以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。なお、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
<第1実施形態>
最初に、本発明の第1実施形態の画像形成装置について、図1を用いてその構造の概略を説明しつつ、画像出力動作を説明する。図1は画像形成装置の部分垂直断面正面図の一例である。なお、図1の矢印付き二点鎖線はシートの搬送経路及び搬送方向を示す。また、図1の上下方向、左右方向及び紙面奥行き方向が画像形成装置の上下方向、左右方向及び前後方向である。
画像形成装置100は、図1に示すように所謂タンデム型のカラー複写機であり、原稿の画像を読み取る画像読取部102と、読み取った画像を用紙等のシートに印刷する印刷部103と、印刷条件の入力や稼働状況の表示を行うための操作部104と、主制御部105とを備える。
画像読取部102は不図示のプラテンガラスの上面に載置された原稿の画像を不図示のスキャナーを移動して読み取る公知のものである。原稿の画像は赤(R)、緑(G)、青(B)の三色に色分解され、不図示のCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーで電気信号に変換される。これにより、画像読取部102は赤(R)、緑(G)、青(B)の色別の画像データを得る。
画像読取部102が得た色別の画像データは主制御部105において各種処理が行われ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各再現色の画像データに変換されて主制御部105の不図示のメモリーに格納される。メモリーに格納された再現色別の画像データは位置ずれ補正のための処理を受けた後、像担持体である感光体ドラム121に対する光走査を行うためにシートの搬送と同期して走査ラインごとに読み出される。
印刷部103は電子写真方式によって画像を形成し、その画像をシートに転写する。印刷部103は中間転写体を無端状のベルトとして形成した中間転写ベルト111を備える。中間転写ベルト111は駆動ローラ112及び従動ローラ113を含む複数のローラに巻き掛けられる。中間転写ベルト111は駆動ローラ112によって図1における反時計回りに回転移動する。
駆動ローラ112は中間転写ベルト111を挟んで対向する二次転写ローラ115を圧して接触する。従動ローラ113の箇所では、中間転写ベルト111を挟んで従動ローラ113に対向するように設けられた中間転写クリーニング部116が中間転写ベルト111の外周面に接触する。中間転写クリーニング部116は中間転写ベルト111の外周面に形成されたトナー像がシートに転写された後、中間転写ベルト111の外周面に残留したトナーなどの付着物を除去してクリーニングする。
中間転写ベルト111の下方にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各再現色に対応する画像形成部120Y、120M、120C、120Kが設けられる。なおこの説明において、特に限定する必要がある場合を除き、色を表す「Y」、「M」、「C」、「K」の識別記号の記載を省略して、例えば「画像形成部120」と総称することがある。4台の画像形成部120は中間転写ベルト111の回転方向に沿って、回転方向の上流側から下流側に向けて一列にして配置される。4台の画像形成部120は構成がすべて同じであり、図1における時計回りに回転する感光体ドラム121を中心としてその周囲に帯電部、露光部(走査光学装置123)、現像部、ドラムクリーニング部及び一次転写ローラを備える。
画像形成部120の下方には露光装置である走査光学装置123が配置される。走査光学装置123は4台の画像形成部120に対して1台で対応し、4個の感光体ドラム121各々に個別に対応した不図示の4つの半導体レーザ等の光源を有する。走査光学装置123は4つの半導体レーザを各再現色の画像階調データに応じて変調して、各再現色に対応するレーザ光を4個の感光体ドラム121に対して個別に出射する。
走査光学装置123の下方にはシート供給装置151が設けられる。シート供給装置151はその内部に複数のシートSを積載して収容し、シートSをその最上層から順に1枚ずつシート搬送路Qに送り出す。シート供給装置151からシート搬送路Qに送り出されたシートSはレジストローラ対154の箇所に到達する。そして、レジストローラ対154がシートSの斜め送りを矯正(スキュー補正)しつつ中間転写ベルト111の回転と同期をとって、中間転写ベルト111と二次転写ローラ115との接触部(二次転写ニップ部)に向けてシートSを送り出す。
