JP2015029992A - ローラーレベラによる鋼板の矯正方法及びローラーレベラ - Google Patents

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聖治 田口
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Abstract

【課題】矯正前の鋼板に耳伸び、中伸びが発生していても平坦度を向上させることができ、残留応力を小さくして鋼板を矯正することができるローラーレベラによる鋼板の矯正方法を提供する。【解決手段】矯正前の鋼板1に中伸びの形状不良が発生している場合には、鋼板の幅方向中央部の圧下量に対して幅方向両端部の圧下量が大きくなるようにレベリングロール12を撓ませて鋼板を矯正する(図5(a))。また、矯正前の鋼板1に耳伸びの形状不良が発生している場合には、鋼板の幅方向両端部の圧下量に対して幅方向中央部の圧下量が大きくなるようにレベリングロール12を撓ませて鋼板を矯正する(図5(b))。【選択図】図5

Description

本発明は、鋼板の形状不良や残留応力を矯正するローラーレベラによる鋼板の矯正方法及びローラーレベラに関する。
近年、鋼の変態組織制御による機械的性質の向上を目的として、鋼板の熱間圧延工程において加速冷却が行われる場合がある。しかし、冷却時において、冷却ムラに起因して鋼板の幅方向温度分布が不均一となる場合には、その後の空冷過程において熱収縮量が不均一となり、温度偏差に応じて鋼板の形状不良及び残留応力が発生する。
このような鋼板の形状不良や残留応力を矯正する方法として、例えば特許文献1に示す技術が知られている。
この特許文献1の技術は、上下千鳥状に配置された複数本のロール間に鋼板を通し、鋼板の幅方向の圧下量を調整するローラーレベラを使用した鋼板の矯正方法であり、鋼板の長手方向の反り(形状不良)を抑制するとともに、残留応力を低減するものである。
ところで、矯正前の鋼板の形状不良として、図7(a)に示すように、鋼板1の幅方向中央部波状に伸びた状態となっている中伸び、図7(b)に示すように、鋼板1の幅方向両端部が波状に伸びた状態となっている耳伸びがある。
特開2005−52860号公報
しかし、特許文献1の鋼板の矯正方法は、矯正前の鋼板に発生している耳伸び、中伸びの形状不良を考慮せずに鋼板の幅方向の圧下量を調整しており、例えば、中伸びが発生している鋼板に、鋼板の幅方向に対して均一の圧下量で矯正すると、鋼板の中伸びが矯正されず、平坦度を向上させることができない。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、矯正前の鋼板に耳伸び、中伸びが発生していても平坦度を向上させることができるとともに、残留応力を小さくして鋼板を矯正することができるローラーレベラによる鋼板の矯正方法及びローラーレベラを提供することを目的としている。
発明者らは、パスラインに沿って上下に千鳥状に複数本のレベリングロールが配置されたローラーレベラにより鋼板の矯正を行う際に、矯正前の鋼板に中伸びの形状不良が発生している場合には、幅方向の中央部と比較して幅方向両端部の圧下量を増大することで、矯正後の鋼板の平坦度を向上させることができ、逆に矯正前の鋼板に耳伸びの形状不良が発生している場合には、幅方向の両端部と比較して幅方向中央部の圧下量を増大することで、矯正後の鋼板の平坦度を向上させることができるのではないかとの発想に至り、本発明を完成した。
上記目的を達成するために、一の実施形態に係るローラーレベラによる鋼板の矯正方法は、パスラインに沿って上下に千鳥状に複数本のレベリングロールが配置されたローラーレベラを用いて鋼板を1パス以上通板し、矯正前の前記鋼板の幅方向の形状不良に応じて前記レベリングロールによる幅方向の圧下量を調整して矯正する方法において、前記矯正前の鋼板に中伸びの形状不良が発生している場合には、前記鋼板の幅方向中央部の圧下量に対して幅方向両端部の圧下量が大きくなるように前記レベリングロールを撓ませて前記鋼板を矯正し、前記矯正前の鋼板に耳伸びの形状不良が発生している場合には、前記鋼板の幅方向両端部の圧下量に対して幅方向中央部の圧下量が大きくなるように前記レベリングロールを撓ませて前記鋼板を矯正することを特徴とするローラーレベラによる鋼板の矯正方法である。
