押し込み量)を上ロール群3に対して負荷させることにより、上ロール群3の各上ロールそれぞれの板幅中央部に対応する部分が下に凸となるようにロールベンディングが施され、通板する被矯正板9の板幅端部に比べて板幅中央により大きな押し込み量が負荷されるように調整が可能となっている。ここで、ウェッジ調整機構10は図1に示すように上ロール群3の全てのワークロール1に対して同時に調整を行う構成となっており、上記板幅中央部に対応する部分が下に凸となるロールベンディングの負荷は上ロール群3の全てのワークロール1に対して行われる。
また、図1に示すように、ローラレベラ20の入側に平坦度計7が設置してある。平坦度計7がローラレベラ20の入側に設置されているのは、平坦度の測定を矯正前に実施することで、被矯正板9を逆送させることなく矯正が実施でき、矯正効率の向上が図られるからである。仮に、平坦度計7をローラレベラ20の出側に設置すると、平坦度測定の後に被矯正板9を矯正のためにローラレベラ20の入口まで戻す(逆送させる)ことが必要となり非効率である。
平坦度計7による測定結果はプロセスコンピュータ8に伝送される。ローラレベラ20における制御部として機能するプロセスコンピュータ8には、被矯正板9の板厚、板幅、材料特性、伸びひずみ差の板幅方向分布の目標値なども入力され、また、入側押し込み装置4、出側押し込み装置5、および、ウェッジ調整機構10などの制御量が出力される。この制御部としてのプロセスコンピュータ8は、以下に説明する手順で行われるローラ矯正での様々な制御を行うものであり、例えば、ロールベンディング量の設定等が当該制御部により制御される。
以上、図1および図2を参照して説明した矯正設備ラインL(ローラレベラ20、プロセスコンピュータ8等)において、以下の手順(a)〜(f)でローラ矯正が実施される。なお、この手順は図3にもフローとして説明している。
(a)被矯正板9について、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を求める(定量化する)。ここで、伸びひずみ差は、被矯正板の長手方向に沿う長さとその板幅方向分布の平均値との差を該平均値で除したものとして求める。これは、ローラレベラの入側に設置された平坦度計7により測定されたデータを用いて算出できる。このとき、ローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布を板幅中心をゼロとする板幅方向座標を引数とする近似式で近似することが好ましい。加えて、ローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布の近似式を、板幅中心をゼロとする板幅方向座標の偶関数式、あるいは、板幅中心をゼロとする板幅方向座標の偶関数式と板幅中心をゼロとする板幅方向座標の一次式との和で表現することが好ましい。
(b)被矯正板9について、ローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布に基づき、ローラ矯正後の伸びひずみ差の板幅方向分布の目標値を達成するために必要な最大加工度を計算する。このとき、ローラ矯正前の板幅中央における伸びひずみ差と板幅端部における伸びひずみ差との偏差Δεinとローラ矯正後の板幅中央における伸びひずみ差と板幅端部における伸びひずみ差との偏差ΔεOutとの比は、最大加工度Kmaxを引数とする関係式(以下に示す(式1))を用いる。