画像形成部120では走査光学装置123から照射されたレーザ光によって感光体ドラム121の表面に静電潜像が形成され、その静電潜像が現像部によってトナー像として可視像化される。感光体ドラム121の表面に形成されたトナー像は感光体ドラム121が中間転写ベルト111を挟んで一次転写ローラと対向する箇所において中間転写ベルト111の外周面に一次転写される。そして、中間転写ベルト111の回転とともに所定のタイミングで各画像形成部120のトナー像が順次中間転写ベルト111に転写されることにより、中間転写ベルト111の外周面にはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたカラートナー像が形成される。
中間転写ベルト111の外周面に一次転写されたカラートナー像はレジストローラ対154により同期をとって送られてきたシートSに、中間転写ベルト111と二次転写ローラ115とが接触して形成される二次転写ニップ部にて転写される。
二次転写ニップ部のシート搬送方向の下流側には定着部155が備えられる。二次転写ニップ部にて未定着トナー像が転写されたシートSは定着部155へと送られ、トナー像が加熱、加圧されてシートSに定着される。定着部155を通過したシートSは中間転写ベルト111の上方に設けられたシート排出口156を通して、シート排出部157に排出される。
操作部104は画像読取部102の正面側に設けられる。操作部104は、例えばユーザーによる印刷に使用するシートSの種類やサイズ、拡大縮小、両面印刷の有無といった印刷条件などの設定の入力や、ファクシミリ送信におけるファックス番号や送信者名などの設定の入力を受け付ける。また、操作部104は、例えば装置の状態や注意事項、エラーメッセージなどを表示部104wに表示することによって、それらをユーザーに対して報知するための報知部としての役割も果たす。
また、画像形成装置100にはその全体の動作制御のため、不図示のCPUや画像処理部、その他の図示しない電子部品で構成された主制御部105が設けられる。主制御部105は中央演算処理装置であるCPUと画像処理部とを利用し、メモリーに記憶、入力されたプログラム、データに基づき画像読取部102や印刷部103などといった構成要素を制御して一連の画像形成動作、印刷動作を実現する。
そして、画像形成装置100はシート処理装置1を備える。シート処理装置1は、図1に示すように画像形成装置100のシート排出部157に設けられ、本体部101に対して着脱可能に連結される。シート処理装置1には定着部155を通過したシートSがシート排出口156を経て到達する。
シート処理装置1はトナー像の定着が完了したシートSに対して、例えば1回の印刷ジョブで同じ文書を複数部数印刷する場合に、部単位ごとに束ねて排出することができる。また、シート処理装置1は、例えばシート束の綴じ処理(圧着処理、ステープル処理)やパンチ処理、二つ折り処理などの後処理を施すことができる。なお、シート処理装置は、画像形成装置100を正面側から見た本体部101の左方の、図1における破線の箇所に設置することも可能である。
続いて、画像形成装置100のシート処理装置1の概略構成について、図2を用いて説明する。図2はシート処理装置1の垂直断面正面図である。
シート処理装置1は、図2に示すようにシート搬入口2、シート排出路3、プッシャー4、中間トレイ5、排出トレイ6及び綴じ装置10を備える。
シート搬入口2は画像形成装置100のシート排出口156と対向する側面に設けられ、開口する。定着部155を通過したシートSはシート搬入口2を通ってシート処理装置1の内部に搬入される。
シート排出路3はシート搬入口2から中間トレイ5の上方まで延びる。プッシャー4はシート排出路3のシート搬送方向の下流側に配置される。中間トレイ5はシート排出路3の下流部の下方及びプッシャー4の下方に配置される。シート排出路3を搬送されるシートSはプッシャー4に接触して押し下げられ、中間トレイ5の上面に自由落下する。排出トレイ6は中間トレイ5のシート搬送方向の下流側に配置される。
中間トレイ5及び排出トレイ6はシート載置面がシート搬送方向の下流側に向かうに従って上昇する傾斜を有する。ユーザーは排出トレイ6に排出されたシートSを取り出すことができる。
綴じ装置10は中間トレイ5のシート搬送方向の上流側に配置される。綴じ装置10は中間トレイ5のシート搬送方向の上流側に配置される後処理装置の一例である。シート処理装置1は綴じ装置10を用いて、中間トレイ5に搬送されたシートSの束に対して圧着処理を施し、シート束を綴じることができる。
また、中間トレイ5には不図示の搬送機構が設けられる。シート処理装置1は中間トレイ5に載置されて後処理が施されたシートSに対して、その搬送機構を用いて中間トレイ5のシート搬送方向の下流側に設けられた排出トレイ6にシートSを搬送する。
