以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板処理方法、基板処理装置、基板処理システム、基板処理システムの制御装置、半導体基板の製造方法および半導体基板の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
<基板処理方法>
まず、第1の実施形態に係る基板処理方法の一例について図1A〜図1Dを参照して説明する。図1A〜図1Dは、第1の実施形態に係る基板処理方法の一例を示す図である。
本実施形態に係る基板処理方法は、シリコン系膜を含む膜を有するシリコンウェハ等の半導体基板(以下、単に「ウェハ」と記載する)を対象とする。
ここでは、理解を容易にするために、シリコン系膜としてシリコン酸化膜のみを有するウェハを対象とする場合について説明するが、ウェハはシリコン酸化膜以外の膜を有していてもよい。また、シリコン系膜は、SiN膜やポリシリコン膜等であっても良い。
図1Aに示すように、第1の実施形態に係る基板処理方法では、まず、ウェハWのシリコン酸化膜111上にボロン単膜112を成膜する(成膜工程)。
ボロン単膜112は、ボロン(B)単体からなる膜である。ただし、ボロン単膜112は、成膜工程において不可避的に混入する不可避不純物を不可避的に混入する限度において含んでいてもよい。不可避不純物としては、たとえば、水素(H)、酸素(O)、炭素(C)等が含まれる。
つづいて、図1Bに示すように、第1の実施形態に係る基板処理方法では、成膜工程後のウェハWをエッチングする(エッチング工程)。
具体的には、エッチング工程では、成膜工程において成膜したボロン単膜112をハードマスクとして、シリコン酸化膜111の深さ方向に、たとえば500nm以上の凹部(トレンチ)113を形成する。
ボロン単膜112は、シリコン酸化膜111のエッチング条件ではエッチングされ難く、シリコン酸化膜111をボロン単膜112に対して高い選択比でエッチングすることができる。したがって、凹部113の深さが500nm以上であっても、凹部113の開口幅bがボロン単膜112の開口幅aに対して過剰に広がることを抑制することができる。
つづいて、図1Cに示すように、第1の実施形態に係る基板処理方法では、エッチング工程後のウェハWからボロン単膜112を除去する。
具体的には、エッチング工程後のウェハWを保持した後(保持工程)、保持したウェハWに除去液を接触させることにより、ウェハWからボロン単膜112を除去する(除去工程)。
ここで、除去液は、硝酸(HNO3)、硝酸よりも強い強酸および水(H2O)の混合液である。本実施形態では、強酸として硫酸(H2SO4)を用いた例を説明する。強酸としては、他に例えば、カルボラン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等を使用することができる。すなわち、ブレンステッドの定義において、硝酸にプロトン(H+)を与えることができる酸であれば良い。水は、たとえばDIW(純水)である。なお、水に換えて又は混合させて、有機酸(カルボン酸である蟻酸(HCOOH)、シュウ酸((COOH)2)、酢酸(CH3COOH)、プロピオン酸(CH3CH2COOH)、酪酸(CH3(CH2)2COOH)、吉草酸(CH3(CH2)3COOH)等)を使用することもできる。
かかる除去液は、硝酸が塩基として働き、強酸によって脱水されニトロニウムイオンが生成し、ボロン単膜112と反応することでウェハWから剥離させる。これにより、図1Dに示すように、ボロン単膜112をウェハWから除去することができる。
このように、第1の実施形態に係る基板処理方法によれば、シリコン酸化膜111上に成膜されたボロン単膜112をウェハWから適切に除去することができる。
なお、除去液における硫酸の濃度が64wt%以下であり、硝酸の濃度が3wt%以上69wt%以下であれば、上記効果を発揮することができる。より好ましくは、硫酸の濃度が50wt%以下且つ硝酸の濃度が3wt%以上69wt%以下である。
ボロン単膜112の除去性能を高めるためには、エッチャントをより多く発生させることが重要であり、そのためには、ボロンのエッチャントとなる物質(イオン)の発生に不可欠な水の割合を適切に調整することが望ましい。
ここで、除去液における水の有用性について図18を参照して説明する。図18は、除去液の希釈倍率とボロン単膜112のエッチングレートとの関係を示すグラフである。なお、図18に示すグラフは、硫酸が46wt%、硝酸が3wt%の除去液を水で希釈したときの希釈倍率を横軸に取っている。したがって、たとえば図18の横軸において「1倍」は、硫酸が46wt%、硝酸が3wt%の除去液そのものを示し、「5倍」は、硫酸が46wt%、硝酸が3wt%の除去液を水で5倍に希釈したものを示す。また、「0倍」は、硫酸および硝酸の混合液であって水を含まないものを示す。また、図18の縦軸には、測定されたエッチングレートのうち最も大きな値を1とした場合における、エッチングレートの相対値を示している。
本発明者らは、除去液を特定の希釈倍率で希釈することにより、言い換えれば、硫酸および硝酸の混合液を特定の濃度に希釈することにより、たとえば希釈倍率を0倍とした場合(水を含まない硫酸および硝酸の混合液)を使用した場合や上記特定の希釈倍率以外の倍率で希釈した場合(硫酸および硝酸の混合液を特定の濃度以外の濃度に希釈した場合)と比べて、ボロン単膜112を非常に高いエッチングレートで除去することができることを見いだした。具体的には、図18に示すように、硫酸を46wt%、硝酸を3wt%含有する硫酸および硝酸の混合液を水で0.45以上1.8倍以下に希釈することにより、他の倍率で希釈した場合あるいは希釈倍率を0倍とした場合と比較して非常に大きなエッチングレートが得られることがわかる。より具体的には、上記混合液を水で0.9倍に希釈したときのボロン単膜112のエッチングレートが最も高かった。
<基板処理システムの構成>
次に、本実施形態に係る基板処理システムの構成の一例について図2を参照して説明する。図2は、第1の実施形態に係る基板処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、基板処理システム100は、成膜装置200と、エッチング装置300と、基板処理装置1とを備える。
成膜装置200は、上述した成膜工程を行う装置である。成膜装置200は、成膜処理ユニット201を備える。成膜処理ユニット201の構成については、図3を用いて後述する。
なお、ここでは図示を省略するが、成膜装置200は、成膜処理ユニット201の他に、たとえば、ウェハWが載置される載置部や載置部に載置されたウェハWを成膜処理ユニット201へ搬送する搬送装置等を備える。
エッチング装置300は、上述したエッチング工程を行う装置である。エッチング装置300は、エッチング処理ユニット301を備える。エッチング処理ユニット301の構成については、図4を用いて後述する。
なお、ここでは図示を省略するが、エッチング装置300は、エッチング処理ユニット301の他に、たとえば、ウェハWが載置される載置部や載置部に載置されたウェハWをエッチング処理ユニット301へ搬送する搬送装置等を備える。
基板処理装置1は、上述した保持工程および除去工程を行う装置である。基板処理装置1の構成については、図5および図6等を用いて後述する。
基板処理装置1、成膜装置200およびエッチング装置300には、それぞれ制御装置4,400,500が接続される。制御装置4,400,500は、それぞれ制御部18,401,501と記憶部19,402,502とを備える。
制御部18,401,501は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。制御部18,401,501は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより、基板処理装置1、成膜装置200およびエッチング装置300の動作を制御する。
なお、上記プログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
記憶部19,402,502は、たとえば、RAM、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
<成膜処理ユニットの構成>
次に、成膜装置200が備える成膜処理ユニット201の構成の一例について図3を参照して説明する。図3は、成膜処理ユニット201の構成の一例を示す図である。
図3に示すように、成膜処理ユニット201は、一度に複数枚、たとえば50〜150枚のウェハWを処理することができるバッチ式の処理装置として構成され、天井部を備えた筒状の断熱体211と、断熱体211の内周面に設けられたヒータ212とを有する加熱炉210を備えている。
加熱炉210内には、たとえば石英からなる処理容器220が挿入されている。そして、上記ヒータ212は処理容器220の外側を囲繞するように設けられている。
処理容器220の内部には、ウェハボート230が配置される。ウェハボート230は、石英で形成され、たとえば50〜150枚のウェハWを所定間隔のピッチで積み重ねて収容する。ウェハボート230は、図示しない昇降機構により昇降することにより、処理容器220への搬入搬出が可能となっている。
また、成膜処理ユニット201は、成膜原料ガスであるボロン含有ガスとして、たとえばB2H6ガスを処理容器220内へ導入するボロン含有ガス供給機構240と、処理容器220内へパージガス等として用いられる不活性ガスを導入する不活性ガス供給機構250とを有している。
ボロン含有ガス供給機構240は、成膜原料ガスとして、ボロン含有ガス、たとえばB2H6ガスを供給するボロン含有ガス供給源241と、ボロン含有ガス供給源241から成膜ガスを処理容器220内へ導く成膜ガス配管242とを備える。成膜ガス配管242には、流量制御器243および開閉弁244が設けられる。
不活性ガス供給機構250は、不活性ガス供給源251と、不活性ガス供給源251から不活性ガスを処理容器220へ導く不活性ガス配管252とを備える。不活性ガス配管252には、マスフローコントローラのような流量制御器253および開閉弁254が設けられている。不活性ガスとしては、N2ガスや、Arガスのような希ガスを用いることができる。
また、処理容器220には、排気管261が接続されており、排気管261には、圧力調整バルブ等を含む圧力調整機構262を介して真空ポンプ263が接続される。これにより、真空ポンプ263で処理容器220内を排気しつつ圧力調整機構262で処理容器220内を所定の圧力に調整することが可能である。
<エッチング処理ユニットの構成>
次に、エッチング装置300が備えるエッチング処理ユニット301の構成について図4を参照して説明する。図4は、エッチング処理ユニット301の構成の一例を示す図である。
図4に示すように、エッチング処理ユニット301は、ウェハWを収容する密閉構造のチャンバ310を備えており、チャンバ310内には、ウェハWを水平状態で載置する載置台320が設けられる。載置台320は、ウェハWを冷却したり、加熱したりして所定の温度に調節する温調機構330を備える。チャンバ310の側壁にはウェハWを搬入出するための図示しない搬入出口が設けられる。
チャンバ310の天井部には、シャワーヘッド340が設けられる。シャワーヘッド340には、ガス供給管350が接続される。このガス供給管350には、バルブ360を介してエッチングガス供給源370が接続されており、エッチングガス供給源370からシャワーヘッド340に対して所定のエッチングガスが供給される。シャワーヘッド340は、エッチングガス供給源370から供給されるエッチングガスをチャンバ310内へ供給する。