Figure 2018167325
(c)被矯正板9について、上記最大加工度を達成するために必要な矯正条件(ロール設定条件)を算出する。このとき、荷重、トルク、あるいは被矯正板の噛み込み限界等の設備制約や材質上の制約等も踏まえ、該最大加工度が実現できるかどうかも判断する。
(d)該最大加工度が実現可能な場合、ウェッジ調整機構10を調整して矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量を付与することで、矯正反力に伴うロールたわみを補償した上で、該最大加工度を上回る最大加工度が得られる矯正条件にて該被矯正板9のローラ矯正を実施する。矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量は、該被矯正板9に最後に塑性曲げを付与するロールに作用する矯正荷重に基づいて設定しても良い。もしくは、矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量は、該被矯正板9に最大の曲げを付与するロールに作用する矯正荷重に基づいて設定しても良い。
(e)一方、該最大加工度が実現不可能な場合、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定して該被矯正板9のローラ矯正を実施する。このとき、該被矯正板9について、ローラ矯正前の段階で、板幅中央部の伸びひずみよりも板幅端部の伸びひずみのほうが長い場合にはローラ矯正中の板幅中央部のロール押し込み量がローラ矯正中の板幅端部のロール押し込み量よりも大きくなるように、板幅中央部の伸びひずみよりも板幅端部の伸びひずみのほうが短い場合にはローラ矯正中の板幅中央部のロール押し込み量がローラ矯正中の板幅端部のロール押し込み量よりも小さくなるように、それぞれウェッジ調整機構10を調整して、上ロール群3をたわませて該被矯正板9のローラ矯正を実施する。
ここで、被矯正板9のローラレベラ20における長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルがローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルと相似かつ符号が逆となるロール押込量の板幅方向分布に近づけるロールベンディング量を実現するようにウェッジ調整機構10を設定する。このとき、特に被矯正板9が板幅中心に関して非対称な伸びひずみ差の板幅方向分布を有する場合は、被矯正板9の板幅センタ位置とローラレベラ20の幅方向センタ位置とをずらすことで、ローラ矯正前の被矯正板9の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルと被矯正板9のローラレベラ20における長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルとの相似度を高めることが好ましい。また、ローラレベラ20における長手方向軌跡長を各ロール直上および直下を結ぶ直線で評価しても良いし、また、最大加工度を付与するロールの1本入側のロールから、最大加工度を付与するロールの1本出側のロールまでの区間で評価しても良い。また、通常は最大加工度が付与されるロールはローラレベラ20の最入側から3本目あるいは4本目であると言われていることから、ローラレベラ20の最入側から2本目のロールから4本目のロールまでの区間、もしくは、ローラレベラ20の最入側から3本目のロールから5本目のロールまでの区間で評価しても良い。
(f)前記(e)のように被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定してローラ矯正を実施した場合には、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値とする矯正パスを追加しても良い。もしくは、前記(e)のように被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定してローラ矯正を実施した場合には、矯正パスを追加しなくても良い。
以上、本発明の一実施形態におけるローラ矯正の過程を示したが、本実施形態では、ローラ矯正中のロールベンディング量を、矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量と、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量とに分けて設定してローラ矯正を行うので、従来に比して、より統一的にロールベンディング量を設定できるので、効果的に目標範囲内の平坦度を実現できる。加えて、被矯正板のローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布に基づき、ローラ矯正後の伸びひずみ差の板幅方向分布を目標範囲内とするために必要な最大加工度を算出して、これを実現できるローラ矯正条件を設定してロール矯正を行うので、従来に比して、より安定的かつ効率的に目標平坦度を達成できる。
また、ローラ矯正中のロールベンディング量を、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を相殺するようなローラレベラ20における長手方向軌跡長差率を付与するように設定できるので、従来に比して、より統一的に矯正条件を設定でき、その結果、効果的な板の平坦化を実現できる。加えて、板幅中心とローラ矯正機の幅方向中心とをずらすことで、被矯正板9のローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布をより効果的に相殺できるローラレベラ20における長手方向軌跡長差率プロフィルを設定でき、また、ローラレベラ20における長手方向軌跡長プロフィルの自由度に応じた最適なロールベンディング量を設定できるので、より効果的に板を平坦化できる。さらに、被矯正板9のローラレベラ20における長手方向軌跡長を簡便に評価できるので、被矯正板9を平坦化するためのローラ矯正条件をより簡便に設定できる。
さらに、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量がゼロに近い所定の値であるときの、ローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布と、ローラ矯正後の伸びひずみ差の板幅方向分布との比を、ローラ矯正中に被矯正板に付与される最大加工度を引数とする関数(関係式)で表現することで、従来に比して、より簡便に、ローラ矯正後の伸びひずみ差の板幅方向分布を目標範囲内とするために必要な最大加工度を算出できる。
被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量がゼロであるときの、ローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布と、ローラ矯正後の伸びひずみ差の板幅方向分布との比を、ローラ矯正中に被矯正板に付与される最大加工度を引数とする関数(関係式)で表現する場合に、その関数(関係式)は、最大加工度と伸びひずみ差矯正効果との関係に基づき得られる。
図5は、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量がゼロであるときの、伸びひずみ差矯正効果と最大加工度との関係を示すグラフである。ここで、伸びひずみ差矯正効果とは「矯正前の伸びひずみ差/矯正後の伸びひずみ差」で示す値であり、図5に示すデータは「板厚3〜12mm、板幅1200〜4200mm、引張強度300〜1200MPaの厚鋼板」を用いた実験結果から得られたものである。
図5に示すように、最大加工度と伸びひずみ差矯正効果との間には強い相関関係があり、最大加工度を大きくする程、伸びひずみ差矯正効果の値が小さくなる、即ち、矯正効果が大きくなり平坦度が良化するとの傾向が読み取れる。このような関係性に基づき、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量がゼロに近い所定の値であるときの、ローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布と、ローラ矯正後の伸びひずみ差の板幅方向分布との比が、ローラ矯正中に被矯正板に付与される最大加工度を引数とする関数(関係式)で表現され、好適な最大加工度の計算が可能となる。
また、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値とする矯正パスを追加した場合は該被矯正板の切断後の形状不良をも抑制できる。一方で、伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディングを実施した場合であっても、矯正パスを追加しないことで、被矯正板の平坦度をより向上させることができる。これにより、個々の被矯正板に対し、最低限の最大加工度および/またはパス数にてローラ矯正を実施できるので、矯正コスト(時間、労力、エネルギ)を最小限に抑制することが可能となり、生産性が向上するという効果も得られる。
なお、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更することもできる。例えば、ここでは、被矯正板9の伸びひずみ差の板幅方向分布をローラレベラ20入側に設置した平坦度計7による実測データに基づいて算出する場合を示したが、ローラ矯正前に被矯正板9を平坦度計7に通板することが困難な場合には、あらかじめ被矯正板9の目視平坦度と伸びひずみ差との関係を定量化しておくことで、作業者の目視により把握することも可能である。また、ここでは、該被矯正板9のローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布に基づき、ローラ矯正後の伸びひずみ差の板幅方向分布を目標範囲内とするために必要な最大加工度を、上記式1を用いて算出する場合を示したが、ローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布とローラ矯正後の伸びひずみ差の板幅方向分布および矯正条件との関係を実験あるいは数値解析に基づいて同定された任意の関係式を用いることも可能である。
また、例えば、その位置が固定された下ロール群2に対し、上ロール群3を傾動して押し込む方式のローラレベラ20を用いる場合を例示したが、各ロール位置を個別に独立して設定できる方式のローラレベラを用いることも可能である。また、本実施の形態では、ロール胴長方向のロール押込量分布を調整するウェッジ機構10が板幅方向に3箇所に備えられているローラレベラ20を用いる場合を説明したが、より多くのウェッジ機構が板幅方向に備えられているローラレベラを用いることも可能である。加えて、本実施の形態では、ロール胴長方向のロール押込量分布の調整をウェッジ機構10によって行うローラレベラ20を用いる場合を例示したが、例えば油圧シリンダによるベンディングや分割バックアップロールの偏芯等の機構によってロール胴長方向のロール押し込み量分布の調整が可能なローラレベラを用いることも可能である。もちろん、各ロールに異なるロールベンディング量を設定できるローラレベラにも適用可能である。
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
以下、本発明の一実施例について図面に基づいて説明する。なお、以下の実施例で用いられる数値、関数等は、本発明を説明するための一例にすぎず、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1として、板厚2〜10mm、板幅1000〜4000mm、引張強度300〜1150MPaの鋼板を、図1に示した構成である矯正設備ラインLにおいて本発明にかかる被矯正板のローラ矯正方法で矯正した。このとき、被矯正板9の板厚、板幅、材料特性、および、伸びひずみ差の板幅方向分布の目標値がプロセスコンピュータ8に伝送、記憶されている。
まず、ローラレベラの入側に設置された平坦度計7により、被矯正板9の平坦度データが測定される。測定結果はプロセスコンピュータ8に伝送される。次に、プロセスコンピュータ8を用いて、伸びひずみ差の板幅方向分布が定量化され、該定量化された伸びひずみ差の板幅方向分布に基づき、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値としたときに、ローラ矯正後の伸びひずみ差の板幅方向分布の目標値を達成するために必要な最大加工度を算出するとともに、設備制約等も踏まえ、該最大加工度が実現可能かどうか判断する。
該最大加工度が実現可能と判断された場合、該最大加工度を実現するための矯正条件をプロセスコンピュータ8にて計算する。このとき、該矯正条件における矯正荷重の予測値などに基づいて、ローラ矯正中のローラレベラの変形、ロールたわみなどの補償を勘案してロール押し込み量およびウェッジ調整量を設定し、ローラレベラの入側押し込み装置4、出側押し込み装置5、および、ウェッジ調整機構10を調整した上で、被矯正板9を通板してローラ矯正を実施する。このときのローラ矯正は、ローラ矯正中のロールたわみが無くなる方向にウェッジ調整を施すことによって、ロールたわみを抑制している。
一方、該被矯正板のローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布が過大な場合や設備制約などで該最大加工度が実現不可能と判断された場合、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定したローラ矯正を指向する。本実施例1では、材料条件や設備制約によって変動したが、最大加工度の上限は7を与えた。この場合、ローラ矯正前の被矯正板について、板幅中央部の伸びひずみよりも板幅端部の伸びひずみのほうが長いときにはローラ矯正中の板幅中央部のロール押し込み量がローラ矯正中の板幅端部のロール押し込み量よりも大きくなるように、板幅中央部の伸びひずみよりも板幅端部の伸びひずみのほうが短いときにはローラ矯正中の板幅中央部のロール押し込み量がローラ矯正中の板幅端部のロール押し込み量よりも小さくなるように、ウェッジ調整機構10を調整した上で、ローラ矯正を実行する。このとき、許容範囲内で可能な限り大きな最大加工度が得られるようにローラレベラの入側押し込み装置4、出側押し込み装置5を設定した。
加えて、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定したローラ矯正を実施した場合には、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値となる方向にウェッジ調整を施すことによって、ローラ矯正中のロールたわみを抑制した矯正パスを追加する。このとき、被矯正板9の伸びひずみ差の板幅方向分布は既に目標範囲を達成できているので、過大な最大加工度を設定する必要はない。本実施例1では追加した矯正パスにおける最大加工度は3を与えた。
以上説明した条件でもって、鋼板のローラ矯正に本方法を実施した。なお、合計300本の鋼板を矯正したが、このうち、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値とした場合には、ローラ矯正後の伸びひずみ差の板幅方向分布の目標値を達成するために必要な最大加工度を実現できないと判定された鋼板が86本存在した。その結果、1枚の被矯正板の平坦度検査を合格させるために必要な矯正パス数の平均値は、図4に示すように、2.2となった。一方、従来の矯正方法において、同様のロールチャンスにおけるこの値は2.8であり、図4に比較しているように、本方法の適用により、ローラ矯正による被矯正板の平坦度矯正が高効率となったことがわかった。加えて、製品平坦度に関する需要家からのクレーム・コンプレイン件数も大きく削減できたことから、本発明にかかる矯正方法の適用により、ローラ矯正による被矯正板の平坦度矯正が安定的になった。
(実施例2)
実施例2として、板厚2〜10mm、板幅1000〜4000mm、引張強度300〜1150MPaの鋼板を、図1に示した構成である矯正設備ラインLにおいて本発明にかかる被矯正板のローラ矯正方法で矯正した。なお、本実施例が対象とする鋼板は、いずれも条切断の上、利用されるものであり、該条切断に伴う反り変形の抑制が強く求められているものである。
実施例1と同様に、被矯正板9の板厚、板幅、材料特性がプロセスコンピュータ8に伝送、記憶されている。また、ローラレベラの入側に設置された平坦度計7により測定された被矯正板9の平坦度データはプロセスコンピュータ8に伝送され、プロセスコンピュータ8を用いて定量化された伸びひずみ差の板幅方向分布に基づき、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値としたときに、ローラ矯正後の伸びひずみ差の板幅方向分布の目標値を達成するために必要な最大加工度を算出するとともに、該最大加工度が実現可能かどうか判断する。該最大加工度が実現可能と判断された場合、該最大加工度を実現するための矯正条件をプロセスコンピュータ8にて計算する。
このとき、矯正荷重の予測値などに基づいて、ローラ矯正中のローラレベラの変形、ロールたわみなどの補償を勘案して、ローラレベラの入側押し込み装置4、出側押し込み装置5、および、ウェッジ調整機構10を調整するが、本実施例では該矯正条件における最後の塑性曲げを付与するロールに作用する荷重に基づいて、該最後の塑性曲げを付与するロールにおけるローラ矯正中のロールたわみが無くなる方向にウェッジ調整を施している。
一方、該被矯正板のローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布が過大な場合や設備制約などで該最大加工度が実現不可能と判断された場合、実施例1と同様にして、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定したローラ矯正を指向する。ここで、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定したローラ矯正を実施した場合には、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値となる方向にウェッジ調整を施すことによって、ローラ矯正中のロールたわみを抑制した矯正パスを追加する。このとき、該追加矯正パスにおいては、該矯正条件における最後の塑性曲げを付与するロールに作用する荷重に基づいて、該最後の塑性曲げを付与するロールにおけるローラ矯正中のロールたわみが無くなる方向にウェッジ調整を施している。
以上説明した条件でもって、鋼板のローラ矯正に本方法を実施し、合計180本の鋼板を矯正した。その結果、いずれの被矯正板も、その後の需要家における条切断に伴う反り変形は許容範囲に留まり、条切断に伴う反り変形に関する需要家からのクレーム・コンプレインを大きく削減することができた。
(実施例3)
実施例3として、板厚2〜10mm、板幅1000〜4000mm、引張強度300〜1150MPaの鋼板を、図1に示した構成である矯正設備ラインLにおいて本発明にかかる被矯正板のローラ矯正方法で矯正した。なお、本実施例が対象とする鋼板は、いずれも条切断の上、利用されるものであり、該条切断に伴う横曲り変形の抑制が強く求められているものである。
実施例1と同様に、被矯正板9の板厚、板幅、材料特性がプロセスコンピュータ8に伝送、記憶されている。また、ローラレベラの入側に設置された平坦度計7により測定された被矯正板9の平坦度データはプロセスコンピュータ8に伝送され、プロセスコンピュータ8を用いて定量化された伸びひずみ差の板幅方向分布に基づき、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値としたときに、ローラ矯正後の伸びひずみ差の板幅方向分布の目標値を達成するために必要な最大加工度を算出するとともに、該最大加工度が実現可能かどうか判断する。該最大加工度が実現可能と判断された場合、該最大加工度を実現するための矯正条件をプロセスコンピュータ8にて計算する。
このとき、矯正荷重の予測値などに基づいて、ローラ矯正中のローラレベラの変形、ロールたわみなどの補償を勘案して、ローラレベラの入側押し込み装置4、出側押し込み装置5、および、ウェッジ調整機構10を調整するが、本実施例では該矯正条件における最大の曲げを付与するロールに作用する荷重に基づいて、該最大の曲げを付与するロールにおけるローラ矯正中のロールたわみが無くなる方向にウェッジ調整を施している。
一方、該被矯正板のローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布が過大な場合や設備制約などで該最大加工度が実現不可能と判断された場合、実施例1と同様にして、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定したローラ矯正を指向する。ここで、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定したローラ矯正を実施した場合には、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値となる方向にウェッジ調整を施すことによって、ローラ矯正中のロールたわみを抑制した矯正パスを追加する。このとき、該追加矯正パスにおいては、該矯正条件における最大の曲げを付与するロールに作用する荷重に基づいて、該最大の曲げを付与するロールにおけるローラ矯正中のロールたわみが無くなる方向にウェッジ調整を施している。
以上説明した条件でもって、鋼板のローラ矯正に本方法を実施し、合計178本の鋼板を矯正した。その結果、いずれの被矯正板も、その後の需要家における条切断に伴う横曲がり変形は許容範囲に留まり、条切断に伴う横曲がり変形に関する需要家からのクレーム・コンプレインを大きく削減することができた。
(実施例4)
図1に示すローラレベラにおける板のローラ矯正に本発明を適用する実施例4を考える。このとき、被矯正板9の板厚、板幅、材料特性がプロセスコンピュータ8に伝送、記憶されている。
まず、ローラレベラの入側に設置された平坦度計7により、被矯正板9の平坦度データが測定される。測定結果はプロセスコンピュータ8に伝送される。なお、本実施例では、被矯正板9の平坦度データは、板幅センタおよび板幅両端部の3点で測定されている場合を考える。また、板幅両端部における伸びひずみの平均値と、板幅センタにおける伸びひずみとの偏差を用いて、被矯正板9の伸びひずみ差の板幅方向分布が定量化されているものとする。
本矯正条件では、被矯正板9に最大加工度3を付与できるロール押込条件を設定している。ここで、該定量化された伸びひずみ差の板幅方向分布と相似かつ符号が逆となる長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルを付与できる、板幅方向中央部のウェッジ調整量と板幅方向端部のウェッジ調整量との差を求める。ここで、ローラレベラにおける長手方向軌跡長は、各ロール直上および直下を結ぶ直線で評価した。このようにして、板幅方向各位置において、ローラレベラにおける長手方向軌跡長が評価できれば、その板幅方向平均値との偏差を該板幅方向平均値で除した値を長手方向軌跡長差率として求めた。ここでは、ローラレベラにおける長手方向軌跡長差率をΔlで表すと、式(2)を実現するように板幅中央部のウェッジ調整量を、板幅端部のウェッジ機構の調整量とは異なる値に設定した。