続いて、シート処理装置1の中間トレイ5及び綴じ装置10の詳細な構成について、図3〜図8を用いて説明する。図3及び図4はシート処理装置1の部分斜視図及び部分上面図である。図5、図6、図7及び図8は綴じ装置10の斜視図、正面図、上面図及び側面図である。
中間トレイ5は、図3及び図4に示すようにその上面にシート載置面5aを備える。シート載置面5aは前述のようにシート搬送方向の下流に向かうに従って上昇する傾斜を有する。中間トレイ5はシート排出路3から自由落下するシートSをシート載置面5aで受ける。
中間トレイ5はそのシート搬送方向の上流端にエンドフェンス5bを備える。エンドフェンス5bはシート搬送方向と交差するシート幅方向に沿って2箇所に設けられる。エンドフェンス5bはシート載置面5aの傾斜に沿ってシート載置面5aをその上流側に滑るシートSの搬送方向上流側の端面(後端)に接触する。これにより、エンドフェンス5bはシートSの搬送方向上流端の位置を規制して揃える。
中間トレイ5はそのシート搬送方向と交差するシート幅方向の両端部付近、すなわちシートSに対する正面側及び背面側に、シート束の整合部材であるサイドフェンス5cを備える。サイドフェンス5cはシート幅方向に移動可能に設けられ、シート束に対して正面の外側から、及び背面の外側から接触する。これにより、サイドフェンス5cはシートSの幅方向の位置を規制して揃える。
綴じ装置10は、図3及び図4に示すように中間トレイ5のシート搬送方向の上流端であって、シート幅方向の背面側端部付近に設けられる。綴じ装置10は平面視略矩形の略直方体形状で構成され、例えばシート搬送方向に対して45°の角度で傾けて配置される。これにより、綴じ装置10は平面視矩形のシート束の角部に、シート搬送方向に対して45°の角度で傾けた状態で圧着綴じ処理を施して、シート束を綴じる。
綴じ装置10は、図5〜図8に示すようにその筐体10aに、開口部11、一対の綴じ部材12A、12B、カム13及びモーター14を備える(図8に図示)。
開口部11は綴じ装置10の筐体10aの、シート束に対向する正面に配置される。開口部11は中間トレイ5のシート載置面5aに載置されたシート束と略同じ高さに設けられる。開口部11は筐体10aを正面から見て、シート束の表裏と略平行な方向に延びる矩形に形成される。圧着綴じ処理を施す場合、開口部11から綴じ装置10の内部にシート束の角部が挿入される。
一対の綴じ部材12A、12Bは、図8に示すように開口部11よりも筐体10aの内側に設けられる。一対の綴じ部材12A、12Bは支軸12cを介して連結された所謂鋏形状で構成される。支軸12cはシート載置面5aに載置されたシート束の表裏と略平行な方向に延びる。一対の綴じ部材12A、12Bは支軸12cの軸線回りに、シート束の表裏と交差する上下方向に揺動する。
鋏形状を成す一対の綴じ部材12A、12Bの作用点に相当する箇所に、一対の綴じ部材12A、12Bは対向する一対の圧着歯15A、15B各々を個別に有する。一対の圧着歯15A、15Bは開口部11に近接して設けられる。一対の圧着歯15A、15Bは筐体10aを正面から見て、シート束の表裏と略平行な方向に延びる矩形を成す開口部11の中央部の奥側に配置される。綴じ部材12A、12Bは開口部11から筐体10aの内側に挿入されるシート束の角部を、一対の圧着歯15A、15Bで挟むことでシート束を綴じる。
カム13は鋏形状を成す一対の綴じ部材12A、12Bの力点に相当する箇所であって、正面でシート束に対向する筐体10aの背面側に設けられる。カム13はその回転軸13aが一対の綴じ部材12A、12Bの支軸12cと平行に延びる。カム13は一対の綴じ部材12A、12Bの間に挟まれて配置される。そして、一対の綴じ部材12A、12Bには一対の圧着歯15A、15Bによる綴じ領域を開放する方向に付勢するばね12dが設けられるので、カム13の外周面は常時、綴じ部材12A、12B各々に接触する。
モーター14は綴じ部材12A、12Bを変位させる駆動部であって、カム13に近接して配置される。モーター14はカム13の回転軸13aを回転させる。綴じ装置10はモーター14を駆動することで、カム13を介して鋏形状を成す一対の綴じ部材12A、12Bを揺動させる。これにより、一対の圧着歯15A、15Bがシート束を綴じる綴じ位置と、その綴じ位置から退避した退避位置との間で移動する。なお、図8は一対の圧着歯15A、15Bが退避位置にある状態を描画したものである。
また、綴じ装置10は、図3〜図8に示すようにシート束の規制装置20を支持する。規制装置20は綴じ装置10の開口部11に近接して配置される。規制装置20は一対の規制部材である2本のワイヤー21A、21B、支持部材22、ばね23及びスライド部材24を備える。なお、図7及び図8では、ばね23の描画を省略した。
