各実施形態の固体酸化物形燃料電池用カソード(以下、単に「カソード」と称することがある。)、固体酸化物形燃料電池単セル(以下、単に「単セル」と称することがある。)、および、固体酸化物形燃料電池(以下、単に「燃料電池」と称することがある。)について、図面を用いて説明する。
(実施形態1)
先ず、実施形態1のカソードについて説明する。図1〜図3に例示されるように、本実施形態のカソード1は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)に用いられる。固体酸化物形燃料電池は、固体電解質層を構成する固体電解質として、酸素イオン導電性を示す固体酸化物セラミックスを用いる燃料電池である。なお、図1では、カソード1を単セル5に用いた場合に、下側が固体電解質層3側となるようにカソード1が描かれている。
カソード1は、導電性酸化物11と捕集材12とを含んでいる。導電性酸化物11は、カソード骨格を形成するためのものである。導電性酸化物11としては、例えば、遷移金属ペロブスカイト型酸化物などを例示することができる。導電性酸化物11としては、具体的には、La、Sr、Sm、Co、Fe、Ni、Mn、および、Caからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物などを例示することができる。この構成によれば、高いカソード活性を有することにより、発電性能を良好に保つのに有利なカソード1が得られる。
導電性酸化物11としては、より具体的には、(La,Sr)(Co,Fe)O3、(La,Sr)CoO3、(Sm,Sr)CoO3、(La,Sr)MnO3、(La,Ca)MnO3などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができ、また、任意に組み合わせることができる。なお、上記(A,B)は、A元素およびB元素の少なくとも1つを含み、A元素とB元素の合計の化学組成が1となるようにA元素とB元素とが互いに一部置換可能であることを意味する(以下、同様)。なお、(La,Sr)(Co,Fe)O3としては、例えば、LaxSr1−xCoyFe1−yO3(0≦x≦1、0≦y≦1、好ましくは、0.2≦x≦0.8、0.7≦y≦1)、(La,Sr)CoO3としては、例えば、LaxSr1−xCoO3(0≦x≦1、好ましくは、0.2≦x≦0.8)、(Sm,Sr)CoO3としては、例えば、SmxSr1−xCoO3(0≦x≦1、好ましくは、0.2≦x≦0.8)、(La,Sr)MnO3としては、例えば、LaxSr1−xMnO3(0≦x≦1、好ましくは、0.2≦x≦0.8)、(La,Ca)MnO3としては、例えば、LaxCa1−xMnO3(0≦x≦1、好ましくは、0.2≦x≦0.8)などを例示することができる。
導電性酸化物11は、具体的には、粒子より構成することができる。この構成によれば、カソード1中に粒子間隙間より構成される気孔を含ませやすくなり、酸化剤ガスAのガス拡散性向上に寄与することができる。なお、カソード1は、粒子間の隙間による気孔以外にも、造孔剤に由来する隙間による気孔、これらの組み合わせよりなる気孔を含むことができる。
捕集材12は、供給される酸化剤ガスAに含まれて導電性酸化物11を被毒する被毒物質を捕集するためのものである。なお、捕集層12による被毒物質の捕集には、被毒物質との化学反応が含まれる。被毒物質は、具体的には、S元素を含むことができる。この場合、被毒物質には、S元素単体のみならず、S元素を含有する化合物なども含まれる(以下、S元素単体およびS元素を含有する化合物をまとめてS成分ということがある。)。カソード1に用いられる導電性酸化物11は、S元素を含む被毒物質により被毒されやすい。そのため、上記構成によれば、供給される酸化剤ガスAに含まれるS元素を含む被毒物質を、カソード表層部10で捕集材12が先に捕集することによって、カソード1の本体をなすカソード本体部13に含まれるカソード反応部130へのS元素を含む被毒物質の到達を長時間遅延させることが可能なカソード1が得られる。なお、酸化剤ガスAは、カソード面内方向に沿って供給することができる。S元素を含む被毒物質としては、具体的には、例えば、S、SOx、COS、H2S、CS2、CH3SHなどを例示することができる。これらは1種または2種以上の組み合わせであってもよい。
捕集材12は、カソード表層部10に存在している。カソード表層部10は、供給される酸化剤ガスAがカソード1内に最初に入り込むカソード外表面、および、当該カソード外表面よりもカソード内方の領域でカソード外表面寄りの部分を含む。したがって、固体電解質層3側とは反対側のカソード面寄りの部分は、カソード表層部10に含まれる。また、カソード1の厚み方向に沿う端面寄りの部分は、カソード表層部10に含まれる。なお、固体電解質層3側のカソード面は、後述する固体電解質層3または中間層4に接合される面であり、当該面寄りの部分は、カソード表層部10ではなく、発電時にカソード反応が生じるカソード反応部130を含む部分である。本実施形態では、図2に例示されるように、固体電解質層3側とは反対側のカソード面寄り部分に、捕集材12が存在している例が示されている。このように、捕集材12は、カソード表層部10に偏在しているといえる。捕集材12は、少なくともカソード表層部10に存在しておれば、カソード表層部10に加え、カソード本体部13にも一部含まれていてもよい。なお、カソード1における捕集材12の存在および分布は、イオンミリング法等を用いて断面加工されたカソード1の面内方向に垂直な断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いて定量分析を実施することにより、確認することができる。