Figure 2018167325
ここで、係数aおよびcが定数、Aは負の定数である。また、zは板幅中心からの板幅方向距離を表す。以上のようにして、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布の近似曲線プロフィルと相似かつ符号が逆になるローラレベラにおける長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルを付与できるロールベンディング量が求められ、ローラ矯正荷重などを鑑みて、これを実現できるロール設定条件でローラ矯正を行った。
このようにして、板厚2〜10mm、板幅1000〜4000mm、引張強度300〜1150MPaの鋼板のローラ矯正に本方法を適用した。その結果、ローラ矯正後の平坦度合格率は77%であった。従来、この値は53%であり、本方法の適用により、ローラ矯正による板の平坦度矯正が高効率となったことがわかる。加えて、製品平坦度に関する需要家からのクレーム・コンプレイン件数も大きく削減できたことから、本方法の適用により、ローラ矯正による板の平坦度矯正が安定的になったことがうかがえる。
(実施例5)
図1に示すローラレベラにおける板のローラ矯正に本発明を適用する実施例5を考える。このとき、被矯正板9の板厚、板幅、材料特性がプロセスコンピュータ8に伝送、記憶されている。
まず、ローラレベラの入側に設置された平坦度計7により、被矯正板9の平坦度データが測定される。測定結果はプロセスコンピュータ8に伝送される。ただし、本実施例では、被矯正板9の平坦度データは、板幅方向に19点の測定点で測定されている場合を考える。
次に、プロセスコンピュータ8を用いて、伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルの近似曲線を求める。このとき、伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルの近似曲線を式(3)のように設定した。