2本のワイヤー21A、21Bは綴じ装置10の正面であって、開口部11よりも前方のシート束側に設けられる。2本のワイヤー21A、21Bは綴じ部材12A、12Bに近接して配置される。2本のワイヤー21A、21Bはシート束を隔てて、シート束の上下に略平行に架設される。2本のワイヤー21A、21Bは一端が支持部材22に支持され、他端がスライド部材24に支持される。
2本のワイヤー21A、21Bはシート束を隔てて対向する一対の規制片25A、25B各々を個別に有する。一対の規制片25A、25Bは開口部11に近接して設けられる。一対の規制片25A、25Bは筐体10aを正面から見て、シート束の表裏と略平行な方向に延びる矩形を成す開口部11の中央部の手前側に配置される。一対の規制片25A、25Bは各々、上下方向に延びる略棒状に構成される。
一対の規制片25A、25Bは2本のワイヤー21A、21Bが個別に貫通し、ワイヤー21A、21Bに連動する。2本のワイヤー21A、21Bはシート束の表面に対して交差する方向に一対の規制片25A、25Bを移動させる。この構成によれば、一対の規制片25A、25Bが従来技術のように所定の軸線回りに回転してシート束に接近するわけではないので、シート束の位置ずれを抑制することができる。
一対の規制片25A、25Bは開口部11から筐体10aの内側に挿入されるシート束の角部に対して上下方向から接近する。これにより、2本のワイヤー21A、21Bは圧着歯15A、15Bで綴じたシート束の、圧着歯15A、15Bに対して接近、離隔する方向への変位を一対の規制片25A、25Bで規制する。
一対の規制片25A、25Bは互いが対向する部分、すなわち上側の規制片25Aの下端部及び下側の規制片25Bの上端部が、相手方に向かって突出する形態を有する。これにより、一対の規制片25A、25Bはその規制位置においてシート束と接触する場合に、シート束と線接触する。この構成によれば、一対の規制片25A、25Bによって広範囲にわたって安定的に、シート束の変位を規制することができる。
支持部材22は綴じ装置10の正面に固定される。支持部材22はその正面側であって、シート束が載置された側で2本のワイヤー21A、21Bを支持する。支持部材22は開口部11に隣接する領域が正面視円形で構成され、開口部11の位置に窓部22aを有する。窓部22aは開口部11と略同じ形状、略同じ大きさで構成される。シート束の角部は窓部22a、及び開口部11を通って、筐体10aの内側に挿入される。
支持部材22は支持具22bを有する。支持具22bは支持部材22の円形領域の外縁部に対してシート搬送方向の上流側に突出する。支持具22bは2本のワイヤー21A、21B各々の一端を移動不能に支持する。なお、支持具22bはワイヤー21A、21Bの支持位置をシート束の表裏と略平行な方向に調節可能である。
支持部材22は窓部22aの中央部の上側及び下側に、開口部11と直交して上下方向に延びるレール部22cを有する。上下のレール部22c各々には一対の規制片25A、25Bが個別に係合する。規制片25A、25Bはレール部22cが延びる方向に沿って、上下方向に移動可能である。これにより、一対の規制片25A、25Bは互いが開口部11に接近してシート束の変位を規制する規制位置と、互いが開口部11から上下に離隔して規制位置から退避した退避位置との間で移動可能である。
ばね23は支持部材22に取り付けられる。ばね23は開口部11の上側及び下側の2箇所に設けられる。ばね23は例えば引張コイルばねで構成される。一方のばね23は一端が支持部材22の上縁部に接続され、他端が上側の規制片25Aに接続される。他方のばね23は一端が支持部材22の下縁部に接続され、他端が下側の規制片25Bに接続される。ばね23は規制片25A、25Bのレール部22cに沿う上下方向の移動に伴って、上下方向に伸縮する。これにより、ばね23は一対の規制片25A、25Bを退避位置に向けて付勢する。
スライド部材24は支持部材22の円形領域を隔てて支持具22bが配置された領域の反対側に設けられる。支持具22bが支持する2本のワイヤー21A、21B各々の一端に対して、スライド部材24は2本のワイヤー21A、21B各々の他端を支持する。スライド部材24は不図示のガイド部に沿って、シート束の表裏と略平行な方向に移動可能である。すなわち、スライド部材24は2本のワイヤー21A、21Bの端部をシート束の表面と略平行に移動させる。これにより、スライド部材24は2本のワイヤー21A、21B各々のテンションを変更することができる。スライド部材24は2本のワイヤー21A、21B各々のテンションを高める方向、すなわち支持部材22から離隔する方向に移動すると、ばね23の付勢力に抗して、一対の規制片25A、25Bを規制位置に向けて移動させることができる。