捕集材12は、導電性酸化物11とは異なる材料より構成されている。これにより、導電性酸化物11のように捕集材12自身が被毒物質によって被毒されるのを抑制することができる。
捕集材12は、具体的には、400℃以上の温度域で硫化する材料より構成することができる。この構成によれば、例えば、カソード製造時における脱バインダー時に、バインダー中に含まれうるS成分を捕集材12が先に捕集してしまうことを回避しやすくなる。また、カソード焼成前の製造段階でカソード形成材料が大気に触れることにより、大気中に含まれるS成分を捕集材12が先に捕集してしまうことも回避しやすくなる。したがって、この構成によれば、カソード1の使用前に、供給される酸化剤ガスAに含まれるS成分以外のS成分を、捕集材12が先に捕集してしまうことが少なくなる。それ故、この構成によれば、カソード1の使用時に捕集材12の捕集能力を十分に発揮させることができ、上述した作用効果を確実なものとすることができる。捕集材12は、好ましくは、カソード焼成前の製造段階におけるS成分の捕集抑制効果を確実なものとするなどの観点から、450℃以上、より好ましくは、500℃以上、さらに好ましくは、550℃以上の温度域で硫化する材料より構成することができる。
捕集材12は、電気絶縁性を有することができる。この構成によれば、被毒物質を捕集する前段階で、捕集材12は、電気絶縁体として存在することができる。そのため、この構成によれば、電気的な初期特性に対して影響を与え難くなるため、カソード1の個体バラ付き抑制、電池性能の安定化などに有利である。とりわけ、捕集材12が、400℃以上の温度域で硫化する電気絶縁性の材料より構成されている場合には、400℃未満の温度域では、捕集材12は、絶縁体として存在する。そして、400℃以上の温度域になったときに、捕集材12は、S成分を吸着し、安定な硫化物に変化することで、S成分を捕集することが可能になる。また、捕集材12が硫化物に変化することで、導電性を得ることができる場合(例えば、硫化物が後述のTiS2である場合等)があり、この場合には、別要因での導電性低下を補う効果があり、電池システムの性能安定化に効果的である。捕集材12の電気抵抗率は、発電性能安定化などの観点から、好ましくは、0.3Ωm以下、より好ましくは、0.2Ωm以下とすることができる。なお、捕集材12の電気抵抗率は、導電性補正効果などの観点から、例えば、1×10−7Ωm以上とすることができる。
捕集材12としては、具体的には、Ti酸化物、Zr酸化物、Ag酸化物、Al酸化物、Ga酸化物、Si酸化物、Sn酸化物、Zn酸化物、Mg酸化物などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。捕集材12が上記の酸化物を含む場合には、カソード使用時における被毒物質との反応性を高くしやすく、捕集効率を向上させやすくなる。また、上述した酸化物におけるTi、Zr、Ag、Al、Ga、Si、Sn、Zn、Mg等の元素は、当該元素自身が導電性酸化物11を被毒する物質とはなり難い。そのため、上記構成によれば、上述した作用効果を確実なものとしやすくなる。
捕集材12は、上述した作用効果をより確実なものとするなどの観点から、少なくともTi酸化物を含んでいる構成とすることができる。この場合、捕集材12は、Ti酸化物より構成されていてもよいし、Ti酸化物と、上述したTi酸化物以外の1種または2種以上の酸化物との組み合わせなどから構成されていてもよい。Ti酸化物としては、具体的には、TiO2、Ti4O7等を例示することができ、特に好ましくは、Ti酸化物は、TiO2を含んでいるとよい。TiO2は、450℃未満の温度域では、S成分を捕集し難い。そのため、この構成によれば、上述したように、カソード1の使用前に、供給される酸化剤ガスAに含まれるS成分以外のS成分(バインダー中のS成分や、カソード焼成前の製造段階における大気中に含まれるS成分等)を、捕集材12が先に捕集してしまうことが少なくなる。そのため、この構成によれば、カソード1の使用時に捕集材12の捕集能力を十分に発揮させることが可能なカソード1が得られる。また、TiO2は、450℃未満の温度域で、飛来してきたS成分を吸着し、化学的に安定なTiS2に変化する。つまり、上記構成によれば、カソード1の使用時にだけ、S成分の捕集効果を発揮させることができる。さらに、TiS2は、可視光が当たることで光触媒として機能することができる。そのため、上記構成によれば、TiS2により、カソード周囲の酸化剤ガスA中に含まれうるSOx等を分解することができ、SOx被毒等に対する耐性の向上に有利なカソード1が得られる。