なお、エッチングガス供給源370から供給されるエッチングガスは、たとえばCH3Fガス、CH2F2ガス、CF4ガス、O2ガス、Arガス源などである。
チャンバ310の底部には排気ライン380を介して排気装置390が接続される。チャンバ310の内部の圧力は、かかる排気装置390によって減圧状態に維持される。
<基板処理装置の構成>
次に、基板処理装置1の構成の一例について図5を参照して説明する。図5は、第1の実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
図1に示すように、基板処理装置1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、本実施形態では半導体ウェハ(以下ウェハW)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウェハWの搬送を行う。
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウェハWの搬送を行う。
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウェハWに対して所定の基板処理を行う。
上記のように構成された基板処理装置1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウェハWを取り出し、取り出したウェハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウェハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
処理ユニット16へ搬入されたウェハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウェハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
<処理ユニットの構成>
次に、処理ユニット16の構成について図6を参照して説明する。図6は、第1の実施形態に係る処理ユニット16の概略構成を示す図である。
図6に示すように、処理ユニット16は、チャンバ20と、基板保持機構30と、処理流体供給部40と、回収カップ50とを備える。
チャンバ20は、基板保持機構30と処理流体供給部40と回収カップ50とを収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
基板保持機構30は、保持部31と、支柱部32と、駆動部33とを備える。保持部31は、ウェハWを水平に保持する。支柱部32は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が駆動部33によって回転可能に支持され、先端部において保持部31を水平に支持する。駆動部33は、支柱部32を鉛直軸まわりに回転させる。かかる基板保持機構30は、駆動部33を用いて支柱部32を回転させることによって支柱部32に支持された保持部31を回転させ、これにより、保持部31に保持されたウェハWを回転させる。
処理流体供給部40は、ウェハWに対して処理流体を供給する。処理流体供給部40は、処理流体供給源70に接続される。
回収カップ50は、保持部31を取り囲むように配置され、保持部31の回転によってウェハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ50の底部には、排液口51が形成されており、回収カップ50によって捕集された処理液は、かかる排液口51から処理ユニット16の外部へ排出される。また、回収カップ50の底部には、FFU21から供給される気体を処理ユニット16の外部へ排出する排気口52が形成される。
次に、処理ユニット16における処理液供給系の構成の一例について図7を参照して説明する。図7は、第1の実施形態に係る処理ユニット16における処理液供給系の構成の一例を示す図である。
たとえば、図7に示すように、処理ユニット16は、処理流体供給部40として、除去液供給ノズル41と、DIW供給ノズル42とを備える。除去液供給ノズル41は、ウェハWに対して除去液を供給するノズルであり、DIW供給ノズル42は、ウェハWに対してリンス液としてのDIWを供給するノズルである。
処理流体供給源70は、除去液の供給系として、除去液供給源711と、除去液供給路721と、温度調整部731と、バルブ741とを備える。
除去液供給源711は、除去液すなわち硫酸、硝酸および水の混合液を貯留するタンクである。除去液供給路721は、除去液供給源711と除去液供給ノズル41とを接続する配管である。温度調整部731は、除去液供給路721に設けられ、除去液供給路721を流通する除去液を加熱する。温度調整部731は、たとえばヒータである。バルブ741は、除去液供給路721に設けられ、除去液供給路721を開閉する。
バルブ741が閉状態から開状態へと駆動することで、除去液供給源711に予め貯留された除去液が除去液供給路721を流通し、温度調整部731によって加熱されて、除去液供給ノズル41からウェハWへ供給される。
また、処理流体供給源70は、DIWの供給系として、DIW供給源712と、DIW供給路722と、バルブ742とを備える。そして、バルブ742が閉状態から開状態へ駆動することで、DIW供給源712からDIW供給路722を介してDIW供給ノズル42にDIWが供給され、DIW供給ノズル42からウェハWにDIWが供給される。
<基板処理システムの具体的動作>
次に、基板処理システム100の具体的動作の一例について図8を参照して説明する。図8は、第1の実施形態に係る基板処理システム100が実行する基板処理の手順の一例を示すフローチャートである。図8に示す各処理手順は、制御部18,401,501の制御に従って実行される。
図8に示すように、基板処理システム100では、まず、シリコン酸化膜111を有するウェハWを成膜装置200の成膜処理ユニット201に搬入する。そして、成膜処理ユニット201において、シリコン酸化膜111上にボロン単膜112を成膜する成膜処理が行われる(ステップS101)。
具体的には、まず、処理容器220内を所定の温度、たとえば200〜500℃に制御し、大気圧の状態で、複数のウェハWを搭載したウェハボート230を処理容器220内に挿入する。その状態から真空引きを行って処理容器220内を真空状態とする。つづいて、処理容器220内を所定の低圧状態、たとえば133.3Pa(1.0Torr)に調圧し、ウェハWの温度を安定化させる。この状態で、ボロン含有ガス供給機構240によりB2H6ガス等のボロン含有ガスを処理容器220内に導入し、ウェハW表面でボロン含有ガスを熱分解させるCVDにより、ウェハW表面にボロン単膜112を成膜する。その後、処理容器220内に不活性ガス供給機構250から不活性ガスを供給して、処理容器220内をパージし、引き続き処理容器220内を真空ポンプ263により真空引きし、その後、処理容器220内を大気圧に戻して処理を終了する。これにより、ウェハWのシリコン酸化膜111上にボロン単膜112が成膜される(図1A参照)。
成膜処理後のウェハWは、成膜装置200から搬出された後、エッチング装置300のエッチング処理ユニット301に搬入される。そして、エッチング処理ユニット301において、ボロン単膜112をハードマスクとしてウェハWのシリコン酸化膜111をエッチングするエッチング処理が行われる(ステップS102)。
具体的には、排気装置390を用いてチャンバ310の内部を減圧した後、シャワーヘッド340からチャンバ310内にエッチングガスを供給することによって載置台320に載置されたウェハWをドライエッチングする。これにより、ウェハWに凹部113が形成される(図1B参照)。
エッチング処理後のウェハWは、エッチング装置300から搬出された後、基板処理装置1の処理ユニット16に搬入される。処理ユニット16に搬入されたウェハWは、シリコン酸化膜111上にボロン単膜112が成膜された面を上方に向けた状態で保持部31によって水平に保持される。その後、処理ユニット16において、ウェハWからボロン単膜112を除去する除去処理が行われる(ステップS103)。
具体的には、除去処理では、処理流体供給部40の除去液供給ノズル41がウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ741が所定時間開放されることによって、除去液供給ノズル41からウェハWに対して除去液が供給される(図1C参照)。ウェハWに供給された除去液は、駆動部33(図6参照)によるウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWの表面に広がる。これにより、ボロン単膜112がウェハWから除去される(図1D参照)。
つづいて、処理ユニット16では、ウェハWの表面をDIWですすぐリンス処理が行われる(ステップS104)。かかるリンス処理では、DIW供給ノズル42がウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ742が所定時間開放されることによって、DIW供給ノズル42から回転するウェハWの表面へDIWが供給され、ウェハWから除去(剥離)されたボロン単膜112およびウェハW上に残存する除去液がDIWによって洗い流される。
つづいて、処理ユニット16では、ウェハWの回転速度を所定時間増加させることによってウェハWの表面に残存するDIWを振り切ってウェハWを乾燥させる乾燥処理が行われる(ステップS105)。その後、ウェハWの回転が停止する。
乾燥処理後のウェハWは、基板搬送装置17によって処理ユニット16から取り出され、受渡部14および基板搬送装置13を経由して、キャリア載置部11に載置されたキャリアCに収容される。これにより、1枚のウェハWについての一連の基板処理が完了する。
上述してきたように、第1の実施形態に係る基板処理システム100は、成膜装置200と、エッチング装置300と、基板処理装置1とを備える。成膜装置200は、シリコン酸化膜111を含む膜を有するウェハW(基板の一例)にボロン単膜112を成膜する。エッチング装置300は、成膜装置200によってボロン単膜112が成膜されたウェハWをエッチングする。基板処理装置1は、エッチング装置300によってエッチングされたウェハWからボロン単膜112を除去する。また、基板処理装置1は、保持部31と、処理流体供給部40および処理流体供給源70を備える。保持部31は、ウェハWを保持する。処理流体供給部40および処理流体供給源70は、保持部31によって保持されたウェハWに、硫酸、硝酸および水の除去液を接触させることにより、ウェハWからボロン単膜112を除去する。
したがって、第1の実施形態に係る基板処理システム100によれば、ボロン単膜112をウェハWから適切に除去することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図9は、第2の実施形態に係る処理ユニットにおける処理液供給系の構成の一例を示す図である。図9に示すように、第2の実施形態に係る処理流体供給源70Aは、硫酸の供給系として、硫酸供給源713と、硫酸供給路723と、温度調整部733と、バルブ743とを備える。