スライド部材24は接触部材24aを備える。接触部材24aはスライド部材24の、シート束が載置された側の端部に設けられる。接触部材24aは上下方向に延びる支軸回りに回転可能な車輪で構成される。接触部材24aにはシート束に対して背面側に設けられたサイドフェンス5cが接触する。そして、スライド部材24はこのサイドフェンス5cに連動する。このサイドフェンス5cはスライド部材24を介して2本のワイヤー21A、21Bを変位させるので、2本のワイヤー21A、21Bの駆動部となる。
続いて、シート処理装置1によるシート束の圧着綴じ処理について、図2〜図8に加えて図9〜図12を用いて説明する。図9はシート処理装置1の、綴じ装置10によるシート束の綴じ状態を示す部分上面図である。図10、図11及び図12は綴じ装置10の、シート束の綴じ状態を示す斜視図、正面図及び上面図である。なお、図10〜図12では、シートSの描画を省略した。図12では、ばね23の描画を省略した。
前述のように、シート排出路3を搬送されるシートSはプッシャー4に接触して押し下げられ、中間トレイ5の上面に自由落下する(図2参照)。そして、所定枚数のシートSが中間トレイ5のシート載置面5aに積載されてシート束が形成される。シート束はエンドフェンス5bによってその搬送方向上流端の位置が規制され、揃えられる。続いて、サイドフェンス5cがシート束の正面及び背面に接触し、シート束はその幅方向の位置が規制され、揃えられる。
シート束は、図3及び図4に示すように中間トレイ5のシート載置面5a上で搬送方向及び幅方向の位置が規制された状態で、背面側の角部が綴じ装置10の開口部11に挿入される。このとき、シート束の背面側のサイドフェンス5cはスライド部材24の接触部材24aに対して接触していない、若しくは僅かに2本のワイヤー21A、21Bに負荷がかかる程度に接触する。
2本のワイヤー21A、21Bには、図5〜図7に示すように殆どテンションが発生しない。これにより、ばね23が一対の規制片25A、25Bを退避位置に移動させる。なおこのとき、図6に示すように、規制片25A、25Bの退避位置における一対の規制片25A、25B各々の離間距離D1が、圧着歯15A、15Bの退避位置における一対の圧着歯15A、15B各々の離間距離D2よりも長い。この構成によれば、シート束の綴じ領域に対してシート束を挿入するときに、シート束の綴じ領域に対するシート束の挿入の障害となる要因を排除することが可能になる。
続いて、シート束の背面側のサイドフェンス5cが、図9に示すようにシート束から離隔してさらに背面側に移動する。これにより、スライド部材24がサイドフェンス5cに接触して連動する。スライド部材24は支持部材22から離隔する方向に移動する。
これにより、スライド部材24は2本のワイヤー21A、21B各々のテンションを高め、ばね23の付勢力に抗して、一対の規制片25A、25Bを規制位置に向けて移動させる。一対の規制片25A、25Bはシート束を挟んで接触、或いは近接する。すなわち、2本のワイヤー21A、21Bが圧着歯15A、15Bに対して接近、離隔する方向へのシート束の変位を一対の規制片25A、25Bで規制する。
続いて、綴じ機10がシート束に対する圧着綴じ処理を実行する。綴じ装置10はモーター14を駆動することで、カム13を介して鋏形状を成す一対の綴じ部材12A、12Bを揺動させる。一対の圧着歯15A、15Bはシート束を綴じる綴じ位置に対して個別に移動する。
このようにして、シート処理装置1は、一対の圧着歯15A、15Bと、一対の規制片25A、25Bとの各々を、綴じ位置或いは規制位置まで移動させる場合に、一対の規制片25A、25Bを規制位置まで移動させた後、一対の圧着歯15A、15Bを綴じ位置まで移動させる。この構成によれば、圧着歯15A、15Bに対して接近、離隔する方向へのシート束の変位を規制した後、圧着処理が開始される。したがって、綴じ装置10の駆動に係る振動がシート束に伝達してシート束が位置ずれすることを防止することが可能になる。
シート束の圧着綴じ処理の後、綴じ装置10はモーター14を駆動し、一対の圧着歯15A、15Bを綴じ位置から退避した退避位置に個別に移動させる。一対の圧着歯15A、15B各々が綴じ位置及び退避位置に対して個別に移動するので、一対の圧着歯15A、15B各々に対してシートSの付着を防止することが可能になる。
続いて、シート束の背面側のサイドフェンス5cが、シート束に接近して正面側に移動する。これにより、スライド部材24が支持する2本のワイヤー21A、21B各々のテンションが低下し、ばね23が一対の規制片25A、25Bを退避位置に向けて移動させる。一対の規制片25A、25B各々が規制位置及び退避位置に対して個別に移動するので、一対の圧着歯15A、15B各々に対してシートSの付着を防止することが可能になる。