また、捕集材12は、上述した作用効果をより確実なものとするなどの観点から、少なくともSn酸化物を含んでいる構成とすることもできる。この場合、捕集材12は、Sn酸化物より構成されていてもよいし、Sn酸化物と、上述したSn酸化物以外の1種または2種以上の酸化物との組み合わせなどから構成されていてもよい。Sn酸化物としては、具体的には、Sn3O4、SnO2、SnO等を例示することができ、特に好ましくは、Sn酸化物は、SnOを含んでいるとよい。SnOは、加熱によって不均化を起こし、一部Sn3O4とSnを生成する。さらに、不均化が進むと、Sn3O4はSnO2、Snを生成する。生成されたSnは、500℃以下の温度域では、S成分との反応は起こさず、カソード1の使用前における捕集効果は発揮されない。一方、生成されたSnは、500℃以上になると、S成分と反応してSnS、SnS2を生成することができる。そのため、この構成によれば、TiO2と同様に、カソード1の使用時に捕集材12の捕集能力を十分に発揮させることができる。
さらに、捕集材12は、上述した作用効果をより確実なものとするなどの観点から、少なくともTi酸化物およびSn酸化物の1つに加えて、Ag酸化物を含んでいる構成とすることもできる。この場合、少なくともTi酸化物およびSn酸化物の1つとAg酸化物以外の上述した酸化物を1種または2種以上含んでいてもよい。Ag酸化物としては、具体的には、Ag2O等を例示することができる。Ag2Oは、250℃以上と比較的低温で、AgとO2に分解される。Agは、その表面にAgイオンが存在するため、飛来してきたS成分を吸着し、被毒物質の捕集効果を発揮することができる。Ag酸化物は、TiO2、SnO等に比べ、捕集後の硫化物の安定性が低いことや高コスト化を招くが、低温から捕集効果が得られることから、少なくともTi酸化物およびSn酸化物の1つとの併用とすることで大きな効果が得られる。
また、Zr酸化物としては、具体的には、ZrO2等、Al酸化物としては、具体的には、Al2O3等、Ga酸化物としては、具体的には、Ga2O3等、Si酸化物としては、具体的には、SiO2等、Zn酸化物としては、具体的には、ZnO等、Mg酸化物としては、具体的には、MgO等を例示することができる。
捕集材12は、具体的には、粒子より構成することができる。この構成によれば、カソード表層部10に捕集材を存在させやすくなる。
捕集材12および導電性酸化物11は、いずれも粒子より構成されており、捕集材12の平均粒子径は、導電性酸化物11の平均粒子径よりも小さい構成とすることができる。この構成によれば、導電性酸化物11による導電性の確保が確実なものとなり、発電性能を良好に保ちやすくなる。とりわけ、捕集材12を電気絶縁性の材料で構成した場合には、上記効果が大きくなる。また、骨格を形成する導電性酸化物粒子の粒子表面上に、捕集材粒子が配置されやすくなる。また、導電性酸化物粒子と捕集材粒子と溶媒とを含むペーストをスクリーン印刷法等により層状に塗布し、乾燥後、焼成してカソード1を製造する際に、塗膜乾燥時の熱の与え方を変えることで、導電性酸化物粒子と捕集材粒子との粒径差に起因して、カソード1内における両粒子の配置を調整しやすくなる。具体的には、塗膜の乾燥時に、熱を与えた箇所から優先的に塗膜が乾燥し始め、乾燥による溶媒の移動とともにペースト中に分散していた捕集材粒子が熱を与えた箇所の塗膜表層部に集まり、塗膜表層部における捕集材粒子の密度を上昇させることができる。そのため、上記構成によれば、カソード表層部10に捕集材12が偏在したカソード1を得やすくなる。なお、図1に模式的に示される捕集材12の分布を有するカソード1は、上記ペーストにより形成した塗膜の上面側から熱により塗膜を乾燥させ、乾燥後の塗膜を焼成することで形成することができる。
なお、上記にいう平均粒子径は、次のようにして測定することができる。走査型電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型X線分光法(EDX)にて、イオンミリング法等を用いて断面加工された断面(カソード面内方向に垂直な断面)を観察する。観察される画像の対角線上にある各粒子の粒子径をそれぞれ測定する。観察は、任意の5か所以上について行い、測定された各粒子の粒子径の平均値が、各粒子の平均粒子径とされる。なお、観察時の倍率は、1000〜10000倍とされる。捕集材12の平均粒子径は、具体的には、均一分散性、製造コストなどの観点から、好ましくは、0.02μm以上、より好ましくは、0.05μm以上、さらに好ましくは、0.1μm以上とすることができる。捕集材12の平均粒子径は、具体的には、電極抵抗の低減、捕集効果の確保などの観点から、好ましくは、0.5μm以下、より好ましくは、0.4μm以下、さらに好ましくは、0.3μm以下とすることができる。導電性酸化物11の平均粒子径は、具体的には、均一分散性、電極抵抗の低減などの観点から、好ましくは、0.1μm以上、より好ましくは、0.3μm以上、さらに好ましくは、0.5μm以上とすることができる。導電性酸化物11の平均粒子径は、具体的には、電極反応の促進、電極抵抗の低減などの観点から、好ましくは、2μm以下、より好ましくは、1μm以下、さらに好ましくは、0.8μm以下とすることができる。