硫酸供給源713は、水(純水)で所定の濃度に希釈された硫酸を貯留するタンクである。たとえば、硫酸供給源713には、50%の濃度に希釈された硫酸が貯留される。
硫酸供給路723は、硫酸供給源713と後述する混合部750とを接続する配管である。温度調整部733は、硫酸供給路723に設けられ、硫酸供給路723を流通する硫酸を加熱する。温度調整部733は、たとえばヒータである。バルブ743は、硫酸供給路723に設けられ、硫酸供給路723を開閉する。
また、処理流体供給源70Aは、硝酸の供給系として、硝酸供給源714と、硝酸供給路724と、バルブ744とを備える。
硝酸供給源714は、水(純水)で所定の濃度に希釈された硝酸を貯留するタンクである。たとえば、硝酸供給源714には、69%の濃度に希釈された硝酸が貯留される。
硝酸供給路724は、硝酸供給源714と後述する混合部750とを接続する配管である。バルブ744は、硝酸供給路724を開閉する。
また、処理流体供給源70Aは、DIWの供給系として、DIW供給源712と、DIW供給路722と、バルブ742とを備える。
処理ユニット16Aは、混合部750と除去液供給路760とを備える。混合部750は、硫酸供給路723から所定の流速で供給される硫酸と、硝酸供給路724から所定の流速で供給される硝酸とを流速を持つ状態で予め設定された混合比で混合して混合液である除去液を生成する。たとえば、混合部750は、50%濃度の硫酸:69%濃度の硝酸=10:1の割合で混合する。
混合部750は、処理ユニット16Aのチャンバ20(図6参照)内に配置される。たとえば、混合部750は、除去液供給ノズル41を保持するアームに設けることができる。
除去液供給路760は、混合部750と除去液供給ノズル41とを接続し、混合部750において生成された除去液を除去液供給ノズル41へ供給する。
次に、第2の実施形態に係る除去処理について説明する。第2の実施形態に係る除去処理では、エッチング処理後のウェハWを保持部31により保持した後、処理流体供給部40の除去液供給ノズル41をウェハWの中央上方に位置させる。
その後、バルブ743およびバルブ744が所定時間開放されることにより、水で希釈された硫酸であって温度調整部733によって加熱されたものと、水で希釈された硝酸とが混合部750に流入して除去液が生成される。
その後、混合部750において生成された除去液が除去液供給ノズル41からウェハWへ供給される。ウェハWに供給された除去液は、駆動部33によるウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWの表面に広がる。これにより、ボロン単膜112がウェハWから除去される。
このように、第2の実施形態に係る処理ユニット16Aは、処理流体供給部40および処理流体供給源70Aを備える。具体的には、処理ユニット16Aは、硫酸供給路723と、硝酸供給路724と、混合部750と、除去液供給ノズル41とを備える。硫酸供給路723は、水により希釈された硫酸を供給する硫酸供給源713から供給される水により希釈された硫酸が流通する。硝酸供給路724は、水により希釈された硝酸を供給する硝酸供給源714から供給される水により希釈された硝酸が流通する。混合部750は、ウェハWに除去液を供給することに先立ち、硫酸供給路723を流通する水により希釈された硫酸と、硝酸供給路724を流通する水により希釈された硝酸とを流速を持つ状態で混合する。除去液供給ノズル41は、混合部750によって生成される除去液をウェハWに供給する。
かかる処理ユニット16Aによれば、生成された除去液も流速を持つためすぐにウェハWへと到達するので、たとえば除去液を予め生成してタンクに貯留しておく場合と比較して、より新鮮な、言い換えれば、ボロン単膜112の除去性能が低下する前の除去液をウェハWへ供給することができる。したがって、第2の実施形態に係る処理ユニット16Aによれば、ボロン単膜112をより適切に除去することができる。
なお、処理ユニット16Aは、必ずしも温度調整部733を備えることを要さず、硫酸と硝酸との反応熱によって加熱された除去液をウェハWに供給するようにしてもよい。この場合、たとえば、硫酸と硝酸とを混合した後の反応熱に伴う除去液の温度変化を実験等により予め計測しておき、除去液の温度が最大値を含む所定範囲内であるときに、除去液がウェハWに接触するように、除去液供給路760の長さを最適化しておくことが好ましい。
また、処理ユニット16Aは、所望の濃度よりも高濃度の除去液を混合部750において生成して除去液供給ノズル41からウェハWへ供給するとともに、DIW供給ノズル42からウェハWへDIWを供給して、高濃度の除去液をウェハW上でDIWにより希釈することにより所望の濃度の除去液を生成するようにしてもよい。
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態に係る処理ユニットにおける処理液供給系の構成の一例を示す図である。図10に示すように、第3の実施形態に係る処理ユニット16Bは、処理流体供給部40Bとして、DIW供給ノズル42と、硫酸供給ノズル43(強酸供給ノズルの一例)と、硝酸供給ノズル44とを備える。
硫酸供給ノズル43は、ウェハWに対して硫酸を供給するノズルであり、硝酸供給ノズル44は、ウェハWに対して硝酸を供給するノズルである。
処理流体供給源70Bは、硫酸の供給系として、硫酸供給源713と、硫酸供給路723と、温度調整部733と、バルブ743とを備え、硫酸供給路723は、硫酸供給ノズル43に接続される。
また、処理流体供給源70Bは、硝酸の供給系として、硝酸供給源714と、硝酸供給路724と、バルブ744とを備え、硝酸供給路724は、硝酸供給ノズル44に接続される。
また、処理流体供給源70Bは、DIWの供給系として、DIW供給源712と、DIW供給路722と、バルブ742とを備え、DIW供給路722は、DIW供給ノズル42に接続される。
次に、第3の実施形態に係る除去処理について説明する。第3の実施形態に係る除去処理では、エッチング処理後のウェハWが保持部31により保持された後、処理流体供給部40Bの硫酸供給ノズル43および硝酸供給ノズル44がウェハWの上方に位置する。その後、バルブ743およびバルブ744が所定時間開放されることにより、水で希釈された硫酸であって温度調整部733によって加熱されたものと、水で希釈された硝酸とがそれぞれ硫酸供給ノズル43および硝酸供給ノズル44からウェハWへ供給される。硫酸および硝酸の流量は、所定の流量比となるようにバルブ743およびバルブ744によって調整される。たとえば、硫酸および硝酸の流量比は10:1に調整される。
ウェハWに供給された硫酸および硝酸がウェハW上で混合されることにより、ウェハW上で除去液が生成される。生成された除去液は、駆動部33によるウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWの表面に広がる。これにより、ボロン単膜112がウェハWから除去される。
このように、第3の実施形態に係る処理ユニット16Bは、処理流体供給部40Bおよび処理流体供給源70Bを備える。具体的には、処理ユニット16Bは、硫酸供給路723と、硝酸供給路724と、硫酸供給ノズル43と、硝酸供給ノズル44とを備える。硫酸供給路723は、水により希釈された硫酸を供給する硫酸供給源713から供給される水により希釈された硫酸が流通する。硝酸供給路724は、水により希釈された硝酸を供給する硝酸供給源714から供給される水により希釈された硝酸が流通する。硫酸供給ノズル43は、硫酸供給路723を流通する水により希釈された硫酸をウェハWに供給する。硝酸供給ノズル44は、硝酸供給路724を流通する水により希釈された硝酸をウェハWに供給する。そして、第3の実施形態に係る除去処理においては、保持部31により保持したウェハWに対し、水で希釈された硫酸と水で希釈された硝酸とを供給することによってウェハW上で除去液を生成することにより、ボロン単膜112を除去する。
かかる処理ユニット16Bによれば、混合部750を備える構成と比較して、生成されて間もない比較的新鮮な除去液をより簡易な構成でウェハWへ供給することができる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図11Aおよび図11Bは、第4の実施形態に係る処理ユニット16Cの構成の一例を示す図である。
図11Aに示すように、第4の実施形態に係る処理ユニット16Cは、加熱部60を備える。加熱部60は、たとえば抵抗加熱ヒータやランプヒータなどであり、保持部31の上方において保持部31とは別体に配置される。なお、加熱部60は、保持部31に一体的に設けられてもよい。たとえば、加熱部60は、保持部31に内蔵されてもよい。
次に、第4の実施形態に係る除去処理について説明する。第4の実施形態に係る除去処理では、保持部31により保持されたエッチング処理後のウェハWの上面に除去液の液膜を形成する(液膜形成処理)。
たとえば、図11Aに示すように、除去液供給ノズル41からウェハWに除去液を供給し、駆動部33(図6参照)によってウェハWを回転させることにより、ウェハW上に除去液の液膜が形成される。
なお、上記の例に限らず、硫酸供給ノズル43および硝酸供給ノズル44から硫酸および硝酸を回転するウェハWへ供給し、ウェハW上で除去液を生成することにより、ウェハW上に除去液の液膜を形成してもよい。
つづいて、図11Bに示すように、液膜形成処理後、ウェハW上に除去液の液膜が形成された状態を所定時間維持する(維持処理)。具体的には、ウェハWの回転を停止し、除去液供給ノズル41からウェハWへの除去液の供給を停止することにより、同一の除去液をウェハW上に所定時間滞留させる。
これにより、たとえばウェハWの回転および除去液供給ノズル41からウェハWへの除去液の供給を継続し続けた場合(すなわち除去液を置換し続けた場合)と比較してボロン単膜112の除去効率を高めることができる。これは、ボロンと除去液との反応物がエッチャントとなってボロン単膜112の除去を促進させるためであると考えられる。
また、維持処理において、処理ユニット16Cは、加熱部60を用いてウェハW上の除去液を加熱することにより、ウェハW上の除去液を一定の温度に保つ。これにより、温度の低下による除去性能の低下を抑制することができる。
このように、第4の実施形態に係る処理ユニット16Cは、除去処理において、保持部31により保持したウェハW上に除去液の液膜を形成する液膜形成処理と、液膜形成処理後、ウェハW上に除去液の液膜が形成された状態を所定時間維持する維持処理とを行う。具体的には、処理ユニット16Cは、維持処理において、同一の除去液をウェハW上に所定時間滞留させる。
これにより、ウェハW上の除去液を置換し続ける場合と比較して、ボロン単膜112の除去効率を高めることができる。また、除去液の使用量を削減することができる。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。図12は、第5の実施形態に係る基板処理システムの構成の一例を示す図である。
図12に示すように、第5の実施形態に係る基板処理システム100Dは、成膜装置200と、エッチング装置300と、基板処理装置1Dとを備える。
基板処理システム100Dでは、成膜処理後かつエッチング処理前に、ウェハWの裏面およびベベル部に除去液を接触させることにより、ウェハWの裏面およびベベル部からボロン単膜112を除去する事前除去処理を行う。