また、一の実施形態に係るローラーレベラによる鋼板の矯正方法は、出側の上部及び下部の前記レベリングロールとの間のギャップの幅方向平均値を前記鋼板の板厚に設定して前記鋼板の矯正を行うようにした。
また、一の実施形態に係るローラーレベラによる鋼板の矯正方法は、ローラーレベラ設備に高負荷を与えない程度の所定の板厚以内、或いは、所定の降伏強度以内の前記鋼板に対して、中伸び及び耳伸びの矯正を行うようにした。
一方、一の実施形態に係るローラーレベラは、パスラインに沿って上下に千鳥状に配置した複数の上部レベリングロール及び下部レベリングロールと、圧下装置と前記上部レベリングロールとの間に配置され、前記圧下装置から伝達された圧下量を幅方向に渡って調整して前記上部レベリングロールに伝達することが可能な幅方向圧下調整部と、制御手段と、を備え、前記制御手段は、矯正前の鋼板に中伸びの形状不良が発生している場合に、前記鋼板の幅方向中央部の圧下量に対して幅方向両端部の圧下量が大きくなるように幅方向圧下調整部を調整して前記上部レベリングロールを撓ませ、矯正前の鋼板に耳伸びの形状不良が発生している場合に、前記鋼板の幅方向両端部の圧下量に対して幅方向中央部の圧下量が大きくなるように幅方向圧下調整部を調整して前記上部レベリングロールを撓ませるようにしている。
また、一の実施形態に係るローラーレベラは、下部レベリングロールは、上部レベリングロールとのギャップが変更可能となるようにロール移動機構に保持されているようにした。
本発明に係るローラーレベラによる鋼板の矯正方法によると、矯正前の鋼板に中伸びの形状不良が発生している場合には、鋼板の幅方向中央部の圧下量に対して幅方向両端部の圧下量が大きくなるようにレベリングロールを撓ませることで、レベリングロールに矯正された鋼板は平坦度を向上させることができるとともに、残留応力を小さくすることができる。また、矯正前の鋼板に耳伸びの形状不良が発生している場合には、鋼板の幅方向両端部の圧下量に対して幅方向中央部の圧下量が大きくなるようにレベリングロールを撓ませることで、レベリングロールに矯正された鋼板は平坦度を向上させることができるとともに、残留応力を小さくすることができる。
また、本発明に係るローラーレベラによると、平坦度を向上させ、残留応力を小さくして鋼板を矯正することができる装置を提供することができる。
本発明に係るローラーレベラを模式的に示した側面図である。 本発明に係るローラーレベラを模式的に示した正面図である。 本発明に係るローラーレベラの矯正制御のプログラムを示すフローチャートである。 本発明に係るローラーレベラの上部レベリングロール及び下部レベリングロールを示す図である。 本発明において鋼板に中伸びが発生している場合にレベリングロールを撓ませる状態を示した図である。 幅方向圧下量差分布を示すグラフである。 本発明において鋼板に耳伸びが発生している場合にレベリングロールを撓ませる状態を示した図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[ローラーレベラの構成]
図1及び図2は、本発明に係るローラーレベラ10を模式的に示すものであり、図1は側面図、図2は正面図である。
図1において、装置架台11を左右に横切っている符号PLのラインは鋼板1のパスラインであり、この鋼板1のパスラインPLを挟んで上下に千鳥状に、複数の上部レベリングロール12及び複数の下部レベリングロール13が配置されている。
複数の上部レベリングロール12の上部には、上部レベリングロール12をバックアップする短尺の上部バックアップロール14が、各上部レベリングロール12の軸方向に沿って所定間隔をあけて複数配置されている。