捕集材12の密度は、導電性酸化物11の密度よりも小さい構成とすることができる。この構成によれば、捕集材12の平均粒子径が導電性酸化物11の平均粒子径よりも小さい構成とした場合と同様の効果を得ることができる。とりわけ、捕集材12の平均粒子径が導電性酸化物11の平均粒子径よりも小さく、かつ、捕集材12の密度が導電性酸化物11の密度よりも小さい構成とされている場合には、導電性酸化物粒子と捕集材粒子との粒径差および比重差に起因して、カソード1内における両粒子の配置を調整しやすくなる。そのため、この構成によれば、上記効果を確実なものとしやすくなる。なお、上記にいう密度は、理論密度であり、X線回折法を用いて捕集材12および導電性酸化物11の材料を特定することにより、上記構成を確認することができる。
カソード1において、捕集材12の濃度は、カソード表層部10でほぼ一定とされていてもよいし、カソード内部(カソード本体部)からカソード外表面に向かって高くなる構成とされていてもよい。なお、図1および図2では、後者の構成が例示されている。後者の構成によれば、カソード外表面から入り込んでくる酸化剤ガスA中に含まれる被毒物質と捕集材12との反応効率が高まり、カソード反応部130への被毒物質の到達を長時間遅延させやすいカソード1が得られる。後者の構成において、捕集材12の濃度は、具体的には、カソード内部からカソード外表面に向かって高くなるよう傾斜する構成とすることができれば、カソード内部からカソード外表面に向かって漸次高くなる構成とされていてもよいし、カソード内部からカソード外表面に向かって段階的に高くなる構成等とされていてもよい。なお、捕集材12の濃度は、カソード1の面内方向に垂直な断面について、エネルギー分散X線分光法にて定量分析を行うことで、求めることができる。
カソード1の線熱膨張係数は、具体的には、10×10−6/K以上16×10−6/K以下の範囲内とすることができる。この構成によれば、単セル5に用いた際に、他の材料との熱膨張差を適切な範囲にしやすく、単セル5の割れ抑制に有利なカソード1が得られる。
カソード1の線熱膨張係数は、上記効果を確実なものとするなどの観点から、好ましくは、10×10−6/K以上、より好ましくは、11×10−6/K以上、さらに好ましくは、11.5×10−6/K以上とすることができる。また、カソード1の線熱膨張係数は、上記効果を確実なものとする等の観点から、好ましくは、16×10−6/K以下、より好ましくは、14×10−6/K以下、さらに好ましくは、12.5×10−6/K以下とすることができる。なお、カソード1の線熱膨張係数は、基本的には、JIS R1618:2002 「ファインセラミックスの熱機械分析による熱膨張の測定方法」に準拠して測定される。具体的には、カソード形成材料より形成した試料を、全膨張式熱機械分析装置にセットし、温度を10℃/分の昇温速度で上げていく。温度TがT0(=100℃)からT1(=700℃)に上がるまでに、試料は長さL0からL1まで膨張する。この際の線熱膨張係数(/K)を、(dL/dT)T=T1/L0の計算式より算出する。但し、(dL/dT)T=T1は、温度TがT1のときにおける長さ曲線の傾きである。
カソード1は、導電性酸化物11、捕集材12以外にも、さらに、固体電解質を含むことができる。この構成によれば、カソード活性の向上により、発電性能を良好に保つのに有利なカソード1が得られる。なお、固体電解質は、導電性酸化物11とともにカソード骨格を形成することができる。固体電解質としては、具体的には、酸化ジルコニウム系酸化物、酸化セリウム系酸化物などを例示することができる。酸化ジルコニウム系酸化物としては、具体的には、イットリア安定化ジルコニア、スカンジア安定化ジルコニアなどを例示することができる。酸化セリウム系酸化物としては、具体的には、CeO2にGd、Sm、Y、La、Nd、Yb、Ca、および、Hoから選択される1種または2種以上の元素等がドープされたセリア系固溶体、CeO2などを例示することができる。また、固体電解質は、具体的には、粒子より構成することができる。この構成によれば、カソード中に粒子間隙間より構成される気孔を含ませやすくなり、酸化剤ガスAのガス拡散性向上に寄与することができる。
カソード1において、カソード1に対する捕集材12の含有率は、具体的には、例えば、捕集効果の確保などの観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは、0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上とすることができる。カソード1に対する捕集材12の含有率は、具体的には、例えば、電気抵抗の増加抑制などの観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは、8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下とすることができる。