基板処理装置1Dは、ベベル処理ユニット16D1と、裏面処理ユニット16D2と、表面処理ユニット16D3とを備える。また、基板処理装置1Dは、制御装置4Dに接続され、ベベル処理ユニット16D1、裏面処理ユニット16D2および表面処理ユニット16D3は、制御装置4Dによって動作が制御される。
ベベル処理ユニット16D1は、ウェハWのベベル部に成膜されたボロン単膜112を除去液により除去する。ここで、ベベル処理ユニット16D1の構成の一例について図13を参照して説明する。図13は、ベベル処理ユニット16D1の構成の一例を示す図である。
図13に示すように、ベベル処理ユニット16D1は、基板保持機構30D1と、ベベル供給部80とを備える。
基板保持機構30D1は、ウェハWを吸着保持する保持部31D1と、保持部31D1を支持する支柱部材32D1と、支柱部材32D1を回転させる駆動部33D1とを備える。保持部31D1は、真空ポンプなどの吸気装置に接続され、かかる吸気装置の吸気によって発生する負圧を利用してウェハWの裏面を吸着することによってウェハWを水平に保持する。保持部31D1としては、たとえばポーラスチャックを用いることができる。
ベベル供給部80は、たとえば図示しない回収カップの底部に設けられ、ウェハWの裏面側の周縁部に対して除去液を供給する。除去液の供給系の構成としては、たとえば、図7に示す処理流体供給源70または図9に示す処理流体供給源70Aを採用することができる。
ベベル処理ユニット16D1は、上記のように構成されており、保持部31D1を用いてウェハWを保持し、駆動部33D1を用いてウェハWを回転させた後、ベベル供給部80からウェハWの裏面側の周縁部に対して除去液を供給する。ウェハWの裏面側の周縁部に供給された除去液は、ウェハWのベベル部に回り込み、ベベル部に成膜されたボロン単膜112を除去する。その後、ウェハWの回転が停止する。
なお、ベベル供給部80は、図示しないDIW供給源に接続されており、ウェハWのベベル部からボロン単膜112を除去した後、ウェハWの裏面側の周縁部に対してDIWを供給してベベル部に残存するボロン単膜112および除去液を洗い流すリンス処理も行う。
裏面処理ユニット16D2は、ウェハWの裏面に成膜されたボロン単膜112を除去液により除去する。ここで、裏面処理ユニット16D2の構成の一例について図14を参照して説明する。図14は、裏面処理ユニット16D2の構成の一例を示す図である。
図14に示すように、裏面処理ユニット16D2は、ウェハWを回転可能に保持する基板保持機構30D2と、基板保持機構30D2の中空部に挿通され、ウェハWの裏面に除去液を供給する裏面供給部90とを備える。
基板保持機構30D2の上面には、ウェハWの周縁部を把持する複数の把持部311が設けられており、ウェハWは、かかる複数の把持部311によって基板保持機構30D2の上面からわずかに離間した状態で水平に保持される。
また、基板保持機構30D2は、駆動部33D2を備え、かかる駆動部33D2によって鉛直軸まわりに回転する。そして、基板保持機構30D2が回転することによって、基板保持機構30D2に保持されたウェハWが基板保持機構30D2と一体に回転する。
裏面供給部90は、基板保持機構30D2の中空部に挿通され、ウェハWの裏面中央部に対して除去液を供給する。除去液の供給系の構成としては、たとえば、図7に示す処理流体供給源70または図9に示す処理流体供給源70Aを採用することができる。
裏面処理ユニット16D2は、上記のように構成されており、基板保持機構30D2の複数の把持部311を用いてウェハWを保持し、駆動部33D2を用いてウェハWを回転させた後、裏面供給部90からウェハWの裏面中央部に対して除去液を供給する。ウェハWの裏面中央部に供給された除去液は、ウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWの裏面に広がり、裏面に成膜されたボロン単膜112を除去する。その後、ウェハWの回転が停止する。
なお、裏面供給部90は、図示しないDIW供給源に接続されており、ウェハWの裏面からボロン単膜112を除去した後、ウェハWの裏面中央部に対してDIWを供給して裏面に残存するボロン単膜112および除去液を洗い流すリンス処理も行う。
表面処理ユニット16D3は、ウェハWの表面に成膜されたボロン単膜112を除去する。表面処理ユニット16D3としては、処理ユニット16,16A〜16Cのいずれかを適用することができる。
次に、第5の実施形態に係る基板処理の手順について説明する。第5の実施形態に係る基板処理システム100Dでは、成膜装置200による成膜処理を終えた後、成膜処理後のウェハWを基板処理装置1Dのベベル処理ユニット16D1へ搬入する。そして、ベベル処理ユニット16D1において、ウェハWのベベル部に成膜されたボロン単膜112を除去するベベル除去処理を行う。
つづいて、ベベル除去処理後のウェハWは、ベベル処理ユニット16D1においてリンス処理および乾燥処理が行われた後、裏面処理ユニット16D2へ搬入され、裏面処理ユニット16D2において、ウェハWの裏面に成膜されたボロン単膜112を除去する裏面除去処理が行われる。
つづいて、裏面除去処理後のウェハWは、裏面処理ユニット16D2においてリンス処理および乾燥処理が行われた後、基板処理装置1Dから搬出されて、エッチング装置300に搬入される。そして、エッチング装置300においてエッチング処理が行われる。
つづいて、エッチング処理後のウェハWは、基板処理装置1Dの表面処理ユニット16D3へ搬入されて、表面処理ユニット16D3において上述した除去処理、リンス処理および乾燥処理が行われる。
上述したように、第5の実施形態に係る基板処理システム100Dでは、成膜処理後かつエッチング処理前に、ウェハWの裏面およびベベル部に除去液を接触させることにより、ウェハWの裏面およびベベル部からボロン単膜112を除去する事前除去処理を行うこととした。これにより、エッチング処理に不要な裏面およびベベル部のボロン単膜112をエッチング処理前に除去することができる。
なお、ここでは、ベベル除去処理の後、裏面除去処理を行うこととしたが、裏面除去処理の後、ベベル除去処理を行ってもよい。また、1つの処理ユニットにベベル供給部80および裏面供給部90を設けて、ベベル除去処理および裏面除去処理を同時に行ってもよい。
また、ここでは、1つの基板処理装置1Dが、ベベル供給部80、裏面供給部90および処理流体供給部40の全てを備える場合の例を示したが、基板処理システム100Dは、ベベル供給部80および裏面供給部90を備える第1の基板処理装置と、処理流体供給部40を備える第2の基板処理装置とを備える構成であってもよい。
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。図15Aおよび図15Bは、第6の実施形態に係る処理ユニットの構成の一例を示す図である。
図15Aに示すように、第6の実施形態に係る処理ユニット16Eは、蓋体1010を備える。蓋体1010は、保持部31の上方に配置される。蓋体1010は、保持部31に保持されたウェハWと対向し、その対向面は、ウェハWと同径もしくはウェハWよりも大径の平面となっている。
蓋体1010には、ヒータ等の加熱部1011が内蔵される。なお、加熱部1011は、保持部31に内蔵されてもよいし、蓋体1010および保持部31の両方に内蔵されてもよい。また、処理ユニット16Eは、蓋体1010を昇降させる昇降部1012を備える。
次に、第6の実施形態に係る除去処理について説明する。第6の実施形態に係る除去処理では、保持部31により保持されたエッチング処理後のウェハWの上面に除去液の液膜を形成する(液膜形成処理)。
たとえば、除去液供給ノズル41(図7等参照)からウェハWに除去液を供給し、駆動部33(図6参照)によってウェハWを回転させることにより、ウェハW上に除去液の液膜が形成される。あるいは、硫酸供給ノズル43および硝酸供給ノズル44(図10参照)から硫酸および硝酸を回転するウェハWへ供給し、ウェハW上で除去液を生成することにより、ウェハW上に除去液の液膜を形成してもよい。
つづいて、液膜形成処理後、ウェハWの回転を停止し、除去液供給ノズル41からウェハWへの除去液あるいは硫酸および硝酸の供給を停止した後、図15Bに示すように、昇降部1012を用いて蓋体1010を降下させることによって蓋体1010を除去液の液膜に接触させる。そして、蓋体1010が除去液の液膜に接触した状態で、加熱部1011を用いて除去液を加熱しながら、ウェハW上に同一の除去液を所定時間滞留させる(維持処理)。
本発明者らは、除去液を加熱することにより除去液からガスが発生することを突き止めた。また、本発明者らは、除去液からガスが抜け出ることで、除去液のボロン単膜112との反応性が低下することを突き止めた。そこで、第6の実施形態では、除去液の液膜に蓋体1010を接触させて液膜の露出面積を小さくすることにより、除去液からガスが極力抜け出ないようにした。これにより、ガスの発生に起因する除去液の反応性の低下を抑制することができる。
その後、加熱部1011による加熱を停止し、昇降部1012を用いて蓋体1010を上昇させた後、駆動部33(図6参照)を用いて保持部31を回転させて、ウェハWから除去液を除去する。つづいて、ウェハWに対してDIW供給ノズル42(図7等参照)からリンス液であるDIWを供給することによってウェハW上に残存する除去液を除去する(リンス処理)。
つづいて、ウェハWの回転数を増加させることにより、ウェハWからDIWを除去して、ウェハWを乾燥させる(乾燥処理)。その後、ウェハWの回転を停止させ、ウェハWを処理ユニット16Eから搬出することにより、基板処理が完了する。
なお、上述した各実施形態では、ウェハWを下方から吸着保持する保持部31を例に挙げて説明したが、たとえば、図14に示す基板保持機構30D2のように、複数の把持部311を用いてウェハWの周縁部を把持するタイプの保持部を用いて除去処理を行ってもよい。
上述した各実施形態では、ウェハWに対して除去液を供給した後、リンス処理および乾燥処理を行うこととした。しかし、これに限らず、ウェハWに対して除去液を供給した後、リンス処理を行う前に、ウェハWに対して硝酸を供給する処理を行ってもよい。たとえば、図9に示す処理ユニット16Aまたは図10に示す処理ユニット16Bにおいて、バルブ743およびバルブ744を所定時間開放した後、バルブ743のみを閉じ、バルブ744のみをさらに所定時間開放することにより、リンス処理の前に、ウェハWに硝酸を供給することができる。
また、上述してきた各実施形態では、除去液供給ノズル41からウェハWに対して除去液を供給したり、硫酸供給ノズル43および硝酸供給ノズル44から硫酸および硝酸を個別に供給したりすることで、ウェハWに除去液を接触させることとした。しかし、ウェハWに除去液を接触させる方法は、これに限定されない。
たとえば、複数枚のウェハWを保持可能なバッチ(保持部の一例)にウェハWを保持させた後(保持工程)、処理槽に貯留した除去液にバッチを浸漬させることで、ウェハWに除去液を接触させてウェハWからボロン単膜112を除去する(除去工程)。これにより、バッチに保持された複数枚のウェハWを一度に処理することが可能である。
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。図16Aおよび図16Bは、第7の実施形態に係る処理ユニットの構成の一例を示す図である。