ここで、シート処理装置1は、一対の圧着歯15A、15Bと、一対の規制片25A、25Bとの各々を、互いの退避位置まで移動させる場合に、一対の圧着歯15A、15B各々が所定の離間距離に達するまで、一対の規制片25A、25Bを規制位置で保持する。この構成によれば、圧着処理の後、一対の圧着歯15A、15Bを離間させるときに、圧着歯15A、15B各々が所定の離間距離に達するまで、一対の規制片25A、25Bが規制位置で保持される。すなわち、圧着歯15A、15Bが互いに十分に離間するまで、圧着歯15A、15Bに対して接近、離隔する方向へのシート束の変位を規制することができる。したがって、圧着歯15A、15Bに対するシートSの付着を防止する作用を効果的に向上させることが可能になる。
なお、綴じ位置にある一対の圧着歯15A、15Bを圧着歯15A、15Bの退避位置まで移動させた後、規制位置にある一対の規制片25A、25Bを規制片25A、25Bの退避位置に向けて移動させることが好ましい。この構成によれば、圧着歯15A、15Bが退避位置に移動するまで、圧着歯15A、15Bに対して接近、離隔する方向へのシート束の変位を規制することができる。したがって、圧着歯15A、15Bに対するシートSの付着を防止する作用を効果的に向上させることが可能になる。
また、上記第1実施形態では、2本のワイヤー21A、21Bが一対の綴じ部材12A、12Bに対して独立して動作可能に設けられる。この構成によれば、一対の規制片25A、25B各々の離間距離D1が一対の圧着歯15A、15B各々の離間距離D2よりも長い形態を容易に実現することができる。さらに、綴じ部材12A、12Bの駆動部(モーター14)と、ワイヤー21A、21Bの駆動部(サイドフェンス5c)とが異なる。この構成によれば、圧着歯15A、15Bがその退避位置まで移動した後に、規制片25A、25Bがその退避位置まで移動するタイミングを容易に実現することができる。
また、上記第1実施形態では、一対の圧着歯15A、15Bの移動方向と交差する方向に、2本のワイヤー21A、21Bの一部がスライド部材24を介して変位する。この構成によれば、サイドフェンス5cを2本のワイヤー21A、21Bの駆動部として利用することができる。さらに、スライド部材24がサイドフェンス5cに接触して連動し、2本のワイヤー21A、21Bを介して一対の規制片25A、25Bが規制位置に移動する。この構成によれば、2本のワイヤー21A、21Bの駆動部を別途用意する必要が無い。
また、上記第1実施形態では、規制装置20は、圧着歯15A、15Bに対して接近、離隔する方向へのシート束の変位を一対の規制片25A、25Bで規制する一対の規制部材がシート束を隔てて略平行に架設された2本のワイヤー21A、21Bで構成されるとともに、2本のワイヤー21A、21Bの一端を移動不能に支持するする支持具22bと、2本のワイヤー21A、21Bの他端をシート束の表面と略平行に移動させて一対の規制片25A、25Bを規制位置に向けて移動させるスライド部材24と、一対の規制片25A、25Bを退避位置に向けて付勢するばね23とを備える。この構成によれば、フレキシブルに形態を変えるワイヤー21A、21Bの特徴を生かして、一対の規制片25A、25Bを好適な規制位置、好適な退避位置に移動させることが可能になる。
また、上記第1実施形態では、一対の規制片25A、25Bが一対の圧着歯15A、15Bに対するシート束の挿入方向の上流側に配置される。この構成によれば、2本のワイヤー21A、21Bが一対の綴じ部材12A、12Bの動作を妨げないようにすることができる。
また、上記第1実施形態では、支持具22bによる2本のワイヤー21A、21Bの支持位置をシート束の表裏と略平行な方向に調節することで、一対の規制片25A、25B各々の離間距離が調節可能である。この構成によれば、2本のワイヤー21A、21Bのテンションを好適な状態に設定することが可能である。したがって、一対の規制片25A、25B各々の離間距離D1と、一対の圧着歯15A、15B各々の離間距離D2とを好適に定めることができる。
また、上記第1実施形態では、2本のワイヤー21A、21Bと、一対の綴じ部材12A、12Bとがユニット化される。この構成によれば、シートSのサイズが変更された場合に、2本のワイヤー21A、21Bと、一対の綴じ部材12A、12Bとを一緒に移動させ、適切な位置に配置することができる。
<第1実施形態の変形例1>
次に、第1実施形態のシート処理装置1の変形例1について、図13を用いて説明する。図13はシート処理装置1の変形例1の部分拡大上面図である。
第1実施形態のシート処理装置1の変形例1は綴じ装置10と、規制装置20とが互いに独立して移動可能に設けられる。例えば図13に示すように、規制装置20がシート束の変位を一対の規制片25A、25Bで規制した状態で、綴じ装置10は規制装置20から離隔する方向に移動することができる。
この構成によれば、綴じ装置10が2点以上の複数箇所を綴じる間、規制装置20によってシート束の変位を規制することができる。したがって、複数箇所を綴じる場合に、シート束の位置ずれを防止することが可能になる。