複数の下部レベリングロール13の下部にも、下部レベリングロール13をバックアップする短尺の下部バックアップロール15が、各下部レベリングロール13の軸方向に沿って所定間隔をあけて複数配置されている。
装置架台11の上部には複数の圧下装置17が配置されており、これら圧下装置17の下部と複数の上部バックアップロール14との間に、幅方向圧下調整部18が配置されている。
この幅方向圧下調整部18は、複数の圧下装置17から圧下力が伝達される圧下力伝達板19と、複数の上部バックアップロール14の上部が接触している圧下量調整板20と、これら圧下力伝達板19及び圧下量調整板20の間に、矯正される鋼板1の幅方向に所定間隔をあけて配置された複数のウェッジ21とを備えている。
複数のウェッジ21は、圧下力伝達板19の下面に固定された固定ウェッジ22と、圧下量調整板20の上面を移動する可動ウェッジ23とを備え、パスラインPLに沿う方向に傾斜して互いに摺接する斜面22a,23aが設けられている。
そして、装置架台11の上部には、各ウェッジ21の可動ウェッジ23をパスラインPLに沿う方向に移動させるサーボシリンダ24が配置されている。なお、図1では1台のウェッジ21の可動ウェッジ23を移動させる1台のサーボシリンダ24しか記載していない。
複数の下部バックアップロール15は、ロール支持板25上に配置され、ロール支持板25は傾動装置26上に配置されている。
傾動装置26は、パスラインPLに沿う方向に曲率が延在している円弧凹状支持面27aが形成されている支持部27と、円弧凹状支持面27aに面接触する円弧凸状座面28aが形成されており、ロール支持板25が上部に配置されている傾動部28と、円弧凸状座面28aを円弧凹状支持面27a上で摺動させながら傾動部28をパスラインPLに沿う方向(図1の矢印方向R)に傾動させる駆動部29とを備えており、傾動部28が傾動すると、下部レベリングロール13が昇降する。
この下部レベリングロール13の昇降により、それぞれの下部レベリングロール13と上部レベリングロール12とのギャップを変更可能となっている。
また、符号30は制御コントローラである。この制御コントローラ30には、矯正前の鋼板1の情報(板厚、降伏強度)がオペレーターにより入力されるとともに、オペレーターの目視により、矯正前の鋼板1の形状不良(耳伸び、中伸び)の有無の情報と、形状不良がある場合にはその程度(例えば5段階評価)の情報が入力される。
このローラーレベラ10を用いて鋼板1の矯正を行う矯正方法について以下に説明する。
制御コントローラ30に矯正前の鋼板1の情報がオペレーターにより入力されると、傾動部28の傾動量と、上部レベリングロール位置が決定される。
すなわち、鋼板1の長手方向の反りを矯正するための下部レベリングロール13の位置及び上部レベリングロール12の位置を決める。それぞれのロールの位置は、鋼板1の板厚、降伏強度等により、それぞれのレベリングロールについて適正位置が予め決められている。この適正位置は、上流側から下流側に従って前後のレベリングロールとの上下方向のギャップが徐々に大きくなるように決められている。なお、ギャップはパスライン方向から見たときの上部レベリングロール12の最下位置と下部レベリングロール13の最上位置との距離である。
上部レベリングロール12の位置は、圧下装置17が上部レベリングロール12を上下方向に移動させることにより調整され、下部レベリングロール13の位置は、駆動部29が傾動部28を傾動させることで調整される。それぞれの下部レベリングロール13についての上部レベリングロール12とのギャップは、傾動部28の傾動量を調整することで変更することが可能となっている。
次に、オペレーターからの矯正前の鋼板1の形状不良の有無及びその程度の情報が入力されると、以下に説明する鋼板矯正プログラムが実行される。
[鋼板矯正プログラム]
次に、制御コントローラ30で行われる鋼板矯正プログラムについて、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