Figure 2018167325
ここで、Δεは板幅中心からの板幅方向距離、zは板幅中心からの板幅方向距離を表す。係数aおよびcが未知数であり、伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルを精度良く表すように最小自乗法などを用いて定められる。
本矯正条件では、被矯正板9に最大加工度3を付与できるロール押込条件を設定している。ここで、該定量化された伸びひずみ差の板幅方向分布の近似曲線プロフィルと相似かつ符号が逆となる長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルを付与するために必要な、板幅方向中央部のウェッジ調整量と板幅方向端部のウェッジ調整量との差を求める。ここで、ローラレベラにおける長手方向軌跡長は、各ロール直上および直下を結ぶ直線で評価した。このようにして、板幅方向各位置において、ローラレベラにおける長手方向軌跡長が評価できれば、その板幅方向平均値との偏差を該板幅方向平均値で除した値を長手方向軌跡長差率として求めることができる。得られた長手方向軌跡長差率を実現するように板幅中央部のウェッジ調整量を板幅端部のウェッジ機構の調整量とは異なる値に設定した。
以上のようにして、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布の近似曲線プロフィルと相似かつ符号が逆になるローラレベラにおける長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルを付与できるロールベンディング量が求められ、ローラ矯正荷重などを鑑みて、これを実現できるロール設定条件でローラ矯正を行った。
このようにして、板厚2〜10mm、板幅1000〜4000mm、引張強度300〜1150MPaの鋼板のローラ矯正に本方法を適用した。その結果、ローラ矯正後の平坦度合格率は82%であった。従来、この値は53%であり、本方法の適用により、ローラ矯正による板の平坦度矯正が高効率となったことがわかる。加えて、製品平坦度に関する需要家からのクレーム・コンプレイン件数も大きく削減できたことから、本方法の適用により、ローラ矯正による板の平坦度矯正が安定的になったことがうかがえる。
(実施例6)
図1に示す矯正設備ラインにおける板のローラ矯正に本発明を適用する実施例6を考える。但し、本実施例6で用いるローラレベラは図2に図示したものであるが、板幅端部のウェッジ調整量(図2中の機構10cによるウェッジ調整量)と板幅中央部のウェッジ調整量(図2中の機構10aによるウェッジ調整量)とは異なる値に設定できるものの、2箇所の板幅端部(両端部)におけるウェッジ調整量(複数の機構10c間同士でのウェッジ調整量)はいずれも同じ値にしか設定できない構造となっている。また、このとき、被矯正板9の板厚、板幅、材料特性がプロセスコンピュータ8に伝送、記憶されている。
まず、ローラレベラの入側に設置された平坦度計7により、被矯正板9の平坦度データが測定される。測定結果はプロセスコンピュータ8に伝送される。ただし、本実施例では、被矯正板9の平坦度データは、板幅方向に19点の測定点で測定されている場合を考える。
ここで、上記実施例5に示した手順にて、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルを把握する。次に、プロセスコンピュータ8を用いて、伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルの近似曲線を求める。このとき、伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルの近似曲線を以下の式(4)のように設定した。