図16Aに示すように、第7の実施形態に係る処理ユニット16Fは、皿状の載置部1020を備える。載置部1020は、たとえば、支柱部32に接続される円板状の底部1021と、底部1021の上面に設けられる円環状の周壁部1022とを備える。周壁部1022は、下方に向かって漸次縮径する内周面1023を有し、内周面1023においてウェハWのベベル部と接触する。ウェハWは、ベベル部において内周面1023と接触することにより、底部1021から離隔した状態で載置部1020に載置される。なお、ここでは、底部1021と周壁部1022とが別体であるものとするが、底部1021と周壁部1022とは一体に形成されてもよい。
また、処理ユニット16Fは、保持部1024と昇降部1025とを備える。保持部1024は、ウェハWをボロン単膜112の成膜面を下方に向けた状態で上方から保持する。保持部1024としては、たとえばウェハWを吸着保持するバキュームチャックやベルヌーイチャック等を用いることができる。昇降部1025は、保持部1024を昇降させる。
載置部1020の底部1021には、ヒータ等の加熱部1026が内蔵される。なお、加熱部1026は、底部1021、周壁部1022および保持部1024の少なくとも1つに内蔵されていればよい。
次に、第7の実施形態に係る除去処理について説明する。第7の実施形態に係る除去処理では、まず、除去液供給ノズル41(図7等参照)または硫酸供給ノズル43および硝酸供給ノズル44(図10参照)を用いて、皿状の載置部1020に除去液を溜める。
つづいて、昇降部1025を用いて保持部1024を降下させることによって保持部1024に保持されたウェハWを載置部1020に溜められた除去液に接触させる(図16B参照)。そして、ウェハWが除去液に接触した状態で、加熱部1026を用いて除去液を加熱する。これにより、ウェハW上のボロン単膜112が除去液によって除去される。なお、ガスの発生を抑制するために、除去液の加熱は、ウェハWが除去液に接触した後に開始することが好ましい。
その後、加熱部1026による除去液の加熱を停止し、昇降部1025を用いて保持部1024を上昇させる。
除去処理後のウェハWは、たとえば図6に示す構成を有する他の処理ユニット(図示せず)に搬送された後、回転する保持部31に保持された状態で、処理流体供給部40(DIW供給ノズル42)からリンス液であるDIWが供給されることにより、ウェハWから除去液が除去される。その後、ウェハWの回転数を増加させてウェハWを乾燥させた後、ウェハWの回転を停止させ、ウェハWを処理ユニット16Fから搬出することにより、基板処理が完了する。
なお、処理ユニット16Fにおいては、駆動部33を用いて載置部1020を回転させることにより、載置部1020に溜められた除去液を載置部1020内から除去する処理が行われるものとするが、載置部1020から除去液を除去する方法はこれに限定されない。たとえば、周壁部1022を昇降させる昇降部を載置部1020に設け、かかる昇降部によって周壁部1022を上昇させることにより載置部1020から除去液を除去することとしてもよい。また、底部1021に排出口を設け、かかる排出口から除去液を排出するようにしてもよい。
第7の実施形態に係る処理ユニット16Fによれば、図16Bに示すように、ウェハWのベベル部が載置部1020における周壁部1022の内周面1023に接触することで、除去液が密閉された状態が作り出される。このため、第6の実施形態に係る処理ユニット16Eと比較して、加熱により発生したガスが除去液から抜け出ていくことをより確実に抑えることができる。したがって、ガスの発生に起因する除去液の反応性の低下をより確実に抑制することができる。
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。図17Aおよび図17Bは、第8の実施形態に係る処理ユニットの構成の一例を示す図である。
図17Aに示すように、第8の実施形態に係る処理ユニット16Gは、ノズル1030を備える。ノズル1030は、たとえば二重管構造を有しており、外側の管にはバルブ1031を介して除去液供給源1032が接続され、内側の管にはポンプ1033が接続される。かかるノズル1030によれば、バルブ1031を介して除去液供給源1032から供給される除去液の流量と、ポンプ1033により吸引される除去液の流量とのバランスを取ることにより、ノズル1030とウェハWとの間に除去液の液滴が形成された状態を維持することができる。また、ノズル1030は、ヒータ等の加熱部(図示せず)を内蔵しており、除去液供給源1032から供給される除去液を加熱することができる。
また、処理ユニット16Gは、ノズル1030を移動させる移動部1034を備える。移動部1034は、ノズル1030を鉛直方向および水平方向に移動させる。
次に、第8の実施形態に係る除去処理について説明する。第8の実施形態に係る除去処理では、エッチング処理後のウェハWを保持部31を用いて保持した後、移動部1034を用いてノズル1030を降下させてウェハWに近接した状態とする。その後、バルブ1031を開放し、ポンプ1033を作動させることにより、ノズル1030とウェハWとの間に除去液の液滴が形成された状態とする。
つづいて、図17Bに示すように、駆動部33を用いてウェハWを回転させる。その後、ノズル1030の高さ位置を保ったまま、移動部1034を用いてノズル1030をウェハWの一端側の外周部から他端側の外周部に向けて水平移動させることにより、ウェハWの全面に除去液を供給する。これにより、ウェハW上のボロン単膜112が除去される。
その後、バルブ1031を閉じ、ポンプ1033を停止し、ノズル1030を上昇させる。つづいて、ウェハWに対してDIW供給ノズル42からDIWを供給することによってウェハW上に残存する除去液を除去し、ウェハWの回転数を増加させることによってウェハWを乾燥させる。その後、ウェハWの回転を停止させ、ウェハWを処理ユニット16Gから搬出することにより、基板処理が完了する。
このように、ウェハWとの間に除去液の液滴を形成した状態を維持することのできるノズル1030を使用してボロン単膜112の除去処理を行うようにすることで、除去液の使用量を削減することができる。
(第9の実施形態)
次に、第9の実施形態について説明する。図19は、第9の実施形態に係る基板処理装置の構成の一例を示す図である。
図19に示すように、基板処理装置1Hは、キャリア搬入出部2002と、ロット形成部2003と、ロット載置部2004と、ロット搬送部2005と、ロット処理部2006と、制御部2007とを備える。
キャリア搬入出部2002は、複数枚(たとえば、25枚)のウェハWを水平姿勢で上下に並べて収容したキャリア2009の搬入及び搬出を行う。
キャリア搬入出部2002には、複数個のキャリア2009を載置するキャリアステージ2010と、キャリア2009の搬送を行うキャリア搬送機構2011と、キャリア2009を一時的に保管するキャリアストック2012,2013と、キャリア2009を載置するキャリア載置台2014とが設けられている。ここで、キャリアストック2012は、製品となるウェハWをロット処理部2006で処理する前に一時的に保管する。また、キャリアストック2013は、製品となるウェハWをロット処理部2006で処理した後に一時的に保管する。
そして、キャリア搬入出部2002は、外部からキャリアステージ2010に搬入されたキャリア2009をキャリア搬送機構2011を用いてキャリアストック2012やキャリア載置台2014に搬送する。また、キャリア搬入出部2002は、キャリア載置台2014に載置されたキャリア2009をキャリア搬送機構2011を用いてキャリアストック2013やキャリアステージ2010に搬送する。キャリアステージ2010に搬送されたキャリア2009は、外部へ搬出される。
ロット形成部2003は、1又は複数のキャリア2009に収容されたウェハWを組合せて同時に処理される複数枚(たとえば、50枚)のウェハWからなるロットを形成する。なお、ロットを形成するときは、ウェハWの表面にパターンが形成されている面を互いに対向するようにロットを形成してもよく、また、ウェハWの表面にパターンが形成されている面がすべて一方を向くようにロットを形成してもよい。
このロット形成部2003には、複数枚のウェハWを搬送する基板搬送機構2015が設けられている。なお、基板搬送機構2015は、ウェハWの搬送途中でウェハWの姿勢を水平姿勢から垂直姿勢及び垂直姿勢から水平姿勢に変更させることができる。
そして、ロット形成部2003は、キャリア載置台2014に載置されたキャリア2009から基板搬送機構2015を用いてウェハWをロット載置部2004に搬送し、ロットを形成するウェハWをロット載置部2004に載置する。また、ロット形成部2003は、ロット載置部2004に載置されたロットを基板搬送機構2015でキャリア載置台2014に載置されたキャリア2009へ搬送する。なお、基板搬送機構2015は、複数枚のウェハWを支持するための基板支持部として、処理前(ロット搬送部2005で搬送される前)のウェハWを支持する処理前基板支持部と、処理後(ロット搬送部2005で搬送された後)のウェハWを支持する処理後基板支持部の2種類を有している。これにより、処理前のウェハW等に付着したパーティクル等が処理後のウェハW等に転着するのを防止する。
ロット載置部2004は、ロット搬送部2005によってロット形成部2003とロット処理部2006との間で搬送されるロットをロット載置台2016で一時的に載置(待機)する。
このロット載置部2004には、処理前(ロット搬送部2005で搬送される前)のロットを載置する搬入側ロット載置台2017と、処理後(ロット搬送部2005で搬送された後)のロットを載置する搬出側ロット載置台2018とが設けられている。搬入側ロット載置台2017及び搬出側ロット載置台2018には、1ロット分の複数枚のウェハWが垂直姿勢で前後に並べて載置される。
そして、ロット載置部2004では、ロット形成部2003で形成したロットが搬入側ロット載置台2017に載置され、そのロットがロット搬送部2005を介してロット処理部2006に搬入される。また、ロット載置部2004では、ロット処理部2006からロット搬送部2005を介して搬出されたロットが搬出側ロット載置台2018に載置され、そのロットがロット形成部2003に搬送される。
ロット搬送部2005は、ロット載置部2004とロット処理部2006との間やロット処理部2006の内部間でロットの搬送を行う。
このロット搬送部2005には、ロットの搬送を行うロット搬送機構2019が設けられている。ロット搬送機構2019は、ロット載置部2004とロット処理部2006とに亘ってX軸方向に沿わせて配置したレール2020と、複数枚のウェハWを保持しながらレール2020に沿って移動する移動体2021とで構成される。移動体2021には、垂直姿勢で前後に並んだ複数枚のウェハWを保持する基板保持体2022が進退自在に設けられている。
そして、ロット搬送部2005は、搬入側ロット載置台2017に載置されたロットをロット搬送機構2019の基板保持体2022で受け取り、そのロットをロット処理部2006に渡す。また、ロット搬送部2005は、ロット処理部2006で処理されたロットをロット搬送機構2019の基板保持体2022で受け取り、そのロットを搬出側ロット載置台2018に渡す。さらに、ロット搬送部2005は、ロット搬送機構2019を用いてロット処理部2006の内部においてロットの搬送を行う。
ロット処理部2006は、垂直姿勢で前後に並んだ複数枚のウェハWを1ロットとしてエッチングや洗浄や乾燥などの処理を行う。