先ず、ステップST1において、オペレーターが入力した矯正前の鋼板1の板厚tと、矯正可能な板厚上限値tmaxとを比較する。このステップST1において、矯正前の鋼板1の板厚tが板厚上限値tmax以下の場合にはステップST2に移行し、矯正前の鋼板1の板厚tが板厚上限値tmaxを超える値のときにはステップST5の幅方向フラット圧下工程に移行する。
矯正前の鋼板1の板厚tが板厚上限値tmax以下の場合に移行するステップST2では、オペレーターが入力した鋼板1の降伏強度YSと、矯正可能な降伏強度の上限値YSmaxとを比較する。このステップST2において、鋼板1の降伏強度YSが上限値YSmax以下の場合にはステップST3に移行し、鋼板1の降伏強度YSが上限値YSmaxを超える値のときにはステップST5の幅方向フラット圧下工程に移行する。
鋼板1の降伏強度YSが上限値YSmax以下の場合に移行するステップST3では、矯正前の鋼板1に中伸びが発生しているか否かを判断する。このステップST3において、矯正前の鋼板1に中伸びが発生している場合にはステップST6の幅方向両端部強圧下工程に移行し、その後にステップST8の出側ロールギャップ補正工程に移行する。また、ステップST3において、矯正前の鋼板1に中伸びが発生していない場合には、ステップST4に移行する。
矯正前の鋼板1に中伸びが発生していない場合に移行するステップST4では、矯正前の鋼板1に耳伸びが発生しているか否かを判断する。このステップST4において、矯正前の鋼板1に耳伸びが発生している場合には、ステップST7の幅方向中央強圧下工程に移行し、その後にステップST8の出側ロールギャップ補正工程に移行する。また、ステップST4において、矯正前の鋼板1に耳伸びが発生していない場合には、ステップST5の幅方向フラット圧下工程に移行する。
[幅方向フラット圧下工程]
矯正プログラムのステップST5の幅方向フラット圧下工程は、以下のようにして、可動ウェッジ23の挿入量を調整する。
先ず、複数の上部レベリングロール12のそれぞれについて、圧下装置17が鋼板1に対して圧下力を作用させた際に、上部レベリングロール12の圧下面が幅方向(ロールの軸方向)にフラットになるための圧下方向の位置補正量Δijを以下の(1)式で求める。
Δij = (δ(i−1)j + δ(i+1)j)/2
+ δij+ Gj ……(1)
なお、i:図4で示す複数の上部レベリングロール12及び下部レベリングロール13に付けたロール番号(最上流を1として下流側に向かって順に連番の整数)、j:パスラインPLに直交する水平方向に所定間隔をあけて配置されている複数のウェッジ21の番号、δij:圧下荷重に応じたロール変位の変化、Gj:摩耗によるロール変位の変化である。
そして、圧下方向の位置補正量Δijだけ上部レベリングロール12の位置を補正するための可動ウェッジ23の挿入量Lijを以下の(2)式で求める。
Lij = α・Δij ……(2)
ここで、αは可動ウェッジ23の挿入量Lijと上部レベリングロール12の圧下方向位置移動量との関係から予め設定しておく定数である。
この幅方向フラット圧下工程は、上部レベリングロール12及び下部レベリングロール13の摩耗量を考慮しながら、上部レベリングロール12のロール撓み量を略0として鋼板1の矯正を行う。そして、入側ロール(ロール番号1〜4)で鋼板1に大きな変形を与えることで、鋼板1の断面内部の塑性変形を大きくし、形状の均一化を図り、搬送中央ロール(ロール番号5〜7)で残留応力を調整するとともに形状を平坦に近づけ、出側ロール(ロール番号8、9)で鋼板1の平坦度を向上させている。
[幅方向両端部強圧下工程]
また、鋼板矯正プログラムのステップST6の幅方向両端部強圧下工程は、図5(a)に示すように、幅方向圧下調整部18の複数のウェッジ21を、上部レベリングロール12の軸方向の両端部に位置するウェッジ21の高さが高くなり、軸方向の中央に向かうに従いウェッジ21の高さが徐々に低くなるように、後述するように各々の可動ウェッジ23を移動させてウェッジ高さを調整する。