Figure 2018167325
ここで、zは未知数であるが、係数aおよびcとあわせて伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルを精度良く表すように最小自乗法などを用いて定められる。このようにして定量化された被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布の近似曲線プロフィルと、ローラレベラにおける長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルとが、相似かつ符号が逆になるロール押込量の板幅方向分布に近付けるロールベンディング量が求められる。このとき、被矯正板の板幅センタ位置とローラレベラの幅方向センタ位置とを上記同定された未知数zだけずらして(オフセンタさせて)、これにより望ましいロールベンディング量となるロール設定条件が定めたうえで、ローラ矯正荷重などを鑑みて、これを実現できるロール設定条件でローラ矯正を行った。
このようにして、板厚2〜10mm、板幅1000〜4000mm、引張強度300〜1150MPaの鋼板のローラ矯正に本方法を適用した。その結果、ローラ矯正後の平坦度合格率は81%であった。従来、この値は46%であり、本方法の適用により、ローラ矯正による板の平坦度矯正が高効率となったことがわかる。加えて、製品平坦度に関する需要家からのクレーム・コンプレイン件数も大きく削減できたことから、本方法の適用により、ローラ矯正による板の平坦度矯正が安定的になったことがうかがえる。
(実施例7)
図6に示す構成のローラレベラにおいて本発明を適用する実施例7を考える。但し、図6に示すローラレベラは、図2に示した構成のローラレベラ20に比べ、ウェッジ機構10の機構数(図2における10a、10c)が5箇所に増えた部分のみ相違しており、その他の構成要素については図2に示すローラレベラ20と同一であるため、同一の構成要素については同一の符号を付してその説明は省略する。なお、図6に記載のウェッジ機構10においては、板幅方向中央部に機構10aが配置され、板幅方向端部に機構10cが配置され、更に、機構10aと10cの間(板幅方向クォータ部)に機構10bが配置されているものとする。このとき、被矯正板9の板厚、板幅、材料特性がプロセスコンピュータ8に伝送、記憶されている。
まず、ローラレベラの入側に設置された平坦度計7により、被矯正板9の平坦度データが測定される。測定結果はプロセスコンピュータ8に伝送される。ただし、本実施例では、被矯正板9の平坦度データは、板幅方向に19点の測定点で測定されている場合を考える。
次に、プロセスコンピュータ8を用いて、伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルの近似曲線を求める。このとき、伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルの近似曲線を、板幅中心をゼロとする板幅方向座標の偶関数で表現する。即ち、以下の式(5)のように設定した。

Figure 2018167325
なお、係数A、BおよびCは未知数であり、伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルを精度良く表すように最小自乗法などを用いて定められる。
ここで、ローラレベラにおける長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルと、上記式(5)によって設定される被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布の近似曲線プロフィルとが、相似かつ符号が逆になるロール押込量の板幅方向分布に近付けるロールベンディング量が求められる。ローラ矯正荷重などを鑑みて、これを実現できるロール設定条件でローラ矯正を行った。
このようにして、板厚2〜10mm、板幅1000〜4000mm、引張強度300〜1150MPaの鋼板のローラ矯正に本方法を適用した。その結果、ローラ矯正後の平坦度合格率は89%であった。従来、この値は58%であり、本方法の適用により、ローラ矯正による板の平坦度矯正が高効率となったことがわかる。加えて、製品平坦度に関する需要家からのクレーム・コンプレイン件数も大きく削減できたことから、本方法の適用により、ローラ矯正による板の平坦度矯正が安定的になったことがうかがえる。
(実施例8)
図1および図2に示すローラレベラにおける板のローラ矯正に本発明を適用する実施例8を考える。このとき、被矯正板9の板厚、板幅、材料特性がプロセスコンピュータ8に伝送、記憶されている。
まず、ローラレベラの入側に設置された平坦度計7により、被矯正板9の平坦度データが測定される。測定結果はプロセスコンピュータ8に伝送される。ただし、本実施例では、被矯正板9の平坦度データは、板幅方向に19点の測定点で測定されている場合を考える。
次に、プロセスコンピュータ8を用いて、伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルの近似曲線を求める。このとき、伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルの近似曲線を、板幅中心をゼロとする板幅方向座標の偶関数と、板幅中心をゼロとする板幅方向座標の一次関数との和で表現する。即ち、以下の式(6)のように設定した。