このロット処理部2006には、ウェハWの乾燥処理を行う処理ユニット2023と、基板保持体2022の洗浄処理を行う基板保持体洗浄ユニット2024とが配置される。また、ロット処理部2006には、ウェハWからボロン単膜112(図1A参照)を除去する除去処理および除去処理後のウェハWに付着したパーティクルを除去するためのパーティクル除去処理を行う処理ユニット2025が2つ配置される。処理ユニット2023、基板保持体洗浄ユニット2024および2つの処理ユニット2025は、ロット搬送部2005のレール2020に沿って並べて配置される。
処理ユニット2023は、処理槽2027に基板昇降機構2028を昇降自在に設けている。処理槽2027には、たとえば乾燥用の処理液として、たとえばIPAが供給される。基板昇降機構2028には、1ロット分の複数枚のウェハWが垂直姿勢で前後に並べて保持される。処理ユニット2023は、ロット搬送機構2019の基板保持体2022からロットを基板昇降機構2028で受け取り、基板昇降機構2028でそのロットを昇降させることで、処理槽2027に供給したIPAでウェハWの乾燥処理を行う。また、処理ユニット2023は、基板昇降機構2028からロット搬送機構2019の基板保持体2022にロットを渡す。
基板保持体洗浄ユニット2024は、処理槽2029に洗浄用の処理液及び乾燥ガスを供給できるようになっており、ロット搬送機構2019の基板保持体2022に洗浄用の処理液を供給した後、乾燥ガスを供給することで基板保持体2022の洗浄処理を行う。
処理ユニット2025は、除去処理が行われる処理槽2030とパーティクル除去処理が行われる処理槽2031とを有する。処理槽2030には、除去液が貯留される。また、処理槽2031には、たとえばSC1または所定の濃度に希釈された水酸化アンモニウム(以下、「希アンモニア水」と記載する)の他、DIW等のリンス液が順次貯留される。各処理槽2030,2031には、基板昇降機構2032,2033が昇降自在に設けられている。
基板昇降機構2032,2033には、1ロット分の複数枚のウェハWが垂直姿勢で前後に並べて保持される。処理ユニット2025は、まず、ロット搬送機構2019の基板保持体2022からロットを基板昇降機構2032で受け取り、基板昇降機構2032でそのロットを降下させることでロットを処理槽2030に貯留された除去液に浸漬させる。これにより、ウェハWからボロン単膜112が除去される。
その後、処理ユニット2025は、基板昇降機構2032からロット搬送機構2019の基板保持体2022にロットを渡す。また、処理ユニット2025は、ロット搬送機構2019の基板保持体2022からロットを基板昇降機構2033で受け取り、基板昇降機構2033でそのロットを降下させることでロットを処理槽2031に貯留されたDIWに浸漬させてウェハWのリンス処理を行う。つづいて、処理ユニット2025は、処理槽2031からDIWを排出し、処理槽2031にSC1または希アンモニア水を貯留することにより、ロットをSC1または希アンモニア水に浸漬させる。つづいて、処理ユニット2025は、処理槽2031からSC1または希アンモニア水を排出し、処理槽2031に再度DIWを貯留することにより、ロットをDIWに浸漬させてウェハWのリンス処理を行う。その後、処理ユニット2025は、基板昇降機構2033からロット搬送機構2019の基板保持体2022にロットを渡す。
制御部2007は、基板処理装置1Hの各部(キャリア搬入出部2002、ロット形成部2003、ロット載置部2004、ロット搬送部2005、ロット処理部2006など)の動作を制御する。
この制御部2007は、たとえばコンピュータであり、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体2038を備える。記憶媒体2038には、基板処理装置1Hにおいて実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部2007は、記憶媒体2038に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理装置1Hの動作を制御する。なお、プログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体2038に記憶されていたものであって、他の記憶媒体から制御部2007の記憶媒体2038にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体2038としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
次に、処理ユニット2025の構成例について説明する。まず、除去処理が行われる処理槽2030およびその周辺の構成例について図20を参照して説明する。図20は、除去処理が行われる処理槽2030およびその周辺の構成例を示す図である。
図20に示すように、処理ユニット2025が備える処理槽2030は、内槽2034と、内槽2034の上部周囲に内槽2034に隣接して設けられた外槽2035を備える。内槽2034および外槽2035は、ともに上部が開放されており、内槽2034の上部から外槽2035に除去液がオーバーフローするように構成されている。
処理ユニット2025は、処理槽2030にDIWを供給するためのDIW供給部2040と、処理槽2030に硝酸を供給するための硝酸供給部2041と、処理槽2030に硫酸を供給するための硫酸供給部2042とを備える。
DIW供給部2040は、DIW供給源2043と、DIW供給路2044と、バルブ2045とを備える。そして、バルブ2045が閉状態から開状態へ駆動することで、DIW供給源2043からDIW供給路2044を介して処理槽2030の外槽2035にDIWが供給される。なお、DIW供給部2040によって供給されるDIWは、NOxの漏洩が検出された場合に実行される後述する異常対応処理にて使用される。かかる点については後述する。
硝酸供給部2041は、硝酸供給源2046と、硝酸供給路2047と、バルブ2048とを備える。硝酸供給源2046は、水(純水)で所定の濃度に希釈された硝酸を貯留するタンクである。たとえば、硝酸供給源2046には、69%の濃度に希釈された硝酸が貯留される。そして、バルブ2048が閉状態から開状態へ駆動することで、硝酸供給源2046から硝酸供給路2047を介して処理槽2030の外槽2035に希釈された硝酸が供給される。
硫酸供給部2042は、硫酸供給源2049と、硫酸供給路2050と、バルブ2051とを備える。硫酸供給源2049は、水(純水)で所定の濃度に希釈された硫酸を貯留するタンクである。たとえば、硫酸供給源2049には、96〜98%の濃度に希釈された硫酸が貯留される。そして、バルブ2051が閉状態から開状態へ駆動することで、硫酸供給源2049から硫酸供給路2050を介して処理槽2030の外槽2035に希釈された硫酸が供給される。
所定濃度に希釈された硝酸および硫酸が外槽2035に供給されることにより、これら硝酸および硫酸が外槽2035内で混合されて所望の濃度の除去液が生成される。このように、外槽2035は、硫酸供給路2050(強酸供給路の一例)を流通する水により希釈された硫酸と、硝酸供給路2047を流通する水により希釈された硝酸とを混合する混合部の一例に相当する。
また、処理ユニット2025は、処理槽2030に貯留された除去液を処理槽2030から取り出して処理槽2030へ戻す循環部2052を備える。
具体的には、循環部2052は、ノズル2054と、循環流路2055と、ポンプ2056と、加熱部2057と、フィルタ2058と、硝酸濃度検出部2059とを備える。
ノズル2054は、内槽2034の内部において基板昇降機構2032(図19参照)で保持されたウェハWよりも下方に配置される。ノズル2054は、複数枚のウェハWの配列方向に延びる筒形状を有している。そして、その周面に穿設された複数の吐出口から、基板昇降機構2032に保持されたウェハWに向かって除去液を吐出するように構成されている。このように、ノズル2054は、外槽2035(混合部の一例)によって生成される除去液をウェハWに供給する除去液供給ノズルの一例に相当する。
循環流路2055は、両端部がそれぞれ外槽2035の底部とノズル2054とに接続される。ポンプ2056、加熱部2057およびフィルタ2058は、循環流路2055に対してこの順番で設けられる。循環部2052は、ポンプ2056を駆動させることで外槽2035から内槽2034に除去液を循環させる。その際、除去液は、加熱部2057によって所定の温度に加熱され、フィルタ2058によって不純物が除去される。
外槽2035において生成された除去液は、循環流路2055を流通し、ノズル2054から内槽2034へ吐出される。これにより、内槽2034に除去液が貯留される。また、内槽2034に吐出された除去液は、内槽2034から外槽2035へオーバーフローし、外槽2035から再び循環流路2055へと流れる。これにより、除去液の循環流が形成される。
硝酸濃度検出部2059は、循環流路2055に設けられ、循環流路2055を流れる除去液の硝酸濃度を検出し、検出結果を制御部2007へ出力する。
また、処理ユニット2025は、濃度調整液供給部2060を備える。濃度調整液供給部2060は、除去液の濃度を調整する濃度調整液としての硝酸を供給する。かかる濃度調整液供給部2060は、硝酸供給源2061と、硝酸供給路2062と、バルブ2063とを備える。そして、バルブ2063が閉状態から開状態へ駆動することで、硝酸供給源2061から硝酸供給路2062を介して循環流路2055に硝酸が供給される。このように、循環流路2055に対して濃度調整液を供給することで、除去液の濃度をより早期に安定化させることができる。
また、処理ユニット2025は、内槽2034から除去液を排出する第1処理液排出部2064と、外槽2035から除去液を排出する第2処理液排出部2065とを備える。
第1処理液排出部2064は、内槽2034の底部と外部の排液管とを接続する排液流路2066と、排液流路2066を開閉するバルブ2067とを備える。第2処理液排出部2065は、外槽2035の底部と外部の排液管とを接続する排液流路2068と、排液流路2068を開閉するバルブ2069とを備える。
処理ユニット2025が備えるバルブ2045,2048,2051,2063,2067,2069、ポンプ2056、加熱部2057は、制御部2007によって制御される。
このように、第9の実施形態に係る基板処理装置1Hは、処理槽2030に貯留された除去液にウェハWを浸漬させることによってウェハWからボロン単膜112を除去することとした。
第4の実施形態において説明したように、ウェハWに対して除去液の供給を継続し続けた場合(すなわち除去液を置換し続けた場合)と比較して、同一の除去液をウェハWに接触させ続ける方が、ボロン単膜112の除去効率を高めることができる。したがって、第9の実施形態に係る基板処理装置1Hのように、循環部2052を用いて除去液を循環させつつ、処理槽2030に貯留された除去液にウェハWを浸漬させることにより、ウェハW上の除去液を置換し続ける場合と比較して、ボロン単膜112の除去効率を高めることができる。また、除去液の使用量を削減することができる。
また、加熱部2057を用いて循環流路2055を流れる除去液を加熱することにより、ウェハWに供給される除去液を一定の温度に保つことができる。これにより、除去液の温度低下に伴う除去性能の低下を抑制することができる。