そして、鋼板1がローラーレベラ10に通板されると、上部レベリングロール12は、図5(a)に示すように、上方に向かって凸となるように撓み変形しながら鋼板1を矯正する。
したがって、鋼板1の幅方向両端部に近い程、大きな伸び変形が生じ、中伸びの矯正が行われる。
[幅方向中央強圧下工程]
また、鋼板矯正プログラムのステップST7の幅方向中央強圧下工程は、図5(b)に示すように、幅方向圧下調整部18の複数のウェッジ21を、上部レベリングロール12の軸方向の両端部に位置するウェッジ21の高さが低くなり、軸方向の中央に向かうに従いウェッジ21の高さが徐々に高くなるように、後述するように各々の可動ウェッジ23を移動させてウェッジ高さを調整する。
そして、鋼板1がローラーレベラ10に通板されると、上部レベリングロール12は、図5(b)に示すように、下方に向かって凸となるように撓み変形しながら鋼板1を矯正する。したがって、鋼板1の中央部に近い程、大きな伸び変形が生じ、耳伸びの矯正が行われる。
上記の幅方向両端部強圧下工程及び幅方向中央強圧下工程における可動ウェッジ23の移動量の調整、すなわち、可動ウェッジ23の挿入量Lijは以下のようにして求める。
先ず、複数の上部レベリングロール12のそれぞれについて、圧下装置17が鋼板1に対して圧下力を作用させた際に、上部レベリングロール12の圧下面が幅方向(ロールの軸方向)の両端部、或いは中央部を強圧下するための圧下方向の位置補正量Δijを以下の(3)式で求める。
Δij = (δ(i−1)j + δ(i+1)j)/2
+ δij+ Gj + Δδj ……(3)
なお、i:図4で示す複数の上部レベリングロール12及び下部レベリングロール13に付けたロール番号(最上流を1として下流側に向かって順に連番の整数)、j:パスラインPLに直交する水平方向に所定間隔をあけて配置されている複数のウェッジ21の番号、δij:圧下荷重に応じたロール変位の変化、Gj:摩耗によるロール変位の変化、Δδj:圧下量差付与量である。
この(3)式による位置補正量Δijの求め方は、上述の(1)式に対して圧下量差付与量Δδjを考慮している点で上述の(1)式のものとは異なっている。圧下量差付与量Δδjは、幅方向両端部強圧下工程の際の幅方向の基準圧下量差分布を関数f(j)として、幅方向中央強圧下工程の際の幅方向の基準圧下量差分布を関数g(j)として定めておき、これにオペレーターの入力した形状不良の程度k(例えば5段階評価)に応じた係数βkを乗算した値として求めるようにする。f(j)及びg(j)は、図6に示すようにウェッジ21の番号j毎に基準圧下量差f(j)、g(j)が設定されている。基準圧下量差f(j)は幅方向中央部が0で両端に向かう程値が大きくなる関数である。基準圧下量差g(j)は幅方向両端部が0で中央に向かう程値が大きくなる関数である。
形状不良の種類、すなわち、中伸びか耳伸びかによって基準圧下量差f(j)、g(j)のどちらかを用いるかが決められている。本例では、中伸びの場合は基準圧下量差f(j)を、耳伸びの場合は基準圧下量差g(j)を用いる。
そして、形状不良の程度によって、以下の(4)式あるいは(5)式で圧下量差付与量Δδjが求められる。
Δδj = βk × f(j) ……(4)
Δδj = βk × g(j) ……(5)
そして、(4)式、或いは(5)式で求めたΔδjを用い、(3)式で圧下方向の位置補正量Δijを求め、求めた補正量Δijだけ上部レベリングロール12の位置を補正するための可動ウェッジ23bの挿入量Lijを以下の(2)式で求める。
Lij = α・Δij ……(2)
ここで、αは可動ウェッジ23の挿入量Lijと上部レベリングロール12の圧下方向位置移動量との関係から予め設定しておく定数である。
なお、f(j)、g(j)、βkは、中伸び、或いは耳伸びの程度を種々変化させた鋼板1について、種々の幅方向圧下量差で実際に矯正を行ったときの矯正効果に関するデータから予め設定しておけばよい。