Figure 2018167325
なお、係数a、bおよびcは未知数であり、伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルを精度良く表すように最小自乗法などを用いて定められる。
ここで、ローラレベラにおける長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルと、上記式(6)によって設定される被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布の近似曲線プロフィルとが、相似かつ符号が逆になるロール押込量の板幅方向分布に近付けるロールベンディング量が求められる。このとき、板幅端部のウェッジ調整量は、左右で異なる値に設定することにより、上記式(6)によって設定される被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布の近似曲線プロフィルとが、相似かつ符号が逆になるロール押込量の板幅方向分布に近付けるロールベンディング量を設定している。そのうえ、ローラ矯正荷重などを鑑みて、これを実現できるロール設定条件でローラ矯正を行った。
このようにして、板厚2〜10mm、板幅1000〜4000mm、引張強度300〜1150MPaの鋼板のローラ矯正に本方法を適用した。その結果、ローラ矯正後の平坦度合格率は83%であった。従来、この値は53%であり、本方法の適用により、ローラ矯正による板の平坦度矯正が高効率となったことがわかる。加えて、製品平坦度に関する需要家からのクレーム・コンプレイン件数も大きく削減できたことから、本方法の適用により、ローラ矯正による板の平坦度矯正が安定的になったことがうかがえる。
(実施例9)
図1および図2に示すローラレベラにおける板のローラ矯正に本発明を適用する実施例9を考える。このとき、被矯正板9の板厚、板幅、材料特性がプロセスコンピュータ8に伝送、記憶されている。
まず、ローラレベラの入側に設置された平坦度計7により、被矯正板9の平坦度データが測定される。測定結果はプロセスコンピュータ8に伝送される。ただし、本実施例では、被矯正板9の平坦度データは、板幅方向に19点の測定点で測定されている場合を考える。また、板幅両端部における伸びひずみの平均値と、板幅センタにおける伸びひずみとの偏差を用いて、被矯正板9の伸びひずみ差の板幅方向分布が定量化されているものとする。
本矯正条件では、被矯正板9に最大加工度3を付与できるロール押込条件を設定している。ここで、該定量化された伸びひずみ差の板幅方向分布の近似曲線プロフィルと相似かつ符号が逆となる長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルを付与できる、板幅方向中央部のウェッジ調整量と板幅方向端部のウェッジ調整量との差を求める。ここで、ローラレベラにおける長手方向軌跡長は、最大加工度を付与するロールの一本入側のロールから、最大加工度を付与するロールの一本出側のロールまでの区間で評価した。このようにして、板幅方向各位置において、ローラレベラにおける長手方向軌跡長が評価できれば、その板幅方向平均値との偏差を該板幅方向平均値で除した値を長手方向軌跡長差率として求めることができる。得られた長手方向軌跡長差率を実現するように板幅中央部のウェッジ調整量を板幅端部のウェッジ機構の調整量とは異なる値に設定した。
以上のようにして、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布の近似曲線プロフィルと相似かつ符号が逆になるローラレベラにおける長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルを付与できるロールベンディング量が求められ、ローラ矯正荷重などを鑑みて、これを実現できるロール設定条件でローラ矯正を行った。
このようにして、板厚2〜10mm、板幅1000〜4000mm、引張強度300〜1150MPaの鋼板のローラ矯正に本方法を適用した。その結果、ローラ矯正後の平坦度合格率は84%であった。従来、この値は53%であり、本方法の適用により、ローラ矯正による板の平坦度矯正が高効率となったことがわかる。加えて、製品平坦度に関する需要家からのクレーム・コンプレイン件数も大きく削減できたことから、本方法の適用により、ローラ矯正による板の平坦度矯正が安定的になったことがうかがえる。
(実施例10)
図7に示す矯正設備ラインにおける板のローラ矯正に本発明を適用する実施例10を考える。ここで、図7に示す矯正設備ラインは、図1に示す矯正設備ラインLと同様の構成を有しており、平坦度計7とローラレベラ20との間に、オフセンタ装置としてサイドガイド11を具備している点が相違している。図7においては図1に示す矯正設備ラインLと同一の機能構成を有する構成要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。
図7に示す矯正設備ラインにおいては、被矯正板9が平坦度計7を通過すると、プロセスコンピュータ8により、上記実施例4に示す手順で、定量化された被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布の近似曲線プロフィルと、ローラレベラにおける長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルとが、相似かつ符号が逆になるロール押込量の板幅方向分布に近付けるロールベンディング量およびオフセンタ量が求められる。被矯正板9がサイドガイド11に到達した時点で、サイドガイド11を作動させることで被矯正板9に所望のオフセンタ量を付与した後、ローラ矯正荷重などを鑑みて、該ロールベンディング量を実現できるロール設定条件でローラ矯正を行った。
このようにして、板厚2〜10mm、板幅1000〜4000mm、引張強度300〜1150MPaの鋼板のローラ矯正に本方法を適用した。その結果、ローラ矯正後の平坦度合格率は82%であった.従来、この値は53%であり、本方法の適用により、ローラ矯正による板の平坦度矯正が高効率となったことがわかる。しかも、オフセンタ装置の設置により、処理能力(1日あたりの処理枚数)が従来の2倍を超えるようになり、高い生産性を確保できるようになった。
(実施例11)
実施例11として、板厚2〜10mm、板幅1000〜4000mm、引張強度300〜1150MPaの鋼板を、図1に示した構成である矯正設備ラインLにおいて本発明にかかる被矯正板のローラ矯正方法で矯正した。なお、本実施例が対象とする鋼板は、いずれも条切断せずに利用されるものであり、ローラ矯正後の被矯正板としての平坦度が強く求められているものである。
実施例1と同様に、被矯正板9の板厚、板幅、材料特性がプロセスコンピュータ8に伝送、記憶されている。また、ローラレベラの入側に設置された平坦度計7により測定された被矯正板9の平坦度データはプロセスコンピュータ8に伝送され、プロセスコンピュータ8を用いて定量化された伸びひずみ差の板幅方向分布に基づき、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値としたときに、ローラ矯正後の伸びひずみ差の板幅方向分布の目標値を達成するために必要な最大加工度を算出するとともに、該最大加工度が実現可能かどうか判断する。該最大加工度が実現可能と判断された場合、該最大加工度を実現するための矯正条件をプロセスコンピュータ8にて計算する。
ここで、該被矯正板のローラ矯正前の伸びひずみ差の板幅方向分布が過大な場合や設備制約などで該最大加工度が実現不可能と判断された場合、実施例1と同様にして、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定したローラ矯正を指向する。このとき、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定したローラ矯正を実施した場合であっても、矯正パスは追加しない。
以上説明した条件でもって、鋼板のローラ矯正に本方法を実施し、合計234本の鋼板を矯正した。その結果、ローラ矯正後の平坦度合格率は81%であった。従来、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定したローラ矯正を実施した場合には、ローラ矯正中のロールたわみを抑制した矯正パスを追加していたが、このときのローラ矯正後の平坦度合格率は77%であった。つまり、本方法の適用により、ローラ矯正による板の平坦度矯正効果がさらに高められたことがわかる。
本発明は、複数本のロールを上下に千鳥状に配置し、それらロール間に被矯正板を通して繰り返し曲げを与えることによって被矯正板を平坦化する、ロール押込量の板幅方向分布を調整する機構を有するローラレベラにおける板のローラ矯正方法およびローラ矯正設備に適用できる。
1…ワークロール(ロール)
(i)…i番目のワークロール(ロール)
2…下ロール群
2a…下ロール群フレーム
3…上ロール群
3a…上ロール群フレーム
4…入側押し込み装置
5…出側押し込み装置
6…ハウジング
7…平坦度計
8…プロセスコンピュータ
9…被矯正板
10…ウェッジ調整機構
10a…板幅方向中央部のウェッジ調整機構
10b…板幅方向クォータ部のウェッジ調整機構
10c…板幅方向端部のウェッジ調整機構
11…サイドガイド
20…ローラレベラ
L…矯正設備ライン