<第1実施形態の変形例2>
次に、第1実施形態のシート処理装置1の変形例2について、図14を用いて説明する。図14はシート処理装置1の変形例2の部分上面図である。
第1実施形態のシート処理装置1の変形例2は、図14に示すように綴じ装置10に加えて、ステープル装置30を備える。
ステープル装置30は中間トレイ5のシート搬送方向の上流側であって、シート幅方向の背面側端部付近に設けられる。ステープル装置30は平面視略矩形の略直方体形状で構成され、例えばシート搬送方向に対して45°の角度で傾けて配置される。これにより、ステープル装置30は平面視矩形のシート束の角部に、シート搬送方向に対して45°の角度で傾けた状態で金属針を用いたステープル処理を施して、シート束を綴じる。
シート処理装置1でステープル装置30を用いてステープル綴じ処理を実行する場合、図14に示すように綴じ装置10は中間トレイ5のシート載置面5aに対して背面側に退避する。この構成によれば、シート処理装置1で綴じ装置10に加えて、ステープル装置30も利用することが可能である。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態のシート処理装置について、図15〜図19を用いて説明する。図15、図16及び図17はシート処理装置の綴じ装置の斜視図、正面図及び上面図である。図18及び図19はシート処理装置の綴じ装置の、シート束の綴じ状態を示す正面図及び上面図である。なお、この実施形態の基本的な構成は先に説明した第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と共通する構成要素には前と同じ名称、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
第2実施形態のシート処理装置は、図15〜図17に示す綴じ装置10を備える。綴じ装置10はシート束の規制装置40を支持する。規制装置40は綴じ装置10の開口部11に近接して配置される。規制装置40は、一対の規制部材である2本のリンク部材51A、51Bを含むリンク機構50、支持部材42、ばね43及びスライド部材44を備える。
リンク機構50は2本のリンク部材51A、51Bと、2本の連結リンク52A、52Bとを備える。2本のリンク部材51A、51Bは綴じ装置10の正面であって、開口部11よりも前方のシート束側に設けられる。2本のリンク部材51A、51Bは綴じ部材12A、12Bに近接して配置される。2本のリンク部材51A、51Bはシート束を隔てて、シート束の上下に略平行に架設される。
2本のリンク部材51A、51Bは正面視L字形状で構成される。上側のリンク部材51Aはシート束の表裏と略平行な方向に延びる平行部51cと、上方に向かって屈曲する屈曲部51dとを有する。下側のリンク部材51Bはシート束の表裏と略平行な方向に延びる平行部51eと、下方に向かって屈曲する屈曲部51fとを有する。2本のリンク部材51A、51Bは屈曲部51d、51f側の一端が支持部材42に支持され、水平部51c、51e側の他端が2本の連結リンク52A、52Bを介してスライド部材44に支持される。
2本のリンク部材51A、51Bはシート束を隔てて対向する一対の規制片55A、55B各々を個別に有する。一対の規制片55A、55Bは開口部11に近接して設けられる。一対の規制片55A、55Bは筐体10aを正面から見て、シート束の表裏と略平行な方向に延びる矩形を成す開口部11の手前側に位置する。一対の規制片55A、55Bは各々、上側のリンク部材51Aの平行部51cの下縁部、また下側のリンク部材51Bの平行部51eの上縁部に沿ってシート束の表裏と略平行な方向に延びる略板状に構成される。
一対の規制片55A、55Bはリンク部材51A、51Bに連動する。一対の規制片55A、55Bは開口部11から筐体10aの内側に挿入されるシート束の角部に対して、上下方向から近接、接触する。これにより、2本のリンク部材51A、51Bは圧着歯15A、15Bに対して接近、離隔する方向へのシート束の変位を一対の規制片55A、55Bで規制する。
支持部材42は綴じ装置10の本体部に対して、シート搬送方向の上流側に併設される。支持部材42はその正面側であってシート束が載置された側に、開口部11と直交して上下方向に延びるレール部42cを有する。レール部42cには2本のリンク部材51A、51B各々の屈曲部51d、51fが個別に係合する。上下方向に延びる屈曲部51d、51fは各々の上部及び下部の2箇所でレール部42cに係合する。
2本のリンク部材51A、51Bはレール部42cが延びる方向に沿って上下方向に移動可能でああり、互いの平行部51c、51e、すなわち規制片55A、55Bが平行な状態を維持したまま上下方向に移動する。これにより、一対の規制片55A、55Bは互いが開口部11に接近してシート束の変位を規制する規制位置と、互いが開口部11から上下に離隔して規制位置から退避した退避位置との間で移動可能である。