カソード1の厚みは、カソード反応部の確保などの観点から、好ましくは、30μm以上、より好ましくは、40μm以上、さらに好ましくは、50μm以上とすることができる。カソード1の厚みは、オーミック抵抗の低減、クラックの抑制などの観点から、好ましくは、100μm以下、より好ましくは、70μm以下、さらに好ましくは、60μm以下とすることができる。
本実施形態のカソード1は、上記構成を有している。そのため、本実施形態のカソード1では、酸化剤ガスAに含まれる導電性酸化物11の被毒物質が、カソード表層部10において捕集材12により捕集される。また、本実施形態のカソード1では、捕集材12は、導電性酸化物11と異なる材料より構成されている。そのため、捕集材12自身が被毒物質によって被毒されるのを抑制することができる。それ故、本実施形態のカソード1によれば、発電に寄与するカソード反応部130への被毒物質の到達を長時間遅延させることが可能となる。
次に、実施形態1の単セルについて説明する。図3に例示されるように、本実施形態の単セルは、本実施形態のカソードを有している。
本実施形態では、単セル5は、具体的には、アノード2と固体電解質層3とカソード1とを有している。単セル5は、図3に例示されるように、固体電解質層3とカソード1との間に中間層4をさらに備えることができる。中間層4は、主に、固体電解質層材料とカソード材料との反応を抑制するための層である。本実施形態では、単セル5は、具体的には、アノード2、固体電解質層3、中間層4、および、カソード1がこの順に積層され、互いに接合されている。単セル5は、平板形、円筒形のいずれの電池構造であってもよい。本実施形態では、図3に例示されるように、単セル5が、平板形の電池構造を有する例が示されている。より具体的には、単セル5は、電極であるアノード2を支持体として機能させるアノード支持型とされている。平板形の電池構造を有する単セル5は、発電性能が高い等の利点がある。なお、図示はしないが、円筒形の電池構造を有する単セル5とした場合には、最外周にカソード1を配置することで、カソード1に対して径方向から可視光を当てやすくなる。そのため、この場合には、捕集材12がTiO2を含む場合に、上述したTiS2による光触媒効果を発揮させやすくなる利点がある。
単セル5において、酸化剤ガスAは、外部からカソード面内方向に沿って供給される。一方、燃料ガス(不図示)は、外部からアノード面内方向に沿って供給される。酸化剤ガスAとしては、例えば、空気や酸素等を例示することができる。燃料ガスとしては、例えば、水素ガス等を例示することができる。
本実施形態では、カソード1の外形は、図3に例示されるように、固体電解質層3や中間層4等の外形よりも小さく形成されている。そのため、カソード1の外周囲には、中間層4の層面が露出している。そして、カソード1における固体電解質層3側のカソード面が、中間層4の層面に接している。また、カソード1における固体電解質層3側とは反対側のカソード面、カソード1の厚み方向に沿う端面は、外部から供給される酸化剤ガスAが流れる酸化剤ガス流路(不図示)内で酸化剤ガスAと接することになる。なお、中間層4を有さない構成とする場合には、カソード1における固体電解質層3側のカソード面が、固体電解質層3の層面に接するように構成することができる。
固体電解質層3の材料としては、強度、熱的安定性に優れる等の観点から、イットリア安定化ジルコニア、スカンジア安定化ジルコニア等の酸化ジルコニウム系酸化物を好適に用いることができる。固体電解質層3の材料としては、酸素イオン伝導性、機械的安定性、他の材料との両立、酸化雰囲気から還元雰囲気まで化学的に安定である等の観点から、イットリア安定化ジルコニアが好適である。
固体電解質層3の厚みは、オーミック抵抗の低減などの観点から、好ましくは、3〜20μm、より好ましくは、4〜15μm、さらに好ましくは、5〜10μmとすることができる。
アノード2は、単層から構成されていてもよいし、複数層から構成されていてもよい。図3では、アノード2が複数層から構成されている例が示されている。この場合、アノード2は、具体的には、例えば、固体電解質層3側に配置される活性層21と、固体電解質層3側とは反対側に配置される拡散層22とを備える構成などとすることができる。なお、活性層21は、主に、アノード2側における電気化学的反応を高めるための層である。また、拡散層22は、供給される燃料ガスを層面内に拡散させることが可能な層である。
アノード2の材料としては、例えば、Ni、NiO等の触媒と、上述した酸化ジルコニウム系酸化物等の固体電解質との混合物などを例示することができる。なお、NiOは、発電時の還元雰囲気でNiとなる。本実施形態では、活性層21および拡散層22の材料として、NiまたはNiOとイットリア安定化ジルコニアとの混合物などを用いることができる。