Claims (20)

  1. 複数本のロールが上下に千鳥状に配置され、ロール押込量の板幅方向分布を調整する機構を有するローラレベラにおいて、当該複数本のロール間に被矯正板を通して繰り返し曲げを与えることによって被矯正板を平坦化する被矯正板のローラ矯正方法であって、
    ローラ矯正中のロールベンディング量を、矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量と、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量と、の合算として設定することを特徴とする、被矯正板のローラ矯正方法。
  2. 前記矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量は、前記ローラレベラにおいて被矯正板に対し最後の塑性曲げを付与するロールに作用する矯正荷重に基づいて設定されることを特徴とする、請求項1に記載の被矯正板のローラ矯正方法。
  3. 前記矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量は、前記ローラレベラにおいて被矯正板に対し最大の曲げを付与するロールに作用する矯正荷重に基づいて設定されることを特徴とする、請求項1に記載の被矯正板のローラ矯正方法。
  4. 被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布に応じてローラ矯正中に被矯正板に付与すべき最大加工度を求め、
    ローラ矯正中に被矯正板に付与すべき最大加工度が達成可能な場合には、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値とした上で該最大加工度を上回る最大加工度が得られる矯正条件にてローラ矯正を実施し、
    ローラ矯正中に被矯正板に付与すべき最大加工度が達成不可能な場合には、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定してローラ矯正を実施することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の被矯正板のローラ矯正方法。
  5. 被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量がゼロに近い所定の値であるときの、ローラ矯正前の板幅中央における伸びひずみ差と板幅端部における伸びひずみ差との偏差と、ローラ矯正後の板幅中央における伸びひずみ差と板幅端部における伸びひずみ差との偏差との比が、ローラ矯正中に被矯正板に付与される最大加工度を引数とする関数で表現される場合に、
    当該関数に係る関係式を用いて、被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布に応じてローラ矯正中に被矯正板に付与すべき最大加工度を求めることを特徴とする、請求項4に記載の被矯正板のローラ矯正方法。
  6. ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルと、被矯正板の前記ローラレベラにおける長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルと、が相似かつ符号が逆となるようなロール押込量の板幅方向分布に近付けるように、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を設定することを特徴とする、請求項1に記載の被矯正板のローラ矯正方法。
  7. 被矯正板の板幅センタ位置とローラレベラの幅方向センタ位置とをずらすことで、ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルと、該被矯正板の該ローラレベラにおける長手方向軌跡長差率の板幅方向分布プロフィルと、が相似かつ符号が逆となるようなロール押込量の板幅方向分布に近付けるように、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を設定することを特徴とする、請求項1に記載の被矯正板のローラ矯正方法。
  8. ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルを、板幅方向座標を引数とする近似関数で表現することを特徴とする、請求項6又は7に記載の被矯正板のローラ矯正方法。
  9. ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルの近似関数を、板幅中心をゼロとする板幅方向座標の偶関数で表現することを特徴とする、請求項6又は7に記載の被矯正板のローラ矯正方法。
  10. ローラ矯正前の被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルの近似関数を、板幅中心をゼロとする板幅方向座標の偶関数と板幅中心をゼロとする板幅方向座標の一次関数との和で表現することを特徴とする、請求項6又は7に記載の被矯正板のローラ矯正方法。
  11. 被矯正板のローラレベラにおける長手方向軌跡長を、板幅方向位置において、各ロール直上および直下を結ぶ直線で評価することを特徴とする、請求項6〜10のいずれか一項に記載の被矯正板のローラ矯正方法。
  12. 被矯正板のローラレベラにおける長手方向軌跡長を、最大加工度を付与するロールの1本入側のロールから、最大加工度を付与するロールの1本出側のロールまでの区間で評価することを特徴とする、請求項6〜11のいずれか一項に記載の被矯正板のローラ矯正方法。
  13. 被矯正板のローラレベラにおける長手方向軌跡長を、ローラレベラの最入側から2本目のロールから、ローラレベラの最入側から4本目のロールまでの区間で評価することを特徴とする、請求項6〜11のいずれか一項に記載の被矯正板のローラ矯正方法。
  14. 被矯正板のローラレベラにおける長手方向軌跡長を、ローラレベラの最入側から3本目のロールから、ローラレベラの最入側から5本目のロールまでの区間で評価することを特徴とする、請求項6〜11のいずれか一項に記載の被矯正板のローラ矯正方法。
  15. 被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定してローラ矯正を実施した場合、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量をゼロに近い所定の値とする矯正パスを追加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の被矯正板のローラ矯正方法。
  16. 被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量を被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布と相反する方向の伸びひずみ差の板幅方向分布を付与する方向に設定してローラ矯正を実施した場合、矯正パスを追加しないことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の被矯正板のローラ矯正方法。
  17. 複数本のロールが上下に千鳥状に配置され、ロール押込量の板幅方向分布を調整する機構を有するローラレベラにおいて、当該複数本のロール間に被矯正板を通して繰り返し曲げを与えることによって被矯正板を平坦化するローラ矯正設備であって、
    ローラ矯正中のロールベンディング量を、矯正反力に伴うロールたわみを補償するためのロールベンディング量と、被矯正板に伸びひずみ差の板幅方向分布を付与するためのロールベンディング量と、の合算として設定する制御を行う制御部と、
    を具備するローラ矯正設備。
  18. ローラレベラの幅方向センタ位置に対する被矯正板の板幅センタ位置を調整できるオフセンタ装置を更に具備することを特徴とする、請求項17に記載のローラ矯正設備。
  19. 被矯正板の伸びひずみ差の板幅方向分布プロフィルを測定できる平坦度計を更に具備することを特徴とする、請求項17又は18に記載のローラ矯正設備。
  20. 前記平坦度計は、前記ローラレベラの入側に設置されることを特徴とする、請求項19に記載のローラ矯正設備。
JP2018052349A 2017-03-29 2018-03-20 被矯正板のローラ矯正方法およびローラ矯正設備 Active JP6954196B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017065400 2017-03-29
JP2017065400 2017-03-29