また、基板処理装置1Hの制御部2007は、硝酸濃度検出部2059によって検出される除去液の濃度が閾値を下回った場合に、濃度調整液供給部2060のバルブ2063を開いて循環流路2055に硝酸を供給することとした。これにより、除去液から硝酸が揮発することによる硝酸濃度の低下を抑制することができる。
ところで、循環流路2055は、たとえばフッ素樹脂等の耐腐食性が高い配管で形成されるが、除去液から発生する硝酸ガスは、かかる配管を透過して外部に設けられた部材を腐食させるおそれがある。
そこで、基板処理装置1Hでは、循環流路2055を二重配管構造とし、配管内をパージすることにより、循環流路2055の外部への硝酸ガスの漏洩を抑制することとした。
この点について図21を参照して説明する。図21は、循環流路2055の構成例を示す図である。
図21に示すように、循環流路2055は、内側に配置される内側配管2070と、内側配管2070の外側に配置される外側配管2071とを備える二重配管構造を有する。内側配管2070および外側配管2071は、たとえばフッ素樹脂等の耐腐食性が高い部材で形成される。
内側配管2070は、両端部において外槽2035の底部とノズル2054とにそれぞれ接続されて除去液を流通させる。
外側配管2071には、パージ部2072が接続される。パージ部2072は、外側配管2071の上流側に接続される上流側配管2073と、外側配管2071の下流側に接続される下流側配管2074とを備え、上流側配管2073には、上流側配管2073に対してパージ用流体を供給する流体供給源2075と、上流側配管2073を開閉するバルブ2076とが設けられ、下流側配管2074にはポンプ2077が設けられる。パージ用流体は、空気等の気体であってもよいし、水等の液体であってもよい。
かかるパージ部2072は、流体供給源2075から供給されるパージ用流体を上流側配管2073経由で外側配管2071へ供給する。また、パージ部2072は、外側配管2071へ供給されたパージ用流体をポンプ2077によって下流側配管2074経由で外部の配管へ排出する。これにより、内側配管2070を透過した硝酸ガスは、パージ用流体とともに外部の配管へ排出されることとなる。したがって、除去液から発生した硝酸ガスの循環流路2055外への漏洩を抑制することができる。
次に、パーティクル除去処理が行われる処理槽2031およびその周辺の構成例について図22を参照して説明する。図22は、パーティクル除去処理が行われる処理槽2031およびその周辺の構成例を示す図である。
図22に示すように、処理ユニット2025が備える処理槽2031は、処理槽2030と同様、内槽2034と外槽2035とを備え、内槽2034の内部には、ノズル2054が設けられる。また、処理槽2030と同様、処理槽2031には、第1処理液排出部2064と、第2処理液排出部2065とが設けられる。
処理槽2031には、DIW供給部2200と、NH4OH供給部2210と、H2O2供給部2220とが設けられる。DIW供給部2200は、DIW供給源2201と、DIW供給源2201から供給されるDIWを流通させるDIW供給路2202と、DIW供給路2202を開閉するバルブ2203とを備え、DIW供給源2201から供給されるDIWをDIW供給路2202を介してノズル2054へ供給する。
NH4OH供給部2210は、NH4OH供給源2211と、NH4OH供給源2211から供給されるNH4OHを流通させるNH4OH供給路2212と、NH4OH供給路2212を開閉するバルブ2213とを備え、NH4OH供給源2211から供給されるNH4OHをNH4OH供給路2212を介してノズル2054へ供給する。
H2O2供給部2220は、H2O2供給源2221と、H2O2供給源2221から供給されるH2O2を流通させるH2O2供給路2222と、H2O2供給路2222を開閉するバルブ2223とを備え、H2O2供給源2221から供給されるH2O2をH2O2供給路2222を介してノズル2054へ供給する。
リンス液としてのDIWを供給する場合には、バルブ2213,2223を閉じた状態で、バルブ2203を開く。これにより、ノズル2054から内槽2034へDIWが供給される。
一方、パーティクル除去液としての希アンモニア水を供給する場合には、バルブ2223を閉じた状態で、バルブ2203,2213を開く。これにより、DIW供給源2201から供給されるDIWとNH4OH供給源2211から供給されるNH4OHとが混合されて、ノズル2054から内槽2034へ希アンモニア水が供給される。DIW供給路2202およびNH4OH供給路2212には、図示しない流量調整機構が設けられており、かかる流量調整機構によってDIWおよびNH4OHの流量が調整されることにより、DIWとNH4OHとは所望の割合で混合される。
また、パーティクル除去液としてのSC1を供給する場合には、バルブ2203,2213,2223を開く。これにより、DIW供給源2201から供給されるDIWと、NH4OH供給源2211から供給されるNH4OHと、H2O2供給源2221から供給されるH2O2とが混合されて、ノズル2054から内槽2034へSC1が供給される。DIW供給路2202、NH4OH供給路2212およびH2O2供給路2222には、図示しない流量調整機構が設けられており、かかる流量調整機構によってDIW,NH4OHおよびH2O2の流量が調整されることにより、DIWとNH4OHとH2O2とは所望の割合で混合される。
バルブ2067,2069,2203,2213,2223および図示しない流量調整機構は、制御部2007によって開閉制御される。
かかる処理槽2031では、リンス液としてのDIWおよびパーティクル除去液としての希アンモニア水またはSC1を順次供給、排液して、ウェハWに対する複数の処理を単一の槽で行う、いわゆるPOU(ポイント・オブ・ユース)方式の処理が行われる。かかる点については後述する。
次に、基板処理装置1Hの具体的動作の一例について図23を参照して説明する。図23は、第9の実施形態に係る基板処理装置1Hが実行する基板処理の手順の一例を示すフローチャートである。図23に示す各処理手順は、制御部2007の制御に従って実行される。また、図23に示す処理は、図8に示すステップS101の成膜処理およびステップS102のエッチング処理を行った後に実行される。
図23に示すように、基板処理装置1Hでは、エッチング処理後のウェハWに対して除去処理が行われる(ステップS201)。
除去処理において、処理ユニット2025は、ロット搬送機構2019の基板保持体2022からロットを基板昇降機構2032で受け取り、基板昇降機構2032でそのロットを降下させることでロットを処理槽2030に貯留された除去液に浸漬させる。これにより、ウェハWからボロン単膜112が除去される。
その後、処理ユニット2025は、基板昇降機構2032を用いて処理槽2030からロットを取り出した後、取り出したロットをロット搬送機構2019の基板保持体2022に渡す。
つづいて、基板処理装置1Hでは、リンス処理が行われる(ステップS202)。リンス処理において、処理ユニット2025は、ロット搬送機構2019の基板保持体2022からロットを基板昇降機構2033で受け取り、基板昇降機構2033でそのロットを降下させることでロットを処理槽2031に貯留されたDIWに浸漬させる。これにより、ウェハWから除去液が除去される。
内槽2034から外槽2035へオーバーフローしたDIWは、第2処理液排出部2065から外部の排液管へ排出される。したがって、複数のウェハWには、常に新鮮なDIWが供給される。
その後、処理ユニット2025は、DIW供給部2200のバルブ2203を閉じ、第1処理液排出部2064のバルブ2067を所定時間開いて、処理槽2031からDIWを排出する。
つづいて、基板処理装置1Hでは、パーティクル除去処理が行われる(ステップS203)。パーティクル除去処理において、処理ユニット2025は、たとえば、DIW供給部2200のバルブ2203、NH4OH供給部2210のバルブ2213およびH2O2供給部2220のバルブ2223を開いて、処理槽2031の内槽2034にSC1を貯留して、内槽2034内に配置されたロットをSC1に浸漬させる。これにより、ウェハWからパーティクルが除去される。内槽2034から外槽2035へオーバーフローしたSC1は、第2処理液排出部2065から外部の排液管へ排出される。したがって、複数のウェハWには、常に新鮮なSC1が供給される。
なお、処理ユニット2025は、内槽2034に対して超音波振動を印可する超音波振動部を備えていてもよい。この場合、処理ユニット2025は、パーティクル除去処理において、超音波振動部を用いて内槽2034に超音波振動を印加する。これにより、SC1が持つ化学的作用(エッチング作用)に加えて、超音波振動による物理力をウェハWに与えることができ、パーティクルの除去効率を高めることができる。
その後、処理ユニット2025は、バルブ2203,2213,2223を閉じ、第1処理液排出部2064のバルブ2067を所定時間開いて、処理槽2031からSC1を排出する。
なお、パーティクル除去処理では、DIW供給部2200のバルブ2203およびNH4OH供給部2210のバルブ2213を開くことにより、希アンモニア水を内槽2034に貯留してもよい。
つづいて、基板処理装置1Hでは、リンス処理が行われる(ステップS204)。リンス処理において、処理ユニット2025は、DIW供給部2200のバルブ2203を開いて、処理槽2031の内槽2034にDIWを貯留して、内槽2034内に配置されたロットをDIWに浸漬させる。これにより、ウェハWからSC1が除去される。
その後、処理ユニット2025は、基板昇降機構2033からロット搬送機構2019の基板保持体2022にロットを渡す。
つづいて、基板処理装置1Hでは、乾燥処理が行われる(ステップS205)。乾燥処理において、処理ユニット2023は、ロット搬送機構2019の基板保持体2022からロットを基板昇降機構2028で受け取り、基板昇降機構2028でそのロットを降下させることでロットを処理槽2027に貯留されたIPAに浸漬させる。これにより、ウェハWからDIWが除去される。その後、処理ユニット2023は、基板昇降機構2028を用いてロットを上昇させる。これにより、ウェハWに残存するIPAが揮発して、ウェハWが乾燥する。
その後、処理ユニット2023は、基板昇降機構2028からロット搬送機構2019の基板保持体2022にロットを渡し、ロット搬送機構2019は、ロットをロット載置部2004に載置する。その後、ロット形成部2003は、ロット載置部2004に載置されたロットを基板搬送機構2015でキャリア載置台2014に載置されたキャリア2009へ搬送する。そして、キャリア搬入出部2002は、キャリア載置台2014に載置されたキャリア2009をキャリア搬送機構2011を用いてキャリアステージ2010に搬送する。これにより、基板処理装置1Hにおいて実行される一連の基板処理が終了する。なお、キャリアステージ2010に搬送されたキャリア2009は、外部へ搬出される。
次に、上述した基板処理装置1Hの変形例について図24を参照して説明する。図24は、第9の実施形態における変形例に係る基板処理装置の構成の一例を示す図である。また、図25は、変形例に係る処理ユニット2091においてパーティクル除去処理が行われる処理槽およびその周辺の構成例を示す図である。なお、図24には、主にロット処理部の構成を一部省略して示している。ロット処理部以外の構成については、基板処理装置1Hと同様である。
図24に示すように、変形例に係る基板処理装置1H−1は、ロット処理部2006−1を備える。