以上説明したように、可動ウェッジ23の挿入量Lijを決定することにより、鋼板1に中伸びの形状不良が発生している場合には、鋼板1の幅方向両端部の圧下量に対して幅方向中央部の圧下量を大きくすることができ、鋼板1に耳伸びの形状不良が発生している場合には、鋼板1の幅方向両端部の圧下量に対して幅方向中央部の圧下量を大きくすることができ、これにより、長手方向の反りの矯正に加えて、中伸び、或いは耳伸びの矯正も行うことができる。
[出側ロールギャップ補正工程]
さらに、鋼板矯正プログラムのステップST8の出側ロールギャップ補正工程は、上部レベリングロール12が撓み変形(上方に向かって凸、或いは下方に向かって凸)している場合に、パスラインPLの出側に位置している上部レベリングロール12及び下部レベリングロール13の軸方向の両端部の2箇所のギャップと、軸方向の中央部のギャップとの平均値を算出する(以下、平均ギャップ値と称する)。
そして、出側の上部レベリングロール12及び下部レベリングロール13ギャップの平均ギャップ値が鋼板1の板厚tとなるように、傾動装置26の駆動部29を駆動して下部レベリングロール13を昇降させる。
なお、本発明に係るロール移動機構が傾動部29に対応し、本発明に係る制御手段が、制御コントローラ30に対応している。
[ローラーレベラによる鋼板の矯正動作及び効果]
次に、本実施形態のローラーレベラ10による鋼板1の矯正動作及び効果について説明する。
これから矯正される鋼板1の板厚tが板厚上限値tmax以内であり、鋼板1の降伏強度YSが上限値YSmax以内であり、鋼板1に中伸びや耳伸びが発生していない場合には、上部レベリングロール12及び下部レベリングロール13の摩耗量を考慮しながら、入側ロール(図4のロール番号1〜4)で鋼板1に大きな変形を与えて形状の均一化を図り、搬送中央ロール(図4のロール番号5〜7)で残留応力を調整するとともに形状を平坦に近づけ、出側ロール(図4のロール番号8、9)で平坦度を向上させて鋼板1を矯正する(図3のステップST5の幅方向フラット圧下工程)。
また、中伸びが発生した鋼板1を矯正する場合には、図5(a)に示すように、幅方向圧下調整部18の複数のウェッジ21を、上部レベリングロール12の軸方向の両端部に位置するウェッジ21の高さが高くなり、軸方向の中央に向かうに従いウェッジ21の高さが徐々に低くなるように調整する。ウェッジ21の高さ調整は、オペレーターが入力した鋼板1の中伸びの程度に応じて行われる。そして、鋼板1がローラーレベラ10に通板されると、上部レベリングロール12は、上方に向かって凸となるように撓み変形しながら鋼板1を矯正する(図3のステップST6の幅方向両端部強圧下工程)。
このように矯正された鋼板1は、上方に向かって凸となるように撓み変形した複数の上部レベリングロール12に、幅方向の中央部と比較して幅方向両端部の圧下量が増大され、幅方向両端部が強圧下されるので、中伸びが発生していた鋼板1の平坦度を向上させることができる。
また、耳伸びが発生した鋼板1を矯正する場合には、図5(b)に示すように、幅方向圧下調整部18の複数のウェッジ21を、上部レベリングロール12の軸方向の中央に位置するウェッジ21の高さが高くなり、軸方向の両端部に向かうに従いウェッジ21の高さが徐々に低くなるように調整する。ウェッジ21の高さの調整は、オペレーターが入力した鋼板1の耳伸びの程度に応じて行われる。そして、鋼板1がローラーレベラ10に通板されると、上部レベリングロール12は、下方に向かって凸となるように撓み変形しながら鋼板1を矯正する(図3のステップST7の幅方向中央強圧下工程)。
このように矯正された鋼板1は、下方に向かって凸となるように撓み変形した複数の上部レベリングロール12に、幅方向の両端部と比較して幅方向中央の圧下量が増大され、幅方向中央が強圧下されるので、耳伸びが発生していた鋼板1の平坦度を向上させることができる。