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018167325A true JP2018167325A (ja) 2018-11-01
JP6954196B2 JP6954196B2 (ja) 2021-10-27

Family

ID=64019094

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018052349A Active JP6954196B2 (ja) 2017-03-29 2018-03-20 被矯正板のローラ矯正方法およびローラ矯正設備

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6954196B2 (ja)

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01273615A (ja) * 1988-04-27 1989-11-01 Hitachi Ltd 矯正機,矯正装置,及び矯正方法並びに矯正ライン設備
JPH09122755A (ja) * 1995-10-31 1997-05-13 Kawasaki Steel Corp ローラレベラを用いる金属板材の冷間形状矯正方法
JPH11123457A (ja) * 1997-10-22 1999-05-11 Sumitomo Heavy Ind Ltd ローラレベラーのクラウニング装置およびそれを用いた横撓み補正方法
JP2005103589A (ja) * 2003-09-30 2005-04-21 Jfe Steel Kk 鋼板のローラ矯正方法
WO2013038837A1 (ja) * 2011-09-14 2013-03-21 スチールプランテック株式会社 ローラレベラおよびそれを用いた板材の矯正方法
JP2015029992A (ja) * 2013-07-31 2015-02-16 Jfeスチール株式会社 ローラーレベラによる鋼板の矯正方法及びローラーレベラ

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01273615A (ja) * 1988-04-27 1989-11-01 Hitachi Ltd 矯正機,矯正装置,及び矯正方法並びに矯正ライン設備
JPH09122755A (ja) * 1995-10-31 1997-05-13 Kawasaki Steel Corp ローラレベラを用いる金属板材の冷間形状矯正方法
JPH11123457A (ja) * 1997-10-22 1999-05-11 Sumitomo Heavy Ind Ltd ローラレベラーのクラウニング装置およびそれを用いた横撓み補正方法
JP2005103589A (ja) * 2003-09-30 2005-04-21 Jfe Steel Kk 鋼板のローラ矯正方法
WO2013038837A1 (ja) * 2011-09-14 2013-03-21 スチールプランテック株式会社 ローラレベラおよびそれを用いた板材の矯正方法
JP2015029992A (ja) * 2013-07-31 2015-02-16 Jfeスチール株式会社 ローラーレベラによる鋼板の矯正方法及びローラーレベラ

Also Published As

Publication number Publication date
JP6954196B2 (ja) 2021-10-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR20140112051A (ko) 롤러 레벨러 및 판재의 교정 방법
JP7004658B2 (ja) 曲げ方法
CN110465561B (zh) 一种热轧带钢矫平矫工艺
JP5168170B2 (ja) ローラ矯正における被矯正材の材料定数および矯正状態の推定方法ならびにローラレベラの操業方法
Moneke et al. Control of residual stresses in roll forming through targeted adaptation of the roll gap
US11707774B2 (en) Bending method
JP2018167325A (ja) 被矯正板のローラ矯正方法およびローラ矯正設備
JP3774619B2 (ja) 二次加工性に優れた厚鋼板の製造方法
JPS59229213A (ja) 金属帯の幅方向厚み分布変更方法
JP4525037B2 (ja) 鋼板のローラ矯正方法
JP4986463B2 (ja) 冷間圧延における形状制御方法
JP5626172B2 (ja) 鋼帯の製造設備
JP2007118024A (ja) ローラーレベラーによる金属板の矯正方法。
JP5983267B2 (ja) 被圧延材の形状制御装置および形状制御方法
JP2013180335A (ja) 鋼板のローラーレベラー矯正方法及びローラーレベラー矯正機
JP5557576B2 (ja) 鋼材の熱間矯正方法
JP6870358B2 (ja) 演算装置および演算方法
JP7151513B2 (ja) ローラ矯正方法
JP6519535B2 (ja) 圧下レベリング制御装置および圧下レベリング制御方法
JP7103329B2 (ja) 圧延機の制御方法および制御装置
JP7397311B2 (ja) 被矯正材の変形状態の推定方法及びローラレベラのロール押込量制御方法
JP4923429B2 (ja) ローラーレベラーの設定方法
JP6743835B2 (ja) 形鋼の圧延方法及び形鋼の圧延におけるレベリング量の調整方法
DE102011107171A1 (de) Vorrichtung und Verfahren zum Richten von Metallbändern
JP4412442B2 (ja) ローラレベラによる金属板の矯正方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20190605

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20201106

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210817

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210831

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210913

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6954196

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151