活性層21の厚みは、反応持続性、取り扱い性、加工性等の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上とすることができる。活性層21の厚みは、電極反応抵抗の低減等の観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下とすることができる。また、拡散層22の厚みは、支持体としての強度確保等の観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、より好ましくは300μm以上とすることができる。拡散層22の厚みは、ガス拡散性の向上等の観点から、好ましくは800μm以下、より好ましくは700μm以下とすることができる。
中間層4の材料としては、例えば、CeO2、または、CeO2にGd、Sm、Y、La、Nd、Yb、Ca、および、Hoから選択される1種または2種以上の元素等がドープされたセリア系固溶体等の酸化セリウム系酸化物などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
また、中間層4の厚みは、オーミック抵抗の低減、カソード1からの元素拡散の抑制等の観点から、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜5μmとすることができる。
本実施形態の単セル5は、カソード1を有しているので、発電に寄与するカソード反応部への被毒物質の到達を長時間遅延させることができ、発電信頼性の向上に有利である。
次に、実施形態1の燃料電池について説明する。本実施形態の燃料電池(不図示)は、本実施形態の単セル5を複数有している。つまり、燃料電池は、単セル5の集合体であるセルスタックを有しているといえる。セルスタックは、具体的には、インターコネクタを介して複数の単セル5が電気的に接続されて構成されている。本実施形態では、セルスタックは、具体的には、インターコネクタを介して複数の単セル5が積層された積層構造を有している。セルスタックでは、インターコネクタと単セル5のカソード1との間に設けられた隙間が酸化剤ガス流路とされる。また、インターコネクタと単セル5のアノード2との間に設けられた隙間が燃料ガス流路とされる。酸化剤ガス流路には、カソード側集電体が配置され、カソード1とインターコネクタとに接触している。燃料ガス流路には、アノード側集電体が配置され、アノード2とインターコネクタとに接触している。
ここで、燃料電池は、単セル5におけるカソード1に可視光が入射するように構成されている。本実施形態では、燃料電池は、具体的には、セルスタックを収容するケースを有しており、このケースに、太陽光に含まれる可視光等を透過させる窓部が少なくとも1つ以上形成されている。そして、この窓部を通じて外部からの可視光がカソード1にあたるようになっている。なお、これ以外にも、例えば、ケース内に、可視光照射装置が配置され、この可視光照射装置から照射された可視光がカソード1にあたるように構成することも可能である。また、上記窓部の外側に可視光照射装置が配置され、この可視光照射装置から照射された可視光が窓部を通ってカソード1にあたるように構成することも可能である。
本実施形態の燃料電池は、上記構成を有している。そのため、本実施形態の燃料電池によれば、被毒物質を捕集した捕集材12が可視光応答性を有する場合に、カソード1に入射した可視光により、被毒物質を捕集した捕集材12が光触媒効果を発揮し、カソード周囲の酸化剤ガスA中に含まれうるSOx等の被毒物質を分解することができる。そのため、本実施形態によれば、被毒に対する耐性の向上に有利な燃料電池が得られる。
(実施形態2)
実施形態2のカソードについて、図4を用いて説明する。なお、実施形態2以降において用いられる符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
本実施形態のカソード1は、カソード1における捕集材12の分布が、実施形態1のカソード1と異なっている。その他の構成は、実施形態1と同様である。
本実施形態は、具体的には、図4に例示されるように、カソード表層部10のうち、固体電解質層3側とは反対側のカソード面寄りの部分と、酸化剤ガス入口側の端部とに、捕集材12が存在している例である。より具体的には、本実施形態では、固体電解質層3側とは反対側のカソード面寄りの部分と、酸化剤ガス入口側のカソード1の厚み方向に沿う端面寄りの部分とに、捕集材12が存在している。
したがって、本実施形態では、固体電解質層3側とは反対側のカソード面と、酸化剤ガス入口側のカソード1の厚み方向に沿う端面との交わり部寄りの部分である、角部における捕集材12の濃度は、固体電解質層3側のカソード反応部130における捕集材12の濃度よりも高くなっている。但し、本実施形態では、カソード反応部130は、カソード1における固体電解質層3側のカソード面から厚み方向に向かって30μmまでの領域とされる。また、上記カソード反応部130における捕集材12の濃度は、酸化剤ガスAによる影響を排除するため、酸化剤ガスAが直接接触する酸化剤ガス入口側のカソード1の厚み方向に沿う端面からカソード面内方向へ50μmまでの領域を除いたカソード反応部130から測定される。