そして、鋼板1の中伸び或いは耳伸びを矯正する場合には、パスラインPLの出側に位置している上部レベリングロール12及び下部レベリングロール13の軸方向の両端部の2箇所のギャップと軸方向の中央部のギャップとの平均値(平均ギャップ値)を算出し、平均ギャップ値が鋼板1の板厚tとなるように、傾動装置26の駆動部29を駆動して下部レベリングロール13を昇降させ、出側の鋼板1に対する圧下量を補正する(図3のステップST8の出側ロールギャップ補正工程)。このように、パスラインPLの出側の平均ギャップ値が鋼板1の板厚tとなるように鋼板1に対する圧下量を補正したことから、ローラーレベラ10で矯正された後の鋼板1の長手方向の反りを防止することができる。
さらに、本実施形態では、鋼板1が板厚上限値tmaxを上回り、或いは、降伏強度の上限値YSmaxを上回る場合には、中伸び耳伸びが発生していても、幅方向に均一の圧下力を加えて矯正するようにしているので、本実施形態のローラーレベラ10を構成する上部レベリングロール12、下部レベリングロール13などの構成部品に局所的な高負荷をかけることが無く、長期に渡ってローラーレベラ10を使用することができる。
1…鋼板、10…ローラーレベラ、11…装置架台、12…上部レベリングロール、13…下部レベリングロール、14…上部バックアップロール、15…下部バックアップロール、17…圧下装置、18…幅方向圧下調整部、19…圧下力伝達板、20…圧下量調整板、21…ウェッジ、22…固定ウェッジ、22a,23a…斜面、23…可動ウェッジ、24…サーボシリンダ、25…ロール支持板、26…傾動装置、27…支持部、27a…円弧凹状支持面、28…傾動部、28a…円弧凸状座面、29…駆動部、30…制御コントローラ、PL…パスライン

Claims (5)

  1. パスラインに沿って上下に千鳥状に複数本のレベリングロールが配置されたローラーレベラを用いて鋼板を1パス以上通板し、矯正前の前記鋼板の幅方向の形状不良に応じて前記レベリングロールによる幅方向の圧下量を調整して矯正する方法において、
    前記矯正前の鋼板に中伸びの形状不良が発生している場合には、前記鋼板の幅方向中央部の圧下量に対して幅方向両端部の圧下量が大きくなるように前記レベリングロールを撓ませて前記鋼板を矯正し、
    前記矯正前の鋼板に耳伸びの形状不良が発生している場合には、前記鋼板の幅方向両端部の圧下量に対して幅方向中央部の圧下量が大きくなるように前記レベリングロールを撓ませて前記鋼板を矯正することを特徴とするローラーレベラによる鋼板の矯正方法。
  2. 出側の上部及び下部の前記レベリングロールとの間のギャップの幅方向平均値を前記鋼板の板厚に設定して前記鋼板の矯正を行うことを特徴とする請求項1記載のローラーレベラによる鋼板の矯正方法。
  3. ローラーレベラ設備に高負荷を与えない程度の所定の板厚以内、或いは、所定の降伏強度以内の前記鋼板に対して、中伸び及び耳伸びの矯正を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のローラーレベラによる鋼板の矯正方法。
  4. パスラインに沿って上下に千鳥状に配置した複数の上部レベリングロール及び下部レベリングロールと、圧下装置と前記上部レベリングロールとの間に配置され、前記圧下装置から伝達された圧下量を幅方向に渡って調整して前記上部レベリングロールに伝達することが可能な幅方向圧下調整部と、制御手段と、を備え、
    前記制御手段は、矯正前の鋼板に中伸びの形状不良が発生している場合に、前記鋼板の幅方向中央部の圧下量に対して幅方向両端部の圧下量が大きくなるように幅方向圧下調整部を調整して前記上部レベリングロールを撓ませ、矯正前の鋼板に耳伸びの形状不良が発生している場合に、前記鋼板の幅方向両端部の圧下量に対して幅方向中央部の圧下量が大きくなるように幅方向圧下調整部を調整して前記上部レベリングロールを撓ませることを特徴とするローラーレベラ。
  5. 前記下部レベリングロールは、前記上部レベリングロールとのギャップが変更可能となるようにロール移動機構に保持されていることを特徴とする請求項4記載のローラーレベラ。
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