ロット処理部2006−1には、除去処理およびその後のリンス処理を行う処理ユニット2090と、パーティクル除去処理およびその後のリンス処理を行う処理ユニット2091とを備える。
処理ユニット2090は、除去処理が行われる処理槽2030と、リンス処理が行われる処理槽2092とを有する。処理槽2092は、処理槽2030,2031と同様、内槽2034および外槽2035を備える。処理槽2092の周辺構成は、図22に示す構成から、NH4OH供給部2210およびH2O2供給部2220を除去した構成と同様である。処理槽2092には、基板昇降機構2093が昇降自在に設けられている。
処理ユニット2091は、パーティクル除去処理が行われる処理槽2094と、リンス処理が行われる処理槽2095とを有する。
図25に示すように、処理槽2094は、内槽2034および外槽2035を備え、内槽2034には、ノズル2054および第1処理液排出部2064が設けられ、外槽2035には、第2処理液排出部2065が設けられる。
処理ユニット2091は、DIW供給部2200、NH4OH供給部2210およびH2O2供給部2220を備える。DIW供給部2200、NH4OH供給部2210およびH2O2供給部2220は、それぞれDIW、NH4OHおよびH2O2を外槽2035に供給する。外槽2035にDIWとNH4OHとを供給することにより、外槽2035内においてDIWとNH4OHとが混合されて希アンモニア水が生成される。また、外槽2035にDIWとNH4OHとH2O2とを供給することにより、外槽2035内においてDIWとNH4OHとH2O2とが混合されてSC1が生成される。
また、処理ユニット2091は、循環部2052を備える。循環部2052の循環流路2055には、ポンプ2056、加熱部2057およびフィルタ2058が設けられる。循環部2052は、ポンプ2056を駆動させることで外槽2035から処理槽2094にSC1または希アンモニア水を循環させる。その際、SC1または希アンモニア水は、加熱部2057によって所定温度に加熱され、フィルタ2058によって不純物が除去される。
処理槽2095およびその周辺構成は、上述した処理槽2092およびその周辺構成と同様である。処理槽2094,2095には、基板昇降機構2096,2097が昇降自在に設けられる。
上記のように構成された基板処理装置1H−1では、上述した除去処理(ステップS201)、リンス処理(ステップS202)、パーティクル除去処理(ステップS203)、リンス処理(ステップS204)が、それぞれ処理槽2030,2092,2094,2095において行われる。これにより、基板処理装置1のようにDIWを排出してSC1または希アンモニア水を貯留する処理やSC1または希アンモニア水を排出してDIWを貯留する処理が不要となるため、これらの処理に要する時間を削減することができる。
また、変形例に係る基板処理装置1H−1では、パーティクル除去処理(ステップS203)において使用するSC1または希アンモニア水を循環させて再利用することとしたため、SC1または希アンモニア水の使用量を抑えることができる。
次に、ロット処理部2006における排気経路の構成について図26および図27を参照して説明する。図26および図27は、ロット処理部2006の排気経路の構成例を示す図である。なお、ここでは、ロット処理部2006の排気経路の構成例について説明するが、変形例に係るロット処理部2006−1についても同様である。
図27に示すように、処理ユニット2025は、チャンバ2110を備える。チャンバ2110は、基板昇降機構2032を収容する第1収容部分2111と、処理槽2030を収容する第2収容部分2112とを備える。第1収容部分2111と第2収容部分2112とは、開口部2113を介して連通する。
第1収容部分2111の天井部には、FFU2114が設けられる。FFU2114は、チャンバ2110内にダウンフローを形成する。
第2収容部分2112には、開口部2113と処理槽2030との間に開閉部2115が設けられる。開閉部2115は、チャンバ2110内において処理槽2030よりも上方に配置され、チャンバ2110内を上下に仕切る開閉可能な蓋体2116と、蓋体2116を駆動する駆動部2117とを備える。駆動部2117によって蓋体2116が閉じられることにより、第2収容部分2112には、蓋体2116よりも下方において処理槽2030を略密閉する空間が形成される。
処理ユニット2025は、チャンバ2110内の空間のうち蓋体2116よりも下方の空間を排気する排気管2101(第1排気管の一例)と、チャンバ2110内の空間のうち蓋体2116よりも上方の空間を排気する排気管2102(第2排気管の一例)とを備える。排気管2101は、一端部が、蓋体2116よりも下方において第2収容部分2112に接続され、他端部が、図27に示す集合配管2103に接続される。また、排気管2102は、一端部が、蓋体2116よりも上方において第2収容部分に接続され、他端部が、排気管2101に接続される。
このように、処理ユニット2025には、第2収容部分2112内の空間のうち、蓋体2116よりも下方の空間、すなわち、除去液が貯留される処理槽2030が配置される空間を排気するための排気管2101に加え、蓋体2116よりも上方の空間を排気するための排気管2102を備える。これにより、仮に、除去液から発生するNOxが蓋体2116よりも上方の空間に漏れ出した場合であっても、かかるNOxを排気管2102で排気することができる。したがって、排気管2102を備えない場合と比較して、除去液から発生するNOxをより確実に集合配管2103に集めることができる。なお、NOx(窒素酸化物)は、窒素の酸化物の総称であり、たとえば一酸化窒素、二酸化窒素、亜酸化窒素、三酸化二窒素などである。
排気管2102は、蓋体2116の近傍に配置されることが好ましい。蓋体2116の近傍に排気管2102を配置することで、蓋体2116から漏れ出たNOxを効率よく排気することができる。
図27に示すように、ロット処理部2006は、2つの処理ユニット2025の各処理槽2030,2031に対応する複数(ここでは、4つ)の排気管2101を備える。なお、処理槽2031には除去液が貯留されないため、処理槽2031に対応する排気管2101には、必ずしも排気管2102が設けられることを要しない。
各排気管2101は、集合配管2103に接続される。集合配管2103には、集合配管2103を流れる排ガスからNOxを除去するためのスクラバ装置2104が設けられる。ここで、スクラバ装置2104の構成例について図28を参照して説明する。図28は、スクラバ装置2104の構成例を示す図である。
図28に示すように、スクラバ装置2104は、筐体2121を備える。筐体2121の上部には流路2122が設けられ、下部には液体の貯留部2123が設けられる。
流路2122には、噴霧ノズル2124とデミスター2125とが設けられる。噴霧ノズル2124は、DIW供給路2126に接続される。DIW供給路2126には、DIW供給源2127と、DIW供給路2126を開閉するバルブ2128とが設けられる。DIW供給源2127から供給されるDIWは、DIW供給路2126を介して噴霧ノズル2124から流路2122へ噴霧される。デミスター2125は、噴霧ノズル2124の下方に設けられ、排ガスからミストを除去する。排ガスから除去されたミストは、下方へ落下して貯留部2123に貯留される。貯留部2123には、ドレン管2129が接続され、貯留部2123に貯留された液体は、ドレン管2129から外部へ排出される。
スクラバ装置2104は上記のように構成されており、上流側の集合配管2103から流路2122に流入した排ガスは、噴霧ノズル2124から噴霧されるDIWと接触することによってNOxが除去され、デミスター2125を通過することによって水分が除去される。そして、NOxおよび水分が除去された排ガスが流路2122から下流側の集合配管2103へ流出する。
このように、集合配管2103にスクラバ装置2104を設けることで、集合配管2103を流通する排ガスからNOxを除去することができる。
次に、仮にNOxが基板処理装置1Hの外部に流出した場合の対応について図29および図30を参照して説明する。図29は、基板処理装置1Hの外観構成例を示す図である。また、図30は、異常対応処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、基板処理装置1Hを例に挙げて説明するが、変形例に係る基板処理装置1H−1についても同様である。
図29に示すように、基板処理装置1Hは、上述したキャリア搬入出部2002のキャリア搬送機構2011やロット形成部2003の基板搬送機構2015、ロット処理部2006の処理ユニット2025等を収容する筐体2130を備える。筐体2130の外側面には、複数(ここでは、2つ)のNOx検出部2131と、表示灯2132とが設けられる。NOx検出部2131は、筐体2130の外部におけるNOx濃度を検出し、検出結果を制御部2007へ出力する。表示灯2132は、たとえばLED(Light Emitting Diode)ランプである。
図30に示すように、基板処理装置1Hの制御部2007は、NOx検出部2131によって検出されたNOx濃度が閾値を超えたか否かを判定する(ステップS301)。NOx検出部2131によって検出されたNOx濃度が閾値を超えていない場合(ステップS301,No)、制御部2007は、NOx濃度が閾値を超えるまで、ステップS301の処理を繰り返す。
一方、ステップS301において、NOx検出部2131によって検出されたNOx濃度が閾値を超えたと判定した場合(ステップS301,Yes)、制御部2007は、報知処理を行う(ステップS302)。報知処理において、制御部2007は、たとえば表示灯2132を点灯させる。あるいは、制御部2007は、基板処理装置1Hが備える図示しないスピーカから警告音を出力してもよい。これにより、作業者等にNOxの漏洩を報知することができる。
つづいて、制御部2007は、排液処理を行う(ステップS303)。排液処理において、制御部2007は、第1処理液排出部2064のバルブ2067を所定時間開放することにより、処理槽2030に貯留された除去液を排出する。また、制御部2007は、DIW供給処理を行う(ステップS304)。DIW供給処理において、制御部2007は、硝酸供給部2041のバルブ2048および硫酸供給部2042のバルブ2051を閉じ、DIW供給部2040のバルブ2045を所定時間開放することにより、処理槽2030にDIWを貯留する。このように、処理槽2030から除去液を排出してDIWに置換することで、NOxの更なる発生を抑制することができる。
上述してきたように、第9の実施形態に係る基板処理装置1H,1H−1の処理ユニット2025,2090は、除去液を貯留する処理槽2030と、処理槽2030の上方に配置され、ウェハWを保持して昇降させる基板昇降機構2032とを備える。そして、基板処理装置1H,1H−1の制御部2007は、処理槽2030に除去液を貯留した後、基板昇降機構2032を用いてウェハWを処理槽2030に貯留された除去液に浸漬させることとした。
したがって、第9の実施形態に係る基板処理装置1H,1H−1によれば、除去液を置換し続ける場合と比較して、ボロン単膜112の除去効率を高めることができる。また、除去液の使用量を削減することができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。