なお、図4に示される捕集材12の分布を有するカソード1は、例えば、実施形態1にて上述したペーストにより形成した塗膜上面側および塗膜端面側から熱により塗膜を乾燥させ、乾燥後の塗膜を焼成することで形成することができる。
本実施形態のカソード1によれば、被毒物質を含む酸化剤ガスAと最初に接する酸化剤ガス入口側の端部に捕集材12が存在しているので、捕集材12により効率良く被毒物質を捕集することが可能になる。そのため、本実施形態によれば、発電に寄与するカソード反応部130への被毒物質の到達を長時間遅延させるのに有利なカソード1が得られる。その他の作用効果は、実施形態1と同様である。
本実施形態の単セル5は、本実施形態のカソード1を有する点で、実施形態1の単セル5と異なっている。また、本実施形態の燃料電池は、本実施形態の単セル5を有する点で、実施形態1の燃料電池と異なっている。その他の構成は、実施形態1と同様である。
本実施形態の単セル5によれば、本実施形態のカソード1を有しているので、発電に寄与するカソード反応部130への被毒物質の到達を長時間遅延させやすく、発電信頼性の向上により有利である。また、本実施形態の燃料電池によれば、本実施形態の単セル5を有しているので、酸化剤ガスAの入口側におけるカソード周囲の酸化剤ガスA中に含まれうるSOx等の被毒物質を分解することができ、被毒に対する耐性の向上により有利な燃料電池が得られる。
(実験例1)
<材料準備>
NiO粉末(平均粒子径:1.0μm)と、8mol%のY2O3を含むイットリア安定化ジルコニア(以下、8YSZ)粉末(平均粒子径:0.8μm)と、カーボン(造孔剤)と、ポリビニルブチラール(バインダー)と、酢酸イソアミル、2−ブタノールおよびエタノール(混合溶媒)とをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。NiO粉末と8YSZ粉末との質量比は、60:40とした。上記スラリーを、ドクターブレード法を用いて、樹脂シート上に層状に塗工し、乾燥させた後、樹脂シートを剥離することにより、アノードの拡散層形成用シートを準備した。なお、上記平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定した体積基準の累積度数分布が50%を示すときの粒子径(直径)d50である(以下、同様)。
NiO粉末(平均粒子径:1.0μm)と、8YSZ粉末(平均粒子径:0.8μm)と、カーボンと、ポリビニルブチラールと、酢酸イソアミルおよび1−ブタノールとをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。NiO粉末と8YSZ粉末の質量比は、60:40である。以降は、拡散層形成用シートの作製と同様にして、アノードの活性層形成用シートを準備した。なお、上記拡散層形成用シートにおけるカーボン(造孔剤)量は、上記活性層形成用シートにおけるカーボン量と比較して多量とされている。
8YSZ粉末(平均粒子径:0.8μm)と、ポリビニルブチラールと、酢酸イソアミル、2−ブタノールおよびエタノールとをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。以降は、拡散層形成用シートの作製と同様にして、固体電解質層形成用シートを準備した。
10mol%のGdがドープされたCeO2(以下、10GDC)粉末(平均粒子径:0.8μm)と、ポリビニルブチラールと、酢酸イソアミル、2−ブタノールおよびエタノールとをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。以降は、拡散層形成用シートの作製と同様にして、中間層形成用シートを準備した。
捕集材の原料であるTiO2粉末(平均粒子径:0.15μm、理論密度:3.9g/cm3)と、分散剤と、テルピネオール(溶媒)とを混合し、ボールミルにて解砕した。次いで、これに、導電性酸化物の原料であるLa0.6Sr0.4CoO3(以下、LSC)粉末(平均粒子径:2μm、理論密度:6.3g/cm3)と、カーボンと、エチルセルロース(バインダー)と、レベリング剤と、沈降防止剤とを加え、プラネタリーミキサーにて撹拌した後、さらに、三本ロールを用いて混練することにより、カソード形成用ペースト(1)を準備した。なお、LSC粉末とTiO2粉末の質量比は、96:4である。
LSC粉末に加え、さらに10GDC粉末(平均粒子径:0.8μm)を添加した点以外は、カソード形成用ペースト(1)の調製と同様にして、カソード形成用ペースト(2)を準備した。なお、なお、LSC粉末と10GDC粉末とTiO2粉末の質量比は、68:30:2である。なお、各カソード形成用ペーストに用いたTiO2は、400℃以上の温度域である、550℃以上の温度域で硫化する電気絶縁性の材料である。