ばね43は支持部材42に取り付けられる。ばね43はレール部42cの上側及び下側の2箇所に設けられる。ばね43は例えば引張コイルばねで構成される。一方のばね43は一端がレール部42cの上端よりも上方において支持部材42に接続され、他端が上側のリンク部材51Aの屈曲部51dに接続される。他方のばね43は一端がレール部42cの下端よりも下方において支持部材42に接続され、他端が下側のリンク部材51Bの屈曲部51fに接続される。ばね43は屈曲部51d、51fのレール部42cに沿う上下方向の移動に伴って、上下方向に伸縮する。これにより、ばね43は一対の規制片55A、55Bを退避位置に向けて付勢する。
スライド部材44は開口部11が設けられた領域を隔てて支持部材42が配置された領域の反対側に設けられる。スライド部材44は上下方向に関して開口部11と同じ高さの1箇所に2本の連結リンク52A、52Bの一端がまとめて接続される。2本の連結リンク52A、52Bは互いに同じ形状、同じ長さを有し、他端が2本のリンク部材51A、51Bの平行部51c、51eの端部に接続される。
そして、シート束の背面側のサイドフェンス5cがスライド部材44の接触部材44aに対して接触していない、若しくは僅かに接触する場合、2本のリンク部材51A、51Bにはばね43の付勢力に抗する力が殆ど作用しない。これにより、ばね43が一対の規制片55A、55Bを退避位置に移動させる。
続いて、スライド部材44がシート束の背面側のサイドフェンス5cに接触して連動すると、スライド部材44は支持部材42から離隔する方向に移動する。これにより、スライド部材44は2本の連結リンク52A、52Bを開口部11から離隔する方向に引っ張る。さらに、スライド部材44は2本の連結リンク52A、52Bを介し、ばね43の付勢力に抗して、上側のリンク部材51Aを下方に、下側のリンク部材51Bを上方に移動させる。一対の規制片55A、55Bはシート束を挟んで接触、或いは近接する。すなわち、2本のリンク部材51A、51Bが圧着歯15A、15Bに対して接近、離隔する方向へのシート束の変位を一対の規制片55A、55Bで規制する。
シート束の圧着綴じ処理の後、シート束の背面側のサイドフェンス5cが、シート束に接近して正面側に移動する。これにより、スライド部材44が連結リンク52A、52Bを開口部11から離隔する方向に引っ張る力が低下し、ばね43が上側のリンク部材51Aを上方に、下側のリンク部材51Bを下方に移動させる。すなわち、ばね43が一対の規制片55A、55Bを退避位置に向けて移動させる。
上記第2実施形態においても、図16に示すように、一対の規制片55A、55Bの、シート束の変位を規制する規制位置から退避した退避位置における一対の規制片55A、55B各々の離間距離D3が、一対の圧着歯15A、15Bの、シート束を綴じる綴じ位置から退避した退避位置における一対の圧着歯15A、15B各々の離間距離D4よりも長い。この構成によれば、シート束の綴じ領域に対してシート束を挿入するときに、シート束の綴じ領域に対するシート束の挿入の障害となる要因を排除することが可能になる。
また、第2実施形態のシート処理装置1も、一対の圧着歯15A、15Bと、一対の規制片55A、55Bとの各々を、互いの退避位置まで移動させる場合に、一対の圧着歯15A、15B各々が所定の離間距離に達するまで、一対の規制片55A、55Bを規制位置で保持する。この構成によれば、圧着処理の後、一対の圧着歯15A、15Bを離間させるときに、圧着歯15A、15B各々が所定の離間距離に達するまで、一対の規制片55A、55Bが規制位置で保持される。すなわち、圧着歯15A、15Bが互いに十分に離間するまで、圧着歯15A、15Bに対して接近、離隔する方向へのシート束の変位を規制することができる。したがって、圧着歯15A、15Bに対するシートSの付着を防止する作用を効果的に向上させることが可能になる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
例えば、上記実施形態では、一対の規制部材として2本のワイヤー、2本のリンク部材を用いたが、ワイヤー、リンク部材に代えて、一対の規制部材をその他の部材で構成しても良い。
また、上記実施形態では、2本のワイヤー21A、21B及び2本のリンク部材51A、51Bを変位させる駆動部として、シート束の背面側に設けられたサイドフェンス5cを用いたが、サイドフェンス5cに代えて、綴じ部材12A、12Bの駆動部と同様のモーターを用いても良い。また、モーターを用いる場合、シートSを搬送させるためのモーター等から動力を伝達しても良い。