<カソード、単セルの作製>
複数枚の拡散層形成用シート、活性層形成用シート、固体電解質層形成用シート、および、中間層形成用シートをこの順に積層し、静水圧プレス(WIP)成形法を用いて圧着することにより、圧着体を得た。圧着体は、圧着後に脱脂した。なお、WIP成形条件は、温度80℃、加圧力50MPa、加圧時間10分という条件とした。
次いで、圧着体を1350℃で2時間焼成した。これにより、拡散層(厚み500μm)および活性層(厚み50μm)より構成されるアノード、固体電解質層(厚み10μm)、および、中間層(厚み10μm)がこの順に積層された焼結体を得た。
次いで、上記焼結体における中間層の表面に、カソード形成用ペースト(1)をスクリーン印刷法により均一に塗布した。そして、この塗膜のレベリングのため、25℃にて30分間静置した。その後、このカソード形成用ペースト(1)による塗膜が形成された焼結体を60℃の恒温槽に入れ、塗膜を乾燥させた。恒温槽には、一方向へ温風が流れるように温風ヒーターが設置されている。また、上記塗膜の乾燥は、塗膜の膜面に温風が当たるように実施した。上記乾燥後の塗膜を、1000℃にて2時間焼き付けすることにより、カソード(厚み50μm)を形成した。以上により、試料1のカソードおよび単セルを得た。
また、上記塗膜の乾燥を、酸化剤ガスの入口側となるカソード端面に対応する塗膜端面に温風が当たるように実施した点以外は試料1と同様にして、試料2のカソードおよび単セルを得た。
また、カソード形成用ペースト(1)に代えてカソード形成用ペースト(2)を用いた以外は試料2と同様にして、試料3のカソードおよび単セルを得た。
<カソードの詳細調査>
上述した方法を用いて、各試料のカソードにおける捕集材の分布、濃度を確認した。その結果、試料1のカソードでは、図1に示されるように、カソード表層部のうち、固体電解質層側とは反対側のカソード面寄りの部分に多くの捕集材が存在していた。また、試料2および試料3のカソードでは、図4に示されるように、カソード表層部のうち、固体電解質層側とは反対側のカソード面寄りの部分と、温風を当てたカソードの厚み方向に沿う端面寄りの部分に、多くの捕集材が存在していた。また、各試料のカソードでは、捕集材の濃度が、カソード内部からカソード外表面に向かって高くなっていることが確認された。また、カソード表層部における捕集材の濃度は、カソード反応部における捕集材の濃度よりも大きいことが確認された。
また、上述した方法を用いて、各試料のカソードにおける捕集材および導電性酸化物の平均粒子径を調査した。その結果、いずれのカソードも、捕集材の平均粒子径が、導電性酸化物の平均粒子径よりも小さいことが確認された。
また、上述した方法を用いて、各試料のカソードにおける線熱膨張係数を測定した。その結果、各試料のカソードにおける線熱膨張係数は、10×10−6/K以上16×10−6/K以下の範囲内にあることが確認された。
<耐久試験>
各試料の単セルを用いて、以下の耐久試験を実施した。具体的には、先ず、比較のため、TiO2粉末を含まず、LSC粉末を含むカソード形成用ペーストを調製し、これを用いて試料1と同様にして、試料1Cのカソードおよび単セルを作製した。
次に、各単セルのアノードを、H2雰囲気中、800℃にて還元処理した。次いで、700℃の環境下で、外部からカソード面内方向に沿って空気を1L/分で供給させながら、1000時間保持した。この際、空気におけるS成分の濃度は、質量比で0.1ppmとした。次いで、上記1000時間の保持後、降温し、単セルを取り出した。取り出した単セルについて、セル断面を研磨し、カソード断面を観察可能とした。カソードの断面におけるカソード表層部、カソード反応部をSEM−EDSにより元素分析し、S成分の偏析を測定した。その結果、カソード表層部にのみSの偏析が確認され、固体電解質層側のカソード反応部の内部には、Sの偏析は見られなかった。一方、試料1Cの単セルでは、カソード全体からSが検出され、カソード反応部へのS成分の到達が確認された。
よって、上記各試料のカソード、単セルによれば、発電に寄与するカソード反応部への被毒物質の到達を長時間遅延させることができ、発電信頼性の向上に有利であることが確認された。また、本実験例で用いた捕集材のTiO2における格子酸素とS成分のS元素とが置き換わって生じたTiS2は、500〜600nmの可視光が当たることで光触媒として機能する。そのため、上記各試料の単セルによれば、単セルを複数有する固体酸化物形燃料電池において、カソードに可視光が入射するように構成すれば、TiS2により、カソード周囲の酸化剤ガス中に含まれうるSOx等を分解することが可能となり、SOx被毒に対する耐性の向上に有利であることがわかる。
本発明は、上記各実施形態、各実験例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、各実施形態、各実験例に示される各構成は、それぞれ任意に組み合わせることができる。